ヒッキーのためのリレー小説 6発目

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170(-_-)さん:03/07/25 04:27 ID:???
ホテルへ着いて、警視さんが車に乗ってくれというので、
言うとおり車に乗り、15分ほど走った林道に着いた。
「ここだ。まだ、鑑識はいるな。取りあえず降りてくれ。」
僕達は嫌な予感があるが、取りあえず警視さんの後をついていった。
そして、大き目の布がかぶせられたモノを見て、
「確認してもらいたい。まあ、医療関係なら免疫はあるかな?」
警視さんは、布を少しめくった。
すると、やはり今朝のおじいさんだ。
松永さんも冷静にそう判断したようだ。
「その反応からすると、あっていたかな?」
僕達は無言で頷く。
「でも、なんで?この人は無関係なのでは?」
警視さんはため息をつくと、
「奴らには関係があったんだろう。もしかしたら顔を見た人物かもしれないと。」
そんな理由で人を殺すなんて・・・
「そして、もう一つわかった事がある。君達は見張られている。
 君たちが気がつかないほどの人間、プロと言う奴だ。」
つまりプロというのは、殺しのプロと言う意味もあるんだろう。
「そこで提案なのだが、君達にボディーガードを2人ほど付けたい。
 手遅れになる前に、今度は先手を打ちたいし、犠牲者も増やしたくない。」
僕達は診療の邪魔にならない程度で、ということでお願いした。
そして帰りは、その2人の車で診療所に戻った。
171(-_-)さん:03/07/25 06:55 ID:???
その日は、普通に診察して、一日は終わった。
ボディーガードは、どこにいるのか?と思ったら、
若いスーツ姿の男性と、少しゴツイTシャツを着た男がいた。
なるほど、普通っぽい格好ね・・・
気にしないようにしよう。
松永さんは、PCで何か調べ物をしているようだ。
邪魔するとまずいので、自室へ戻る事にした。
すると、すばやくスーツ姿の男が着いてきた。
まあ、気にしない・・・けど気になるな。
あとで、松永さんにお茶でも持っていくときに、
この人たちにも、くつろいでもらおう。
そうしないと、何か落ち着かない。
172(-_-)さん:03/07/25 19:55 ID:???
そして、ちょっとしたお茶会が始まった。
この2人は意外と軽装備らしく、動き回れるほうがいいから。
と言っていた。
松永さんは、話に混ざったり、PCに向かったりしていた。
「松永さん、調べものなら後でもいいじゃないですか?」
すると、
「いえ、ちょっと急ぎで調べることがあって、すみません。」
チラッと見たが、うちの診療所のホームページと言われるものを作成している。
それと同時進行で、何かを調べているが、それまでは見えなかった。
あとで、落ち着いたら聞いてみよう。
とりあえず、ボディーガードの2人に聞きたい事があった。
「あの、もし答えられなかったら答えなくても結構ですので、
 質問しても良いですか?」
すると2人は、頷いた。
「あなたたちは、犯人の目処とかついているのですか?」
2人のうちの痩せたほうの人が、
「いえ、詳しくはわかっていません。ただ、危険な組織が関連しているとしか、
 今はこれ以上は言えません。奴らがどこで聞いているかわかりませんから。」
うーん、本当に厄介な事件、それも父親がらみだと、
何か質問しづらいな。
そんなことを繰り返して、その夜は眠った。
173(-_-)さん:03/07/26 20:17 ID:???
しかしその日は熱帯夜だったので、僕は目がさめてしまった。
とりあえず、水を飲もうと台所へ向かうと水に氷をひとつ入れ、
ゆっくりと飲み干した。
これで、少しはマシになった。
ん?台所の窓が少し開いている。
松永さんも抜けているところがあるんだなぁと、窓へ行くと、
外であのボディーガード達が、トレーニングしていた。
僕は、冷蔵庫からウーロン茶の缶を3つ持つと、
彼らのところへ持っていった。
「どうも。せいが出ますね。」
そう言うと彼らは、トレーニングは終わったのだろう、
汗まみれのシャツを着替えていた。
「どうぞ。ウーロン茶ですけど、よく冷えてますよ。」
2人は礼を言って、受取った。
「しかし、僕たちの身の安全とは言え、こんな夜中にトレーニングですか?」
「それが仕事ですし、相手に負けたらボディーガードの意味がないですからな。」
筋肉質の人は言った。
そういえば、この2人の名前も知らないな。
聞いてみるか。早速聞いてみた。
「いや、もしもの時がありますので、あまり我々の情報を知らないほうがいいです。」
細身の人が言った。
「そうですか。すみません。気になったもので。」
そして、ウーロン茶がなくなる頃には、僕達は再び睡眠に入った。
明日も暑くなりそうだ。
174(-_-)さん:03/07/26 23:44 ID:???
そして次の日。
午前中の診療が終わって、お茶を飲んでいると、
松永さんは、またPCに向かっていた。
「松永さん。ホームページって、簡単に作れるものなの?」
すると、にっこり笑って、
「ええ。今は作成ツールって言うのを使って作ってるんで、
 慣れれば楽に作れますよ。あ、先生。デジカメで撮っても良いですか?」
「いいけど、どうするの?」
「先生の写真もHPに載せるんですよ。この診療所の写真はアップしてあります。
 でも、やっぱり先生の顔が載ってないと、なんか足りないんですよ。」
でもインターネットって確か、世界中の人が見てるって聞いたことあるな。
「で、松永さんの写真は?」
「え?私のはいいんですよ。ここのあるじが載ってなかったら意味ないじゃないですか。」
そうだ。前に聞こうと思っていた事を聞いてみるか。
「そういえば、他に何か調べてたよね?あれは、HPとは関係なさそうだったけど。」
松永さんは、一瞬あせったが、
「気のせいですよ。今はネットで薬の事も調べられるんですよ。」
そうなんだ。と言って話を切り上げた。
なんだろう?何かひっかかる。
僕も後で、PC久々にやってみたいから松永さんが使ってない時に借りてみよう。
そして、そんなことをして昼食を食べ終わると、午後の診察が始まった。
しかし、何かがひっかかる。
175(-_-)さん:03/07/27 00:21 ID:???
そして午後の診察も終わり、松永さんは鼻歌まじりで台所へ向かった。
夕飯は今では松永さんがほとんどやってくれる。
今はボディーガード2人分も作っているのだから、
彼女はすごいと思う。
さて、それはさて置きPCの前に座った。
松永さんの趣味だろうか、マウスにはピンク色のネズミっぽいカバーがしてある。
マウスパッドはイルカが飛び跳ねている写真を加工したもの。
よくみると、イルカグッズが多いことに気づいた。
うーん・・・イルカが好きなんだろう。
今回の事が片付いたら、もうすぐ診療所も短い夏休みになるから、
隣町の水族館でも連れて行ってあげよう。
さて、PCは立ち上がった。
ネットには自動接続になってるのか。
えーと、メーラーは個人的なメールがあるかもしれないので、今は立ち上げない。
とりあえず、診療所のHPでも見てみようか。
・・・本当に僕が写ってる。もう少しいい写真もあったろうに。
まあ、とりあえず検索。とそこで止まった。
何を検索すればいいのかわからない。
これは誤算だった。とりあえず、松永さんの名前でも入れてみるか。
松永文子と、松永さんの場合、ふみこじゃなくてあやこって読むんだったけど、
検索するのは取りあえずこれでいいか。
そして、検索してみると同姓同名が結構いるようで、ちょっと後悔。
しかし、あるものが目に止まった。
相沢研究所 松永浩二
これは、松永さんと関係ないよなぁ・・・
僕に関連があったからって、松永さんが関係あるわけ・・・
そういえば、僕は松永さんのことをほとんど知らない。
最初、患者として来たときも、ほとんど聞かなかったし。
すると、後ろに誰かいるのに気づいた。松永さんだ。
何か複雑そうな顔をしている。
「先生、見ちゃったんですね。私も関わりがあるんです。」
一体何がどうなっているんだ。とにかく話を聞くことにしよう。
176(-_-)さん:03/07/27 12:36 ID:???
松永さんはポツリと話し始めた。
「実は私の父も相沢研究所に、出向していました。
 でも、ある日突然亡くなったと連絡があって、
 遺骨だけになって帰ってきたんです。」
それはまさか口封じの為に消されたのか!!
「先生の思っている通りの理由だと思います。
 父がいたのは、私が看護学校に行っているときだったので、
 その時は事故だと思っていました。
 母はその後ショックで寝込んでしまい亡くなりました。
 私は看護師になってしまい、忙しくなったので、
 それは大きな問題ではないと思っていました。」
「でも、違ったと思い始めた。そして松永さんは何らかの方法で、
 研究所のデータベースを調べ、お父さんの死が事故ではないと知った。」
松永さんは頷く。
「でも、知ったのはここに来て、今の事件に関わった後です。
 あの名刺を見て、泉さんが亡くなったと知り、不審に思ったんです。
 そして悪い事だとわかっていましたが、ハッキングをして、
 あの研究所の実態を知りました。
 でも、そこまででした。その先はプロテクトが固く、
 ここに迷惑がかかると思って調べませんでした。」
すると、診療所の入り口から声がした。
177(-_-)さん:03/07/27 12:36 ID:???
「そう、あなたが調べたとおり、あの研究所には裏の仕事があります。
 あなたの知りたい情報は、私たち警察である程度は調査しました。
 しかし、決定打がない。そこで、あなた達に目をつけて、
 奴らが動くのを待っていたのです。」
前島警視とボディーガードの2人が立っていた。
「立ち聞きしてすまない。だが、君達がシロだということを、
 知っておきたかった。この2人は、連絡係でもあったのです。
 騙すようなマネをしてすみません。」
「いいえ、警視さんたちは僕達のことを信用してくれたから、
 こういうことをしたんじゃないですか?」
前島警視は頷いて、話し始めた。
「もうすでに、奴らの1人をマークした。君達も知っている人物だ。」
僕と松永さんは、わからないと言う顔をした。
「泉 信太と言えばわかるかな?」
僕達は驚いた。彼は崖から落ちて死んだんじゃ?
「崖に落ちたのは、似ている人物を影武者にしたようだ。」
そして僕達は更にとんでもない事を知るのだった。 
178(-_-)さん:03/07/27 19:39 ID:???
番外編 交差の日
そして次の日は、とても暑い日だった。
午前中の診療が終わる寸前に、都会から来たと思われる少年が受付をすまし、
診察室に入ってきた。
「こんにちは。僕の名前は朝山恭一郎。ここの診療所の所長兼医師です。」
「僕は東京に住んでいた鈴木鈴太、13歳です。」
「なかなか賢そうな感じだね。それでどんな症状なのかな?」
「いえ、僕の嫌な記憶、いや僕自身を消してください!!」
少年は必死に頼んできた。
松永さんが麦茶を持ってきてくれた。
「さあ、これを飲んで落ち着いて、ゆっくり飲んでね。
 急いで飲むと危ないからね。」
どうやら、落ち着いたようだ。さすが絶妙なタイミングでフォローしてくれる。
「さて、どういうことなのかな?僕は殺し屋ではないので、
 消すのは出来ないんですが。記憶を他の記憶にすりかえることは出来ます。」
少年は不思議そうな、しかし疑いのない眼差しで、
「それでいいです。お願いします。ここの土地に住んで人生をやり直したいんです。」
「それは、君の両親や親しかった人たちを知らなかったことにするということだよ?」
179(-_-)さん:03/07/27 19:40 ID:???
「はい。もう両親もいません。しかし、この村に空き部屋があると調べてきたので、
 そこで新しい生活をしたいんです。」
「そうですか。後悔はないのですね?」
少年は強く頷く。
「では、その忘れたい記憶を強く思って!!」
僕は何で出来ていたか忘れた金属製の腕輪を外し、
能力(ちから)を使った。そしてすぐに腕輪をつける。
長時間外すと、僕の精神が壊れるらしいのだ。
さてうまくいったかな?
「君の名前は?」
「・・・・」
しばらく話をして行くうちに、生活に支障がないとわかったので、
駐在さんに頼んで、彼のメモにあった住所に送ってもらった。
「お疲れ様でした。ああいう風になるんですね。」
松永さんが自分のことのように言った。
それからは普通に診察を済ませて、一日は終わった。
番外編 交差の日 終了
180(-_-)さん:03/07/27 23:00 ID:???
その日も暑かった。
松永さんもバテ気味のようだ。
ボディーガード兼見張り役の2人も、顔はきりっとしてるけど、
バテているみたいだ。
このままじゃ、仕事に支障をきたすかも知れないな。
よし!!そうと決まれば。
「松永さん、今日のお昼ご飯はどうしますか?」
松永さんはぼーっとしながら、
「うーん・・・特に考えてませんでした。」
「じゃあ、出前を頼もうか?うな重の特上。」
そう言った瞬間、松永さんが目を輝かせ、
「ほ、ほ、ほ、本当ですか?肝吸いとかも付いちゃうんですか?」
「あ、あ、ああ、付いてると思うよ。お二人も一緒で良いですか?」
ボディーガードの2人も、やっぱりバテていたようで、静かに頷いた。
「じゃあ、かっぱ屋に電話しますね。ここのは国産ですよ。」
僕はかっぱ屋に出前を5人前頼んだ。
そして、あの人にも電話。
「20分くらいで来るそうですので、冷たい麦茶でも飲んで待ちましょう。」
すると、松永さんが、
「あの、5人前って?」
「ああ、今から来る人の分。」
181(-_-)さん:03/07/27 23:00 ID:???
「あ、そうですね。確か、午前中の診療が終わった頃に来るって言ってましたね。」
そして20分後。警視さんも混じって、うな重特上肝吸いつきを食べる事になった。
「それじゃ、まずは頂きましょう。」
松永さんは生き返ったように目が輝いている。
すると、警視さんがボディーガードの二人に、何か言って器具を取り出した。
「万が一のためです。奴らが変装してる可能性もあるので失礼。」
そう言って、全員のうな重+肝吸いに毒物、薬物反応を確かめ始めた。
「どうやら、大丈夫のようです。さあ、頂きましょうか。」
ちょっと引っかかるが仕方がない。食べよう。
そして、全員食事も終わり、お茶を飲んでいると、
「どうやら、泉は我々の部下の1人に変装して、例の遺体の脳を調べたようです。」
それには、全員驚いた。
「もしかして、父の開発した記憶を探る薬品か装置ですか?」
「そのようですね。今朝、部下の遺体が見つかったのでわかったのです。」
「それじゃ、パスワードとやらは奴らに?」
「おそらく。そして、今ごろ奴らのボスに連絡がいっているでしょう。」
「そのボスは研究所に?」
「いえ。この村のどこかに隠してあるそうです。奴らは手段を選びません。
 これまで以上にきをつけて。」
182(-_-)さん:03/07/27 23:32 ID:???
それからの警察の対応は早かった。
まず、泉と言う男を逮捕。
そして研究所に強制捜査。
色々な資料や薬品、機械が出てきたらしいので、
まだまだこれからだろう。
そしてボスとやらの部下も全て逮捕。
それが、さっき警視さんの言っていた今回の事件の顛末だった。
どうやら、政界、財界にも捜査が入るようなので、
僕達の周りで起こったことは、その1%にも満たなかっただろう。
そして、警視さんたちは挨拶をして戻っていった。
もちろん、ボディーガードの2人も本職に戻った。
僕達は、日常に戻るわけだ。
警視さんが最後に、僕達の関連する情報で教えられるものは、
あとでまとめてレポートを送ると言っていたが、僕はどうでもいいと思った。
松永さんは、わからないが。
でも、長かった事件も取りあえず終わった。
今日は日曜、松永さんを隣町の水族館に誘ってみよう。
気晴らしにはなるはずだ。

研究所事件 おわり
183(-_-)さん:03/07/28 08:41 ID:???
そして、夏は続いている。
この診療所も、あれ以来特に変わった様子もない。
夏バテや、熱中症の患者さんが多いくらいか。
後は、怪我をした子供たちが遊びに来るようになった。
松永さんは、あの事件のショックから立ち直ったようだ。
子供たちの相手をしている。
先日、警視さんから手紙とレポートが来たが、
僕も松永さんも心を切り替えるきっかけにはなった。
まあ、この間行った水族館で、イルカグッズを買いまくって、
診療所はイルカグッズがあふれている。
そういうところも、子供たちが来るようになった理由だろう。
僕は今、警視さんに手紙を書いている。
レポートと御世話になったお礼の手紙だ。
それを出したら、本当に僕たちにとっての、あの事件は終わる。
さあ、まだ暑い夏は続きそうだ。

エピローグ おわり
184(-_-)さん:03/07/28 19:41 ID:???
ある診療所の日々 2
僕は朝山恭一郎、田舎の村に心療内科の診療所をやっている。
数年前に、温泉が出てリゾート施設なども増えてきている。
この診療所は、僕の他には松永文子(まつながあやこ)さんが、
看護師として手伝ってくれている。
今日も、一日が始まる、
暑い日がまだ続きそうだ。
185(-_-)さん:03/07/29 21:26 ID:???
そして午前中の診療の最後の方が入ってきた。
この診療所に訪れるほとんどが、お年寄りだ。
そして、松永さんは夏の暑い日限定サービスと言って、
特売のそれも一番おいしい麦茶を買い占めてきた。
何をするかと思えば、患者さんも暑いでしょうから、
麦茶をたくさん作って冷やしておいて、飲んでもらうんですよ。
と言っていた。
そして、患者さんごとに新しい麦茶を入れて、置いていってくれる。
その患者さんにも、もちろん出した。
20代前半、松永さんよりは年上くらいの女性の患者さんだった。
「どうぞ、麦茶。お嫌いでなければ飲んでくださいね。」
その女性、えーと受付名簿によれば、田山順子さん(25)か。
無言で麦茶を飲み干した。
「まだありますから、良かったら・・・」
そこで、彼女は話してきた。
「私、隣町のコンビニでアルバイトしてるんです。」
「なるほど、それで今日は内科ですか?心療のほうですか?」
彼女、田山さんは、
「はい。心療のほうで。私、何をやっても充実感がないんです。
 今の仕事もお金のために、つなぎのバイトなんです。」
「なるほど。自分を生かせる仕事が見つからないと言うわけですね?」
「はい。なんか、大学卒業しても就職が決まらなくて、
 フリーターやって、探そうと思ってました。
 でも、先生の言うとおり見つかりません。」
186(-_-)さん:03/07/29 21:26 ID:???
僕は少し考えた。
「そうですね。今、就職難と言われていますからね。
 ひとつお伺いしたいのですが、ご実家の職業は?」
「父は普通のサラリーマンで、母も家事とパートやってます。」
僕には少し思うところがあった。彼女がノーと言わなければ。
「もうひとつお伺いしたいのですが。農業についてどう思いますか?」
彼女はなんで?という顔をして、
「嫌いじゃないです。おばあちゃんの家が、T県にあるんですが、
 たまに農作業を手伝ったりしてました。」
「ふむ。じゃあ、この村に花田さんと言う方がいらっしゃるのですが、
 人手が足りないということなのです。
 もし田山さんさえ良ければ、ご紹介しますよ。」
田山さんは、少し微笑んで、
「はい。やらせてください!!」
と言ってきた。
「じゃあ、ちょっと待ってくださいね。花田さんに連絡してみます。
 もしもし、朝山です。はい。診療所の。
 そちらで、お手伝いをしたいという子がいるので、明日にでもよろしいですか?」
花田さんは大歓迎と言う感じだった。
「えと、田山さん。先方には連絡しましたが、一人じゃちょっと行きづらいですよね?」
そう聞くと、案の定「はい。」と言って来た。
「では、明日は診療所が休みなので、僕と松永さん、あ、受付の看護師の人です。
 と田山さんで、花田さんとお話するのはどうでしょうか?」
返事はイエスだったので、明日朝の6時に診療所前に来るということになった。
187(-_-)さん:03/07/29 22:16 ID:???
次の日。
待ち合わせに田山さんは来た。
早速、花田さんのところへ。
途中の山道で、広い畑が見えた。
「この畑は今から行く、花田さんが管理してるんだよ。」
田山さんは感心しながら、先へ進んだ。
そして、花田さんの家に着いた。
花田さんたちは、待っていてくれたらしく、
朝食を振舞ってくれた。
いわゆる家庭の味と言うのだろうか。
松永さんも料理は上手いが、それとは違う美味しさだ。
田山さんも、ニコニコしながら食べている。
ある程度、朝食が片付いたところで本題に入った。
花田さんが、田山さんに質問してきた。
「おめぇさんは、農作業やったことあるんか?」
「はい。母の実家が農業をやっているので、手伝い程度ですがやりました。」
「そうか。体力は大丈夫け?」
「はい。まだ、若いですから。」そう言うと、花田さんは笑い、
それにつられて、皆が笑った。
僕は少し考えた。そうだ。この皆が笑える所。
僕はそれを目指して、医者になったんだ。改めて思った。
花田さんは、笑い終わるとお茶を一気に飲み、
「じゃあ、今日からやってみるか?まあ、畑とか見てくるだけなんだけども。」
田山さんは、「はい。行きます!!」と言って付いていった。
僕たちは、お邪魔かな?
188(-_-)さん:03/07/29 22:16 ID:???
「それじゃあ、花田さん。よろしくお願いします。僕たちはこれで失礼します。
 田山さんも、何かあったら、すぐ診療所へ来てくださいね。」
僕たちは、会釈をして山を降りた。
「田山さん、うまく行くといいですね。」
松永さんが、にこっとして話す。
「そうだね。僕も自分の目指しているものを再確認できたし、
 明日からもがんばりましょう!」
「そうですね。先生の目指しているものって、わかった気がします。
 皆で笑いあえる。それって、簡単なようで難しいですからね。」
そうして、僕たちは山を降り、松永さんは、
「あ、麦茶の特売やってるんですよ!!行って来ます。
 あと、麦茶だけじゃ飽きるかもしれないので、何かいいものがあったら、
 買ってきますね。試し飲みはお願いしますね〜。」
と言って、スーパーまで走っていった。
僕はちょっと眠い。診療所に帰って、少し眠ろう。
明日もがんばるために。
189(-_-)さん:03/08/01 19:14 ID:???
次の日も暑かった。8月に入ったのか。
今日も松永さんは麦茶と、新しく買ってきた数種類の謎のお茶を冷やしている。
「先生。新しく買ってきたお茶飲みませんか。」
その目は気体に満ちた目だ。僕はこの目に弱い事を知ってか知らずか、
たまに松永さんはそういう態度を出してくる。
「うん。えーっと、ヤーコン茶にどくだみ茶、減肥茶か。」
結構、まともそうなので安心した。取りあえず飲んでみよう。
「ヤーコン茶は結構いいね。どくだみ茶はちょっと苦いかな。
 減肥茶は僕あまり肉多くないからなぁ。松永さんもそうだけど。」
そう言うと松永さんは、少し照れた。
「とりあえず、少しづつ出すのは大丈夫だと思うよ。」
「そうですか〜!!嬉しいですよ〜。
 じゃあ今度から患者さんにメニューから選んで貰って出しますね。」
なんだか、お茶のみ場になってきてる気がする。
冬場もやるんだろうか?やるだろうなぁ・・・
ま、取りあえず診察開始時間だ。今日も頑張ろう。
そんな一日。
190山崎 渉:03/08/02 00:11 ID:???
(^^)
191(-_-)さん:03/08/02 19:48 ID:???
ある少女の告白

今日も朝山診療所は患者さんが結構来てる。
まあ、ほとんどがお年寄りなんだけど、
「先生は結婚なさらないのですか?良かったらいい子がいますよ。
 お見合いしたらどうですか?」
という患者さん?もいる。
その時に松永さんの入れてくれた麦茶がぬるいのは気のせいだろう。
さて、今日の診察もあと一人か。
ノックの音。「どうぞ、入ってください。」
少女だった。「・・・失礼します。」とか細い声で入ってきた。
そこへ、松永さんがメニューを持って、どのお茶がいいか聞いてきた。
「僕は麦茶でいいよ。君、えーっと杉島さんは、どれがいいですか?」
なんだか戸惑っているようだ。確かに診察に来てどのお茶がいいかなんて、
聞かれるとは思わないだろう。
すると、やはりか細い声で、「む、麦茶でいいです。」と言った。
松永さんは「早速お持ちしますね。」と冷蔵庫のほうへ。
そして、素早く麦茶をグラスについで持って来た。
「どうぞ。それを飲んだら、診察に入りましょうか。」
「・・・はい。」ゆっくりと飲んだ。
すると、「とても冷たくておいしいです。」と少しにこやかになった。
「じゃあ、診察を始めましょう。今日はどうしましたか?」
「あの、記憶・・・私、記憶がなくなっていくんです。」
それには、僕は驚いた。確かにそういう病気があると聞いたことはあった。
「それは、詳しく教えてもらえるかな?」
「はい。」
その後、彼女から聞いた話は、僕の過去に関わっていると知るのは、
しばらくしてからだった。
192(・∀・)ホー!!:03/08/07 03:13 ID:???
(・∀・)ホー!!
193(-_-)さん:03/08/07 08:14 ID:???
そして、彼女は話し始めた。
家庭教師がついて1ヶ月くらいから、記憶の抜け落ちが始まったらしい。
「杉島さん。その家庭教師について、知っていることを全て教えて下さい。」
杉島さんは少し考えて、
「はい。でも、ところどころ記憶が抜けているので、役には立たないかもしれないです。
 その家庭教師は奈良順平という大学3年の人です。
 少しひょろっとして、身長は先生くらいあります。」
すると、180くらいか。しかし大学生とは。
「あ、あと先生のように、時計じゃないですけど少し不似合いなブレスレットを、
 つけています。奈良さんが、ブレスレットを外した後に記憶が抜け落ちていることが、
 結構あります。何か手が光った所までは思い出せるんですけど、その後が。」
まさかとは思ったが、奈良と言う人物も僕と同じ能力を持っている?
少し考えて、その家庭教師が来る日と時間を教えてもらい、杉島さんは帰った。
さて、直接会って話して見るか。今のところは、それしかないようだ。
「あ、松永さん。以前の事件でお世話になった、前島警視の携帯番号は・・・」
その瞬間に、警視の名刺を出してきた。
「ありがとう。」
そして、前島警視に事の経緯を話し、何かあったらお願いしますと言っておいた。
松永さんが心配そうな顔をしている。
「大丈夫。僕も普通の人間じゃないんだから。」
194山崎 渉:03/08/15 10:18 ID:???
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
195(-_-)さん:03/08/19 11:07 ID:???
とりあえず杉島さんの言った時間に合わせて、訪問する事にした。
前島警視は例の事件で来られないというので、その時にボディーガードをした2人
を手配してもらった。もうどこかに隠れているのだろう。
それと松永さんがお守り代わりにと渡してくれた小さなイルカのぬいぐるみ。
僕の胸ポケットに入っている。一応、胸に手を当てて確認する。
松永さんも心配性なのがわかって苦笑した。
さて、そろそろかな。気を引き締めないと。
僕以上の能力者、もしくは何か格闘術でもやっていたら敵わないからね。
自慢じゃないが、能力に頼りっきりで腕っ節はからっきしなのだ。
うん?ドアが開いて中から2人出てきた。一人は杉島さん、もう一人が奈良という人物か。
挨拶してるのか、ドアの前で話をしてる。
そして僕がいるのに気づいたようだ。2人がこちらにやってきた。
杉島さんの表情からすると、僕が来るのを話しておいたのかも知れない。
奈良という人物が、挨拶をして来た。
「やあ、あんたが朝山センセーか?俺と同じような能力を持ってるらしいね。」
僕も負けずに口撃する。
「はいそうですよ。でも、あなたのような使い方はしていませんけどね。」
そう言うと、彼の顔がムッとした顔になった。
「へぇ。俺が彼女の記憶をどうにかしてると思ってるわけか。
 ま、その通りだけどね。」彼はニヤリと笑い、あっさり認めた。
「では、その『遊び』を止めていただけますか?杉島さんも困っているようですし。」
彼は更に近づいて、ポケットに手を入れながら話して来た。
「遊び?確かにそうかもな。俺はあるところで、この能力を貰ったんで、
 試しに使おうとしていたところへ、彼女の家庭教師の話が来たってわけさ。
 ふふふ・・・他人の記憶って面白いね。怒り、悲しみ、喜び。
 それを少しづつ壊していく。まるで・・・」
「神様になった気分ですか?その程度の考えでそう思うとは、
 軽い神様ですね。記憶と言うものは大切なものも、そうでないものも、
 その人の生きてきた証なんですよ。それを勝手に壊していいと思ってるんですか!」
僕は昔の自分と重ねていたのかもしれない。少し苛立って言い放った。
しかし彼は、大笑いしながらとんでもない事を言ってきた。
196(-_-)さん:03/08/19 12:15 ID:???
「いいじゃねぇかよ。あんたも似たような事してるんだろ?診察でさ。」
そう言うと、突然駆け寄り僕の頭に右手のひらをあててきた。
腕を見ると、いつの間にかゴツイブレスレットを外している!!
まずいと思い、僕も右腕の時計を外し、彼の頭にてのひらを当てて、
後ろに下がる。どうやら、記憶を消したりしたのではないようだ。
「ふふふ・・・センセーよぉ。知ってるか?俺達、記憶操作系の能力者は、
 人の記憶をなんとなくだが、手をあてると読めるんだぜ。
 まあ、強く思ったこと、感じた事しか読めないけどな。」
「知っていますよ。僕はあなたよりは、能力については長く付き合ってますからね。」
すると彼はへらへらと笑いながら、
「へぇ。知ってたんだ。じゃあ、俺のこともわかったのかい?
 俺は少なくとも、センセーが俺を説得しに来て、どこかに刑事がいるのはわかったぜ。」
僕はそこまでしか読まれなかったことで安心した。
「そうですか。じゃあ、僕の記憶を壊してみますか?やり方を覚えていればですが。」
彼は、はっと気がついたようだ。そして、怒りの表情をした。
「くそっ!てめぇ!何てことしやがる!!俺の楽しみがなくなったじゃねぇかよ!!」
そう言うと、彼は殴りかかってきた。僕は右の頬を殴られ体制を崩した。
その一瞬、彼の手を見るとバタフライナイフが握られているのが見えた。
そして、僕の左胸に刺さった。その時、隠れていた刑事さんたちが現われ、
彼の腕をひねり、ナイフを落としたところまでは見えた。
僕は、地面に倒れ・・・なかった。筋肉質なほうの刑事さんが支えていたのだ。
向こうを見ると、驚いて固まっている杉島さんと、
細身の刑事さんに押さえ込まれている彼が見えた。
「彼のほうが素早いですからね。大丈夫ですか?先生。」
筋肉質の刑事さんが聞いてきた。そしてイルカのマスコットを見せてきた。
それは、松永さんからお守りとして渡されたものだった。
しかし、穴が開いて無残な姿になっていた。すると刑事さんが、
「これにナイフが刺さって、助かったようですね。」
僕の上着のポケットを見ると、上まで裂けていた。
これは、本当に松永さんに感謝しなきゃ。
197(-_-)さん:03/08/19 12:38 ID:???
僕は落ち着いて、刑事さんにお礼を言って立ちあがった。
「刑事さん。彼はもしかして・・・」
刑事さんは少し迷ったが、
「そうです。例の事件の研究対象だったのです。
 実は前島警視は前から内偵を進めていて、彼はそのリストに入っていました。」
「それじゃ、今回の事は?」
「はい。以前から奈良をマークしていたのですが、なかなか尻尾が掴めませんでした。
 それで今回、先生から連絡を受けて渡りに船と言うわけだったのです。
 騙しているような形で申し訳ない。」
はぁ・・・それじゃ、前島警視にいっぱい食わされたわけか。
「では、彼は我々が本庁のほうへ移送しますので。」
「あ、はい。それじゃ、僕は杉島さんに話をしてから帰ります。
 お疲れ様でした。」
そして、刑事さんたちが去った後、杉島さんに話し掛けた。
「あ、先生。大丈夫ですか?私のせいで・・・」
彼女は涙ぐんでいたので、イルカのマスコットを見せて、
「この子が身代わりになってくれて助かったんですよ。
 それに杉島さんは悪くありません。僕が勝手に言ったことですから。」
杉島さんは、少し考えているようだったので、
「杉島さん。今日は大変でしたね。もし、落ち着いたら診療所のほうに。」
杉島さんは、「はい。」と返事をしてお辞儀をして、家の中へ入っていった。
198(-_-)さん:03/08/19 12:38 ID:???
そして、診療所に戻ると、松永さんが外でうろうろしていた。
「ただいま帰りました。事件は解決しましたよ。この子のおかげで助かりましたし。」
そう言って、穴の開いたイルカのマスコットを見せた。
「すみません。こんなにしてしまって、後で・・・」
「いいんですよ。先生の役にたったのなら、この子を渡したかいがありました。」
松永さんはニコッとしていたが、やっぱり何か落ち込んでいるようだった。
「そうですね。松永さん。後でまたイルカグッズを買いに行きましょう。
 それじゃ、中に入ってお茶でも飲みながら話をしましょう。」
そう言って、僕たちは診療所に入った。
後日、杉島さんは元気になったようで記憶の忘却もなくなったようだ。
とりあえず、これで解決したんだと自分に言い聞かせた。
でも、今回のことで昔の自分を思い出し、少し苛立っていた。

ある少女の告白 完
199(-_-)さん:03/08/19 23:38 ID:???
閑話 夏の風物詩
今日も診療所は患者さんでいっぱい・・・ではなく、お盆休みに入った。
3日間だけの休みなので、のんびりしようかな。
松永さんはどうするのかな?ちょっと聞いてみよう。
「松永さん、今暇ですか?」
松永さんは洗濯物を干して縁側に座っていた。
「ええ、今ちょうど暇になりましたよ。」ふふふと笑う。
「今日も暑いですね。それはそうと今日から3日間御休みですけど、
 何か予定はないんですか?」
松永さんはうーんと考え込んで、
「何もないですね。普段どおりにのんびり御休みを堪能します。」
「そうですか。僕もそう思っていたんですが、松永さんが何かあるのなら、
 そちらを優先しようかと思って。」
「うーん、あ、そうだ。お休みの最終日の夜はお暇ですか?」
突然、こんな事を聞いてきた。
「いえ、特にないですよ。何かあるんですか?」
すると、松永さんは家に上がってなにやら広告のようなものを持ってきた。
それには、「村民大花火大会」と書かれていた。日付も確かにそうだ。
「なるほど、花火大会ですか。いいですね。この村も観光客が増えましたからね。」
松永さんはニコニコして、まだ何か言いたそうだ。
「じ、つ、は、浴衣を仕立て直したんです。母から貰った物で唯一残ってる物です。」
最後のほうは、ちょっと悲しそうだったけど、お母さんの形見か。
「そうですか。それは楽しみにしないとばちが当たりますね。」
花火大会・・・直接見に行くのは何年ぶりだろうか。
しばらく見ていない気がする。中高大とこの村にはいなかったし、ある理由もありましたし。
本当に楽しみだ。
200(-_-)さん:03/08/19 23:39 ID:???
・・・・・・3日後、3日間買出しやのんびり過ごしてあっという間に約束の日。
「本当に似合ってますね。浴衣。普段の姿とは別人みたいですよ。」
彼女はちょっとぽっちゃりして、背が低いので浴衣は凄く似合ってる。
普段はちょこまかしているような感じだったので、新鮮さが倍増している。
「せんせーい、早く早く!こっちが一番よく見えますよ〜。」
いつの間にか、松永さんは川の土手を歩いていた。
僕も急いで登ると、そこには花火が空一面に咲いていた。
色々あった夏だったけど、楽しかったと思う。
来年も・・・「来年も見られるといいですね。一緒に。」
僕が思っていたことを言われてしまった。
そう、来年も再来年も、見ていたい。松永さんと一緒になら楽しいだろう。
ずっと続いて欲しい僕の中の永遠の時間。そして記憶。
これは強く思う。何があろうと、決して・・・

閑話 夏の風物詩 完
201(-_-)さん:03/08/20 02:08 ID:???
ヤンミル王子は散歩にでかけることにした。
202(-_-)さん:03/08/25 21:06 ID:???
夏の終わりの少年
「昔の話を聞かせてください!!」
そう言って目を輝かせている松永さんがいた。
今日は日曜日、僕は暇だったので、学生時代の写真やら、
今見ると恥ずかしいものを片付けていた。
そこを松永さんに見つかってしまい、
「可愛い顔だったんですねぇ。」とからかわれながら、
アルバムをひっくり返しては、「かわいい!!」という始末。
松永さんが、高校の頃のアルバムを見たとき、表情が変わった。
「なんだか、寂しそうです。」そう言って来た。
そうだ、その高校に入る前だった。あの出来事があったのは。
そして、松永さんは、「昔の話を聞かせてください。」と言ってきた。
僕がどうしようと思っていると、「いえ、話したくないんでしたら・・・」
「いいですよ。話しますよ。松永さんに話すのは、懺悔するような感じですが。」
僕は、話を始めた。まずは中学時代は普通に家族で生活していたこと。
その後、事故にあって父の知り合いの気功師と父の開発した薬を使われたこと。
その気功師のおかげで、普通に生活できる体になったこと。
それと同時に、記憶を操作する能力を得てしまったこと。
そして、高校に入学。しばらくして、いわゆる不良グループに絡まれ、
初めて他人に能力を使ったこと。その不良グループは、次の日から気が抜けたように
なった。僕が不良グループに関する記憶を壊したからだ。
どこかで噂が広まったのか、その事件以来、僕は一人になっていったこと。
そして、大学へ。誰も知らないところで新しい生活をしようと思っていたとき、
僕は能力を使ってしまいたい欲求を押さえられなくなっていた。
そして、父が使っていた時計を思い出し、それをつけると不思議と能力は使えなかった。
僕はこの能力を人を助けるために使いたいと思い、医学の道に進んだ。

203(-_-)さん:03/08/25 21:17 ID:???
そして、研修医だった頃に、先輩から聞かれた。
「お前、不思議な能力を持っているそうだな。見せてくれ。」
僕はとりあえず、先輩に軽いものを使ってみた。
すると、先輩は考え込んだように黙ってしまい突然、
「もし、お前が普通に医者として生きていくのなら、
 能力はなるべく使うな。その能力は危険すぎる。
 奴らが・・・いや、とにかく人前では使うなよ。」
その時はわかりませんでしたが、もしかしたら先輩は組織の人間か、
組織から抜けた人だったのかもしれない。
その事があってから、先輩とは二度と会うことはありませんでした。
先輩の言うとおり、まずは医者として一人前になろうと、必死でした。
そして、両親の保険でこの村のこの土地を買い、診療所を開いたのです。

「あまり面白くなか・・・」僕の頭を、松永さんは抱きしめた。
「先生、ごめんなさい。つらい事を思い出させてしまって。」
僕は、松永さんに離してもらうと、
「そうでもないです。このことは、僕が間違ったことをしたという事実。
 そして、今でも思っていることなんですよ。
 ありがとうございます。松永さん。改めて頑張ろうと思いましたよ。」
「先生・・・私も頑張ります!!」
ふと、縁側から外を見ると、あの寂しそうな目をした写真の僕が見えた。
その少年はニコッと笑って、消えた。目の錯覚だったのだろうか?
それとも、夏の終わりの夢だったのか。

夏の終わりの少年 完
204(-_-)さん:03/08/26 19:04 ID:???
穏やかな日

「先生〜、どこにいらっしゃるんですか〜?」
松永文子(あやこ)です。
この朝山診療所で、受付兼、看護師をやっています。
今は休憩時間なのですが、朝山先生が休憩時間と同時にどこかへ行ってしまったんです。
とりあえず、玄関に靴があるので母屋のほうに向かっています。
昨日、先生が探していた本、絵本なんですが、さっき本屋さんで見つけて、
買ってきたんです。
あ、居間のほうにいるのかも。私は居間に向かいました。
すると、やはり先生がいました。ここは、縁側と繋がっていて、
涼しい風が入ってくるので、よくお昼寝に使うんです。
そして、先生も案の定、お昼寝中でした。
ここのところ、残暑も厳しくてお忙しかったから、疲れたんですね。
起こすのはやめておきましょう。私は見つけてきた絵本を先生の近くにおいて、
冷たいものでも飲もうと、台所へ向かおうとしました。すると、
「松永さん。」と、先生の呼ぶ声。見ると寝てるようです。
「ふふふ、先生も寝言を言うのですね。」寝ている先生は可愛いと思う。
学生時代、女性に間違えられたって言うのもわかる気がする。
私は改めて、台所へ向かおうと立ち上がると、
「松永さん、ありがとう。」と寝言が聞こえました。
なんだか、午後の診療も頑張れそうです。そんな、穏やかな日でした。

穏やかな日 完
205(・∀・)ホー!!:03/08/31 03:43 ID:???
(・∀・)ホー!!
206:03/09/05 23:39 ID:???
予兆1 少年来訪
今日は土曜日、お昼で診察は終わる。
今、最後の患者さんを呼んでもらっている。
すると、外が光ったと思ったらドカーンと言う音がした。
松永さんは悲鳴を上げた。確かに今のは大きかったな。
そして、患者さんが座る椅子を見るといつの間にか少年が座っていた。
さっきの雷で名前が聞こえなかったのと、ノックの音も聞こえなかったから、
入ってきたのだろう。
「こんにちは。えーと、銀(しろがね)雷太くんでいいのかな?」
「はい。よろしくお願いします。」
少年は淡々とした口調で話してきた。
「今日はどんな用件で?風邪ですか?」
すると少年は首をふって、
「朝山恭一郎さんに用があって来ました。さっきは驚かせたみたいですね。」
少年はまるでさっきの雷を自分で起こしたようなことを言う。
「はい。恭一郎は僕ですけど。どこかで会いましたか?」
「覚えてないんだ。恭は。僕はしっかり覚えているよ。」
少年は12,3歳くらいだろう。カルテにも書いてある。
しかし、何か威圧する物がある。以前にも感じた事があるような。
まさか、能力者!!だとすれば、さっきの言葉もつじつまが合う。
だが、彼は僕を知っているといった。
「君はどこで僕を知ったのかな?」
「ボスと一緒に会った。その記憶は消されているのかな?」
何かが起きようとしている。それもとんでもない事が。
まだ、残暑が残る今から・・・
207:03/09/05 23:53 ID:???
少年はボスと言った。例の組織のだろうか?
「ボスは以前、この村で起きた事件の組織とは違う組織の人だよ。」
少年は当たり前のように言う。
「ボスは優れた能力者を探してる。能力を悪用する奴らを始末するために。」
僕は頭の中がもやもやして考えがまとまらない。いや、何か思い出そうとしているのか?
そこへ松永さんが、グラスに麦茶を入れて持ってきた。
「先生!!どうしたんですか!!」
「いや、大丈夫だよ。めまいがしただけさ。」
「じゃあ、麦茶でも飲んで落ち着いてください。」
少年は松永さんを見ている。そして、
「彼女は能力者じゃないんだね。関わりは間接的にあったみたいけど。」
松永さんが少年に話し掛ける。
「銀くんだったわね。あなたもそう言う能力を持っているの?」
「そうだよ。さっきの雷がそうさ。驚かせてごめんね。」
少年はにこりとして、笑いかける。
「君はそのボスに言われてやってきたのか?」
「そうだよ。それに能力も見てみたかったし。でも今日は帰るね。」
そう言うと、少年はドアを開け出口のほうまで行った。
「あ、そうそう。これから信じられないようなことが起きるから、
 そのおねぇちゃんは、何処かに逃げたほうがいいよ。
 逃げないと、きっと後悔するような事が起きるから・・・」
そう言って、少年は風のように去っていった。その先には車が止まっていた。
その車に乗ると、何処かへ去っていった。
予兆1 少年 了
208:03/09/06 23:04 ID:???
予兆2 夢
それはいつの事だったのか。サングラスをかけた「ボス」という男に会ったのは。
暑い、そう大学の夏休みの1日前だ。
僕は能力を使い、悩みを相談しに来た女性の記憶を操作した。
悩み自体を消し去ったのだ。しかしこれも何がその悩みに繋がっているかを、
思い出してしまえば無駄になる。記憶を壊すのは簡単だ。
数年前にこの能力を授かった時に、不良グループに使ったことがある。
彼らは、生ける屍となっている。医者もお手上げだろう。
記憶の治療など、直接は出来ないのだから。
それからは、父がくれた時計を右手にするようになった。
そうすると、能力は制限される。いや、ほとんど使えないだろう。
そんなことを考えているうちに、大学の門にこの暑い中黒いロングコート姿で、
サングラスの男とまだ10歳にも満たない少年が立っていた。
少年は普通にTシャツに短パン姿だ。その男に近づいてはいけない。
頭の中で危険信号が鳴っている。腕時計を外そうと左手を右手に近づけた。
しかし、いつの間にか男は左手を握っていた。その手も暑い中皮手袋をしている。
男は汗一つかいていない。その男が何かを言った。
「・・・に迎えの者を行かせる。この少年でいいだろう。
 その時、君は命を賭けた選択を強いられるだろう。だが、迷っては・・・」
目が覚めるといつもの部屋だった。
そうか、あの時に少年に会っていたんだ。鍵の役割を果たすために。
だが、目的はわからない。しかし、松永さんは危険な目にあわせたくない。
強く思った。たとえ何があっても、それだけは信じたい。
予兆2 夢 了
209:03/09/07 18:54 ID:???
予兆3 敵
午前中の診療も終わり休憩に入ろうと、松永さんに声をかけた。
松永さんは、指を指して何かを見ている。
そこには男が立っていた。身長170センチくらいの痩せ型の男だ。
「せ、先生。あの人、入り口をすり抜けて来ましたよ。」
松永さんは恐怖を押し殺して答えた。僕はその男に見覚えはない。
「午前中の診察は終わってるのですが、何か御用ですか?」
そう言うと、男は不気味な笑みを浮かべ、僕を指差した。
「先生に用があるんじゃなくて、朝山恭一郎に用があるんだ。」
僕は男のいる待合室まで行った。左手は右手の腕時計を外せるようにしている。
「それで何の用ですか?僕に用があると言ってますが?」
「警告をしに来たのさ。ボスとやらの使いは来たんだろう?」
あの少年の事を言っているのか。更に男は話を続ける。
「俺達はね。彼らと敵対してる組織のものなんだ。」
今、俺達と言った。後ろに気配を感じる。
「やっと気がついたのか。これでも能力者かよ。」
「まあ、いいじゃないか。平和ボケって奴だろ。」
二人は勝手に話し合っている。
「そうそう、俺達は忠告に来たんだ。あのボスの組織に協力しないで欲しい。」
「それが出来なければ、お前の大切な者に危害を加える。」
「考える時間は1週間。それまでに答えを出してね。それじゃ。」
二人はいつの間にかいなくなっていた。
これは忠告と言うより脅しだろう。だが、僕は出来る事をするまでだ。
予兆3 敵 了
210:03/09/08 21:09 ID:???
予兆4 警察
カラーン。入り口のドアベルが鳴る。今日は休診日だが、来客がある。
前島警視と、いつものボディーガードの刑事さん二人だ。
とりあえず、居間に上がってもらい経緯を説明する。
「ふむ。では、その少年もおそらく敵対する組織の者もボスと言ったんですね?」
「はい。少年もあとの二人も能力者だと思いますから、そうでしょう。」
「少年の名前は『銀(しろがね)雷太』。君、本庁のデータを検索してくれ。」
痩せたほうの刑事さんは、うちのPCからデータを検索している。
「残り二人は、名前もわからないですか。」
「はい。背が高いのと低い者がいたというくらいの認識しかできませんでした。」
「少年のほうは、今調べてその結果次第だが、残り二人は以前の事件の組織とも、
 別な物なのかもしれないな。」
そこへ、痩せたほうの刑事さんがプリントアウトした書類を持ってきた。
「これは・・・噂だけだと思っていたが、実在しているとは・・・」
「どうしたんですか?何かわかったんですか?」
その様子を松永さんは、口を挟むことも出来ずに見ていた。
「実は13’sという組織があると言う噂があったんですよ。
 その組織は、まあいわゆる世直し人とでも言うか、そんなことをしていると、
 聞いた覚えがあります。能力者で、難事件を解決している組織です。
 依頼人は主に悪事の犠牲になったり、犯罪組織、危険能力者の排除です。」
全員が無言になった。そんなドラマのようなことが本当にあるのか?と言う顔だ。
「それじゃ、その少年は13’sとやらのメンバーですか?」
「おそらくそうでしょう。あなたは昔、ボスらしき男と接触したと言う事ですから、
 13’sのメンバーの補充要員に相応しいかの見極めに来たのでしょう。」
今まで話には入れなかった松永さんが、「お茶を入れてきますね。」と言ったので、
一息入れる事にした。
211(-_-)さん:03/09/13 11:05 ID:???
162 :TAMA :03/08/21 00:44 HOST:p4232-ipadfx41marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp<8080><3128><8000><1080>
削除対象アドレス:
http://etc.2ch.net/test/read.cgi/hikky/1061392495/1
削除理由・詳細・その他:
アドレスが乗ってしまったので。

163 :削除屋@雪月 ★ :03/08/21 01:27 ID:???
>>162さん
ご自分で投稿されたようですので、自己責任として削除しません。
212:03/09/13 21:39 ID:???
13’s・・・もしかして、父も関わったのかもしれない。
それなら、僕にそこのボスが見に来てもおかしくはない。
今のところは敵ではないだろう。しかし、13人にメンバーを限定している。
つまり、一人一人が能力者としても、実戦においてもプロなのだろう。
もう一つの組織は、いわゆる武闘派という奴なのだろう。
僕としては、関わりたくない連中だ。
13’sのほうは、とりあえず敵にまわさない方向で行くか。
「先生?お茶、入りましたよ。」
松永さんが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「あ、ゴメン。考え事をしていたんでね。お茶ありがとう。」
松永さんが、何か言いかけた時、
前島警視が質問してきた。
「あなたの考えていたのは、二つの組織を敵に回さないということでしょう。
 特に13’sのほうですね?」
僕が考えていた事を、ずばりと言い当てられたので、あっけに取られていると、
「確かに、13’sは危険な能力者の排除などを主にしていますが、
 気に入った依頼しか受けないと言うことで、表に出てこない連中です。
 その連中が、あなたを受け入れようとしていると言う事は、
 あなたの能力を必要としているのでしょう。その依頼とやらがね。」
前島警視は、ボディーガードの刑事二人を残し、その組織を調査すると、
帰っていった。僕はある決意をした。
松永さんが不安そうな顔をしている。彼女のこんな顔をずっと見たくない。
だから、僕は決意をした。少年が来たら、それを言うつもりでいた。
予兆4 警察 了
213:03/09/15 23:23 ID:???
予兆5 最悪のシナリオ
それから数日間、何も起こらなかった。
ボディーガードがいるのがわかって警戒しているのか、
それとも作戦でも練っているのか?
松永さんが、お茶を入れて持ってきてくれた。
そういえば、もう診療時間は終わってる。
「先生、お茶でも飲んでゆっくり考えてください。
 もし、誰か襲ってきても合気道やってましたから大丈夫です。」
そういって、腕をまくって力こぶを出すポーズをした。
「ははは、ありがとう。でも、相手は普通の人間と違う。
 だから、それは自分の身を守るのに優先して欲しい。
 ほら、ボディーガードさんたちも強いんだしね。」
僕はお茶を飲み干すと、表の戸締りをしに行った。
そして、戻ってくるとお茶が新しく入れられていた。
「ありがとう。松永さん。」
すると、松永さんが驚いた顔で僕、いや僕の後ろを見ている。
振り返ると、あの時の二人と見たことがある気がする人物がいた。
ボディーガードの二人も駆けつけて、僕たちを後ろにかくまった。
「フォフォフォ、恭一郎よ。そんなに警戒せんでも良かろう?
 昔、お主にその能力の元を教えた仲ではないか。」
僕はもう一度見てみた。そうだこの老人は、僕に気功と能力を引き出した者だ。
「フォフォフォ。ワシの名は、李幽玄。この組織「黒武会(こくぶかい)」の、
 頭目をやっている。今日はお主に答えを聞きにきた。
 時間がないので3分以内に答えてくれぬか?」
僕の返事は決まっていた。
「いくら昔、世話になったと言えど、あなた方に協力する気はない!!」
すると、李は顔を強張らせた。
「そうか、やはり奴の子じゃな。そして、おぬしは13’sに協力すると?」
僕は頷く。すると両側の二人が、一瞬でボディーガードの二人を倒した。
214:03/09/15 23:39 ID:???
「なにっ!!」「えっ!!」
僕と松永さんは何が起きたかわからなかった。
しかし、わかっているのは、このままでは危険だと言う事だ。
「さて、答えは変わったかの?あと2分はあるぞ。」
くっ・・・あくまで自分の組織に入れるつもりか!!
残り1分をきった。李は少し苛立っていた。
「ふう。3分たった。答えは変わらんようじゃな。
 では、次はそちらのお嬢さんに・・・」
李は松永さんに近づいていく。僕は止めようとすると、残りの二人が押さえつけた。
「やめろ!!彼女は関係ない!!松永さん、早く逃げて!!」
しかし彼女は合気道の構えなのか、相手をする気のようだ。
「だめだ!!やめるんだ!!君を失ったら僕は・・・」
その一瞬の隙に、李は松永さんに近づいた。
その時、車の止まる音と同時に、ガラスを破る音。
まさか!これ以上悪い事は起こらないでくれ!!
しかし、いつの間にか診察室に入ってきたのか、銀と言う少年と、
昔会った事のある、ロングコートに皮手袋、サングラスの男がいた。
ボスと言われている人物だろう。少年に合図を送ると、銀少年は、
僕を拘束している二人に、電気を手から放出し頭に食らわせた。
そして、二人は気絶した。少年はにっこり微笑んだ。
「お兄さん、大丈夫?次は、あのお姉さんを助けよう!」
僕は勇気がわいて来た。しかし、ボスは少年を静止し、自ら向かっていった。
「久しぶりじゃのう。お主が来てしまっては、計画は失敗じゃ。
 しかし置き土産をしておこう。」
李は松永さんの頭に手を置くと、手が僕のよりも激しく光った。
「これは記憶破壊に近いが、ワシが見つけた使い方じゃ。
 せいぜい苦しむが良い。」そして、李一行は去っていった。
215:03/09/15 23:59 ID:???
僕は倒れ掛かる松永さんを抱きとめると、呼吸と脈を診た。
少し記憶操作後の症状が見られるが、大丈夫のはずだ・・・
少しすると、松永さんは目を開けてこちらを見た。
「あなたは、誰ですか?すみません、記憶に引っかかっているんですけど、
 思い出せないんです。」
彼女は興奮気味になったので、鎮静剤を打った。
僕は松永さんを寝室へ寝かせると、居間で待っているボスに話をした。
「彼らは一体なんですか?それにあなたたちも!!」
「まず、彼らは世界規模で能力者を集め、そして作り出し、
 兵器、兵士として利用している。それは表向きで、裏では、
 能力者による証拠の残らない殺人、強盗、色々な犯罪をする者たちだ。
 我々は、ある依頼者により君を守る、もしくは13’sに入れると、
 手紙を貰った。その依頼者とは、君の父親だよ。これが手紙、あとは。」
何やら木箱を出した。丁度DVDくらいの大きさだが、深さはもう少しある。
そして、僕に手渡した。僕は開けてみた。すると中には、ナイフが入っていた。
と言っても、白さやの小刀と言ったほうが近い。
そして手紙を読む。確かに、ボスと呼ばれる人物に当てた文章が並んでいる。
急いで書いているのがわかるくらいに、字がおどりまくっていた。
最後に僕宛に、「その白さやのナイフは、お前の能力と合わせれば、
最強の能力となる。相手の能力を無くし消し去る能力だ。だが、お前だけでは
奴らと組み合う事も出来ないだろう。13’sに行き訓練を受けろ。
そして共に李の組織を潰してくれ。」
そこで手紙は終わっていた。二人は無言だ。するとボスが、
「13’sに来るか?彼女は13’sの管理する病院に入れる。
 そこなら安全だ。もし会いたければ会う事も出来る。」
「お願いします。彼女を治せるかもしれない可能性は李が持っている可能性が、
 高いでしょう。だから、訓練をうけさせて下さい!!」
予兆5 最悪のシナリオ 了
216:03/09/16 05:48 ID:???
変化1 組織
あの後、ボディーガードの二人を起こし、前島警視に伝えて欲しいと言って、
帰ってもらい、松永さんをボスの車に乗せ、13’sの関連病院に運び込んだ。
その病院の地下に訓練施設と宿泊施設があると言う事なので、そこへ行った。
診療所のほうは、しばらく近くに出来た病院の先生に少しの間ですからと、
お願いしてきた。これで、僕は訓練に集中できる。
まずは、基礎体力と運動能力の訓練だった。
その訓練には、あの少年銀雷太ともう一人のメンバーのスパイダーと呼ばれている
能力者が協力してくれる。ちなみにスパイダーと言うのはコードネームらしい。
本当はメンバー全員、コードネームで呼ばれているらしい。
銀少年は、偽名でライトニングと言うコードネームらしい。
おそらく能力を表しているのだろう。そして、訓練は始まった。
まずは、二人の動きについていく訓練、さすがに訓練されているだけあって、
全く追いつけない。仕方がないので、スピードを落としてもらった。
今度は追いつけないスピードではなくなったが、僕の体力が限界だった。
なんて情けないんだろう。もっと僕がしっかりしていれば、松永さんをあんな目に、
あわせなかったのに。そんなことを考えていると、スパイダーが、
「起きてしまった事を悔やんでも先へは進めない。先へ進めば道はあるはずだ。」
と言ってきた。そこで、今日の訓練は終わる事になった。
僕は病棟のほうに上がり、松永さんに面会する事にした。
217:03/09/16 06:07 ID:???
松永さんの病室のドアの前で、僕は躊躇していた。
以前の記憶は、バラバラになったとボスが言っていた。
とにかくドアをノックして、中に入ることにした。
「あ、どうぞ。」松永さんの声が聞こえた。久しぶりに聞いた気がする。
まだ、昨日の事だと言うのに。僕は病室に入った。
どうやら個室らしく、松永さんはTVを見ていた。
「あ、こんにちは。えーっと・・・すみませんお名前を教えて下さい。」
そうだ。僕のことも顔は覚えていても、名前は忘れているんだった。
「僕は朝山恭一郎と申します。こことは別で診療所をやってます。」
松永さんは、少し考えて、
「じゃあ、お医者さまなんですね。朝山さんは。」
松永さんにそう呼ばれて、涙が出そうになった。
そう言って見上げている松永さんが、別人に見えたのだ。
「はい。そうです。具合はどうですか?松永さん。」
「うーん、頭の中が立体のパズルのようになっているような感じです。
 ひとつ思い出すごとに、それが組み合わさっていくような・・・」
なるほど、確かに記憶がバラバラにされたのなら的を得た答えだと思う。
「朝山さん。お茶飲みますか?今煎れますけど。」
お茶好きは変わっていないんだな。そうだ、間違いなく松永さんなんだ。
僕はそう確信した。訓練が終わったら、疲れていてもここへ来ようと思った。
「いえ、今日はこれで失礼します。また明日来ます。」
「え、明日もいらっしゃるんですか?ありがとうございます。」
僕は挨拶をして、病室を出た。
すると、ボスが立っていた。ボスは僕に近づくと、
「どうかね?記憶のプロから見て。」
「まだ、時間はかかるでしょうが、訓練と両立させて頑張ってみます。」
「そうか。とりあえず2週間後。それが期限だ。奴らも我々も準備が整う。」
「わかりました。なんとか追いつくまでには辿り着いてみせます。」
そう言うと、ボスは去っていった。2週間か・・・
変化1 組織 了
218(-_-)さん:03/09/16 14:46 ID:???
age
219
下げます。