少女魔法学・リトルウィッチロマネスク ダイス4個目
ある日のCLANNAD製作会議で、麻枝は言った。
「涼元、お前の担当はこれだ。少ないけれどその分じっくり書いてくれ。お前はその方がやりやすいだろう」
そして数枚のプロットを手渡し、あまり会社には来なくていいと涼元の耳元で囁いた。
「えっ、ずっと家で書いていていいんですか?」
涼元は当然の疑問を発する。
「ああ。そうだな、出社は月1、2程度でかまわんさ。なぁに心配するな、どこにいようがやることは同じだ。
社長には俺から話をつけとく。お前はお前の能力を存分に発揮してくれ」
「わ、わかりました。ありがとうございます。頑張ります」
嬉しそうにそう言って、涼元は去っていった。
人付き合いの苦手な彼は、職場よりも家で一人で仕事をする方が性に合っているのだ。
麻枝はもちろんそれを知っていた。そして彼は、そんな涼元を憎んでいた。
それは、かの大作「AIR」のシナリオに関し、涼元が執拗に口を出し続けたことに端を発する。
麻枝は自らの作品に他者が介入することを好まない。それが根底のアイデアに関することならば尚更だ。
だがそんなことを知ってか知らずか、まるで自分がいなければこの作品は完成し得ないとでも言うように、
涼元は麻枝の考え出したシナリオに対し、自発的に意見をし続けた。
結局はそのおかげで「AIR」は大成功を収めたわけだが、麻枝が満足するはずはない。
彼の憎しみは日に日に増していき、遂にはある計画が彼の頭の中に宿ったのだ。
数年後、無事CLANNADは発売された。
ある日涼元は、自分の書いたシナリオが好評を博していることをネットを通じて知り、有頂天になっていた。
麻枝はそんな涼元を見て薄笑いしつつ、馬場社長の元へ向かった。
「社長、これを見てください。…どう思われますか」
そう言って麻枝は、涼元の出社記録を馬場社長に見せた。
「なっ…!これはどういうことだ麻枝くん?涼元の奴、まるで仕事をしていないじゃないか…」
「彼は分担したシナリオの8割を落としたんですよ。だからここまで延期してしまったんです」
「…そうか。彼には期待していたんだが、どうやら見当違いだったようだな」
馬場社長がうつむくその横で、麻枝の瞳は黒く輝いていた。
涼元は解雇を言い渡された。9月のある雨の日のことだった。
そして翌年、戦いは始まる…。