斬魔大聖デモンベイン 四号

このエントリーをはてなブックマークに追加
267名無しさん@ピンキー
>>258から話を膨らませてみますた


―その夜。

寝静まった事務所、デスクで一人書類に向かうイタクァ。
目を通し、何事か書き加え、判をつき、ファイルに綴じ、また目を通し…
そんな動作を幾度繰り返したろうか。
物音と気配。ふと顔を上げると―――
「お疲れさん。コーヒーでもどうだ?」
湯気立つカップを両手に、魔導書の主はそこにいた。
「主殿か。そのような気遣いは――
「手伝うよ。こんなんでもいないよりは少しはマシだろ?」
言ってカップをデスクに置き、書類の束とファイルを1つ手に取る。
「不要だ……と言っても無駄なのだろうな」
九郎のお節介はいつもの事だ。こういう事よりも、被害を出さない方に
気を遣って欲しいとイタクァは思う。
デスクの横を借りるような形で椅子を置き、腰掛けて気が付く。
明かりが無い。デスクのライトスタンドはイタクァの手元を照らしているし、
かと言ってこんな深夜に部屋の明かりをつけるのも――
ボッ
不意に眼前が明るくなる。座ったまま顔を上げると――
「これで不足ないか?」
指先に小さな火の輝きを灯した、クトゥグアの姿。
「なんだ、起きたのか――ああ、サンキュな」
輝きはクトゥグアの指先を離れ、座った九郎のやや上、手元を照らし出すのに都合の良い位置に収まった。
クトゥグアも椅子を1つ持ってきて、背もたれを前にして座る。
そのまま頬杖をつき、欠伸を一つ。こちらは手伝う気は無いようだ。
とりあえず手元を片付け作業スペースを作り、転がっていたペンを執る。
書類を並べ目を通し、ペンを走らせ――ややあって。
金額の計算をしようとして、九郎はふと気づいた。
「イタクァ、電卓使ってないのか?」
先ほどからの間にも手を休めていないイタクァの手元には電卓は無い。
「…妾を何だと思うておいでか…不要ゆえそちらで使うと良い」
あきれたように言い、引き出しから事務所に1つきりの電卓を取り出し渡す。
「ああ、すまねえ。流石に早いなぁ」
この事務所にパソコンがあれば、随分と便利になるのだろうが。
コーヒーメーカー1つ買うのにも難儀した現状、そんな余裕があるはずもなく。
268名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 10:33:44 ID:zrDsqKQS
「ふぅ…毎度毎度、仕事の度に何がしかモノを壊す――
嘆息と共に眼鏡を上げ、ついでに眉間を解しながら言うイタクァ。
「その処理に手が要るとは言え…流石にこき使いすぎではないのか?」
そのままの流れで、つい何とはなしに少し離れた場所にあったカップを取り口をつけて―
「う…一応気をつけては――
「熱ッ」
何度となく繰り返された弁解の途中。弾かれたようにカップを口から放すイタクァ。
「え、ごめん…そんなに熱かったか?」
淹れてからそれなりに時間は経っている筈だ。湯気はまだ上がっているが、そんなに熱いわけでも…
「―あ」
そこまで考えて、イタクァの素性に思い当たる。
普段は冷まして(と言うよりは冷やして)から飲んでいる筈だが、うっかり勢いで口をつけてしまったらしい。
横ではクトゥグアがくすくすと笑っていた。
「〜〜〜〜ッ」
手にしたカップに霜が降りる。
ヤケクソのように急速に冷却され、あっという間に文字通りのアイスコーヒーと化すカップの中身。
いささか乱暴にカップを置く。芯まで凍ったコーヒーは零れもしない。
涙目で口元を押さえたイタクァが、抗議する様な視線を九郎に向け…
ようとして、視線の途中にいたクトゥグアと目が合う。
「―――――」
口を開けて、ちょいちょいと舌を指し示し、次にこちらに目配せをするクトゥグア。
それで何やら得心したのか、二人して笑みを浮かべる。
―――嫌な予感が…
デスクから立ち上がり、こちらへ近づいてくるイタクァ。
何事か、と思う間もなく首筋に腕を回され、顎に手が添えられる。
その動きに従って横を向けば、艶然と微笑むイタクァの顔。
「甞めておくれ」
言って舌を見せ、顔を近づけてくる――
「なッ――ンっ!?」
声を上げかけて、直後に唇が触れる。口腔に侵入してくる、冷たい舌。
「大きな声を出すな…“母”が目覚めては拙かろう?」
笑いを含んだ声。視線だけを向ければ、こちらも立ち上がり近づいてくるクトゥグアの姿。
「ン――ンンっ!?」
舌に絡みつく舌。器用に、眼鏡が当たらないように、密着してくるイタクァの唇。
ひやりとした唾液が、送り込まれる。
「む―――ぷはっ! ふ、二人して何…を…」
一通り口内を冷気に蹂躙されてから、やっと開放され顔を離すと。
いつの間にか、クトゥグアの顔も間近にあった。
熱っぽい視線で覗き込む、その瞳の奥に灯るのは――
「ここ最近、ご無沙汰だとは思わぬか? つれないではないか、なぁ――ご主人様(マスター)」
「え…ちょっ…」
「“母”とは仲睦まじいようだが…娘たる我等にはその寵愛、分けてはくれぬのか…?」
ガタンッ
椅子からずり落ち―否、床に引きずり降ろされる。
絡みつく、白磁と赤銅の肢体。
「日々、主の手足となってせっせと働く僕(しもべ)に…」
纏わりつく、冷気と、熱。
「ここらで相応の労いが欲しいものだな?」

――其は、あの日の再現――
269名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 10:38:09 ID:zrDsqKQS
うーん、本編ぽくしようとして大失敗
視点が混乱しまくり
やはり立ち絵や顔グラがあるとないとじゃ全然違うなー
そーいやアトラック=ナチャとニトクリスの女王は喋らなかったが
どんな口調なのだろうか