秋俊「グォォォォォラァァァ!!!!!!!!!」
リンとの出会い、アイとの再会、そして悪夢のような妖花との戦いから半年。
魔法戦士達との別れに一抹の寂しさを感じつつ
平和な日常を取り戻した俺はかろうじて大学受験に合格し
ようやく浪人生活に終止符をうち、入学式を来週に控えていた。
ドスン!
秋俊「で、これをっここにっ、と」
そして俺は先日見つけた大学の近くの安アパートへ引越し、
いまは荷分けの真っ際中なのだ。
秋俊「ふぅっ、これはドコに置こうかな」
引越しは初めてではないし、前の部屋が狭かったおかげで荷物は結構少なく
昼前に作業は終わりそうだ。
そうしてテキパキと重い家具を運んでいると
去年の夏、メグ姉ちゃんの引越しの荷物が異様に重かったのを思い出す。
秋俊「・・・・あのダンボールの中身は一体何だったんだろ?」
しばらく経った後も開封された様子もなかったし
普通の人間の荷物ならば、どうせ家電や家具のたぐいと分かるが
魔法戦士の荷物ともなると・・・
秋俊「あぁ、チクショウ気になる。そうだ次会った時に忘れずに聞い・・・・・・うっ」
と、気付いた瞬間もう遅い・・・ヤバイ。まただ。
それは考えれば考える程辛い・・・。気が滅入りそうだ・・・。
そう、いつも意識して気にとめないよう努力しているのだけれど、
彼女達に再び会える日が来るかは分からないのだ。
最初のうち、きっとアイ達は向こう側での騒ぎを収めていつか戻ってくると
ただただ信じていたのだが、日を追うごとにその予想も不安を募らせていった。
向こう側がどういう状況にあるのかは詳しく知らないが
たくさんの仲間がすでに殺されていたというのだから
非常に難しい状況なのだろう。それに俺にはアイ達の安否を知る手段はない。
俺の彼女達への想いに比例して否が応でも心配は増していく。
これまでは受験勉強に打ち込むことで何とか平静を保っていられたが、これからは・・・
秋俊「はぁ、俺も進歩しねーな。何度も何度も同じ事で悩んで。
アイ達はきっと戻ってくる。俺が信じなきゃこの世界で誰が信じるってんだ
・・・って俺しかいねーじゃん、アッハッハ」
『ピーンポーン』
秋俊「っと(ん?引越し早々新聞勧誘か?)ハーイ、今いきます」
引越し先は俺の保証人になってもらっている結亜の家族にしか教えていないし
その家族も引越し当日に来るような人でもない。
ここはドア越しに適当に追い払おう。
秋俊「はい、どちら様ですか?」
【分岐】
××「1.読売っす
2.オッ・カッ・チーン!
3.おにーちゃーん開けて~
4.秋・・・と・・・
5.わたしはだぁれ?」
続く(かも)
とりあえず1で
1は、秋俊の驚く顔を想像してワクワクしながらバレバレの作り声で
「読売っす~」と新聞勧誘のオッサンを装っているリン。
じゃあ3は、苦しい若作りの声で結亜の物まねするメグ姉だな。
1ルート
××「読売っす~」
笑いを押し殺したような、鼻に詰まったような声がした。
はぁ、やれやれ予想はしてたけど着いて早々勧誘かよ。
まったく熱心なことだ。
一応俺には両親が残してくれた遺産というものがあるおかげで
日々不自由を感じない生活をすることができるが
今はその金には手をつけないつもりでいる。
だから新聞なんて大学の図書館で読めば事足りるし
配達してもらうなんてもっての他だ。悪いが断ろう。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・って!
さも鼻をつまみながら!!ひねり出したような声で!!
新聞勧誘に来る!!!女の子なんているか!!!!!?
俺にはこの声の持ち主の心当たりがある・・・
それにこういうバカを平気でかましてくれるヤツ・・・
××「ちょっとーアキトシさーん、聞いてますー?」
確定。
断言する。
引越し当日に、いきなり名前を呼ぶ新聞勧誘員なんていないだろ・・・。
しかしその確信は、今まで俺が抱えていた不安を全部取り去ってくれていた。
生きていた!戻ってきてくれた!
俺は神様にありったけの感謝の気持ちを送り、ドアノブに手をかける。
が、ドアの向こうにいる人物のあまりの演技の稚拙さに対して
ちょっとした意地悪な気持ちが芽生える。
秋俊「あー、読売ですか。実は彼女がそちらの記者をやってるんで
もう間に合ってるんですよ」
ククク、阿呆め。ガキんちょのクセに俺を騙そうなんて百年早いんだよ。
アイツの性格は分かってる。このまま粘ってれいば、じれったくなり
変な小細工なんて諦めて即座に飛び込んでくるに違いない。
だが俺の予想とは外れた声がすぐに返ってきた。
××「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
悲鳴だ。
な、何があったんだ!?
俺は急いでカギを開けようとすると背後に恐ろしい悪寒を感じ
ドアに手をかけたままの姿勢で硬直してしまった。
全身に電流が走ったような感覚。
この感覚には憶えがある・・・
振り返らなくても分かる。窓の外に何かが、いる・・・
なんとか気力を振り絞って体を反転させた俺の目に飛び込んできたのは
カーテンのレースごしに映る人影だった。
その三階のベランダに突如現われた何かに対して俺は・・・
1.命乞いをする
2.挨拶する
2.何か凶器を!
2が2つ……
ということで
「挨拶して時間を稼ぎつつ凶器を探す」
っていうのはアリですか?
1番は膨らまね・・・ OT2
最も可能性薄そうな5のほうが妄想広がる・・・ OT2
生き物は生命の危機を感じるとなんとしてでも生き延びようとする。
まさに今の俺がそうだ。
ここは時間を稼ぎながらソレと対峙しつつ何か武器になりそうな物を探す。
秋俊「こ、こんにちは」
我ながら間抜けな切り出し方だ・・・
相手は凄まじい殺気を放ち、
三階のベランダに一瞬で表われたのだ
それに対して普通に挨拶するとは。
△△「黙れ」
有無を言わさぬ冷たい声がした。
一気に鳥肌が立ち、鏡を見ればきっと俺の顔は青ざめているだろう
俺はまた硬直しそうになる体を必死に奮い立たせて視線を巡らせる
引越しの荷物のダンボールから出しかけの金属物が目に入った。