月姫その7

このエントリーをはてなブックマークに追加
218名無したちの午後
「諸君、私は翡翠が好きだ」
「諸君、私は翡翠が好きだ」
「諸君、私は翡翠が大好きだ」

「無表情な立ち絵が好きだ。ちょっと非難するような目をした立ち絵が好きだ。頬を赤らめ俯いた立ち絵が好きだ。胸に手を当て心配そうな表情の立ち絵が好きだ。酒のグラスを持ってぽーっとしている立ち絵が好きだ。いたわるような目つきで胸元に両手を引き寄せた立ち絵が好きだ。真っ赤になって下を向いてしまった立ち絵が好きだ。振り向きながら鋭い目で睨んでいる立ち絵が好きだ」

「志貴の自室で、豪奢な絨毯が引かれたロビーで、隅々まで磨かれた食堂で、人気のない長い廊下で、時間の停滞した槙久の書斎で、黄昏ゆく門前で、彼女には鬼門であるはずの台所で、ひっそりと佇む森の離れで」
「この屋敷で行われるありとあらゆる翡翠の労働が大好きだ」

「秋葉の後ろに控えた初対面の彼女が値踏みするような冷たい視線で私を一瞥するのが好きだ」
「朝起きた瞬間にベッドの脇に控える彼女と目があった時など心がおどる」
「彼女の操る直截な言葉が私の自尊心を傷だらけにするのが好きだ」
「悲鳴を上げて燃えさかるフライパンから飛び出してきた黒焦げのホットケーキを目にした時など胸がすくような気持ちだった」
「こちらをなじるようなジト目で蔑みを込めて見られるのが好きだ」
「感極まった彼女が目の前の指を何度も何度もチュパチュパとしゃぶる様など感動すら覚える」
「慣れないお酒にぽっと頬を染めた様などはもうたまらない」
「倒れた私を献身的に看病してくれる彼女を意固地になってまるで邪魔者のように扱うのも最高だ」
「職務に忠実な彼女が健気にも寄せてくれた信頼を門限破りや深夜の徘徊で木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える」
「機嫌の悪い雇い主に叱責されるのをじっと堪えている矜持が好きだ」
「淫夢を見ている紅潮し呼吸の乱れた寝顔をじっくりと観察されるのはとてもとても恥ずかしいものだ」
「心地よい弾力で押し返してくる控えめで形の良い胸が好きだ」
「お天気吸血鬼とナイチチ妹に蹴落とされ毎回人気投票3位を這い回るのは屈辱の極みだ」

「諸君、私はメイドを、翡翠のようなメイドを求めている」
「諸君、私に付き従う月姫ファンの諸君、君達は一体何を望んでいる?」
「更なるメイドを望むか?」
「情け容赦のない辛辣で率直なメイドを望むか?」
「純粋無垢な毒舌の限りを尽くし、三千世界の暑苦しい野郎どもを自己嫌悪の地獄に叩き込む翡翠のようなメイドを望むか?」

「翡翠!!」
「翡翠!!」
「翡翠!!」

「よろしい。ならば翡翠だ」
「我々は満身の力を込めて今まさに差し出さんとするしゃぶってもいいように綺麗に洗った指だ」
「だがこの有馬家で8年もの間堪え続けてきた我々にただのメイドではもはや足りない!!」
「翡翠を!!一心不乱に働く本物の翡翠を!!」
「我らはわずかに同人ゲーの愛好者、ゲーマー人口の1%にも満たない社会不適合者だ」
「だが諸君は一騎当千のおたく野郎だと私は信仰している」
「ならば我らは諸君と私で総兵力100万と1人の翡翠スキーとなる」
「我々を食い物にし商業主義にあぐらをかいている連中を叩き起こそう」
「メイドとは名ばかりの小娘どもが氾濫する企画ゲーを垂れ流す連中の眼(まなこ)を開けさせ思い出させよう」
「連中にメイドの良さを思い出させてやる」
「連中に我々の望むメイドを思い出させてやる」
「同人ソフトの中には奴らの哲学では思いもよらないメイドがいる事を思い出させてやる」
「一千人の翡翠原理主義者の戦闘団で」
「有明を燃やし尽くしてやる」

「最後の大隊、大隊指揮官より全空中艦隊へ」
「目標、東京ビックサイト」

「第60次コミックマーケット、状況を開始せよ」
「征くぞ、諸君」