スタジオメビウス Part19

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648名無したちの午後
前作「SNOW」が一流を模倣して一流を目指した作品とすれば、「友恋」は二流を目指してキッチリ二流を
作った作品。段階を追って紡がれるべき恋が、いきなりすっ飛ばして、最終段階から始まったため、自分
が今している恋が、本当の恋なのか、主人公も芽依子も分からなくなってしまった・・・その悩みと解決まで
をコメディタッチで描く。「SNOW」プレイ必須の「プレーヤーは芽依子の悩みを類推できるが、主人公は芽
依子の悩みを理解できない」・・・その乖離性を楽しむ物語。

前作「SNOW」の正式な続編。SNOWにおける最重要キャラクターでありながら、その因縁が唯一、断ち切
れなかった芽依子をメインヒロインに迎えた物語。・・・とりあえず、SNOWで迎えた感動を持ち越すと、OP-
Movieで魂抜けるかもしれないので、キチンとリセットして物語を読むべきだろう。

まず、最初に言うことは、この物語は「SNOWのクリア必須」の物語だ・・・と言うこと。パッケージは、SNOW
ダイジェスト版収録の「友達以上恋人未満 PremiumEdition」と「通常版」があるが、このPremiumEdition版
のSNOWダイジェスト・・・コレ、駄目。桜花ルートを単にDVD-Movieで収録してあるだけで、レジェンド編が
入っていないので、芽依子が誰か分からない。・・・この物語、芽依子がなぜ、あーゆー性格で、巫女なん
ぞやっているのか、理解していないと、非常に薄っぺらいシナリオだと思ってしまうだろうと思う。この物語
は、「プレーヤーは芽依子の悩みを類推できるが、主人公は芽依子の悩みを理解できない」・・・そういっ
た乖離を楽しむ物語であって、そもそもそ乖離ができないプレーヤーにとっては、ただのラブコメにしか見
えない。その意味では、プレーヤーを選ぶ物語である。

その物語は、恋愛の順番を“違えてしまった”恋人たちの物語。

基本的に展開は、ドタバタ劇とラブコメディ。そのため、絵柄は前作「SNOW」に比べて、丸くなっている。
原画が違うのだから、それはそうなのだが、今回は適切だといって良いだろう。
649名無したちの午後:04/10/01 19:29:03 ID:s3bXAuEW
 「偽りの衣は橘芽依子。名は鳳仙。」(---パッケージコピー)・・・いきなり、SNOW最大級のネタバレから
始まるお話は、芽依子のための、芽依子による物語。そのため、基本的なシナリオは、二つしかなく、他
のヒロインのエンドは蛇足のようなものである。「友達以上恋人未満」とタイトルにあるように、要は、恋愛
の順番を“違えてしまった”恋人たちと言い換えられる・・・あくまで主人公・翔平と芽依子の姿を描く。通常
、段階を追って紡がれるべき恋が、いきなりすっ飛ばして、最終段階から始まったため、自分が今している
恋が、本当の恋なのか、主人公も芽依子も分からなくなってしまった・・・その悩みと解決までが、物語の
大筋である。

Mebiusは既存作品からの模倣の巧みさを前作「SNOW」で証明したが、今回も同じ。どこかの少女漫画原
作のTVアニメのようなOP-Movieから、憑かれると発情する「くくり」の設定、終盤にいきなり怪獣モノにな
ってしまう展開まで、(具体的に名は挙げないけど、)何か見た覚えがあるものを題材にしている。

芽依子の描写についてはさすがに秀逸。スタッフは、キチンと芽依子を研究し尽くしている。芽依子なら
ばこの場合、何を言うのか、みんなですり合わせて描いたのが伺える。だが。それは、SNOWをクリアを
前提にしていないと、全然分からないのが問題といえば問題。

SNOWから継続して登場するキャラクター全員が芽依子と「仲の良い」翔平を歓迎するのか?・・・芽依子
はなぜ彼方と仲が良いのか?・・・芽依子はどうして彼方の前では翔平によそよそしいのか?・・・誠史郎
はなぜ翔平を家に置こうとするのか?・・・そもそも、なぜ、芽依子は翔平を選んだのか?・・・その理由が
、SNOWで彼女の本来の姿を知らないと全く分からない。彼方と澄乃の素性についてはラストで語られる
としても、とってつけたような理由に聞こえるだろう。
650名無したちの午後:04/10/01 19:29:35 ID:s3bXAuEW
「みんな、こんなこと、してたのかっ・・・あう、ああ、あぁあっ・・・つぐみもっ・・・澄乃もっ・・・」
(---4月13日:芽依子と無理矢理初エッチ)

この台詞、Hシーンでの我を忘れた芽依子の言葉なのだが、コレ、芽依子ではないと言えない台詞。つま
り、さくらとみかんの誕生の経緯を見ている人間ではないと、コレは言えない。実際、今回の作品では、ほ
とんど、さらりと描いたテキストから、芽依子の想いが読み取れる部分が多い。このHシーンの前・・・

 「大体アレだ。この村にはな?私と一緒に飲んでくれる者がおらんのだ」・・・芽依子が吐露するこの部
分は、かなり変なのだ。芽依子というキャラクターを見ていれば、一緒に飲める「友人」ぐらいいそうなの
だが、現実はいない。コレに対して、「可愛いところもいっぱいあるのに」と翔平は言う。これが芽依子に
とって、どれほど大きな意味を持つ言葉なのか、当の本人は分かっていない。何気にこの物語の大きな
転換点、非常に重要な場面なのだが、あまりにさらりと書いているので、SNOWクリアプレーヤーにしか分
からない。

 「プレーヤーは芽依子の悩みを類推できるが、主人公は芽依子の悩みを理解できない」その乖離を楽
しむ・・・と言うのはこの点だ。物語は結局、これがずっと終盤まで(正確には4月21日まで)繰り返される。
いわゆる芽依子の戸惑い、くくりの発情と自分からの欲求が、ごっちゃになっていく過程を、本当にラブコ
メオンリーで描いているので、そのHが連続することそのものに意味があることが、分からない人にはつら
いだろう。
651名無したちの午後:04/10/01 19:30:07 ID:s3bXAuEW
例えば・・・芽依子は笑わない。

芽依子は笑わないわけではないが、所謂「心からの笑い」・・・「満面の笑み」というのものをしない。注意
深く見ていれば、芽依子は他のキャラクターが笑っても、ほとんど微笑で済ませていることに気づく。OP-
Movieでにこやかに笑う芽依子と、実際の物語上の芽依子には落差があり、最初から製作陣は違和感を
与えるように物語を構成している。ハッキリ言ってしまうと、今回のサブヒロイン、さくらとむつきはその違
和感をプレーヤーに気づかせるために存在している。この物語を最初から見直すと、この物語のキャラ
クターは皆、よく笑う。さくらも、むつきも、つぐみも、みかんも、主要登場人物は「満面の笑み」というのを
普通に表情として示す。それに対して、芽依子はどうだろうか?一枚絵CGを見直しても、笑みを浮かべ
る場面は、わずか、2場面。(CG上は3場面だが一つは回想)しかも、一つは「友達以上恋人未満」として
の笑み、再スタートEDのものであるため、本筋のルートではたった一場面しかないことになる。

 芽依子「お前の手は、温かいな?」

 翔平 「・・・そうか?」

 芽依子「うむ。なかなか心地良い。」

 満面の笑みを浮かべ、微笑みかけてくる芽依子。

 芽依子「こうしていると、いい夢が見られそうだ」

(---4月19日:同じ布団でおやすみ芽依子)

主題だけを言えば、この瞬間、「少女の雪は解ける」のだ。だから、書くべきことは、この19日の時点で
終わっている。HappyENDルートの傍流ルートが巨大くくりを描かずに、結構、唐突に終わってしまうのは、
もう物語を紡ぐ必要がないためだったりする。
652名無したちの午後:04/10/01 19:30:39 ID:s3bXAuEW
製作陣の意図は、芽依子の表情描写が多彩であること、それをそのままフェイクに仕立て上げている。
・・・本来、芽依子は「無表情」なキャラクターなのだ。この物語は、端的に言ってしまうと、そんな芽依子が
、「満面の笑み」を浮かべられるまでの物語となる。彼女の場合の「満面の笑み」は依存の象徴であり、
彼女がやっと19日に「相互扶助」としての「恋」を受け止める。何で連続してHシーンを描くのかと言えば、
通常状態で芽依子が本音を出さないため。その仮面を剥ぐにはどうすれば良いか?・・・と考えたときの、
その結論としての怒涛のHシーンであり、「友達以上恋人未満」から物語を紡いだのは、SNOWとは全く別
ベクトルの描き方ではあるが、だんだん打ち解けていく芽依子の情景描写と、その実用性を両立した、上
手い描き方だったと言ってよいだろう。

つまり、21日以降は、単にその「恋」を芽依子と翔平が自覚するまでの物語で、主題に比べれば・・・もう、
どう描いても良かったかもしれない。(だから、HappyENDルートでも、BADENDルートでも、かなーり、投げ
やりな展開だと思う。)

・・・SNOWが一流を模倣して一流を目指した作品とすれば、友恋は二流を目指してキッチリ二流を作っ
た作品。SNOWの成功がこのメーカーにとっては、「偶然」であることを自覚し、分相応に別路線で独自
性を出したことは、これからのMebiusにとっては、大きなプラスになると思う。少なくとも、この作品で
Mebiusの路線の裾野は確実に広がった。それは「泣きゲー」というジャンルに縛られた、幾つものメーカ
ーに比べれば、幸福な結果になるだろう。

その意味では、狙って創ってきた「凡作以上良作未満」な作品なのだ。
653名無したちの午後:04/10/01 19:31:29 ID:s3bXAuEW
以下、蛇足。

終盤については・・・あまり言わない。いきなり、大怪獣モノですかいっっっ・・・と画面にツッコミを入れた
人々が目に浮かぶが、主題自体はもう書き終わっているので、以降は、もう、趣味の世界だっただろう
なぁ・・・と弁護してみたり。生贄ネタまで想像がついたが、VS巨大くくりが、あの形になるとは思わなかった。

BGMは多分、Mebius唯一の燃えソングになるだろう「オモイノチカラ」・・・・・・コレ、勿体無くなくないッスか
?数クリック分、時間にして、30秒もかからずにフェードアウト。んで、くーの一撃で怪獣消滅。・・・・・・
大爆笑する以外にどうしろと?くーってそんな思われていたの?・・・とか・・・某有名モンスターアニメに
似たような・・・とか言っちゃダメですかね?