「裁判ももう今日で三日目だぞ、いい加減になかなおりをしたらどうだ」
山ねこが、すこし心配そうに、それでもむりに威張って言いますと、エロゲーどもは口々に叫びました。
「いえいえ、だめです、なんといったって泣けるのがいちばんえらいんです。そしてわたしがいちばん泣けるお話です」
「いいえ、ちがいます。エロいのがえらいのです。いちばんエロいのはわたしです」
「ボリュームだよ。ボリュームたっぷりなのがいちばんえらいんだよ。わたしがいちばん大作だからわたしがえらいんだよ」
「そうでないよ。わたしのほうがよほどバラエティに富んでいると、きのうも判事さんがおっしゃったじゃないか」
「だめだい、そんなこと。CGがきれいなのだよ。CGがきれいなことなんだよ」
「ゲーム性のたかいものだよ。ゲーム性できまるんだよ」
もうみんな、がやがやがやがや言って、なにがなんだか、まるで蜂の巣をつっついたようで、わけがわからなくなりました。
そこでやまねこが叫びました。
「やかましい。ここをなんとこころえる。しずまれ、しずまれ。」
山猫が一郎にそっと申しました。
「このとおりです。どうしたらいいでしょう」
一郎はわらってこたえました。
「そんなら、こう言いわたしたらいいでしょう。
このなかでいちばんバグが多くて、絵もお話もめちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらいとね」
山猫はなるほどというふうにうなずいて、それからいかにも気取って、どんぐりどもに申しわたしました。
「よろしい。しずかにしろ。申しわたしだ。
このなかで、いちばんどうしようもなくて、バグでめちゃくちゃで、ストーリーもシステムもてんでなっていなくて、
絵は目玉のつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ」
エロゲーは、しいんとしてしまいました。それはそれはしいんとして、堅まってしまいました。