2002年11月購入検討&感想スレッド その4

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557名無したちの午後
おすぎです。
今回ご紹介するのはすたじお緑茶さんの『夏日』。夏日と書いてカジツと読みます。
まず考えてみて欲しいんだけど、「知的障害者との恋愛」というテーマでどんなストーリーが思い浮かぶかしら。
細部はともかくとして、おそらく誰もが同じようなストーリーを考えると思うのね。
仮に障害者を弄んだり、他のキャラクターの引き立て役としたりするようなストーリーなら
歯牙にもかけられないでしょうね。つまり、
 予 定 調 和 が 想 定 さ れ 得 る テ ー マ な の !
だから、実はこの作品のテーマはそこにはありません。そこは押さえておいて欲しいわ。
この作品で特筆すべきは「キャラクターの描写」。とにかく3人のヒロインが魅力的なの。
知的障害者である「ちや」に対する感情一つとっても、憐憫・慈愛・憧憬・嫉妬、それぞれの感情が入り混じった上で
「好き」や「嫌い」と語るわけ。だからキャラクターがとても自然体で、作り物の感じがしないの。
言ってみれば「記号」になっていない、等身大の彼女たちが確かに存在するのね。
プロットそのものは無難にまとめられていて可も無く不可も無い程度。
それが、個別のシナリオに分岐してからも他のキャラクターがきちんと絡んでくることで
とても素敵な雰囲気を醸し出すことができているのね。
主人公も含めて4人だけの閉じた世界なんだけれども、結果的にそのシンプルな構成によって成立し得たんじゃないかしら。
演出面にしても、くどくどとなにかを説明するようなことが無いのね。
例を挙げれば「鈍感」ですまされるようなエピソード。
容易に想像がつくようなことでしかないかもしれない。でも、そこに
 脳 内 補 完 と い う 名 の 妄 想
が入ることで、そこをプレイヤーに委ねることによって、ストーリーに深みが増しているのね。
変に思わせぶりなだけじゃない、はたまた説明不足に陥らないだけの文章力といったらいいかしら。
プレイヤーの想像を掻き立てるのがとても上手で好感が持てるわ。
はっきり言ってプロットや構成はまだまだひよっ子レベル。それでも将来性を感じさせてくれます。
『夏日』には「奇跡」や「萌え」はありません。だからこそ、私はこの作品を支持します。
私の評価は、5800円。
おすぎでした。