月姫その17【空の境界(竹箒)統合】

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895夢我
「トオノ対戦・魔性の競技麻将編」

―――ふーんだ。麻雀だったら琥珀の姦計になんかひっかからないんだからっ。
―――その時は私一人の大トップで、兄さんを含めてみんなまる裸にしてさしあげます。
・・この時点で悪寒、違和感、もうあかん、その他もろもろ感じ取っていた。
麻雀で負けてまる裸なんてどこから得た知識なのだろうか?
いや、どこからも得られないからこそ間違った知識を身に付けたのかもしれないが。
きっかけはいつだかの鬼ごっこだった。
思い出したくもないが、僕はゲームの戦利品として扱われたのだ。
そのときから秋葉のなかに、僕を狙うハンターとしての人格が出来ていたのだろうか。
そして今日、琥珀と翡翠の誕生日パーティーで酒を飲みすぎた秋葉の提案。
男のロマン、脱衣麻雀だ!!
いや、秋葉や琥珀や翡翠が嫌いなわけではない。
僕も健全な男だし、脱衣麻雀には憧れるのだが、問題は負けたときの代償だ。
脱ぐものがなくなった人は、トップの命令を一つ聞かなければならない。
・・それだけは、何としても避けたい。
「兄さん・・やらないんですか?」
やる!?
ああ、僕は酒に酔っているな。
妹のそんな言葉で硬直してしまうなんて。
「やりましょうよ、志貴さん」
そういって琥珀さんが後ろから抱き付いてきた。
微かな鼻息と、胸の感触。
首にまわされた白い、白い腕と、琥珀の香り。
酒で麻痺した味覚を除いた僕の4つの感覚が瞬時に支配を受ける。
「琥珀・・・!!!」
秋葉の怒鳴り声。
「トップを取れば志貴さんは奴隷になってくれるんだから、いいじゃないですか」
琥珀さんと秋葉の会話も耳に入らない。
いつだったか、有彦のバイクの後ろにのせてもらったとき、「危ないからちゃんとつかまってろよ」
って言われたなぁ。
あのとき、僕の体は有彦にピッタリくっついていて、「ああ、こんなふうに女の子を後ろに乗せたい」
って思ったっけなぁ。
「ああ、いいなぁ」
「いいんですか。では早く始めるとしましょう」
・・・!?
ちょっと待った秋葉、と言おうとしたが、もはやそれは不可能だった。
「私、鬼になりますから」
「やってごらんなさい」
すでに琥珀と秋葉は激しいデッドヒートを繰り広げており、そこに介入の余地はなし。
飛んで火にいる夏の虫が目に浮かぶ。
―――ああ、今夜はこんなにも、月が、綺麗だ・・。
僕は、とりあえず現実逃避をしてみた。
896夢我:02/03/16 03:30 ID:seE2b7l3
現実逃避と後悔はすべからくセットである。
ただでさえ鬼姫・秋葉と策士琥珀、デジタルマシーン翡翠に囲まれて勝てるかどうか分からないのに
平等性を保つことさえ忘れてしまうなんて・・。
脱衣麻雀ではもちろん、来ている福の数、もとい着ている服の数が重要なポイントとなる。
故にそれらは同数でなければならない。
だってのに・・・。
「畜生!いつからそんな太ったんだよ翡翠!!」
「私はただ姉さんにそうしろと指示を受けただけです。志貴様こそ何故そんな薄着なのですか?」
女性陣が全員、靴下とブラとパンティーをつけていたとして、ポイントに換算すると
秋葉7、琥珀翡翠が両方8、で靴下をはいてない僕は5ってところか。
・・・もちろんブラは付けてないからな。
そんなこんなでゲームは始まった。
一局目は好配牌をもらった僕が、難なくツモあがった。
言い忘れたが、この麻雀ではツモだと全員が一枚づつ、ロンだとその人から2枚取ることが出来る。
という訳でみんな一枚づつだ。
秋葉は靴下を脱いだ。
まぁ無難なところだな。
琥珀と翡翠は・・・!?
オビ!?
服をしばっているオビ!?
あ〜れ〜生娘コマ回しじゃ〜のオビ!?
僕は泣きそうになった。
しかも秋葉がまた「やるじゃない」という顔を見せる。
秋葉もまだ何か仕込んでるのか・・。
一局目を終わって秋葉6(+α)、琥珀翡翠8(+α?)、遠野志貴5という結果になった。
897夢我:02/03/16 03:30 ID:seE2b7l3
はぁっっ!!と秋葉が一呼吸置くと、その髪が真紅へと変貌していく。
どうやら本気らしい。
しかし麻雀というのは来ている福の数、もとい流れがすべてを左右する。
そして一度出来た川の流れは、曰く、巨大な岩も捻じ伏せるほど強力で、簡単に変わるものではない。
そう、僕がミスをしない限り。
この局もまた僕のあがりになるだろう・・ってあれ!?
ない・・。
12枚しかない。
そんな馬鹿な!?・・・あ。
「秋葉」
「何かしら、兄さん」
「おまえ酔ってるのか」
「失礼ね。遠野家の当主たるもの酒に飲まれるはずがないでしょう」
「そうか、でもオマエの手牌、14枚あるぞ。おまえまだツモってないだろう」
「今ツモってこれから捨てるところですが?」
・・・やられた。
そう来るか。
琥珀さんがクスクスと楽しそうに笑う。
対照的に静かに動じない翡翠。
クソ、今度は見逃さないぞ。
次の瞬間、殺気がして僕は飛び跳ねた。
間一髪かわした・・ってまた手牌が一枚減っている。
どうやら赤髪の我が妹君は僕の手牌を「略奪」したらしい。
「ツモ!」
秋葉が元気よく発生する。
「何でもありって訳ですね」
いつか読んだ小説に書いてあった「イカサマじゃないギャンブルなんて、怖くて出来ないわ」
というセリフの意味。
今ならよく分かる気がする。
僕はメガネをはずした。
・・負けるわけには、いかない。
898夢我:02/03/16 03:31 ID:seE2b7l3
「あらあら、志貴さんたら。いいんですか?」
!?
何のことか僕には分からなかった。
「メガネ、はずしちゃって」
しまった・・。靴下がありで、オビがありで、何でもありで、メガネがなしなんて訳ないじゃないか。
・・僕の馬鹿。
気を取り直して、最下位。もとい、再開。
!?
次の瞬間僕の体を驚きの衝撃が突き抜ける。
見える・・。死の点が・・。
僕は酔っているのだろうか?
数順後、琥珀さんがリーチをかけたときに確信した。
これ・・あたり牌だよな・・。
これぞ正に一点読み。
もちろん僕は追っかけリーチ。
山には琥珀のあがり牌はない。
そして琥珀が山からまた別の死の牌を持ってきて放銃。
パァンッ!
「ひぃっ!」
何故たかが一回のロンで僕は銃で撃たれなければならないのか。
だがそのときの僕にロンが出来るはずもなく。
結果流局となった。
899夢我:02/03/16 03:32 ID:seE2b7l3
そんなこんなで勝負も大詰め。
僕はもうパンツ一枚、他はみんなブラとパンティーのみとなった。
どうやってこの状況で勝負に集中しろというのか?
しかしやらなければ死、あるのみだ。
秋葉の「略奪」をナイフで防ぎつつ、琥珀の「策略」を魔眼で防ぎつつ、翡翠の「誘惑」を
理性で抑えつつ、自分のあがり、その一点だけを目指した。
「うぉぉぉ、ツモったぁ!!」
残り2枚になった脱衣麻雀において、男の気合は恐ろしい。
さてついに御開帳・・!?
「リボンはまだ取りたくなかったのになー」
こ、琥珀さんまだそんなものが・・。
「では私もこれを取らさせていただきます」
翡翠までもが頭にのってるアレを取った。
しかし秋葉のヘアバンドはすでにない。
琥珀、翡翠にもとからポイントに差のある秋葉にはそんな余裕は残ってなかった。
「仕方ありません。では・・」
御開帳か!?
「兄さんには見られたくありませんでしたが、これも大事の前の小事です」
パ、パット〜!?
「なにゆえ、寄せて上げるにしないのか!!」
「志貴さま落ち着いてください」
これが落ち着いていられるか!!
依然、秋葉、琥珀、翡翠が2、僕が1ポイントのまま続行となった。
900夢我:02/03/16 03:33 ID:seE2b7l3
最後は僕のお野蛮・・もとい親番だ。
親番ではツモ1→2、ロン2→3といった具合にあがったときのポイントがあがる。
今度こそ、終わるはずだ。
僕は5順でテンパイした。
あがり牌は山の最後のほうにあるが、それより琥珀が捨てそうだ。
・・・待てよ。
今は親番だからツモでも2ポイントで全員トビだ。
ということは3人とも僕の自由に!?
僕のあがり牌は山の後ろの方だが、結構な数残っていた。
あれならきっとツモれる。
しかし琥珀さんが・・。
もし僕が琥珀さんのあたり牌をみのがしたなら、彼女は僕より先にツモってしまうだろう。
・・・麻雀とはそういうゲームだ。
しかしどうすれば・・・そうだ!
「オープンリーチ」
僕はそう宣言した。
これなら琥珀さんもあたり牌は出さず、きっとツモれることだろう。
ああ、魅惑のハーレムよ・・。
え!?
どうしたというのか?
何と琥珀さんは僕のあたり牌を捨てたのだった。
そうか、琥珀さんそんなに僕のことを・・。
それなら仕方ないな。
「ロン」
僕の声に琥珀さんは清清しい笑顔を見せた。
マクドナルドの0円の粗悪品とは比較にならないような笑顔を。
次の瞬間・・
「志貴様、チョンボです」
「えっ!?何で??」
「雀鬼会ルールではオープンリーチはありませんし、見せ牌はその種類全て出アガリ不可です」
「聞いてねぇよ!!」
ダチョウ倶楽部とさま〜ず三村が混ざったような叫び声。
何だよ、雀鬼流って・・。
「鬼になるっていったじゃないですか」
「その鬼かよ!!」
チョンボということは僕はとび、3人そろってトップ賞。
「ふふふ・・」
「クスクス・・」
「・・・・(ニヤリ)」
人の感情をこんなにも熱く感じたのははじめてだ・・。
逃げたい・・この悪夢から・・。

―――トンデモナイ夢を見た
―――あまりにも酷すぎて
―――夢なのかそうでないのかも分からないほど―
(完)