73 :
田中:2013/05/10(金) 18:25:40.31 ID:vNCt2RlH0
登場人物が多すぎてもはや誰が誰だかわからない
74 :
田中:2013/05/10(金) 18:25:52.14 ID:GY1zz14u0
「いや、赤で勝つと決まりがいいね。おれは赤が大好きだからな」
「朱坂だけにか?」
鷹守がしてやったり顔で云うと、
「赤はおれにとって、思い出深い色なんだ」
ほんの一瞬、ゾッとするような不気味な笑みを見せたかと思うと、鏡一はやや目を伏せ気味にして声を落とした。
「おれの母さんの最期の姿、真っ赤だったからね」
「鏡一さんのお母さんが?」
青恵がやや引き気味に受け答えする。
「そう、車のブレーキが壊れて、そのまま崖にまっ逆さまに転落。もろに岩場に激突して……」
「それで伯母さんは亡くなったんですか?」
「そうだよ。結局、ただの事故として片付けられたけど、あれはおそらく親父が……」
「鏡一!」
琴波が眉を八の字にして怒鳴る。
「冗談にしても、不謹慎でしょう?」
「ああ、ごめんごめん」
鏡一が顔の緊張をふりほどいて頭を下げた。
75 :
田中:2013/05/10(金) 18:45:35.06 ID:GY1zz14u0
「ところで鏡一くん、君はさっき『UNO』を宣言しなかった。ペナルティーとしてあがりは無効だ」
鷹守の指摘に、鏡一が絶望する。
「さあ、仕切りなおしといこうか」
※
正午になり、青恵たちはオープンデッキに昼食をとりにいった。
潮風の気持ちよさが頬を伝う。しかし、潮風よりずっと魅力的なのはテーブルの上に乗せられた料理の数々だ。
「これ、おいしいですねえ」
青恵が黄ばんだごはんの上に貝とかソースがグチャっと乗った料理を食べながら、笑みをこぼす。
「なかなか本格的な西洋料理だな。さすがは朱坂家だ」
鷹守が血のように赤黒いワインを口にしながら云う。
「ほう。楽しんでいるようだな」
背後から低く威厳のある声が聞こえる。
振り向くと、黒いスーツに実を包んだ朱坂清山の姿があった。
76 :
昼の帝王 ◆QYmbdsVg06 :2013/05/10(金) 19:34:21.34 ID:5UCYaxik0
UNOは神
77 :
田中:2013/05/10(金) 19:34:59.07 ID:GY1zz14u0
「あ、はい、伯父さん」
「そんなに緊張しなくていい」
そう云いながら、清山は青恵の肩に手をベタリと乗せた。
「私の料理を楽しんでくれているようだな。苦労したかいがあったよ」
「まさか、伯父さんが作ったんですか?」
青恵が震える指で、白いテーブルの上にある、食べかけの料理を指差した。
「昔は料理人を目指していたのだよ。時々このようにして誰かに料理を振舞う。
私の作った料理で笑顔になってくれれば、悪い気はしないからな」
そういいながら、清山が笑みを浮かべる。不思議と普段の厳格さがなくなっているように感じた。
「さあ、もうしばらく航海を楽しみたまえ」
「毒が入ってないだろうな?」
清山が離れてると、鷹守が怪訝な目で、料理を凝視した。
「意外……清山伯父さんにあんなフレンドリーな一面があるなんて」
「ま、人間は誰しも色んな面があるもんだ。外面だけで人を判断しちゃいけない」
鷹守はビールを啜りながら云った。
78 :
田中:2013/05/10(金) 19:45:50.67 ID:GY1zz14u0
「ご主人様!」
昼食が終わりに近づいたころ、執事の老人が大声をあげ、清山の元へ走ってきた。
「山田。食事中だ。耳障りな音を立てるな」
「も、申し訳ありません」
山田が肩で息をしながら、清山に深々と頭を下げた。
「で、用件は何だ?」
「さ、先ほど、船内を見回っていたところ、こんなものが……」
山田が震える手でポケットから、綺麗に折りたたまれた一枚の紙を清山に手渡した。
紙を広げ、中身を確認すると、
「なんだこれは!」
清山は大声を上げた。
「いったい、どうされたのですか?」
琴波と共に食事を取っていた龍児が清山に声をかけた。
「誰が……誰がこんなたちの悪いイタズラを!」
清山は叫びながら、紙をその場の全員に広げて見せた。
その場の一同の視線が、一斉に紙の上へ集まる。
79 :
わふー ◆wahuu.39/s :2013/05/10(金) 20:04:07.09 ID:yTbqwJA0T
これまでの展開を三行で
80 :
田中:2013/05/10(金) 20:30:13.27 ID:GY1zz14u0
>>79 親戚の家にいくため船に乗る一同
昼食中に謎の置手紙
大騒ぎになる
81 :
田中:2013/05/10(金) 20:44:53.72 ID:GY1zz14u0
.
――――――――――――――――――
罪深き一族の人間を、殺す
暗黒の使徒
――――――――――――――――――
白い淡白な紙の上に、血のように赤黒い絵の具で字が刻まれていた。
「罪深い一族……なんだこりゃ?」
鏡一が手で口を拭いながら、呟いた。
「お前のイタズラじゃないのか?」
同じテーブルに坐る護狼が、鏡一を横目で見た。
「まさか。こんなのもはや日本語になってないし、つまらんじゃん」
「だったら、いったい誰が?」
護狼がワインに口つけながら眉をしかめた。
「殺人予告。でしょうか、これは」
龍児が神妙な顔で云う。
82 :
田中:2013/05/10(金) 20:49:14.96 ID:GY1zz14u0
「やめてよ……気味が悪い」
琴波が不安げな表情を見せた。
「なんだこれは私への挑戦か!?」
清山が予告状をびりびりと引き裂き、空に放つ。
「いいだろう! 殺せるものなら殺してみろ!」
紙吹雪の中、清山は高らかに叫んだ。
「まったく、どいつもこいつもランチタイムに慌しいな」
鷹守がタコの刺身を頬張りながらぼやいた。
「先生。いったい何なんでしょう?」青恵が囁く。
「ただのイタズラにしては、なかなか手が込んでいる」
「もしかして、誰かが……」
青恵が言葉を続けようとするのを遮るようにして、
「ぐああああああああ!」
大きな悲鳴が瀬戸内海に響き渡った。
83 :
ヒロポン:2013/05/10(金) 20:56:59.37 ID:PTHgl1rS0
うんこ
84 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 20:58:08.64 ID:GY1zz14u0
「な、なに!?」
青恵が立ち上がってあたりを見渡す。
「ぐおお……」
そこには、椅子を転げ落ちた護狼がうめき声をあげながら、うずくまる姿があった。
テーブルから落ちたグラスが割れ、ワインが床にこぼれている。
「まさか、料理に毒が?」
龍児がそう口走るとすぐに、
「山田、水だ!」
清山が執事を指差しながら叫んだ。
すぐに、山田がバケツを持って走る。
「吐き出せ!」
清山がゴルフグラブのごとく杖を護狼の背中に何度もぶち込む。
護狼は大きく背を反らし、口から赤黒い吐しゃ物を出した。
バケツに水を汲んだ山田が、急いで護狼に水を飲ませる。
再び背を反らして、護狼が吐き出す。
「ハァハァ……」
しばらくして護狼が肩で息をしながら立ち上がった。
85 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:05:58.12 ID:GY1zz14u0
「大丈夫か、護狼くん」
龍児が護狼に声をかける。
「くそっ、なんだいったい……突然激痛が口から喉に広がりやがった」
護狼は喉を押さえながら咳をした。
「どうやら、あの予告状は本当だったようだ」
鷹守は清山のほうまで歩いていき、
「これは殺人事件です。清山さん、すぐに警察に連絡をしてください」
「なにを馬鹿な」
清山が床を杖で叩く。
「まさか本当に誰かが毒を盛ったとでも云うのか」
「無論です」
鷹守が答えた。
「護狼さんの飲んでいたワインからかすかにアーモンド臭がする。これは恐らく青酸カリでしょう」
「青酸カリだと?」
一同が言葉を失う。
「おそらく、全員が予告状に気をとられてる隙に、誰かがこっそりと護狼さんのグラスに毒を盛ったんだ」
86 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:19:13.38 ID:GY1zz14u0
「……なるほど。筋は通っているな」
「犯人はまた誰かを同様の手口で狙うかもしれません」
「よかろう。山田、すぐに警察に電話をしろ」
清山が執事に目を向ける。
「そ、それがご主人様。無線電話が何者かに壊されています」
執事は冷や汗を流しながら云った。
「なんだと」
「警察への連絡は不可能です」
「馬鹿者め!」
咆哮をしながら、清山が杖で山田を殴った。
黄色の取っ手の眼鏡が宙を舞い、地面に転げ落ちる。
「貴様! なんという失態を!」
「申しわけありません……」
山田が土下座しながら許しを請う。
跪く山田を、清山は杖で殴り続けた。
「しかし、警察に連絡ができないとはな」
鷹守がため息をつく。
87 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:26:29.05 ID:GY1zz14u0
「それじゃあ、あたしたち……」
青恵が震えながら声を漏らす。
「殺人鬼と共に、この船に閉じ込められたというわけだ」
気づけば、青い空は黒い雲に覆われ、潮風が張り付くように気持ち悪く感じる。
数分前まで和やかだった場の空気は、一気に戦場のごとく殺伐とし始めた。
「それじゃあ、オレはまた狙われるかもしれないということか?」
護狼が自らを指差しながら、体を震えさせた。
「兄貴。全員で集まってれば大丈夫さ」
「全員で集まっていれば大丈夫だと? どこにそんな保障がある」
護狼はクレーマーのごとく鏡一に因縁つける。
「もしもこの家庭教師の云うとおり、予告状のことで騒いでいる間に毒が入れられたのなら、犯人はこの中にいるということになる」
護狼は鬼のような形相で周囲を睨むと、鏡一の胸倉を掴んだ。
「特にお前は一番怪しい。オレと一緒のテーブルだったからな。オレが死ねば親父の跡継ぎの座が回ってくるという点でも動機はバッチリだ」
「おいおい、マジかよ……」
2メートル近くの巨人に吊るされ、こんにゃく男は顔を青くした。
88 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:30:49.53 ID:GY1zz14u0
「護狼くん、いいかげんにしないか」
急いで龍児が鏡一から護狼を突き放す。
「気持ちはわかるが、周りに当たりちらすのは間違っているだろう」
「龍児! お前にも動機があるはずだ!」
護狼がビシッと龍児へ指を突きつける。
「親父に気に入られているお前はオレを亡き者にして、朱坂家を乗っ取ろうという魂胆なんだろう」
「馬鹿なことを……」
「殺人鬼と一緒にいられるか! オレは一人で寝るぞ!」
そう吐き捨てると、護狼はズンズンと部屋に戻っていった。
「鏡一。大丈夫か?」
咳き込む鏡一に龍児が声をかける。
「えらい目にあったよ。あのゴリラ野郎」
「まったく、あの被害妄想ぶりは困ったものだよ」
龍児が眉をしかめた。
「まあ、兄貴の云うことにも一理はあるな」
鏡一が眼鏡の位置を正しながら呟く。
89 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:36:06.43 ID:GY1zz14u0
「誰が犯人かわからない以上、大勢でいるのは息が詰まるよ。おれも一人でいるのがいいと思う」
「おいおい、お前まで……」
そう云いながら、龍児が眉をしかめた。
「なんにせよ。あと一時間で朱坂邸につく」
清山が息を切らしながら云った。
「犯人もそれまで下手な動きはしまい。私は部屋に帰らせてもらおう」
清山が山田を引き連れて船内に戻っていく。それに習い、鏡一も部屋へと帰っていった。
「まったく。悪いところで似ているな、清山一家は」
龍児がやれやれと肩をすくめる。
結局、残った四人もそれぞれの部屋に戻り、朱坂一族は船の中に散らばることになった。
「本当にあたしたちの中の誰かが料理の中に毒を盛ったんでしょうか」
ベッドに坐り、上下に揺れながら、青恵が鷹守に問いかけた。
「恐らくな。同じボトルから注がれたワインを朱坂鏡一が口にしていたが、奴は青酸カリに当たっていない」
「それじゃあ、あたしと先生と護狼さんを除いた、五人の中に……」
「犯人はいる」
鷹守が眼力を強くして云い放った。
90 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:44:47.23 ID:GY1zz14u0
.
※
???は船内のベッドの上に寝転がりながら、伏せた笑い声を上げていた。
――なにもかもが、思い描いたように進んでいく。
この「愛情」の名を騙った舞台の中で、無垢に動き回る滑稽な道化たち。
自分たちがこれから先に待ち受ける惨劇もしらずに……。
「殺す」
小さく、口に出して呟いた。
たった三文字あるが、幼さと惨さという逆説が交じり合った、人の狂気を体現する言葉だ。
きっと、この計画が完成した後も、私はこの言葉を愛し続けるのだろう。
だが、この計画にとって、予想だにしなかった存在がある。――あの鷹守という家庭教師だ。
源永の暗号を解き明かしたあの頭脳は計画にあらぬ歪を与える可能性がある。
「殺す」
再びそう口にして、私は笑った。そう、殺せばいい。
目障りなものは全て殺す。それは過去も今もこれからも永久に変わらない。
91 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:54:10.94 ID:GY1zz14u0
自分の中の狂気を抑えながら起き上がり、黒光りする”エモノ”を手にとった。
障害は、全て排除……。
邪魔なものは全て殺ス……。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
「ククク……。ふーっはっはっは!」
私は高らかに、邪悪な叫びを上げた。
92 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 22:31:23.09 ID:GY1zz14u0
.
※
二時を回った頃。朱坂琴波は部屋のテーブルで一人、本を読んでいた。
セルバンテスの”ドンキーホーテ”。ルネサンス後期にスペインで書かれた、お笑い小説だ。
気を落ち着けるには読書が一番であるというのが、亡き父の教えである。
トン、トン
不意にノックする音が聞こえた。
「どなた?」
扉に向かって声をかけるが、返事がない。忍び足で扉に近き、ガラス穴から外を覗く。
――同時に、背筋がゾッと凍りついた。
赤い獅子舞の仮面。黒いコート。そして、手に持った巨大な斧。
明らかに正気ではない生き物の姿が、そこにはあった。
「あ……」
琴波が言葉を失い、急いで扉から離れようする。
その瞬間、仮面の男は背を反らし、そのまま斧を振り下ろした。
93 :
【IQ117】 :2013/05/11(土) 00:08:32.82 ID:4tyy5DSd0
ローソンでファミチキ購入まで読んだ
94 :
田中:2013/05/11(土) 04:19:25.32 ID:I2eECtFg0
犯人わかったわ
95 :
田中:2013/05/11(土) 04:31:39.18 ID:XJefYJaq0
うわなにこのスレ
明日じっくり読むか。ええな。2chで小説かくって発想に吹いてしまった
支援
96 :
田中:2013/05/11(土) 09:27:01.24 ID:9T/t6VAz0
初心者は短編小説で練習しよう
97 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:27:54.30 ID:Zv9hwZf60
.
第三章 殺戮の大斧
日が西に傾き始めた頃。鷹守は片目をつぶりながら、ナザールボンジュの穴に紐を通そうとしてた。
……が、なかなかうまく通らない。元々ガラス玉に開いていた穴があまりに小さく、裁縫用の糸でもない限りは通る気がしない。
とはいえ、他人の所有物であるから、無理やり穴を拡大させるわけにもいかないのだ。
「先生、もう直りましたか?」
青恵がベッドに寝そべりながら、鷹守に訊く。
「まだだ。これはとても慎重な手法を要する。今はなるべく声をかけないように」
鷹守は和風総本家に出演する職人たちのような目つきでそう云うと、青恵は「あい」となんか微妙な返事をした。
「はあ、なんか暇つぶしの道具でも持ってこればよかったあ」
青恵が背を伸ばして体を捻り、あくびをする。
……その時だった。
98 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:35:04.38 ID:Zv9hwZf60
「イギャアアアアアアアアアアアアアアッ!」
船中に、もはやこの世のものとは思えないような、おぞましい悲鳴が轟いた。
「やっ、何……?」
青恵がびくついて声をもらす。
「今の声、琴波さんじゃないか?」
「まさか……殺人鬼が?」
「外を見てくる。どこかに隠れていろ!」
鷹守がそう云うと、青恵は頷いて素早く押入れの中に入った。
ダッシュで鷹守は琴波が部屋の前まで向かうと、粉々にされた扉の木片が散らばっていた。
「いったい、何があったんですか?」
大声を出し、部屋の中を確認すると、鷹守は目を見開いた。
――白い髪、そこから顔を覗かす不気味な獅子舞の面。それに似合わぬ黒いコート手袋。そして、血を垂らす大きな斧。
その不気味な男は、肩から血を流した龍児とその身を支える琴波の方を向いて立っていた。
さっと振り向き、金色の目玉で鷹守を睨みつける。
99 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:45:06.35 ID:Zv9hwZf60
「貴様……」
鷹守が次の言葉を出す前に、仮面の男は斧を龍児に向かって振りかぶった。鷹守はすぐさま仮面の男にとび蹴りをする。
仮面の男は後退し、その隙に琴波は悲鳴を上げながら龍児を連れて部屋の外へ出た。仮面の男はすぐにその後を追おうとする。
「おっと、ここから先は通さないぜ」
部屋の入り口をふさぐようにして、鷹守が仮面の男の前に立ちふさがる。
振り払うように振られる斧を、鷹守は華麗なステップでかわした。そのまま鷹守は地面に転がった細長い木片を手に取る。
「うおおおおおおおおおお!」
木片を持って殴りかかると、仮面の男はバックジャンプでかわした。間髪入れず繰り出される斧の一撃を鷹守は木片で防ぐ。
剣道のごとく、木片と斧で攻防を始める。
「はあ!」
「ていっ!」
鷹守と仮面の男は互いに声を出しながら、しばらく切り合い続ける。
「おりゃあああ!」
槍のように木片を持って鷹守が思い切り腹を突くと、
「ぐぅおおおおおおお」
仮面の男は呻き声を上げて、ヨロヨロと後退した。
鷹守に背を向け、走って逃げていく。
100 :
田中:2013/05/11(土) 13:46:38.83 ID:5pmFru3c0
私怨
101 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:51:06.43 ID:Zv9hwZf60
「待て!」
鷹守が走って仮面の男を追いかける。
仮面の男は走りながらコートの裾から何かを取り出し、それを鷹守に投げつけた。
咄嗟にかわして、素早く投げつけられたものに目をやる。
黒光りし、幾多も散らばる、棘の塊。忍たま乱太郎などでたびたび使用される武器――まきびしだ。
これでは走って追いかけることができない。鷹守は舌打ちをした。
「な、なんだお前は!?」
角を曲がった先の廊下から、護狼の声がこだました。
「護狼さん! 逃げるんだ!」
はっとしてすぐに鷹守が必死に叫ぶ。
「ぐおあああああああああああ!」
護狼の叫び声が耳をつんざく。
鷹守はつまさき歩きですぐにまきびしを乗り越えた。
廊下の角を曲がると、大量の汗を流しながら尻もちをついている護狼の姿があった。
「大丈夫ですか、護狼さん」
鷹守は安堵して声をかける。
102 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 14:07:10.22 ID:Zv9hwZf60
「なんなんだ、今の獅子舞野郎は。斧を振り回しながら走り去っていったが……」
護狼が汗拭きながら立ち上がった。
「おーい。どうかしたの?」
向こうの廊下の角を曲がって、鏡一がやってくる。なにこいつらという表情でキョトンとしている。
「そっちで獅子舞の面を被った怪しい男を見なかったか?」
「なんのこと?」
鷹守の質問に鏡一は首を傾げた。
「……どういうことだ」
鷹守が周りを見渡す。一本道の廊下には窓一つと消火器があるだけで、隠れることができるような場所はない。
窓を開くと、室内に気持ちいい潮風が流れ込んできた。
下は当然海になっており、ここを飛び降りて脱出することは不可能である。
「消えた……」
鷹守が海を凝視しながら、呟いた。
「ちょっと、何があったか説明してよ」
「鏡一くん。すぐ会議室にみんなを集めてくれ」
しおらしい顔をして鷹守が云った。
103 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 14:12:20.91 ID:Zv9hwZf60
.
※
「琴ちゃんが襲われた?」
鏡一が驚いた顔で云う。
鷹守は会議室に集まった一同に、事の成り行きを説明していた。
「ああ。格闘して応戦したが、仮面の男はとり逃してしまったようだ」
鷹守はそのまま続けて、
「記憶が正しければ、背丈はわたしと同じ程度だった。185センチ前後といったところでしょう」
「それじゃあ、おれは容疑者からはずれるよね」
鏡一が意気揚々と云う。
「兄貴や親父と違って、背には自信がないから」
「失礼ですが、清山さん。あなたの身長はおいくつですか」
鷹守は清山を見ながら云った。
「貴様、私を疑っているのか?」
「ええ。この船で私と同じぐらいの背丈を持っているのは、護狼さんと龍児さんを除けば、あなただけですから」
「……183だ」
「なるほど」
鷹守が笑みを浮かべる。
104 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 17:18:39.16 ID:Zv9hwZf60
「だが、私にはアリバイがある」
「アリバイ?」
「琴波が悲鳴をあげたとき、私は部屋に山田といたのだよ」
清山が「そうだな?」と問うと、執事は「はい」と答えた。
「ちょうど次の商談についての話をしていた。内容も聞かせてやろうか?」
「いえ……大丈夫です。ありがとうました」
鷹守は納得のいかないような表情で引き下がった。
「失礼します」
不意に声が聞こえ、一同の注目が扉の付近に集まる。
そこには、一礼する龍児と、その横に寄り添う琴波の姿があった。
「おお、龍児。大丈夫だったのか?」
清山がスキップしながら、龍児のもとにかけよる。
「浅い切り傷です。それよりもこのスーツに穴が空けられてしまったのが残念ですよ」
龍児が穏やかに笑って見せた。スーツの切り口からは血をにじませた包帯が見えた。
「ちょうどよかった。お二人とも、襲われたときの詳細を教えてくれませんか」
鷹守がそう云うと、龍児と琴波は、鷹守がやってくるまでの出来事を話し始めた。
105 :
田中:2013/05/11(土) 22:55:33.76 ID:ZIq9gioX0
アカン それ小説ちゃうラノベや
106 :
【IQ117】 :2013/05/11(土) 23:44:49.11 ID:L+w8Wsyp0
分かった。犯人は獅子舞
107 :
田中:2013/05/12(日) 01:10:19.83 ID:S4MH+goY0
> 清山が「そうだな?」と問うと、執事は「はい」と答えた。
この行必要?
琴波が部屋で読書をしていたところ、仮面の男が部屋をノックした。
↓
琴波が扉に近づくと、突然、仮面の男は扉を斧で壊した。琴波が悲鳴を上げる。
↓
隣の部屋にいた龍児が異変に気づき、琴波の部屋に行く
↓
仮面の男が斧で龍児の肩を切り裂く
↓
二回目の攻撃がなされる前に、鷹守が現れた。
「……とまあ、このような感じです」
大体の説明を終えると、龍児は息をついた。
「なるほど。危ないところでしたね」
鷹守は「ところで」と続けて、
「琴波さんと龍児さんは違う個室なのですか?」
109 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/12(日) 09:34:31.91 ID:vWuNS5Hf0
「ええ。龍児くんは一人でいるのが好きだから」琴波が云う。
「わかりました。しかし不思議だ」
鷹守は腑に落ちない顔をしながら。
「この船の中に、仮面の男になりうる人物が一人もいない。
「本当に我々の中に犯人がいるのかね?」
清山がうっとうしいハエを見るような目で鷹守を見る。
「ええ、青酸カリの件を考えれば、あの時、昼食に参加していたメンバーの中に犯人がいるはずです」
「鷹守さん。少し考えたのですが」
龍児が左手を突き出しながら云う。
「われわれ以外の人間――外部犯にもそれを実行することができるかもしれません」
「何ですって」
鷹守は面を食らった顔で龍児のほうを見やった。
「カプセル。ですよ」
龍児が小さく鼻を鳴らす。
「犯人は水溶性のカプセルを使ってワインに毒を盛ったんです」
110 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/12(日) 09:39:06.67 ID:vWuNS5Hf0
「……龍児さん。詳しく説明してもらえないか」
鷹守の言葉に龍児がうなづく。
「まず、ワインは昼食が始まってから栓が抜かれました。確かにあらかじめ毒を盛るのは難しい。
ですから、鷹守さんが昼食の最中に毒を盛られたと主張するのはしばし当然のことでしょう」
龍児は「しかし」と云い、
「グラスに毒が仕掛けられていたとしたら」
「ワイングラスにあらかじめ毒が入っていたと?」
「その通りです。山田さん、ワイングラスは我々がオープンデッキに来る前に、あなたがテーブルの上に置いたものですね」
山田は「はい」と云った瞬間、目を見開いて、
「わ、わたくしは犯人ではありませんよ!」
「わかっていますよ。あなたは私を襲った人物に比べて背丈が低過ぎる」
龍児は気取った笑いを浮かべる。
「昼食が用意されている最中、船内に進入した”何者か”が隙を見計らって毒を盛ったんでしょう」
「おい、それならオレはワインを飲んだ瞬間にぶっ倒れたはずだ。だが昼食が始まってしばらくの間、オレは普通にワインを飲めたぞ」
護狼が指を突きつけながら、ケチをつけた。
「青酸カリは、小さな水溶性カプセルに入っていたんです」
龍児は親指でつまむようなジャスチャーをした。
111 :
田中:2013/05/12(日) 11:35:52.54 ID:RLZXVNVdO
創作人物の名前について
>創作の出来不出来は、その作中に活躍する人物の名前の選み方一つに在ると云ってもいい。
>いい名前が出来ると思わず筆が進んで筋が面白く変化して来る。
「それをグラスの中に入れておけば、カプセルが溶けるまで作動することはない。
肉眼では気づかないほどカプセルが小さかったために、毒は致死量には到らなかったようですがね」
「だが、どの席でどのグラスは誰がとるか予想はできないだろう。もしかしたらあのグラスは鏡一が使っていたかもしれないし、お前が使っていたかもしれない」
「誰でもよかったんですよ」
「何だと」
龍児の言葉に一同が凍りつく。
「犯人の狙いは我々を疑心暗鬼にさせて分裂させること。犯人からしてみれば、毒は我々の誰が飲んでもよかったのです」
「それじゃあ、無差別殺人ということか?」
「あくまで、仮説ですが」
鷹守の問いに龍児が答えた。
「それならば、早くそいつを見つけ出せ!」
清山が杖で床をドンドコ叩きながら叫ぶ。
「私の船でふざけた騒ぎを起こしおこって! すぐに思い知らせてやるわ!」
「ご主人様。そのことなのですが……」
おそるおそる山田が口を開いた。
「救命艇が一つなくっておりました」
「なんだと?」
清山が目を気持ち悪いほど見開く。
113 :
田中:2013/05/12(日) 15:00:12.93 ID:S4MH+goY0
とりあえず全員しゃべらせすぎじゃないか
「どうやら、犯人はすでに船から脱出したようですね」
龍児が肩をおさえながら云う。
「よかったあ。それじゃあ、殺人鬼はもういないんですね」
青恵がほっと胸を撫で下ろした。
「それにしても……船内にみすみすと侵入者を許すなどと」
清山が目を異常者のようにギョロつかせ、歯茎をむき出しにしながら歯軋りをする。
「も、申し訳ありません。ご主人様」
「黙れ!」
杖で殴られ、山田はかぼそい悲鳴を上げた。
「そうだ、いい加減にしろ!」
それに続いて鏡一が、山田の足をかかとで踏みつけた。
「清山さん、落ち着いてください」
鷹守が肩おさえて鋭くたしなめると、清山は鼻をフンと鳴らした。
「馬鹿者のせいで、少々頭に血が上ってしまったな」
「なんにせよ、もし朱坂家に恨みがある人間がこの犯行を行ったなら、そのまま船で屋敷まで向かったかもしれません。
屋敷にいくのは危険です。すぐにこのまま岡山港まで引き返すべきです」
鷹守が厳粛な雰囲気で云う。
115 :
【IQ117】 :2013/05/13(月) 03:08:27.04 ID:sOXeLAMw0
分かった。犯人はトーマス
116 :
しゃしゃ ◆AV899/UULk :2013/05/16(木) 00:51:43.36 ID:7IElK96lP
おもんな
117 :
田中:2013/05/16(木) 20:07:20.24 ID:59Ej+ceJ0
影の黒幕はアメリカ
118 :
田中:2013/05/16(木) 22:33:43.90 ID:OvKjwUOT0
ええな。俺こういうスレ好きやで。中身はまだ全然読んでへんけど。
いつごろ完成しそう?完成したら一気読みしたい
119 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/16(木) 23:47:12.70 ID:sUgixRWw0
120 :
田中:2013/05/17(金) 00:01:41.31 ID:t3HKDZyY0
ひとのせいにするな
121 :
【IQ117】 :2013/05/17(金) 02:23:55.23 ID:Qtq491tq0
お前な、、、
122 :
田中:
台詞多いのがアホっぽい