1 :
田中:
※主な登場人物
朱坂清山……朱坂家当主・源永の長男。(56)
朱坂護狼……清山の長男。(24)
朱坂鏡一……清山の次男。(19)
朱坂琴波……源永の次男・麻人の娘。(21)
朱坂龍児……琴波の夫。(26)
朱坂青恵……源永の三男・剛健の娘。(12)
山田博……朱坂家の執事。(68)
入江ひかり……「朱坂邸」の家政婦。(32)
鷹守徹……青恵の家庭教師。(31)
](エックス) ……正体不明の殺人鬼。(??)
2 :
田中:2013/05/09(木) 17:02:58.10 ID:nZANvDht0
がっかり文章力、のほうがいいな
3 :
八神太一 ◆YAGAMI99iU :2013/05/09(木) 17:04:04.47 ID:1N35RcWH0
期待
4 :
田中:2013/05/09(木) 17:05:26.80 ID:0i7Gqx3D0
プロローグ
それは、夜明け前のことだった。
「うぎゃー!」
男の苦痛を訴える、生理的恐怖心を煽るような、おぞましい悲鳴が屋敷中に響き渡った。
「剛健様?」
と、黄色の取っ手の眼鏡の老人が、悲鳴が聞こえた部屋の扉に向かって声をかける。
「どうかなされたのですか」
そうしながら、何度も扉を殴るけれども、返ってくる音はなかった。
「ねえ、なんなの、今の悲鳴」
しばらくして、パージャマー姿の少女が老人に声をかけた。
松明(オリンピックの聖火ともす奴)に照らされた顔は青白くなっているように見える。
「お嬢様。それが、剛健様からの返事がないのです」
少女がノブに手をかけて開こうとする。しかし、扉はまるで山のように動かなかった。
5 :
田中:2013/05/09(木) 17:07:51.01 ID:nZANvDht0
ゴーケン様どっから出て来たんだwwwww
6 :
田中:2013/05/09(木) 17:08:14.27 ID:0i7Gqx3D0
「ちょっと、やばいんじゃない?」
「すぐに鍵をとって参ります」
老人がてくてく走って扉の前から去る。
やがて足音がやみ、館内がしらー……と静まり返った。
「おい、どうした」
そして、老人と入れ替わるようにジャンボな青年が少女の元へ歩いてきた。
身の丈は少なく見積もっても180センチあり、白いタンクトップからはゴリリと盛り上がる筋肉がはみ出ていた。
「部屋から剛健叔父様の叫び声が聞こえたんだけど、返事がないの」
少女が不安げな表情で云う。
「おい、もしかして、病気の発作か何かじゃないか?」
「やめてよ……」
「鍵は?」
「ついさっき、山田にマスターキーを取りにいかせたところ」
そう少女が云った途端、あわただしい足音ともに山田と呼ばれた老人が戻ってきた。
「お、お嬢様! マスターキーがなくなっております!」
7 :
田中:2013/05/09(木) 17:08:52.63 ID:bln75nAf0
これが本格……? ラノベだな
8 :
田中:2013/05/09(木) 17:09:20.62 ID:COuNDvCv0
つまらん。読んでないけどな
9 :
田中:2013/05/09(木) 17:10:28.32 ID:nZANvDht0
山田行くときもいそげよ、、、
10 :
田中:2013/05/09(木) 17:11:53.30 ID:0i7Gqx3D0
「どういうこと? まさか、誰かにかすめ盗られたんじゃ……」
少女が首筋に手を触れながら云う。
「とにかく、鍵がないんじゃしょうがねえ」
青年が足で扉を小突いた。
「強行突破だ」
扉は内開きになっていたため、外部からの体当たりは効果が見込めた。
通路の端から助走をつけ、青年は雄たけびを上げて扉に飛び蹴りを食らわせる。
轟音と共に、木が軋む音がした。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
今度は回し蹴りを食らわせられ、扉が雄たけびを上げる。
そして二度目の飛び蹴りで、とうとう扉が開いた。
同時に――。
扉の向こうから吐き気を催すような、おぞましい臭いが立ち込める。
まるで、置きっぱなしにしておいた卵のような……。
「げっ。何、この臭い……」
少女が鼻を手で覆う。
11 :
八神太一 ◆YAGAMI99iU :2013/05/09(木) 17:12:14.40 ID:1N35RcWH0
面白いンゴw
12 :
田中:2013/05/09(木) 17:12:57.27 ID:sIcHqjrNP
犯人は田中
13 :
田中:2013/05/09(木) 17:14:03.74 ID:0i7Gqx3D0
「叔父さん、何があったんですか」
暗闇に向かって青年が声をかける。しかし、返事はなかった。
ただ外に吹き荒れる風が窓を揺らす音だけが、不気味に室内で響き渡る。
「とにかく、電気を点けるぞ」
青年の声に応じ、少女が入ってすぐ左側の壁を松明で照らした。
そこにある、照明のスイッチが、か細い指に押される。
カチッ。という音ともに、点滅しながら、明かりが点く。
そして、その瞬間。
「ひいっ」
「ぎょえっ!」
二人は大きく叫んで、その場を退いた。
部屋の中央に置かれたソファ。その手前、扉からみだり手前の床に”ソレ”は転がっていた。
ガウンを着た背に突き刺さっている黒い柄の包丁。そしてそこから羊毛の絨毯に広がった赤黒い色。
「叔父さん……?」
少女が青年の背後から声を漏らす。
二人の叔父――朱坂剛健は変わり果てた姿で部屋の中央にあった。
14 :
田中:2013/05/09(木) 17:15:20.52 ID:CtOTnniX0
ほほう・・・続けたまえ
でも2chで長編すぎるのは流石にダレるから、なるべく短編目指しでオナシャス
15 :
田中:2013/05/09(木) 17:18:40.92 ID:0i7Gqx3D0
「これは、剛健様!?」
少女の脇の隙間から室内を覗き込んだ山田がかぼそい声をあげた。
「ねえ、いったいどうなってるの?」
遠まわしに少女が様子見に行けといい、青年は足を震わせながら、室内に入っていった。
倒れた剛健のそばまで行き、包丁が突き刺さった背中を覗きながら、ゆっくりと息を吐く。
やがて、その場に片ひざを落として、うつむく剛健氏の背中に耳を当てると、
「だめだ、死んでる」
と震えながら呟いた。
「嘘……でしょ」
少女はムンクの叫びのような絶望的ポーズで狼狽する。
「おい! 一体何があった!」
同時に、大きな声を上げながら、鼻毛を蓄えた長身の男が、老人を押し退けて部屋に入ってきた。
「親父」
青年が男を見て声を漏らす。
「何だ、これは……」
男がうつむいた遺体のそばに近づく。
16 :
田中:2013/05/09(木) 17:22:32.81 ID:0i7Gqx3D0
そして、髪を引っ張り上げ、その表情を見た。
剛健の遺体はまるで眠ったように目を閉じ、口からよだれのようにダラァ……と血を流していた。
「これは、死んでいるのか?」
青年が小さくうなづくと、男は舌打ちをした。
「ああ……清山様……」
山田はすがるような目で男を見る。
「警察だ」
「はい?」
「今すぐ警察に連絡しろ!」
男は杖で床をぶん殴り、叫んだ。
「どうして」
少女は震える声で青年に問いかけた。
「ねえ、どうして?」
「とにかく、部屋に戻って落ち着け」
青年の言葉に、少女はうなづいた。
青年は少女の手をとりながら、部屋を出ようとする。
17 :
田中:2013/05/09(木) 17:25:45.53 ID:0dRQ3F6x0
物書きとして許さないんだが
何この幼稚な文章
18 :
田中:2013/05/09(木) 17:26:44.79 ID:0i7Gqx3D0
ふと、確認するように部屋の中を見た。
部屋の真ん中で伏した剛健の遺体。
やはり、死んでいる。それは、つい先ほどまで元気に晩ごはんを食べていたとは思えないほど変わり果てていた。
「あれは……」
よく見ると剛健の力なく投げ出された剛健の右手の先も血が飛び散っていた。
いや、あれはただの無作為に飛び散った血ではない。”血で描かれた何らかの記号”のようだ。
白い羊毛の絨毯に書かれた血の文字は、二つの赤い線が交差していた。
それはひょっとすれば、漢字の「十」だったかもしれないし、カタカナの「メ」だったかもしれない。しかし……。
「X(エックス)……」
反射的にそう口走っていた。
※
2007年3月25日、日曜日。
風が吹き荒れる、肌寒い一夜。その夜明け。
瀬戸内海の小島に建つ、「朱坂邸」で起こったおぞましい殺人事件。
それは、このとき屋敷にいた全ての人間の頭に焼きついた。
19 :
田中:2013/05/09(木) 17:28:16.44 ID:bln75nAf0
色々思うところはあるが最後まで頑張れ
20 :
田中:2013/05/09(木) 17:28:22.08 ID:0i7Gqx3D0
横たわる死体。突き刺さった包丁。血で書かれた「]」の字。
やがて、この事件は「迷宮入り」という形で終わりを迎えることになる。
だが、このときには……朱坂家を襲う悪夢はすでに始まっていただ。
21 :
田中:2013/05/09(木) 17:29:19.38 ID:CtOTnniX0
>>17 むしろ本当に物書きなら温かい目で見守ってやんなよ。しょっぱな敵視みたいな真似してどーすんの
22 :
田中:2013/05/09(木) 17:31:32.69 ID:nZANvDht0
23 :
田中:2013/05/09(木) 17:33:41.00 ID:0i7Gqx3D0
.
第一章 怪物の遺産
2007年5月3日、木曜日の午後6時近く。JR岡山駅付近のホテル。
「それって、泊まれないってことなの?」
ついこの間中学生になった朱坂青恵は、ホテルのフロントで声を上げた。
指定席の代金をケチった結果、品川駅から岡山駅まで2時間近く、新幹線で立ちっぱなしだったため、腕は棒になっている。
青恵は不満げに奇声をあげながら、首にかかった青いガラスの飾り(目玉を模したデザインである)を握り締めた。
「申し訳ありません、ただいま満席ですので」
スーツに身を包んだフロント係の男性は、申し訳なさそうに頭を下げた。
「満席なら、しょうがない」
そういいながら、青恵の保護者代わりとして共に岡山へやって来た、家庭教師の鷹守は頭を掻いた。
浅黒い肌、ギョロリと飛び出した大きな目、濃いあごひげ、なかなかハンサムな男だ。
「今から歩き回って違うホテルを探すしかないな」
24 :
田中:2013/05/09(木) 17:35:16.03 ID:CtOTnniX0
ククリ(はっ・・・。この語りは長くなりそうだ・・・)
25 :
田中:2013/05/09(木) 17:36:42.37 ID:0dRQ3F6x0
(;^ω^)o/――〜>゚))))彡←
>>21 (´・ω・`)o/ ̄ ̄~ >°))))彡←
>>22
26 :
田中:2013/05/09(木) 17:40:18.91 ID:/y1sU+Y30
読
み
に
く
い
か
ら
縦
書
き
で
頼
む
27 :
田中:2013/05/09(木) 17:40:18.77 ID:0i7Gqx3D0
「もう、歩きたくないんだけど……」
青恵は悲壮感をこめてため息をつく。
「そんなこと云っても、どうにもならないだろう。暗くならないうちに行くぞ」
そういいながら、鷹守が青恵の手をとった瞬間。
「君、これで、なんとかしてあげたまえ」
そういいながら、黒いスーツに身を包んだ男がフロントに札束をスッ――と差し出した。
「これは……」
目の前に広げられた諭吉の束にしばらく絶句した後、
「わかりました。すぐに極上の部屋を用意しますよ」
フロント係はとたんに笑顔になり、奥の部屋へ入っていった。
「これで部屋はとれましたよ。お嬢さん」
男がそう青恵に微笑みかけると、
「せっかくのところ悪いが、わたしらは見知らぬ人から金を乞うような身分じゃないんだ」
鷹守は不愉快そうな顔で男に云った。
「僕は朱坂龍児といいます」
「朱坂の?」
鷹守が聞き返した。明日訪れる予定になっている親戚の姓だ。
28 :
田中:2013/05/09(木) 17:41:34.67 ID:nZANvDht0
>>24 落ちないしながくてもいいだろ
もう読んでないけど
29 :
田中:2013/05/09(木) 17:43:55.88 ID:0i7Gqx3D0
「もしかして、去年琴波さんと結婚したっていう?」
「はい」
青恵の問いに龍児は爽やかな笑顔で返した。
「あたしは朱坂青恵。こちらは家庭教師をしてくれている鷹守徹さん」
「どうも、鷹守です」
鷹守が微妙な感じで云うと、
「よろしく」
龍児は握手で返した。
「そうだ。よろしければ屋上のレストランで一緒に夕食でもどうですか」
「夕食?」
「もちろんです、私がごちそうしましょう」
龍児が万札を片手に笑みを浮かべる。なかなか感じのいい紳士だと青恵は感じた。
30 :
田中:2013/05/09(木) 17:44:21.74 ID:CtOTnniX0
>>28 それはそうなんだが、
できれば俺も楽しみたいなーという一意見であります
31 :
八神太一 ◆YAGAMI99iU :2013/05/09(木) 17:48:26.52 ID:1N35RcWH0
鷹守ハルカさん可愛い
32 :
田中:2013/05/09(木) 17:49:43.18 ID:0i7Gqx3D0
「すごい絶景!」
レストランの席に坐った青恵が、ガラス越しに夜景を見ながら声を上げた。
岡山駅周辺に立ち並ぶ、無数のマンションが出す光はまさに美といえる形を作り出している。
「楽しんでいますね、青恵さん」
向かいの席に座った龍児が、顔をおしぼりで拭いながら云った。
「龍児さん。岡山って結構都会なんですね」
「結構どころか、岡山はかなりの大都会だぞ」
ラーメンを啜りながら鷹守が云う。
「あたし、大阪より西のことはさっぱりわかんなくて……」
「ここらは中国地方じゃ交通の要所で、政令指定都市にもなっている。中国地方は全てジャングルというわけではないんだ」
「鷹守さん、なかなか詳しいじゃないですか」
龍児が感心したように云う。
「これでも家庭教師ですからね」
鷹守は得意げにラーメンを啜った。
33 :
田中:2013/05/09(木) 17:55:03.68 ID:0i7Gqx3D0
「そういえば、どうしてあたしのことがわかったんですか?」
「その首飾りを見て、気づいたんですよ」
龍児が目で青恵の首飾りを示した。
「青恵さんが目を模したガラスの飾りを気に入っていると聞いていましたからね」
「これはナザールボンジュっていうんですよ」
青恵が首飾りを手に持ちながら、笑顔で返答した。
その藍色のガラス玉には、青い瞳のような模様が描かれている。
「ナザールボンジュ、ですか」
「トルコやイランのアクセサリーですよ」
鷹守がドヤ顔で云う。
「これ、ずっと前にトルコ記念館(和歌山にある)を旅行したときに、お父さんがお土産屋で買ってくれたんです。
まあ、ペンダントにしたのは最近で、ちょっと前まではバッグにつけていたんですけどね」
「なるほど。確かに以前、僕がトルコに旅行したとき、街中でよく見かけました」
「えー、本当ですか? いいなあ……。そのときのことを話してくれません?」
「もちろん。いいですとも」
龍児は白い歯ぐきをむき出しにした。
34 :
田中:2013/05/09(木) 17:58:34.69 ID:CtOTnniX0
要するにXを当てろって事でいいんだよね?
35 :
田中:2013/05/09(木) 18:00:01.08 ID:0i7Gqx3D0
それにしても、この龍児という男はなかなかの男前だ。
顔の彫りは深く、目や鼻がくっきりとしている。背はおそらく178cm前後と、攻守ともに優れている。
彼と比べてしまうと、鷹守はよく祭りで伸びるアイスを売っている外人にしか見えない。
そんなことを考えながら、しばらく会話していると、
「ごめん、龍児くん。待った?」
不意にこちらに声がかかった。
声の主は女性だった。肩までかかった濃茶の髪。輝く真珠のイヤリング。
バッタのように華奢な四肢は、少し強い蹴りを入れればポキリと折れてしまいそうだ。
「いや、今きたばかりだ」
龍児が返答した。
「そちらは?」
「こちらは朱坂青恵さんと家庭教師の鷹守さん」
「ああ、剛健叔父様の……」
「こちらは僕の妻の琴波です」
龍児が手で琴波を示しながら云った。
36 :
田中:2013/05/09(木) 18:02:37.99 ID:0i7Gqx3D0
「ごめんなさい、あまり顔を覚えてなくて……」
琴波は軽く青恵に頭を下げた。
「いいんです。最後に会ったときはまだ小学校に上がる前でしたから」
青恵は鷹守のほうを向いて、
「この人は、あたしのいとこで琴波さん」
「どうも、家庭教師の鷹守です」
鷹守がふてぶてしい顔であいさつすると、「どうも」と琴波は返した。
37 :
田中:2013/05/09(木) 18:04:00.10 ID:CtOTnniX0
とりあえずCしておく
38 :
田中:2013/05/09(木) 18:05:44.18 ID:0i7Gqx3D0
「ところで、どうして今回、あたしたちは朱坂邸に呼ばれたんですか?」
雑談を交わしながら食事を終え、食後に頼んだデザートが出されたところで、青恵はそう切り出した。
「え……」
琴波は驚いた顔をして、
「青恵さん、明日、何があるか知らないの?」
「あ、はい。お母さんが今回はとても大事な集まりだから行けって云ったんです」
青恵が抹茶のハーゲンダッツを頬張りながら返答すると、琴波は唖然とした。
「もしかして、お爺様が亡くなったことも……?」
「え?」
青恵がスプーンの先を口に入れながら固まった。
「お爺さん、亡くなったんですか?」
「つい一ヶ月前に」
「そんな……」
呆然とする青恵の手から勢いよくスプーンが落ちた。
床に緑の液体を飛ばしながらスプーンが転がる。
39 :
田中:2013/05/09(木) 18:09:14.45 ID:0i7Gqx3D0
「葬式にもこなかったからおかしいと思っていたんだけど」
琴波がため息をついた。
「鷹守さん、あなたは?」
「まったく聞いていませんよ」
龍児の問いかけに、鷹守は肩をすくめながら、目を上斜めに向けた。
「奥さんは青恵さんを、朱坂一族に関わらせたくないみたいですからね」
鷹守はそう云いながら、床に落ちた青恵のスプーンを拾う。
「……」
しばらく沈黙が続いた後、
「今回は源永氏の遺産の話で朱坂邸に集まることになったんです」
龍児が口を開いた。
「遺産?」
青恵が反応する。
「そう。今は息子の清山氏が後を継いでいますが、源永氏も実業家としてかなりの富を築き上げたんですよ」
聞いたことがある。源永氏はその荒稼ぎぶりから地元では「岡山の怪物」と親しまれていたそうだ。
40 :
田中:2013/05/09(木) 18:14:16.54 ID:0i7Gqx3D0
「お爺様の遺言で、遺産は清山氏ではなく、私たち孫の四人に分配されるそうよ」
「孫の四人っていうと、あたし、琴波さん。それから護狼さんと鏡一さん?」
青恵の問いに、琴波が「そう」と頷いた。
「でも、どうして息子の清山さんじゃなくて、あたしたちに?」
「お爺様は、清山を信用していないみたいだから」
「信用していないって?」
「あなたも知っているでしょうけど、仕事で清山と対立していた人たちが次々と……」
「琴波、そういう話はやめよう」
龍児が怪訝な顔で琴波を見る。
「ごめんなさい」
琴波が頭を下げた。
「そんな不気味な話をしたら、デザートの味気がなくなる」
そういいながら、龍児は杏仁豆腐を口に運んだ。
「不気味な話といえば……」
しばらく黙っていた鷹守が、口を開いた。
「さっきから誰かがこちらをじっと見ているようですよ」
41 :
田中:2013/05/09(木) 18:14:44.97 ID:27/ahIkI0
わかったXが犯人や
42 :
田中:2013/05/09(木) 18:18:08.43 ID:lb6yB9EHO
会話おおすぎない
43 :
田中:2013/05/09(木) 18:18:13.10 ID:0i7Gqx3D0
「えっ!?」
鷹守を除いた三人は、はっとして、周りを見渡した。
「なんてね」
鷹守は唇を緩め、カウヒーを啜った。
「ちょっと、先生。冗談にしてもタチが悪いですよ」
青恵が両手で思い切りテーブルを叩く。
「悪い悪い。ただ、そんな気がしたんでね」
「……本当にそうかも」
琴波がそう云いながら、席を立った。
「私、そろそろ部屋に戻るね」
「ああ、わかった」
龍児が返答すると、琴波は部屋へと戻っていった。
「もう、先生が変なことを云うから、帰っちゃった」
青恵がタコのように口をすぼめた。
「悪い悪い。後でチェリオのジュース買ってやるから、気を落ち着けろ」
カウヒーを飲み干しながら鷹守が云う。
44 :
田中:2013/05/09(木) 18:22:12.49 ID:0i7Gqx3D0
.
※
午後二時。???は、ホテルの個室にいた。
「殺す」
口に出して呟いた。
ついに来たのだ。奴らを始末する時が――。
「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す! ふははは!」
感情がハイパーMAXに高ぶり、体が自動的に暴れ始めた。
鏡越しに見える、枕を振り回し、室内を荒らしまわる自分。
狂気。今の自分にはその言葉が似合うだろう。
「殺す……」
しばらく暴れた後、息を切らしながら、ベッドのシーツに包まる。
この狂気はまだ心の底に沈めておかなくてはいけない。計画を成功させるまで。
そう、明日になればこの復讐は果たされるのだ。
最期の夜景を楽しむがいい、あわれな子羊たちよ……。
45 :
田中:2013/05/09(木) 18:24:06.14 ID:bln75nAf0
ハイパーMAX
ハイパーMAX
46 :
田中:2013/05/09(木) 18:26:28.79 ID:0i7Gqx3D0
.
※
2007年5月4日、金曜日、早朝。
瀬戸内海に面する岡山港に青恵たちはいた。
「すごい……」
青恵が目の前の船を見て呟く。
朱坂家の所有する巨大クルーザ――「愛情1号」は壮大なスケールの船であった。
岡山港に浮かぶその船は、ガプガプと音をたてながら、潮の香りを運ぶ。
その後ろで、青い空と海が果てしなく広がる姿は、心をすがすがしくさせた。
「何度か乗ったはずなんですけど、久しぶりに見ると圧倒されますね」
青恵はそういいながら、鷹守に微笑みかける。
「いやあ、こんな船に乗れるなんて夢みたいだ」
鷹守がクルーザーを見上げながら頭を掻いた。
「今からこれに乗るんですよ」
龍児が云った。
「それでは、足元に気をつけて乗ってください」
47 :
田中:2013/05/09(木) 18:27:06.26 ID:Nd20rPFM0
ちょくちょくギャグ挟むの面白いからやめろ
48 :
田中:2013/05/09(木) 18:27:56.05 ID:0sqSw2pn0
今北産業
49 :
田中:2013/05/09(木) 18:30:27.77 ID:0i7Gqx3D0
そしてクルーザーに乗ろうと、海をまたぐ階段に足をかけた矢先、
カラン
と、音が鳴った。
ふと下を見ると、藍色のガラス玉が落ちている。
「紐が切れたみたいだな」
鷹守が地面に落ちたナザールボンジュを拾いながら云う。
「あーあ……先生、紐を結び直しておいてくれません?」
「ったく、しょうがないな」
鷹守は胸ポケットにナザールボンジュをしまった。
※
「龍児、琴波、遠いところからよく来てきてくれた」
船内の会議室につくやいなや、朱坂清山はそう云いながら、青恵たちを出迎えた。
鷲のような鋭い目はかなりの貫禄を感じさせ、黒い柄の杖は王者の風格をかもし出している。
その威圧感のあまり、彼の周囲の人物は、サバンナの王者・ライオンに狩られる直前のウサギのようにさえ見えた。
50 :
田中:2013/05/09(木) 18:32:34.65 ID:bln75nAf0
_,,;' '" '' ゛''" ゛' ';;,,
(rヽ,;''"""''゛゛゛'';, ノr)
,;'゛ i _ 、_ iヽ゛';, 「龍児、琴波、遠いところからよく来てきてくれた」
,;'" ''| ヽ・〉 〈・ノ |゙゛ `';,
,;'' "| ▼ |゙゛ `';,
,;'' ヽ_人_ / ,;'_
/シ、 ヽ⌒⌒ / リ \
| "r,, `"'''゙´ ,,ミ゛ |
| リ、 ,リ |
| i ゛r、ノ,,r" i _|
| `ー――----┴ ⌒´ )
(ヽ ______ ,, _´)
(_⌒ ______ ,, ィ
丁 |
| |
51 :
田中:2013/05/09(木) 18:34:59.94 ID:0i7Gqx3D0
「そちらは……もしや剛健の?」
清山が青恵に目を配らせながら云う。
「あ、はい。こっちは保護者代わりの鷹守さんです」
青恵が手で指し示すと、鷹守が「家庭教師の鷹守です」と自己紹介した。
「なるほど」
清山はニタリと笑った。まるで、獲物を舐めますトラのように。
その姿はソビエト連邦の指導者、ヨシオ・スターリンを思い起こさせる。
「さて、それでは紹介しよう。どちらも私の息子だ」
そう云いながら、清山はソファに坐る二人の男を見た。
「まずは、鏡一」
清山が名前を告げると、
「よろしく」
鏡一がカラリとした笑顔で挨拶をした。
黒ふち眼鏡に白い肌、さらりした髪、まるで糸こんにゃくのようにナヨナヨした腕、今時の女っぽい若者を絵に描いたような感じの青年だ。
赤いワイシャツはややはだけており、だらしない雰囲気をかもし出している。南極に行けば、十秒足らずで死んでしまうだろう。
52 :
田中:2013/05/09(木) 18:39:41.20 ID:0i7Gqx3D0
「その隣にいるのが、鏡一の兄の護狼だ」
護狼は返事をせず、モアイ像のような表情でこちらをジロリと見た。
190近い長身に黒い肌、緑のタートルネック越しでもゴリリとわかる筋肉は、鏡一とは対照的だ。
「なんか、機嫌が悪いみたいですね」
青恵が琴波にささやく。
「アレは、いつもあんな感じ。根暗なのよ」
琴波は鼻毛を見るような目で護狼を一瞥した。
「さて、自己紹介がすんだところで本題に入ろう」
青恵たちを席に坐らせると、清山が云った。
「今回、われわれが集まったのは、私の父、朱坂源永の遺産の行方についてだ」
「そういや、お爺さんの遺産ってどれぐらいなの?」
鏡一がソファにもたれかかりながら、首を傾げた。
「低く見積もっても十二億はあるだろう」
「じ、十二億!?」
具体的な金額が出され、一同がざわつく。
53 :
田中:2013/05/09(木) 18:45:35.30 ID:0i7Gqx3D0
「ってことは、四人で分けるとしても一人あたり三億! 生涯ニートで暮らせるじゃねーか!」
鏡一が鼻の穴を大きくしながら云う。
「いや、必ずしも、お前の手に入るとは限らん」
「え? いったいどういうことだよ」
「朱坂源永が残した遺産は……」
そういいながら、清山は封筒から一枚の紙を取り出し、
「この暗号を解いた人間の手に渡るとのことだ」
バァンとテーブルの上に叩きつけた。
――――――――――――――――――
佳帰紅化効刑
暗※ 号※ ※解 ※読 ※せ ※よ
――――――――――――――――――
54 :
田中:2013/05/09(木) 18:52:18.58 ID:0i7Gqx3D0
コピー用紙に印刷された、もはや意味がわからない文字の羅列。
しかしその紙はその場にいた全員の注目を引く魔力を持ち合わせていた。
「どういうことですか、伯父さん」
琴波が怪訝な顔で清山を見る。
「父の遺言だ。『朱坂源永の遺産を継ぐのは、四人の孫のうち、ただ一人。私の出す暗号を解いたものに限る』……と」
清山の言葉に、またもや一同がざわついた。
「なるほど。優秀な脳を持ち合わせたものこそ、朱坂家の跡継ぎにふさわしいということか」
モアイ像のごとく黙りこくっていた護狼が突然口を開いた。
「えーっと、カキコーカコーケー」
青恵が紙を手に取り音読をすると、鏡一が完全に舐め腐った声で笑い始めた。
「そのまんま読んでどうすんだよ」
「だって、まずは色々なやり方を試してみないと……」
「まあ、気持ちはわかるけどね」
「先生はどう?」
青恵が鷹守にささやく。
55 :
田中:2013/05/09(木) 19:03:06.04 ID:0i7Gqx3D0
「無論。すぐに解けたよ」
アラブ人顔の家庭教師はドヤ顔で答えた。
「本当!?」
鷹守の言葉に、その場の空気が一気に張り詰める。
「ああ、この暗号は……」
「イリエヒカリ」
鷹守の言葉を遮って、龍児が口走る。
「そうですね? 鷹守さん」
「……その通り、その言葉がこの暗号に示されてる」
龍児が得意げな笑顔を浮かべると、
「どういうことなの?」
琴波が怪訝な顔で龍児に問いかけた。
「説明は鷹守先生に願いましょう」
「まあ、それなら、お言葉に甘えて……」
鷹守は暗号を手に取ると、紙芝居のように全員に示した。
「まずは暗号の下の部分に注目してください。ここに、『暗号解読せよ』と書いてあります」
56 :
田中:2013/05/09(木) 19:09:37.79 ID:TZy8yf2C0
感動した
57 :
田中:2013/05/09(木) 19:09:39.46 ID:0i7Gqx3D0
「そりゃ、見ればわかるけど……横に変な記号がついてるな」
鏡一があごを親指で押さえながら云う。
「そう、この※(米印)の部分が重要なんだ」
鷹守は続けて、
「そこで、上方の漢字の羅列に注目してください。何か気づきませんか?」
一同が暗号文を凝視する。
「どの文字もカタカナが入っているのか」
護狼の言葉に、鷹守が「ご名答」と返す。
「佳、帰、紅、化、効、刑、この六つの字にはそれぞれカタカナを含む構成になっています。
さらに、上方の漢字の羅列と、この米印がついた『暗号解読せよ』の文句には「六字」という共通点がある。
六つの字を、カタカナとそれ以外に分け『暗号解読せよ』の米印がついていない方のカタカナを読んでいくと……」
「イ・リ・エ・ヒ・カ・リ、本当ですね」
青恵が感嘆の声を上げた。
「やるじゃないか。まあ、おれも云わなかっただけで解けてたけどね」
「イリエヒカリ……たしか、家政婦の?」
鏡一の言葉を無視して、琴波が声をもらす。
58 :
忍法帖【Lv=3,xxxP】(1+0:8) :2013/05/09(木) 19:16:24.64 ID:yG6ZoUn+0
あんまり文章力だけど
まで読んだ
59 :
田中:2013/05/09(木) 19:18:10.22 ID:0i7Gqx3D0
「ああ、朱坂邸の家政婦の名前だ。爺さんにえらく気に入られてた」
護狼が眉をしかめながら云う。
「まさか、遺産を全てその人に渡すつもり?」
「それはないだろ。親父が言うことが本当なら、遺産を継ぐ資格があるのはオレら四人だけだ」
「そうだ! 暗号を解いたのは孫でもなんでもない龍児さんと、外国人のおっさんだ! 無効だ無効!」
鏡一がソファから身を乗り出して大騒ぎする。
「黙れ!」
清山が杖を床に叩きつけて叫ぶと、一同はスイッチを切られたオーディオのように押し黙った。
「素晴らしい、鷹守くん」
静寂の中を支配するかのように清山が鷹守に声をかける。
「うちの馬鹿息子たちにも君のような家庭教師がついてほしい」
「なに、大したことではありません」
鷹守は肩をすくめた。
「そして、龍児。さすがは私が見込んだ男だ」
「いえ、勿体無いお言葉です」
龍児が清山に一礼する。
60 :
田中:2013/05/09(木) 19:21:23.49 ID:0i7Gqx3D0
「ぽまえなら、私の後継者にしてもいいかも知れんな」
清山は邪悪な笑みを浮かべると、「では、昼食まで解散だ」と吐き捨てて部屋を後にした。
「けっ」
護狼は、清山が部屋を出ていく姿をその姿を見送るやいなや、わざとらしく舌打ちした。
「龍児、思い上がるなよ」
「思い上がる? 何のことかな」
龍児が微笑しながら言葉を返す。
「朱坂家の後継者は、このオレだ」
「安心するといい、僕は清山氏の後継者になるつもりなんてない。朱坂家は君が継ぐといい」
「そういう態度がむかつくんだよ!」
護狼は鼻を限界まで広げながら中指を立てると、顔を真っ赤にして部屋に戻っていた。
「なんか、怖いですね」
青恵がドン引きしながら呟く。
「ホント、常識ないんだから。親に似て人間のクズね」
琴波は倒れたゴミ箱を見るような目で護狼を見送った。
61 :
田中:2013/05/09(木) 19:24:25.43 ID:mi4gn+C0O
推理小説を最後から
めくれるようなはずはない♪
62 :
田中:2013/05/09(木) 19:28:39.52 ID:zyDT6IT40
目が痛い
63 :
田中:2013/05/09(木) 20:02:15.86 ID:0i7Gqx3D0
.
第二章 惨劇の序幕
会議室から解散し、一同はそれぞれの個室の鍵を手渡され、部屋に戻ることになった。
「なあ、そろそろ聞かせてくれないか」
部屋に入って、しばらくすると、鷹守が口を開いた。
「え?」
青恵が聞き返す。
「奥さんが清山氏を憎み、お前を朱坂家に関わらせないようにしているのには、理由があるんだろう?」
「実は、あたしのお父さん、殺されたんです」
「何?」
「今から向かおうとしている朱坂邸で」
青恵はベッドに腰をかけると、そのまま話を続けて、
「朱坂家では年に一度、3月の終わりに一族が屋敷に集まることになっているんです。
以前は、あたしもお母さんも、毎年この船で朱坂邸に行っていました。ですが、七年前のあの日を境に……」
64 :
田中:2013/05/09(木) 20:06:29.08 ID:0i7Gqx3D0
「そのとき剛健氏が殺害されたのか」
「はい。その日、あたしはインフルエンザで母と自宅にいました。お父さん一人で屋敷に行くことになったんです。
夜明け、悲鳴が屋敷中に響き渡って、執事の山田が部屋を見に行ったら……お父さんが背中を包丁で刺されていて……。
結局、岡山県警が捜査をしたんですが、犯人はわからず事件は迷宮入りになったんです」
青恵は腹の底から、ため息をついた。
「まさか奥さんは、犯人が清山氏だと?」
「お母さんは、清山伯父さんをウイルス人間だと云っています。あの人に少しでも関わると不幸になるって……」
「そういえば、昨日、琴波さんが妙な話をしていたな?」
「昔から仕事で伯父さんと対立していた人たちは、次々と不審な死に方をしているんです。」
青恵が声をやや伏せて云う。
「何だと?」
「琴波さんのお父さんの麻人おじさんも、五年前、仕事が軌道に乗り始めた途端、ひき逃げにあって亡くなったんだとか」
「なるほど、そんなに危険な男だったとはな」
鷹守は肩をすくめて、やれやれと首を振った。
「先生、本当にお父さんを殺したのは伯父さんだと思いますか?」
「わたしは証拠無しに、誰かを殺人犯扱いすることはできないな」
「そうですよね……」
65 :
田中:2013/05/09(木) 20:54:55.69 ID:B2KOV1Bs0
最初に登場人物紹介した時点で終わってる
66 :
田中:2013/05/10(金) 00:30:07.45 ID:F3ZzzUJe0
「」多すぎてわかんない
67 :
田中:2013/05/10(金) 00:32:47.41 ID:0DYzGYrm0
なんかワロタ
がんばれ
68 :
田中:2013/05/10(金) 06:24:29.26 ID:iGUCeYxX0
文才NASA杉
69 :
田中:2013/05/10(金) 08:49:29.85 ID:GY1zz14u0
失望した様子の青恵を鷹守が凝視していると、
コン、コン
とノックする音が聞こえた。
「よう。河合子猫ちゃん」
扉を開けると、朱坂鏡一が軽い声を上げた。
その後ろには取り憑いた背後霊のごとく、琴波の姿がある。
「鏡一さん、どうかしたんですか?」
「島に着くまで暇だから、みんなでUNOでもやって遊ぼうと思ってね」
「あ、やりますやります!」
青恵は部屋の外をキョロりと見渡すと、
「龍児さんはいないんですか?」
「部屋で読書してるみたい。集中してるみたいだから、そっとしといてあげといたの」
琴波がそう云いながら微笑した。
「それじゃあ、護狼さんは?」
「あいつはコミュ障だから、最初から誘わないよ」
70 :
田中:2013/05/10(金) 08:58:06.63 ID:GY1zz14u0
鏡一はそう云いながら、バッグをベッドの上に乗せ、
「そうだ、四人いるんだから、マージャンにしようか?」
「あー、あたし、ルールわかんないです」
「そんなら、しゃーない。UNOをやるとするかな」
鏡一は肩をすくめると、バッグから取り出したUNOをテーブルの上に放り投げた。
「さて、11時。UNOを開始……」
腕時計に目をやると、鏡一は胸ポケットから二本のボールペンを取り出し、黒い手帳になにやら書き始めた。
「何書いてるの?」
「日記さ」
青恵の言葉に反応し、鏡一が手帳を広げて見せた。
7:00〜8:00 起床。朝ごはんはファミチキだった(ホテル横のローソンで購入)。
8:40 ホテルをチェックアウト。
9:02〜9:23 電車で移動
10:00 新岡山港にて乗船
10:13〜10:40 船内の会議室でなんかいろいろ話す。
11:00〜 青恵部屋にて、UNOを開始。
71 :
田中:2013/05/10(金) 18:10:11.75 ID:GY1zz14u0
時刻は赤インク、事柄の説明は黒インクで塗り分けてある。
意外にも字はとても綺麗で、枠に満遍なく収められていた。
「鏡一は日記魔なの」
琴波が呆れ顔でぼやいた。
「リアルタイムで具体的事柄を書き残してこそ、本当の日記さ」
得意げに鏡一は青恵に日記を手渡す。
「あたしなんて夏休みの日記すら埋めたことありませんよ」
青恵が日記をパラパラとめくりながらぼやいた。
一月から日記はずっと書かれ続けている。おそらく、それ以前にもたくさんの日記が書かれたのだろう。
どのページもきちんと赤と黒が使い分けてあり、なかなか神経質なのかもしれない。
「これは死ぬ直前まで続けるつもりだよ。おれの生きがいだね」
※
その後、四人でわいわいと楽しくUNOをしている途中……。
「ところでUNOってどういう意味なんですか?」
青恵が首を傾げながら、鷹守に問いかけた。
「ああ、UNOというのは……」
72 :
田中:2013/05/10(金) 18:17:34.50 ID:GY1zz14u0
「スペイン語で『1』って意味だよ」
鷹守の言葉に割り込んで、鏡一が答える。
「だからこのゲームでは残りの札が最後の一枚になると、『UNO』というんだ」
「わあ。鏡一さんスペイン語がわかるんですか?」
「スペイン語とアメリカ語は得意分野なんだ。最近はフランス語も勉強してるけど」
黄のリバースを出しながら、ドヤ顔で鏡一が云う。
「鏡一は、カナダに留学してるの」
琴波が云った。
「へえ、すごい……」
青恵が目を丸くする。
「先生はなんか外国語が使えるんですか?」
「学生時代は韓国・朝鮮語を専攻していたが、まあ完璧に使いこなせるのは日本語だけだな」
鷹守はそう云いながら、赤のリバースを置いた。
「さあ、これで次は鏡一くんの番だ」
「おっーと、これであがり! やったぜ!」
赤の7をテーブルに叩きつけると、鏡一が身を乗り出しはしゃぐ。
73 :
田中:2013/05/10(金) 18:25:40.31 ID:vNCt2RlH0
登場人物が多すぎてもはや誰が誰だかわからない
74 :
田中:2013/05/10(金) 18:25:52.14 ID:GY1zz14u0
「いや、赤で勝つと決まりがいいね。おれは赤が大好きだからな」
「朱坂だけにか?」
鷹守がしてやったり顔で云うと、
「赤はおれにとって、思い出深い色なんだ」
ほんの一瞬、ゾッとするような不気味な笑みを見せたかと思うと、鏡一はやや目を伏せ気味にして声を落とした。
「おれの母さんの最期の姿、真っ赤だったからね」
「鏡一さんのお母さんが?」
青恵がやや引き気味に受け答えする。
「そう、車のブレーキが壊れて、そのまま崖にまっ逆さまに転落。もろに岩場に激突して……」
「それで伯母さんは亡くなったんですか?」
「そうだよ。結局、ただの事故として片付けられたけど、あれはおそらく親父が……」
「鏡一!」
琴波が眉を八の字にして怒鳴る。
「冗談にしても、不謹慎でしょう?」
「ああ、ごめんごめん」
鏡一が顔の緊張をふりほどいて頭を下げた。
75 :
田中:2013/05/10(金) 18:45:35.06 ID:GY1zz14u0
「ところで鏡一くん、君はさっき『UNO』を宣言しなかった。ペナルティーとしてあがりは無効だ」
鷹守の指摘に、鏡一が絶望する。
「さあ、仕切りなおしといこうか」
※
正午になり、青恵たちはオープンデッキに昼食をとりにいった。
潮風の気持ちよさが頬を伝う。しかし、潮風よりずっと魅力的なのはテーブルの上に乗せられた料理の数々だ。
「これ、おいしいですねえ」
青恵が黄ばんだごはんの上に貝とかソースがグチャっと乗った料理を食べながら、笑みをこぼす。
「なかなか本格的な西洋料理だな。さすがは朱坂家だ」
鷹守が血のように赤黒いワインを口にしながら云う。
「ほう。楽しんでいるようだな」
背後から低く威厳のある声が聞こえる。
振り向くと、黒いスーツに実を包んだ朱坂清山の姿があった。
76 :
昼の帝王 ◆QYmbdsVg06 :2013/05/10(金) 19:34:21.34 ID:5UCYaxik0
UNOは神
77 :
田中:2013/05/10(金) 19:34:59.07 ID:GY1zz14u0
「あ、はい、伯父さん」
「そんなに緊張しなくていい」
そう云いながら、清山は青恵の肩に手をベタリと乗せた。
「私の料理を楽しんでくれているようだな。苦労したかいがあったよ」
「まさか、伯父さんが作ったんですか?」
青恵が震える指で、白いテーブルの上にある、食べかけの料理を指差した。
「昔は料理人を目指していたのだよ。時々このようにして誰かに料理を振舞う。
私の作った料理で笑顔になってくれれば、悪い気はしないからな」
そういいながら、清山が笑みを浮かべる。不思議と普段の厳格さがなくなっているように感じた。
「さあ、もうしばらく航海を楽しみたまえ」
「毒が入ってないだろうな?」
清山が離れてると、鷹守が怪訝な目で、料理を凝視した。
「意外……清山伯父さんにあんなフレンドリーな一面があるなんて」
「ま、人間は誰しも色んな面があるもんだ。外面だけで人を判断しちゃいけない」
鷹守はビールを啜りながら云った。
78 :
田中:2013/05/10(金) 19:45:50.67 ID:GY1zz14u0
「ご主人様!」
昼食が終わりに近づいたころ、執事の老人が大声をあげ、清山の元へ走ってきた。
「山田。食事中だ。耳障りな音を立てるな」
「も、申し訳ありません」
山田が肩で息をしながら、清山に深々と頭を下げた。
「で、用件は何だ?」
「さ、先ほど、船内を見回っていたところ、こんなものが……」
山田が震える手でポケットから、綺麗に折りたたまれた一枚の紙を清山に手渡した。
紙を広げ、中身を確認すると、
「なんだこれは!」
清山は大声を上げた。
「いったい、どうされたのですか?」
琴波と共に食事を取っていた龍児が清山に声をかけた。
「誰が……誰がこんなたちの悪いイタズラを!」
清山は叫びながら、紙をその場の全員に広げて見せた。
その場の一同の視線が、一斉に紙の上へ集まる。
79 :
わふー ◆wahuu.39/s :2013/05/10(金) 20:04:07.09 ID:yTbqwJA0T
これまでの展開を三行で
80 :
田中:2013/05/10(金) 20:30:13.27 ID:GY1zz14u0
>>79 親戚の家にいくため船に乗る一同
昼食中に謎の置手紙
大騒ぎになる
81 :
田中:2013/05/10(金) 20:44:53.72 ID:GY1zz14u0
.
――――――――――――――――――
罪深き一族の人間を、殺す
暗黒の使徒
――――――――――――――――――
白い淡白な紙の上に、血のように赤黒い絵の具で字が刻まれていた。
「罪深い一族……なんだこりゃ?」
鏡一が手で口を拭いながら、呟いた。
「お前のイタズラじゃないのか?」
同じテーブルに坐る護狼が、鏡一を横目で見た。
「まさか。こんなのもはや日本語になってないし、つまらんじゃん」
「だったら、いったい誰が?」
護狼がワインに口つけながら眉をしかめた。
「殺人予告。でしょうか、これは」
龍児が神妙な顔で云う。
82 :
田中:2013/05/10(金) 20:49:14.96 ID:GY1zz14u0
「やめてよ……気味が悪い」
琴波が不安げな表情を見せた。
「なんだこれは私への挑戦か!?」
清山が予告状をびりびりと引き裂き、空に放つ。
「いいだろう! 殺せるものなら殺してみろ!」
紙吹雪の中、清山は高らかに叫んだ。
「まったく、どいつもこいつもランチタイムに慌しいな」
鷹守がタコの刺身を頬張りながらぼやいた。
「先生。いったい何なんでしょう?」青恵が囁く。
「ただのイタズラにしては、なかなか手が込んでいる」
「もしかして、誰かが……」
青恵が言葉を続けようとするのを遮るようにして、
「ぐああああああああ!」
大きな悲鳴が瀬戸内海に響き渡った。
83 :
ヒロポン:2013/05/10(金) 20:56:59.37 ID:PTHgl1rS0
うんこ
84 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 20:58:08.64 ID:GY1zz14u0
「な、なに!?」
青恵が立ち上がってあたりを見渡す。
「ぐおお……」
そこには、椅子を転げ落ちた護狼がうめき声をあげながら、うずくまる姿があった。
テーブルから落ちたグラスが割れ、ワインが床にこぼれている。
「まさか、料理に毒が?」
龍児がそう口走るとすぐに、
「山田、水だ!」
清山が執事を指差しながら叫んだ。
すぐに、山田がバケツを持って走る。
「吐き出せ!」
清山がゴルフグラブのごとく杖を護狼の背中に何度もぶち込む。
護狼は大きく背を反らし、口から赤黒い吐しゃ物を出した。
バケツに水を汲んだ山田が、急いで護狼に水を飲ませる。
再び背を反らして、護狼が吐き出す。
「ハァハァ……」
しばらくして護狼が肩で息をしながら立ち上がった。
85 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:05:58.12 ID:GY1zz14u0
「大丈夫か、護狼くん」
龍児が護狼に声をかける。
「くそっ、なんだいったい……突然激痛が口から喉に広がりやがった」
護狼は喉を押さえながら咳をした。
「どうやら、あの予告状は本当だったようだ」
鷹守は清山のほうまで歩いていき、
「これは殺人事件です。清山さん、すぐに警察に連絡をしてください」
「なにを馬鹿な」
清山が床を杖で叩く。
「まさか本当に誰かが毒を盛ったとでも云うのか」
「無論です」
鷹守が答えた。
「護狼さんの飲んでいたワインからかすかにアーモンド臭がする。これは恐らく青酸カリでしょう」
「青酸カリだと?」
一同が言葉を失う。
「おそらく、全員が予告状に気をとられてる隙に、誰かがこっそりと護狼さんのグラスに毒を盛ったんだ」
86 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:19:13.38 ID:GY1zz14u0
「……なるほど。筋は通っているな」
「犯人はまた誰かを同様の手口で狙うかもしれません」
「よかろう。山田、すぐに警察に電話をしろ」
清山が執事に目を向ける。
「そ、それがご主人様。無線電話が何者かに壊されています」
執事は冷や汗を流しながら云った。
「なんだと」
「警察への連絡は不可能です」
「馬鹿者め!」
咆哮をしながら、清山が杖で山田を殴った。
黄色の取っ手の眼鏡が宙を舞い、地面に転げ落ちる。
「貴様! なんという失態を!」
「申しわけありません……」
山田が土下座しながら許しを請う。
跪く山田を、清山は杖で殴り続けた。
「しかし、警察に連絡ができないとはな」
鷹守がため息をつく。
87 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:26:29.05 ID:GY1zz14u0
「それじゃあ、あたしたち……」
青恵が震えながら声を漏らす。
「殺人鬼と共に、この船に閉じ込められたというわけだ」
気づけば、青い空は黒い雲に覆われ、潮風が張り付くように気持ち悪く感じる。
数分前まで和やかだった場の空気は、一気に戦場のごとく殺伐とし始めた。
「それじゃあ、オレはまた狙われるかもしれないということか?」
護狼が自らを指差しながら、体を震えさせた。
「兄貴。全員で集まってれば大丈夫さ」
「全員で集まっていれば大丈夫だと? どこにそんな保障がある」
護狼はクレーマーのごとく鏡一に因縁つける。
「もしもこの家庭教師の云うとおり、予告状のことで騒いでいる間に毒が入れられたのなら、犯人はこの中にいるということになる」
護狼は鬼のような形相で周囲を睨むと、鏡一の胸倉を掴んだ。
「特にお前は一番怪しい。オレと一緒のテーブルだったからな。オレが死ねば親父の跡継ぎの座が回ってくるという点でも動機はバッチリだ」
「おいおい、マジかよ……」
2メートル近くの巨人に吊るされ、こんにゃく男は顔を青くした。
88 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:30:49.53 ID:GY1zz14u0
「護狼くん、いいかげんにしないか」
急いで龍児が鏡一から護狼を突き放す。
「気持ちはわかるが、周りに当たりちらすのは間違っているだろう」
「龍児! お前にも動機があるはずだ!」
護狼がビシッと龍児へ指を突きつける。
「親父に気に入られているお前はオレを亡き者にして、朱坂家を乗っ取ろうという魂胆なんだろう」
「馬鹿なことを……」
「殺人鬼と一緒にいられるか! オレは一人で寝るぞ!」
そう吐き捨てると、護狼はズンズンと部屋に戻っていった。
「鏡一。大丈夫か?」
咳き込む鏡一に龍児が声をかける。
「えらい目にあったよ。あのゴリラ野郎」
「まったく、あの被害妄想ぶりは困ったものだよ」
龍児が眉をしかめた。
「まあ、兄貴の云うことにも一理はあるな」
鏡一が眼鏡の位置を正しながら呟く。
89 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:36:06.43 ID:GY1zz14u0
「誰が犯人かわからない以上、大勢でいるのは息が詰まるよ。おれも一人でいるのがいいと思う」
「おいおい、お前まで……」
そう云いながら、龍児が眉をしかめた。
「なんにせよ。あと一時間で朱坂邸につく」
清山が息を切らしながら云った。
「犯人もそれまで下手な動きはしまい。私は部屋に帰らせてもらおう」
清山が山田を引き連れて船内に戻っていく。それに習い、鏡一も部屋へと帰っていった。
「まったく。悪いところで似ているな、清山一家は」
龍児がやれやれと肩をすくめる。
結局、残った四人もそれぞれの部屋に戻り、朱坂一族は船の中に散らばることになった。
「本当にあたしたちの中の誰かが料理の中に毒を盛ったんでしょうか」
ベッドに坐り、上下に揺れながら、青恵が鷹守に問いかけた。
「恐らくな。同じボトルから注がれたワインを朱坂鏡一が口にしていたが、奴は青酸カリに当たっていない」
「それじゃあ、あたしと先生と護狼さんを除いた、五人の中に……」
「犯人はいる」
鷹守が眼力を強くして云い放った。
90 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:44:47.23 ID:GY1zz14u0
.
※
???は船内のベッドの上に寝転がりながら、伏せた笑い声を上げていた。
――なにもかもが、思い描いたように進んでいく。
この「愛情」の名を騙った舞台の中で、無垢に動き回る滑稽な道化たち。
自分たちがこれから先に待ち受ける惨劇もしらずに……。
「殺す」
小さく、口に出して呟いた。
たった三文字あるが、幼さと惨さという逆説が交じり合った、人の狂気を体現する言葉だ。
きっと、この計画が完成した後も、私はこの言葉を愛し続けるのだろう。
だが、この計画にとって、予想だにしなかった存在がある。――あの鷹守という家庭教師だ。
源永の暗号を解き明かしたあの頭脳は計画にあらぬ歪を与える可能性がある。
「殺す」
再びそう口にして、私は笑った。そう、殺せばいい。
目障りなものは全て殺す。それは過去も今もこれからも永久に変わらない。
91 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 21:54:10.94 ID:GY1zz14u0
自分の中の狂気を抑えながら起き上がり、黒光りする”エモノ”を手にとった。
障害は、全て排除……。
邪魔なものは全て殺ス……。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
「ククク……。ふーっはっはっは!」
私は高らかに、邪悪な叫びを上げた。
92 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/10(金) 22:31:23.09 ID:GY1zz14u0
.
※
二時を回った頃。朱坂琴波は部屋のテーブルで一人、本を読んでいた。
セルバンテスの”ドンキーホーテ”。ルネサンス後期にスペインで書かれた、お笑い小説だ。
気を落ち着けるには読書が一番であるというのが、亡き父の教えである。
トン、トン
不意にノックする音が聞こえた。
「どなた?」
扉に向かって声をかけるが、返事がない。忍び足で扉に近き、ガラス穴から外を覗く。
――同時に、背筋がゾッと凍りついた。
赤い獅子舞の仮面。黒いコート。そして、手に持った巨大な斧。
明らかに正気ではない生き物の姿が、そこにはあった。
「あ……」
琴波が言葉を失い、急いで扉から離れようする。
その瞬間、仮面の男は背を反らし、そのまま斧を振り下ろした。
93 :
【IQ117】 :2013/05/11(土) 00:08:32.82 ID:4tyy5DSd0
ローソンでファミチキ購入まで読んだ
94 :
田中:2013/05/11(土) 04:19:25.32 ID:I2eECtFg0
犯人わかったわ
95 :
田中:2013/05/11(土) 04:31:39.18 ID:XJefYJaq0
うわなにこのスレ
明日じっくり読むか。ええな。2chで小説かくって発想に吹いてしまった
支援
96 :
田中:2013/05/11(土) 09:27:01.24 ID:9T/t6VAz0
初心者は短編小説で練習しよう
97 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:27:54.30 ID:Zv9hwZf60
.
第三章 殺戮の大斧
日が西に傾き始めた頃。鷹守は片目をつぶりながら、ナザールボンジュの穴に紐を通そうとしてた。
……が、なかなかうまく通らない。元々ガラス玉に開いていた穴があまりに小さく、裁縫用の糸でもない限りは通る気がしない。
とはいえ、他人の所有物であるから、無理やり穴を拡大させるわけにもいかないのだ。
「先生、もう直りましたか?」
青恵がベッドに寝そべりながら、鷹守に訊く。
「まだだ。これはとても慎重な手法を要する。今はなるべく声をかけないように」
鷹守は和風総本家に出演する職人たちのような目つきでそう云うと、青恵は「あい」となんか微妙な返事をした。
「はあ、なんか暇つぶしの道具でも持ってこればよかったあ」
青恵が背を伸ばして体を捻り、あくびをする。
……その時だった。
98 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:35:04.38 ID:Zv9hwZf60
「イギャアアアアアアアアアアアアアアッ!」
船中に、もはやこの世のものとは思えないような、おぞましい悲鳴が轟いた。
「やっ、何……?」
青恵がびくついて声をもらす。
「今の声、琴波さんじゃないか?」
「まさか……殺人鬼が?」
「外を見てくる。どこかに隠れていろ!」
鷹守がそう云うと、青恵は頷いて素早く押入れの中に入った。
ダッシュで鷹守は琴波が部屋の前まで向かうと、粉々にされた扉の木片が散らばっていた。
「いったい、何があったんですか?」
大声を出し、部屋の中を確認すると、鷹守は目を見開いた。
――白い髪、そこから顔を覗かす不気味な獅子舞の面。それに似合わぬ黒いコート手袋。そして、血を垂らす大きな斧。
その不気味な男は、肩から血を流した龍児とその身を支える琴波の方を向いて立っていた。
さっと振り向き、金色の目玉で鷹守を睨みつける。
99 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:45:06.35 ID:Zv9hwZf60
「貴様……」
鷹守が次の言葉を出す前に、仮面の男は斧を龍児に向かって振りかぶった。鷹守はすぐさま仮面の男にとび蹴りをする。
仮面の男は後退し、その隙に琴波は悲鳴を上げながら龍児を連れて部屋の外へ出た。仮面の男はすぐにその後を追おうとする。
「おっと、ここから先は通さないぜ」
部屋の入り口をふさぐようにして、鷹守が仮面の男の前に立ちふさがる。
振り払うように振られる斧を、鷹守は華麗なステップでかわした。そのまま鷹守は地面に転がった細長い木片を手に取る。
「うおおおおおおおおおお!」
木片を持って殴りかかると、仮面の男はバックジャンプでかわした。間髪入れず繰り出される斧の一撃を鷹守は木片で防ぐ。
剣道のごとく、木片と斧で攻防を始める。
「はあ!」
「ていっ!」
鷹守と仮面の男は互いに声を出しながら、しばらく切り合い続ける。
「おりゃあああ!」
槍のように木片を持って鷹守が思い切り腹を突くと、
「ぐぅおおおおおおお」
仮面の男は呻き声を上げて、ヨロヨロと後退した。
鷹守に背を向け、走って逃げていく。
100 :
田中:2013/05/11(土) 13:46:38.83 ID:5pmFru3c0
私怨
101 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 13:51:06.43 ID:Zv9hwZf60
「待て!」
鷹守が走って仮面の男を追いかける。
仮面の男は走りながらコートの裾から何かを取り出し、それを鷹守に投げつけた。
咄嗟にかわして、素早く投げつけられたものに目をやる。
黒光りし、幾多も散らばる、棘の塊。忍たま乱太郎などでたびたび使用される武器――まきびしだ。
これでは走って追いかけることができない。鷹守は舌打ちをした。
「な、なんだお前は!?」
角を曲がった先の廊下から、護狼の声がこだました。
「護狼さん! 逃げるんだ!」
はっとしてすぐに鷹守が必死に叫ぶ。
「ぐおあああああああああああ!」
護狼の叫び声が耳をつんざく。
鷹守はつまさき歩きですぐにまきびしを乗り越えた。
廊下の角を曲がると、大量の汗を流しながら尻もちをついている護狼の姿があった。
「大丈夫ですか、護狼さん」
鷹守は安堵して声をかける。
102 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 14:07:10.22 ID:Zv9hwZf60
「なんなんだ、今の獅子舞野郎は。斧を振り回しながら走り去っていったが……」
護狼が汗拭きながら立ち上がった。
「おーい。どうかしたの?」
向こうの廊下の角を曲がって、鏡一がやってくる。なにこいつらという表情でキョトンとしている。
「そっちで獅子舞の面を被った怪しい男を見なかったか?」
「なんのこと?」
鷹守の質問に鏡一は首を傾げた。
「……どういうことだ」
鷹守が周りを見渡す。一本道の廊下には窓一つと消火器があるだけで、隠れることができるような場所はない。
窓を開くと、室内に気持ちいい潮風が流れ込んできた。
下は当然海になっており、ここを飛び降りて脱出することは不可能である。
「消えた……」
鷹守が海を凝視しながら、呟いた。
「ちょっと、何があったか説明してよ」
「鏡一くん。すぐ会議室にみんなを集めてくれ」
しおらしい顔をして鷹守が云った。
103 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 14:12:20.91 ID:Zv9hwZf60
.
※
「琴ちゃんが襲われた?」
鏡一が驚いた顔で云う。
鷹守は会議室に集まった一同に、事の成り行きを説明していた。
「ああ。格闘して応戦したが、仮面の男はとり逃してしまったようだ」
鷹守はそのまま続けて、
「記憶が正しければ、背丈はわたしと同じ程度だった。185センチ前後といったところでしょう」
「それじゃあ、おれは容疑者からはずれるよね」
鏡一が意気揚々と云う。
「兄貴や親父と違って、背には自信がないから」
「失礼ですが、清山さん。あなたの身長はおいくつですか」
鷹守は清山を見ながら云った。
「貴様、私を疑っているのか?」
「ええ。この船で私と同じぐらいの背丈を持っているのは、護狼さんと龍児さんを除けば、あなただけですから」
「……183だ」
「なるほど」
鷹守が笑みを浮かべる。
104 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/11(土) 17:18:39.16 ID:Zv9hwZf60
「だが、私にはアリバイがある」
「アリバイ?」
「琴波が悲鳴をあげたとき、私は部屋に山田といたのだよ」
清山が「そうだな?」と問うと、執事は「はい」と答えた。
「ちょうど次の商談についての話をしていた。内容も聞かせてやろうか?」
「いえ……大丈夫です。ありがとうました」
鷹守は納得のいかないような表情で引き下がった。
「失礼します」
不意に声が聞こえ、一同の注目が扉の付近に集まる。
そこには、一礼する龍児と、その横に寄り添う琴波の姿があった。
「おお、龍児。大丈夫だったのか?」
清山がスキップしながら、龍児のもとにかけよる。
「浅い切り傷です。それよりもこのスーツに穴が空けられてしまったのが残念ですよ」
龍児が穏やかに笑って見せた。スーツの切り口からは血をにじませた包帯が見えた。
「ちょうどよかった。お二人とも、襲われたときの詳細を教えてくれませんか」
鷹守がそう云うと、龍児と琴波は、鷹守がやってくるまでの出来事を話し始めた。
105 :
田中:2013/05/11(土) 22:55:33.76 ID:ZIq9gioX0
アカン それ小説ちゃうラノベや
106 :
【IQ117】 :2013/05/11(土) 23:44:49.11 ID:L+w8Wsyp0
分かった。犯人は獅子舞
107 :
田中:2013/05/12(日) 01:10:19.83 ID:S4MH+goY0
> 清山が「そうだな?」と問うと、執事は「はい」と答えた。
この行必要?
琴波が部屋で読書をしていたところ、仮面の男が部屋をノックした。
↓
琴波が扉に近づくと、突然、仮面の男は扉を斧で壊した。琴波が悲鳴を上げる。
↓
隣の部屋にいた龍児が異変に気づき、琴波の部屋に行く
↓
仮面の男が斧で龍児の肩を切り裂く
↓
二回目の攻撃がなされる前に、鷹守が現れた。
「……とまあ、このような感じです」
大体の説明を終えると、龍児は息をついた。
「なるほど。危ないところでしたね」
鷹守は「ところで」と続けて、
「琴波さんと龍児さんは違う個室なのですか?」
109 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/12(日) 09:34:31.91 ID:vWuNS5Hf0
「ええ。龍児くんは一人でいるのが好きだから」琴波が云う。
「わかりました。しかし不思議だ」
鷹守は腑に落ちない顔をしながら。
「この船の中に、仮面の男になりうる人物が一人もいない。
「本当に我々の中に犯人がいるのかね?」
清山がうっとうしいハエを見るような目で鷹守を見る。
「ええ、青酸カリの件を考えれば、あの時、昼食に参加していたメンバーの中に犯人がいるはずです」
「鷹守さん。少し考えたのですが」
龍児が左手を突き出しながら云う。
「われわれ以外の人間――外部犯にもそれを実行することができるかもしれません」
「何ですって」
鷹守は面を食らった顔で龍児のほうを見やった。
「カプセル。ですよ」
龍児が小さく鼻を鳴らす。
「犯人は水溶性のカプセルを使ってワインに毒を盛ったんです」
110 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/12(日) 09:39:06.67 ID:vWuNS5Hf0
「……龍児さん。詳しく説明してもらえないか」
鷹守の言葉に龍児がうなづく。
「まず、ワインは昼食が始まってから栓が抜かれました。確かにあらかじめ毒を盛るのは難しい。
ですから、鷹守さんが昼食の最中に毒を盛られたと主張するのはしばし当然のことでしょう」
龍児は「しかし」と云い、
「グラスに毒が仕掛けられていたとしたら」
「ワイングラスにあらかじめ毒が入っていたと?」
「その通りです。山田さん、ワイングラスは我々がオープンデッキに来る前に、あなたがテーブルの上に置いたものですね」
山田は「はい」と云った瞬間、目を見開いて、
「わ、わたくしは犯人ではありませんよ!」
「わかっていますよ。あなたは私を襲った人物に比べて背丈が低過ぎる」
龍児は気取った笑いを浮かべる。
「昼食が用意されている最中、船内に進入した”何者か”が隙を見計らって毒を盛ったんでしょう」
「おい、それならオレはワインを飲んだ瞬間にぶっ倒れたはずだ。だが昼食が始まってしばらくの間、オレは普通にワインを飲めたぞ」
護狼が指を突きつけながら、ケチをつけた。
「青酸カリは、小さな水溶性カプセルに入っていたんです」
龍児は親指でつまむようなジャスチャーをした。
111 :
田中:2013/05/12(日) 11:35:52.54 ID:RLZXVNVdO
創作人物の名前について
>創作の出来不出来は、その作中に活躍する人物の名前の選み方一つに在ると云ってもいい。
>いい名前が出来ると思わず筆が進んで筋が面白く変化して来る。
「それをグラスの中に入れておけば、カプセルが溶けるまで作動することはない。
肉眼では気づかないほどカプセルが小さかったために、毒は致死量には到らなかったようですがね」
「だが、どの席でどのグラスは誰がとるか予想はできないだろう。もしかしたらあのグラスは鏡一が使っていたかもしれないし、お前が使っていたかもしれない」
「誰でもよかったんですよ」
「何だと」
龍児の言葉に一同が凍りつく。
「犯人の狙いは我々を疑心暗鬼にさせて分裂させること。犯人からしてみれば、毒は我々の誰が飲んでもよかったのです」
「それじゃあ、無差別殺人ということか?」
「あくまで、仮説ですが」
鷹守の問いに龍児が答えた。
「それならば、早くそいつを見つけ出せ!」
清山が杖で床をドンドコ叩きながら叫ぶ。
「私の船でふざけた騒ぎを起こしおこって! すぐに思い知らせてやるわ!」
「ご主人様。そのことなのですが……」
おそるおそる山田が口を開いた。
「救命艇が一つなくっておりました」
「なんだと?」
清山が目を気持ち悪いほど見開く。
113 :
田中:2013/05/12(日) 15:00:12.93 ID:S4MH+goY0
とりあえず全員しゃべらせすぎじゃないか
「どうやら、犯人はすでに船から脱出したようですね」
龍児が肩をおさえながら云う。
「よかったあ。それじゃあ、殺人鬼はもういないんですね」
青恵がほっと胸を撫で下ろした。
「それにしても……船内にみすみすと侵入者を許すなどと」
清山が目を異常者のようにギョロつかせ、歯茎をむき出しにしながら歯軋りをする。
「も、申し訳ありません。ご主人様」
「黙れ!」
杖で殴られ、山田はかぼそい悲鳴を上げた。
「そうだ、いい加減にしろ!」
それに続いて鏡一が、山田の足をかかとで踏みつけた。
「清山さん、落ち着いてください」
鷹守が肩おさえて鋭くたしなめると、清山は鼻をフンと鳴らした。
「馬鹿者のせいで、少々頭に血が上ってしまったな」
「なんにせよ、もし朱坂家に恨みがある人間がこの犯行を行ったなら、そのまま船で屋敷まで向かったかもしれません。
屋敷にいくのは危険です。すぐにこのまま岡山港まで引き返すべきです」
鷹守が厳粛な雰囲気で云う。
115 :
【IQ117】 :2013/05/13(月) 03:08:27.04 ID:sOXeLAMw0
分かった。犯人はトーマス
116 :
しゃしゃ ◆AV899/UULk :2013/05/16(木) 00:51:43.36 ID:7IElK96lP
おもんな
117 :
田中:2013/05/16(木) 20:07:20.24 ID:59Ej+ceJ0
影の黒幕はアメリカ
118 :
田中:2013/05/16(木) 22:33:43.90 ID:OvKjwUOT0
ええな。俺こういうスレ好きやで。中身はまだ全然読んでへんけど。
いつごろ完成しそう?完成したら一気読みしたい
119 :
北川鏡花 ◆7dIyMjzeNOKH :2013/05/16(木) 23:47:12.70 ID:sUgixRWw0
120 :
田中:2013/05/17(金) 00:01:41.31 ID:t3HKDZyY0
ひとのせいにするな
121 :
【IQ117】 :2013/05/17(金) 02:23:55.23 ID:Qtq491tq0
お前な、、、
122 :
田中:
台詞多いのがアホっぽい