「……そろそろ、いい、か?」
身体を起して、仲謀が尋ねた。下穿きを脱ぎ、大きく熱いものを下肢に押し当てられた。頷くと、ぐっと圧迫感が増して、私は息を飲んだ。
「いっ……っ!」
声が出ない。
あんなに卑猥な水音がしていたのに、身体が軋む音が聞こえてきそうだった。
「花……っ、動く、な」
仲謀に掠れた声で言われて、私は初めて自分が逃げようとしていた事に気づく。
見上げると、どこか苦しげに顔を歪めた仲謀が目に映る。
「……やっぱり、痛いのか」
途切れ途切れに、押し殺すような声で言われた。
まだ全てを受け入れていないはずなのに、引き裂かれるような痛みに声も出ない。浅い呼吸しか出来ない私の額を、仲謀が優しく撫でる。大きな手が、暖かい。仲謀も苦しそうなのに、私を案じてくれる。私がもう嫌だと拒絶すれば、やめてしまいそうだ。
「痛い、けど……途中でやめる方が、嫌……っ。ちゃんと、最後まで、して……っ」
「お前……っ」
仲謀が、苦痛を堪えるように眉を寄せる。圧迫感が高まって、私も小さく喘いだ。
「この、馬鹿っ! 俺を殺す気かっ……」
「え? っ、ふぅ、ん……っ、んぅ!」
強引に唇を重ねられて、舌を吸い上げられた。激しすぎるキスに、眩暈がする。舌を絡めあう水音に煽られて、身体が熱くなる。強張っていた体から、少しだけ力が抜けた。
その途端、仲謀が腰を進める。
ズッ、と音がして、奥へと入り込んでくる。
「ぁ……っぁあ! ぅんんっ!」
思わず仰け反り唇が離れる。それを仲謀が追いかけて、再び舌を絡ませる。
身体の中を、男の凶器で無理矢理広げられる。男を受け入れたことがない場所は、引き裂かれる痛みに血を流しているはずだ。それなのにどうしてだろう。とても気持ちがいい。
「花……っ。ん、…花っ」
「仲、謀……っ」
キスの合間に、仲謀が私を呼ぶ。額や鼻先、頬や目元に唇が落ちた。
奥深くを穿たれるたびに、涙が零れ落ちる。仲謀が、優しく私の頬を撫でる。唇を噛締めて、仲謀が苦しげに囁く。
「わりぃ、も……止められねぇ……」
多分、仲謀は、私が痛くて泣いていると思っているのだ。いつも、偉そうにしているのに、どこまでも優しい。
「痛い……けど、痛くない。だから、止めないで……もっと、して……」
仲謀の首筋に顔を埋める。仲謀の汗の匂いが欲情した男の人のもので、自分が女だと言う事を突きつけられ、女の悦びに目が眩む。
「好き……。仲謀、大好き……っ」
「お前、っ…ぅあ……っ!」
突然、仲謀の動きが止まった。身体の奥で仲謀のものが痙攣して、その度に熱いものがじわりと広がっていく。
全てが吐き出されると、仲謀が私の上に突っ伏した。私の肩口に顔を埋めて、荒い息を繰り返している。
「……お前、何、不意打ちしやがるんだよ……」
どこか不満そうな、悔しそうな声で、仲謀が呟く。
「ご、ごめん」
「別に、謝る必要はねえよ。俺が、不甲斐ないだけだ」
「何で?」
「……何でもねえ」
よく分からなかった。小首を傾げる私を、仲謀が優しく抱き締めてくる。