【2013】クソゲーオブザイヤー part9【携帯】
アラガミの専用素材は、先述した、強化の際に素材自体を求められる時のほか、武器を生産をする時には必要だが、
「せっかく作ったのに活かす場所が殆どない武器」など、よほどの思い入れ無い限り、作らないことは明白だ。
「レア素材が入手できないから武器が作れない」という事態の救済措置ではあったはずの、複合コアというシステムが、
装備を作成する必要性自体の低下と化学反応を起こし、まさか「レア素材を求める機会も、意欲も失わせていく」
という最悪の結果を生み出すことになろうとは、GEBのアップデートで初登場した時には、誰も思わなかっただろう。
「敵を狩るために装備を作りたいが、装備を作るために敵を狩る必要がある」という、狩りゲーにあるはずのジレンマ…
一種のやりがいであったものも、この化学反応を文字化した「化学式」の一部だったのか、フェードアウトしてしまった。
バランスは投げ捨てるものというレベルで、人間の進化についていけないのか、アラガミは虚弱体質となったかわり、
異様なまでに群れる習性へと変更されている。群れないのは、処理関係で引っかかると思われる敵だけである。
無印において、ユーザーの要望で追加されたミッションに単体討伐があったことすらも、頭から抜けているのだろうか。
強敵となったであろう看板アラガミ「マルドゥーク」は、作り上げた群れでのチームハンティングが特徴だったが、
上記の虚弱体質のあおりをもろに喰らっており、すぐに名前から「マルちゃん」という愛称兼蔑称が付いてしまった。
売りであるチームハンティングも「他のアラガミも群れまくってるうえ、無印から伝統のコンビネーションは健在」
であったため、もはや特徴と言うのもおこがましい。パッケージに写る「まだ見ぬ強敵」はどこへ行ったのやら。
前作から続投した敵の戦闘力も明らかに落ちており、すぐに怯み、転倒という隙を晒し、命を散らす様は、とても儚い。
討伐対象「土下座マシーン」、乱入してくるのも大抵「土下座マシーン」という劣悪な労働環境に置かれている彼の姿は、
下っ端として同様の悩みを抱える、肉ダルマのようなアラガミ「コンゴウ」の存在もあって、ゲーム画面を飛び越えて
プレイヤーの精神にダイレクトアタックをぶちかます。下っ端である以上、ゲーム内では倒しやすいのが救いではあるが…
そのうえ、今までになかった組み合わせをただ試していると錯覚するほど、敵の構成に違和感しか抱かない。
先ほども少し触れた「変わり映えのない敵を殴るだけの作業」が、場所だけを変えて展開されているのだから。
「マグマの中で主に活動する敵が、なぜか水場のところで発生している」「安定の土下座マシーンorコンゴウ介入」
「逆に、氷の敵がなぜかマグマが湧くステージにいる」など、もはやステージの特色すらも無に等しいだろう。
鳴り物入りで登場したはずの新種も「体力の最大値を1にする」というチートのような敵以外は大した強さではなく、
初見殺しはおろか「倒しても大した装備も作れないのに、しゃしゃり出てきて邪魔」という感想まで聞こえるほどだ。
前作から続投するアラガミは狩り飽きたのに、新種も面白くないうえ、狩る必要性も、価値も薄いという惨状は、
「もうこれ、アラガミを狩る必要ってほとんどなくね?」という真理を突き付け、無条件降伏を促させる。
武器開発も、バランスブレイカー(通称メテオ)とその亜種があまりに強力すぎるがために、分類上は4種類あり、
特色がそれぞれある銃身の選択肢を、多くの人間が閉ざしてしまう。なぜなら、メテオを使える銃身の種類は、
そのうち1種類しかないのだ。数発打てば、大抵の戦いにケリがつく「核弾頭」を、手放す気にはなれないだろう。
こうして多くのライトユーザーはメテオに手を出し、楽しさの代わりにゲームの寿命を急速に削るのだ。
ユーザーのゲームの腕前の如何に関わらず、狩りゲーを放棄させるという仕組みだけは、飛びぬけて優秀であろう。
前作よりも進化したグラフィック、便利になったフィールド移動、新たな武器…有言実行された部分は多々あったが、
正確に比較できる理由は「フィールド、アラガミ、武器だけでなく服装に至るまでほとんど過去2作の使い回し」
という手抜き以外の何物でもない要素の裏返しであり、三年間の開発期間はどこへ行ったと突っ込みたい。
新たに追加されたブーストハンマーとチャージスピアの特徴である「特定の物理攻撃に特化」という尖った性能は、
皮肉にも、過去作で同じコンセプトで製作された武器が存在しているだけでなく、それらは上位互換という性能を
誇示しているため、一般的に使いにくいとされる上記二つの武器のほうが使いやすい人間以外、使う価値は薄い。
チャージスピアはシュバリエという短剣、ブーストハンマーは墓石と呼ばれる長剣に、煮え湯を飲まされている。
属性の幅が狭く、墓石に至っては終盤ではないと作れないという意見もあったのだが、そもそも属性重視の武器は
「弱点がバラバラな敵を編成」という狩りゲー否定システムの一端から察せるとおり、既に心肺停止の状態だ。
同じように墓石も、数多の武器を抑え、探究の終着点に君臨しているのだから、優秀さは言うまでもないだろう。
近距離用銃身であるショットガンに至っては「移動ツール」と揶揄されるほど利用価値を見出せない代物で、
無印のバランスブレイカー「内臓、脳天」のほか、先述した本作のバランスブレイカー「メテオ」をも作り上げた、
銃身から撃ち出す弾頭自体を自由に編集するという、画期的な機能「バレットエディット」を用いたとしても、
「いいバレットが作れない。専用行動で間合いを詰められること以外は愛でようがない。」とまで言わしめた。
よほどの物好きか縛りプレイでない限り、意識して使用することはまずないという、調整不足の筆頭格だ。
余談だが、そのバレットエディット自体も、前作から大幅な改悪が施されてあり、職人達の怒りを買っている。
このように「狩りゲーを彩る別のシステム」に魅力を感じる人達にも、好意の対象を放棄させるのだ。
この狩りゲー否定のシステムを例えるなら「糞で練ったハンバーグに、下痢というソースがかかったもの」だろう。
料理という体裁だけは整えていても、食えたもんじゃない代物が出てくるのだから、よほど空腹でない限りは
食う必要性など存在せず、人間として大事なものを犠牲に腹を満たすか、人間の誇りを保ったまま餓死するしかない。
本作も同じく、かろうじで狩りゲーとしての体裁は整ってはいるが、ゲームを楽しもうと模索すれば模索するほど、
不満点が心身を蝕んでいき、最終的に「苦痛に耐えかねたプレイヤー自身にゲームを否定させる」という流れだ。
本作以外の狩りゲーを触ったことがなく、食糞の趣があるような奇特な人物しか、この苦行は耐えられないだろう。
ゲームの根幹だけはあるが、愛でようと頑張るほど絶望的な仕様の数々によって、精神をなし崩しに破壊する手口は、
かのシステムソフト・アルファー(SSα)の名をKOTYに知らしめた、2009年の知将「戦国天下統一」を彷彿とさせる。
筆者がまだ本作を楽しもうと足掻いていた最中で、作中の随所に見られる寒い笑い要素を目の当たりにした時、
「敵の本拠地を執拗に落とし、敵将を切腹させまくる」「赤子の姫が、流暢な言葉遣いで嫁いでくる」といった、
僅かに愛でられる要素を糧に、泰平の世を目指していた過去の古傷が疼き、思わず身悶えてしまったほどだ。
無印のバランスブレイカー「内臓、脳天」が判明前に健闘していたようなヘビーユーザーほど犠牲になっていく様は、
歴戦の勇士が「お前にもう用はない」という戦力外通告を受け、静かに引退していくような哀愁を漂わせる。
真面目に狩りゲーとして向き合い、最初に手に取ったはずのプレイヤーに対して、あまりにも酷い仕打ちであろう。