【PSP】夢想灯籠 2輪廻

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724枯れた名無しの水平思考
リビングへ行くと、俺は目を疑いました。
なぜなら、全裸の中学生くらいの少年がいたから……。
少年は、紐で縛られた両腕を上に吊るされた、不自由な格好でした。

母親らしきおばさんは、「気にしないでください」とだけ言いました。
気にしないでと言われても……。
俺は視線を泳がせながら、リビングの角に鎮座する大型液晶テレビのある場所へ向かいました。

テレビにはNHKが流れていて、ソファに座っているおじさんが小難しい顔で画面を見ていました。
この部屋の主人でしょうか。そして、あの少年の父親?
挨拶をして、点検の趣旨を簡単に伝えます。
「お仕置きをしているんですよ」
唐突におじさんは言いました。
「奴、この間の学校の試験で酷い成績をとりましてね」
ほとほと困ったといった様子でおじさんは続けます。
「本当に俺の子かと思うくらい出来が悪いんですわ。出来の悪い子には体罰で叱るしかないでしょう」

父親の視線の先に、俺も目を向けました。
改めて見た全裸の少年は、可愛らしい顔立ちをしていました。
美少年といってもいいでしょう。きっと、女の子にモテているはずです。

「うちは大した資産も残してやれんから、せめて教育に熱心になってやろうというわけですよ」
息子を全裸で縛り上げるという信じられない体罰をした上、その場へ客を招き入れる父親は饒舌でした。
「いい大学に入って、一流企業へ入れるのが私の役目なんですよ。その後の人生はこいつの自由だ」
「私の会社にも男の派遣社員がいるが、実に情けない。こいつがああなっては困る」
派遣で働く俺は、「こうなっては困る」という存在なのでしょうか。俺は少々気分を害しました。

滔々と語る父親に適当に相槌を打ちながら、点検を終えました。
ケーブルテレビのパンフレットを広げて、マニュアル通りに勧誘しますが「いらん」と一蹴されました。

「おい○○」
父親が、息子に向かって大声を上げました。
○○とは息子の名前でしょう。今どき珍しい古風な名前でした。
「今勉強頑張らんと、この人みたいに情けない仕事しかできんようになるんだぞ」
“この人”というのが俺を指しているのだと気付くまで、少し時間がかかりました。