せんせい とんできて
どうして こうたは ワルイコなの
どうして ジュンバンが まもれないの
どうして りえちゃんを なかせるの
どうして? どうして? どうして?
おおきなこえで ワンワンワン
ボク リエチャン ダイスキダ
ボク ダレヨリ リエチャント トモダチニナリタイ
ボクハ ワルイコナンダ
おかあちゃん また 学校に よばれた
せんせいたちの こまった かお
くどくど くどくど ちくちく ちくちく
ナントカ ナリマセンカ オカアサン
おかあちゃん あたまを さげたまま
いちども かおを あげないまま
ハイ ハイ ハイ ハイ
ちいさなこえで
スミマセン スミマセン スミマセン
ボクハ ワルイコナンダ
かえりみち
おかあちゃん
ぼくのうでを
きつく にぎって
どんどん どんどん
ひっぱっていく
夕やけのなかに
おかあちゃんのかおが
きえていく
うちのなか あさ ぼくが ひっくりかえした
テーブルが そのままに なっている
さらが われ ごはんが ちらばっている
おかあちゃん はえたたきを もつと
ぼくのせなかを なんども たたく
ドウシテ オカアチャンヲ コマラセルノ
おかあちゃんのかおも ぼくのかおも ぐちゃぐちゃ
ぼく おかあちゃん だいすきなのに
どうして イイコに なれないんだろう
ぼくは どうして ワルイコなんだろう
ぱちんと はえたたきのさきが とんだ
それから なんにちかして
でんしゃに のって
ぼくは となりまちの
おいしゃさんに いった
ぼくは くるくるまわる
いすに のって
おいしゃさんのまえを
ローラースケート
おいしゃさんは
にこにこして
ぼくを みている
「おこまりのことは なんですか」
おいしゃさんが おかあちゃんに やさしく きいた
おかあちゃん ぽつりぽつり ぽつりぽつり しゃべりはじめた
とちゅうで ハンカチ とりだした
「おかあさん ほんとうに よく がんばってきましたね」
と おいしゃさんが しずかに いった
おかあちゃん こえをあげて なきはじめた
「こうた おいで ここに すわってくれる」
おいしゃさんが ぼくを よんだ
ぼくが いすに すわると
「ありがとう すわってくれて ありがとう」
そういった
「こうたは かしこい子だ
おちつかなきゃ いけないって わかってる
ともだちに いじわるしちゃ いけないって わかってる」
ソウ ソウナンダ ワカッテルンダ
ボクハ ワカッテルンダ
「でも ついつい やっちゃう
それはね こうたが いま
ブレーキのききにくい 車に
のっているようなものなんだ」
そういって ぼくのあたまを なでた
ぼくは ADHDなんだって
さんすうの にがてな 車
おんがくの にがてな 車
みんな いろんな 車に のっている
ぼくが のってる ADHD号は
ブレーキが にがてな 車
ぼくが じょうずに のれば
この車は けっこう すごいらしい
そう おいしゃさんが おしえてくれた
かえりみち おかあちゃん ぼくの手を
やさしく にぎって あるいてくれた
「おかあちゃん べんきょうしなくっちゃ
こうたのきもちが わかるように
べんきょうしなくっちゃ」
そういって ぼくのかおを にこにこみた
わらってる おかあちゃんのかお ひさしぶりに みた
それから おかあちゃんも パパも 学校のせんせいも みんな みんな
はげましてくれる ほめてくれる
ありがとうと いってくれる
ぼくを みていてくれる
ぼくの オチツカナイむしも
イジワルむしも やっぱり ときどき かおを だすけど
でも おかあちゃんが わらっている日
おおくなってきた
きょうも ぼくは つぶやく
オチツケ オチツケ
こうた オチツケ
ボク スグ イイコニ ナレナイケド
デモ ボクハ ワルイコジャ ナインダ
−おわり−
店頭ではなかなか見つからないかもしれないですが、
ADHDの子と、その家族、周囲をわかりやすく、適切に表現した絵本だと思います。