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きるひー将軍純情物語:
それは、仕様変更で1人旅が美味しく無くなった日の晩の事であった。
きるひー将軍は1人部屋にこもっていた。
春渦様やノレレット達には平静を装っていたが、やはりその傷は深く、1人部屋に戻って泣いていたのだ。
1人旅が簡単で美味しかった迷いの森。
巨額の借金をしてまでがんばってきた1人旅。
でも・・・もうできない・・・
表面的にはいつもと変わりない。
しかし、心の中は誰より繊細なきるひー将軍である。
悲しみが人一倍大きいのは当たり前であった。
だが、その悲しみを唯一拾ってくれる女性がきるひー将軍にはいたのだ。
その娘は婦ィー巣といった。
春渦様に仕え、鬼畜な彼に奉仕するためにここまできた少女。
彼女にはきるひー将軍の心の悲鳴が聞こえてしまったのだ。
いてもたってもいられなくなった彼女はすぐさまきるひー将軍の部屋へと赴いた。
コンコン
ドアを軽くノックする音。
泣きつかれて机に突っ伏していたきるひー将軍はその音ではっと目を覚ました。
「誰?」
「私よ・・・」
「婦ィー巣・・・?」
「入って、いいかしら・・・?」
「ああ、いいよ」
突然のことに困惑しながらもきるひー将軍は涙を拭いて、扉を開けた。
ガチャ
扉を開けたきるひー将軍は婦ィー巣が驚愕の瞳で見ているのに気づいた。
「な、なんだよ?」
動揺した表情で問うきるひー将軍に婦ィー巣は泣きそうな表情を浮かべた。
「きるひー・・・泣いてたのね・・・」
「え!?」
きるひー将軍は顔を見ただけでそこまで見透かされたことに驚いた。
「どうして・・・」
「顔を見れば分かるわ・・・涙の跡が残ってるわよ・・・」
婦ィー巣は無理に笑みを浮かべてそう言った。
「そうか・・・」
きるひー将軍は少し落ち着いたように小さく呟いた。
「それに・・・」
その時、俯いたままで婦ィー巣が言葉を続けた。
「泣いてるわ・・・あなたの心・・・」
「!?」
きるひー将軍は再び目を見開いた。