c:餌縷々『アクア=エリアス』† 63Ria

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808きるひー将軍純情物語
 それは、仕様変更で1人旅が美味しく無くなった日の晩の事であった。
 きるひー将軍は1人部屋にこもっていた。
 春渦様やノレレット達には平静を装っていたが、やはりその傷は深く、1人部屋に戻って泣いていたのだ。
 1人旅が簡単で美味しかった迷いの森。
 巨額の借金をしてまでがんばってきた1人旅。
 でも・・・もうできない・・・
 表面的にはいつもと変わりない。
 しかし、心の中は誰より繊細なきるひー将軍である。
 悲しみが人一倍大きいのは当たり前であった。
 だが、その悲しみを唯一拾ってくれる女性がきるひー将軍にはいたのだ。
 その娘は婦ィー巣といった。
 春渦様に仕え、鬼畜な彼に奉仕するためにここまできた少女。
 彼女にはきるひー将軍の心の悲鳴が聞こえてしまったのだ。
 いてもたってもいられなくなった彼女はすぐさまきるひー将軍の部屋へと赴いた。
コンコン
 ドアを軽くノックする音。
 泣きつかれて机に突っ伏していたきるひー将軍はその音ではっと目を覚ました。
「誰?」
「私よ・・・」
「婦ィー巣・・・?」
「入って、いいかしら・・・?」
「ああ、いいよ」
 突然のことに困惑しながらもきるひー将軍は涙を拭いて、扉を開けた。
ガチャ
 扉を開けたきるひー将軍は婦ィー巣が驚愕の瞳で見ているのに気づいた。
「な、なんだよ?」
 動揺した表情で問うきるひー将軍に婦ィー巣は泣きそうな表情を浮かべた。
「きるひー・・・泣いてたのね・・・」
「え!?」
 きるひー将軍は顔を見ただけでそこまで見透かされたことに驚いた。
「どうして・・・」
「顔を見れば分かるわ・・・涙の跡が残ってるわよ・・・」
 婦ィー巣は無理に笑みを浮かべてそう言った。
「そうか・・・」
 きるひー将軍は少し落ち着いたように小さく呟いた。
「それに・・・」
 その時、俯いたままで婦ィー巣が言葉を続けた。
「泣いてるわ・・・あなたの心・・・」
「!?」
 きるひー将軍は再び目を見開いた。