そうかそうか
99 :
名無しさん@そうだ登録へいこう:2009/03/20(金) 08:41:46 ID:/HMZUNyS0
特集ワイド:この国はどこへ行こうとしているのか 経済評論家・内橋克人さん - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090316dde012040007000c.html ◇日本は防波堤が弱い−−経済評論家・内橋克人さん(76)
なぜ今、普通に働く勤労者が、かくも多数、いっせいに切り捨ての悲惨にさらされなければならないのか。昨秋のリーマン・ショック
以降、さらに深刻さを増す世界同時不況。そのなかで、非正規雇用労働者が職・食・住を同時に奪われ、寒空の下に放擲(ほうてき)された。
人間の尊厳を足げにする「派遣切り」「雇い止め」の横行。内橋克人さん(76)はすでに90年代半ばから、労働の分断と階層化が格差
を広げ、このままでは社会統合が崩壊する、と警鐘を鳴らし続けた。
「“多様な働き方の時代”などとうたいながら、実際に企てられたのは、企業の思いのままに超低コスト労働力を調達し、“多様な働かせ
方”ができる労働市場を新たにつくることだった。戦後、営々と築き上げた労働基本権をご破算にする。プログラムを完成させたのが、
製造業への派遣労働を解禁した小泉構造改革だった。私たちのウオーニング(警鐘)がいまになってようやく“可視化”される時代がきた
ということです」
製造業への派遣労働解禁を待ちあぐねたように、中国はじめアジアに出ていた工場の「日本回帰」が始まった。日本のメディアは
「やっぱりモノづくりは日本で」と口をそろえて歓迎し、甘い拍手を送ったものだ。
「調べてみれば、日本回帰と解禁(製造業への派遣労働の解禁)の時期は見事に符合している。解禁を見越して大企業の“工場の出戻り”
が目立つようになった。政界、財界、そしてこれを理屈づけた労働経済学者ら3者の呼吸は見事なまでの一致ぶりです。中国に工場を
移さなくても、この日本でアジア並みの解雇自由・低賃金労働の調達が可能になり、併せて技術の流出も防げる。日本での“労働解体効果”
に引かれて回帰してきたそれらの工場から、今回、真っ先に派遣切りが始まった」
(1)
100 :
名無しさん@そうだ登録へいこう:2009/03/20(金) 08:42:52 ID:/HMZUNyS0
(2)
規制緩和一辺倒論者、その先頭を走った学者らのうたい文句、「働き方の自由化」とは、その実、「働かせ方の自由化」であったことを
人びとはいま、目の当たりにしている。トリックとレトリック(修辞)にはめられやすい日本人の弱点が、時の政権、そのもとに蝟集
(いしゅう)した学者らによってあまりに巧みに突かれた、と内橋さんは残念がる。
アメリカ社会を覆った「ワーキングプア」をいち早く「働く貧困層」と日本語で呼び、警鐘を鳴らしたのも内橋さんだった。いま、
言葉は「普通名詞」になっている。
労働にとどまらない。小泉構造改革なるものは構造改革をうたいながら、もっと深刻な「新たな構造問題」を生み続けた。労働の解体、
地方の疲弊、さらに「家計から企業への所得移転の構造」の三つだ。内橋さんの鋭い警鐘は続く。
「この壮大な“負の遺産”の清算に向けて、私たちの社会はこれから多大なエネルギーと時間、そして社会的コストの消耗を迫られる
ことになるでしょう。私たちはすでに深刻な矛盾のなかに連れ込まれています」
口をひらけば「国際競争力」「グローバル・スタンダード」などと、何かのひとつ覚えのように政・官・財・学が叫ぶ。唱和すればする
ほど、「日本人は豊かになれない」という。
政府も日銀も「いざなぎ超え」を自賛していたその渦中で、内橋さんは景気の構造を解明して「カラ景気」と呼んでいた。
絶好調とされた景気のさなか、輸出は年率平均で11・4%も伸び続けたが、国内の個人消費はわずか1・5%の伸びにとどまり、雇用
者報酬(賃金と企業内福祉の合計)に至っては逆にマイナス0・3%に終わった。
「天から降る雨水が大地にしたたり落ちるように、好景気の恩恵は一般の家計にも波及し、個人消費も盛り上がる。内需と外需のバランス
のとれた成長、やがて需要超過の時がやってくる」と、当時「日銀展望リポート」さえ数度にわたってご託宣を下した。
「そうはならない」と多くのメディアで反論を展開したのも内橋さんだった。
(2)
101 :
名無しさん@そうだ登録へいこう:2009/03/20(金) 08:45:18 ID:/HMZUNyS0
(3)
「雨水を大地に流す樋(とい)を途中で切断し、そこに栓を詰めてふさいだ。だから、軒沿いの樋にあふれ出すほど雨水がたまったのです。
雨になれば、人びとの日常にも慈しみの水が滴り落ちて大地を潤す、そういう自然の仕組みを遮断したからこそ、日本型多国籍企業
(グローバルズ)の胸もとに壮大な利益がたまった」
日本型多国籍企業という巨大資本を「グローバルズ」と呼び、国内市場、地方、地域社会に固着する中小・零細企業や商店街、地場産業、
さらに農業などを指して「ローカルズ」と内橋さんは呼ぶ。両者間の格差が天文学的に拡大した。同時に、地方と中央都市、そして同じ
労働を担うもののなかに仕組まれた格差も、空恐ろしいまでに拡大した。「肥(ふと)る企業・〓(や)せる家計」という、ゆがんだ、
危険な国民経済の現実が姿を現した。
政策支援はもっぱら「グローバルズ」に集中された。円安誘導のためわずか1年半の間に35兆円ものドル買い・円売りが繰り広げられた
時もある。「いざなぎ超え」景気の燃え盛るさなか、円安の恩恵を受けてグローバルズの獲得利益は常に「史上最高」を更新し続けた。
だが、こうして生まれたのが「不均衡国家」であり「不均衡経済」であったと内橋さんはいう。「今回の恐慌寸前の世界同時不況、
いちばん防波堤が弱いのが日本です。もともと他の国に発した、つまりアメリカが震源地であったはずの世界危機なのに、受けたショック
の大きさは、世界の先進国の中で飛び抜けて深刻なのが日本。なぜ、日本はこの危機の外に立つことができなかったのか」
たとえばGDP(国内総生産)成長率ひとつとっても、マイナス12・1%(08年10〜12月、年率換算=修正値)の日本、これに
対してアメリカもEU(欧州連合)もマイナス幅は半分程度の1ケタ台。外需一本ヤリ、内需切り捨て、グローバルズのやりたい放題に
政策支援を与えてきた日本。「その海外が揺らげば、ひとたまりもない。津波が何倍もの高さとなって襲ってくるのは当然の成り行きです。
防波堤そのものも内部から掘り崩してきた」
(3)
102 :
名無しさん@そうだ登録へいこう:2009/03/20(金) 08:48:27 ID:SYsf4cuf0
(4)
不均衡経済のもろさ、不均衡国家のゆがみ、それらがもたらす悲劇は「自律的景気回復力」の衰退へ。つまり過剰な海外依存の結果、
自分自身の力で景気を回復していく力がもはやほとんどない状態だ。そのさなかのアメリカ発世界経済危機の襲来だった。
「日本人がこつこつとまじめに働けば働くほど、豊かになれない仕組みがグローバル化のなかでできあがった」という。その内橋さんは
すでに「ポスト新自由主義の構想」として「共生経済が始まる−世界恐慌を生き抜く道」(朝日新聞出版)をまとめた。
1957年、神戸新聞記者として歩き始めて52年。まなざしは静けさをたたえ、そして鋭かった。
■人物略歴
◇うちはし・かつと
1932年、神戸市生まれ。神戸新聞記者を経て、67年より経済評論家。「匠の時代」全12巻(講談社文庫)「内橋克人 同時代へ
の発言」全8巻(岩波書店)「共生の大地」(岩波新書)「悪夢のサイクル」(文春文庫)など著書多数。今月、「第60回NHK放送
文化賞」受賞。