【プロローグ】
トヨタ車体いなべ工場はトヨタグループの中でも最新鋭の無人化工場である。
特に危険をともなうプレス工場は高度に自動化され、係員は不良品が出ないか
チェックするのが主な業務である。それがあんな事に・・・。
2002年6月8日深夜、大石は先月発表されたばかりのアルファード用に
ルーフプレス機でサンルーフ仕様の型をノーマル仕様と交換しようとしていた。
ある程度ノーマルルーフのプレスが打ち終わった所でクレーンでルーフ型を吊り
上げ所定の場所に降着、替わりにサンルーフの型をプレス機に運ぶ。
後はボルトをエアで締めて作業完了・・・・の筈だった。
作業再開のスイッチを入れるがいっこうにプレス機が作動しない。
2度3度とボタンを押してみる・・・・が作動しない。
造り貯めたルーフは次々とコンベアに乗ってヘミ(裁断)の工程へ流れてゆく。
このままではラインがストップしてしまう。ラインが5分以上停まれば始末書
ものだ。罰則は無いが書類書きが面倒くさい。
大石は立ち上げの応援に来ていた派遣社員の鎌倉に助けを求めた。
大石「鎌倉さ〜ん!プレスが動かへん。」