女性事務職って時給800円で充分だろ?【今時】

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女性事務職の老後
中野新橋あたりの、誰も待っていない、うす暗いボロアパートに戻り、
「やれやれ……どっこししょ」とかタメ息をつきながら、
白髪交じりの頭から、いなげやの帽子を外し、薄汚れたエプロン
を脱ぎ捨ててゆく姿……。あまりにも哀しすぎる。
年相応なトレーナー姿に戻ると、40年間も買い続けている『フロムエー』
をコンビニ(昔、バイト勤めしたことのある店)の袋から出して眺める。
「60のババアの私に、駅の清掃員はつらぃやねぇ……」
ヤカンがピィピィ鳴りだした。『緑のたぬき』かなにかをズズッと
すすりながら、魚肉ソーセージを肴に『缶チュウハイ』を1杯やる。
22時41分、テレビで久米宏が「もぉ、横綱も冗談ばかり。クククッ……」
とかウケている声を聞きながら、ふと見上げると、
ハンガーから吊り下がった、齢(トシ)不相応に派手なエプロン。
「げふっ。はぁ〜、もぉ寝よっかな……」
誰も聞いてくれる人がいないセリフをまたこぼしながら、
傍らにふたつ折りにしていた、布団を拡げ、寝っころがる。

酒の力を借りて寂しい現実を忘れようと、老婆は眠りの世界へ落ちる。
……夢のクニでは、私は“夢”を成功させた女優よ。
日曜日に代々木公園で発声練習をしていた40年前、
タレント事務所の社長が拾ってくれたの。
……ん? えっ? あれっ? やっぱり夢かぁ。社長の
顔をよく見れば、バイト先の女子高生(16歳年下)じゃない。
やっぱり私の現実なんてあのムスメにも使われるだけなんだよな。へへっ……。
せめて、夢のなかでぐらい“みじめさ”ってもんを忘れさせてくれよ。