●正社員がそんなに偉いの?実際のところどうよ? ●
720 :
名無しさん@そうだ登録へいこう:
成長するだけでは豊かな生活を実現できない。国民一人あたりGDPでアメリカを追い
抜いたときに国民の多くが実感したことです。この問題に正面から取り組むことなく、富
の拡大を求めつづけた結果が未曾有のバブルであり、その崩壊によって日本経済は20世
紀最後の10年を失ってしまったのです。時計の針を進めて将来の展望を行う前に、過去
の反省も忘れてはなりません。それは何が日本の経済社会の基盤を支え、何が豊かさを生
み出す源泉かを改めて問い直す作業でもあります。
労働経済学者の石川経夫(1947〜98)によれば、豊かさのカギは「労働生活自体
の満足」(『分配の経済学』東京大学出版会)にあります。仕事を通して「自分の持って
いる能力を最大限引き出し、発揮できるような社会であるかどうか」が重要であり、「経
済的な成果である所得や富、そして消費はたんにそのためにひつような物的な手段にすぎ」
ないと言うのです。自分の仕事に誇りと責任を持てるようになることが、人間相互の信頼
を築き、他人の立場に立って考えることのできる幅広い心を醸成します。そうなれば「才能
などの面で幸運に恵まれた人は、不運な人と持てるものを分け合い、不運な人も幸運な人
との共同と連帯を感ずる」ようになると石川は言います。
そのためには日本の労働市場を、会社への忠実度が貢献の指標となるような企業内部型
から、特定の会社に縛られない技能や専門的な知識を備えた自由な職業人を中心とする職
能型へと変えていく必要があります。石川は低成長がその変革をもたらすチャンスだと主
張します。これまでの労働市場が機能不全に陥る中で、企業は終身雇用という高度成長時
代の約束を果たせないことに負い目を感じ、政府も労働の流動化対策に重い腰を上げ、労
働者も会社人間であることへの不満を高めているからだというのです。
721 :
名無しさん@そうだ登録へいこう:03/06/17 21:07 ID:kpRi1jbr
一人ひとりの労働者が自律性を回復し、能動性を発揮できる社会を形成するには、企業
におけるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング、働きながら技能を学ぶこと)とは別
に、実践的な職業能力を習得できる専門教育を労使双方が協力して実施するとともに、そ
の修了者を対象にした労働市場を社会的共通資本として政府の支援も得ながら育成・管理
していくことが必要です。
「頭だけでは人を救えない。体がついていかなければ人を救えない」。救急医療の現場
で活躍する医師の言葉です。どんなに優れた医療技術が開発されても、現場の医師が実践
でけいなければ人を救えません。同じことは他の職業についても言えるのです。21世紀
は「知恵の時代」だという議論もありますが、知恵だけでは豊かさを実現できません。知
恵を活かす人間の労働がなければモノもサービスもつくりだすことはできず、その労働を
社会が評価し、その労働に個人が満足しなければ豊かさも実現できないからです。