イタリアン入門

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27食いだおれさん
イタリア料理というものは厳密にいえば存在しない。
半島という地理的条件の宿命か、かの地は様々な民族によって分領され、
合従連衡を繰り返して来た。
現在の領土に統一をみて130年の時を経たにすぎない新興国だ。
従って、料理も郷土色というには違和を生ずる程にむしろ近隣他国の影響が
強く感じられる特色が認められる。
各州、素材からしてその州でしか入手できないものも多く、また料理人たち
も固有の伝統的料理法をかたくなに守りたがる傾向をもっている。
ミラノなど大都市においては、外国人料理人の流入等もあいまって、次々に
新たなスタイルを追求せんとの動きもあるが、一般的庶民にとっては無縁と
いえる次元でのはなしにすぎない。
政府は法律によって外食産業の育成を策し、伝統的な呼称であるオステリア、
トラットリア、リストランテ等に確固たる枠組みをあたえ、全土的な標準的
規格を確立しようと試みたが、今やその目論みは完全に破産している。
このカオスともいえるイタリアの食文化の有り様にこそ世界を魅了してやま
ないエネルギーの源がある。
つまらない作法などはとうの昔に吹き飛んでしまっているのが実際であるし、
まずは自らが食事を楽しむということをすべてに優先させるのがイタリア人
というものであろう。
日本のリストランテなどで求められるある種の「作法」たるやそれはまさに
一部イタリア大都市部の悪しき商習から由来するナンセンスというものだ。
われわれは所詮彼らからみれば異国人にすぎない。箸使いの下手なイタリア
人をみてもわれわれが笑わないのと同様、彼らもわれわれを笑うことはない
だろう。
要は自分の欲望に忠実であれということである。