輸送機から降りた専任整備班は、ペタス基地のハンガーの一角を借りてスクラップ同然に破損した
5機のATの修理に掛かった。
厳密には修理というより一緒に届いたコンテナにぎっしり詰まった新品パーツとの換装作業に近い。
ペタス基地の整備班とATパイロット達は遠巻きに作業の様子を見ていたが、専任整備班の驚異的な
手際の良さでスクラップ同然の5機のATがみるみると短時間で修復されていくのを驚きの目で見守った。
5機のATはいずれもミッド級のDogタイプ。
ギルガメス系機体である事を示すODカラーを主体にした塗装。
言い換えればギルガメスの主星、メルキア正規軍所属の機体で無い事が判る。
(メルキア正規軍の機体ならば独自のパープル系塗料で塗装されている筈だ)
だがペタス基地の整備班とATパイロットが驚いたのはその修理の速さだけではなかった。
5機のATはどれもDogタイプとはいえ、それぞれが独自のカスタマイズが施された特殊機体である事が
ペタス基地の整備班とATパイロットが見れば一目瞭然だった。
しかもその5機のATの内の1機には、血に塗れた赤い右肩が装着されようとしていた...
「一体どういう事だ。我々が要請した増援は3個中隊だぞ!
なのに送られてきたのはたった1小隊..しかも即時戦闘は不可能ではないか!」
ペタス基地司令官は着任報告に訪れたイナーク小隊の5人に激昂して怒りをぶつける。
『お言葉ですが中佐殿。我々は再戦開始直後にバララントに奇襲された不可侵宙域の惑星アルケロンに
友軍撤退支援任務で投入されて帰還したばかりなのです。
リードマン大佐からの命令はただちに惑星ガルシアへ向かい、ペタス基地で機の補修の後に最前線の
フランシスコ資源採掘基地に移動して駐留部隊を支援せよとの内容です』
小隊の指揮官、イナーク中尉は激昂する司令官とは対照的に冷静に応じて命令書を手渡す。
「何...独立機動小隊!?すると我々が要請した増援とは別という事か。
本隊の増援はいつ到着する?」
終戦直前に主星メルキアから惑星ガルシアに派遣され、駐留するメルキア正規軍の総司令官である
リードマン大佐からの命令書を読んだペタス基地司令官の顔がようやく冷静になる。
『自分達には判りません。申し訳ありませんが正規の増援予定についてはリードマン大佐に直接お尋ね下さい。
我々は機体の修理が終了次第、整備班と共に陸路でフランシスコ資源採掘基地に移動します。
申し訳ありませんがAT輸送車を2台お借りします』
「...判った。用意させよう。だがあの機体の破損状態では出発は明日か明後日だな。
護衛は必要か?」