1 :
ゲーム好き名無しさん:
【基本ルール】
・様々な時代、世界から様々な形で「サイレントヒル "らしき" 場所」へと招かれた「呼ばれし者」達は、
「何らかの手段」を講じなければそこから出ることは出来ない「らしい」。
この「場所」には「クリーチャー」が徘徊しており、「呼ばれし者」に襲いかかってくる。
「町にいる他の呼ばれし者達を滅ぼす」事で、解放される「らしい」という話もあるが、詳細は不明。
何故呼ばれたか、呼ばれたことに意味があるのかなどは現段階では不明。
【「呼ばれし者」と「クリーチャー」】
・新しい参加者(呼ばれし者)、クリーチャーを登場させる際には、出典と詳細情報を書く。
(参加者枠は既に定員に達している為、新たな「呼ばれし者」を登場させる事は不可)
出来る限り、該当ゲームをプレイしていなくとも書ける様にし、
また曖昧にしか分からない部分なども含め、ここやSS内で示された以上の事は無理に書かなくても良い。
他の書き手が必ずしも出典元を参照できるとは限らないことを前提に、
SS内や補足情報で巧く補完することを心がけ、ルートによるゲーム内での変化なども含めて、
ある程度「いいとこどり」でも調整する方向で。
・ゲームならではのお遊びやシステム上の都合としての不自然さなどは、無理に持ち込まない様にする。
(『サイレントヒル』のUFOエンドや犬エンド、『バイオハザード』の豆腐モードからキャラを出す等)
・「呼ばれし者」は、呼ばれたときのアイテム、能力をそのまま持っている。ただし、必ずしも元通りに使えるとは限らない。
・アイテムはこの「場所」の中で様々なものを得ることもあるが、持ちうる範囲を超えて持ち運ぶことはない。
あまりに展開上不自然なもの、展開を妨げうるものなどは考慮が必要。
(逆に展開に不自然さがなければ、ちょwwこんな所にロケランあったんだけどww、というのもあり)
・この場所にいる際には、「呼ばれし者」同士、多言語での会話が可能。知らない言葉でも何故か意味が伝わる。
・アイテムは現実に存在するもの、又は既存のホラーゲームに登場するものを出典として持たせる、登場させる事が出来る。
登場させたSSの最後に、出典と共にその内容に関しての解説を記しておく。
・「クリーチャー」は、この「場所」に置いて、各々の元の性質に近い行動をとる。
場合によっては「呼ばれし者」が「クリーチャー」に転ずることもある。
・クリーチャーの初期情報を書く際のおおまかな能力基準は以下を元に。
[能力の★について]
★ … 一般人以下。虚弱、病弱。愚鈍。
★★ … 一般人並み。特殊な訓練や能力のない人間キャラと同等。
★★★ … 一般人の中でも頑強。特殊な訓練をしている、軍属、アスリートレベルの身体能力など。
★★★★ … 人外の能力。野生の猛獣並みの身体能力など。
★★★★★ … 人外にして超越。不死、半不死等。
【エリアと地図】
・エリアは、特別な施設名以外は、大まかな位置を地名で表記する。
進入や移動に制限のある場所、施設などはその旨も表記する。
後のSSでは、それら既出の位置関係を元に展開させる。
地図は、SSに描かれて内容から随時設定される。また、進行によって変化することもある。
【サイレンと裏世界】
・物語内時間では一日目の18時から6時間毎に「サイレン」が鳴り「特別なイベント」が起きる。
「特別なイベント」には、「世界/地形が変容する」、「新たなもの/施設などが呼ばれる」、
「クリーチャーが現れる」、「屍人が起きあがる」 等、様々なものがあり、
実際にどういうイベントが起きるかはその時の展開などにより決められる。
・サイレンが何なのかは現段階では不明。
【作中での時間表記】
深夜:0〜2時
黎明:2〜4時
早朝:4〜6時
朝:6〜8時
午前:8〜10時
昼:10〜12時
日中:12〜14時
午後:14〜16時
夕刻:16〜18時
夜:18〜20時
夜中:20〜22時
真夜中:22〜24時
(OPの時刻は夕刻:16〜18時)
【書き手の注意点】
作品(SS)を書き込む際などにはトリップを推奨。SSの最後には状態表を記載し、投下終了したことを明示する。
障害、書き込み制限などで書き込みが出来ない場合は、したらば掲示板を活用し、
出来ればその旨を代行書き込みなどを利用して本スレに書くか、代理投下をして貰う。
以前書かれたSSや、元となった作品設定などとの明らかな矛盾、事実誤認、企画進行に支障をきたす不自然な展開などがある場合、
話し合いなどにより修正、破棄を行うこともある。ホラーなのはSSの中のみで。進行はノーホラーに行きましょう。
【予約制度】
一定期間特定のキャラを優先して書く権利が与えられるシステム。
このロワでは任意制となっているが、複数の書き手が同一キャラを扱った場合、
先に予約した者が優越し、一定の正当性を持つ性質は変わらない。
予約をする場合は、トリップを付けて本スレか、したらばの投下スレで該当キャラクター、クリーチャー名を書き込むこと。
予約期間の最中に他の書き手は、該当キャラクター及びクリーチャーのSSは投下できない。
期限が過ぎた場合は予約は破棄されたものと扱い、予約した書き手以外の方でも予約したりSSを投下したり出来る。
期限を過ぎても、他の人の予約やSSが入らない場合はそのまま投下できる。
・基本予約期限5日間。
・延長期限3日間。
・予約期限が切れた後は予約破棄。
・予約破棄から5日間は同じパートを再度予約出来ない。(ただしSSが完成すれば投下は可能)
・予約出来るのは基本的に1つの話にまとめられるパートのみ。
1つの話にまとめられない全く別のパートを同時に予約を出来ない。
おまけ
トリップ作成テストツール
ttp://www.dawgsdk.org/tripmona/tools 【読み手の心得】
・このスレは投下・雑談を兼用しています。きたんなく雑談しましょう。
・この企画ではどのキャラもバイオ2のガンショップの親父の様にあっさり死ぬ可能性があります。
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
3/3【トワイライトシンドローム】
岸井ミカ / 逸島チサト / 長谷川ユカリ
6/6【SIREN】
須田恭也 / 宮田司郎 / ●美浜奈保子 / 八尾比沙子 / 神代美耶子 / 牧野慶
4/4【SIREN2】
阿部倉司 / 藤田茂 / 三沢岳明 / 太田ともえ
5/5【学校であった怖い話】
日野貞夫 / 新堂誠 / ●岩下明美 / 風間望 / 福沢玲子
6/6【ひぐらしのなく頃に】
前原圭一 / 竜宮レナ / 園崎魅音 / 園崎詩音 / 古手梨花 / 鷹野三四
4/4【流行り神】
風海純也 / 霧崎水明 / 式部人見 / 小暮宗一郎
3/3【サイレントヒル】
ハリー・メイソン / シビル・ベネット / マイケル・カウフマン
2/2【サイレントヒル2】
●ジェイムス・サンダーランド / エディー・ドンブラウスキー
3/3【サイレントヒル3】
ヘザー・モリス / ダグラス・カートランド / クローディア・ウルフ
4/4【バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
ジル・バレンタイン / カルロス・オリヴェイラ / ハンク /● ブラッド・ヴィッカーズ
2/2【バイオハザード2】
レオン・S・ケネディ / シェリー・バーキン
3/3【バイオハザード アウトブレイク】
ケビン・ライマン / ●ヨーコ・スズキ / ジム・チャップマン
3/3【零〜zero〜】
雛咲深紅 / 雛咲真冬 / 霧絵
2/2【クロックタワー2】
ジェニファー・シンプソン / エドワード(シザーマン)
50/45
クリーチャー
複数存在
【SIRENシリーズ】
屍人 / 闇人
【サイレントヒルシリーズ】
レッドピラミッドシング(三角頭) / バブルヘッドナース / ロビー / ライイングフィギュア
【バイオハザードシリーズ】
ゾンビ / ケルベロス / タイラント
唯一存在
【バイオハザードシリーズ】
女王ヒル(北条沙都子@ひぐらしのなく頃に)
【学校であった怖い話】
人形(荒井昭二)
【トワイライトシンドローム】
花子さん
連鎖的にさっきの事故現場の映像が頭を過ぎっていた。
周囲に激突した痕跡も無いのに車体が潰れていたワゴン車。
ワゴン車に轢かれたにしては不自然な状態の男性の遺体。
遺体から武器を奪っていた梨花ちゃん。そして――――その時の梨花ちゃんの言葉。
『この人は、ぼくを殺そうとした悪い悪い人なのです』
殺されかけた梨花ちゃんが、あの時の『安西聡子』のように鬼に変化していたとしたら――――
車を潰したのも、男性を殺したのも、あの鬼の身体能力なら――――
これは仮説に過ぎない。
とは言え、梨花ちゃんを殺そうとしている男にたまたま車が突っ込んできた、というよりは説得力があるように思えた。
単なる見間違いだったのだとしても、梨花ちゃんの顔に『鬼』の影を見てしまったぼくには。
どうやら梨花ちゃんには出来る限りの注意を払う必要がありそうだ。
【E-2民家/一日目夕刻】
【古手 梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康。L3-。鷹野への殺意。自分をこの世界に連れてきた「誰か」に対する強烈な怒り。
[装備]:山狗のナイフ
[道具]:懐中電灯、山狗死体処理班のバッグ(中身確認済み。名簿も入っていました)
[思考・状況]
基本行動方針:この異界から脱出し、記憶を『次の世界』へ引き継ぐ。
1:自分をこの世界に連れてきた「誰か」は絶対に許さない。
2:風海は信用してみる。
3:風海と情報交換。
※皆殺し編直後より参戦。
※名簿に赤坂の名前が無い事はそれほど気にしていません。
※サイレント・ヒルのルールを把握しました。
【風海 純也@流行り神】
[状態]:健康。梨花に対する警戒心。
[装備]:拳銃@現実世界
[道具]:御札@現実、防弾ジャケット@ひぐらしのなく頃に、防刃ジャケット@ひぐらしのなく頃に
射影器@零、自分のバッグ(小)(中に何が入っているかはわかりません)
[思考・状況]
基本行動方針:サイレントヒルの謎を解き明かし、人見さんと脱出する。
1:とりあえず道路マップに表記されていた警察署を目指すが、状況を見て柔軟に対応する。
2:古手梨花と情報交換。また、古手梨花を警戒。
3:人見さんを探す。
※梨花の目が赤く光ったのは、風海の見間違いの可能性もあります。
※道路マップは異世界化する前の本来のサイレント・ヒルのものです。
風海は道路マップに表記されていた警察署に向かうつもりでいますが、
その警察署が、現在のサイレント・ヒルのどの位置に表記されていたかは後の書き手さんに一任します。
(つまり、今いる民家から風海がどの方向に向かっても不自然ではありません)
※風海は流行り神第二話『鬼』でオカルトルートを体験しています。
鬼(赤く光る目)@流行り神
妬み、嫉み、恨みなどの「負の感情」による心の歪みが最高潮に達した時、身体が「鬼」へと変化する。赤く光る目はその象徴。
身体的な変化は、科学ルートでは赤く光る目のみ。
オカルトルートでは赤い目に加え、角が生え、身体が肥大化、皮膚の硬質化といった、一般的に語られる鬼のような容貌となった。
どちらの「鬼」でも身体能力は軽く人間を越えており、その力は片手で軽々と成人男性(風海)をゴミのように投げ飛ばせる程。
一応理性らしきものはある様で、負の感情をぶつける対象のみに攻撃衝動を抱くらしく、
その対象以外の人間には(邪魔だと思われなければ)必要以上には手を出さないようだ。
感情が落ち着けばまた人の姿に戻るだろうと思われる。
代理投下終了です
途中までほのぼのだったのに…そういえばひぐらしも『鬼』がキーワードだったな
リカちゃん、そっちの部活のみんなは死んだけどこっちでは生きてるぞ
純也の警戒感はどう転ぶのか…
一年365日24時間、アニメ板のスレを巡回+AA板でのAA批評に人生全て使ってる
即レス引籠りネット廃人キチガイニート=◆MetroErk2gくん
気色悪いトレス奇形ゴミAAが唯一の自己存在証明の◆MetroErk2gくん
小卒だから英語も数の数え方もわからない◆MetroErk2gくん
↓
http://2se.dyndns.org/test/readc.cgi/changi.2ch.net_anime2_1242744796/ 参照
●えいごもわからないちてきしょうがいごきぶりの めとろくん=ID:7YrPT++T
>>816で 「 I was too embarrassed to I were dead.」 と滅茶苦茶な小学生以下の英文を披露
↓
>>823で 「わざと間違えたんだ!」 と、言い訳をするwwww
>>510 でAAなんか作ったことない!と、「AA職人」と言われたわけでもないのに否定して、墓穴を掘る
↓
>>588で
>>521の、
>>510で墓穴を掘った後のレスを言い訳に挙げる
//禿 ̄池沼\← ◆MetroErk2g=気持ち悪い低能キモオタ奇形デブメガネの正体
彳丿; \,,,,,,,/ u lヽ ←脳障害 精神分裂病
入丿 -□─□- ;ヽミ ←ゴキブリと蛆虫の混血
| u:.:: (●:.:.●) u:.::|
| :∴) 3 (∴.:: | <わざと間違えたんだ!ぽんぽん!あうあうあー
ノ ヽ、 ,___,. u . ノ、
/ ヽ:.___;;;;;;;;;;___.ノ ヽ
/ ,ィ -っ、. 脳障害.ヽ
| / 、__ う 人 ・ ,.y i
| /  ̄ | |
ヽ、__ノ ネット廃人キモオタノ ノ
| x 9 /
| ヽ、_ _,ノ 彡イ シャシャシャシャシャ ←のキモオタ童貞の実態は、
1.勉強も仕事もしていない童貞。 2.1日中PCの前でティンポを握り締めている変態。
3.25にもなって親に金を無心(これは度々出てくるキモオタ童貞のトラウマ)4.友達は全くいない孤独なヒキコモリ。
5.ルックスはデブ、不潔、不細工、バーコードハゲ6.服装は3年前のコミケで買ったアニメキャラのTシャツにケミカルジーンズ(黄ばみ付き)
7.家族にも見放されている。 8.コンパに行けないことを僻んでいるロリータアニメ好き。
9.外出恐怖症(ヒキー) 10.居留守魔(対人恐怖症、人と面と向って話せない。だからPCだけが唯一の拠り所)
11.妄想とのバーチャルSEXでオナる変質者。 12.実態に見合わない分不相応な病的プライド。13.コンプレックスの権化。 14.美少年に対しては悪口ばかりほざく精神異常者
15 二次元のキャラを叩かれると自分の彼女として発狂する不気味なキチガイキモオタ。16 いい年してゲームから離れられない高齢ゲーマーの無職。寄生虫。
朝から晩まで2chを1分単位でリロードするネット廃人。現実でもネットでも誰にも相手にされない
全生物の最底辺のゴキブリや蛆虫以下の存在。2次元キャラを嫁と思い込んでおり、少しでも叩かれると火病る。
部屋はペットボトル尿とゴミとフィギュアの山。萌えキャラのポスターに白いしみだらけ。親からは見捨てられ、殺されかけたことがあるので部屋を厳重に施錠している。
外見は冗談なしにこうである →
http://omoro.cside9.com/gazou/manafter/z2.jpg Metroの一生:
○学校で虐められて引篭る 奇形レベルの醜悪な容姿のため女子から気持ち悪がられ殺されかける
○引篭りニートのため、深夜萌えアニメを見てひたすらシコる 「モカモカしたい!」「ぽむぽむしたい!」などと奇声を発し親に殺されかける
○同年代の人間に取り残され、低学歴引篭りの社会の底辺となる焦りから、せめてAAをつくって何かをなした気になる。
○トレスAAという単なる工場のパート以下の「作業」のみが自己の拠り所となり、必死にそれを守ろうとする。
○他のAA職人に見当違いな逆恨みをし、一年中AA板に貼り付いて荒らす。
○自作の奇形グロAAをアニメ板その他に貼り回って、「ぽむぽむ」「ぽんぽん」などと一年中荒らして自演をする。
○キモアニメ視聴、グロAA作成、アニメ板、AA板荒らし、で一年の全てを費やす廃人中の廃人。日本総人口の最底辺。
○そんなゴミ以下の自分も、小卒の登校拒否ニートではないとハッタリをかますため、日本語の掲示板で無意味に英語を用いる
○「 I was too embarrassed to I were dead.」という無茶苦茶な英文や、 煽り文の語尾に「man」などとフレンドリーな呼びかけをつけたりして 大恥をかく。
○廃人ニートの有り余る時間を使って必死に自演、火消し、自演。
○以下その繰り返し。 小学生以下の知能、学歴、取り柄も何もない。 グロAAとアニメだけが生きがいのゴミにも劣る蛆虫の人生。
>>5修正
呼ばれし者
2/3【トワイライトシンドローム】
岸井ミカ / ●逸島チサト / 長谷川ユカリ
6/6【SIREN】
須田恭也 / 宮田司郎 / 美浜奈保子 / 八尾比沙子 / 神代美耶子 / 牧野慶
4/4【SIREN2】
阿部倉司 / 藤田茂 / 三沢岳明 / 太田ともえ
4/5【学校であった怖い話】
日野貞夫 / 新堂誠 / ●岩下明美 / 風間望 / 福沢玲子
6/6【ひぐらしのなく頃に】
前原圭一 / 竜宮レナ / 園崎魅音 / 園崎詩音 / 古手梨花 / 鷹野三四
4/4【流行り神】
風海純也 / 霧崎水明 / 式部人見 / 小暮宗一郎
3/3【サイレントヒル】
ハリー・メイソン / シビル・ベネット / マイケル・カウフマン
1/2【サイレントヒル2】
●ジェイムス・サンダーランド / エディー・ドンブラウスキー
3/3【サイレントヒル3】
ヘザー・モリス / ダグラス・カートランド / クローディア・ウルフ
3/4【バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
ジル・バレンタイン / カルロス・オリヴェイラ / ハンク / ●ブラッド・ヴィッカーズ
2/2【バイオハザード2】
レオン・S・ケネディ / シェリー・バーキン
2/3【バイオハザード アウトブレイク】
ケビン・ライマン / ●ヨーコ・スズキ / ジム・チャップマン
3/3【零〜zero〜】
雛咲深紅 / 雛咲真冬 / 霧絵
2/2【クロックタワー2】
ジェニファー・シンプソン / エドワード(シザーマン)
45/50
つまりどういうことです?
>>13 ホラゲのキャラ(呼ばれし者)で原作バトロワっぽいリレー小説をやってみようという事です。
まずはWiki行って雰囲気掴んでみると良いかも。
は?
◇dQYI2hux3o氏 代理投下します
錆びた穽
巨大な鋏を持った怪物から逃走し、うち捨てられたボウリング場に逃げ込んだマイケル・カウフマンは、渇きでいがらっぽくなった喉にイラつきながら、コインを入れても沈黙したままの自動販売機に心の中で舌打ちした。
うっすらと埃が漂うボウリング場には、現在自分を除いて二名が存在している。
一人は肥満体系の若者。ブロンドに青い目、典型的な白人。身なりからして低所得者。現在はピザにご執心で、その緩慢な動作はさながら怠惰の化身、畜舎で餌を貪る豚のようであった。
やや離れた椅子に腰を下ろしているのが、この辺りでは珍しいアジア系の少女。サイレントヒルでは見られない学校の制服を身に着けていることから、恐らく外部の人間と思われる。
少女はあどけない顔立ちを僅かに歪ませ、畜舎の豚よろしくピザを貪る若者を、嫌悪の入り混じった眼差しで見ており、二人の間には冷えた空気が漂っていた。
肥満の若者は見るからに役に立たなさそうである。カウフマンは迷わずアジア系の少女を“駒”に選んだ。
女というものは従属性が高い。ある程度分別のつく若い少女なら尚更である。手駒とするならうってつけだ。
それに万が一誰かと遭遇した際、弱者が傍にいれば警戒心を抱かれにくくなるだろう。
もし邪魔になれば、適当に言いくるめてその辺に放り出せば良い。
脳内で大まかなチャートを組み立て、アジア系の少女に話しかけようと自動販売機から踵を返したところ、それを待ち構えていたかのように少女が行動を起こした。
「あのぉー、オジサンってこの街の人ですか?」
「…そうだが、それが何か?」
「ホントに!?良かったー!ゼンゼン知らないトコで困ってたんですよー」
少女は手を叩いて喜んだ。この状況下でこのはしゃぎようは、その華奢な体に纏う制服が伊達ではないかと思えるほど幼く見える。
それとも、今時の若者というのは、昔とは違って開けっ広げに育っているものなのであろうか。
そういえば、制服は意図的に着崩しているようだし、厚みのあるぶかぶかの靴下を履いているし、ひょっとすると素行の良い方ではないのかもしれない。
まあ、それはこの際どうでもよろしい。
「…君は外国人か?」
「え?はい、そうです、日本人です。あ、ニホンって知ってます?ジャパンです、ジャパン」
「知っているよ。それで、どうやってここに?」
「実はあたしもよく解んないんですよねー。ヘンな話なんですけど、電車に乗るまでは確かに日本にいたんです。でも気がついたらこの街の駅に着いてて、降りてみたら血塗れの死体があって…そうだ!これってケーサツとかに届けた方が良いですよね?」
嫌な光景を思い出して怖くなったのか、少女はドングリのような丸っこい目を大きく見開き、潤んだダークブラウンの瞳でカウフマンを縋るように見上げる。
その横で、ピザを租借する青年の肩がぴくりと震えたのが視界の端でちらりと見えた。
どうやらこのアジア系の少女は日本人らしい。どうりでアメリカでは有り得ない格好をしているはずだ。
よく見れば、彼女の唇の動きは英語のそれとはまったく違うのに、カウフマンは彼女の言葉をきちんと理解できている。
そして、カウフマンの言葉を彼女もきちんと理解している。
一体どういう仕組みが働いているのか見当もつかないが、とにかく今は目の前の現実を冷静に受け止めるしかあるまい。
恐らく彼女がここに来た原因も、あの鋏を持った怪物が出現した原因と繋がりがあると見て間違いないだろう。
そして駅にあるという血塗れの死体とやらも、おおかたあの怪物の仕業と思われる。
異国の人間が瞬時に移動し、知りもしない異国の言語を予備知識無しで理解する――これも教団の仕業なのだとしたら、こんな異国の人間を呼び寄せて一体何のメリットがあるというのか。
見たところ、ごく普通の少女にしか見えないのだが。
「私はマイケル・カウフマンだ。君は?」
「岸井ミカです。あ、こっちだとミカ・キシイって言った方が良いのかな?」
「では、ミカ。これから警察署に向かおう。そこで君の身柄も保護してもらうといい」
「良いんですか?じゃ、ヨロシクお願いしまーす!」
とりあえず、カウフマンはこれからミカ・キシイを連れて警察署に向かい、街の状況を把握することに決めた。
早めに病院に戻りたいところだが、脱出してからほんのわずかしか経っておらず、まだあの怪物が居座っている可能性が高いからである。
「君はどうする?」
ピザを食べ終わった肥満青年に尋ねると、彼はびくりと肩を震わせ、「俺はいいよ」と心なしか強張った顔で答える。
彼がどうなろうと知ったことではないが、念のため役に立つ情報を持っていないか探ってから行くことにしよう。
「そうか。身を守る手段は持っているのかね?」
「え?あー…いや、別に。何で?」
「あんた外のジョーキョー知らないの?霧で辺りは見えないし、殺人鬼がウロウロしてるんだよ。マジでヤバイって!」
しかし、それを聞いても肥満青年の反応は鈍かった。信用に値しないと判断したのか、それとも己には関係の無いことと判断したのか。
彼の顔をよく見ると、そのどちらも的を射ていないと判った。
その不安定な眼球運動は、彼の精神状態が穏やかでなく、さらに洞察するならば、街をうろついている殺人鬼などよりも、もっと別の“何か”を恐れているようであった。
「…大丈夫かね?」
「い、いや、なんでもない。とにかく、外は危ないんだろ?なら俺はここでじっとしてるよ…」
「…何キョドってんの?顔、真っ青」
ミカの言う通り、肥満青年の顔色はすっかり血色を失っていた。
肌寒い空気にもかかわらず額には脂汗が浮かび、トマトソースがこびり付いた指はぷるぷる震え、焦点の定まらない目で「べ、別に」とうわごとのように呟いている。
――何かある。カウフマンの医師としての直感が働いた。“この青年は正常ではない”と。
医学的見地から、彼が抱えているであろうありとあらゆる可能性を頭の中に挙げていく。その中には――精神面の疾患も含まれている。
「あ。ひょっとしてさー、こんなトコにあるピザなんか食べたから当たったんじゃないのー?」
「う、うるさいな…ほ、ほ、ほっといてくれよ」
「それにマジで顔色悪いよ?震えてるし。病院行った方が良くない?人いるか分かんないけど」
肥満青年のただごとでない様子に、さすがに異常を感じたのか、ミカは怪訝そうに顔色を伺う。
もし彼が精神を患っている場合、扱いを間違えれば逆上する危険性がある。
これが自分の患者なら、拘束して個室に収容して然るべき治療を施すところであるが、生憎カウフマンに彼を治療する義務はない。
ミカの口から出た“病院”というキーワードに便乗して、彼を治療するという名目で病院へ引き返し、アグラオフォティスを回収するルートも魅力的だが、彼が精神的に不安定であることを考慮すると、これ以上は深入りしない方が良かろう。
冷静に決断したカウフマンは、青年を意図せず追い詰めているミカにストップをかけようとした。
だが、それを待たずして――視界に暗幕が下りた。
◆
うおおおおおおおおおん…
降って湧いた暗闇の中、たたみかけるように大音量のサイレンが響き渡った。
岸井ミカにとって、サイレンなんてものは小学校の避難訓練以来久しく聞いていなかったが、この空間を支配するサイレンの寒々しさと禍々しさは、記憶の中にあるそれとは明らかに様子が違った。
まるで、そう――怪物かなにかの咆哮のようだと本能で感じた。
「な、何これ!?やだっ、何が起きてんの!?」
「う…うわ…何だよコレ、どうなってんだよ!?」
サイレンの唸りにミカ自身とエディーの裏返った声が混じり合い、場は騒然となった。
一体何が起こったのか、なぜ突然暗闇になったのか、もう頭はひっちゃかめっちゃかだ。
とにかく何でもいいから落ち着こうと無我夢中で深呼吸を繰り返すと、どこからともなく錆びの臭いが鼻を刺激した。
日が沈んだにしてはあまりに唐突過ぎる。照明が落ちたのかと一瞬思ったが、すぐに最初から点いてなどいなかったことを思い出す。
では、この暗闇は一体?逸島センパイなら、いつものように霊感を働かせて、この怪異を説明してくれるであろうか。
「落ち着け、落ち着くんだ!何か明かりになるものは?」
カウフマンと名乗るおじさんの言葉で、咄嗟に懐中電灯が頭に浮かび、急いでデイバッグの中を探る。
「…サイアク!こんな時に限って!」
目的のものが見つからず、思わず泣きそうな掠れ声の悪態が口からついて出た。
ここ最近は長谷川センパイが忙しいこともあり、探索の予定が無かったため、懐中電灯は家に置いて来てしまったのだ。
ちなみにエディーはといえば、ミカなどよりよっぽど情けない有り様で、もはや言葉にもならない泣き言を喚き散らしており、まったくもって頼りになりそうもない。
涙目でデイバッグを背負い直すと、漆黒の闇でぼうっとオレンジ色の明かりが灯った。ライターの炎だ。
オレンジ色の炎に照らされ、ぼんやり浮かび上がったカウフマンの彫りの深い顔に、ミカは心の底から安堵した。
どことなく冷たい印象を感じてはいたが、何だかんだで大人というものはいざという時に頼りになるものだ。
「あ〜よかったぁ、真っ暗でどーしよーかと」
「そのままじっとしているんだ、良いね」
「は、はい…置いてかないで下さいよ〜?」
カウフマンはライターを片手に、両手をあちこちに動かしながら壁の方へ少しずつ移動していく。
動くなと言われたので、とりあえず地面にしゃがみ込む。
足元を触ってみると、地面は明らかに塗装された床のそれではなく、ざらりとした手触りだった。
恐らく金属――そう、鉄骨と金網で構成されている。しかも、その下は明らかに空洞。そして、この周囲に漂う錆びの臭い――
――あたしたち、どこにいるの!?
全身の毛穴がぶわっと開き、ミカは思わず身を竦めて両腕で自分自身を抱きしめた。
けたたましいサイレンが鳴り止むと、暗闇は水を打ったように静まり返った。
ライターの明かりを中心に集まった三人は、すっかり全貌を変えてしまった『ボウリング場だったはずの場所』を、手探りで進むしかなかった。
衣擦れの音すらはっきり聞こえるほどの静寂の中、カウフマンを先頭に、ゆっくり慎重に前へ進む。
こんなに暗闇が怖いのは初めてだ。
以前、工事現場で発見された戦時中の防空壕に忍び込んだ時も、懐中電灯を落としてパニックになりかけたが、今はそれよりももっと怖い。
きっと、頼りになるセンパイたちが近くにいないせいなのだろう。
周囲にいるのは怖い顔した外国人のオジサンと、見るからに気の弱そうなデブである。
ちらりとエディーの方を見ると、恐慌状態から脱したようではあるものの、時々漏れる声音はまだ震えて裏返りかけており、神経が張り詰めているのが感じ取れる。
――頼りになるのはやっぱりおじさんだけか。
ミカは内心溜め息を吐きながら、オレンジ色の光と共に鉄臭い暗闇を歩いた。
『紳士淑女の皆様お待たせしました!“トリック・オア・トリート”の時間です! 』
突然、不気味なほどの静寂がノイズ混じりの陽気な楽器の音色によって木っ端微塵に粉砕された。
あまりに唐突な大音量だったので、思わず「うわっ」と驚きの声を上げてしまう。
斜め上の方向から聞こえるそれは、カウフマンがライターを向けると、壁に取り付けられたスピーカーから発せられる音声であることが分かった。
暗闇の中を場違いなほど明るい楽曲が支配し、あっけにとられる三人をリスナーに、男性の声音がご機嫌な挨拶口上を並べる。
和やかな音楽とパーソナリティーが紡ぎ出す異様な放送を、一同は固唾を呑んで聞き入った。
『さて、生きてこの街から出るにはどうしたらよいでしょう? 』
『生き残るための道は1つしかありません、1つだけ、他には全くなし』
――殺し合い。ラジオ放送は、クイズ形式の中にそんな“ルール”を匂わせていた。
否、匂わせていると言うより、これは説明に近い。そう、これはほぼルール説明だ。
ミカの背中が、正確にはデイバッグが、途端に重みを増した気がした。
原因は分かっている。――駅で見つけた、あの手帳だ。
あの手帳には、たった今放送されたのと同じ内容のメモとメッセージが記されているのだ。
そして、あの手帳が落ちていたすぐ近くには、恐らく持ち主であろう男性の成れの果て――
これがドッキリの類だったなら、呆れ果てるくらいタチの悪いジョークだ。
いたいけな女子高生を、グロテスクな死体とお化け屋敷のようなセットと頭のおかしいルールでビビらせようなんて、まったくもって悪趣味極まりない。
「おじさん、今のって…」
「…イタズラと言いたいところだが、この放送を信じる者がいた場合、イタズラでは済まなくなるだろう」
カウフマンの言葉がずっしり背中にのしかかり、ただでさえ不気味な手帳が一気に存在感を増す。
あの駅の死体――もしゲームに乗った者がやったのだとしたら、冗談ではなくミカも命の危険に晒されていることになる。
ミカは手帳の内容を確認するべく、何かを考えるように眉間に皺を寄せているカウフマンに声をかけた。
「あの、ちょっとライター貸してもらえます?」
◆
エディー・ドンブラウスキーは、ライターの明かりの下で何やら手帳を広げているミカとカウフマンの後ろ姿を傍観しながら、ある誘惑と戦っていた。
腹の底では、今まで溜まりに溜まったどす黒いヘドロが、この暗闇に誘われるようにして、嵩を増やしつつあった。
「何コレ、ゼンゼン見えないじゃん!あーあ、やっぱり懐中電灯持って来れば良かったなあー…」
気落ちした様子でミカがデイバッグに手帳と地図を戻す。
あのちっぽけなオレンジの明かりでは、彼女が手に入れたとか言う手帳の走り書きも同封されている地図も、さっぱり読めないらしい。当然だ。
子供はどうも苦手だ。やたらと鬱陶しいし、声はキンキン頭に響くし、イライラすることこの上ない。
そして目の前にいる子供は、それに輪をかけて気に食わない。
あの目、あの俺を見る時の嫌悪と侮蔑に満ちた眼差しときたら、ここに来る前に撃ち殺した“アイツ”を嫌でも思い出す。
アイツだけじゃない。アイツの周囲にいた人間もそうだ。俺と会う連中は、まず真っ先に不快そうな目をするのだ。「何コイツ気持ち悪い」と。
見るだけならまだ良い。あの子供ときたら、そんな眼差しで、ただ飢えを満たしているだけの自分にチクチクネチネチイヤミをタレるものだから、苛立ちがさらにつのる。
それに、もう一人気に食わない人間がいる。ミカの隣にいるカウフマンだ。
この男は、表面上は常識人を装っているが、俺には分かる。
コイツが俺に対して抱いている感情が、その目の奥にオブラートで何重に包み隠していてもはっきりと見える。
――優越感だ!
仕立てのいいスーツと、磨かれた革靴。頑丈そうなジェラルミンのスーツケース。見るからにエリートである。
高学歴、高収入を絵に描いたような身なりの彼は、ガソリンスタンドでアルバイトをしているエディーとは別の世界に生きる人間であることが、ありありと見て取れる。
そして、自分の高い地位を自覚し、そして自分より劣る者を常に見下している。
出会った時から感じられた、養豚場の豚を見るような男の冷徹な眼差しは、生意気な日本人の子供が向ける同様のそれと合わさり、エディーの劣等感を刺激して負の感情をさらに蓄積させていた。
今、エディーの心の奥底では『ある誘惑』が自己主張を始めている。
それは既に、サイレンによってもたらされた全てを飲み込みそうな暗黒によって勢力を増し、エディーの体の一部を支配しつつあった。
右手に感じられる、今しがたスボンの腰から抜き取ったばかりの冷たい鉄の塊――実弾が込められたリボルバーの重み。
前方には、オレンジ色の光で暗闇の中にぼんやりと浮かぶ二人の姿。
やることは簡単だ。狙いを定め、引き金を引いて、二人の頭を鉛玉でブチぬく。それだけだ。
二人してマヌケな後頭部を晒している今は、それを実行する絶好の機会。あと必要なのは、度胸だけである。
やってしまえば後戻りはもうできない。この街を支配しているらしいイカレたゲームへ、本格的な仲間入りというわけだ。
何を躊躇うことがある?自分はもう、ここに来るまでに既に一度実行しているのだ。一人や二人増えたところで、何も変わらないではないか。
それに、この世界で生き残るためには、誰かを犠牲にしなければならない。生きるために精一杯の努力をして何が悪い?
――そう、躊躇うことは何一つないのだ!
エディーはリボルバーを持ち上げ、まずミカの後頭部を撃ち抜こうと狙いを定める。
しかし元来の臆病な性格が災いしてか、その度胸はまだまだ引き金を引くには弱く、次第に手が震えて焦りが脂汗と共に滲み出てきたところへ、ミカのデイバッグからいきなり「ピリリリリ」とアラーム音が鳴り始めたことによって、なけなしの度胸は即座に引っ込んでしまった。
暗闇のお陰で背後に隠したリボルバーは見られずに済み、心の中でほっと安堵の息を吐く。
「何だね?」
「あれー?あたしのポケベル、こんな音だっけ?」
ミカは首を傾げながらポケットに手を突っ込み、手のひらサイズの小さな端末を取り出して確認するが、「やっぱ違う」と言いながらポケットに戻した。
今度は背中のデイバッグに手を肘まで突っ込み、音源を捜して中をかき回す。
そうして見つかった問題の音源は、ライターの明かりではよく分からないが、ちょうど片手で掴めるサイズの包みらしい。
音だけでなく、ハエの羽音のような音と共に振動している。
包装を破って取り出してみると、それは数字と文字のボタンがずらりと並ぶ、折りたたみ式の端末だった。
異国の文字が綴られた小さな画面は淡い光を発しており、ミカのアジア人特有の童顔を青白く照らしている。
「これは…?」
「駅で手帳と一緒に拾ったんですけど…最新式の電話ですかね?」
「電話?これがかね?」
日本人は何でも小型化したがる傾向があると聞いたが、まさか電話まで小型化したのだろうか。
まあ、それはどうでもいい。先程は気が殺がれてしまったが、再びチャンスが到来した。
エディーは改めてリボルバーのグリップを握り、既にアラーム音が鳴り止んだ端末を弄り回しているミカの頭に標準を合わせる。
しかし今度は、物珍しそうに首を捻るカウフマンにミカが端末の画面を向けた時、彼女がカウフマンの背後にいた何かに驚いて「ひゃっ!」と悲鳴を上げたことによって中断された。
ミカが悲鳴を上げたその直後、カウフマンはその場から消えた。
「つぅうぅぅかぁあぁあぁまぁああぁえぇぇたああぁぁあぁ」
◆
その時岸井ミカの目に写ったのは、2メートルを軽く超えようかという巨大な芋虫のような化け物が、でっぷりとした胴体に生えた、その巨体にはおおよそミスマッチな細長い腕で、カウフマンを抱き込もうとしている姿であった。
「ひゃっ!」
思わず悲鳴を上げた直後、その芋虫の細長い腕がカウフマンの腰に絡まり、白人の成人男性の体がいとも容易く宙に浮く。
その勢いによりカウフマンのライターが手から零れ、金網の床に落ちてエディーの足元に滑り込む。
「つぅうぅぅかぁあぁあぁまぁああぁえぇぇたああぁぁあぁ」
芋虫の頭に付いている人間の顔が歓喜の声を上げる。
ミカは一体何が起こっているのか理解できず、混乱のあまり足をもつれさせて尻餅をついてしまった。
それでも光る端末は手放すことができず、画面の青白い光が、芋虫の化け物に振り回されるカウフマンと、拳銃らしきものを持ってたたらを踏むエディーの姿を断片的に照らし続ける。
自身に何が起こったのか理解できなかったのは、怪物の抱擁によって宙に浮いたマイケル・カウフマンも同様であった。
ミカが駅で拾ったという機械の端末の、異国の言葉で綴られた文面を観察していた最中、突然腰に何かが巻きつき、凄まじい力で持ち上げられたのである。
しかし腹部を強く圧迫される痛みと内臓が口から飛び出そうな嘔吐感のお陰で、自身が危機に瀕していると即座に判断できた。
不気味な歓喜の咆哮をあげる怪物は、病院で襲ってきた鋏男とは別の個体のようだ。
アグラオフォティスを使っても同様の効果が得られるのかは不透明ではあったが、この状況では考える余裕などはない。
あの時と同じ効果があることを信じ、カウフマンは腹部を押し潰されそうになりながらも、手に忍ばせていたアグラオフォティスの小瓶の蓋をなんとかこじ開けた。
カウフマンが突然現れた巨大な人面芋虫によって振り回される様は、エディー・ドンブラウスキーに渦巻いていた劣等感と殺意を一気に吹き飛ばした。
吹き飛んだ劣等感と殺意の代わりに頭の中を埋め尽くしたのは――恐慌であった。
「う、うあ、ああっ…!」
もはや何をどうすればいいのか分からない。今のエディーにとって、恐怖から身を守る手段は、右手に持つリボルバーしかなかった。
嗚咽を漏らしながらリボルバーの銃口を怪物に向け、まともに照準を合わせないまま引き金を引いた。
ドン、ドン、ドン…
数発の重い破裂音が暗闇に響き渡る。
男の呻き声と怪物の苦しげな咆哮が混ざり合い、そして重いものが落ちる音が響いた後、騒然とした空気は一瞬のうちに静寂へ回帰した。
「お…おじ、さん…?」
寒々しい静寂に耐えられず声を発したのはミカだった。しかし、その呼びかけは闇に虚しく吸い込まれるのみである。
身を守るように頭を抱えていた両腕を解き、恐る恐る端末の画面をカウフマンがいるはずの空間に向けるが、そこには金網の壁が浮かび上がるばかりだ。
画面を右へ左へ傾け、そして床へ向けた時、ようやくカウフマンの胴体が浮かび上がったのだが――
「ひっ!?」
カウフマンの顔は、頭から溢れるどす黒い液体で真っ黒に染まっていた。
黒い液体は青白い皮膚の上で幾筋もの川を作り、光を失った目の脇を流れ、そして下敷きになったまま動かない芋虫の怪物の上に血溜まりを作っている。
彼の惨状は駅で初めて見た人間の死体を脳裏に蘇らせ、それと重なり合って激しい戦慄と悪寒が全身を支配した。
「う、ウソ、ウソでしょ?」
血の気を失ったミカの唇は冷凍庫の中にいるかのように震え、うわごとしか紡げない。全身は氷のように冷え切って石のように硬直し、呼吸もままならない。
恐怖で見開いた大きな瞳は凍りついたまま瞬き一つできず、しばらくカウフマンを呆然と見つめていたが、やがてゆっくりと視線が外れ、この状況を作り出した人間――エディー・ドンブラウスキーに辿り着いた。
「ち、ちが、お、お、俺じゃねえ、俺は…」
彼の足元に転がったカウフマンのライターの炎は弱々しくも燃え続けており、そのオレンジの光が、エディーの引き攣った表情を照らし出している。
極限の状態で言葉すら忘れてしまった今のミカに、エディーを非難する気力などは毛頭なかったのだが、彼はその視線に耐えられなかった。
その黒目がちの目が、どうしても自分を責めているように見えてならなかった。
――このグズめ!能無しめ!役立たずめ!
――なんてことをした!なんてことをしてくれた!
――お前が殺した!お前が殺してしまった!
聞こえるはずのない大勢の罵声が、暗闇の中から脳内へ洪水のように押し寄せる。
最初に人の命を奪った、あの時のように。
――こ の 人 殺 し ! !
「うるせえええええええええっ!!」
「きゃああああああああああっ!!」
二人の絶叫が、暗闇に木霊した。
◆
暗闇の中、少女が淡い光を発する端末を縋るように握り締め、冷たい金網の床の上で震えながら蹲っている。
出会った頃は天真爛漫に振舞っていたはずの彼女が、そのあどけない顔立ちを硬く強張らせ、健康的だった肌色を死体のように真っ青にしている姿は、彼女を知る者が見れば青天の霹靂かと思ってしまうであろう。
しかし今、この場に彼女を知る者一人もおらず、巨大な芋虫に細長い手足が生えたような怪物の死骸と、先ほどまでマイケル・カウフマンという人間だった者の抜け殻が転がるのみである。
エディー・ドンブラウスキーという若者は、あの堰が切れたような凄まじい絶叫の後、ミカに向けてリボルバーの弾丸を全て撃ち尽くし、意味不明なことを喚きながら何処へと走り去っていった。
今蹲って震えている少女、岸井ミカはというと、銃弾には被弾したものの、暗闇が幸いしてか腕を掠っただけで済んだ。
そしてエディーが走り去った今は、御覧の有り様だ。
ミカにとって、それまで怠惰にピザを貪っているばかりだった青年が、人を殺したことによって豹変してしまった姿は、驚きでもあり恐怖でもあった。
その恐ろしさときたら、血走った目が暗闇の中で赤く光って見え、この世のモノではない、鬼か何かにすら見えたほどだ。
今となっては、残りの弾薬で撃ち殺されずに済んだという幸運だけが唯一の救いである。
「…センパイ…」
嫌がりつつもミカのワガママに付き合い、いざという時はミカのために奮闘してくれた凛々しい少女。
最初は邪魔なだけと思っていたけれど、常にミカたちを脅威から守り、最善の道を教えてくれた優しい少女。
孤独に震えるミカの脳裏に、信頼する二人の上級生の顔が浮かんでは消える。
しかしいくら名前を呼んでも、かつてあるはずの無い電車のホームを探検した時のように、彼女たちがミカのために駆けつけてくれることはない。
一人は意識を失い、もう一人は命を失っているのだから。
「助けて…」
傷ついた体を抱えて吐き出されたミカのSOSは、無限の闇の中へ溶けて行くのみであった。
【マイケル・カウフマン@サイレントヒル 死亡】
【B-5ボウリング場跡/一日目夜】
【岸井ミカ@トワイライトシンドローム】
[状態]:腕に掠り傷、極度の精神疲労
[装備]:特になし
[道具]:黄色いディバッグ、筆記用具、小物ポーチ、三種の神器(カメラ、ポケベル、MDウォークマン)
黒革の手帳、書き込みのある観光地図、携帯電話、オカルト雑誌『月刊Mo』最新号
[思考・状況]
基本行動方針:センパイ達に連絡を取る。
1:どうしよう、誰か助けて!
2:気持ちが落ち着くまでじっとしている。
※90年代の人間であるため、携帯電話の使い方は知りません。
【B-5ボウリング場付近/一日目夜】
【エディー・ドンブラウスキー@サイレントヒル】
[状態]:健康、殺人によるパニック状態
[装備]:ハンドガン (0/10)。
[道具]:特になし
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく一人になる。
1:とにかく誰もいない所に行く。
2:一人になりたい。
3:誰かに会いたくない。
※サイレントヒルに来る前、知人を殺したと思い込んでいます
※覚醒フラグが立ちました
代理投下終了
投下乙です
カウフマンがここでゲームオーバーか
携帯はあまり他のロワで出てこないから面白くなりそうだ
代理投下乙です
誤殺と現場に居合わせた事による錯乱と精神衰弱か…
ロワにホラゲ風味を上手く加えていいなぁ
さて、次はどうなるやら…
代理投下します
蛍光灯の白々とした光が狭い階段を照らしていた。明かりに照らされた壁は血とも錆ともつかない汚泥にまみれていて、正視に堪えない風景を作り上げている。地下へと延びる階段は、あたかも冥府へ導く黄泉路のようだ。三つの足音が、物寂しげに続いていく。
怖気が奔る壁を出来る限り視界から外し、先行するケビンの大きな背中をただ見つめる。拳銃を構えながら進む彼は、早すぎず、遅すぎず、適度な速度を保ってくれていた。ベルトに差した刀が、彼の歩みに合わせて無造作に揺れる。
「外と違って、ここは電気が生きてるのね」
不快感を散らすために、ともえは独りごちた。「駅」そのものに興味があったのだが、この状況で見ても面白くもなんともない。灯りのせいで、世界の変異がはっきりと見えてしまっていた。
「全くもって有難いね。灯りの嬉しさが身に沁みる。神に感謝だな。抱きついて、熱っついキスをかましまくってやろうぜ」
「……そこまで感謝するの?」
「勿論。そのまま関節全部砕いて、唾吐きかけた上で埋めてやる。ここから生還出来たら、クソったれた神に悦んでケツ差し出すさ。イピカイエーって叫びながらな」
下品な内容だが、それはどこか懐かしい響きが含まれていて、ともえは小さく顔を綻ばせた。ケビンの台詞は、漁師たちのそれを彷彿とさせる。彼女を前にしてそんな会話をする者はいなかったが、彼らの声は大きい。自ずと耳に入って来ていたものだ。
「淑女が二人いるのに、使う言葉じゃないと思うけど?」
後ろのジルが呆れたように鼻を鳴らした。
「一人の間違いだろ? 銃をぶっ放す女は阿婆擦れって相場が決まってる」
「つまり、私はベル・スターってわけ? 上等じゃない」
階段を降り切り、ケビンが半開きだった扉を押し開ける。彼が周囲の安全を確認し終わるのを待って、ともえはついに駅構内へと足を踏み入れた。
そこは想像していたよりも狭い空間であった。幾つかの電灯は壊れているらしく、中は薄暗い。また呼吸をしたくなくなるような異臭が薄く漂っていた。
「……ここ見覚えがあるんだが。気のせいか?」
「たまたまじゃない? どのみち、こんな風に変わっていては確かめようがないわね」
「……あそこだとすると、そこまで変ってねえと思えちまうのが悲しいとこだけどよ」
「あなたたち、あそこに立ち寄ったの?」
二人の会話を聞き流しながら、ともえは「駅」というものを見渡した。
改札口以外は鉄柵で遮られており、設置された券売機の画面は血糊のようなもので覆われてしまっている。二つの階段に挟まれた詰所は無人だが、割られたガラスが"何か"が起こっていたことを物語っていた。もっとも、そういった個々の名称を、ともえは何一つ知らなかったが。
三つ並んだ改札口だけは煌々と照らされていて、単なる入口以外の意味を有しているようにともえには感じられた。改札口の上部には何かしらの表示があったが、錆に浸食されていて全く読めない。
改札口の向こうから吹いてくる風が、彼女の髪を撫でて行く。その向こうにも、ケビン以外に動く影は無い。最初に襲われた人型以外、怪物はずっと現れていなかった。
足音に振り向くと、詰所の中を調べていたジルが懐中電灯を二つ手にして戻って来た。他に使えるものはなかったらしい。改札口へと歩き出すジルの背に、ともえは語り掛けた。
「ここにも化け物はいないのね」
「みたいね。拍子抜けした?」
「……少し。もっと何か起こると思ったから。周りも……その、こんなことになっちゃったでしょう?」
「そうね。私達の運がいいのか。それとも、この変化に怯えて、何処かに隠れてるのかしらね」
「あいつらが?」
「天災の前には動物は逃げ出すって言うじゃない? さすがにああいうのは動物園に入れられないけど。子供が泣くし」
ジルに続いて、ともえは改札機を通った。塞いでいたバーが軋りを上げながら回転する。彼女らが来たのを見てとり、ケビンが、トイレの中を調べると告げて中に消えて行った。
「もしくは、あいつらを怯えさせる何かが、この辺りにいる……とか?」
「それがトモエかもね。ニッポンジンなんだし、ニンジャ、サムライ、ヤクザと、怖がる要素一杯よ」
「既に襲われてるのに?」
「誰にでも間違いはあるわ。化け物でもね。それとも、逆にあなたに惹かれてきたって説も有りか。後顧の憂いを絶つ、上手い断り方の練習をしておかなきゃね」
ジルに釣られて、ともえは小さく笑った。ただし、ジルは頬を緩めてはいるが、その引き締まった身体は、いつでも即座に動けるように適度な緊張を保っている。それは、ともえの眼から見てもはっきりと分かった。
一般人が落ち着けるようにと、気を遣ってくれている。それは心地よくもあり、悔しくもあった。
己には、この状況で何もできない。銃は勿論こと、土地勘もない地で上手く立ち回る器量もない。隣に居る女性に、対等に渡り合えるものを何も持っていない。
微かな水音がした以外は、駅は心がざわつくような静けさを湛えていた。
「その拳銃で、ばんばんって断り方が一番いいのかしらね」
「それがベストでしょうね。一挺、渡しておきましょうか?」
「……遠慮しとく。私じゃ、自分の足撃つのが関の山だもの」
「そう? 男にも効果覿面なのに」
「おい、ジル。渡すのは良いが、素人に銃押しつけて、化け物がうろつく夜の学校で二手に分かれて人探しーなんて馬鹿やらかすなよな」
会話が聞こえていたらしく、扉を開けながらケビンが言ってきた。排泄物の臭いが一瞬だけ空気に混じって消える。ジルが大仰に溜息をついた。
「そんな馬鹿、誰がやるのよ。……無駄に具体的なのが、すっごく気になるんだけど?」
「気にすんな。それより、ここは本当にラクーンの駅のようだぜ」
「アメリカの町は、トイレに特徴でもあるの?」
「そうだったなら面白えんだがな。個室に、駅員の死体があってな。俺の知人の同僚だ。間違いない。ラクーンシティで確認した時のままだ。そっくりそのままな」
「……それはつまり、私たちみたいに駅そのものがここに来たってこと?」
「そう考えるより他にねえな。ここが、本当にサイレントヒルって町なのかも怪しくなってきたぜ。少なくとも、こんな町は現実にはありえねえってことだろ」
「そう、なるでしょうね。悪い夢でも見ているみたい……ところで、手、洗った?」
「水が出なかった」
ジルは嫌そうな顔をして、懐中電灯をケビンに手渡した。
サイレントヒルという町は、ケビンたちの町ではない。しかし、この駅はケビンたちの町のものである。その理由も仕組みも分からない。
しかし、そのことよりも、ともえには気になることがあった。ケビンは、"死体"があると言ったのだ。
太田家の伝書にある一文が、否応にも浮かんでくる。
ともえは、ケビンに尋ねた。
「ちょっと待って、ケビン。そこに死体があるの? 人間の死体が?」
「ああ。ちゃんと死んでる。気味は悪いだろうがな。それとも、何か気になることでもあるのか?」
"人死にの際には、葬儀において滅爻樹を用いること忘れるべからず"――用いなねば、死体は"死体"でなくなる。
しかし、ここは夜見島ではない。想像もつかない、遠い外国の地だ。最初の、ケビンのたちの言葉に依るならば。
だが、もしこれが加奈江に由来する出来事だったとしたならば、話は違ってくる。
もし、そうだとしたら、そうである可能性があるのならば、彼らにも伝えておく必要があるのではないか。夜見島に伝わる伝承と、昨晩己たちの身に起こったことを――。
「……いいえ。ごめんなさい。その、気味が悪かっただけ」
結局、ともえは口に出すことが出来なかった。
ケビンとジルが訝しそうに見ているが、それを笑って誤魔化す。今、滅爻樹の枝は手元にない。伝えた所で、対処できないのならば無意味だ。徒に彼らの不安を煽るだけになる。
それに、これが加奈江の仕業と決まったわけではない――。
いや、そうではない。ともえの中の胸騒ぎは消えていない。全部ではないにしろ、何らかの形で古の者は関与していると、確信に近い予感がある。
己は伝えたくないのだ。伝承はともかくとも、己の身に起こったことに関しては、加奈江や三上家への仕打ちに触れなくてはならなくなる。そしてそれは、外部のものたちに決して理解はされない。
島では受け入れられることであっても、ここは"外"だ。ここにおいては、己が"他所者"なのだ。
理解されないだけならばいい。話したことで、ケビンたちに拒絶されることが怖かった。島の外からすれば、己たちがした行為はただの人殺しだ。そうとしか見られない。
「そんじゃ、気味が悪い所からは離れて、プラットホームに行くか。ラクーンと同じなら、こっちの階段だ」
表情を沈めたともえを気遣ってか、ケビンが明るい調子で言った。疑念は消したわけではないだろうが、踏み込んではこなかった。
同じようにケビンが先頭に立ち、更に地下へと続く階段を降りていく。吹き上がってくる風には、血と腐敗の臭いが混じっている。それは、一段一段降りる度に濃くなっていった。
プラットホームに降り立った時、ともえは思わず呻いた。壁や床が赤い汚れに覆われているのは上と同じだが、その上に本物の血肉が散乱していた。擂り潰されたような肉片が、床に赤黒い線を形作っている。壁を覆うタイルは、
大きな力で殴りつけられたように何か所かが爆ぜ飛んでいた。
破壊された監視用カメラからは、小さな火花が散っている。
噎せかえるような血肉の臭いに、ともえは思わず袖で鼻と口を覆った。
固まりかけた血を踏んで、ケビンの赤い足跡が床に刻まれていく。
プラットホームに列車の姿は無かった。
「全部が同じってわけでもねえらしいな。トモエ、離れるなよ」
ケビンとジルは眼光を鋭くして、周囲を確認している。割れた蛍光灯の欠片をブーツが踏み砕く音が静かに響いた。機能していない電灯の方が多く、上に比べて、陰となっている部分が圧倒的に多い。二つの懐中電灯の光が、心許なく闇の中を移動する。
ジルが一言告げて、プラットホームの反対側へと離れて行った。
草履が、何か柔らかいものを踏みつけた。それが人間の腕だと分かり、悲鳴を上げそうになるのを無理やり噛み殺す。
ケビンが、知り合いの者らしい名前を呼んでいた。彼の声は、木魂のように反響しながら闇の中に吸い込まれていった。しばらくしても、それに対する応答はなかった。
「……あなたの知り合い、いないみたいね。残念って言い方も、この場合はおかしいのかな」
「俺にも分からんね。ここも向こうも、状況的にゃ大して変わらねえしな」
言いながら、ケビンは線路を覗きこみ、懐中電灯を当てた。白い光の輪に照らし出されるのは、人の残骸だ。一人や二人の量ではない。中には、襲ってきた化け物のようなものの一部も混じっている。
呻いて、ともえは顔を背けた。蹲って、胃液がせり上がってこようとするのを必死にこらえる。気がつくと、ケビンが背中を擦ってくれていた。段々と気持が落ち着いてくる。涙を拭って、深く吸わないように注意しながら呼吸を整えた。
礼を小さく告げて、ともえはよろよろと立ち上がった。
「余計気味が悪くなっちまったな。この有様は列車に轢かれたのかね……。ま、運行しているなら、俺たちにツキはあるってことだ。そう考えようや」
「電車って……そういうものなの? ……あんなことにしてしまうものなの?」
「そういや、おまえさんの島には電車ないんだっけか。轢かれりゃあんな風になるんだ。普通は、その後"救助"するために列車は止まるもんだけどな。ま、どう見てもここは普通じゃない。モラルなんぞ期待する方がアホさ」
「……だから、あなたは手を洗わないの?」
「ロックだろ? 分からないか?」
「いいえ、分かりたくないけど」
「ま、本当に水出なかったんだがな」
轟と響く風籟は、死者の怨嗟のように駅全体を震わせている。
少し離れた所で、ジルも線路を覗きこんでいた。彼女はプラットホームの縁から何かを拾い上げ、ぽつりと呟くのが聞こえた。
「……電車のせいだけじゃないかもしれない」
「何か見つけたのか?」
ジルに近寄ると、彼女は摘まんでいたものを差し出した。それは拳ほどもある、一枚の鱗だった。澱んだ深い緑色が、懐中電灯に照らされて艶めかしく光る。
「それって……鱗? 蛇みたいに見えるけど……」
「ご名答。ホームの角で削れたんでしょうね。線路の方は分からないけど、プラットホームを荒らしたのはこいつで間違いないと思う。下水道の巨大ワニならぬ、地下鉄の巨大ヘビってところかしら」
手渡されたケビンが鱗を透かして見、そして大きくため息をついた。
「おいおい。これの持ち主は恐竜か何かか? 見たことねえぜ、こんなでっかいの。そんなのがいるってのか?」
「似たようなのは見たことあるわ。例の洋館で、リチャードを殺した奴よ。全長は30フィートぐらい。あいつは、それでも頭や横幅にしたら短いぐらいだったけど。この持ち主も、それぐらいはあるんじゃない? この地下鉄は、塒には最適でしょうね。
下水道への抜け穴とかが複数あるのかもしれないし」
「でも、おまえらはそいつをやっつけたんだ。そうだろ?」
「ええ。フォレストとリチャードの遺品のお陰でね。M4もアーウェン37も、どっちもラクーン警察署の中よ」
「……くそったれ。地下鉄はデカいノミだけで勘弁してほしいぜ。電車に乗ってるときに襲われたら、一たまりもねえぞ」
ケビンが鱗を床に叩きつけた。鱗は跳ねて、線路の闇へと落ちていく。それを視線で追いながら、ジルが小さく肩を竦めた。
「襲うのならとっくに電車を襲っているでしょうよ。ヘビって耳は悪いけど、振動には敏感らしいから。後は運次第よ。まずは、電車が無事に動いているか。そして、ヘビが私達の臭いを嗅ぎつけてこないか。どこかでレールが歪められていないか
……徒歩も電車も、どっちもリスクは似たようなものね」
「ちょっと待って。あっさり言われて聞き流したんだけど、大きな蚤までいるの? アメリカって全部が巨大ってわけ?」
「最近はそうなんだよ。小型化が得意なニッポンとは真逆さ」
「そう……。アメリカ人じゃなくてよかったわ」
「……私もアメリカに生まれたことを心底後悔したい気分よ」
ジルが苦笑し、髪を掻きあげた。
「さて、最初の問題。電車は動いているか否か。10分ぐらい待ってみる? 時刻表が見えなくなってるけど、あんなのは元から当てにならないし」
「ここで? 蛇や蚤の話を聞いて、じっと待っていられるだけの度胸はないわよ」
「俺も同感。上で待とう。列車が来れば、音で分かる。ここに来て、もう10分かそこらは経ってるだろ。合計20分だ。それでなんもなけりゃ歩いていくしかねえ」
ケビンが背後の階段を指差した。ともえとジルが同意し、三人は階段へと足を進めた。その途中、こつこつこつと、階段を下りてくる音が響いた。怪物が来たのかと思ったが、それとも違う。足音はたどたどしくもなく、
しっかりとしたものだ。意思の存在を感じさせる音だった。
ケビンたちもそう思ったらしく、銃を手にはしているが構えはしない。ジルの指示で、一行は階段からすぐには見えない位置に移動した。
「警察です! 一度立ち止まって、返事をしてください!」
ジルが叫んだ。しかし、足音は止まらなかった。規則正しい音が、淡々と刻まれていく。
「警察だ! 返事をしろ!」
ケビンが怒鳴った。しかし、応答はない。
――いや、違う。来訪者の声は聞こえる。うめき声ではない。何かを一人でぶつぶつと呟いている。
「――だよな。まったく、ジムの奴はさ、こういうときに運よく夜勤じゃねえんだもんな。腹が立つぜ。しかしまあ、夜の暗さってのはいいもんだ。ようやく分かったよ。なんて俺は馬鹿だったんだ。夜の闇はいい。本当さ」
ケビンは舌打ちし、階段の降り口に向かって銃を構えた。それを知ってか知らずか、階段を蹴り上げた音が響く。たんという軽い音と共に、人影が階下に降り立った。
「そう思うだろ? あんたらも」
そこには、幾重ものシーツをマントのように頭から被った男が不気味な笑みを浮かべていた。眼から黒い涙を流しながら――。
【A-2/地下鉄駅プラットホーム/1日目夜】
【ケビン・ライマン@バイオハザードアウトブレイク】
[状態]:身体的疲労(小) 、T-ウィルス感染中、手を洗ってない
[装備]:ケビン専用45オート(装弾数5/7)@バイオハザードシリーズ、日本刀、ハンドライト
[道具]:法執行官証票
[思考・状況]
基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。T-ウィルスに感染したままなら、最後ぐらい恰好つける。
1:男(闇人)に対処する。
2:電車を10分だけ待つ。来なかったら徒歩で警察署へ向かう。
3:警察署で街の情報を集める
*T-ウィルス感染者です。時間経過、もしくは死亡後にゾンビ化する可能性があります。
*闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。
【ジル・バレンタイン@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
[状態]:健康
[装備]:M92Fカスタム"サムライエッジ2"(装弾数12/15)@バイオハザードシリーズ
[道具]:キーピック、M92(装弾数15/15)、ナイフ、地図、ハンドガンの弾×2、携帯用救急キット、栄養ドリンク、ハンドライト
[思考・状況]
基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。
1:男(闇人)に対処する。
2:電車を10分だけ待つ。来なかったら徒歩で警察署へ向かう。
3:警察署で街の情報を集める
*ケビンがT-ウィルスに感染していることを知っています。
*闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。
【太田ともえ@SIREN2】
[状態]:身体的・精神的疲労(小)
[装備]:髪飾り@SIRENシリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:夜見島に帰る。
1:ケビンたちに同行し、状況を調べる
2:事態が穢れによるものであるならば、総領の娘としての使命を全うする
*闇人の存在に対して、何かしら察知することができるかもしれません。
*A-1兼A-2駅はラクーンシティの地下鉄駅のようです。
*駅の水道が壊れています。
*ヨーン@バイオハザードシリーズが、地下鉄構内及び下水道を塒にしているようです。
*闇人は、トイレで死んでいた駅職員(リッキー)です。駅の構造について熟知しています。
【クリーチャー情報】
名前:ヨーン
出典:『バイオハザードシリーズ』
形態:唯一存在
外見:全長10メートルほどの大蛇。全長の割に頭部が大きく、横幅も太い。
武器:牙、全身
能力:巨体に似合わない速度で移動する。蛇腹により、壁や天井も縦横無尽に這い回れる。牙には猛毒があり、噛まれたら専用の血清を打たない限り5分以内で死に至る。巨体を活かした体当たりは木造の壁や天井を容易くぶち破る。また、巻きついて全身を砕いたり、
成人男性を一呑みにしてしまうこともできる。
攻撃力:★★★★☆
生命力:★★★★☆
敏捷性:★★★★☆
行動パターン:ほぼ蛇と同じ生態。地下鉄構内や下水道を通して町中を移動している。
備考:実験体だった毒蛇が逃げ出し、T-ウィルスの影響で巨大化したもの。アークレイ山地の洋館では、通気ダクトを通って神出鬼没に捕食行動を繰り返していたらしい。表皮を鱗で覆われているため、
対抗策には相応の威力を持った銃火器や作戦が必要。硫酸弾が弱点。
代理投下終了です
地下鉄はラクーンの駅か。闇人にヨ―ンまでいるとは
これは地下鉄にいる奴がやべええw
もう何と言えば
ちょw
ちょw
ちょw
ちょw
代理投下します
(一)
シェリーは白濁した霧の中を、泳ぐように走り抜けていた。回廊の床を叩く足音以外、何も聞こえない。
腐った人間のうめき声や遠雷のような発砲音、時折混じる人々の悲鳴――喧騒と言う言葉では言い表せない、命が砕け散っていく音の数々。
それらは、つい先ほどまで聞こえていた筈なのだ。怪物も何も、全ては霧の中に溶け込んでしまったというのだろうか。
湖は、警察署から北東に存在していた。以前見ていた、ラクーンシティの地図にそう書いてあったはずだ。北の公園や西の動物園にも目を惹かれたものだが、パパやママが彼女を連れて行ってくれることはなかった。
手を繋いで公園の森を散歩したら、どんなに気持ちよかっただろう。公園でなくてもいい。長い時間、一緒に居てくれるだけでもよかった。
パパとママに会いたい。その気持ちは益々膨れ上がり、今にも胸が弾け飛んでしまいそうだった。息が苦しいのは、走り続けているせいだけではない。
今、パパとママは一体どうしているんだろう。警察署にいない彼女を、ちゃんと探してくれているのだろうか。
テレビに映る『家族』のように、ママは抱き締めてくれるだろうか。パパは抱き上げて、優しくキスをしてくれるだろうか。
それとも――。
シェリーは激しく首を横に振った。怖いことは何も考えたくなかった。大丈夫だ。ママは待ってくれている。
後ろを振り返ると、水面から伸びて来ていた手は消えていた。まるで、夢か何かを見ていたかのように、僅かな痕跡すら残さずに。
だけど、シェリーは足を止めなかった。おばけは、ただ隠れているだけだ。獲物が立ち止まるのを待っているに違いない。そんな企みなど、シェリーにはお見通しだ。
回廊の先、ミルクを垂らしたような濃霧の向こうに、建物らしき影が見えた。意外と、この船は岸に近い所を漂っているらしい。もしかしたら、着岸しているのかもしれない。
この船から抜け出せば、警察署に行ける。そこでならば、ママに会える。
そのことを考えると、疲労で重くなってきていた足が驚くほど軽くなった。軽やかに、靴底が床を蹴っていく――。
突然、シェリーの前方で水音が上がった。同時に、飛沫を纏った影が回廊に飛びん込んで来たのが分かる。ひた、ひた、ひたと、粘っこい足音が耳に入った。ゆっくりと、だが確実にそれは近づいてくる。
シェリーは踵を返して、走り出した。あれは見てはいけないものだ。眼にすれば、きっと走れなくなってしまう。
船の出口は遠のいてしまうけど、またぐるりと回ってくればいい。それだけでいい。あともうちょっとだけ我慢すればいいのだ。
シェリーは手の甲で目元をぬぐった。駄目だと自分を叱咤する。
――パパとママに会うまで我慢しなくちゃ。
また水音が上がる。今度は、すぐ近くだった。白い霧を裂いて、大きな影がシェリーの行く手に飛び込んだ。それはのっそりと立ち上がると、顔をシェリーに向ける。
丸みを帯びた青色の身体から垂れた雫が。足元に水溜りを作っていく。それには目がなかった。にも関わらず、それはシェリーを補足していた。それは喉を震わせ、甲高く鳴き声を上げた。
シェリーの悲鳴が、回廊を駆け抜けて行った。
(二)
レオン・S・ケネディは、藤田と名乗った日本人警官の後ろを歩いていた。霧に包まれた湖畔は、驚くほど静かだ。
ふとすると、自分がしっかりと地面を歩いているのかさえも実感できなくなる。幾度か、ブーツで地面を蹴って確かめた。
視界だけでなく、聴覚や触覚までが霧によって遮られているような錯覚を覚える。
ラクーンシティに湖はない。
いやあることにはあるのだが、ヴィクトリー湖に訪れるには市街地から北東へ離れねばならなくなる。加えて、自分の車は、町の南西に続く道を走っていた。ラクーンシティに入ったのにも気づかずに市街地を走り抜け、道に迷って北東の山道まで行ってしまった。
あまりに馬鹿げている。
これから署に出勤して、遅刻の原因を正直に述べた所で相手にされないだろう。もっとマシな言い訳を考えろと言われるはずだ。道に迷わなくても遅刻だったことは、この際無視する。
レオンは、先程行ってきたホテルを見上げた。大きな庭園の先に佇む建物は、もう霧の中で影としか映らない。
最高の立地であろうに、この濃霧では台無しだ。豊かな水音に耳を傾けながら、テラスでワインを飲むと言うのも味気ないに違いない。
しかしだからといって、濃霧で営業を停止するはずもない。それなのに、入口に立つボーイの一人どころか、ここから見えるホテルの影には照明すら灯っていなかったのだ。たった今乗り越えて来た門扉は固く閉ざされていて、何者の侵入をも拒んでいるようだった。
まるで、打ち捨てられた廃墟のような佇まいだ。ただし、仮にそうだとしても、それはそれでおかしいことになる。そうであるならば、もっと荒廃していて然るべきだ。このホテルは、まだ綺麗なままだ。手入れされた芝生が何よりの証拠だ。
また、ラクーン市長のマイケル・ウォーレンは町の発展に非常に執心と耳にしている。人の賑わう湖畔に佇む廃ホテルを、そのままにしておく理由もない。自然と縁が深い土地であるからこそ、そういった部分には気を配っているものだ。
それに、ホテルといった施設は、市中央のアップタウンかダウンタウンに集められていた筈だ。湖の傍の豪奢なホテルなど、聞いたこともない。
――ここは、本当にラクーンシティなのか。
根本的な疑念が膨らんでいく。違うとしたら、ここは何処になるのだ。霧にいざなわれ、異界へと迷いこんでしまったとでも言うのか。
夕刻を過ぎ、辺りは夜闇に包まれようとしている。
九月下旬の夜だ。これから気温は下がる一方だろう。霧が晴れるのは、夜明けを待つより他になさそうだ。視界が利かないせいだろうか。酷く落ち着かない気分になる。
妙な想像に思考が向いてしまうのも、それで気弱になっているからか。まるで、ベッドの下に潜むおばけに震える子供のようだ。
馬鹿馬鹿しいと、レオンはかぶりを振った。
それでも、やはりホラー映画の一場面に取り込まれてしまっているような感覚は拭えない。現し世とは違う空気に肌が総毛立っている。
生き物のように蠢く霧に包まれた町――。霧の中に浮かび上がる、子供の亡霊――。
これは『這いまわる眼』というよりも、『ザ・フォッグ』の世界に近いか。
この霧では、自分たちがどの方角に向かっているかすら分からない。霧の中をもがき、いつの間にか溺れて行く。そんな想像に陥りそうになる。
前方を歩く、藤田の足音が止まった。いつの間にか立ち止ったレオンを訝しんだらしい。首を傾げて、藤田がこちらを振り返っている。
「なんか、カーペンターの『ザ・フォッグ』を思い出すよ。現実感がない。夢の中に居るみたいだ」
一言詫びてから、苦笑と共にレオンは呟いた。その様子に、藤田は肩を竦めた。やれやれといった具合だ。
「それじゃ、ちゃんと足元は見ておかなくちゃな。『ざ・ふぉっぐ』が何か知らないけれど」
「結構古い映画だし、話も然程新鮮味もはなかったから記憶に残らなくても無理はないかな」
「映画、か。どんな話なんだい?」
「霧に町が覆われて、霧の中に住む亡霊に住民が殺されていくって話だよ。霧に覆われた町っていう状況が似てると思ってさ。そこは海沿いの港町だったけど。公開は80年だったかな」
「なんだ、言うほど古くないじゃないの。ま、暇がなかったからなあ。ってのも、言い訳か。そういうのを妻や娘と一緒に見に行く甲斐性でもあればよかったんだろうなあ」
「あの映画に、奥さんや娘さん連れて行くのはどうかと……」
藤田ぐらいの年齢になると、十八年前も然程過去ではないらしい。
話を聞く限り、藤田は家族と上手く行っていないようだ。とはいえ、あの手の映画を見せに行ったら余計に拗れてしまうだろう。他人事としてなら只の喜劇だが、本人にとっては大問題だろう。
レオンが追い付くのを待ってから、また藤田は歩き出した。
「ところで、ケネディさん。ここはラクーンシティってところなんだよな?」
「そのはずだ。だけど……無責任なようで悪いが、自信が無くなって来た。もし、ここがラクーンシティなら、"S.T.A.R.S."が壊滅したっていうラクーンフォレストに近いことになるかな」
「すたーず?」
「ラクーン市警が擁する特殊部隊だ。都市型テロや組織犯罪を解決するために集めた、戦闘のスペシャリスト集団さ。とてつもなく優秀だって評判だった」
「ああ。そういうのなら警視庁にもあるらしいなあ。SAPって名前の」
「今、森近辺で連続猟奇殺人事件、及び不可解な行方不明事件が多発しててな。二か月前かな。調査に乗り出した"S.T.A.R.S."までが犠牲になってしまった。具体的な真相は公表されてない」
「行方不明、ねえ……。神隠し……」
顎に手を当て、藤田が唸るのが聞こえた。
「どうしたんだ?」
「傍目から見たら、俺も神隠しに遭った風に見えるよな?」
「……そうだな。日本からボートごとアメリカへ流れついちまったなんて、普通は想像がつかないだろう」
「それなんだがさ。仮に俺が、いつの間にか潮流に捕まって漂流していたことにも気付かない大間抜けとしてもだ。俺がここに来られるはずがないんだよ。ここは内陸部だ。
ラクーンシティであるか否かは別にしても、そいつは動きようがない事実だ。
川でも逆流しでもしない限り、無理ってもんだな。それに、
津波に呑まれたと言ったが、この通り。ちっとも濡れちゃいない」
藤田が振り返って、制服を引っ張って見せた。
彼は、自分が超常現象に遭遇したと言っているのだ。「X-FILE」で描かれているような事件の被害者だと。
そういったオカルト話に胸をときめかせた時代は誰にでもある。世界は、まだ照らされていない未知の部分があると、本気で信じ切れていた。信じて、そしてそれに眼を惹きつけられていた。
メアリー・セレスト号やバミューダ海域に、人並みに興味を持ったことはある。
だが、やがて気付くのだ。未知の部分など、もうない。あったとしても、それは単に自分が知らないだけだ。それはつまり、知る必要がないということだ。そして、そんなものに執心する暇など何処にもないのだと。
そんなことよりも大切なことは山ほどある。
レオンはわざとらしくため息をついて見せた。つい先ほどまで似たようなことを考えていたからこそ、否定したかった。
「それで、神隠しか。宇宙人にでも連れ去られたとでも言いたいのか? 警察にあるまじき言動だよ、藤田さん。この世に完全な謎なんてもんは無い。絶対に何か理由があるもんさ。オカルトとされている事件だって、
考えるのが面倒だから解決しようがない分野に押し付けているだけだ。
それに、俺からすれば、あんたが嘘をついている可能性から考えなくちゃならない」
「ケネディさんは正しいよ。まったくだ。神隠しとされている事件なんて、不慮の事故に遭ったか、犯罪に巻き込まれたか、逃げ出したか。そのどれかだ。証拠が出てこないから、妙な憶測を持っちまうんだろう。理由だけなら、いくらでも思い付く。
先入観に囚われるのは間違いだが、狐狸妖怪の仕業とするよかましだ」
思いがけずあっさりと同意され、レオンは鼻白んでしまった。藤田は一つ大きく息を吸って、だけどなと付け加えた。
「そんな理由が思い付かない事件を、俺は知ってるんだ。俺が夜見島に向かってたって話はしただろう?」
「……ああ」
「そこは、俺の故郷なんだよ。十年前、その島の住人が全員消えちまった」
「消えた?」
「そうだ。島に送電している海底ケーブルが切断された日、その一夜の内にな。太田のおやっさんや、そのお嬢さん。他の幼馴染たちも皆、綺麗さっぱりだ」
「ちょっと待ってくれ。全島民が消えたなんて話、聞いたことないぞ」
「そりゃ、あんたは外人さんだろ。日本の事件なんて知らなくて当たり前当たり前。夜見島住民消失事件って、日本じゃ結構騒がれたけどさ」
「………………」
藤田は笑うが、レオンには納得がいかなかった。他愛ない事件ならいざ知らず、全島民が消えるなんて衝撃的な事件はアメリカにだって伝わるはずだ。
それも中世なんて大昔でも、治安の整っていない第三世界でもない。つい十年前の、日本で起きた事件だ。自分が十一のときにそんな事件を耳にすれば、多分記憶に残っている。
藤田は続けた。
「ボートに乗った小さい男の子が保護されただけで、あとは死体の一つも出てこなかった。よりによって、その男の子は記憶を失っていてな。結局、未だに何も分かっちゃいない」
レオンは唾液を無理やり飲みこんだ。
「なあ、ケネディさん。一人なら分かるよ。一家族でも想像は出来る。だけど、一つの島に住む人間が一度に消えちまった理由は思い付くかな?」
「………………」
レオンは黙ることしか出来なかった。藤田の眼差しから逃れるように、眼を伏せる。
殺すだけなら、道具さえそろえば皆殺しというのは可能かもしれない。最初に脱出の足さえ奪ってしまえば、後は時間の問題となる。
しかし、個人では無理だ。体力が持たない。相当数の人数が必要だろう。孤島とはいえ、完全に人が途絶えたわけではない。現に、事件はすぐに発覚している。
ことは迅速に進んだのだ。
組織ぐるみ。軍隊か何か、そうした手慣れた集団なら可能だろうか。
だが、これは消失事件なのだ。殺人に繋がる証拠すら見つからなかったということだろう。
死体はどうやって処分する。コンクリートを抱かせて沈めた所で、浮き上がって来てしまうものなのだ。埋めるにしても燃やすにしても、大掛かりな準備と手間がかかる。
そして、そうした手間をかけて「神隠し」を演出する意図が見えない。殺人を誤魔化す必要がない。死体があろうとなかろうと、事件性は明白だ。
それとも、警察捜査への挑戦状か。
そんな酔狂な人間がいるものか。ましてや、組織ぐるみで。
加えて、これらは可能かもしれないと言うだけで、荒唐無稽には変わりない。
「……あるとすれば、島民が自分たちの意志で出て行ったって真相かな。逃げなきゃならないような、そんな不味いことが起きた。そして、隣国に逃げこんだ。それぐらいしか、思い付かないな。だが、住民全員が逃げるぐらいなら、
島ぐるみで事件を揉み消してしまった方がずっと楽だ。
災害とかなら、それこそ現場検証で分かるはずだし」
「だろうな。太田家の人間なら、多分そうするよ。島から離れることを選択するはずもない」
「太田家?」
「島の網元だよ。ちょっとした殿さまみたいなもんさ。島のことは、全部太田家が管理している。特に人の生き死にはな。……殿さまと言うより、神官、祭祀って表現が一番近いかもな。俺も、父親の葬式で世話になったよ」
「……嫌な家なんだな」
「いやいや。少なくとも、常雄さんや娘のともえさんは面倒見の良い人だったよ。島外に対する……なんていうのかな、警戒心は強かったけれど」
少し懐かしそうに藤田は顔を綻ばせた。
「話が逸れちゃったな。俺が言いたいのはさ、消えた人間ってのは別に消滅するわけじゃないってことだ。どこかに移動しちまうだけなんだよ。俺みたいにな。それで、その移動先ってのが、ここなんじゃないかってな。夜見島の連中も、
ここに来たのかもしれないって、ふとそう思ったんだ」
「ラクーンシティが神隠しの移動先か。今頃、世界有数の大都市になってるだろうな」
「違うかもしれないんだろう? さっき自信が無くなってきたって言ったの、ちゃんと憶えてるぞ。ま、ちょっとした思いつきだからね」
「その“ちょっと”に、大分時間をつか――」
「――おい、ケネディさん。あれ……」
皮肉の一つでも言おうとしたが、藤田の声に遮られた。藤田はレオンの肩越しに何かを見ている。振り向くと、霧の中に人が佇んでいた。
黒髪に、青のツーピース姿――あの少女だ。暗闇に沈みつつある霧の中で、少女は浮き上がって見えていた。瞳には、やはり悲しみと苦しみを湛えている。
「……なあ、お嬢ちゃん。おまわりさんたちに何か用があるのかな? 言葉にしてくれないと、おまわりさんたちも困っちゃうんだ」
この少女が煙のように消えたことを見ていたにも関わらず、藤田が優しく声を掛けた。彼は中腰になって視線を合わせながら、ゆっくりと近づいていく。
その後ろに控えるようにして、レオンも歩みを進めた。ホルスターの銃把には手を添えていた。
少女は、今度は消えなかった。だが、ある程度まで近づくと、霧の中へと駆けだして行ってしまった。
藤田が小さく舌打ちする。行くぞと告げて、藤田は少女が走って行った方に走りだした。彼は意外にも俊足だった。レオンも、藤田の背中を見失わないように必死に地を蹴る。
辿り着いた先は桟橋の入り口だ。逃げ道などないと言うのに、少女の姿は何処にもない。桟橋の先まで行ったのだろうか。霧のせいで全く見えないが。
「桟橋の先に遊覧船が泊まっているんだが、その中に入っちまったのかな……。そんなわけないか。幽霊が相手じゃ、やんなっちまうな」
藤田が愚痴をこぼした。
と、耳に入ってきたのは悲鳴だった。桟橋の先の方から、小さい女の子のか細い叫びが聞こえてくる。その声には、切迫した恐怖が含まれていた。
あの少女のものかどうかは分からない。常ならば、そう考えるのが普通だが、消える人間が相手では違う場合も大いにあり得る。しかし、
ただ一つ言えるのは、自分達以外にも人間が居るということだ。
二人は桟橋を駆け抜けた。桟橋には、少し古めかしい遊覧船が停泊していた。少女の声は、この遊覧船の中から聞こえてくる。
「おまわりさんが来たぞ! もう安心だからな!」
藤田の声を背中に聞きながら、レオンは遊覧船に踏み入った。客室のドアを開ける。藤田が懐中電灯で客室を照らし出すが、人影はなかった。自然な水音と共に少女の悲鳴が上がる。
「外だ、藤田さん!」
レオンは叫んだ。
慌ただしい足音が、回廊から湖へと抜けていく。少女の悲鳴はまだ聞こえている。それに混じって、カエルのような鳴き声も。
外周をぐるりと回ったレオンの眼に飛び込んできたのは、顔を恐怖に引き攣らせ、立ち往生している金髪の少女――そして、囲むようにして彼女へとにじり寄っていく、
カエルのような三匹の異形だった。
毒々しい青色の肢体から水を滴らせ、互いを牽制するように鳴き声を上げる姿に、レオンは眩暈のような感覚を覚えた。藤田も同様に身体を強張らせている。
確定した。ここはラクーンシティではない。アメリカですらないかもしれない。
霧に包まれた町――。
霧の中に潜む異形の者たち――。
そもそも、これは――現実のことなのか。
目の前で起きていることが、俄かに信じられなかった。少女の悲鳴が聞こえる。これもまた夢か――。
レオンは唸るような息を吐いた。自分は警官だ。たとえ夢の中だろうと、市民を守るのが自分の務めだ。市民を守るために警官になったのだ。
目の前に、脅威に曝されている少女がいる。相手は、言葉による説得は通じそうにない。ならば、やることは一つだけではないか。
逃避したくなる衝動を噛み砕くように歯を食いしばると、レオンは銃を構えた。黒髪の少女がレオンたちを導いたのは、
このためなのだろう。この金髪の少女を助けてほしい――と。
「動くなよ!」
少女に一番近い怪物に向かって、引金を引く。胸部に銃弾を受けた怪物がよろめいた。構わずに、別の怪物にも銃弾を放つ。
レオンとは別の銃声も響く。藤田だ。こちらに向けられていた怪物の背中に血の花が咲く。
怪物が怒りの声を上げた。それに構わず銃弾を叩き込んでいくが、怯むだけで倒れない。藤田が毒づき、空薬莢が床に散らばる。
しかし、少女からこちらに怪物の注意を移すことはできた。
レオンの銃弾が怪物の頸部に突き刺さる。怪物はようやくもんどりうって倒れた。そうして生まれた隙間に、少女が身体を滑り込ませる。
少女はこちらを振り返ることもなく、回廊を走って霧の中に紛れていく。
「あ、おい――!」
すぐ傍の湖面で水しぶきが上がった。湖から何かが飛び出してくる。反射の発砲で宙にいた一匹を湖に叩き返すことに成功したが、
一匹は船内への侵入を許してしまった。
さらにもう一匹、怪物が飛び込んでくる。銃声に引き寄せられたのか、数が増えているようだ。
霧で姿は見えないが、水面から音や鳴き声が聞こえてきていた。
「藤田さん、追ってくれ!」
再装填の終わった藤田に叫ぶ。
「分かった!」
駆け出していく藤田の行く手を遮ろうとする異形に銃弾をお見舞いし、
レオンはホールドオープンとなったVP70を投げ捨てた。代わりにブローニングHPを引き抜く――。
突然、静寂を喰い破るようにサイレンの音が響いた。
「な、何だ!?」
レオンは上擦った声を上げた。
深く伸びゆく不穏な音色が辺りを包んでいく。それは、謠のように空気を震わせ、霧を霜刃で裂いていくような鋭さがあった。臓腑の奥まで冷たい刃が刺し込まれていくように、肌が泡立っていく。
しかし、レオンを戸惑わせたのはサイレンのせいだけではない。サイレンに合わせて、周りの風景が変化して行くのだ。
柱と柵を錆が覆い、沈没船のような風体へと変わっていく。客室の窓ガラスはなくなり、壁は中の鉄骨がむき出しになっていった。
そして、湖面が朱に染まっていった。血のように深く艶やかな朱だ。霧と湖面が不気味な紅白に分けられるも、それはやがて暗闇に沈んでいく。日暮れではあったが、あまりにも突然な変化だ。
と、一際大きな水音が上がった。
それと同時に、船が大きく揺れる。その直後、今度は突き上げられるように船体が跳ね、レオンは客室の壁に叩きつけられた。藤田と少女の悲鳴が聞こえた気がする。怪物の何匹かが、
湖面へと振り落とされたのが音で分かった。
怪物たちもまた、混乱したような悲鳴を上げている。
藤田のうめき声が聞こえた。レオンは壁伝いに、藤田の声がする方へ走りだした。ライトの光が顔に当たる。翳した右腕越しに目を細めると、それが藤田だと分かった。彼は壁を背に、足を投げ出していた。
「足を、やっちまった。悪いが、ケネディくんが行ってくれ」
歳は取りたかないと、藤田が自嘲する。
放られた懐中電灯を左手で受け止めた。怪物たちの声と足音が聞こえる。
あの怪物たちの動作はのろく、逃げるだけならそう難しくはない。しかし、足を負傷したとあっては捌き切れるものではない。藤田の拳銃はリボルバーだし、弾丸そのものも然程持ってはいなかったはずだ。
逡巡するレオンに、藤田が顔を厳しくする。
「行くんだ。あんたが下らねえことを迷っている間に、あの女の子が怪我でもして見ろ。俺は絶対に赦しゃしねえぞ! 行け!」
「……すぐに戻る」
銃口まで向けてくる藤田にそう言い残し、レオンは少女を追った。懐中電灯は、まるで幽霊船のようになった船を照らし出していく。のそりと立っていた怪物に銃弾を叩き込み、道を開けさせる。
靴先が何かを蹴り、金属音が響いた。光を向けると、床に金色のペンダントが落ちていた。あの少女のものだろう。それを拾ったとき、えいという可愛い掛け声が耳に入る。乗船口の方だ。
急いでそこへと向かう。怪物の存在を気にかけつつ、レオンは顔を桟橋の方へ向けた。
おぼろげな電灯が霧の桟橋を照らしていた。その中を小さな影が走っていく。怖い思いをしたせいだろう。少女は一心不乱といった様子に足を動かしていた。
制止の声を掛けるか、レオンは迷った。あの怪物たちは水に潜んでいた。無理に立ち止まらせれば、返って危険な目に遭わせてしまうかもしれない。
背後から、銃声が三つ聞こえた。
――自分が急いで追い付くしかない。
入口についたレオンの眼に、湖面を泳いでいく巨大な影が映った。影はくねりながら少女の方へと迫っていく。
「急げ! あぶな――」
轟く様な水音と共に、大きな水柱が上がった。そこから飛び出したのは真っ黒い、巨大な顎だった。ずらりと並ぶ鋭い歯が、仄明かりの中でやけに光って見えた。
影が少女に覆い被さっていく。振動が、遊覧船を大きく揺らした。レオンは振り落とされないように、必死で柵に掴まった。
その影が湖の中に引っ込んだ後、桟橋の上には何も残っていなかった。湖面に広がる水紋だけが、目の前で起こったことを報せる唯一の残滓であった。
レオンは尻もちを突きそうになる身体を、慌てて支えた。
巨大な顎に少女が吸い込まれていったのを、レオンははっきりと見ていた。
少女の悲鳴が、まだ耳に残っていた。あと轟音の中で、聞こえた筈のない悲鳴だ。だが、上げていた筈だ。助けてと思っていた筈だ。
それなのに――助けることが出来なかった。
レオンは拳で壁を殴りつけ、踵を返した。藤田に合流しなければと、銃を下に保持して回廊を駆け抜ける。
遊覧船を包み込む静寂に、レオンは胸騒ぎを感じていた。銃声は勿論のこと、怪物たちの声さえ聞こえない。自分の足音以外、何もだ。その足音さえも、
霧の中に吸い込まれていっているような気さえする。
自然と、鼓動が速まっていく。
藤田が座り込んでいた場所まで戻ったレオンは茫然と立ち尽くした。
何もなかった。藤田の姿も、あれだけ居た怪物の姿も全部消えていた。硝煙の臭いを微かに残して――。
「藤田さん!? どこにいるんだ!?」
名を呼びながら、懐中電灯で客室を照らす。変わり果てた座席が並んでいるだけで、動くものは無い。何度も名を呼ぶが、返ってくるのは己の声の反響だ。焦りに口が乾いていく。
船が大きく揺れた時に、誤って湖に落ちたのかもしれない。
その考えに辿りつき、レオンは柵から身を乗り出した。懐中電灯で湖面を照らす。
浮かび上がるのは、穏やかな赤い波だ。水面は、無関心にただただ揺蕩っている。
回廊を移動して、何度も湖面に何か浮かんでいないかと探す。自分の荒い呼吸が、やたらと大きく頭に響いた。
ちゃぷという異音を、ついにレオンの耳が拾った。音の方角へ、弾かれたように懐中電灯を向ける。
湖面に、カエルの怪物が顔を出していた。その口からは男性の足がはみ出ていた。濃紺色のスラックスの裾も見える。それは、藤田が穿いていたものと一致する――。
全身を駆け抜けたのは、度し難い怒りだった。レオンは銃を構えると湖面に向かって引金を引いた。怪物は既に、逃げるように水の中へ潜って行ってしまっていた。
それでも、レオンは引金を引くのを止めなかった。
小さな赤い水柱が湖面に五つ上がる。
銃撃を止めたレオンは、よろよろと後退して床に座り込んだ。
誰も救えなかった。少女も、藤田も。
守れたはずだ。もっと上手く立ち回りさえすれば、別の結果になったはずだ。
悔しさと情けなさに、レオンは身を震わせた。
船が、下からの大きな衝撃と共に跳ねた。壁で強かに顔を打ちながら、少女を喰らった怪物の仕業だと直感する。おそらく、船底に身体をぶつけているのだ。
湖面への銃撃で、遊覧船に獲物がいることに気付かれたのか。カエルの怪物たちが姿を消したのも、あの巨大な怪物から逃げるためなのかもしれない。
あの怪物に何度も襲われては、この規模の遊覧船は一たまりもない。
レオンは素早く立ち上がると、客室に飛び込んだ。座席の隙間を抜けて、一気に乗船口へと走る。再度の下からの衝撃に、船底が大きく悲鳴を上げた。
座席で身体を支えていたレオンは、次の襲撃がある前にと足を速めた。客室を抜け、乗船口に出る。度重なる衝撃で、船と桟橋の間が少し大きく開いていた。
一度大きく深呼吸して、レオンは桟橋へと飛び移った。そのまま間髪いれずに桟橋を疾走する。
寒気が全身を襲った。怪物はレオンが船から出たことに気付いている。そして、襲いかからんとこちらに接近している――。
それがなんとなく察知できた。瞬きの中で、
袂はもう眼と鼻の先だ。不穏な音を奏でる水音も、不気味な振動も、レオンは意識から無理やり追い出した。そうしなければ、足が止まってしまうような気がしたのだ。
大地を思い切り蹴り上げ、レオンは道路へと身を投げ出した。背後で大きな音が響き、振動で木々が揺れた。
受け身を取って、アスファルトの上を転がる。肩越しに桟橋の方を見ると、霧の向こうで巨大な影が湖へと戻って行くところだった。
身体を起こし、桟橋へと足を投げ出す。何も考えず、レオンは荒い呼吸を整えることに専念した。
ふと気がつくと、あの黒髪の少女が正面に立っていた。桟橋の明かりを背負っているとはいえ、世界が暗闇に染まる中で彼女だけが浮かび上がっている。
「……君は誰なんだ? 俺に一体、何をいいたい? 何をしてもらいたいんだ?」
少女は答えず、悲しそうに眼を伏せた。レオンは独白のように続けた。
「俺は……あの女の子すら助けられなかった。名前さえ知らない。ただ目の前で喰われるのを見ていることしか出来なかった。藤田さんだって、
俺が見殺しにしたようなもんだ。ただの役立たずじゃないか!」
堰を切ったように、言葉が肚の奥から溢れ出ていく。
「ラクーンシティへの配属を志願しただって? あの事件が、自分なら解決できるとでも思ってたんだろうな。だけど、現実はどうだ。小さな女の子一人すら救えない!
この俺に何が出来るていうんだ!? どうして俺の前に現れる!?」
「ラクーンシティへの配属を志願しただって? あの事件が、自分なら解決できるとでも思ってたんだろうな。だけど、現実はどうだ。小さな女の子一人すら救えない!
この俺に何が出来るていうんだ!? どうして俺の前に現れる!?」
レオンは怒気を露わにして少女を睨みやった。ただの八つ当たりだ。人ではないかもしれないとはいえ、年端もいかない少女に噛みついている自分の惨めさに、レオンは少女から眼を逸らした。
再び視線を戻した時、少女の姿はもう何処にもなかった。
【シェリー・バーキン@バイオハザード2 死亡】
【藤田茂@SIREN2 死亡】
【D-4/トルーカ湖/一日目/夜】
【レオン・S・ケネディ@バイオハザード2】
【状態】打ち身、頭部に擦過傷
【装備】ブローニングHP(装弾数5/13)、懐中電灯
【道具】コンバットナイフ、ライター、ポリスバッジ、シェリーのペンダント@バイオハザードシリーズ
【思考】
0:………………
1:人のいる場所を探して情報を集める。
2:弱者は保護する。
3:ラクーン市警に連絡をとって応援を要請する?
*トルーカ湖にハンターγとデルラゴが生息しているようです。
*リトル・バロネス号の船底にダメージが蓄積しています。何かの拍子で浸水するかもしれません。
【クリーチャー基本設定】
・ハンターγ
出典:『バイオハザード』シリーズ
形態:多数
外見:二足歩行の、眼のない青い蛙
武器:両腕
能力:水中での戦闘を得意とする。弱った獲物を「丸呑み」し、即死させる。鋭敏な感知能力。
攻撃力★★★☆☆
生命力★★★★☆
敏捷性★☆☆☆☆ (水中時:★★★★☆)
行動パターン:水辺に潜み、近づいた獲物に襲い掛かる。
備考:
両生類の受精卵に人間の遺伝子を組み込んだ、ハンターシリーズの一つ。攻撃力、知能は他のハンターシリーズと遜色ないが、
両生類の特異性が大きく出ているために水場でないと活動できない。
また、乾燥や直射日光にも著しく弱い。
・デルラゴ
出典:『バイオハザード』シリーズ
形態:唯一存在
外見:全長20メートル近いオオサンショウウオ
武器:巨体を利用した体当たりと、両顎による噛みつき
能力:
攻撃力★★★★☆
生命力★★★★☆
敏捷性★★★★☆
行動パターン:水中に生息し、岸辺や水中にいる獲物を丸呑みにしようとする。
備考:
プラーガを埋め込まれたことによって巨大化。制御不能として、湖に封印されていた。
体力がなくなると、泳ぎが遅くなる。
代理投下終了です
カエルはともかくあのサンショウウオまでいるのかよ…
前半はXファイル風味で後半は…ああ、シェリーと藤田さんはここで脱落か…
レオンは立ち直って欲しいが…そして謎の少女か…
62 :
BSAA:2010/10/08(金) 16:29:40 ID:r2eEg9ds0
代理投下します
63 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 14:44:30 ID:n5Zos7iJ0
闘争
7,62mmNATO弾の特徴的な甲高い銃声が滅びた警察署の一室で鳴り響き
それに合いの手を入れるように時折9mm口径拳銃の軽い発砲音も響き渡る
「……一通り掃討出来た様だ…」
(東側オフィス)というこの部屋に入ってから襲い掛かってきたヒトもどきの群れを
あらかた射殺、もしくは撲殺して少年と自衛隊員はこの部屋で一息つく事にした。
それから数分後、
「取り敢えず…協力を感謝する…と言いたい所だが、現在の状況では君の安全を保障できない。」
「え…つまりどういうことなんです?」
「私もこの状況が全く把握出来ていない、つまり君がどこに行こうが勝手だがここが日本だかどうかの判別もつかないと言いたい」
正直、こういう返事をある程度予感していたが、聞いてみるとかなりショックに感じる。
須田少年はそう思った。この自衛官も現在の訳のわからない状況に巻き込まれた一人
という事になる。
64 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 15:11:15 ID:n5Zos7iJ0
それにたしかにこの自衛官が言うとおりこの警察署もよく見ると
日本の物ではない、と確認できる。第一こんな所にこんな物が落ちている
訳がないのだ。そう須田恭也は思いながら大きなグレネードランチャーの
の銃身を眺める。その時、
ガチャッガサガサガサ…
驚いて物音の聞こえる方向を見ると自衛官がこの部屋のデスクやロッカー
を漁っている音だった。
唖然としてその様子を見ていると自衛官は手伝えと言う様に
こちらに首をしゃくる、
須田自身も他にする事がない事と、興味本位で自衛隊員の傍に
行き使えそうな物が無いか探すことにした。しかし警察署、それも外国の警察署
で泥棒の真似事をすることになるとは夢にも思わなかったなと軽く苦笑しながら。
手始めに冷蔵庫に何か無いか探すことにした、中にはドーナツがひとつ
入っていただけだった。
そのドーナッツをかじりながら今度は右側のデスクの引き出しを漁る。
一つ目の引き出しには書類の束が入っていただけで
二つ目と三つ目の引き出しも似たようなものだ。
四つ目の引き出しを開けると先ほど拾ったような拳銃の弾の入った
箱が2つ見つかった。
65 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 15:22:33 ID:n5Zos7iJ0
それから部屋の中を20分ほど二人は物色して結構いろいろな
物が見つかった。
三沢は先程射殺した警官のヒトもどきのホルスターから自分用に
自動拳銃を一丁と予備弾倉を拝借した。
須田も拳銃用の弾薬を幾つか見つけたが取り合えず持っている
拳銃に合う口径の弾薬だけを持っていき後はデスクの上に置いていく
ことにした。
「取り合えず君を保護しながらこの建物の探索を続行する。後ろからついてくるんだ。」
「わかりました…」
自衛官は小銃を肩に掛けて入手した拳銃を構えながらオフィスの
反対側のドアの取っ手に手を掛ける
66 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 15:32:07 ID:n5Zos7iJ0
ギィイイイイ…
自衛官がドアを開いた瞬間、目の前が真っ暗になった
「チッ…」
舌を鳴らしてから自衛官は胸の位置につけている官給品のL字型LEDライト
のスイッチを押す。
拳銃を構え油断無く死角をカバーしながら進む自衛官の後から、
同じく拳銃を構えながら須田がぎこちなく背後に目をやりながら進む。
この通路はまるで地下を歩いている位の暗闇だ。そう須田が思ったその時、
フッ
自衛官のライトの光が照らしていた窓の外を何かが横切る。
67 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 15:51:32 ID:n5Zos7iJ0
「・・・・・!?」
須田がその「横切った物」に気をとられ窓から外を見るが
何もいない。
ガシャアアアアン
不意に前方の窓ガラスが割れると同時に「何か」が通路に飛び込んで
来た。と同時に自衛官が前置き無しにその「何か」に向かって拳銃を
連射する。
発射された弾丸が容赦なく「何か」に着弾していく
しかし「何か」は怯むことなく壁に張り付いてかなりのスピード
で此方に向かってくる。着弾する度に体液を噴出せながら。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
須田も夢中になって「怪物」に発砲を開始する。
狭く長い廊下で拳銃のマズルフラッシュが眩く光る
カサカサカサカサ…ドシャァア…ギュエエエエ
何発も弾丸に被弾したため流石の怪物も壁からズルズルと滑り落ち
踏まれたヤモリのようにその場で動かなくなった。
須田と自衛官は倒した化け物の死骸を確認したが、あまりの不自然さに
須田は吐きそうになった。
「何なんだよ…こいつは…」
人間の皮膚を剥いで4つんばいにさせて脳みそを丸出しにしたような物だ
目は退化したらしくその面影もない。
そして一番特徴的なのはその口から飛び出している異様に長い「舌」
先端がまるで槍のように鋭くなっていて伸縮自在になっているみたいだ。
68 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 16:01:51 ID:n5Zos7iJ0
「…こんなのはまだましなほうかも知れないな。」
気分が悪くなって座り込んでいる須田とは対照的に
自衛官は冷静に化け物の死骸を観察していた。
「…これからどうするんですか?……」
遠慮がちに須田は自衛官に聞いた、自衛官自身は
まだ化け物の死骸を観察しているがこの問いには
答えてくれた。
「このまま君を保護しながらこの建物を探索して無線設備を探し外部との連絡手段を手に入れる」
そう断言した。
69 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 16:25:41 ID:n5Zos7iJ0
【D-2/警察署/一日目夜】
【須田恭也@SIREN】
[状態]軽い疲労
[装備]H&KVP70(18/8)
[道具]懐中電灯、グレネードランチャー(1/1)、ハンドガンの弾(90/90)
[思考・状況]
基本行動指針:危険、戦闘回避、武器になる物をを持てば大胆な行動もする。
1.この状況を何とかする
2.自衛官(三沢岳明)の指示に従う
【三沢岳明@SIREN2】
[状態]健康(ただし慢性的な幻覚症状あり)
[装備]グロック17(17/9)、防弾チョッキ2型
[道具]照準眼鏡装着・64式小銃(20/8)、ライト、弾倉(3/3)、精神高揚剤、ハンドガンの弾(30/30)
[思考・状況]
基本行動指針:現状の把握。その後、然るべき対処。
1.民間人を保護しつつ安全を確保
2.永井頼人の探索
3.警察署内の通信設備の確保
*警察署内部にはゾンビ以外のクリーチャーが生息してるようです
*警察署(東側オフィス)のデスクに以下のものが放置されてます。
45オートの弾(14/14)ショットガンの弾(7/7)グリーンハーブ
70 :
BSAA ph,kxbFktM代理:2010/10/09(土) 16:42:21 ID:n5Zos7iJ0
【クリーチャー基本設定】
・リッカー
出典:『バイオハザードシリーズ』
形態:複数存在
外見:人間の皮膚をはがした様な外見で四つんばい目が無く
長い舌が特徴。
武器:伸縮自在な鋭い舌と前足の爪・口
能力:異様に高い聴力と壁に張り付くほどの俊敏性舌を自在に操り獲物を狩る
攻撃力:★★★☆☆
生命力:★★★☆☆
敏捷性:★★★★☆
行動パターン
暗がりの壁や通気口などに潜み突然襲い掛かってくる。
備考:t-ウイルスに感染した人間が一定のプロセスを
満たして変異した物、最初に交戦したラクーン市警の
署員が長い舌を見てリッカー(舐める者)と名前を付けた
代理投下終了です。
お疲れ様です。これからも書く意思があると推察して、助言を少し述べさせていただきます。
「代理投下」というのは、こことは別の場所(具体的にはしたらばでの専用掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13999/)
にて投下されたものを転載するということです。
こちらの知る限りでは、この作品は転載されたわけではないので、普通に「投下」で結構です。
題名の隣にある文字列はトリップというもので、名前欄に「#」、その直後に文字(8文字以内)を打つことで表示されます。
一度テストすることをお勧めします。
最後に、弾数表示の分母と分子が、おそらく逆かと。
疑問などがあった場合は上述の専用掲示板やチャットがありますので、遠慮なくどうぞ。
投下乙です。
そのドーナツはT-ウィルス汚染されていないのだろうか……
されているとしたら……かゆうまSDKの誕生になるか
リッカー、群れで来たらこのチームも終わるかもしれん
投下乙です!
三沢が頼もしいがSDKは既に屍人フラグ立ってるからなー。
警察署はこれから人が集まりそうだがリッカーも集まるのか……怖いなw
>>70氏
>>71氏もおっしゃってますが、もし今後も企画に参加して頂けるなら、よろしければしたらばやチャットに書き込み頂けますか?
色々と説明したい事もございますので。
トリなしってことで収録してしまってもオーケイですかね?
75 :
BSAA:2010/10/10(日) 10:27:03 ID:ksuwkujx0
了解です、書き込むのがまだ不慣れなので色々ご指導お願いします。
76 :
BSAA:2010/10/10(日) 10:30:19 ID:ksuwkujx0
了解です。まだまだ書き込みが不慣れなのでご指摘お願いします。
77 :
BSAA:2010/10/10(日) 10:37:00 ID:ksuwkujx0
ちなみにドーナツはバイオOBのSPアイテムのひとつです。
たしかにこんな得体の知れない場所に放置してあるドーナツ
を食べるのはどうかとおもいましたけど・・・
投下乙です。
ドーナツについてはもっともかとw
それとこれから先の作品投下の後、修正などが必要になってくると思いますので
トリップはなるべく早くつけたほうがいいと思います。
79 :
BSAA:2010/10/10(日) 11:53:53 ID:ksuwkujx0
凄い初歩的な事何ですけど・・・トリップってどうつければいいですか?
80 :
BSAA ◆k8HSgjGcjVQQ :2010/10/10(日) 11:55:36 ID:ksuwkujx0
こんな感じでいいですかね。
落ちてる栄養ドリンクをラッパ飲みするラスボスがいるんだ。
SDKならドーナツくらい食べても大丈夫さw
>>80 トリップはそんな感じでOKですが、
基本的に2chやしたらば掲示板では名前欄の名前は無しで結構ですよ。
作品を投下する時や◆k8HSgjGcjVQQ氏本人の発言として御意見出したい時に
トリップだけつけて頂ければ大丈夫ですので。
後、書き込みの際にはメールの欄に半角英字で「sage」と入力して頂けると助かります。
82 :
◆UC4YhMM/N6 :2010/10/12(火) 16:46:37 ID:cz2J9K7S0
新しく出現させた武器のアーカイブを忘れていたので
書きます。
グロック17
出典:現実
9ミリ弾を使用するオーストリア製の強化プラスック
製ハンドガン
装弾数は17発
>>82 制作乙です!
今後はそのトリップを使われるという事で宜しいですか?
後、こちらへの書き込みの際にもメール欄に半角英字で「sage」と入力をお願い致しますね!
そうですね、これからはしばらくこのトリップをつかうことにします。
≫82
>>84 トリップって、
>>82でやられたように、名前欄に「#(
>>82で入力された文字)」としないと
トリップとして機能しないのです。
自身を証明するパスワードみたいなものですし。#の後の文字列は、入力した人しか分かりませんから。
表示された文字列だけをコピーするのだと、他の人でも出来ちゃいますしね。
名前欄をダブルクリックすれば、
>>82で入力された文字列が記憶されて出てくると思うのですが、どうでしょう?
こんな感じですかね?≫85
あと話が変わりますがクリーチャー同士が
争うことは無いんでしょうか?
#あいうえお
でやってみる
◆がつくと思うんですが、機種とかで変わったりするんですかねえ
まあ、本人確認ぐらいにしか使いませんからねえ>トリ
クリーチャー同士の戦闘はありだと思いますよ
▲対タイラントとか、ヨーン対デルラゴ大怪獣総進撃とか
クリーチャー主役で、人間出てこないってのも有りかと
88 :
◆T/IeEZtcd. :2010/10/14(木) 18:09:06 ID:oQfeM5io0
次はどうですか?あとアーカイブ追加です。
64式小銃狙撃仕様
出典:現実
7,62mmNATO弾を使用する自動小銃で
1964年に陸海空自衛隊に正式採用された
この小銃にはマークスマン(選抜射手)向けに
中倍率の狙撃用照準眼鏡を取り付けてある。
装弾数20発
ID変わってますが
>>86さんですよね?
今度は大丈夫です。
説明作成乙です
アーカイブの制作乙です!
出来れば
>>82のトリップで入力してもらえると助かります!
クリーチャーの対立は一応ありですよ。サイレン2では屍人と闇人が敵対してますしね。
屍霊は一気に殲滅された印象だがw
ネメシスはタイラントの死体喰ったし、クロウはゾンビ喰ったりしてるみたいだよな
ネズミとコックローチも覇権争ってたし
ほら、一藤二孝シナリオとかあったわけだしw
ちょっと違うけどこのロワ内でもゾンビがゾンビの死体食ってたりしたね。
トリップ違いの原因が分かりました・・・実は私、複数のPCを使っていて
その度にトリップが変わっていたのです。取り敢えず私が書き込む時はBSAAを
トリップの前に書き込んでおこうと思います。
ちょっとしたシナリオを考えたので投下しようと思います。
不運な逃走
「ケビン・・・どこにいるんだよ・・・・話し相手が居ないと…とても暇なんだよ」
霧の深い呪われた怪異の町の歩道を地下鉄の駅員の格好をした黒人
男性ーージムチャップマンは何時間か前に呟いていた言葉を再び口に出し始めていた。
先程の怪物の襲撃をうまく凌いだものの最初に出会った少女とは逸れてしま
い、また振り出しに戻ってしまった。
それでまたこの霧の深い街の歩道をトボトボ当ても無く歩いていたと言う分けである。
投下を中断したと判断し、書き込みさせて頂きますね。
>>93 端末によってトリップが変わる例はあるみたいですね。
では今後は
>>82か
>>88のどちらかのトリップということで宜しいでしょうか?
それがはっきりしていればトリップ前の名前については特に入力しなくても大丈夫ですよ!
後投下についてなんですが、出来ればメモ帳やワードなどで一度作品を全て書き終えてから投下して頂けると助かります。
その方がスムーズな投下が出来ますし、こういった中断がありますと他の方が書き込みにくくなりますので。
ほしゅほしゅ
ちょw
いいからしゃぶれ
取り敢えず呼ばれし者の話は置いといて
クリーチャー視点のシナリオを書き込むことにします
>>100 ジムの話は破棄という事ですよね?
了解しました!
102 :
ゲーム好き名無しさん:2010/10/18(月) 21:50:49 ID:5MRCLcey0
代理投下します
《Take charge of the attempt》
警察署のある一室で一人の警官が倒れていた。その男の名はマービン・ブラナー。この警察署に勤務していた警官である。
ラクーンシティで発生したバイオハザード。それに多くの警官が錯乱していたが、彼は正気を持ちつづけ、
自らを犠牲にしてまで生き残りの署員を脱出させた。
その後、ゾンビによって受けた傷に悪態を吐きながら正面ロビーから西側オフィスへ移動して、
そこで気を失っていた。目が覚めたマービンは腹部の傷に呻きながら、室内を見渡す。
そこは、何故かSTARSのオフィスだった。
マービンは首を傾げる。あの洋館事件以来、ここは機能していない。
しかも自分は一階にいたはずだ。不審に思いながらも、傷の痛みがやや和らいでいるため、マービンはここから移動する事にした。
まだ取り残されている生存者がいるかもしれない。ゆえに捜索を怠るわけにはいかないのだ。
「調子はどうだ」
背後の声に、マービンは慌てて振り向く。その際、銃に手を掛けるのを忘れない。
「調子はどうだと聞いている」
そこにいたのは老人だった。流暢な英語だがアメリカ人ではない、東洋人だ。
いや、本当に喋っているのは英語だろうか。唇の動きが、自身の知る発音と微妙に違っているような……。
(今そんなことを気にしてもしかたがない、か)
「ええ、問題ありません。腹痛はありますが、そこまで酷いものでは」
「そうか。助けた甲斐があったというものだ」
「あなたがここまで?」
「ああ。化け物どもが騒いでいては、ロクに介抱もできんからな」
化け物。同僚をそう呼ばれるのは不愉快だったが、否定はできない。
実際、あの所業・状態はそう呼ばれて然るべきものだ。腐敗した肉体、消失した知性……。
生ける屍――ゾンビとは、ああいうものをいうのだろう。
マービンは憂鬱な表情を浮かべたが、すぐに振り払い装備の点検を始める。
ベレッタに目立った損傷はないが、無線機はとても動きそうにない。
「助けてもらった立場でこういうことを言うのはどうかと思いますが、
すぐにここから逃げた方がいい。見ての通り、ここはもう安全じゃない」
おそらくこの老人は警察を頼ってここまで避難してきたのだろう。
しかし、残念ながらここはもう警察署としての意味をほとんど成していない。
屈強な仲間のほとんどは死に、わずかな生き残りも離脱した。
最早この警察署に治安の維持・脅威の排除などする戦力など残ってはいないのだ。
警察官は客観的かつ現実的に現状を説明した。
根拠のない激励や希望を並べられるほど、彼は若くも青くもない。
今日付け(もう昨日になっているかもしれないが)で赴任してくる新米の安否が不意に気になり、
マービンは何とも言えない不快な感情を抱いた。本来なら小規模ながらもその新人の歓迎会をやるはずだったのだが、
今はもう望むべくもない。せめて、レオン・S・ケネディがこの街に来ていないことを祈ろう。
模範となるべき先輩警官としてあるまじき発想だと思わなくもないが、こんな地獄で前途有望な青年が無残に死ぬよりは、
遅刻でも無断欠勤でもいいから無事でいてほしいと考えるべきだろう。
「避難しに来たわけではない。そもそも、逃げ場などないからな。
化け物に銃を奪われたのでここに来た。ただそれだけだ」
老人はマービンが気絶している間に物色でもしていたのか、
彼のそばの机にはショットガンと、それ専用の弾薬がまとめて置いてあった。
「猟銃とまでは言わないが、ここに狙撃銃はないのか」
「発注も運用もした覚えはありませんな」
部外者、それも民間人(違うかもしれないが)に署の内情を話すことにはばかりがないわけではないが、
今更そんなことを隠してもしかたがないだろう。それ以前に、散逸した武装の把握など、こちらもまだ完全にはしていない。
武器庫からなぜか紛失した数々の銃器や道具が現在どこにあるかなど、知っている人間はもうどこにもいないんじゃないだろうか。
「そうか。……贅沢は言えんか」
マービンは不服そうにショットガンと弾薬を装備する老人を止めるかどうか悩むが、結局見過ごすことにした。
自分の身は自分で守る。それがこの国のルールだ。属地主義で民間人を戦わせることに関しては、この際触れないでおこう。
「自己紹介が遅れましたな。マービン・ブラナーです」
制服のまだ汚れていない部分で手を拭き、相手に差し出す。
老人は鋭い目つきをわずかに緩めて、自身の手でそれを握る。
「志村晃だ」
久しぶりの、まともな人間との会話。
そのせいか、マービンには周囲がずいぶん幻想的に見えていた。
これを幻覚と断じられるほどの余裕は、このベテランでもさすがにない。
階下から不意に銃声が聞こえ、それを合図に二人は握手を終える。
「生存者がいるのか……」
まだいたのか、いま来たのか。どちらかはわからないが、ゾンビに射撃はできないはずだ。
とすれば、理性があるかどうかは別にしても、まだ知性のある存在がいるということは間違いない。
「行くか」
志村の問いにマービンは頷き、ベレッタを構えた。
《Selfless Passivity》
「本当にこんな所にあるんですか?」
「わからない。だが、ないとも断言できない」
排除した怪物の死骸をそのままに、須田恭也と三沢岳明は探索を続けていた。
目的は外部との連絡手段――つまりは通信設備の入手だ。
恭也は異臭のする死体やその残滓から顔を背け、自分も何かないか探す。
じっとしていては、気が滅入るだけだ。その辺にあった本を手に取り、開いてみる。
どうやら日記のようだ。英語で書かれているが、なぜかスラスラ読める。そのことに疑問を持つ気は、彼にはもうなかった。
『8月11日
久しぶりに青空を仰ぐことができたが、気分は良くない。
仕事をサボって――
9月5日
ひょんなことからある老人と知り合いになった。
裏の処理場で働いている老人だ。
皮膚病なのかしきりに体をばりばりと掻いていたのが気にかかる。
9月9日
食欲旺盛な老人だ。
腹が減ったとぼやき続けていた。
ただ、言葉とは裏腹にひどく体調が悪いように見受けられたが大丈夫だろうか?
9月12日
彼の方から訪ねてきてくれたのだが、土気色の顔をしてまるで死人のようだったので慌てて帰したのだ。
なんともないと言っていたが、きっと無理をしていたのだろう。
そういえば今日も調子が悪い』
日記は所々破れていたり、汚れていたりで全部は読めなかったが、
だいたいの内容は理解できた。先程ここで襲ってきたヒトもどきが書いたものかもしれない。
恭也はちらりと頭に風穴の開いた亡骸を見て、すぐに視線を戻す。
「ここにはないようだ。次へ行くぞ」
「わかりました」
自衛官の言葉に頷きつつ、少年は目の前の男が握っている銃を見た。
ここに落ちていたもののようだ。
「不満か」
「ちょっと気になっただけです」
正直な感想だった。欲しいと思ったわけではなく、どんな銃なのか気になっただけだ。
一見自分たちの銃とたいした違いはないが、そのどっしりとした意匠には、かなりの性能が秘められているような気がする。
「代わりといっては何だが、君にはこれを渡しておく」
そう言って恭也が持たされたのは、奇妙な形の箱だった。蓋と思われる部分が黄色く塗装されている。
「おそらくそのデカブツの弾薬だろう。試射できるほどの余裕はないが、一応持っておくように」
「はぁ……」
一発しかないグレネードランチャーの弾が増えたことは嬉しいが、これは結構な荷物だ。恭也は中に入っていた弾のいくつかを苦労して服に仕込む。
日記は邪魔になりそうなのでここに置いておこう。
「次はどこに行くんですか?」
「途中にあった階段から地下へ向かうつもりだが、君はどう思う」
「任せます」
餅は餅屋だ。ここは素直にプロの意見に従おう。
三沢が頷いてドアに手を掛けた時、部屋の外から足音が聞こえてた。
テンポが速い。走っているのだろう。だとすれば、あの連中のものではない。
二人が知る限り、腐敗した奴らは足を引きずるように歩く。こんなに速く走ることはないはずだ。
「まだ無事な人がいたんですね」
死骸を辿り、救助を求めて追いかけてきたのかもしれない。
化け物に囲まれ、絶体絶命の危機。そこにそれを打破する存在がいれば、自分だって縋りたくなる。
実際、そばの男と同行しているのには、そうした理由もあるのだから。
「そう思いたいがな」
恭也の嬉しそうな声とは裏腹に、三沢は厳しい表情で銃を構える。
「接触する。“健康な”人間なら聴取と説明。それ以外なら――わかるな」
少年は唾を無理やり飲み込んで、首を縦に振った。
ゆっくりと扉が開かれ、先に三沢が足音へ向かい、
その後を恭也が追う。どうやら音源はもうすぐそばまで来ているらしい。
長い舌を持つ怪物、その死体がある廊下にいるようだ。
「動くな」
巨体が音もなく躍り出る。男は相手の姿に何を覚えたのか、一文字に結ばれた口から呻きが漏れた。
少年は遅れて、顔だけそこへ出す。
恭也は、ある種の懐かしさを抱いた。
つい最近のことだが、ずいぶん前のことのように感じられる。
それほど強烈かつ濃密な体験を現在進行形でしていると、改めて感じ取る。
病的な肌の色で、目から血を流す人間。それは、あの村に徘徊していた奴らだ。
「この人達って……」
「ああ、私も見覚えがある」
恭也の呟きに三沢が同調し、油断なく拳銃の狙いを定める。
それに相手が警戒したのか、持っていた銃を緩慢に構えようとした。
「動くな! これは脅しではない」
あの時の警官とは違う警官が何かブツブツ言っているが、恭也は何と言っているかよくわからなかった。
英語はわかるのに、彼らの言葉は理解できない。理解できたとしても、それは断片的なもので、完全な意思疎通には程遠い。
自衛官とてそれは承知しているだろう。しかし、弾薬は無尽蔵ではない。それに比べ、奴らは何度でも復活する。
長期戦になれば、確実にこちらが不利だ。それを阻止するための威嚇なのだろう。
「武器を捨てろ。そうすれば」
三沢の言葉が届く前に、彼のそばにあった配電盤が火花を散らす。
とっさに男は目を腕で覆うが、それが仇となった。
隙を突いた老人の銃口が素早く目標に向けられる。恭也は渾身の力で目の前の巨体を引っ張った。
結果として散弾は壁を叩き、三沢は難を逃れた。
「すまない」
「いえ」
恭也が再び廊下をのぞき込むと、そこにはもう誰もいなかった。
放置された死骸が転がっているだけだ。
「逃げたか。いや、見逃したというべきか」
三沢の視線が割れた窓ガラスから背後の階段へと移動する。
恭也もつられて見遣る。この先には何がいて、何があるのだろうか。
探検と形容するにはあまりに危険なこの行為に、少年は久方振りに戦慄した。
【D-2/警察署/一日目夜中】
【須田恭也@SIREN】
[状態]軽い疲労
[装備]H&KVP70(18/18)
[道具]懐中電灯、グレネードランチャー(1/1)、ハンドガンの弾(80/90)、硫酸弾(6/6)
[思考・状況]
基本行動指針:危険、戦闘回避、武器になる物をを持てば大胆な行動もする。
1.この状況を何とかする
2.自衛官(三沢岳明)の指示に従う
【三沢岳明@SIREN2】
[状態]健康(ただし慢性的な幻覚症状あり)
[装備]マグナム(8/8)、防弾チョッキ2型
[道具]照準眼鏡装着・64式小銃(20/8)、ライト、弾倉(3/3)、精神高揚剤、グロック17(17/17)、ハンドガンの弾(22/30)
[思考・状況]
基本行動指針:現状の把握。その後、然るべき対処。
1.民間人を保護しつつ安全を確保
2.永井頼人の探索
3.警察署内の通信設備の確保
《Virtue or Vice》
撤退、あるいは逃走。
勝算がなかったわけではない。相手は二人といっても、片方はまだ少年だ。
攻め入ればどうにかなった可能性は充分にある。しかし、万が一ということもあった。
また無闇に突っ込んで、武器を奪われるのはさすがに癪だ。そばにいる警官のこともある。
ここは一度手を止め、足場を固めるべきだろう。老獪な男は胸中で頷く。
「あれはいったい何だったんだ」
警察署から脱出した矢先、マービンから疑問が飛び出した。
「ゾンビとも他の化け物とも違う。あれはまるで人間のようだった。
いや、もしかしたらあれが人間なのかもしれない」
警官は自身の腹部に視線を落とす。おそらくほとんど再生済みで、ケガどころか痛みさえなくなりかけているのだろう。
その異常に不審を抱くのも無理はない。
志村は何と答えればいいのかわからず、ただ幻想的な街並みを見回した。
すると西洋風の屋敷を見つけ、無意識に目を細める。
『アンブレラがあの洋館でTウィルスの実験をしていたのは間違いないのだ。
Tウィルスに感染すると、人間はゾンビになってしまう――』
署内で見つけた日記には、そのように記されていた。
あの動く屍が本当にウィルスによるもので、『洋館』とやらがあれを指すのだとすれば、
あの館はウィルスやゾンビの感染・発生源ということになる。
調べる必要はあるかもしれないが、“アンブレラ”とやらに迎撃される危険性がある以上、無策で潜入するのは危険だ。
不死といっても痛覚はある。それに拘束されて実験材料にされるのは御免だ。
さて、どうしたものか。
志村がそんなことを考えていると、隣の男が肩を掴んできた。
「教えてくれ。どっちが本当の“人間”なんだ」
「そんなことを聞いてどうする」
老人は無愛想に返す。かりに真実を告げても、状況が改善されることはない。
もうどうにもならないのだ。どうあがいても、その先には絶望しかないだろう。
だが、絶望の底に立ってこそ見える光もある。
「もし自分が怪物だと知って、お前はどうする。銃口を咥えて死ぬか? やめておけ、無駄なことだ。
そんなことで死ねるほど、この体は柔にできてはいない」
「そうか」
その言葉の含意を察し、マービンは項垂れる。しかし、と志村は話を続ける。
「意思も尊厳もない肉塊よりは、はるかにマシだとは思わんか。
たしかに醜い身ではあるかもしれない。だが、お前の目に映る世界は違うはずだ」
赤い水を摂取することにより、人は人でなくなる。その結果が不死身の肉体と楽園だ。
その性質・外見から生前は忌み嫌っていたが、そうなってしまった今となっては、もう受け入れるしか道はない。
「これはある種の救済だ。むざむざあんな形で死なせるより、こうして生きていた方がまだ救いはあるだろう」
違うか?と志村は目の前の男に問う。ああなっては後悔も苦悩さえもできはしないのだ。
ただ、その身が朽ちるまで恥を重ねていくだけだ。そんな屈辱を受けるより、
こうして自分の思うように行動できた方が、まだ幸せだと思えるのではないか。
どちらにしろ、もう元の姿には戻れないのだ。
選択肢など、自ずと限られてくる。
「……少し、待ってもらえないか」
マービンは複雑な表情で志村の方を向く。老人は腕を組み、その顔をじっと見るに留める。釈明を促しているのだ。
「あんたのいうことに間違いはないと思う。それはわかっているんだが、ほかの方法だってあるかもしれない。
無事な人達を引き摺り込む必要が本当にあるのか、確かめたいんだ」
「好きにするがいい。だが、俺はこの考えを変える気はない」
明確な解決策・指針がない以上、それはもう個人の信条の問題だ。他人がどうこう言えるものではない。
老兵は銃身を肩に担ぎ、警察署から離れていく。警官は今まで世話になった職場を一度振り返った後、遠ざかっていく背を追った。
【アイテム情報】
ショットガン@バイオハザード
レミントン・アームズ社開発のショットガンレミントンM1100-P。Pは「Police」のP。
銃身を短く切り詰めた警察仕様で、12ゲージショットシェルを使用する。装弾数は5発。
本来のレミントンM1100はセミオート式だが、ゲーム中ではカスタム前はポンプアクション式。
射撃範囲が広く、横に広がった複数の敵に攻撃を加えられる他、距離が離れていれば姿勢が低い敵にも命中する。
ただし、威力は接近している時が最も高く、離れれば離れるほど低下するので、接近戦が主な用途となる。
攻撃後の隙が大きいため、敵を仕留め切れないと反撃を受けやすいが、ゾンビに対しては頭部を攻撃して即死させるも良し、
集団を引きつけて一掃するも良しと非常に便利。
ショットガンパーツと組み合わせると「カスタムショットガン(レミントンM1100)」になり、装弾数が7発に増加、
威力が2倍近くまで増加するが、射撃時の隙が更に大きくなる。
マグナム@バイオハザード
IMI社が生産している大型軍用拳銃デザートイーグル。R.P.D.のメダリオンが埋め込まれた木製グリップが装着されている。
強力な.50AEマグナム弾を使用しているため高威力を誇り、雑魚敵はほぼ一撃で倒すことができる。
反動もショットガンに比べ小さく、隙が生じにくい。弾が敵を貫通するので一直線に並んでいる敵はまとめて倒せる。
マグナムパーツと組み合わせると「カスタムマグナム(デザートイーグル.50AE10インチ)」になる。
バレルが10インチに延長され威力がさらに上がるが、反動が極端に大きくなり、発射後の隙が大きくなる。
硫酸弾@バイオハザード
着弾時に濃硫酸を撒き散らす。リッカーやタイラントに有効。
代理投下終わりです
マービンまで出るとはw
志村と一緒に何処は行くのか…知り合いと再会したら…w
113 :
BSAA ◆AnI2QK2dJE :2010/10/20(水) 15:48:21 ID:htpjEMVc0
これからはこのトリップを使っていきます
あと最近忙しいため次のシナリオを投下するのは
恐らく土曜日か日曜日になります
ほしゅほしゅ
BSAA氏はもうすこしテンプレを読んでくださいね。
>>113 名前欄の名前というのは本人証明にはなり得ませんので外して下さって結構ですよ。
トリップ変更するのでしたら、まず一度
>>82か
>>88のトリップで書き込み、
IDの変わらない内に変更したいトリップを入力して下さると本人証明になりますので、
そちらの方法でもう一度お願いします。
シナリオの投下については、企画に慣れない内は
>>4で書かれている予約制度を利用してみる事をお薦めします。
漠然とした投下予告よりも予約して頂けた方が他の方にも分かりやすいですし。
>>115 まあテンプレがこういった企画に慣れてない方には少し分かり難かった気がしなくもない。
>>113 ちなみに、本人証明にはならないというのはこういう事です。
トリップ以外の名前というのは誰でも同じ物が使えますし、
「BSAA」と書かれていても、それが
>>82氏本人なのかどうか判断出来ません。
なので今後はトリップだけ入力して頂ければ結構ですよ!
代理投下します
地獄だった。
誰1人として成仏できず、
全ての骸が得体の知れない力に怯え、
何故こんな事にと私を訊ねて群れをなし、
行きどころの無い憎しみをぶつけてくる。
――――そんな地獄。
『悪鬼がとおる』
(ギャアアアア!!)
長い石造りの廊下に苦悶と憎悪を織り混ぜたかのような悲鳴が響き渡る、彼女はかつてこの場にいた巫女の1人であった。
霧絵が初めてその霊に遭遇した時、彼女は目を疑い困惑した。
自分が門を封じた時確かに全員天へと登って逝った筈だ、それは朧気ながら記憶しているし確かに見たはずなのに・・・・・
何より攻撃してくるということは既に治まったはずの障気がいまだに存在するということなのだが、門からは漏れていなかった、あの怪物が抑えているし・・・・・
おかしい、全てがオカシイ、ただ判るのはまた人を殺してしまった事だけ
「ごめんなさい・・・・・」
彼女は霊体だった、だから『殺した』ではなく『封印した』なのだが、それでもついこの前までの自分と同じ存在を消した事に変わりはない。
正当防衛だったとはいえ言い様の無い悲しみが込み上げ、ともかく屋敷を出たくなった。
井戸の外に出ると、漂って来るのはやはり障気ではない、それどころか懐かしき我が家の空気ですらない。これこそ、この異質な霊力こそが異変の理由だと直感した。
それは今まで感じた事の無い邪悪の気配。
自分の知らない外界、異国の空気。
「どうか、これ以上は誰も出てこないで・・・・・」
しかし、そんな想いとは裏腹にまだ苦痛は追いかけてくる。灯籠の灯った薄暗い廊下を逃げ出す途中に様々な人を見た、目の潰れた者もいた、首の折れた者もいた、もはや人としての原形を留めていない者もいた。
それぞれがそれぞれの敵意を持って此方に向かって来る。その度に縄を振るい、彼らを極力傷つけぬよう退け、やっとの想いで門の入り口までたどり着いた。
目の前に、鳥居が見える。・・・・・そして。その下にあの男は立っていた。
すぐにどれほどの悪意の塊かを理解することになる、あの最悪の男が・・・・
「大丈夫ですかお姉さん、こんな夜道に一人じゃ危ない。今そっちに行きますから!」
鳥居にも灯りが取り付けられ一応相手の顔が見える程度には明るい。
眼鏡の下の知的な目、いかにも人が良さそうな表情
普通の人間から見た彼、日野貞夫は、とても優しげな好青年にしか見えないだろう。
だが霧絵はその青年に何か嫌な既視感を覚えた、初対面のはずなのに幼い頃から知っているような・・・・・
「待って!それ以上は近寄らないで」
気がついたら声が出ていた自分でも何故こんなに彼が嫌なのか解らないがともかく近くにいたくなかった。
「ん?あぁ、こんな状況だし、警戒するのも当然だよな。それじゃ、このまま情報交換します?」
「・・・・それくらいなら」
すると彼はにっこりと笑みを浮かべ深々と礼をし、そして英国紳士の様に丁寧な口調で話し始めた。
「まず自己紹介から始めましょう、俺の名前は日野貞夫。貴女のお名前は?」
「霧絵、氷室霧絵です」
「霧絵さんか、いい名前だ。さて本題に移りましょう、霧絵さんはコレを見聞きしましたか?」
日野と名乗った青年は学生鞄からラジオを取り出し霊石を入れる。するとラジオからもはや聞き慣れてしまった霊の声が聞こえてきた、しかし内容は聞きなれない単語ばかりが飛び出してくるばかり。
サイレントヒル?
新たなルール?
殺し尽くせ?
「『この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になれ』だ、そうですよ。全く、馬鹿げてる・・・・」
日野は片手で眼鏡をクイと上げ、憎々しげに何かのチラシを読み上げ首を横に振り、これまでの経緯を話し始めた。どうやらこの知らせを聞いて仲間を集めて脱出する事を決意したらしい。
最初に感じた違和感も気になるが、その後もいくつか質問をして、その身振り手振りや口調から本気でこの異常事態を解決しようとしているという気概を読み取り、歩み寄ろうとした。
だが、どうしても譲れないことがある。それはこの氷室邸の管理、そして自分自身の過去。
「私は・・・・一緒には行けません、この家を放ってはおけないし。それに既に何人も・・・・」
自分にこの地獄から抜け出すような資格は無い。
過去、この氷室邸で故意にではないにしても門を閉じる際に既に何人もの命を――――
すると男は鼻歌の1つでも歌い出しそうな清々しい声で言い放った。
「あ〜殺しましたか、人を!」
うつ向きながら暗い表情をしていた霧絵はビクリと身体を震わせ、硬直する。
「どんな方法で殺したんだ?毒殺か?銃殺か?あぁわかったぞ、その縄で絞め殺したのか!いいよなぁ、特に首を締め上げてから死ぬまでの苦しみの表情は感動物だ」
何が起きているのかまるで解らず混乱するしかない。一体なんだこれは?さっきまで勧善懲悪をうたっていた人間は何処へ行ったのか?日野は休まず話し続ける
「溺死させたり、焼き殺したり、感電死を眺めたり、スタンダードに撲殺もいいよな。殺しは実に面白い、中でも俺は刺殺が好きだ、刃を向けられた哀れな犠牲者の命乞いは魂が震え心が踊る」
大袈裟な仕草で雄弁に語るその姿、それはまるで地獄の軍団長が語る大演説を思わせる。
「いったい・・・・何を・・・・!」
霧絵は顔を上げ日野の顔を直視し、そして確信した。これこそがあの男の本性、
すべてを引き裂く野獣のような、あの嫌な目。
頬の肉を無理矢理引き上げたかのような、あの嫌な口元・・・・
とても先程まで普通に話をしていた人間には思えなかった。
「やはりね、反応を見ておそらく、と、思ったが。目を見て確信したよ、やはりお前は人殺しだ。しかもまだまだ罪悪感なんてモノに振り回される尻尾もとれないオタマジャクシだ。ヒャハハハハ!」
この男は歪んでいる、それは明らかであり、この一触即発の空気の中ではきっとあっという間に殺し殺されになるだろう。霧絵は命の重みを知っている、沢山の人々の嘆きをあまりにも長い年月聞き続けてきたから。
それもこの様な障気モドキの充満した中で死ねば
相手も自分も碌な事にはならないことも重々承知していた。
だからどうしても目の前の鬼畜生にすら見える男を改心させたかった、もしかしたら最初は何か理由があって外道に落ちたのかもしれない。もしそうなら説得できるかもしれない
「・・・・何故人殺しなんて」
「よくぞ、聞いてくれた。人間はな、ストレスというものがたまる。だけど、エリートはストレスが溜まってはいけないんだ。そのためには、どうする?そう。ストレスになりそうな存在を排除する。
腹の立つ人間は一人残らず殺してしまうのさ。そうすれば、ストレスもたまらないし、自然とストレスも解消できる。楽しいぞ。こんなに素晴らしい方法、他にあるか?」
「けれど人間には魂があります、それが肉体から離れればもう二度と人生を送ることはできないのですよ。一寸の虫にも五分の…」
「それがどうしたというんだ?人を殺すのに、深い理由が必要か?」
日野は喫茶店でウェイターに珈琲を頼むように落ち着き払った態度で言い放った。霧絵にとってそれは完全に理解の外、止める言葉も見つからず、もはや呆気にとられるしかない。
日野は更に続ける。
「その様子じゃ無理だろうが。どうだい、俺の仲間にならないか?殺人クラブの」
「な・・・・・!」
「俺ならあんたを苦しみから解放する事ができるかもしれない。何、案外殺人を許容するなんて簡単さ、受け入れるだけでいい、恐怖心を、傲慢を、狂気を、卑屈さを、残忍さを、理不尽を、愛しい恋人を受け入れるようにだ。
それで人生はもっと楽しくなる。さぁ・・・・・どうする?」
一瞬の空白、気味の悪い夜風と共に、何処からか警報の音が響いてくる。そういえば目覚めてからずっと聞こえている。この音の意味も、自分の知らない邪悪な空気も、目の前の人物の言うことも
どれ1つとして理解不能、何もかもが不可解。
しかし1つだけ判別のつく事がある。この男の持っている空気は既に普通の人間のそれではなくなっている。
障気だ、この禍々しくて残酷な気配は小さくても紛れもなく、障気。
問いに対する答えは出ている、相手が障気に近しい者ならば縄の巫女として逃げる訳にはいかないだろう。
「お断りします、貴方の仲間にはなりません」
「・・・・残念だ、これからでも殺っていけば、きっと理解してくれると思うんだが。それに、一人で街1つ潰すのは楽じゃないからな、どうだ考え直さないか?」
なおもしつこく聞いてくる日野にため息と共に答える。
「貴方は考え直す気はないのですね・・・・これからも人を殺していこうというなら。私は貴方を・・・・・」
そう、門を閉める事もまた人々の驚異を取り去るためのものだった。ならば日野貞夫についても同じことが言えるのではないだろうか?霧絵は覚悟する。命をかけて目の前のドス黒い悪意を止める事を。
「強情っぱりだなぁ。ま、仕方ない。諦めよう。さて、それじゃそろそろ終わりにしようか」
言うが早いか日野がアイスピックを取り出し一直線に此方に向かって走り出した。しかし霧絵も黙ってはいない、手に持つ縄を振るい応戦する。
が、日野はそれを悠々と避けるが―――――
ボゴァッ!!
「何ぃ!?なんだ!?」
土煙と共に石畳が弾け飛ぶ。とはいえ少し抉れた程度なのだが縄を当てた程度でこれ程の威力を出すことは日野に衝撃を与えた。
彼女の持つ縄はただの縄ではない。目隠しの儀を経て17年の歳月を座敷牢で過ごし果てには自らの肉体を引き裂き死をもって完成する彼女の世界において最強の神器。
本気を出せば人間一人程度の四肢をバラす事など造作もない。
「面白い。獲物はやっぱり暴れてくれないとな」
そこで日野は作戦を変え、アイスピックを三本ほど投げた後行動に移る。
霧絵は縄で撃ち落とすが、それが仇となり捕まえるべき対象を見失ってしまった。黒のシルエットが不気味な木々が四方でざわめき、その中から声が聞こえてくる。
「姿が見えなきゃご自慢の縄は当てられないだろ?ちょっと特別な物を持ってるくらいで、あまり調子に乗るなよオバサン!」
木の間で声が反響し音はすれども姿は見えず。だがきっと不意討ちを狙ってくるはずだ。
何処にいる?何処に・・・・・
その時、カツンッと石畳の音がした。
即座に反応し攻撃するが誰もいない、靴が片方置いてあるだけ・・・・・
「そこまでか?」
背後から声が聞こえるも時既に遅し巨悪の高笑いが木霊する。
「ヒャハハハハ!!喜べ!お前が記念すべき殺人ゲームの餌食一人目だ!!」
そして無惨にも腕は振り上げられ、目の前は真っ暗になった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
・・・・・?
なんだ?お次は何が起こった?
そうか!分かったぞクソめ!あの一瞬のうちに縄で俺を後ろに引っ張り、ついでに鳥居の灯籠を全て消したって訳だ。
してやられたぜ、霧絵。まさかここまでできるとは・・・・
だが条件は同じはず
ヤツもこの暗闇では何も見えはーーーー
『ハァ゙ッ、ハァァァァーーーー
見 え な い 』
「ぐっ!?」
いきなり首を絞められ空中停止する、それと同時に視界がハッキリした。目の前にあの女が困惑した顔で突っ立っている、という事は後ろにいるのは第三者。最初から仲間が援護していたわけだ。
「貴様・・・・・謀ったな!」
それには答えずあの女は生きた蛇のように蠢く縄で手足を縛り始めた。いつの間にか後ろのヤツも消えているようだ、いくらじたばたしても縄はウンともスンとも言わない。きっとこのまま有無を言わさず殺されるに違いない。まだ殺し足りないというのに・・・・・!!
「・・・俺の・・・殺人クラブ・・・・選ばれし者達の・・・・・・・」
そう呻くと、辛そうにも哀しそうにも、または怒りも混じっているような複雑な表情であの女は言った。
「貴方には・・・・本当に選ばれてしまった人々の気持ちなんて、理解できない・・・・ッ」
そうすると俺を思い切り屋敷の中へと放り投げた。受け身も碌にとれず、地面に衝突しトタン板に重い石を落としたような音が辺りに響いた
「ぐえぇっ!!」
体の何ヵ所かにヒビが入ったのか身体中が痛い。奴め中途半端な事しやがって・・・・しかし家の中に入れたのは好都合だ。奴等が全て持って行ったかもしれないが銃や刀があるかもしれないからな。
この殺人ゲームに招かれた事といい、階段の下にいた気の効いたオモチャといい、確実に運は此方に向いてきている。この程度の怪我ならなんとかなるだろ、案外主催者に気に入られているのかもしれないな。まぁいい、思うように埒を開けようじゃないか!
『これからも人を殺していこうと言うのなら、私は貴方を・・・・・』
「ククク、グッ・・・・!こんなに楽しい事を、止められるか・・・・」
しかし彼は気が付かない、自分の手首に刻まれた刻印の意味に・・・・・
【C-4氷室邸中庭:夜】
【日野貞夫@学校であった怖い話】
[状態]骨にヒビ、興奮状態、殺人クラブ部長、縄の呪い
[装備]:学生服
[道具]:学生鞄(中身は不明)、アイスピック数本@現実、霊石ラジオ@零〜赤い蝶〜
薄赤茶色に光る鉱石@オリジナル、チラシ
[思考・状況]
基本方針:殺人クラブ部長として、殺人を思う存分楽しむ。
1:とりあえず武器と治療具の収集
2:皆殺し
3:霧絵に復讐
※裂き縄の呪いに架かっていますいつ死ぬのかは分かりません
裂き縄の呪い@零〜zero〜
霧絵が怨霊だった頃(零〜zero〜本編)に使っていた呪い。時間経過と共に縄のアザが腕から足最終的には首に表れ、首にアザが出た後しばらくすると四肢を縄でバラバラにされ死に至る。
さて、ピンと来た人もいるかもしれないが日野を押さえ付けたのは目を隠された霊である。しかし何故視界の閉ざされたしかも自縛霊である彼女がここまで来れたのか?
それには二つの理由がある。一つはサイレントヒルの魔力によるものが大きかった、これにより彼ら自縛霊は呪縛から解かれ氷室邸から出ていってしまえるからだ。
もう一つの理由はなんということはない、騒ぎすぎたのである。
目隠し鬼はここにいる、氷室邸の玄関口に、苦しそうに鳴きながら元仲間だった者へとすがり付く。
「ありがとう・・・・・助けてくれて」
たとえ助けるつもりが相手に無くとも、言わずにはいられなかった。過去に自分のせいで天に還れなかった人がそれでも助けてくれたのだから。しかしどうあれ鬼は鬼、ここで何とかしなければきっとまた自分の意思を歪められ、
あの男と同じように人を殺すだろう。
この場所では成仏もさせてやれないならばこの裂き縄に封印してしまえばいい。
その方がまだうかばれる。
「人が、自分のせいで死ぬのは辛いと思う・・・・・だから、ごめんなさい・・・・さようなら」
縄で思い切り締め上げると、聞くに耐えない音を立て断末魔をあげて化け物は消えた。霧絵の頬に、一筋の雫が流れた−−−−
しかし悲しんでいる暇はない、こうなっては何時までも霊がここに留まっているはずはないのだから。
鳥居から一つ提灯を取り、霧絵は走る。
「急がなくては、一人でも多くの人に危険を伝えるために」
【C-4氷室邸玄関前階段】
【氷室霧絵@零〜zero〜】
[状態]健康、使命感
[装備]浴衣、裂き縄@零〜zero〜
[道具]童話の切れ端@オリジナル、提灯@現実
[思考・状況]
基本行動方針:雛咲真冬に会いに行く
1:まずは周囲の人々に霊と日野の危険性を伝える
2:いなければ霊を封印しつつ真冬を探す
※チラシの内容を聞きました
※アイスピックが玄関口に三本落ちています
※氷室邸から自縛霊@零〜zero〜が大量に解き放たれました
それにしてもオバサンか・・・・・私はこう見えても17なのだけれど(生前は)・・・・・浴衣が古くさいのだろうか?
そんな事を考えながら階段を降りて行くと一番下の所に何か見える。なんだろうアレは?蛇にしては頭が大きすぎるのだが・・・・・
近寄って提灯で照らすとソレが何か理解できた、それと同時に吐き気を催す邪悪を感じた。それは自分の行動は正解であったと心から理解できる光景。もし、あの時日野が止まらなければ、もしかすると自分も
こんなふうにオモチャにされていたかもしれないと思うとゾッとする・・・・・
そこにはもはや、ゾンビとすら呼べない内臓と骨と頭だけになった音の鳴る腐ったモノがあるだけだった−−−−−
※氷室邸の階段下にゾンビだったモノが落ちています
代理投下終了です
130 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/22(金) 17:47:43 ID:uKLOLqYW0
すいません、ほんとの事を言うと
82、88のトリップを忘れてしまって(物覚えが悪い+メモしてなかった)
それで仕方なくトリップを新しく設定したと言うわけで…
これからはこのトリップを使わせていただけませんか?(今回はバッチリメモしている)
そういうことでしたか。
了解です。
そういった場合には一応、一言言ってくださると嬉しいです。
>>118 代理投下乙でした!
>>130 なるほど、了解しました。
今後は
>>113と
>>130のトリップという事で!
そうしましたら、お手数ですがしたらばの投下スレにトリップ変更の旨の書き込みをお願い出来ますでしょうか?
可能であれば両方のPCで一回ずつ書き込み頂ければ幸いです。
133 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 09:33:44 ID:NKR9/Dqj0
投下します
134 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 09:53:53 ID:NKR9/Dqj0
咆哮
視界が混濁し意識が朦朧とする・・・・ここはどこだろう?
「あれ」で終わったんじゃないのか?
じゃあなぜこんなにくるしいんだ?
何故だろう・・・何故だろう・・・ナゼダロウ・・・そうか
(マダオワッテイナイ)カラダ・・・ジャアオワラソウ・・・スベテヲ・・・
自衛官、永井頼人だった[それ]はこの呪われた街の一角で目が覚めた、それの容姿はもはや
人間では無かった。体中が血だらけで眼から真っ赤な血を流しながら…しかしそれは他の屍人とは
何かが違う、そうその眼の色が、まるで今いるこの場所が全て敵と言いたげなほどの憤怒の形相
彼は・・・全てを殺すことによって全てを終わらせることにした。
そしてまず準備を始めた、迷彩服のポーチから迷彩用のドーランの黒い墨を顔に塗る
次にしっかりとした手つきで持っていた装備を整備する・・・そして
『うおおおおおおおおおおおおオオォ』
そしてこの場所、雛城高校のグラウンドで雄たけびを上げる、闘いの始まりを告げるかのように
135 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 10:18:33 ID:NKR9/Dqj0
ぼやけていた視界をチェックしながら要領よく校内を跋扈する
異形の化け物たちをかわしながら道具を探索していた奈保子はこの声をまともに
聞いた。
「何なのよ・・・こいつ」
視界ジャックで手に入ったぼやけた視覚を見ながら
奈保子はとてつもない光景を目の当たりにしていた。
化け物が化け物を殺しまくっている
あの黒人の死亡を確認しようと視界ジャックを再び使用していた
所、突然校庭のほうから大音量の怒声が聞こえたのだった。
そしてその元凶を確認した奈保子は余計に焦り出した。銃声が響き渡り
あの黒い化け物も蜂の巣にされて次々と倒されていく。
当然倒した相手も人間じゃないに決まっている。今の武器だけでは到底太刀打ち
できるわけが無い、第一他の生存者を殺すことを優先目的にしている奈保子にとっては
化け物の相手など一番避けるべき事なのだから、そんな事を考えてるうちに[そいつ]は
校舎内に入ってきた。
しかも奈保子がいる廊下に程近い場所
見ていた[そいつ]の視界はまるで憤怒しているかのように真っ赤に染まっている。
そしてまるで軍人のような慎重な動き
奈保子は視界ジャックを中断して身近な教室の影に身を潜めた
このままやり過ごせることを微塵も疑わずに・・・
136 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 10:44:33 ID:NKR9/Dqj0
すべて無くせば・・・それでこの悪夢も終わる・・・
だから殺し尽くすコロシツクスころしつくす。
そんな思考しか今では思い浮かばなくなってしまった陸士長は腰だめ
に構えた分隊支援火器・・・MINIMILMG(軽機関銃)を用心深くかつ大胆に向けながら
この校舎内を探索していく。
背中には一昔前の猟師のように自動小銃を二丁タスキ掛けで背負いそれに
加えて大量の弾薬類をいれた迷彩色のザックを背負っている。
その時、突然横の通路からなにかが陸士長の前に飛び出してきた・・・こいつらは[あの島]
で見た・・・闇人
その闇人は片手に大振りの鉈のような物を持っていてそれで切り付けてきた。
陸士長はそれをMINIMIで受けとめそのままてこの原理で闇人を押し倒した。そして容赦無く・・・
ダララララララララ・・・
派手に撃ち込んだ、そこらに黒っぽい血が飛び散り飛散する。
その銃撃の際ある不幸が起きた、陸士長が掃射したMINIMIの弾丸が教室の
内に何発か飛び込み隠れていた奈保子の頭を貫いた。
そんな事には気も留めず陸士長は校舎の外の方へ歩いていってしまった。
新しい目標を求めて・・・
137 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 11:42:50 ID:NKR9/Dqj0
【A-3/雛城高校/二日目夜】
【クリーチャー】
【屍人(永井頼人)】
[状態]
[装備]迷彩服2型、MINIMI軽機関銃(150/200)、ライト
[道具]89式小銃(30/30)、89式小銃(30/30)、MINIMI箱型弾帯(200×4)、89式小銃用弾倉×12
TNT高性能炸薬×4本、9mm機関拳銃(25/25)06式小銃用てき弾×5、89式小銃用銃剣×2
9mm機関拳銃用弾倉×6、TNT用着火信管
[思考・状況]
基本行動指針:眼に入るもの全てを殲滅
1:この建物から出て新たな目標(呼ばれし者及びクリーチャー)を探し殲滅する。
【備考】屍人(永井頼人)の攻撃対象は無差別です
138 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 11:57:35 ID:NKR9/Dqj0
「・・・・・・・・・・・」
視界ジャックを使ってあの化け物がこの校舎から出て行くのを確認している人物・・・
・・・・頭が痛い・・・どうやら・・生きてるみたいね・・・あの化け物・・・
校舎のある一室で頭に包帯を巻き忌々しげにそう呟きながら
頭を撃ち抜かれ死んだはずの女性・・・美浜奈保子は化粧をしていた。
血で染まった顔、それでもやはり自分は美しい・・・そんな考えに酔いしれながら
鏡に写っている自分の顔・・・血だらけでとても正視できるような状態じゃない
顔を眺めている。
一通り(化粧)が終わったあと
そしてこれからどうしようか・・・そんな事を考えながらあの忌々しい
化け物への復讐と残る生存者たちを殺すことを夢見ながら外へ飛び出した・・・
考えることは一つ
早く願いを叶える事・・・ただそれだけ
139 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 12:16:36 ID:NKR9/Dqj0
【A-3/雛城高校/二日目夜】
【美浜奈保子@SIREN】
[状態]:心身共に強い疲労、頭に重症(簡易治療済み)、軽い興奮状態
[装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾4発) 懐中電灯
[道具]:志村晃の狩猟免許証 羽生田トライアングル 救急救命袋、応急手当セット(ガーゼ、包帯
、消毒薬、常備薬など)
[思考・状況]
基本行動指針:どんな手段を使っても、最後の一人となり褒美を手に入れる
1:他に生存者が居そうな場所を探し出して殺害する。(なるべく弱者を)
*屍人化の進行が進んでいます、死亡すると屍人化します、また時間経過で屍人に近くなっていきます
140 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/24(日) 12:18:46 ID:NKR9/Dqj0
投下終了です、本当は呼ばれし者で永井を出したかったのですが
とんだジェノサイダーになってしまいました。あと短文ですいません。
投下乙です!
永井屍人化……! やっぱりあのエンディングでは死ぬしかなかったかw
三沢良かったな、探し人が来てたぞ!w
美浜は死んだんじゃなくて、赤い水ガブ飲みしてたから傷が治ったってことかな?
短文に関しては問題ありませんが、メール欄のsageは意識して頂けると助かります。
後、トリップの件で
>>132での書き込みをお願いします。
一応アドレス書いておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13999/
投下乙
どこかで誰かがやるだろうなあと思っていた永井くんクリーチャーで登場
主人公なのに……え?4さま?
そんだけ装備あって、使い切らずに負けたのか永井は……
今度こそ大和魂見せてくれないと、ピエールにやるじゃない言ってもらえないぞ
143 :
T/ieEZtcd:2010/10/26(火) 18:06:23 ID:fiBQYegy0
アーカイブ追加です
89式小銃
5,56mmNATO弾を使用する自動小銃で1989年に陸海空自衛隊に
正式採用された。装弾数30発。連射速度は650発〜850発/秒
89式小銃用銃剣を着剣可能
144 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/26(火) 18:24:42 ID:fiBQYegy0
しくじってしまった…これでどうです?
>>144 できてますよ。
ところで、永井登場話の時系列が「二日目」になってますが、一日目の間違いですよね?
146 :
◆EbNJckTDyk :2010/10/27(水) 16:37:37 ID:am+wZhnc0
あ…そこもミスった・・すいませんそのとおりです
それと美浜奈保子に関してですが赤い水をがぶ飲みしたのでは無く
頭の被弾箇所が現在の行動に支障のない場所だった事と
それに加えて屍人化が進行しているため軽い治療で済んだという事です
しかしかえって凶暴化してしまったのかもしれません。
あとアーカイブ追加です。
MINIMI軽機関銃
ベルギーFN社製の分隊支援火器で正式名称はM249、1993年から陸上自衛隊に正式採用された
ベルトリンク式とマガジン式の給弾方式があり今回のMINIMIには200連マガジンを取り付けた
マガジン式給弾仕様になっている。三脚付き、発射速度は毎分1000発、5,56mmNATO弾使用
装弾数200発
永井君…
これは三沢先生が直々に引導を渡してやるしかないな
そうなると原作とは立場が真逆だなw それも面白い。
あと・・・これからはしたらばで書き込んだほうがいいんですかね?
したらば投下は特に決まっている事ではありませんが、ここではまずしたらばに投下する空気となってますからね。
そっちの方が何となくですがよろしいのではないかと思います。
もう何と言えば
154 :
ゲーム好き名無しさん:2010/10/30(土) 20:20:44 ID:HnaQtDxhO
155 :
ゲーム好き名無しさん:2010/11/01(月) 23:17:20 ID:6EyTqdl1O
あげ
またそういうことを
投下して大丈夫かな…
新堂誠、前原圭一、雛咲深紅、ジェニファー・シンプソンのお話を投下させて頂きますね
Doppelganger
思えば、私の人生は災難続きだったような気がする。
長い黒髪が完全に溶け込んでしまう暗闇の中、ブーツの足音を響かせながら、ジェニファー・シンプソンはこれまでの人生を振り返ってふとそう思った。
幼い頃に両親が他界し、人生のほとんどを孤児院で過ごし、それでも先生曰く“とても良い所”らしい家に引き取られると、そこで体験したのは幸せな家庭などではなく、友人たちの凄惨な死、恩師の裏切り、怪物との遭遇。
たった一人で地獄から脱出し、ヘレンに引き取られてようやく平和な暮らしができると安心していたら、またしても怪物がそれをぶち壊した。
それでも、周りの人々の協力で怪物を次元の彼方に追放し、やっと恐怖から開放されたと思っていたのに――
――今度は、いきなり見たことのない街に迷い込んでしまった。
なぜ現実というものは、こうも私に休息を与えてくれないのだろうか。
「Tsukasa of Jilldoll…変わった名前ね」
暗闇に唯一彩りを添えるのは、先ほど出会ったシェパード“ツカサ”のみ。
彼女(どうやらメスのようだ)のドッグタグを確認しながら、ジェニファーは繰り返しその名前を呟き、硬い毛皮を撫でた。
しかしそれもつかの間、ツカサはすぐジェニファーの手から離れ、何かを探すようにあちこちに鼻を寄せる。
「あ、待って!」
ツカサのお尻を追いかけながら、ジェニファーは暗闇を迷走する。
来たばかりの時は霧に包まれていた街は、ついさっき、背筋が凍るような不愉快極まるサイレンと共に、ブラインドをさっと下ろすような早さで夜になってしまった。
暗闇の中は腐った血肉や錆びた鉄の臭いが充満し、否が応にもあの悪夢に彩られた屋敷を彷彿とさせ、ジェニファーは思わず身震いした。
一体ここはどうなっているのだろう。
もしや、あのおぞましい“怪物”が再びジェニファーに影響を及ぼしているのではないかという恐怖が浮かんだが、もしそうならとっくの昔に襲われていてもおかしくないだろうと思い直す。
いや、そもそもアレはジェニファーが“扉の向こう”に追放したのだ。ここにいるはずがない。
ジェニファーは鞄をぎゅっと胸に抱え込み、頭を左右に振って大きなハサミを持った小男のビジョンを頭の隅に追いやり、改めてツカサを見つめた。
「ねえ、何か探してるの?」
当然ながらツカサから返事はない。彼女はひたすら鼻をせわしなくふんふんいわせながら、暗闇を突き進んでいく。
彼女が探しているものはだいたい検討がつく。飼い主だ。
立派な体格と躾の行き届いた様子から、飼い主との関係が窺い知れる。彼女をとても可愛がっているはずである。
そして彼女もまた、家に帰って主人に頭を撫でてもらいたいに違いない。
ぼんやりとそんなことを考えていると、ツカサの足がぴたりと止まった。
「どうしたの?」
すぐ追いついたジェニファーは、ツカサが真っ直ぐ見据えている暗闇の奥に目をやったが、何も見えない。
代わりに音が聞こえた。多分足音だ。ゆっくりと慎重な足取りで、遠くの方を歩いている。
次第にそれははっきりと聞こえてくるようになり、暗闇の中に人影のようなものが蠢くのがジェニファーの双眸に映った。
人間がいることに安堵したジェニファーとは対照的に、ツカサが鼻にしわを寄せて唸る。彼女はこちらに向かってくる“何か”が敵であると判断したようである。
唸り続けるツカサを大丈夫よと宥め、ジェニファーは人影へ声をかけた。
「あの、すみません」
声をかけたジェニファーに気がついた人影が、踵を返して真っ直ぐこちらに向かってくる。
暗闇の中ではあるが、その人影はジェニファーとそう変わらない若者であることが見て取れた。恐らく同年代。
「ここはどこなんでしょうか?私、道に迷ってしまって…」
顔が判別できるくらいに近づくと、アジア系の少年であることが分かった。
白いカッターシャツに黒いスラックスを身につけたその姿は、さしずめどこかの学校に通う真面目な学生であろうか。
ただ、顔や衣服には黒っぽい汚れがべっとり付いており、あどけない顔立ちは人形のように無機質で、まるで生気が感じられない。
彫りの浅い、アジア系特有の童顔をさらに幼く見せる丸っこい目は白く濁っており、ジェニファーに一抹の不安を抱かせた。
「あの、大丈夫で…キャッ!?」
突然、少年がジェニファーに掴みかかった。
その力たるや、背格好はジェニファーとどっこいどっこいなのに、痛みすら感じるほどの握力である。冬服でなければ爪が皮膚に食い込んでいるところだ。
ツカサが矢のように飛び出して少年の太股に噛みつくが、少年はかけらほども痛がる様子もなく、大口を開けてジェニファーの喉笛に喰らいつこうとする。
「やっ、やめて!痛いっ、放して!!」
かつて殺人鬼の恐怖に怯えていた少女の生存本能に火が点いた。
噛まれる寸前に両腕で少年の体を突っぱね、その反動を利用して渾身のショルダータックルを見舞う。
威力のほどは期待できなかったが、ツカサのサポートもあって少年の華奢な体をぐらつかせる程度には役立った。
その僅かな隙を見逃さず、普段は頭痛の種でしかない辞書や参考書が詰まった鞄を、少年の頬っ面めがけてありったけの筋力でもって振り下ろす。
ジェニファーの絹を引き裂くような怒号と、砂袋を落とすような重々しい衝撃音が暗闇に木霊した。
◆
思えば、私の人生は災難続きだったような気がする。
アップにした黒髪が完全に溶け込んでしまう暗闇の中、ブーツの足音を響かせながら、雛咲深紅はこれまでの人生を振り返ってふとそう思った。
幼い頃に両親が他界し、生まれ持った“力”のせいで他者に心を開くことができず、唯一の心の支えだった最愛の兄は、私を残して冥界の門を守る巫女と共にいなくなってしまった。
紆余曲折ののち、兄の友人の婚約者である女性の所で働かせてもらうことになったが、この気が狂いそうな喪失感と孤独感は一生拭い去れないであろう。
挙句の果てには、怪物が跋扈する見知らぬ街に迷い込み、じきに彼らの仲間入りを果たそうとしている――
「深紅、大丈夫か?」
深紅がよっぽど悲壮感溢れる顔をしていたのか、横にいた前原圭一が心配そうに声をかけてきた。
「研究所まではまだ遠いぞ、しっかりしろよ」
続いて、先行する新堂誠が前を見据えたまま檄を飛ばす。
現実に引き戻された深紅はハッとして首を横に振り、問題ないことをアピールするために力強く「いえ、大丈夫です」と即答し、大丈夫だと繰り返し自分にも言い聞かせた。
しかしどれだけ自分を励まそうとも、普段ならどうとも思わない些細な内臓の動きだけでも思い出してしまう、己の体を蝕んでいるであろうウイルスの恐怖を忘れることは、到底難しかった。
――気をしっかり持って。とにかく研究所に急ぐの。
背後から囁くヨーコの励ましに、深紅は「分かってる、分かってる。私は大丈夫…」と心の中で呟くしかなかった。
バーでの暇潰しを兼ねた話し合いの中、次の目的地を決定付けたのは、新堂が持っていた禍々しいトランプであった。
今後の行動方針を決める際、三人がそれぞれ別方向の意見を出したため、公平な手段で決を取ろうということになり、そこで白羽の矢が立ったのが、新堂のトランプというわけである。
まず真っ先に圭一が意気揚々と身を乗り出し、「よし、ここは公平にトランプで次の行き先を決めようぜ!」と提案した。
それを受けて新堂がにやりと口角をつり上げ、「面白い。ルールは俺が決めさせてもらうぜ。勝った奴に目的地の決定権をやる」と答える。
こんなやりとりを経て、三人は半刻ほどゲームに興じることとなった。
幸運にも、新堂が提案したゲームはババ抜きであった。
深紅は背後のヨーコの助けを借り、圭一にイカサマを疑われたり、新堂に脅迫まがいの心理戦を仕掛けられつつも、何とか勝利を勝ち取った。
ちなみにゲームの後、新堂の指摘で圭一がカードにさりげなく傷をつけて記憶していたことを知り、まったくもって油断ならない男だと感心させられたものである。
あのいわくありげなカードに傷などつけて、大丈夫なのかと心配でもあったが。
深紅はヨーコのアドバイスにより、北へ――ショッピングモールへ続く道を提案した。
というのも、この街の地図にはショッピングモールへ続く道の途中に研究所なる施設が記されており、もしかしたらT−ウイルスのワクチンを作る材料があるかもしれない、と彼女が囁いたからだ。
ヨーコの遺言であると言い置いてから、罪悪感を感じつつもウイルスについてはぼかしてそれを説明すると、新堂に「何だそれなら早く言え」と呆れられたが、結局二人はゲームに負けたことを理由に付き合ってくれることとなったのである。
深紅が恐縮しないようにさり気なく配慮してくれた二人に、深紅は心の底から感謝した。
不安と興奮であまり眠れなかったが、深紅達は交代で一時間ほど仮眠をとってからバーを出発した。
そこから北へ上った先にある、駅付近のT字路に差しかかったところで、前を歩いていた新堂が何か見つけたのか声を漏らした。
「…何だアレ」
深紅も新堂が指す方をじっと凝視してみると、暗闇であまりはっきりとは見えないが、何か長い物体がT字路のど真ん中につっ立っているのが見えた。
「…ひょっとして人間?」
隣にいる圭一の呟きが、冷水となって深紅の背筋を冷やした。
生死の確認――つまりゾンビか否かを確かめるかお互い視線を合わせて相談しあうが、このT字路を抜けないと研究所には行けず、どちらに転んでも謎の物体を間近に見るのは避けられないわけなので、結局謎の物体が立っているT字路まで進むことにした。
T字路に到着すると、謎の物体は圭一の呟き通り人間であることが判った。
暗闇で顔はよく見えないが、背格好は圭一とほぼ同じで、闇にぼんやりと浮かび上がる白いシャツの胸元は赤黒く染まっており、血色がすっかり失せて青ざめた白い腕が、ぴくぴくと小刻みに痙攣している。
まず間違いなくゾンビである。
新堂と圭一に物陰へ隠れるよう指示され、深紅は隠れるのに丁度良さそうな駅の出入口の壁に身を潜め、二人を見守る。
さすが何体ものクリーチャーと戦って来た二人だけあって、背後からバットで頭を打ち据えることによってあっけなく戦闘は終了した。
しかし、路上に横たわったゾンビを前に、圭一はまるでビデオデッキの一時停止ボタンを押したかのように硬直してしまった。
新堂はしゃがみ込んでゾンビをしげしげと観察しており、何やらただのゾンビではないことが感じ取れる。
とにかくもう危険はないようなので、深紅は出入口の影から出て二人のもとへ駆け寄った。
「お前、双子の兄弟とかいるか?」
「いないよ、俺一人っ子だし」
「なら、顔がそっくりな親戚とか知り合いは?」
「いないって。っていうか、こいつ何で着てる服まで同じなんだ!?」
声を荒げる圭一の後ろから、深紅も恐る恐る件のゾンビの顔を覗き込む。
「嘘っ!」
深紅が思わず声を上げてしまったので、新堂と圭一が同時に振り返って気まずそうにするが、それどころではない。
何せそのゾンビの顔ときたら、新堂が尋ねた通り圭一の生き別れの双子かと一瞬でも考えてしまうほど瓜二つだったのである。
さらに驚かされたのは、シャツや靴の色やデザインまでが全く同じであり、唯一違う点といえば、ゾンビの胸部に銃創と思しき穴が空いていることくらいだ。
今の圭一をまるっと引き写したような姿。この街ではこんなことすらあり得るのだろうか?
「圭一さんが二人…どういうことでしょうか?」
「生き別れの双子説とかどうだ?」
「…それじゃ服装まで同じにはならねえだろ」
「分からんぜ?別々に育った双子が食い物の好みから異性の趣味まで丸被りってケースは意外にあるもんだ」
げんなりする圭一とは裏腹に、新堂は楽しそうに見える。圭一そっくりのゾンビを殴り倒した後とは思えない気軽さである。
とにかくこれ以上ゾンビの前にいても収穫はなさそうなので、深紅達はT字路からさらに北へ向かおうと歩き出した――その時だった。
「駄目よツカサ、戻って!」
西の方から少女の声が耳に飛び込んできた。
反射的に深紅達が声のする方へ顔を向けると、犬らしきシルエットが物陰から伸びた手によって引き戻されるのが一瞬だけ見えた。
「誰だ!?」
新堂が刺々しい声を暗闇へぶつけるが、物陰に潜む者が動く気配はない。明らかにこちらを警戒している。
怯えている相手に向かってそれはまずかろうと、(恐らく)同じ女性である深紅が声をかけることになった。
「あ…あの、あなたもこの街に迷い込んでしまったんですか?」
返事はない。が、深紅はそのまま声をかけ続ける。
「私達もそうなんです。大丈夫です、あなたを攻撃したりはしません。ただお話がしたいだけなんです」
しばらくの沈黙を経て、物陰に潜む気配が動いた。姿を表したのは、最初に見た犬のシルエット。大型犬だ。
それに続いて、ロングヘアーのシルエットが躊躇うように物陰からこちらを覗き込むのが見えた。
犬のシルエットがこちらへ近付いて来たので、深紅がしゃがみ込んで招き入れると、やはり立派な毛並みのシェパードであると判った。
そしてシェパードが物陰の気配に向かってひと吠えすると、それを安全の合図と判断したのか、物陰に隠れていた人物がようやっと姿を表した。
物陰に隠れていたのは、立派な眉が印象的な、アメリカの白黒映画で微笑んでいそうな美貌の持ち主であった。
白人特有の零れ落ちそうな大きな瞳でじっと見つめられ、深紅はちょっと気恥ずかしさを感じてしまう。
そこへ、もう出てきても良いだろうと判断したらしく、新堂と圭一が深紅の後ろからひょっこり顔を出した。
「へえ、どんな奴かと思ったら外人か」
「すっげー!日本語通じるかな?ハロー!コンニチワー」
二人の登場は――正確には圭一の登場は――まだ早かったようだ。
女性は圭一の顔を見た途端に悪魔を見たような形相で悲鳴を上げ、あろうことか抱えていた分厚い鞄を振り下ろしたのである。
「うわ!?ま、待った!落ち着け、冷静になれ、話せば分かる!」
間一髪のところでそれを回避した圭一は、手の平を前に出して害意がないことをアピールするが、それでも女性の警戒は解かれない。
恐らく彼女を襲ったのは、先ほど新堂と圭一が叩きのめした、圭一そっくりのゾンビなのであろう。
それに気づいた深紅は、鞄を盾に「来ないで!」と叫びながら遠ざかろうとする女性を慌てて宥めにかかった。
「怖がらないで、彼は違うの!お願いだから落ち着いて!」
「近寄らないで!その人、さっきの変な人と同じ…」
「姿は同じだけど別人です。あなたも街を歩いていておかしいと思いませんでしたか?この街は普通じゃないんです。私達の常識では測り切れないことが当たり前のように起きるんです。だから落ち着いて、私達の話を聞いて下さい。お願いします…!」
深紅はなるべく声音を低く抑え、女性の神経を刺激しないよう慎重に語りかける。
それが功を奏したのか、女性は少しずつ落ち着きを取り戻し、圭一と深紅を交互に見て、そしてシェパードの様子を窺ってから、戸惑いつつも鞄の盾を下ろしてくれた。
自殺志願者の説得のような張り詰めた緊張から解放され、深紅は胸を撫で下ろした。
◆
こうして新たな出会いを果たした四人と一匹は、ひとまず駅の玄関付近に陣取り、お互いについて自己紹介しあった。
「声をかけたらいきなり襲われて、慌ててあそこに隠れたんだけど、他にも化け物がいたからそのまま動けなくなって…本当に助かったわ、ありがとう」
これまでの経緯を語ったジェニファーは、自分を拾ってくれた三人に改めて感謝し、そして「あなたもね、ツカサ」と、隣で尻尾を揺らしているもう一人の命の恩人の頭を撫でた。
あのゾンビを振り切れたのも、ツカサがゾンビの足に食らいついて動きを鈍らせてくれたお陰なのだ。
なお、ジェニファーがゾンビに襲われていたのもあり、深紅が真っ先に怪我がないか確認したところ、幸い彼女の服は厚手の生地で仕立てられており、ウイルスに感染するような負傷は見受けられなかった。
自分と同じ運命を辿るかもしれない犠牲者が増えなかったことが分かり、深紅は全身からどっと力が抜けていくのを感じて深く溜め息を吐いた。
「それと、ごめんなさい。あなたの顔、さっきの…ゾンビ?っていうのかしら?それとそっくりだったから、つい…」
「ははは…気にすんなよ、アレは間違えてもしょうがないさ。っていうか、俺も正直ちょっとビビってるから」
ゾンビと勘違いして攻撃してしまったことを丁寧に詫びるジェニファーに、圭一は頬を気まずそうに掻きながら苦笑を返した。
先ほど確認したゾンビの顔を思い出した圭一は、腹の中にボウリングの玉を抱えたようなだるさを感じて溜め息を吐く。
青ざめた顔、胸にぽっかり空いた穴、そして白く濁った目――自分が死んだらああなるのかと思うと、生きた心地がしない。
自分そっくりの姿をしたゾンビという不気味極まる存在は、圭一の脳裏に決して小さくはない痼を作っていた。
「よォ前原、お前マジで双子の兄弟とかいねえの?」
その圭一そっくりのゾンビの頭を容赦なく打ちのめした新堂は、まるでコーヒーブレイクで喋る世間話のような軽さで圭一に訪ねる。
「いない、はず、だけどなあ…」
「そうか。なら、ありゃあドッペルゲンガーって奴かもな」
「ドッペル…ゲンガー?」
「聞いたことねえか?ドッペルはドイツ語で“二重”、ゲンガーは“歩く者”。日本語では“自己像幻視”だったっけな」
怖がらせるつもりでわざとらしくニヤリと笑みを見せた新堂に、圭一が困ったような顔をした。
「あー…俺オカルトとかはよく知らないんだ」
「要するにもう一人の自分さ。まあ考えてもみろよ、映画でしかお目にかかれねえような化け物がうようよしてる街だぜ?自分のソックリさんがいたって不思議じゃねえ」
今まで数々のクリーチャーを撃破してきた新堂にとって、PC(プレイヤーキャラ)とそっくりな顔をしたクリーチャーには最初こそ驚いたが、これも街が生み出した怪異の一つと解釈し、早々に割り切っていた。
この切り替えの早さも、生き残るために必要な要素の一つであると新堂は考えている。
「お前のドッペルゲンガーがいたってことは、そのうち俺や雛咲のドッペルゲンガーとも会えるかもな」
「おいおい、新堂さんが二人なんて物騒にもほどがあるって。俺としてはオカルト談義よりか、ジェニファーと情報交換したが有益だと思うんだけどな?」
「…ま、そうだな」
うんざりと言いたげに肩を竦める圭一の提案には、新堂も反対はしなかった。面白い反応が得られない以上、これ以上は時間の無駄だ。
それに彼の言う通り、新たに現れたジェニファー・シンプソンという人間は興味深い存在である。
新たな第三者というのもあるが、日本人ではないにもかかわらずこうして新堂たちと自然に会話を交わしていることで、やはりこの街がただの“クリーチャーがうろつくゴーストタウン”などではないことが確信できたのだ。
彼女と共にいるシェパード――ツカサもなかなか面白そうだ。参加者名簿には載っていないため、恐らくゲームの“備品”もしくは“付属品”に近い存在ではないかと新堂は推測している。
その考えに至ったのは圭一も同じのようで、新堂に向けて自信ありげに口角を持ち上げて見せた。
根っこと言わず葉っぱと言わず、役に立ちそうな情報を掘れるだけ掘ってやろうじゃないか――というわけである。
「さてジェニファー、俺としてはもっと君について知りたいな。趣味とか家族構成とか異性の好みとか…」
「…圭一さん?」
「あ!いや、深紅、これはほんの世間話だよ。そう、会話を円滑に進めるための!決してやましい気持ちとかじゃないんだ、だからその軽蔑に満ちた眼差しは…」
くすくすと二人のやりとりに微笑むジェニファー。勘弁しろよと言わんばかりに明後日の方を見る新堂。そして何を考えているのか解らない円な瞳で四人を見守るツカサ。
血と錆に塗れた悪夢の世界に流れる、儚いくらいにつかの間の、穏やかな空気であった。
【D-5駅前/一日目夜】
【新堂誠@学校であった恐い話】
[状態]銃撃による軽症、殺人クラブ部員
[装備]ボロボロの木製バット
[道具]学生証、ギャンブル・トランプ(男)、地図、その他
[思考・状況]
基本行動方針:殺人クラブメンバーとして化物を殺す
1:研究所へ向かう
2:ジェニファーから情報を得る
3:痴話喧嘩は他所でやれよ
4:他に殺人クラブメンバーがいれば合流して一緒に殺しまくる(化け物を)
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]銃撃による軽症、赤い炎のような強い意思、L1
[装備]悟史のバット
[道具]特に無し
[思考・状況]
基本行動方針:部活メンバーを探しだし安全を確保する
1:研究所へ向かう
2:ジェニファーから情報を得る
3:深紅、誤解だ!
4:部活メンバーがいれば連携して事態を解決する
【雛咲深紅@零〜zero〜】
[状態]T-ウィルス感染、右腕に軽い裂傷
[装備]アリッサのスタンガン@バイオハザードアウトブレイク(使用可能回数7/8)
[道具]携帯ライト、ヨーコのリュックサック@バイオハザードアウトブレイク
[思考・状況]
基本行動方針:ヨーコの意思を引き継ぐ
1:研究所へ向かう
2:ジェニファーから情報を得る
3:男の人って…
4:何だか兄さんが近くにいる気がする
【ジェニファー・シンプソン@クロックタワー2】
[状態]健康
[装備]私服
[道具]丈夫な手提げ鞄(分厚い参考書と辞書、筆記用具入り)
[思考・状況]
基本方針:ここが何処なのか知りたい
1:頼れそうな人がいて良かった!
2:三人から情報を得る
3:ここは普通の街ではないみたい…
4:ヘレン、心配してるかしら
<オマケ>
【ツカサ・オブ・ジルドール@SIREN2】
[状態]健康
[装備]首輪
[道具]なし
[思考・状況]
基本方針:主人を探す
1:人間は守る
2:西の方から主人の匂いを感じる
3:ちょっと空腹
※オマケなので、参加者として扱う必要はありません
投下終了です
ボウリング場では殺伐としてしまったので、今回はアッサリめにしてみました
皆殺し編の圭一君を出してみましたが、こんな感じで大丈夫でしょうか?
問題ありましたら、ご指摘よろしくお願いします
延長かな? と思ってたらこっちかw
投下乙です!
ヨーコ組研究所ルートか。Tウィルス感染者に希望が見えてきたな。
だがしかしツカサ……ゾンビ噛んじゃったが、何気にこれは凄まじい爆弾なのでは……
ハンクと園崎詩音の話を書きますね
死神と殺人鬼
相変わらず霧の深いこの怪異の街を黒い影が素早く移動していく…移動するたびに装備している
赤外線暗視装置が赤い二つの光の残像を引きずるように残しては…消えていく
「……しつこい連中だ…」
そうつぶやく声が黒い影から聞こえたと思うと素早いトリガープルでその影…いやハンクは
追ってきている3体の化け物…銃で武装した闇人達の頭に一発ずつ確実に9mmパラペラム弾を撃ちこみ…行動不能
にする。
その後直ぐに倒れた闇人に接近し念入りにコンバットナイフで(再生しにくい)場所を抉る。
ズシャ…ドシュ…シュパ…
鮮やかな手並みで闇人に止めを刺した後…この化け物たちが装備していた銃火器と予備の弾薬を
剥ぎ取る。
「………やけに妙な装備ばかりだ…これは日本の自衛隊の装備…こっちはUBCSの正式小銃…」
この化け物たちが元は人間だったと言うことは言うまでも無いが問題は使っていた装備………
なぜアメリカの田舎街に自衛隊の装備品がころがっている?…それに無線は(ナイトホーク)の
通信どころか得体の知れないノイズばかり拾っている。
ハンクはこんな疑問に捕らわれ始めていた……此処は本当にラクーンか?
黒い戦闘服姿の(死神)はしばし考えに耽る。
霧の向こう側でその(死神)を狙うもう一つの影が存在していた
「みいつけた……まずは……一人目」
トレンチコートの少女はライフルの照準スコープを覗きながら、狂気めいた呟きを漏らした……
十字の黒線が交差するレクティカルは確実にそのガスマスクの男を捕らえていた。
ゆっくりと引き金を引こうとした次の瞬間。
真後ろから声がした。
『一緒にあそびましょ?…ねえねえ?』
ソードオフバージョンのM870を振り向きざまにその声の主に向ける
そこには…
丸太に足をくっつけた女の青白い顔が彼女を覗いていた
だがトレンチコートの少女――園崎詩音はそんな物には意も解さず
無表情で12ゲージ散弾を顔に叩き込む…
ドゴン…
しかし…その丸太の化け物は怯みもせずそのまま突進してきた。それを詩音は跳躍して回避する
そのまま丸太の怪物の背中から思い切り且つ容赦無くハンティングナイフを振り下ろす
ドシャ…グシャ…グシャ…グシャ…グシャ…
黒い丸太のような怪物がピクリとも動かなくなるとその死骸を蹴り飛ばして再びウェンチェスターの照準スコープ
を覗くが……すでにそこにはガスマスクの男は居なかった。
「逃がしちゃった…でもいいや(気配)が分かったから…」
そして狂ったように哂いながら再び霧の中に消えていった…獲物を求めて
【B-3住宅地/一日目夜】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L5
[装備]:ウィンチェスターM1894スコープ付き。(残弾数7/7)、レミントンM870ソードオフVer(残弾6/5)
ショルダーバック、ヘッドライト、トレンチコート、弾帯×3
[道具]:羊皮紙の名簿、ハンティングナイフ、30-30Winchestar弾(50/50)
12ゲージショットシェル(50/50)、携帯ラジオ、栄養ドリンク、
[状況・思考]
基本行動指針:名簿の人間を皆殺しにし、北条悟史を生き返らせる。
0:獲物を探す
1:あのガスマスクの男(ハンク)に興味
172 :
◆GVIQCfa/4y3M :2010/11/07(日) 15:05:26 ID:LhDHB2GO0
「………………………………行ったか」
深い霧の中で気配を消していたガスマスクの男は呟いた…よほど警戒していたらしい。
先程の霧の中からの銃声、そして笑い声………
想像以上の修羅場という訳か…だが、死神はその冷静な態度を崩さないまま
その笑い声の聞こえた方向へ進むと、
案の定丸太…いやブッシュドノエルのような形を(していた)らしき化け物が枝打ちでもされたかのように
派手に損壊している。先程の笑い声の主がやったに違いない。
化け物の死体は少し痙攣しながらだが徐々に回復しているように見える。
ピンッ…カランカラ…パチパチパチ…ゴオオオオオオオオオォ
勿論再生させる暇もなくハンクは先程手に入れた燃焼手榴弾を投げつけて燃やし始める。
燃える化け物を見ながらこの特殊部隊員はある結論をつけた。
つまりこの状況は…一種の超常現象だと位置づけて割り切ることにした。
その後ガスマスクの男はこのままどこに行くのかを考え始めた
弾薬は先程の戦闘で多少手に入ったし、まだまだ行動に支障はきたしてない
(これから成すべき事は………情報収集)
つまり…この状況を打破する為には…生きた人間……それも(まとも)な
人間を探さなければならない。
(そうと決まれば………探索するのみだ)
黒き戦闘服の死神はほかの無駄な考えを頭の隅に追いやり再び深い霧の中に
消えていった。まともな人間を探して…
【ハンク@バイオハザードアンブレラクロニクルズ】
[状態]:健康
[装備]:M4A1カービンドットサイト付き(残弾24/30)、コンバットナイフ、
[道具]:ステアーTMP(残弾28/30)、M4A1の予備弾倉×5、ステアーTMPの予備弾倉×3
H&KVP70(残弾18/18)、無線機、Gウィルスのサンプル、燃焼手榴弾×4
[状況:思考]
基本行動指針:サイレントヒルより脱出し、サンプルを持ち帰る
1:2,3のうち2を優先する。
2:情報を集め現状を把握する。
3:ナイトホークとの通信は一時断念する。
*園崎詩音を危険人物だと判断しました。
使ってるPCの場所を変えたのでトリップは違いますが一緒です。
投下終了。
乙です!
ハンクさんのブラックリストに詩音さんがインしましたか
これからどれだけ増えるんでしょうw
>>174 うーん、何点か指摘させて頂きます。
さすがに短時間でハンクをB-3まで移動させるのは動かしすぎかと。
確かに特にルールで決まってる事ではありませんが、あまりキャラを大きく動かしてしまうと
周辺のキャラクターとの整合性が取れなくなったりする事もあるので控えた方が良いかと思います。
ハンクが笑い声と銃声だけで詩音を危険な「人物」と判断するのも無理があります。
闇人も笑いますし、銃撃してきます。
これまで人間と出会っていないしサイレントヒルのルールも知らないハンクの思考としては不自然でしょう。
詩音についても、彼女は普通の人間なので闇人の突進を跳躍して躱すのは超人的すぎるかと。
原作やロワ本編の設定からかけ離れた身体能力や思考、情景の描写は他の書き手さんの負担にもなります。
出来れば修正して頂きたいと思うのですが、他の方は如何でしょうか?
うーん、夕刻から夜まで長く見積もって6時間ですよね
休まず突っ走れば、6時間以内でC-6からB-3まで行くのは不可能とは言い切れませんが、
とても現実的とは言えないのは確かですね
途中にはヘザー組やクローディアや風間がいますし…
ひぐらしは未把握なので何とも言えませんが、原作内の詩音には
アスリートレベルの身体能力を持っているという描写があるんでしょうか?
目明かし編だからそんなに身体能力高い描写はないかな。
まあ銃器しこたま持ってるから身体能力高いとしてもちょっと…。
てか、サイレン鳴ってて裏世界化してもラクーンシティと思っているハンクって一体…
それに超常現象って、あっさり判断下すのも思考として不自然
いい大人なんだし、ましてやアンブレラに所属してるんだし
とまあ要するにですね、もう少々説得力ある描写をお願いしたいんですよね。
移動距離は他のキャラクターもいるので気を使って頂きたいですが、
展開的には詩音が闇人に勝ってもいいですし、ハンクが超常現象だと判断しても良いんです。
ただそこに至る過程に、そのキャラを軸としたリアリティがなければ疑問をもたれてしまうと。
例えば詩音なら、正面から銃撃しても効果がなかった闇人に動揺もせず、
弱点を見極めたかのように背面からナイフで攻撃を仕掛けるとか、本来不自然ですよね?
銃撃が効かないのにナイフを使うとは普通考えるとは思えませんし。
そうではなくて突進を左右に躱して背後から更に銃撃を加えたら倒せた、
とかなら自然な流れや動きに見えると思うのです。
(私の言いたいリアリティとはそういう事ですが、上手く言えてますかね?)
そんなわけで出来れば修正して頂きたいですが、環境的に難しそうですかね?
一応言っておきますが、上のも◆AnI2QK2dJEさん宛ですw
>>174 後ですね、分からない事がありましたらお気軽に聞いて下さい。
もしかしてメモ帳やワードといった機能はご存知ありませんか?
以前も申し上げた事ですが、リアルタイム投下は控えて頂きたいのです。
他に文章書く機能をご存知ないのであればお教えしますので。
≫181
ああ、申し訳ありません、何分初心者なもので…よかったら教えてください
あと≫180そうですね…たしかに投下した後自分でも不自然な気がしました。
修正は出来ればしたいと思うんですがんですが。
>>182 了解です。
とりあえず覚えて頂きたいのは、「メモ帳(テキストファイル)」の開き方と、「コピー&ペースト」のやり方です。
これだけ覚えていれば、SSを書くにはそう不自由はないでしょう。
最初はメモ帳の開き方を。
まずデスクトップ(ウィンドウを一つも開いていない画面)で
マウスの右クリック→「新規作成」にカーソルを合わせる→「テキストファイル」にカーソルを合わせて左クリック
これで画面には「新規テキスト ドキュメント」というアイコンが出てくるので、それをクリックすればメモ帳が開きます。
その後は掲示板に書き込む要領でOKです。
書いた文章を保存するには、
メモ帳の左上の「ファイル」をクリック→「名前をつけて保存」をクリック
→「新規テキスト ドキュメント」という名前を、SSのタイトルなど分かりやすい名前に変更
→保存場所を選択(最初は練習なのでデスクトップがよろしいかと)→保存をクリック
これでOKです。
次に「コピー&ペースト」です。
これはまあそのまんまですが、文章をコピーして別の場所に貼り付けるというものです。
やり方は、
コピーしたい文章の始まりから、マウスの左のボタンを押し続けたまま文章の終わりまでマウスを動かす
→すると文章の色が変化(反転)するので、その変化している文章にカーソルを合わせ右クリック
→「コピー」をクリック→メモ帳や掲示板の書き込み枠の中で右クリック→「貼り付け」をクリック
これでコピーした文章を別の場所に貼り付ける事が出来ます。
まず練習がてらメモ帳を開き、
>>169から
>>173までの◆AnI2QK2dJEさんの作品をコピーして貼り付けてみて下さい。
他の書き手さんも大体はメモ帳で一旦作品を書き終えて矛盾なり誤字脱字なり無いか確認してから、
「コピー」と「貼り付け」を使って掲示板に投下しています。(多分w)
そうする事によって作品の質も上がるはずですので、今後はこちらの方法で投下をお願いします。
ちなみに「>>」←これなんですが、半角で入力しないと効果がありませんのでヨロです。
彷徨える大罪 代理投下します
◆ ■ ◆
ワゴン車周辺に、彼――北条悟史の姿は無かった。
そこにあったのは、異様なまでに青白い肌の色をした、男の死骸だけである。
男の顔は、目を背けたくなるほどグシャグシャに潰れている。
例えるならそれは、クシャクシャに丸めた赤い画用紙である。
黒衣に身を包んだ女――鷹野三四は、目の前の光景に対して首を傾げた。
――――これはどういう事だ。
悟史はこの車に撥ね飛ばされ、今現在も横たわっている筈だ。
(見るも無残な状態になっているほど破損した車が、その証拠である。)
にも関わらず、彼の姿は何処にも見当たらない。 いや、姿どころか足跡すら存在していなかった。
逃げたとは思えなかった。
仮に逃げたとしても、こんな短時間で姿が見えなくなる位置にまで移動出来るとは思えない。
と言うよりも、そもそも足跡自体が無いのだから、逃げたとは到底考えられなかった。
では、煙になって消えたとでもいうのか? ……いや、それこそ有り得ない話である。
ポリポリと首を掻きながら、鷹野は舌を打った。
実験対象である北条悟史が居なければ、『アレ』の持つ特性が分からないではないか。
鷹野は手提げバッグから小さな黒い箱を取り出す。片手で持てる程度の重さだ。
差出人不明の小包。 誰が、何のためにこれを自分の元に送ったのかは分からない。
唯一分かっている事があるとすれば、それはこれが『サイレントヒル』から届いたという事である。
◇ □ ◇
鷹野にその小包が送られてきたのは、つい最近――遂に自らに立ち塞がる障害を全て排除し、いよいよ『滅菌作戦』を行なおうとしていた頃――の事である。
『アメリカ』の『サイレントヒル』から届いた、と配達人は言った。 つまりは国際郵便である。
最初は単に届け先を間違えただけだと思っていた。 アメリカに自分の知人は居ない筈だ。いや、居ないと断言出来る。
それに、彼女は『サイレントヒル』などと言う名前など、聞いた事も見たことも無かった。
しかし宛先欄には、「鷹野三四様へ」と乱雑に、だがはっきりと書かれている。
それは、これが紛れもない自分宛の荷物である事を証明していた。
小包には、差出人の名が書かれていなかった。
こうなると、ますます怪しい。
見知らぬ土地から送られた差出人不明の小包。これを怪しいと言わずして何と言うのか!?
爆弾でも入っているのではないのだろうか。……いや、それならこんな無駄に凝った演出などしないだろう。
では、何が入っているというのだ。 鷹野には全く想像出来なかった。
とりあえず、開けてみない事には始まらない。
鷹野は小包を慎重に、かつ丁寧に開け始めた。
その手は、小刻みに震えているようにも見えた。
今思えば――その時の彼女は、無意識的に自らの身に起こった『オカルト』に興奮していたのかもしれない。
小包に入っていたは、液体で満たされた注射器と、書類、そして手紙。 それぞれ一つずつ入っていた。
――――怪しい。怪しすぎる。
『怪しい』としか言い様がない。 いや、最早『怪しい』を通り越して『不気味』の領域にまで入っていた。
……だが、自らに被害を与えるような物ではないようだ。 鷹野は内心で安堵の息を吐いた。
入っていた手紙には、気品を感じさせる字でこう書かれていた。
――――――――――――――――
寄生虫 プラーガ
新たに発見された大変珍しい寄生虫『プラーガ』です。
今回は特別に鷹野様にのみお送りします。
1・プラーガはデリケートな生物です。注射器の外には出さないで下さい。
2・プラーガは人体に寄生する事で初めてその能力を発揮します。
3・プラーガに寄生された人(『ガナード』と呼ばれています)の人格はプラーガに乗っ取られます。
被験体を選ぶ際には十分な注意を。 被験体は「死んでも他人が影響を受けない人」が好ましいでしょう。
※プラーガの詳細は同梱の資料をご覧下さい。
近い内に、鷹野様を『サイレントヒル』に御招待しようと考えています。
風情溢れる素晴らしい街です。 きっと忘れられない思い出が出来るでしょう。
楽しみに待っていて下さい!
サイレントヒル一同より
――――――――――――――――
注射器の中に新種の寄生虫『プラーガ』が入っている。
正直言って、あまりにも嘘臭すぎて信じることなど到底出来なかった。
これは「新しい寄生虫を見つけたからとりあえず人体実験してみて下さい」、と言っているようなものである。
なんて馬鹿な話だろうか。小学生の嘘の方がまだマシに見えるほど、低レベルな冗談だ。
だが資料――正確に言うとレポートだが――はかなりよく出来た代物だった。
それには『プラーガ』に関する情報が細かく書かれていたのである。
それには鷹野も、中々面白いものを書くじゃないかと、少し関心した。
まるで本当に『プラーガ』という寄生虫が存在しているかのに書かれていたそれに、彼女は僅かながらに興味を抱いた。
だが、所詮興味は興味に過ぎない。実際に実験を行う気にはならなかった。
資料もよく出来てはいるが、所詮そこまで。鵜呑みにできるわけがない。
やはり『プラーガ』など架空の存在に過ぎないのである。
次の日。
またしても『サイレントヒル』から小包が届いた。
昨日届いた物より一回り大きい物である。それに比例して、重さも増している。
送り主の欄には、やはり何も書かれてはいない。
鷹野はまたか、と、呆れの混じった溜息をついた。
こんな悪趣味な真似をして、何が楽しいのだろうか?
全くもって、彼女には理解できなかった。
入っていたのは、プラスチック製の黒い小箱、そして手紙。これまた、一つずつ入っている。
――――――――――――――――
特別大サービス!
今回はもう一つ『あるもの』をプレゼントします!
1・とりあえず箱を外に出してみて下さい。箱を自動的に開き、『あるもの』は外に放出されます。
2・外に撒かれた『あるもの』は、しばらく後でその『恐るべき特性』を発揮するでしょう。
注意!
決して自分で箱をで開けようとしないでください!
そうした場合の命の保証は出来ません。
サイレントヒル一同より
――――――――――――――――
小箱の中身は、何故かぼかされていた。
『あるもの』とは一体何なのだろうか。
正体を知らされてはいけない程、危険な代物なのか。
はたまた、自分を驚かせたいがために、あえて正体を隠しているのか。
だが、どちらにせよ、その内容からは最早騙す気すら感じられなかった。
下らない。あまりにも下らない。――――本当に下らない!!
こんな事をして何が楽しいんだ!?理解出来ない。……いいや、理解したくもない!
大方、これの送り主は自分を馬鹿にするつもりで手紙を書いているのだろう。……そうに決まっている!
そうでなければ、こんな馬鹿げた真似などしない筈だ!
とにかく、こんなふざけた物は二度と見たくなかった。
すぐに廃棄して、小包の事など忘れてしまおう。
『不愉快な贈り物』を捨てるために、鷹野は未だに机の上に置いてあった、もう一つの小包に手を伸ばし――――
――――いや、待てよ。
ふと、彼女の頭の中に小さな『好奇心』が生じた。
悪魔の囁きにも似たなそれは、瞬く間に全身を駆け巡り、膨れあがっていく。
やがて、それは彼女から『小包を捨てる』という選択肢を奪い去り、『一つの決断』を代わりに置いて行った。
――――仮に、仮にだ、あくまで仮定の話だとして――――これらの話が本当だったとしたら?
――――手の中にある『馬鹿な冗談』が『冗談』では無かったとしたら?
――――注射器の液体の中に、本当に生物が存在していたとしたら?
――――『あるもの』が本当に『恐ろしい特性』を持っていたとすれば?
まだ『滅菌作戦』の実行までには時間がある。
暇つぶしには悪くないだろう。
――――予定は変更だ。この悪趣味な悪戯に、付き合ってやることにしよう。
『北条悟史』。
彼が入江診療所の地下に眠っている事を知っているのは『入江機関』の者だけである。
鷹野は『入江機関』の最高権力者であるから、当然その事を知っている。
表向きは行方不明になっている彼は、『死んでも他人が影響を受けない人』に最も近い存在だった。
後にも先にも、どうせ殺す命である。どう使っても構わないだろう。
今、診療所に入江京介の姿はない。
それもその筈。 もう彼はこの村――否、この世界には存在していないのだから。
カードキーを使い、専用の治療室に向かう。
そこにやはり、彼は居た。
純白のベッドの上で、スヤスヤと眠っているではないか。
妹は既に殺されてしまったというのに、随分と呑気なものだ。
まぁ、外界から遮断されたこの場所で眠り続けているのだから、当然と言えば当然か。
悟史の目の前に立ち、箱から注射器を一本取り出す。
――――罪悪感は感じない。感じる理由が無い。
注射器を彼の腕に刺し込み、ポンプを親指で押す。
液体はすんなりと体内に入り込んでいった。
この時点で、まだ彼の肉体に変化は無い。
だが、資料に書かれた事が真実なら、必ず彼の身に何かが起こる筈だ。
例えば、急に暴れだす、目が赤くなる等の、目に見える特異な変化が。
何も起こらなかったのなら、その時は銃で被験体の頭を撃ち抜けばいい話だ。
使用済みの実験動物(モルモット)に、存在価値など全く無いのだから。
寄生虫の次は、例の小箱だ。
もう一つの小包を持って、診療所の外に出る。
空は随分と暗くなっており、小さな星があちこちで宝石の様に輝いていた。
診療所をグルリと回って裏側に移動し、小包から例の小箱を取り出す。
吸い込まれそうな黒色をしているそれは、得体の知れない不気味さを帯びていた。
手紙に書かれている通りに、それを固い地面の上に置いておく。
手紙にはこれで良いと書いてあったが、はたして本当なのだろうか。
診療所に戻った鷹野は、患者用のベッドに横になった。
彼女は、今日はこの場所で休息を取る事に決めたのである。
此処の主は、もう何処にも居ないのだ。 自分がどう使おうが、文句は言われないだろう。
それに、今日は何故だか体が重い。小石が大量に詰まったリュックを背負っているような感覚がするのだ。
一刻も早く、この疲労感から開放されたかった。
――――もう眠ろう。 明日も早い。
そう思いながら、彼女はゆっくりと瞼を閉じ、眠りについたのであった。
翌日。
朝だというのに、太陽の光が全く感じられない。
――どうやら、今日は晴れてはいないようだ。
淡い眠気を残しながらも、鷹野はベッドから腰を上げた。
少ししたら被験体の様子を見に行こう。 何か変化があれば良いが。
起きてからしばらくして、妙に事に気付く。
――静かだ。 あまりにも静かだ。 ……静かすぎる。
蝉の鳴き声すら聞こえない。この時刻ならまだ鳴いている筈だが。
被験体の様子を見る前に、外の様子を見てみることにしよう。
身支度をして、診療所の入り口の扉を開けた。
扉の向こうでは――――異様な風景が広がっていた。
白い霧が常に充満しており、周りには西洋の建物が立ち並んでいる。
人間の気配など、微塵も感じられなかった。
雛見沢――それどころか、日本とはあまりにもかけ離れた光景であった。
例えるなら、そこは小説で見たアメリカの田舎町を思わせるような――――
――――――――ガシャンッ!!
金属の激突音と、それがひしゃげる音によって、鷹野は我に返る。
それと同時に彼女は、被験体――北条悟史の事を思い出した。
被験体に寄生した『プラーガ』の『能力』とやらを見なければならないのだ。
――こうしてはいられない!
彼女は駆け足で治療室に向かった。
だが――――ベッドの上には、誰も居なかった。
拘束具は破壊されており、辺りには欠片が散らばっている。
つい昨日までそこに居た少年の姿は、何処にも見当たらない――――!
――これは、これはどういう事だ!?
鷹野は自分の目を疑った。
被験体が逃げ出したとでも言うのか。――――四肢を固定している、あの金属製の拘束具を無理やり破壊して!?
有り得ない。 北条悟史にそれほどの怪力があるとは到底思えない。
いや、待て。『怪力』……? 資料でそんなワードを見たことが――――
『ガナードは高い生命力と常人離れした怪力を所持している』
そうか…………なるほど! そういう事だったのか!
資料に書かれていた事が正しいのなら、プラーガに寄生された悟史は圧倒的な怪力を所持している事になる。
――――悟史がその怪力で拘束具を破壊していたとしたら?
……ありえる。十分にありえる!――――いや、その可能性しか無い!
――――間違いない。……プラーガは本物だ!
「アハ…………ハハ…………ハハハハハハ!」
最初は唯の出鱈目だと思っていたが――まさかこれ程までの能力を有していたとは!
全くもって予想外である! 驚いた! ここまで驚いたのは久しぶりだ!
……と、ここで鷹野は重要な謎を一つ、思い出す。
――――拘束具から開放された北条悟史は何処に行った?
鷹野はあの時聞いた、車の衝撃音を思い出す。
恐らくあれは、悟史が車に轢かれた音だろう。
霧の中をさまよっていたら、偶然車に衝突してしまったのに違いない。
そういえば、『ガナードは高い生命力も持っている』とも書かれてあった。
だとしたら、彼は車に撥ねられた程度では死なないはずだ。
――――起こしに行ってあげようじゃない。
いくら生命力が高いからといって、恐らく彼一人では起きる事は難しいだろう。
フフフ、と口元に不吉な笑みを浮かべながら、鷹野はワゴン車の元へと歩いていった。
しかし、そこに北条悟史は居なかった。
そこにあるのは、無残な姿をさらしているワゴン車だけである。
■ ◇ ■
冷静になった鷹野は、片手に手紙――一つ目の小包に添えられていた物だ――を持ちながら考えていた。
思えば――北条悟史はどうやって外に出たのだろうか。
あの時は若干興奮していたせいで気付かなかったが、
扉は全て――カードキーが必要な扉を含め――全て『開けられていた』のだ。
無理矢理開けた形跡は、何処にもなかった。
開けっ放しにした覚えはない。全て鍵を閉めた筈である。
――――誰が、どうやって?
そもそも、ここは何処なのだろうか。
霧に汚染されたその風景は、明らかに雛見沢のそれではない。
西洋の建造物が立ち並ぶこの場所は、まるで――――
『近い内に、鷹野様を『サイレントヒル』に御招待しようと考えています。』
手紙には、くっきりとそう書かれていた。
――――ああ、成程。自分は招待されたという事か。例の『アメリカ』の『サイレントヒル』とやらに。
「タダで旅行が出来るなんて私も運が良いわね……」
でもこんなに霧まみれじゃ、風情もクソもないわね、と言って、皮肉めいた苦笑を浮かべた。
仮に景色が綺麗でも、こうも視界が悪くては意味が無い。
いや、そもそもこんなゴーストタウンにそんな物があるとは、到底思えなかった。
それにしても、つくづく迷惑な話だ。
「旅行に行きたいです」なんて私は一度も言っていないのに。 旅行になど行きたくないのに。
・・・・・・・・・・・・
――――否、行くわけにはいかないのに!
自らの悲願が遂に叶おうとしていたのだ。 にもかかわらず奴らは私を呼んだ。――呼びやがったのだ!
嗚呼、なんて、なんて腹立たしい事だろうか!
――――こうしてはいられない。
一刻も早く此処から雛見沢に帰還しなくては。
もう目的の達成は眼と鼻の先まで来ているのである。
こんな場所で油を売っている暇など無い。――――全く無いのだ!
【E-2/ワゴン車周辺/一日目夕刻】
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に】
[状態]健康、自分を呼んだ者に対する強い怒りと憎悪、雛見沢症候群発症?
[装備]???
[道具]手提げバッグ(中身不明)、プラーガに関する資料、サイレントヒルから来た手紙
[思考・状況]
基本行動指針:野望の成就の為に、一刻も早くサイレントヒルから脱出する。手段は選ばない。
1:此処(サイレントヒル)について知っておきたい。
2:プラーガの被験体(北条悟史)も探しておく。
3:『あるもの』の効力とは……?
※手提げバッグにはまだ何か入っているようです。
※『何か』が撒かれました。
そういえばこのワゴン車。『山狗』が使っているのと同じ車種ではないか。
先程見たあの少女も、古手梨花によく似ていた。
青白い死体も、赤坂とか言う警察官と特徴が一致している様に見える。
…………まさか。
いや、そんな筈がない。有り得ない。そんな事があってはならない。
古手梨花は確かに『死んだ』。
自らの野望に横槍を入れたあの忌々しい学生共は、一人残らず消し去った筈だ。
『雛見沢の人間までもが此処に来ている』など、唯の思い込みだ。そうに決まっている。
◇ ■ ◇
真っ赤な目をしきりに動かしながら、金髪の少年は歩く。
時々体を震わせ、獣の様なうめき声を上げる。
ゴホゴホと咳き込むかと思えば、口から少量の血を地面に撒き散らした。
少年は、此処が何処なのかを知らない。
気付いたら殺風景な部屋でベッドに寝かされており、
気付いたら拘束具を無理矢理破壊して歩いており、
気付いたら真っ白な霧の中にいて、
気付いたら車が突っ込んできて、その衝撃で吹き飛ばされ、
気付いたらまた違う場所を、トボトボと一人で歩いていたのだ。
――――わからない。
何故自分は此処に居るのか。
一体全体、自分は此処で何をすればいいのだ。
――――わからない。わからない。わからない。
それにしても頭がいたい。
痛い。いたい。痛い。いたすぎて頭がわれてしまいそうだ。
――――わからない。わわからない。わかららい。わかかからない。
ぼぉ、とする。視界がゆがんで見える。
まるで自分がじぶんでなくなっていくようだ。
助けてくれ。こんなのいやだ。
――――わわらない。わかかわない。わかららなない。わかかからない。わわかからい。かないいい。
おしえてくれ。
ぼくはどうすればいんだ。
※ガナードと化した北条悟史が、何処かをさ迷っている可能性があります。
代理投下終了
は?
は?
>>182 今回の作品ですが、やはり詩音ハンクが遭遇するのは色々と無理が出てきますし破棄にして頂きたいのですが、
ご了承願えますでしょうか?
うーん、一週間返答無しか。
どうしましょう……取り下げて頂けた事にして大丈夫ですかね……?
今日の0時まで待って、それで連絡なければ破棄でいいかと。
規制だとしてもしたらばのアドレスは載ってるんですし。
せめて了承だけは頂きたいところでしたが、まあやむを得ないですかね……
では「死神と殺人鬼」は破棄という事でお願い申し上げます。
>>182 今回は残念な結果となってしまいましたが、これも経験ということで。
これからも◆AnI2QK2dJEさんの作品をお待ちしております!
204 :
◆F0mkXy0ajo5c :2010/11/28(日) 14:32:12 ID:r7s+gXG80
破棄はもちろんOKですとも
ああ、すいません…またまた忙しくなってきて暫く来れそうにありませんが
ちょくちょく進行具合は確認しにきます。
恐らく次に作品を投下できるのはかなり先だと思います
またトリップ間違えた…
>>205 返答どーもです! 了承頂けて何よりです。
リアルの都合優先は当然ですからね。お時間ある時にまたいらして下さい!
さて、トリップですがまだ違うようですねw
えーとですね、
>>85氏もおっしゃってますが、
同じPCからでしたら名前の欄を空欄にしてダブルクリックしてみれば
以前入力したトリップが表示されるはずなので、ちょっと試してみて下さい。
もちろんPCの設定によるので表示されないかもしれませんが、
その場合は頑張ってトリキーを思い出して頂きたいw
は?
ほしゅほしゅ
もう何と言えば
ちょw
211 :
ゲーム好き名無しさん:2010/12/03(金) 20:16:32 ID:RizOyswL0
誰も投下してくれていない…
代理投下します
カルロス・オリヴェイラはアサルトライフルを構えたまま、周囲を見渡した。銃口の先に、動く影は無い。閉店時間にはまだ早い刻限だが、ほとんどの店のシャッターは降りてしまっていた。
天井が三階まで吹き抜けになっているためか、屋内だと言うのに閉塞感はあまり感じない。其処彼処に設置された電灯の幾つかは切れているようだが、行動に差し障りはない程度だ。管理が行き届いていないが、未曾有の生物災害の最中だ。それも致し方あるまいと納得する。
ホール中央にある噴水は涸れ果てている。以前は待ち合わせ場所として多くの人々で賑わっていたのだろうが、今はどこか物寂しげに佇んでいるだけだ。
ブーツの床を叩く音が大きく響く。
広大なショッピングセンターの中にも腐った人間たちが溢れていることを覚悟していたため、実のところ彼はあまりの静けさに拍子抜けしていた。ただし、この静寂は安堵よりも焦燥を覚えてしまう代物だ。一応の安全は確保できたが、その場しのぎに過ぎない。
このラクーン・シティに、安心できる場所など一つもない。それは身をもってよく分かっている。
カルロスたちが侵入したためか、屋内にもうっすらと霧が漂っている。そもそも完全な密閉空間ではないので、どこからか入ってきているのかもしれない。
ここに来て霧まで出てくるとは、今回の任務はとことん運に見放されているようだ。これでは方角の判断すら覚束なくなる。
ショッピングモールは大通り沿いだから、迷いさえしなければ時計塔まで然程時間もかけずに到着できるだろうが。
「はぅ……。魅ぃちゃん。ここ、すごく大きいね。入ってるお店も一杯……全部閉まってるけど」
「まぁだ日が暮れて、大して経ってないってのにね。全っ然商売する気ないみたい。駄菓子屋の方が、まだ商人魂ってもんがあるよ」
「でも、何で入口は開いていたのかな。かな? 電気も点いてるし」
「おじさんに訊かれてもねえ……まだ人がいるんじゃないの?」
後ろを歩く二人が暢気な会話を交わしている。内容に多少違和感を覚えるが、汚染者に溢れた町を抜けてきているのに大した肝っ玉だ。十代前半という年齢も関係しているだろうか。その頃の自分がどうであったか、思い出したくもないが。
違和感といえば、年齢の割に、服装が少し古めかしい印象を受けるのが奇妙だった。オールド・ファッションというものなのかもしれない。
現在、左右の通路はシャッターが降りてしまっている。正面のシャッターだけ、半分ほどで止まっている状態だ。ほかの出入り口への最短ルートは使えないということになる。
シャッター程度なら破ることは出来るが、時間を取られることには変わりない。先の黒服の大男を誘い込むにしても、下手に時間を消費したくはない。
なにしろ顔面にグレネートを撃ち込まれて、ただ蹲ませることしか出来なかった相手だ。他の汚染者とは、頑強さが段違いだ。兵舎で受けたブリーフィングでも、あんな怪物の話はなかった。
仕留めきれると確信できる材料が手元にないのなら、逃げ切るしかない。
「お嬢さん方。一旦そこで待機だ。まず、シャッターの向こうの安全を確認してくっから」
振り返って言うと、ポニーテールの少女が愛嬌のある瞳で見上げてくる。彼女はぴっと親指を立てて見せた。
「はいよー。あ、そだ。お兄さんに"お嬢さん"って言われるのも悪くはないんですけど、名前で呼んでください。わたしは園崎魅音です。この娘は竜宮レナ」
ミオンの紹介に、隣のレナという娘がぺこりと頭を下げた。
「ミオンに、レナか。オーケイ。俺もカルロスでいい。ただ、救いのヒーロー・オリヴェイラとか、天下無敵の伍長殿とか呼んでくれると、ちょっと嬉しい」
おどけて敬礼して見せると、ミオンとレナが敬礼を返してきた。ミオンのそれはどうに入っているが、レナの方は少し気恥ずかしそうだ。
「了解しました。救いのヒーロー・オリヴェイラ」
「合点承知であります。ところで、天下無敵の伍長殿。自分たちはほいほい付いて来てしまいましたが、これからどうするつもりなのでありますか? てかさ、見てわかると思うけど、逃げ道、あんまりないよ」
「デカブツを誘いこんでから、この先の出入り口から出るのさ。それから町ン中に入っちまえば、撒くのは簡単だろ。ヘリコプターの着地地点までは俺がエスコートしてやるから、安心しろって」
「了解しました! 本官は伍長殿に従うであります」
「で、あります!」
ノリのいい二人に、カルロスは大雑把なプランを告げた。正直なところかなり恥ずかしかったのだが、それをどうにか顔には出さずに済んだはずだ。もっとも、ミオンはにやにやとしていたが。
シャッターの手前で二人を制止し、しゃがみこんでシャッターの向こうを確認する。
がらんとした、似たような通路が奥に広がっている。すぐ左手にあるのはマリンスポーツの専門店らしい。今まで縁のなかった店舗の一つだ。そこから目を外し、注意深く辺りを観察する。
右手は婦人服のテナントだ。奥に向かって、他にも見覚えのある名前が軒を連ねている。
問題ない――そう判断を下そうとして、カルロスは小さく息をのんだ。
男が一人、壁に背を預けたまま、身じろぎ一つすらせずに座り込んでいる。明かりが弱いために詳しい容姿までは分からないが、野戦服らしきものを着込んでいるのがわかる。"U.B.C.S."の隊員かもしれない。
「どうしたんですか? 魅ぃちゃん、何かあったのかな?」
「そこで止まってられたら、邪魔でありますよ伍長殿」
そう言って脇から潜ろうとするミオンを手で制止する。
「……男が座り込んでる。死んでるかもしれねえ。君らは右は絶対見ずに潜ってくれ。その後は、俺が許可を出すまでウィンドウショッピングでも楽しんでて欲しい。ただ、出来るだけ周囲には気を配っといてくれよ」
「死んでるって……」
「……その人がシャッターを持ち上げたのかな?」
「かもな」
人の死体があるかもしれない。そのことで、二人が息を呑んだのが分かる。死体など腐るほど見てきたはずだが、そうそう慣れるものでもないらしい。
どちらにせよ、子供の目に晒していいものではないが。
もっとも、死体そのものへの恐怖だけではないかもしれない。なにしろ、ラクーンシティでの死体は、ただの"死体"ではない。動かないはずのそれが動き、生者を襲う。
平時であれば死体ほど安全な代物ないのだが、ここでは脅威の象徴だ。慣れるものではないだろう。
肩越しに見た二人の顔が強張っているので、カルロスは軽口をたたいて緊張を解してやろうと思ったが、その寸前でやめた。このぐらいの緊張感ならば、むしろ持っていた方が生き残れる。
ただ、彼女たちの反応は、カルロスにこれが救助活動であることをより深く刻み込ませた。少女たちは此方ではなく、彼方の存在だと痛感する。だからこそ、守る意義があるというものだ。
シャッターを潜り、カルロスは慎重に男へと近づいていった。背後のミオンたちがこちらの言葉に従っていることを音と声で確認する。とはいえ、不安からか、ずっと喋っているので、歩哨としての期待は出来ないだろう。
少女たちの会話に気が逸れそうになるが、しばし我慢する。
男はまだ動く気配はない。それどころか、既に死臭漂ってきていた。腹部に巻かれた包帯が、血でどす黒く染まっている。身に付けたポーチの幾つかには膨らみがあり、傍らにはM4A1を狙撃仕様にした代物が横たえられていた。
男は細身の長身で――見覚えのあるニット帽を被っていた。
「おめえかよ……畜生」
小さく毒づく。男は、アルファ小隊のマーフィー・シーカーだった。狙撃の名手の瞳は半ば開かれ、床をじっと見つめている。もう、彼がスコープから世界を見ることはないだろう。
カルロスは銃口を、友人の死体に向けた。照星越しに彼の頭を見やる。
マーフィーは死んだ。もう空っぽだ。しかし、この糞のような生物災害は死者の尊厳を軽く踏みにじっていく。それから友人を救ってやるには――頭を撃つしかない。
呼吸が荒くなる。これまで山ほど生きた人間を撃ってきた。今度は死体だ。道端に落ちた空き缶よりも容易い標的ではないか。しかし、引き金は鉛のように重かった。
友人の形をした標的など、撃った経験がない。指が震えそうになる。
このまま踵を返して、二人を連れて出ていく。その考えは実に魅惑的だった。ゾンビになろうとなるまいと、自分が見ることはない――。
と、マーフィーの身体が動いた。彼の顔がゆっくりとあげられる。カルロスを見定めたマーフィーの瞳には、以前の温和で親しげな光はなく、虚ろに白濁していた。低い呻き声が、マーフィーの喉から漏れる。
カルロスは深く、大きく息を吐いた。見てしまった。知ってしまった。ならば、もう覚悟を決めるしかない。
マーフィーは、もう死んだ。こいつはもう、あのマーフィーではない。そう言い聞かせる。
それでも、カルロスは悲しげに笑みを刻んだ。
「……もう休んでいいんだぜ、相棒」
今度はゆっくり兄弟と話してこいよ――。
銃声が響き、壁に血と脳漿が飛び散った。排出された薬莢の残響が通路を転がっていく。少女二人が驚きの声を上げたのが聞こえたが、カルロスは無視した。反応するのも億劫だった。
撃ち殺した友人の死体に片膝をつき、そっとポーチを外す。弾倉はなかったが、未使用のウエポンライトが入っていた。使えることを確認して、手早くグレネードランチャーからそれに付け替える。
すぐ背後で足音がした。ミオンとレナだ。こちらが無視しているので、腹に据えかねたのだろう。
カルロスは顔を動かさず、ただ、なんだ。とだけ訊いた。
「……ねえ、なんで撃ったの? その人、死んでたんじゃないの?」
「死んでたよ。だが、ゾンビになっちまった。だから、撃った。明快だろ……」
「いや、ゾンビって――」
「悪ぃが、ちったぁ黙ってらんねえのか?」
問いを重ねようとしたミオンに、刺すように答える。直後に後悔が襲ってきたが、それも無視した。
もう一つのポーチからは赤色の塗装が施された焼夷手榴弾が三個出てきた。テルミット反応によって、鉄骨すら融解させる熱量を生み出す代物だ。本来はバリケード等を除去するために使う道具だが、それ以外に使い道がないわけではない。
押し黙ってしまったミオンに代わり、遠慮がちなレナの声がかかる。
「……お知り合いだったんですか? カルロスさんの声……聞こえちゃったから」
「ダチさ。君にしてみれば、ミオンが死んだみたいなもんだ」
「………………。ごめんなさい」
尻すぼみに小さくなっていくレナの声を背中で聞く。小さいが、その響きは耳朶に痛いほどに響いた。
カルロスは自分の顔を殴りつけたい衝動に駆られた。まただ。ここまで余裕がないとは、怒りを通り越して笑えてくる。
胸中で己を呪いつつも、手はやるべき事柄を黙々とこなしていく。
マーフィーのライフルに弾は残っていなかった。しかし、ホルスターに入っていた拳銃には充分に残っていた。手に付いた血をシャツで拭ってから、それを引き抜いた。
立ち上がり、少女たちを振り返る。ミオンはカルロスから顔を背け、レナは俯いている。
ばつが悪く、カルロスは鼻を掻いた。マーフィーの死体を一瞥し、進むべき方向へと銃を構えた。
行くぞと出発を告げてから、彼は一度大きく息を吸った。戦闘とは違った意味で勇気がいる。
「ミオン、ごめんな。レナも、気を使わせちまってすまねえ。調子乗って景気のいいこと言ったが、実のところ、俺もテンパってんだ」
前方を向いたまま、謝罪を告げる。
一拍置いて、さらと衣擦れの音がした。肩でも竦めたのだろう。
「謝らなくていいよ。わたしも配慮が足らなかったし。おあいこってことで」
「……それに、カルロスさんはちゃんとヒーローですよ。レナたちにとっては」
「ありがとうな、おまえら」
「まあ、どこかで仕返しするかもしれないけどさ」
「……あいよ。どうにでもしてくれ」
そう呻くと、ふっとミオンが噴き出した。これで仲直りだと、胸を撫で下ろす。ミオンはカルロスの前に回り込むと、ホールドオープンしたままの拳銃を弄びながら口をとがらせた。
「だけど、状況は説明してほしいな。一体、どうなってるのさ?」
「状況、ねえ……」
状況を説明すると言っても困るものだ。ラクーン・シティ壊滅の経緯など、彼女たちにとっては今更だろう。
ゾンビが、アンブレラの研究所で起きた事故に起因するらしいことか。それとも、救助部隊がものの数時間で壊滅したことか。
もしくは、カルロス自身が抗ウィルス剤を打ってあるので、多少噛まれたぐらいではゾンビ化の心配はないこと告げるか。もっとも、マーフィーの件から、その効果は怪しいところだが。
どれも話したところで、状況を打開する材料にはなりえない。
実のところ、状況を説明してほしいのは彼も同じだった。
ミオンに、使えるよな。と訊きつつ、カルロスは自分の拳銃を差し出した。
「多少話せることはあるだろうが、根本的なもんは俺もさっぱり分からねえからなあ。俺、下っ端も下っ端だし」
左手の通路は、奥で管理シャッターが降りてしまっている。右手の通路から出るしかなさそうだ。
受け取った拳銃を眺めまわしつつ、ミオンが半眼でカルロスを見やる。
「ヒーローなのに下っ端なんだ……」
「そうでなきゃ、困る人が一杯出てきちまう。だから、ヒーローなんて成るもんじゃあねえんだ」
自嘲に肩を揺らして、カルロスはミオンを追い抜いた。
"U.B.C.S."はある意味、ヒーローの集まりだ。
少数民族独立のために、全てを投げ打って奮闘した男――。
兄弟を殺したギャング相手に、単身戦いを挑んだ男――。
政府を倒し、より良い国を作るために戦った男――。
物語の中でこそ彼らはヒーローとして輝くが、現実においては異分子でしかない。一時持て囃されても、やがては排除される。
社会は、異端を囲ってくれるようには出来ていない。ヒーローから大義や名誉を削ぎ落としていけば、最後に残るのは殺人者の称号だけだ。
祖国や思想のために殉じ、そして切り捨てられた英雄たちの辿り着く最後の戦地が"U.B.C.S."だった。もっとも、ただの犯罪者も多いが。
動くものがないことを確認して、右の通路に足を踏み入れる。靴屋の真新しいゴムの匂いが鼻孔をくすぐっていく。
「魅ぃちゃん。まず、ここが何処だか訊いた方がいいんじゃないのかな? 雛見沢じゃないのは確かだけど……ここまでずっと、看板とかの文字は英語ばっかりだよ? だよ?」
「そうそう。それだ。ここって興宮市……でもないよね?」
「何言ってんだお前ら……?」
あまりに頓珍漢な言葉に思わず振り返る。そのとき、後方でガラスが砕け散る音が響いた。そして、不明瞭な唸り声――。
「やっと来なすった。後回しだ! 逃げんぞ!」
通路を駆け抜ける。抜け出ようとしていた扉はシャッターが降りている。銃で破壊するか。それとも、マーフィーの手榴弾を使うか。
その手段を頭に残しつつ、カルロスはもう一つの角を曲がった。当初利用しようとしていたものとは反対の出入り口につながるルートだ。
実質、大男との距離が近くなるが、駆け抜ければ時間は取られなくて済む。エントランスホールから直線的に繋がっているから、撒くという当初の目的にはあまりそぐわないが――。
「くっそ……!」
目に入ったのは、非情にも通路を塞いでいるシャッターだった。時間を無駄にした。
すぐに来た道をとって返す。急な方向転換に、ブーツの底がきゅきゅと声を上げた。ポーチに手をやり、焼夷手榴弾を掴む。と、ミオンたちの姿がない。
「カルロスさん、こっち! 二階から外に出る階段があったの、覚えてる!?」
エスカレーターの角からレナの声が飛んだ。彼女もまた、入口の案内図を確認していたようだ。
確かに、二階から直接外へ出る階段はあった。そこから脱出すれば、大男の裏をかいたことになるだろう。
だが、すんなりと行くとは限らない。二階の管理シャッターが降りている可能性は充分にある。
とはいえ、レナは既にエスカレーターを駆け上がってしまっている。この様子では、ミオンは二階にいるのだろう。呼び戻している時間はない。地鳴りのような足音が聞こえている。
カルロスはエスカレーターを駆け上がった。登り切ったところで、階下に手榴弾を放り投げる。これで三秒は稼げるはずだ。それに、防火シャッターも作動するだろう。
首を巡らすと、レナとミオンが右手の通路先で待っていた。合流し、また走り出す。
通路は吹き抜けの回廊へと出た。パン屋やコスメショックの電飾が、空々しく回廊の床を照らしている。
背後から怒号ともとれる叫びが聞こえてきた。そして、シャッターを殴りつける音も耳が拾う。上手く妨害出来たようだ。
息を切らしながら、ミオンが叫んだ。
「なんであいつ追いかけてくるのさ!? しつこいにも程度ってもんがあると思うよ!」
「怨みでもあるんじゃねえか? 心当たりはあるかい? 胸に手を当てて訊いてみようぜ」
「レナはスコップでお腹刺しました」
「おじさんは拳銃で何回も撃ったよ」
「おお。心当たりの見本市だな。ついでに俺のグレネードが加わるわけだ」
「でも、まったく効果なかったよ。何も影響ないなら、何もしなかったことと同じじゃないか。まったく、器の小さい男だね」
「図体の方に栄養まわしすぎたんだな、きっと」
「何食べたら、あんな風になるのかな……?」
「いや、真面目に受け取らないでくれ。返答に困るから」
左右に扉が見える。階段へと繋がる道だが、遠回りだ。カルロスは正面の喫茶店のガラスに向かって引き金を引いた。鍵がかかっているかどうか、それを確認する暇も惜しかった。
目映い閃光の中でガラスが飴細工のように崩れ落ちていく。
「あー! 犯罪!」
「知るか! 足元、気ぃつけろよ」
床に散らばったガラスは明かりを受けて、恨めしそうに煌めいていた。それを踏み砕き、コーヒーの香りすら漂う店内を走り抜ける。
カウンター奥の扉の内鍵を外し、手早く外の周囲の安全を確認する。
何も問題はない。控え目な照明の中で蠢く物は何もなかった。従業員用の狭い通路がただ薄闇の中に伸びているだけだ。
すぐ正面に扉がある。ドアノブを銃底で破壊してこじ開けると、香水の匂いが鼻についた。女性服のブティックのようだ。若い娘向きの服飾が品よく並べられた店内に、少女たちが歓声に近い声を上げた。
妙だと、試着室の中を確かめながらカルロスは口を曲げた。あまりに整然としている。いや、それはこの店舗だけではない。このショッピングモール自体、まったくと言っていいほど災害の爪痕が残っていないのだ。
この店でもハンガーラックは乱れることなく整然と並んでおり、掛けられた品物もまったく荒らされた形跡はない。ほんのつい数時間まで、通常の営業を行っていたような具合だ。
戒厳令が下って早数日が経っている。もっと店内に死体が溢れていているはずだ。映画のように立て篭もったのならば、今度はバリケードを築いた形跡ぐらいは残っていていい。
カルロスは小さく舌打ちした。ここを抜ければ出口なのだ。些細な疑問は、少女たちを脱出させてから一人で考えれば済むことだ。
そのとき、宵闇を劈くようにして重苦しいサイレンの音が鳴り響いた。ラクーン市警察の生き残りによるものだろうか。心が漫ろ立っていくような不快感が身体中に広がっていく。
サイレンの音色というものは元々気持いいものではないが、しかし、これはまるで――。
そこでカルロスの思考は中断された。
「何なのさ、これ!?」
「変だよ!? どうしちゃったのかな!? かな!?」
ミオンとレナの悲鳴が響いた。何事かと、カルロスは彼女たちの方を振り返らなかった。おそらく、彼女たちと同じものを彼も見ていたからだ。
周囲の風景が、サイレンの音にはぎ取られていくように変貌していく。
磨かれたような床は汚泥がこびりつき、白亜の壁には無残な黒染みが広がっていく。試着室のカーテンは風化してぼろぼろとなり、並べられていた服は返り血のようなもので汚されていった。
たちまちの内に、ブティックは廃墟のような佇まいに姿を変えた。
目の前で起きた出来事がまったく信じられない。
集団幻覚の類なのか。それとも、白昼夢でも見ているのか。
はたまた、もう三人とも死んでしまっていて、これは地獄か煉獄の風景なのかもしれない。そんな映画か何かのような妄想までが頭をめぐっていく。
カルロスが悲鳴を上げなかったのは、単に少女たちに先を越されただけに過ぎない。
やがて照明が弱まっていき、暗闇が辺りを包んでいった。
銃身に装着したライトのスイッチを入れる。入口に駆け寄って確かめると、入口のドアの鍵は――開いている。
「――とにかく、出るぞ!」
形振り構わず飛び出そうとする衝動を懸命に堪え、外をチェックする。それを終え、カルロスは扉を抑えながら――離したら永遠に開かないような気がしたのだ――店内にライトを向ける。少女たちの方は堪りかねたように外に飛び出した。
左手の闇にブラウン管が不気味に浮き上がっている。画面には砂嵐が流れ、無数の虫の羽音のような不協和音を奏でていた。
ライトがエスカレーターの手すりを映し出す。光の輪の中でミオンとレナが駆け寄る――。
と、二人が急停止した。
「来るときはあったのに――!」
レナの悲鳴が奔る。
追いついたカルロスも思わず呻いた。階段が途中で崩落してしまっている。その先に広がるのは無明の闇だ。ライトの光すら通さない。
銃口を階下に向けてみるも、本来であれば見えるはずの一階の床が見えない。せいぜい17フィートぐらいの高さしかないはずなのにだ。それどころか、壁や看板すらライトは照らし出さない。まるで、闇が質量を伴って階下に沈澱しているようだ。
右後方で、轟くような大声が上がった。大男は近くまで来ているらしい。
「もう、飛び降りよう! 上手くいけば――」
「足折るのが関の山だろう! 三階だ!」
自棄になって叫んだミオンを制止し、ブティックの横から続く階段へライトを向ける。三階へと伸びる階段は、しっかりと途切れることなく続いている。
カルロスが最初に三階まで上がり、階上から階段を照らした。ミオンたちが少しぎこちなく足早に駆け上がってくる。
息が上がっているが、それを整えさせるだけの時間は与えてやれない。可哀想だとは思うも、カルロスは次の指示を飛ばした。
「これからエスカレーターで一気に下まで降りるぞ」
二人は不満げな顔もせずに頷いた。
ミオンたちを先に行かせ、カルロスは背後から彼女たちの道を照らした。正面に小さな扉があり、それをレナが開ける。大男には酷く窮屈な大きさだ。これならば、また少し時間が稼げる。
扉の向こうは二階のそれと同じような吹き抜けのある区画だった。しかし、鉄柵は赤錆で覆われ、それは周囲の店舗にまで浸食している。なんの店だったのか、まったく判別できないほどだ。吹き抜けから大きな足音と、壁が砕け散ったらしい物音が聞こえた。
大男は邪魔な壁をぶち抜きながら追って来ているようだ。大男にとって、壁は大した障害にはなりえないということだろう。誘い込むなど、悠長な考えは最初から無意味だったらしい。
吹き抜けを走り抜け、突き当たりの壁を左に折れる。背後で壁が軋りを上げた。硬く尖った物でコンクリートを穿つような音だ。大男は――すぐそこまで来ている。
「急げ!」
最後尾につき、少女たちの足元を照らしてやる。彼女らは意外と健脚で、カルロス自身も半ば走るような形になった。最後は中段から床へと飛び降りた。
暗闇を切り裂く一条の明かりを頼りに、床を蹴る。ライトが一瞬だけ、マーフィーの姿を照らした。変貌した世界の中で、親友は変わらぬ姿で座り込んでいた。
顔がくしゃりと歪みそうになる。周囲の暗闇を、カルロスは初めて感謝した。
彼らが潜りぬけてきたシャッターは大きくひしゃげ、無残な姿を晒していた。明かりが一部だけ生きているらしく、シャッターの向こうに出たミオンとレナの影が見える。
涼やかな風がカルロスの頬を撫でた。出入り口の方からだ。この通路は、しっかりと外に繋がっている。その事実に、歓喜が身体を満たしていくのが分かった。
「カルロスさん、はやく!」
やはり、どこか安堵したようなレナの声が飛ぶ。
カルロスのライトは、眩しいほどの笑顔を浮かべるレナを照らし出した。
刹那――その笑顔が、漆黒のコートに身を包んだ大男の顔に入れ替わった。地響きを立てて降り立った大男がゆっくりと立ち上がる。
ミオンが引き攣った声を上げた。
大男の足元から赤い池が広がっていく。そこには、複雑に潰れた肉塊が転がっていた。そこから飛び出してた白い骨が、悪趣味なオブジェのようにそそり立っている。
先ほどまで、目映く純真な笑顔を浮かべていた少女の成れの果てだ。
大男は、おそらくは三階から飛び降り、真下に居たレナを頭から押し潰したのだろう。傍に落ちている白い帽子が朱に浸食されていく。
ミオンがレナの名前を叫ぶのと、大男が不明瞭な吼え声を上げるのは同時だった。声に反応し、大男がミオンに向き直る――。
「逃げろ! ミオン!」
カルロスはアサルトライフルをセミオートからフルオートに変更し、大男の背中に向けて引き金を引いた。閃光の中で、銃弾の雨が大男の背に踊る。浮き上がりそうになる銃身を、身体を落として押さえつけた。
逃げろ、か。カルロスは自嘲気味に笑った。
逃げ出したいのは自分自身の方だ。この救助活動を投げ出したところで咎める者などいない。作戦はとうに失敗している。どうせ、隊員の生死を確かめることすらされないだろう。所詮、消耗品だ。
死亡は容易に偽装できる。そうしたら、また顔を変えればいい。絶対に捕まらない。自信はある。自分ならやれる。
そう思いはするが、そのプランを彼はあっさりと切り捨てた。
なぜ己は"U.B.C.S."との契約を結んだのか。それを反芻する。
新しく人生をやり直したかったからだ。それまで過去を捨て、生まれ変わりたかった。
ゲリラに属していた時と違い、この任務には仰々しい大義も厳かな使命も与えられていない。だが、自分が見出した意味はある。
か弱い女の子たちのエスコートだ。感謝以外に得るものはないが、命を懸けるに全く値しないかというと――そうでもない。
それに――と、カルロスは大男を睨みつけた。
事はもっとシンプルだ。大事なことは、いつでも単純なものだ。
――こいつは、純朴な女の子を躊躇うことなく殺した下衆野郎だ。それを生かしておく道理があるか。
大男が踏鞴を踏んだところで、弾が切れた。空弾倉を捨て、予備の弾倉に交換して初弾を装填する。
「でも、こいつは――!」
「行け! 絶対戻ってくるんじゃねえぞ!」
「だけど! それじゃあんたが!」
「……子供がね、大人を気遣うんじゃないよ」
尚も粘るミオンに、カルロスは笑みを浮かべた。彼女は本気で心配しているのだろう。
二十歳にも満たない子供が、歴戦の兵士を気遣っている。場違いで、正しい判断ではないが心地いい。
いい娘だ。彼にとっての最後の救助になるとしても、まったくもって悪くない。
――カルロスさんはちゃんとヒーローですよ。
レナの言葉が耳に蘇る。
あれは嘘だ。結局、あの娘を守ることは出来なかった。けれども――。
「ああは言ったけどな。やっぱり男の子の憧れなんだよ。ヒーローって奴はさ!」
再び引き金を引く。体勢を立て直し、掴みかかってきた大男の腕を掻い潜り、脇腹に一発撃ち込む。効果のほどは見えないが、蚊に刺されたぐらいの煩わしさは感じてくれたらしい。
大男の殺意が、完全に己へと向けられたことを感じた。その巨体から発せられる死のイメージに、情けないほど肌が粟立っていく。
「……了解しました、伍長殿!」
ミオンが走り去っていく音を耳が拾う。納得したかどうかは別として、少なくとも覚悟のほどは感じ取ってくれたらしい。
小刻みに床を蹴って、大男の背中へと回り込む。がら空きの胴体に向けて、銃口から閃光が迸った。
「時計塔だ! 時計塔を目指せ!」
己の銃声に負けぬよう、大声で叫ぶ。ミオンに届いたことをカルロスは願った。
これで彼女が生還できれば、自分は格好いい兵隊さんであり続けるわけだ。なるほど、充分に格好いいじゃないか。
「お姫様が逃げる時間を稼がなきゃな」
大男は跳躍すると、勢いに任せて腕を振り上げた。足を踏み変えて半身を入れ替える。怖気をふるうほどの圧力が髪を撫でる。
空を切った拳は床に叩きつけられた。敷かれた床板が砕け飛び、粉じんがライトの中できらきらと舞った。
側頭部にも一発お見舞いし、転がって一度間合いを取った。大男の首が大きく横に弾けた。空弾倉を捨て、最後の弾倉を嵌め込む。
しかし、大男の回復は存外に素早く、稼いだ距離は一呼吸もしない内に無とされた。
砲弾のような拳が、颶風を纏って繰り出される。それを目算で半歩に満たない動作で避ける。力を加減して至近距離で三発、コートに覆われていない右肩に叩き込む。肉が爆ぜ、血が撥ねる。
それに怯んだ様子もなく、大男は大きく踏み込むと腕をなぎ払った。後ろに跳んで直撃は避けたものの、拳が左腕を掠めた。バランスを崩し、カルロスは床に転がった。
受け身を取って立ち上がるも、大男は目と鼻の先にまで接近していた。銃ごと押しつぶすように、拳がカルロスに向けて振り抜かれる。身体は為す術もなく壁へと叩きつけられた。胸部と背部からの衝撃に息が詰まる。鼻孔に血の臭いが広がった。
懸命にライフルを構えようとするが、大男に銃身を払われて手から弾け飛んだ。指先から激痛が走る。折れたかもしれない。からからと音を立てて、ライフルは床の上を滑って行った。
立ち上がる猶予もなく、カルロスは大男に顔面を掴まれた。寸前、大男に踏みにじられたレナの死体が見えた。抵抗するが、相手は意にも解さなかった。そのまま身体を片手で持ちあげられる。首の筋肉が悲鳴を上げた。
万事休すだ。しかし、カルロスの頭は対抗手段をまだ探っていた。
カルロスの手が腰のポーチに触れた。その中の手榴弾をどうにか掴み取る。差し出すようにそれを持ち、ピンに指を通す。
顔を掴む指の間から、大男の白濁した目が見えた。何ら感情が宿ることのない、白蝋のような瞳。マーフィーのものと同じそれが、まっすぐにカルロスに注がれている。
「ガン、飛ばしてんじゃねえよ……」
顔面に尖った何かがめり込むのを感じた時、カルロスの指は手榴弾のピンを引き抜いた――。
魅音は暗闇の中をひたすらに走っていた。何度も躓きながらも、奇跡的に転ぶことはなかった。転べば、多分立ち上がることすらできないだろう。
随分走った様な気がするが、この暗闇だ。実は大した距離は動いていないのかもしれない。ただ、疲労だけは重なっていく。
全身を撫でていく風が、ショッピングモールから脱出できたことを教えてくれた。カルロスは時計塔に行けと言っていたが、これでは無理な話だ。
星一つ見えない夜闇は、纏わりつくように魅音の周囲を包みこんでいる。その闇から、うっすらとだけ建物や電柱の影らしきものが現れては消えていく。
一瞬、背後で光が生まれた。路上に魅音の影が伸びる。しかし、それはほんの二秒かそこらで消え、また暗闇が戻った。音も何もしなかったが、ショッピングモールの方からだろう。
カルロスが何かしたのだ。彼は勝ったのだろうか。しかし、魅音の足は止まらなかった。ここで戻っても、彼は怒るだろうから。
魅音は唸るように息を吐いた。レナが殺された。一番の親友が、あんな死体とも分からないような塊にされてしまった。無残に潰された彼女の姿が、目から焼き付いて離れない。
視界がほとんど効かないせいで、それは鮮明に脳裏に居座り続けていた。ふとすると、実際に目の前にあるような錯覚すら覚えるほどだ。
悲しさと悔しさと虚しさとが合わさり、外気よりも冷たい風が胸の内で吹いている。
響く足音はたった一つだ。一人ぼっちで走る暗闇は、酷く心細かった。
「ちくしょう……。絶対仇取ってやるからね。絶対だよ……!」
言葉に出したが、これでは負け犬の台詞のようだ。とても惨めで、涙が頬を伝った。
もう、レナの声は聞けない。彼女と部活で勝負もできないし、一緒に買い物に行くこともできない。
彼女は永遠に失われてしまった。悟史のときと同じように――。やはり、自分は何も出来なかった。
圭一の見舞いに行くだけだったのに、どうしてこんなことになったんだろう。どうしてここは雛見沢じゃないんだろう。ここは一体――どこなんだろう。
雛見沢に漂う土と木々の匂いが酷く懐かしかった。
右手で頬の涙を拭う。右手は、拳銃を握ったままだった。カルロスが渡してくれた拳銃だ。
いつも持ち歩いているモデルガンとは違う、本物の銃――それはとても重く腕に負担をかけている。けれども、魅音はそれから手を離すことはしたくなかった。
無手が怖いということもある。しかし、それとは別に、拳銃が勇気を与えてくれているような気もしていた。
最後の彼の表情を、魅音は見ていない。彼女の瞳に映っていたのは、カルロスの背中と、彼のライトが照らす黒ずくめの大男だ。
彼は怯えていたか。いや違う。多分、陽気な笑みを浮かべていたのだろう。怖くないはずはない。それでも、魅音を元気づけようと――。
この拳銃は、その勇敢な兵士が使っていたものだ。それだけで何か特別な力が宿っているのではないか。それは絶対にない話ではないと、半ば信じてすらいた。
眼前に街の明かりが見えた。ぽつぽつと弱々しい物だが、それは暗闇に慣れた目には染みるようだった。足の回転が力強いものに変わる。まるで、そこに辿り着けば全部解決すると身体が感じているようだ。
前方で、小さな炎が瞬いた。たんと破裂するような音とともに、腹部を衝撃が突き抜けた。何か鋭く熱いものが肉に抉り込み、身体の中で弾ける。
またちかちかと炎が闇の中で瞬く。その数と同じだけ。胸や肩へ似たような衝撃が突き刺さっていく。魅音の右手から落ちた拳銃がアスファルトの上でがちゃりと音を立てた。
魅音の足は止まっていた。そのまま前に踏み出すことなく、身体はアスファルトの上へと倒れこむ。身体中が熱く、それでいてとても寒かった。倒れこんだ身体の下から、生温かい液体が毀れだしていく。
撃たれたのだと、漸く魅音は気づいた。
足音が近づいた。声が聞こえる。
「――くしょう。ふざけんな。何が"S.T.a.R.s."だ。あの脳筋の低能ども、ずっと俺を馬鹿にしや、がって……怖ぇもんは怖いんだ、くそったれめが」
不明瞭な声で何かを罵りつつ、男は魅音の横を通り過ぎていった。誰かに向けられているようで、誰にも向けられていない。他人の感情を読み上げているような、そんな空虚な響きがあった。
聞き覚えのある声だが、それが誰だったか思い出せない。
喉が酸素を求めて喘ぐが、抜けるような喘鳴が漏れるばかりだ。意識が周囲の闇に蝕まれ、希薄になっていく。
黒ずくめの大男の声が遠くで聞こえた。
呼ばれし者どもめ――。起伏のない声音で、そう叫んでいる。
やがて、それも聞こえなくなった。もう、何も聞こえることはなかった。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【カルロス・オリヴェイラ@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ 死亡】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【タイラント NEMESIS-T型(追跡者)第一形態】
[状態]:上半身に複数の銃創、重度の火傷(回復中)
[装備]:耐弾耐爆コート(損傷率60%)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:「呼ばれし者」の皆殺し
1:「呼ばれし者」を捜索し、その場で殺害する。
【備考】
※耐弾耐爆コートが完全損傷した段階で、本個体が完全破壊されて無い場合、第二形態へと移行する。
※E-2のショッピングモール一階奥の店舗「ブルーベル」の近くにマーフィー・シーカーの死体とSPR‐Mk12(0/30)が落ちてます。
※裏世界のショッピングモールは、二階から一階エントランスへと続く階段が崩落しています。またSH3本編で三階の吹き抜けを塞いでいた壁はありません。
※通常出入り口を西と見たときの南側の一階階段と吹き抜けエリアに傷夷手榴弾による破壊跡、カルロスとレナの焼け焦げた残骸、コルトM4A1(27/30)があります。他にカルロスの所持していた装備はすべて焼失しました。
※E-2路上にSIG-P226(残弾15/15)が落ちています。
※ブラッドの死体は闇人化しました。殻がT-ウィルスに汚染されているため、常とは違う変化や状態になるかもしれません。
途中まで代理投下してくださった方、ありがとうございました。
「ああは言ったけどな。やっぱり男の子の憧れなんだよ。ヒーローって奴はさ!」
再び引き金を引く。体勢を立て直し、掴みかかってきた大男の腕を掻い潜り、脇腹に一発撃ち込む。効果のほどは見えないが、蚊に刺されたぐらいの煩わしさは感じてくれたらしい。
大男の殺意が、完全に己へと向けられたことを感じた。その巨体から発せられる死のイメージに、情けないほど肌が粟立っていく。
「……了解しました、伍長殿!」
ミオンが走り去っていく音を耳が拾う。納得したかどうかは別として、少なくとも覚悟のほどは感じ取ってくれたらしい。
小刻みに床を蹴って、大男の背中へと回り込む。がら空きの胴体に向けて、銃口から閃光が迸った。
「時計塔だ! 時計塔を目指せ!」
己の銃声に負けぬよう、大声で叫ぶ。ミオンに届いたことをカルロスは願った。
これで彼女が生還できれば、自分は格好いい兵隊さんであり続けるわけだ。なるほど、充分に格好いいじゃないか。
「お姫様が逃げる時間を稼がなきゃな」
大男は跳躍すると、勢いに任せて腕を振り上げた。足を踏み変えて半身を入れ替える。怖気をふるうほどの圧力が髪を撫でる。
空を切った拳は床に叩きつけられた。敷かれた床板が砕け飛び、粉じんがライトの中できらきらと舞った。
側頭部にも一発お見舞いし、転がって一度間合いを取った。大男の首が大きく横に弾けた。空弾倉を捨て、最後の弾倉を嵌め込む。
しかし、大男の回復は存外に素早く、稼いだ距離は一呼吸もしない内に無とされた。
砲弾のような拳が、颶風を纏って繰り出される。それを目算で半歩に満たない動作で避ける。力を加減して至近距離で三発、コートに覆われていない右肩に叩き込む。肉が爆ぜ、血が撥ねる。
それに怯んだ様子もなく、大男は大きく踏み込むと腕をなぎ払った。後ろに跳んで直撃は避けたものの、拳が左腕を掠めた。バランスを崩し、カルロスは床に転がった。
受け身を取って立ち上がるも、大男は目と鼻の先にまで接近していた。銃ごと押しつぶすように、拳がカルロスに向けて振り抜かれる。身体は為す術もなく壁へと叩きつけられた。胸部と背部からの衝撃に息が詰まる。鼻孔に血の臭いが広がった。
懸命にライフルを構えようとするが、大男に銃身を払われて手から弾け飛んだ。指先から激痛が走る。折れたかもしれない。からからと音を立てて、ライフルは床の上を滑って行った。
立ち上がる猶予もなく、カルロスは大男に顔面を掴まれた。寸前、大男に踏みにじられたレナの死体が見えた。抵抗するが、相手は意にも解さなかった。そのまま身体を片手で持ちあげられる。首の筋肉が悲鳴を上げた。
万事休すだ。しかし、カルロスの頭は対抗手段をまだ探っていた。
カルロスの手が腰のポーチに触れた。その中の手榴弾をどうにか掴み取る。差し出すようにそれを持ち、ピンに指を通す。
顔を掴む指の間から、大男の白濁した目が見えた。何ら感情が宿ることのない、白蝋のような瞳。マーフィーのものと同じそれが、まっすぐにカルロスに注がれている。
「ガン、飛ばしてんじゃねえよ……」
顔面に尖った何かがめり込むのを感じた時、カルロスの指は手榴弾のピンを引き抜いた――。
あ、リロード忘れてたw;
カルロスは奮闘したがやっぱり奴は強敵だわw
そして最後のオチで奴が出るとは…可哀そうだが全滅か
つまりどういうことです?
代理投下乙です! という事ですかのう。
そんなことよりおなかが減ったよ
藤田さんかシェリーか好きなほうを選ぶといいよ!
は?
またそういうことを
ちょw
参加希望者です。よろしく
ちなみに聞きますが、ラクーン市警のSTARSの後任の警官隊(SWAT)
の装備品(MP5A5・ベネリM3・閃光手榴弾等)て、署内に残ってるんですかね?
>>234 したらば雑談スレより転載。
101 名前:名無しさん 投稿日: 2010/12/14(火) 21:46:59
PC規制なので、こちらに。
SWATさんがこちらまで来るか分かりませんが。
警察署内にハンドガンの弾やらショットガン、グレネードもあるので、襲撃時に使用されなかった・発見されなかった武器弾薬が
あってもよいと思います。決して多くはないでしょうが。
>>234 おお、いらっしゃいませー!
基本的に武器や道具は存在しても不思議じゃない場所からなら
割と自由に出しちゃっても大丈夫だと思います。
ただ他のロワと違って四次元デイパックは無いので、一人が持てる量は制限されますが。
ははあ・・・答えてもらって有難うございます、いや何か気になったもので・・・
3のオープニングでゾンビと交戦して全滅してたんですけど・・・今思うと・・・
普通あんな簡単に全滅するわけ無いですからね・・・そうなるとゾンビ化してたり
闇人化してウロウロしてそうですね・・・
まあ死体の全部が全部サイレントヒルに来てるとは限りませんのでw
来ててもおかしくはないのですが。
age
age
そうかなあ
いいねぇこのスレ
マニアックなキャラが活躍してて非常に良い
243 :
ゲーム好き名無しさん:2010/12/22(水) 23:52:01 ID:N5GEskFx0
代理投下します
問題はサイレンの鳴る前に遡る。
ーーーーーーーー
岩下明美は願った。
「次はきちんと呪いや魔術で動いてる死体と遊びたいわ・・・・」
ルーベライズは怪しく光る、そして持つ者に不幸を与え、希望を叶える。
廊下に出るとそこには素晴らしい光景が広がっていた
「・・・・・・うふふふふふ・・・・運命は素晴らしいわね・・・・・」
そこにはこの街の誰もが今だ経験した事の無いほど溢れかえった 無残な顔のナース達がいた・・・・・ 何人かは銃を向け、また何人かは鉄パイプを握り締める。
ゴリッという音と触感、こめかみに銃が突きつけられる。
そして・・・・・・!
ーーーーーーーー
そしてここが問題のシーンである。岩下明美は確かに殺人クラブの中でも実力者の部類には入る、が、果たして一切傷を負わずに
十数体は居ようかという亡者の群れを殺しきる事が可能であろうか?
今回はそこで何が起こったのかを見ていきたいと思う。
ホラゲロワ・モザイク
〜岩下明美がナースの大群に勝つ経緯〜
「ふふふ・・・・醜い!!」
頭蓋に穴を開けようと突き出された銃を遅いとぱかりに上に払い除ける。するとナースはあらぬ方向へと銃を発砲し、指を落とされ銃を奪われなす術もなく喉を裂かれた。
しかし奪った銃を構えた時には既に眼前の白衣の悪魔達は雑多な凶器を振り上げている最中・・・・・
(これじゃどう足掻いても袋叩きは免れないじゃない!)
咄嗟に急所を腕で庇いつつ倒したナースの方へ横っ飛びもといタックルをかまし退路を確保する。多少のダメージは覚悟していたのだがその思いとは裏腹に直後信じられない事が起こった。
発砲音が鳴り響き前方にいたナース達がバタバタと倒れていくではないか!
横方向には体当たりで床に倒れ伏したナース以外に一体も敵はいなかったため視線を前へ移す、誰が助けてくれたのだろうかと見てみると・・・・・
「・・・・・は?」
どうみてもナースである。
銃を持ったナースが岩下を狙って発砲し、仲間のナースを誤射したのだ。
『この街の誰もが今だ経験した事の無いほど溢れかえったナース達』、それはきっと彼等にとっても未知数の世界・・・・これはそれゆえに起きた悲劇であった。
ナースがナースを誤射してナースを殺し尽くすという頭の中がゲシュタルト崩壊を引き起こしそうな状況に流石の岩下もぽかーんとした表情をしていたが相手は銃を持っているのだという事実にハッと
正気を取り戻し通路の影に隠れ様子を窺う。
(その際キチンと倒したナースの首筋を切る事も忘れない)
すると突然銃を持ったナース達は一斉に胸元に手を突っ込み弾丸を取り出して懇切丁寧にひとつひとつノロノロとマグナムのゴチャゴチャした部分を開けて弾を込め始めた!
そう、これが俗に言うリロードタイムがレヴォリューションしている状態である。ボウリング場のピッツァや何処かの山猫部隊のように素早くやると息吹を感じるカッコいいアレである。
「・・・・・」
岩下はあまりにもあんまりなので一瞬躊躇したが結局無言で殺害を実行した。
あんな穴だらけの戦闘のせいで服が汚れてしまった・・・・少ししょんぼりとした面持ちで血まみれの制服を持ち上げる、血濡れたせいで制服は透け紳士には書き表す事の出来ない艶やかで
美しい光景になっていた事は言うまでもないだろう。
ナース服はあるが間抜けが移りそうで着たくはなかったため
少し休んだらエレベーターで移動してドクターの服でも探そうと考え元の部屋に戻り。
そして思ってしまった。
(もっと知的で理性のある相手ならよかったのだけれど、可愛い殿方ならなおいいわね)
と・・・・
ーーーーーーーーーー
つまりはこういう事だったのだ。二番目の不幸は数と質。ルーベライズが呼び寄せたのは弾丸の足りない
『過去にサイレントヒルの来訪者達が倒し損ねたナース達』の集まりであった事
そのおかげで彼女は欲求不満となり3番目の願いを掛け、死んだ。
そして今・・・・・
to be continued
代理投下終わりです
タイトルは『ホラゲロワ・モザイク 〜岩下明美がナースの大群に勝つ経緯〜』です
岩下が死ぬ前か
確かに可愛い殿方と出会えたが…
続けて代理投下します
<Obscure Characteristic>
「イヒッ、イヒヒヒヒヒヒ」
常人と呼ぶには程遠い笑い声を伴って、その男――ヒトという種類であるかどうかは定かではない――はこちらに近づく。
「あんたらにも教えてやるよ。真っ黒な夜の醍醐味ってやつをさ」
男が握っている鉄パイプが床を引き摺っている。ガリガリという音とわずかに生じる土煙にケビンは不信感を示しつつ、
銃口を男の頭部に向けた。駅に入った時と同様、ポイントマンである自分がまず対処しなければならない。
「両手を頭の後ろに乗せろ。それから足を交差させて座れ」
相手が人間かどうか。それも大切な分水嶺だが、何も人間すべてを保護することが警察官の本分ではない。
ここにくるまでもそうだが、基本的に保護対象は善良な市民だけであり、それ以外――暴徒や盗人の安全に配慮する必要はないのだ。
かりに目の前の男が“人間”だったとしても、守るに値しないならばそれまでだ。
こちらの指示に従わない、こちらに危害を加える――そういう場合は、いつも通りの対処をすればいい。
「イヒ、イヒヒヒヒィィィィィイイ!」
右手で振り上げられた鉄パイプをケビンは苦もなく銃身で受け止める。
この程度の衝撃――腕力なら大したことはない。ラクーンシティで相手にした化け物に比べれば、こいつの相手は子守のようなものだ。
「ジムはどうした」
「知らねェナァ。ま、どうせゾンビの餌にでもなってるだろうさ。あいつはどんくさいからなァ……イヒヒ」
「ああ、そうかよ」
期待など最初からしていない。一応聞いただけだ。
銃身を滑らせ、相手の眉間に銃口を突き付ける。
「動くな」
「ヤダねェエエ!」
あまった左手がケビンの顎目掛けて飛んでくる。警官は舌打ちひとつでそれをかわし、右膝を相手の腹にめり込ませた。
内臓にめり込む時の特有の感覚。奇妙な柔らかさによる不快感。駅員の手から鉄パイプが転げ落ち、金属独特の音をたてる。
「ゴウッ……!」
「悪いが手錠もロープも持ち合わせがねえんだ。連行も逮捕もできねえ以上、てめえにはしばらく地面とキスしてもらわなきゃならねぇ」
膝を突いた男の首筋に、ケビンは容赦なく踵を叩き込む。無様な悲鳴と転倒。それきり駅員は静かになった。
警告はした。それでもこいつは襲ってきた。軽犯罪あるいは公務執行妨害――鎮圧する理由にはそれで充分だ。
「クソッ、どうなってやがる」
目下の問題はそこではない。たしかにこいつは死んでいた。完全なる死体だったのだ。
プロフェッショナルの自分がそう判断したのだから、それはほぼ確かな情報だと信じていい。
仕事でも災害でもああいうのは嫌というほど見てきた。
しかし、現にこいつは動きもしたし、喋りもした。ゾンビとは違う。さらに言えば、ラクーンシティで遭遇したどのモンスターとも性質が異なっている。
あえて呼ぶならば、『賢い死者』といったところか。単純で化物然としていたあの町のゾンビよりタチが悪い。
なまじ人間性があるものだから、明確な敵かどうか判断しにくいのだ。下手に信用して背中を撃たれるのも、善人を撃って罪悪感に塗れるのも御免だ。
(ベトコン相手にするのって、こういう気分なのかもな)
ボリボリと頭を掻いて、目の前の鉄パイプを拾い上げる。この男がいつ目覚めるかわからない以上、こういうものは遠ざけておいた方がいいだろう。
「ケビン!」
「大丈夫だ、問題ない」
ジルの声に振り返ると、彼女は自分を見ていなかった。線路が続いているであろう空洞をともえと一緒に覗き込んでいた。
「電車が来たわ」
「……オーライ」
少しは心配してくれたっていいんじゃないか? ケビンは少量の不満を胸中でぼやきながら、徐々に光が満ちていくそこへ歩いていく。
「ジル、嬉しいのはわかるがな、電車にはしゃぐ歳でもないだろ?」
笑いながらそう言うと、彼女は不機嫌そうな顔でこちらを見た。
文句のひとつでもぶつけるつもりなのか、その口がわずかに動く。
「……ん?」
突然、自身を包む影が、闇が濃くなった。光を遮る何かが頭上にでもあるかのような感覚。
ジルの顔が引きつっている。遅れてこちらを向いたともえの顔色は青い。
「避けて!」
どちらの叫びかはわからない。それを判別していられる程の余裕はなかった。
<The penalty for humankind>
電車が線路を軋ませる音で気付けなかった。視界が悪いのも祟った。
その存在には気付いていたというのに!
「ケビン!」
「俺のことはいい! エスコートは頼んだ」
衣擦れのような音とともに、そいつは床を滑った。
ケビンを狙ったと思われる攻撃、その対象が実は倒れている男だったことにジルは一時的に安堵する。
所々禿げたような緑色の皮膚。忘れようのない大きさと圧迫感。
駅員を丸呑みしたそいつはゆっくりと振り返り、こちらを見下ろす。
ジルはその巨大なヘビとの遭遇に、奇妙な郷愁と少量の恐怖を感じた。
そんな風にしか動かない感情に、自分は随分遠いところに来てしまったな、と憂鬱になりつつ、
彼女は背後で停車した電車と大蛇を交互に視界に入れた。電車は鈍い音を立てて扉を開き、大蛇は自分とともえを凝視している。
餌の品定めでもしているのだろうか。あるいは、自分のことを覚えているか。それとも単純に数が多いからか。
――今はそんなことどうでもいい。
「電車に乗って逃げるわよ」
来た道は蛇によって塞がれている。何とか突破したとしても、前後を気にしながらの逃走はともえがいる以上厳しい。
鉄の箱による高速での離脱――電車が通常通りの働きをしてくれればの話だが――が現状では最も賢明だろう。
「そうしてくれ。――オイ、ヘビ公! 人間の女に色目使ってんじゃねえ!」
二発の銃声。こちらを睥睨していた顔に銃弾が浅くめり込む。その鋭い視線はケビンへスライドし、巨体はそちらを這っていく。
「行くわよ」
呆然としているともえの着物の手を取り、電車へ入ろうとすると、「待って」と女の声。
「きっぷ……」
「なに……?」
「“きっぷ”がないと電車には乗れないはずでしょ……?」
笑うか焦るか怒るか――ジルは数瞬悩んだが、無言で車内に引きずり込むことにした。
箱入り娘とは、こうも扱いが難しいのか。ジルは場違いな感慨を心のどこかで感じながら、電車の中を見まわす。
暗い車内で、ジルのライトが何かを捉えた。身につけているナースキャップや白い服から、生存者かも知れないと思ったが、
彼女はすぐにその可能性を放棄した。奇怪な肉声と動作、そして面相。ここに来て遭遇した怪物と同じような性質がある。
看護婦は奇声を発し、持っていた銃を二人に向ける。ジルの背後でともえが小さな悲鳴を漏らした。
ナースの銃口がジルの頭部を狙う――直後、ナースの肩に銃弾が飛び込む。
怪物が絶叫し、銃を握っていた腕がだらりと垂れる。ジルの放った銃弾がその手を穿ち、否応なく拳銃を落とさせる。
最後の一発。正確な射撃がその異形の頭部を貫いた。支えがなくなったかのように、ナースはその場に体を投げ出す。
「切符代よ」
番人を沈黙させ、安全を確認したジルは素早くリロードし、ドアから車外に身を乗り出す。
それとほぼ同時に、ケビンが車両へ飛び込んできた。彼女は慌てて道を開ける。
「ヘビは?」
「何とかなった」
「まさか、倒したの?」
ジルが薄闇にライトを走らせると、警官はハッと笑った。
「ゲームじゃあるまいし、そんなことする必要はねえよ」
闇の中でのたうりまわる緑色の巨体が見えた。苦しんでいるようだが、外傷はなさそうだ。
口を大きく開け、見えない何かと戦っているようにもがいている。
いや、よく見ると、口の中で光を反射しているものがある。
「思い付きだったが、案外うまくいくもんだな。あれでしばらくは周りを気にしてる余裕はないだろうよ」
鉄パイプだ。鉄パイプがヘビの上顎と下顎の間に直立し、つっかい棒となっている。
大蛇に四肢がない以上、あれを自力で取るのはほぼ不可能だ。
開いた時と同じ音を立て、扉が閉まった。電車はそれに連動して動きだし、徐々に加速していく。
ジルはヘビがこちらを追う気がないのを確認してから、ようやく安堵のため息をこぼした。
「おいおい、安心するのは早いぜ。行き先が安全だって保証はないんだからな」
「だとしても、一歩前進よ。あなたのおかげでね。洋館事件の時にあなたがいてくれれば、リチャードは……」
「止せよ。過去のことは事実でしかない。そこに“もしも”なんて存在しねえよ」
苦々しげにジルの言葉を制し、ケビンは不衛生なシートに腰を下ろす。
彼女に救えなかった命があるように、この男にも助けられなかった人はいる。
仮定の話をしたところで何の意味もない。後悔と願望が横たわるだけだ。
ジルにもそれはわかっている。わかってはいるが、そう簡単に割り切れるものではない。
「今俺たちがしなきゃなんねえのは、職務怠慢な警察署へのクレームだろ?」
「……そうね。ごめんなさい」
「それから、そこのお嬢さんを無事にジパングまでエスコートしなきゃな」
茶目っ気たっぷりにウィンクをするケビンに、ともえは仰々しく頭を下げた。
「ありがとう。このお礼はいつか必ず」
「ヒュー! そいつは楽しみだ」
制服の男が上機嫌に口笛を吹くと、着物の女はあっ、と声を上げ、
「夜に口笛を吹くとヘビが出るのよ」
「……もう出たでしょ」
ジルの呟きに二人は笑った。
【A-2/地下鉄/1日目夜中】
【ケビン・ライマン@バイオハザードアウトブレイク】
[状態]:身体的疲労(小) 、T-ウィルス感染中、手を洗ってない
[装備]:ケビン専用45オート(装弾数3/7)@バイオハザードシリーズ、日本刀、ハンドライト
[道具]:法執行官証票
[思考・状況]
基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。T-ウィルスに感染したままなら、最後ぐらい恰好つける。
1:警察署で街の情報を集める。
※T-ウィルス感染者です。時間経過、もしくは死亡後にゾンビ化する可能性があります。
※闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。
【ジル・バレンタイン@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
[状態]:健康
[装備]:M92Fカスタム"サムライエッジ2"(装弾数15/15)@バイオハザードシリーズ
[道具]:キーピック、M92(装弾数15/15)、ナイフ、地図、ハンドガンの弾(24/30)、携帯用救急キット、栄養ドリンク、ハンドライト
[思考・状況]
基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。
1:警察署で街の情報を集める。
※ケビンがT-ウィルスに感染していることを知っています。
※闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。
【太田ともえ@SIREN2】
[状態]:身体的・精神的疲労(小)
[装備]:髪飾り@SIRENシリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:夜見島に帰る。
1:ケビンたちに同行し、状況を調べる。
2:事態が穢れによるものであるならば、総領の娘としての使命を全うする。
※闇人の存在に対して、何かしら察知することができるかもしれません。
代理投下終わりです
ともえ天然w 和んだw
ヨーンに襲われて死者が出なかったのは僥倖だわ
でも地下鉄のはまだ人がいた様な…
>>242 応援どーもです!
こちらでもしたらばでも気軽に雑談してって下さいね。
>>243 いつも代理投下乙であります! 助かります。
まさに夢の共演って奴だな
怪物同士でも争いはあるのかね?だとしたら闇三角様とかネメシス屍人とか出てくるのか
漫画化とか映像化するべき良作になりそうな予感
>>254 映像化は言い過ぎだがw 良作にしていければいいなあ。
クリーチャー同士の戦いはある事はあるよ。
でもネメシス屍人とか闇三角さんとかは収拾つけられなくなりそうだからやらないと予想w
256 :
ゲーム好き名無しさん:2010/12/27(月) 14:52:16 ID:mxfLy7XV0
代理投下します
「サイレントヒル―――」
口をついて出た言葉に怪訝そうな顔を向ける人見の様子に、ダグラスには気付く余裕は無かった。
頭の中には、同行していた少女の身を案じるが故に生じる焦りが渦を巻いている。
既に、ここはサイレントヒルなのだ。
ダグラスもヘザーも教団の本拠地とも言えるサイレントヒルに取り込まれてしまったのだ。
だとしたらまずい。
ヘザーの姿が消えてしまっているこの状況は、最悪の展開へと向かい始めているのかもしれない。
すなわち、ヘザーは神の生贄に捧げられる為に、奴らに捕らえられた。
嫌な想像に気持ちが急き立てられる。
居ても立ってもいられなくなり、ダグラスは亀裂から目を離し足早に通りを引き返した。
いや、まだヘザーが捕らえられたとは限らない。限らないのだが――――。
何にしても、もたもたしている暇はない。
早くヘザーを見つけてやらねば、取り返しの付かない事になるのは確実なのだから。
「待って。どこへ行くの?」
人見が背後から声をかけてきた。慌てて走り寄る足音もする。
ダグラスは顔だけで後ろを振り返り、言った。
「ヘザーを捜す。彼女には危険が迫っているんだ」
「ヘザー? 危険ってどういうこと?」
「命の恩人に申し訳ないんだが、詳しく話している暇はないんだ。事は一刻を争う」
すぐ横まで追いついた人見が、ちょっと、とダグラスの左肩に手をかけた。
アジア人特有の小さなその手には大して力がこめられていた訳ではないのだが、
それだけでも負傷していた肩には痛みが走り、ダグラスは思わず足を止める。
事故が彼の身体に与えた影響は、思いの外小さくはないようだった。
「あなた本来なら病院で検査を受ける必要がある身体なのよ?
交通事故の衝撃はバカには出来ないわ。
どんなに小さな事故だって運悪く後遺症が残ってしまった人もいる。
今から人捜しなんて医者としてはとてもおすすめ出来ないわね。
それに連れの女の子、ヘザー? 捜すって言っても当てもないんでしょう? 無茶よ」
「……当てなら、3つ程ある」
「え?」
「だけど多分モーテルだ。ヘザーが無事なら、そこで俺を待ってるはずだ」
モーテル『ジャックス・イン』。
そこをサイレントヒルでの拠点とする事は、来るまでの間にヘザーと予め打ち合わせてあった。
ヘザーがもしもまだ教団に捕らわれていないのであれば、
そして彼女もまた、今のダグラスのように事故現場に戻れなくなってしまったのだとしたら、彼女の向かう先として一番可能性が高いのはそのモーテルだろう。
尤も、勝気な性格のあのヘザーなら残りの2つの当て――――ヴィンセントから聞いたレナードの家か病院に一人で向かう可能性も充分あるのだが、まあそちらは後回しだ。
「……あなた、このゴーストタウンがどこか知っているの?」
「ああ。昔一度だけだが、来たことがある。……このサイレントヒルにはな」
「サイレントヒル……? それ、ジョークのつもり?」
「ジョークなんかじゃない。ここは――――」
言葉を途中で止め、頭を振った。今はそんな説明をしている時間も惜しい。
どういうわけか睨むように目を吊り上げて返答を待っている人見に、ダグラスは再び背を向けた。
「いや…………もういいだろう?
あんたの職業倫理には反するかもしれんが、こっちも事情がある。
悪いけど行かせてもらうよ。ヘザーの命にも関わる事なんでな。
……助けてくれた事は感謝している。ありがとう」
ダグラスは殆ど見通しの効かない霧の中を進み始めた。
人見がまだ何かを言いたげな表情を向けていたが、今度は彼女も止めなかった。
人の命に関わると聞けば、止めるだけの言葉は思いつかなかったのだろう。
だが、それでいい。人見とは――――無関係な人間とは極力関わり合いにならない方が良いのだ。
自分がこれからする事は、イカれた教団との対決。
関わり合えば、危険に巻き込む事になる。
自分のせいで誰かを危険な目に合わせるのは、もう御免だった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(………………消えている、か)
赤く錆を纏い、いつ落下しても不思議の無い看板を掲げている寂れすぎたモーテルの前で、ハンクは屈み込んでいた。
地面に落とした視線と左手が探しているのは、追跡していた危険人物達が残していたはずの痕跡。
サイレンが鳴り、街が変貌するつい先程までは確かにこの場所に存在していたはずの痕跡だった。
相手が危険人物でも接触し、情報を得るか。それとも危険は極力避け、接触は回避するか。
ハンクが優先したのは『足跡の危険人物達』と接触し、情報を得る事だった。
とにかく現状は不明すぎる。
任務に入る前に事前情報として頭にインプットしたラクーンシティのデータは、どう都合良く解釈してみてもこの街と合致するものではない。
つまりはここはラクーンシティではないという事だけは分かるのだが、
下水道で自分が気絶した後、いったい何が起きたのか。
誰が何の為に自分をここに運び、置き去りにしたのか。
そして、この街は一体何処で、当然のように徘徊しているあの化け物共は何なのか。
肝心な事は何もかも不明であり、何一つとして一人では解明出来そうにはない。
それ故にハンクは多少の危険には目を瞑り、生存者と接触する選択をしたのだ。
視界に入るクリーチャー全てをやり過ごし、死角に居るクリーチャーの気配を敏感に感じ取り、
ハンクは何物にも気付かれぬよう慎重に痕跡を追跡した。そして辿り着いたのがこのモーテルだ。
二人組はまずモーテルの106号室へとまっすぐに向かい、そして立ち去っている。その痕跡も地面には微かに、しかし確かに残されていた。
この先も追跡は可能。そう判断を下したハンクだが、彼の脳裏には一つの疑問が過ぎっていた。
何故二人組は106号室を選んだのか。
痕跡を見るに、二人組は少しの迷いも見せず、初めから決めていたかの様に106号室へと向かっている。モーテルには幾つもの部屋があるにも関わらずだ。
そこには何か理由があるのか。
それとも深い考えなどは無く、目に付いた部屋に入っただけなのか。
もしも理由があるなら――――例えばその部屋を長期に渡り利用している、使い慣れている等だ――――部屋を調査する価値はあるかもしれない。
しかし、早めに生存者と接触しておきたいのもまた事実。
追跡を続行するか、部屋の調査をするか。ハンクが思案に沈み、しばし。
サイレンが鳴り響いたのはその最中だった。
砂の混じる地面に残されていた痕跡は、アスファルトごとグレーチングの踏板に差し替えられた。
この異常な現象が幻覚などではない事は、左手に伝わる金属の感触が教えてくれている。
何が起きているのか――――幾多の戦場を生き抜いてきたハンクの経験をもってしても理解が追いつかない。
だが、それでも彼の精神は揺るがなかった。
このような事態に陥いろうとも、ハンクの思考は平時と変わらぬ冷静さで、己に出来る事を導き出していく。
(痕跡が消えた以上、追跡は困難。ならば現状で出来る事は部屋の探索だな)
ハンクは立ち上がり、106と刻まれている扉のノブに手をかけた。
ゆっくりと開かれる錆び付いた扉は、悲鳴のような耳障りな音を辺りに響かせていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ダグラスはまだ痛みの残る身体を助手席のシートに委(ゆだ)ね、ドアガラスの向こう側を眺めていた。
辺りはまるで巨大なトンネルの中に入り込んでしまったかのような暗闇に変わってしまっている。
街灯や建造物の明かり。一つとして灯の灯らない道を照らしている唯一の光源はといえば、この車のハイ・ビームのライトのみだ。
すれ違う車は一台もない。街を出歩く人間とも出会わない。街の様相は、まさにゴーストタウンのそれ。
静かな観光地としての売りの一つだった景色も、これでは楽しめそうにもない。
いや――――むしろこれは観光地としては売りとなるのか。
世界各地を巡ってみたところで、こんな怪異をお目にかかれる場所は二つと無いのだ。
大々的に宣伝すれば観光客が殺到するのではないだろうか。ツアーコンダクターが化け物共で、お代が命という致命的な欠陥が改善されてくれるのならば、だが――――。
くだらない冗談を思いつき、ダグラスはちっとも面白くなさそうに鼻で笑う。
運転席の人見がチラリと視線を動かす気配を視界の隅で捉えたが、「何がおかしいの?」「何でもないんだ」互いにそんな些末な言葉を口に出す事はしなかった。
そう、ダグラスは今、人見の車に同乗している。
先程人見と別れたのはほんの一時的な事。歩き出して間もなく
後ろから車のエンジン音が響き、ダグラスの横に停車した。
ウィンドウを開けた人見の言い分はこうだった。
「怪我人から目を離すわけにはいかないから私も同行するわ。
そのヘザーって子も事故にあったのなら診てあげないといけないしね」
無論反対はしたが、人見の言う通りヘザーにも事故の影響が無いとは限らない。
いざという時、医者がついていてくれた方が何かと心強いのは確かだ。
結局、有無を言わせぬ人見の迫力と正論に屈したダグラスは彼女の言葉に従う事に決め、せめてこれから降りかかるであろう危険を理解してもらおうと、これまでの経緯を全て話す事にした。
初めの内こそ「探偵の職業倫理はどうしたの?」と笑顔で言葉に皮肉をこめる人見だったが――――。
「一時的な錯乱状態に――――」
「やっぱり精密検査の必要が――――」
「それとも、元々誇大妄想の癖が――――」
話を聞き終えた人見の反応は想像以上に冷たいものだった。
もしも途中で街が暗闇に包まれ、急激な変貌を遂げてくれなかったのなら、人見は今頃ダグラスを狂人か精神病患者として扱い、病院に送り届けていたことであろう。
生理的恐怖と圧迫感で精神を蝕むような、あのような怪奇現象に感謝をする時が来ようとは、流石にダグラスも思わなかった。
大した時間ではなかったはずだが、永遠に続くのではないかと錯覚すら覚えていた暗闇にやがて変化が訪れた。
一本の道路だけを照らし続けていたライトの中に、突き当たりの塀と分岐点が浮かび上がる。
漸くこの道路――――レンデル・ストリートの終点が見えたのだ。
「……この道を、左でいいのね?」
しばらくぶりに車内の気まずい沈黙が破られた。
街が変貌して以降、運転席の人見がまともに口を開くのは初めての事だった。
「……多分な」
「多分? モーテルまでの道は頭に叩き込んでるんじゃなかったの?」
「ああ、確かに叩き込んだ。このレンデル・ストリートの突き当たりがマンソン・ストリート。
そこを左に曲り北上すれば、やがてモーテルが見えてくる。地図の上では間違いなくそうだ」
刑事時代に捜査でこのサイレントヒルに来た時の記憶と、ヴィンセントにもらった地図(これはダグラスの車の中にある為、今は手元にはないが)を思い返しながら、ダグラスは言葉を紡ぐ。
来た回数こそ一度きりだが、その時は行方不明者の捜索という事でとにかく街中を調べ回ったのだ。
特に、宿泊施設やそこに至るまでの通りは優先的にチェックをした。その時の記憶は今も鮮明に残っている。
「だが、もうそんな地図に意味はない。さっきも言っただろう?
何故か分からないが以前とは街並みが変化しているんだ。
地図には載っていなかったはずの道路や施設まで当然のように存在している。
まるで神様が自分に都合の良いように街を作り替えたみたいにな。
だから、そこに見えている道がマンソン・ストリートだという確証も
左折した先にモーテルが残ってるなんて確証も、どこにも無いんだ。
……まあ、そうは言ってもここに留まっていても仕方がない。
結局は行くしかないんだがな……」
現実味の欠片も無い言葉を受けて、人見は再び黙り込んだ。
オカルトめいた話に異常とも言える嫌悪感を示した女医。
先程までの彼女ならば即座に反発したであろうダグラスの発言も、
実際に怪異を体験してしまった今となっては受け入れざるを得ないのだろう。
決して本意ではない事は、苛立ちを隠そうともしない表情を見れば良く分かるのだが。
誰も確認する者などいないだろうに、人見は律儀にウインカーを点灯させた。
車は左折し、再び代わり映えのしない暗闇を通り抜けるだけの退屈なドライブは続行される。そして――――。
どのくらいの距離を走行してきただろうか。
相変わらずの気まずさと沈黙の漂う車内でろくに見えもしない景色を眺めていたダグラスは、突然の急ブレーキを受けて前にのめりかけた。
身体に食い込むシートベルトの感触に顔をしかめながら運転席を見ると、
人見がこれまでの戸惑いが嘘のような精悍な顔付きで前を見据えていた。
「どうしたんだ、一体?」
「人が倒れてるわ」
視線と言葉につられて視認したフロントガラスの先。
ヘッドライトが照らしている路上に、人見の言う通り確かに人がうつ伏せに倒れていた。
(人……?)
その姿を見たダグラスに何か違和感が走った。
距離がある為に良くは分からないが、人間にしては何かがおかしい気がするのだ。
無意識に、ダグラスはコートのポケットに入れていた携帯ラジオと拳銃に手をかけていた。
倒れているのが人間ならば良い。だが、もしも怪物の類であったのなら――――。
ラジオをつければそれもはっきりとする。
ダグラスはスイッチを入れようとした。しかしそれよりも早く、ガチャリ、と運転席のドアが開く音が車内に響いた。
振り向けば、人見が車を降りようとしているところだった。
「生きてるかもしれない。助けないと」
「人見っ! 待つんだ!」
制止の声も虚しく、人見は暗闇へと降り立ってしまった。
即座にダグラスはラジオのスイッチを入れ、自身も助手席のドアを開いた。
杞憂であればいいんだが――――そのダグラスの思いを打ち消すかのように、ラジオからはあの独特のノイズが流れ出していた。
あの、怪物共を探知してくれる有難いノイズが。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
バカバカしい。あり得ない。
そのように、これまで一笑に付してきたオカルト現象が今、人見を嘲笑っていた。
世の中に科学で解明出来ない現象など無い。
オカルトに見える現象は全て観察者の無知や思い込みに寄るもの。
その己の信条が、この街では真っ向から否定されていた。
今でもオカルトを認めたくはない。認めるつもりはないのだが、
今回起きている現象は到底現在の科学では解明出来るはずもないし、
錯覚、或いは無知ゆえの愚かな判断などという言葉で切り捨てるには、規模が大き過ぎる。
これまで培ってきた科学の徒としての立ち位置が、足場から崩壊していくようだった。
そんな、今にも崩れ落ちそうな精神状態の中で見つけた、地に伏している一人の人物。
医者としての使命感を奮い立たせ――――いや或いは、ある種の逃避行動だったのかもしれない。
医療行為に集中している間は、人見が人見として居られる時間。悪夢のような現実の事は忘れられるのだから。
どちらにしても、人見はダグラスの制止を聞かずに車を降り、その人物に足早に近づいた。
それがこのサイレントヒルでは軽率な行動であることには、まだ、気付かずに。
「これは……もう……」
車外に出た人見をまず襲ったのは、強烈な臭気だった。
フラッシュバックするのは検死室。幾度となく体験している馴染み深い肉の腐り果てた臭い。
常人なら内臓を蹂躙され吐き気を誘発される程の腐臭が、辺り一面に漂っていた。
そして近づくにつれ、倒れている人物の状態が明確になっていく。
半袖のシャツはボロボロに破れ、裂け目から覗く身体や腕の組織は一目でも生者のものとは違う事が明らかだ。
「手遅れ、どころの話じゃないようね。死後何日も経過してるみたい」
そう伝えようと足を止めてダグラスを振り返り、人見は目を見開いた。
ダグラスがこちらに銃口を向けているのだ。
「ちょっと、何を――――」
「こっちに来るんだ。早くっ!」
人見の言葉に被せるようにダグラスが叫ぶのと、
人見のすぐ近くで何かが蠢く音が立つのはほぼ同時だった。
直後、ダグラスの持つ拳銃がパンッ、と軽い音を立てる。
「早くっ!」
ダグラスが何をしているのか。その人見の疑問に答えたのは、呻き声だった。
まるで陽気な鼻歌のようにも聞こえる呻き声が、死体の方から上がっている。
背筋に悪寒が走り、向き直す。そこには――――。
「っ?! そんな、生きてるなんて――――?!」
絶句するしかなかった。先程の『死体』が這いずる様に動いていたのだ。
やはり腐りきっている顔を人見に向け、垂れ落ちている眼球で人見を見据え、
ズリッ、ズリッと地面に擦れる身体が削り取れている事も意に介せず、『死体』は人見ににじり寄って来る。
放心し、立ち尽くす人見。それを庇うかのように、ダグラスが2度、3度と拳銃を連射した。
全てがこの『動く死体』に命中し、腐り切っている肉が着弾と共に爆ぜ、落ちる。
しかし、痛みなど感じていないのか、それでも『死体』は止まらない。
「どう……なってるのよ、これ?!」
「これも言っただろう? 怪物がうろついているんだ。この怪異の中にはな」
いつの間にかすぐ後ろまで来ていたダグラスが、強い力で人見の右腕を引っ張った。
『死体』と人見の間に立ち、もう数発を撃ち込む。それで漸く『死体』は完全に沈黙した。
「こんな……こんな事って…………」
「まあ実際体験してみない事には信じられんだろうさ。
だが、今はこれが現実だと認めるしかない。でなければ……っと、まずいな」
ダグラスの言葉を遮るように、ラジオからのノイズが強まり始めた。
確かダグラスは説明していた。これが、怪物の接近を予見してくれるのだと。
気付けば、暗闇の中から同じような呻き声が複数近づいてきていた。
今の『死体』のようなものが、集まってきているのだ。
「車に乗るんだ、人見! 運転は俺がする!」
現実味が全く無い。感覚が麻痺しているかのようだった。
頭を働かせる事も出来ず、人見はダグラスの言うままに助手席に乗り込んだ。
ヘッドライトの先に、ゆらり、ゆらりと身体を揺らして歩いて来る人影が現れる。
いや、前方だけではない。一体どこに潜んでいたのか、『死体』達は後ろからも、横からも出てきていた。車はいつの間にか囲まれていた。
「これじゃ……出せないじゃない!」
「いや、出せるさ」
ダグラスが構わずアクセルを踏み込んだ。
車は『死体』達を跳ね飛ばしながら包囲網を突き抜けていく。
ボンネットを転がり、フロントガラスにぶつかる『死体』達。
跳ね飛ばすごとに『死体』達の体液がガラスにこびりつき、視界が徐々に遮られる。
「大丈夫なの?」
「……多分、な。あいつで最後だろう」
言うやいなや、最後の『死体』が車に乗り上がり、後方に弾き飛ばされて行った。
それを見届けて人見は、このような状況にもいつの間にか違和感を感じていない自分に気付き、驚愕していた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
106号室の捜索では危険人物達の居た痕跡は多々見られたものの、
肝心の彼等の身元や行先の特定に繋がるような物は一つとして見つからなかった。
まず無関係ではあるだろうが念の為に、とモーテル内の別の部屋の調査にも取り掛かり、そして4つ目の部屋を調べている時だ。
外から、銃声が連続して鳴り響いた。
(先程とは別の銃声……ここに居た二人とは違う人物か?)
生存者との接触は、現状では最優先事項。
ハンクは躊躇いなく部屋の調査を切り上げ、表に出た。
既に銃声は止んでいる。しかし、方向の見当はついている。
自分が来た側の通りの先に眼を向けると、自動車のヘッドライトの光が見えた。
光の中にあるいくつもの人影を跳ね飛ばし、このモーテルの方向へと向かってくる。
(あの人影……車を避けようともしていない。……クリーチャー共か。
車の運転手は、蛇行も無く右側車線を通行。冷静な思考力を持つ正常な人間と判断する)
つまり、ゾンビになりかかっている人間ではない――――少なくとも、今なら。
接触する価値はあると踏み、ハンクは車の方面へと走る。
撥ね飛ばすクリーチャーもいなくなったようだ。車は速度を上げ、こちらに真っ直ぐ向かってくる。
しかし――突如車は向きを変えた。
タイヤの滑る甲高い音がハンクの耳にも届く。スリップだ。
完全にコントロールを失った自動車は、瞬く間に助手席側から塀に激突した。
同時に、白い何か――おそらくエアバッグ――が瞬間で車内に広がり、役目を終えると直ぐに萎んでいく。
(……なるほど、血脂か……)
ゾンビにせよ、先程ハンクが殺したクリーチャーにせよ、奴らには血液が流れていた。
車で轢き殺せば血脂がタイヤに付着する。そしてこのグレーチングの地面。
そんな車がスピードを上げてクリーチャー共を振り切ろうとすれば、タイヤが滑るのは当然とも言えるだろう。
(とにかく、無事を確かめなければな)
運転席のドアが開き、人が一人、覚束無い歩みで降りてきた。
一見ゾンビの歩みと大差無く見えるが、苦痛に歪む表情と痛む患部を自然と押さえる動作は、紛れもなく生者の証。
着衣のシルエットからして、おそらくは男性だ。
そんな彼に、自動車の後ろから1体のゾンビが歩み寄っていくのを見て、ハンクは全力で疾走する。
男性は運転席に半身を入れており、まだゾンビに気付いていない。
それどころか、助手席に居たらしい人物を車から出そうとしている様子だ。
(ふっ。ゾンビから市民を護るのは任務外なんだが……)
やや遠いが警告の意味合いもこめて、
ハンクは腰だめに構えたステアーのトリガーを、走りながら2回引いた。
ゾンビの眉間を狙ったはず銃弾は的を外し、顎に、頬骨に突き刺さる。
それでも生きる屍は、己の命を奪わんとする襲撃者には対処しようともせず、
永遠に満ちる事の無い食欲を満たそうと、ただ獲物に手を伸ばしていた。
「少し、卑し過ぎるな。ボーイ」
3度目の銃撃。
その時点でハンクは己の射程距離にゾンビを捉えていた。
ステアーから放たれた銃弾が狙い通りにゾンビの眉間を吹き飛ばし、生命活動を停止させる。
だが、喜んでいる暇はない。
後続のゾンビが4体。やはり獲物を食らうために迫ってきているからだ。
運転席に居た男が驚いたようにこちらを見る。初老の男性だった。
距離を保ちつつ、ハンクはモーテルで入手した懐中電灯で男性と車内を順に照らした。
眩しそうに手を翳す初老の男性と助手席の女性。
やはりゾンビ化が進んだ上での事故などではないらしい。
奴らならば光に反応して手を翳すなどといった動作は絶対にしないのだから。
助手席の女性は、事故の衝撃で少々意識が混濁しているようだが無理もない。
直接事故の衝撃が伝わったのだ。エアバッグがあったとしても影響は少なくないだろう。
「あんたは?」
初老の男性の尤もな質問を受け、答える代わりにハンクはステアーを目線の高さまで持ち上げた。
驚く男性を尻目に、迫っていた4体のゾンビの脳天に、正確に1発ずつだけ撃ち込み、ゾンビ共を物言わぬただの肉塊へと変えていく。
とても彼には似つかわしくない派手な挨拶を済ませると、漸くハンクは男性の質問に答えた。
「話は後だ。今は安全な場所まで逃げるぞ」
【C-5/住宅街/一日目夜】
【式部人見@流行り神】
[状態]:上半身に打ち身。
[装備]:特になし
[道具]:旅行用ショルダーバッグ、小物入れと財布 (パスポート、カード等) 筆記用具とノート、応急治療セット(消毒薬、ガーゼ、包帯、頭痛薬など)
[思考・状況]
基本行動方針:事態を解明し、この場所から出る。
1:怪奇現象……認めてなんて……
2:ダグラスは信用できそうだけど……
3:この人(ハンク)は一体?
【ダグラス・カートランド】
[状態]:打ち身と擦り傷。
[装備]:ベレッタM92(残弾 2/10)
[道具]:ベレッタの予備弾倉 (×1)、手帳と万年筆、ペンライト、財布(免許証など)、携帯ラジオ
[思考・状況]
基本行動方針:ヘザーを探す。同時にクローディアを止める。
1:ヘザーを探し、保護する。
2:人見の身の安全も守らなければならない。
3:こいつ(ハンク)は味方なのか?
【ハンク@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
[状態]:健康
[装備]:ステアーTMP(残弾23/30)、H&K VP70(残弾18/18)、コンバットナイフ
[道具]:ステアーTMPの予備弾倉×2、無線機、G-ウィルスのサンプル、懐中電灯
[思考・状況]
基本行動方針:この街を脱出し、サンプルを持ち帰る。
1:情報収集を優先し、状況を把握する。
2:現状では出来るだけ戦闘は回避する。
3:出来るなら、“ナイトホーク”と連絡を取る。
※足跡の人物(ヘザー)を危険人物と認識しました。
※モーテルの探索で得た道具や地図などを持っている可能性があります。
※C-5住宅街に事故を起こした人見のレンタカーが停車しています。
代理投下終了です
人見さんはこういう時にはその性格は損するぞ
ハンクはそう立ち回るのか…とりあえずは落ち着いてるけど…
しかしここは事故が多いなw
最近行事が多くロクに書き込めそうに無いのでアーカイブの内容を書きます
(主に武器系ですが)
9mm機関拳銃
1999年陸海空自衛隊で正式採用されたサブマシンガン
9mmパラペラム弾を使用、ハンドガンの弾を流用可能
発射速度1,185発/分、装弾数25発
おお! アーカイブ制作乙であります!
三沢の武器だと思ったら永井くんのかw
06式てき弾
陸上自衛隊で使用されている22mm小銃擲弾(ライフルグレネード)
の一つで小銃の銃口に取り付けて使用するタイプ
射程は凡そ250m〜350mこのグレネード弾を使用可能な小銃は
89式小銃・64式小銃・M4A1カービン等…大抵の自動小銃で使用可能
ほしゅほしゅ
274 :
ゲーム好き名無しさん:2011/01/08(土) 14:50:20 ID:dBdCNhdC0
代理投下します
<An Aggressive Thought/An Extraordinary Experience>
氷室邸に置いてあった薬品を服用した後、日野はその屋敷を出た。
武器や治療器具は持ち出していない。なかったわけではないのだが、どれも経年劣化が著しかったり、
眉唾だったりしたので、まともそうな薬を腹に入れただけで諦めることにした。
RPGと違って、持てる荷物や持ち続ける体力にはすぐ限界がくる。
ガラクタを抱えて疲れるより、身軽に行動できた方がマシというものだ。
薬のおかげか、痛みは随分と和らぎ、それほど苦しくはなくなった。
「万葉丸」と書かれたあれは、中々の効能のようだ。
(さて、これからどうしたものか)
このコンディションなら当初の目的――殺人も問題はないだろう。
武器が心もとないが、それほど困っているわけではない。
使い方さえ間違わなければ、アイスピックでも充分。
それに対象を探すついでに武器も探せばいいのだから、別に特別なことをする必要もない。
銃や剣が手に入れば先程の女も始末できるだろうか。あの場は態勢を整えるために離脱したが、諦めたわけではない。
チャンスがあれば、仕留めたいとは思っている。しかし、あれは不可解な挙動が多い。今の自分に足りないのは装備だけなのだろうか。
あるいは……。
日野が首を捻りながら歩いていると、雑貨屋(看板は英語だったがあっさりと読めた)のあたりで、
よろよろとこちらに近づく影があった。
暗闇の中に映える金髪は一見、欧米人のそれのようだったが、
顔立ちは東洋人で、どうやら少年のようだ。もっとも、日野にとってそんなことはどうでもいい。
目の前に贄が自分からやってきた――その事実だけで充分なのだ。
眼鏡の男は狡猾な笑みを浮かべ、手にしたアイスピックをくるくると回しながら背に隠す。
これは楽な狩りだ。心配するフリをして近づき、油断したところを一突き。それで一丁あがりだ。
徒党を組むことも一瞬考えたが、あんな状態では役に立つまい。役立たずを連れても足手まといなだけだ。
どちらにしても処分する必要がある。
「大丈夫かい?」
「来るな……。来ないでくれ……!」
親切気を多分に含ませた口調で、日野は下を向いている少年に駆け寄る。
しかし彼は露骨にそれを拒絶した。眼鏡の男はわずかに眉を動かしたが、
すぐに穏やかな笑みを顔に張り付ける。
「心配しないでいい。俺は味方だ」
胸中で自嘲しながら、日野は少年の足元に血が溜まっていることに気付いた。
どうやら口から垂れているらしい。
ここに来てすぐに襲われ、大ケガをした――そう考えるのが妥当だろう。
この人間不信もそれで説明がつく。
(好都合じゃないか)
虫を踏みつぶすようなものだ。自分の判断ひとつで目の前の命はたやすく消えてしまう。
今の自分は神のごとき絶対者なのだ。優越感で歪む表情を隠さずに、日野は接近する速度を上げる。
アイスピックを構え、狩りのための助走を行う。
赤い瞳が日野を捉える。そこには恐怖というより、逡巡があった。
抵抗すべきか、回避すべきか――そんな悩みだろう。
しかし無駄なことだ。もう何もできない。ここで自分に刺されて終わる人生なのだから。
狂人は高らかに笑い、目標へと疾駆する。
「来るな、来るんじゃ――う……うわぁぁぁぁぁあっっ!」
少年の絶叫。恐怖ゆえのものだろう。
最大級の快楽を感じつつ、日野は凶器を細い喉へと突き出す。
「…………あ?」
妙だ。距離は充分。それなのに針がまったく届いていない。
なぜだ。いや、それよりどうして足が動いていない。
というか下半身の感覚がまるでない。
どういうことだ。これはいったい……。
視線をゆっくりと落とす。そこでようやく理解する。
……なるほど、これでは動くはずもない。
奇妙なほど冷静な思考で、男は自身を貫くそれを眺めていた。
<Ruthless Reality>
違う。こんなの違う……!
少年――北条悟史は心のどこかでそう思いつつも、
自分の体を制することができなかった。
頭痛も吐血ももうない。思考はずいぶんクリアになっている。
しかしその代わりに、ある種の憎悪が渦巻いている。
人間への殺害衝動ともいうべきそれを今まで必死に抑えていたが、
今の襲撃でそれもできなくなった。殺人への嫌悪と忌避――そういったタガが外れ、凶暴な何かが目覚めてしまった。
腕を突き破るように現れた触手が、襲ってきた男性の腹部を貫くのをだまって見ていることしかできなかった。
「バケモノめ……!」
「すみません」
毒づく襲撃者に自分は詫びることしかできない。
ほかに手段を知らない。
「ぐ、が……」
「すみません」
もう片方の腕からも触手が伸び、相手の首に絡まる。
首の骨が潰れた感覚が腕に伝わる。
「すみません」
静止はできない。できることは謝罪と傍観のみ。
こうしている間にも罪悪感は薄れ、達成感が増している。
謝れるのもこれが最後だろう。
首が引き千切られ、背骨が露出する。赤い噴水が周囲を血で染めるのを、少年は大した感慨もなく見ていた。
抜き取られた頭蓋と脊柱が無残に大地を転がる。遅れて首から下が鈍い音を立てて倒れた。
役目を終えた触手は悟史へと戻り、傷つくことなくその腕と一体になった。
自分はもう人間ではない――。目の前の男に言われなくても、それは充分わかっていたことだ。
こんな体、常人のそれではない。もう、自分は“自分”ではないということだ。
普通ならパニックになるところなのだろうが、不思議なことに自分は落ち着いている。
これもこの能力によるものなのだろうか。
これからどうすればいいのだろう。これでは家に帰ることさえままならない。
いや、そんなことはこの際どうでもいいことだ。あんな家にそこまで価値があるわけではない。
重要なのは妹――沙都子の存在だ。
(沙都子……)
そうだ、やるべきことがあった。妹の無事を確認しなければならない。
沙都子が自分と同じような状況かもしれない。そうであるなら保護しなければ。
そうでないにしても、それを確かめる必要はある。あるいは自分をこんな風にした存在を排除するべきだ。
奴らが自分と近しい存在に手を出さないとは言い切れない。自分が元凶を断ち切れば、そうした危険も未然に防げる。
「探さなきゃ……」
仇と妹、対照的な二者を求め、少年は漂浪する。
【日野貞夫@学校であった怖い話 死亡】
プラーガには一般種と支配種と呼ばれる二種類が存在しており、
悟史に投与されたのは後者――オズムンド・サドラーと同種のプラーガ――だった。
幸か不幸か、それにより雛見沢症候群は抑制され、彼は自我を保っている。
しかしガナード特有の凶暴なまでの排他性があるのに変わりはない。
仮にすべてを解決したとしても、この少年に安息は訪れるのだろうか。
そして、自身の妹の現状を知ったとき、彼の信念はどうなるのか――。
今はまだ、誰も知らない。
代理投下終わりです
日野は結局サラマンダーかwww
みじめな死だねw
続いて二発目いきます
<retrospect>
鷹野が去ってしばらくした後、彼女が残した黒い箱が音もなく展開され、それは野に放たれた。
それに明確な意思はなく、ただ宿主を探し求める。
陽の光に脆弱な身を包むための器、あるいは鎧のような殻がそれには必要だった。
ズルリズルリ。ぬめりを纏いてそれは這う。強健な四肢どころか筋組織さえないそれの動きは遅い。
知らない場所をあてもなく腹這う。そのことに恐怖はあったのだろうか。いや、たとえ恐怖があったとしても、それには進むしか道はないのだ。
箱の中に居続けても、ただ朽ちるだけなのだから。
それに時間の感覚があるかどうかは定かではないが、移動してから数時間が経過した頃だった。
それのすぐ近くで交通事故が起きた。霧の中、覚束ない足取りの少年が自動車と衝突したのだ。
少年はどこかに撥ね飛ばされ、車は悲惨な有り様である。その衝撃で、車内にいた何人かが車外へと飛び出していた。
それから少しして男が一人やってきて、長髪の少女が車から降りる。それ以後は何の動きもなかった。おそらく無事なのは彼女だけだったのだろう。
二人は何か話していたようだが、ここまで聞こえてくることはなく、そのまま霧の中へ消えた。
接近する足音。それのそばにやってきたその人物は、どうやら事故の音を聞きつけたらしい。
『タダで旅行が出来るなんて私も運が良いわね……』
声から、その女性が自分をここに解き放った存在と同一だとそれは気付く。
しかしそんなことはどうでもいい。それはこの女性に寄生すべきかどうか考えたが、
矮小な現在の自分が彼女に抵抗された場合、どうすることもできないので諦めることにした。
踏みつぶされてはたまったものではないし、何も健康な個体が必要なわけではない。
起点となる苗床を確保し、肥大と増殖を行えればそれでいいのだ。
それは彼女に気付かれぬよう移動し、危険性から離れていく。
すでに目標は決めていた。先程の事故で地面を転がった金髪の少女。
位置的に近いのもあるが、体が小さいので侵食しやすいのだ。
これならこの容量でも再生にあまり手間はかからないだろう。
そう判断して、それは目的の少女に接触した。
こうして、それ――かつて女王ヒルと呼ばれたものは、少女――北条沙都子という宿主を手に入れた。
代理投下終わりです
女王ヒルはここから沙都子に取りついたのか…
因縁深い鷹野からこうなるとは…
281 :
ゲーム好き名無しさん:2011/01/11(火) 19:56:17 ID:u9mjIUFf0
代理投下します
建物の入り口に水を撒く男が一人。
何のことはない光景だ。ごく日常的な光景。
水を撒いている男が血涙を流し、水が撒かれるそのすぐそばに死体が転がっていること以外を除けば実に日常的だ。
死体が転がっていようが屍人は無造作に水を撒き続ける。
飛び散る水飛沫が死体にかかろうとも屍人には関係の無い事だ。
屍人は水を撒くだけ撒くとすぐにその場を後にした。
屍人が去り、死体ーー園崎魅音の死体が残される。
死体。生命の終わり。もう動きはしない肉の塊になってしまったモノ。
しかし、そう。この世界では死体になってハイ、お仕舞いとは限らない。
屍人が水を撒いてから何分が経っただろうか。
魅音の死体はーーー動き始めた。
魅音だったモノは、再び魅音として動き始める。
「あれ…私…。」
地面に倒れたままではあるが、活動を再開した脳で考える。
ーーー自分は走っていたはずだ。こんなところで倒れているわけにはいかない。
ーーまた走り出さなければ。
しかしどことなく体が重い。上半身を起こすので精一杯だ。
ーなぜ倒れていた?
倒れる前の記憶が無い。しかし非常に重要なことを忘れているような気がする。
必死に思い出そうとするが思い出すことができない。
思い出せないのなら仕方ない。
どちらにせよいつまでもこんな所に座り込んでいるわけにはいかない。
体が重いなどと言っている場合ではない。
時計塔に行かなければ。
「でも…なんでだっけ…。」
なぜ時計塔に行かなければならないのか。
わからない。
しかし行かなければならない。
思い出せはしないが、時計塔に行かなければいけないのだ。何としてでも。
立ち上がらなければ……。
魅音は立ち上がる。そしてすぐそばに銃が落ちていることに気付く。拾い上げる。
この物騒な世界で身を守る術はいくらあっても足りない。
狙い通りに撃つことなどできない。
それでも持っておけばいざというときにきっと役に立つだろう。
何より、この銃は大事にしなければならない。
やはり理由は思い出せないが、それでも持っているんだ。
見えない記憶がそう告げている。
慣れない銃の重みと、穴だらけの記憶の違和感に走りだせずにいた魅音のもとに、さっそくいざというときはやってきた。
先程水を撒いていた屍人が、巡回コースを回り終えスタート地点に戻ってきたのだ。
屍人は既に魅音の存在に気付いているようで一直線に進んでくる。
しかしその屍人が手にしているのは片手に桶。片手にに柄杓。
対する魅音は弾丸がフルに装填された銃。
ここが水上で相手が舟幽霊というのならばどうしようもないがここは陸上で、その上相手との距離も十分にある。
これ程有利な条件下では逃げる気も起きないというもの。
魅音は向かってくる屍人に銃を構え。
「この…!化け物が…近寄るなぁっ!」
引金を引く。
銃声が響く。
その音と同時に魅音の頭に一つの光景が映し出される。
「レナ…?」
飛び降りてきた化け物に踏み潰され、肉塊にされたレナ。
そのグロテスクな光景に頭が真っ白になり身体中から力が抜ける。力が抜け、腕が下がると手に持っていた銃が足にぶつかる。
その感触で現実に戻る。
屍人はまだ動いていた。どうやら弾は当たらなかったらしい。
幸いなことにまだ距離はある。
しかし一発目に比べ呼吸は乱れ、手は震えている。
それでも両手で銃を構え、再び引金を引く。
銃声が響くとまた違う光景が映し出される。
今度は男の後ろ姿だ。
何があったのか、段々と思い出してきた。
だが今はそれについて考えている場合ではない。
今の弾も外れてしまった。
屍人はどんどんと近づいてくる。
涙が溢れてくる。しかし手を止めるわけにはいかない。
三度引金を引く。
倒れる直前の光景が映し出される。
弾は屍人の脳天を貫いた。
脳天に弾を打ち込まれた屍人は悲鳴を上げながらその場に倒れ、数秒の間もがき…丸くなった。
丸くなった屍人はまだピクピクと動いてはいたが、再び立ち上がり襲い掛かってくる様子は無い。
だがもはや魅音にとってそんなことはどうでもいい。
三発の銃声で全てを思い出した。
服に穴が開いていること。
そしてその下にあるはずの傷口は既に塞がっている事を確認し、現実を認識する。
ーー自分は死んでしまったのだ。
一度死に、奴らの仲間。化け物として、復活してしまった。
わかっていた。目を覚ましたときに既にわかっていた。
ただ目を背け、意識しないようにしていたのだ。
服が血だらけでも、体が重くても、いつもと同じように目を覚ましたのだから、実は撃たれてなどいなかったのだと、ただ疲労によって倒れてしまい、そのまま寝てしまっただけなのだと、気のせいだと思い込み、記憶に蓋をした。
しかし意識してしまった。
一度意識してしまえばもう目を逸らすことはできない。
死んだというのに、起き上がってしまった。
それはつまり奴らと同じ化け物になるということ。
自分が化け物の仲間になってしまった。
レナを殺し、自分を殺した奴等の仲間に。
このどうしようもない現実に魅音の目には自然と涙が溢れる。
「こんなの…こんなのって…。」
いくら泣こうが生き返ることなどできない。レナが慰めてくれることもない。
ならば、泣いていても仕方がない。
魅音は一つの決意をする。
涙を指で払い、立ち上がり、魅音は呟く。
「今の私に…できることは…。」
払った涙は今はまだ屍人達のような血涙ではなく、純粋な人間のそれだった。
『今は』まだ…。
【E-2繁華街:一日目:夜中】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]身体的疲労(小)、精神的疲労(中)。
[装備]SIG-P226(残弾12/15)
[道具]ベレッタM92(残弾0/15)
[思考・状況]
基本行動方針:時計塔を目指す。
1:まずは地図を見つけないと…。
2:人がいたら助ける。
※屍人化が進んでいます。死亡すると屍人化します。
時間経過で屍人化が進行します。
代理投下終了です
タイトルは『たとえそれが損なわれていたとしても 』です
ここは死んでからがロワ本番だなw
魅音は屍人で復活か
屍人化は原作でも良く分からんところがあるから後で揉めるかもしれないが今後が気になるわ
は?
そうかなあ
スレ違い
代理投下します
懐中電灯を片手に長谷川ユカリが眺めているのは“2枚の用紙”だった。
ソファに座ったまま、用紙の表面を少々頼りない光源でゆっくりとなぞり、目線でその後を追う。
大学ノートを切り取ったものと見られるそれらの用紙に書かれているのは、
ユカリ達を含めた50人分程の人の名前と、殺し合えという馬鹿げた内容のルールだ。
幾度か名前を確認し直し、ルールを読み返す。そうして漸くユカリは顔を上げた。
「なんなのこれ……。ワケわかんないんだけど……」
それは、強がり。ユカリの声は微かに震えていた。状況は飲み込めているのだ。
言葉の中から隠し切れない不安が漏れている事は、彼女の側に居る2人の大人達、
ソファの前に置き直したチェストに座り無表情で煙草を燻らせている霧崎水明も、
ユカリの隣で長い足を組んで座り神妙な顔付きを見せているシビル・ベネットも、確かに感じ取っていた。
「確認するが、逸島チサトと岸井ミカ以外に、長谷川。あんたの知ってる名前は無いんだな?」
「無いよ。無いけどさ……」
懐中電灯3つだけの光量では、狭い部屋だとは言え充分に室内を照らす事は出来ていない。
薄暗さと煙草の煙でぼやけている水明の顔から荒れ果てている室内へと視線を移すと、ユカリは続けた。
「チサトもミカも1年だよ? 1年もこんなおかしな街にいたっていうの?」
ユカリが目覚めた後、水明とシビルはこれまでの経緯の殆どを彼女に話していた。
話は、既にサイレントヒルに到着しているという前置きに始まり、
事故で気を失ったユカリを現場から近くの骨董屋まで運んだ事。
かつてこのサイレントヒルで今回と同じような事件があった事。
現在のサイレントヒルでのルールが書かれた“用紙”が見つかった事。
そしてその“用紙”の信憑性――――水明、シビルの知人の名前が
その“用紙”に記載されているという説明で締めくくられ、
今はユカリにも名簿とルールの確認をしてもらっていたところだった。
ちなみにこの“用紙”は、実の所、骨董品屋内で見つけた“チラシ”ではない。
水明が本物のチラシに書かれていた文章を自前のノートに書き写したものだ。
本物の方の名簿には、いくつかの名前の上に赤い線が引かれていた。
或いは水明達の見ている最中に浮かび上がってきた。
それは嫌でも2人に赤い線が引かれた人物達の死を連想させ、
その中にユカリの友人『逸島チサト』の名前を見つけた時、
どちらからともなくこのチラシはユカリには見せない方が良いとの提案がなされたのだ。
ユカリの睨むような、それでいて泣き出しそうな視線は、水明とシビルを交互に移り渡った。
表情を曇らせて口篭るシビルは、助けを求めるかのように水明を見やる。
水明は2人の視線を真っ向から受け止め、煙草を深く吸い込むと、
煙をゆっくりと吐き出し、煙草の火を携帯用灰皿で消しながら口を開いた。
「シビル。あんた『神隠し』という言葉を聞いた事はあるかい?」
「神隠し?」
「……また始まった……」
オウム返しに呟き両手を上げ、知らないとも、知ってはいるが
質問の意図が分からないとも解釈の出来るポーズを取るシビル。
苛立ちを隠そうともせず、うんざりとした様子を見せるユカリ。
そんな2人の態度には構わず、水明は唇を少しなめると、学生達を相手にするかのように講義を始めた。
「『神隠し』とは人間が忽然と消息を絶ってしまう現象の事だ。
『鬼隠し』『天狗隠し』等といった別称もあるが、基本的には同じ現象を指している。
その現象の理由や原因としては、行方不明者は神域に迷いこんでしまった。
或いは山の神である天狗や、山姥等の妖怪に攫われ戻ってこれなくなった等、諸説があり、
いずれも人ならざる者の力によって引き起こされているといった共通点があるが、
具体的な事は一切不明だというのが実際のところだな。
こうした事例は日本に限らず世界各地に存在し、様々な形で語り継がれている」
「オジサン。あたしお勉強はもういいから――――」
「まあ聞け。――――さて、消息を絶った人間はその後どうなるか。これは大きく分けて2つ。
そのまま二度と発見されないか、ある日突然帰ってくるかだ。
発見されない例としては、メキシコで消えた作家『アンブローズ・ビアス』の話が有名だが、
まあこちらは今は然程重要じゃない」
そこで言葉を切ると、水明は新しい煙草を取り出し、咥えて火を点けた。
人を苛立たせようとも、彼は自身のペースは崩さないらしい。
「重要なのは、戻ってきた時の事例だ。
例えば1900年のオーストラリア、メルボルン。この出来事は映画にもなったんだが、
ハンギング・ロックという山にピクニックに行った女学生の内の数人が行方不明となった。
大規模な捜索が行われたにも関わらず少女達の手がかりは全く見つからなかったが、
事件から7日以上経過した時だ。行方不明者の1人が山中で発見された。
その少女は1週間以上飲まず食わずで山中をさ迷っていたはずだというのに、
衰弱した様子もなく、着衣や靴にも殆ど汚れがみられなかった。
少女は当然のように質問攻めにあったが、事件の間の事は何も思い出せなかったという……」
水明は顔を顰め、実に不機嫌そうに煙草を吸うと、灰皿に灰を落とした。
「江戸時代の書物『耳袋』には、こんな話が記されている。
ある夜「便所に行く」と言って部屋を出た男が、いつまで経っても戻ってこない。
心配になった女房が厠を見に行くと、男の姿は厠にはなく、何処を探しても見つからなかった。
男が再び発見されたのはそれから20年後だった。
ある日厠で人を呼ぶ声が聞こえてきたので行ってみると、
男が行方不明となった時の格好と少しも違わず、厠に座っていた。
女房は男に訳を聞いてみたが、やはり男にはこれまでの事を覚えている様子はなかった……」
話の中で時折、水明の手は何かを取ろうとするかの様に動いていた。
普段の講義での癖で、チョークでも握ろうとしていたのかもしれない。
「割と最近の話では、日本での事例がある。
1983年6月。中部地方のH村で分校に通う4人の小中学生が突如行方不明となった。
彼等の足取りは何一つ掴めずに事件は迷宮入りとなったが、2005年の5月、
その内の1人の少女だけが失踪当時と全く同じ姿、年齢で旧友たちの前に突然現れたんだ。
少女は自分よりも20歳も年を取った旧友たちの胸で泣きじゃくってはいたが、
例によって失踪中の記憶は抜け落ちていて、自分が何故泣いているかも分からないでいた……。
さて、ユカリ。これら3つの話には共通する点があるんだが、分かるか?」
唐突に話を振られたユカリは、思わず言葉に詰まっていた。
助け舟を出すように、水明に疑問をぶつけたのはシビルだ。
「……待って。2005年ってどういうこと?」
「どういうこと、とは?」
「そ、そうだよオジサン。今年は1997年じゃん。なに、やっぱりただの怪談話なわけ?」
ユカリの言葉に、シビルは怪訝そうな顔を向け、水明は興味深そうに頷いた。
大人2人の視線に些かの居心地の悪さを感じ、ユカリは仄かに赤面した顔で目を泳がせた。
「なるほど、97年か。だったらこっちの方が話は早そうだ」
水明は灰皿に煙草を置くと、自分の旅行バッグに手を突っ込み、中をまさぐった。
彼はあまり整理整頓を得意としていない性格だ。
例えば自身の研究室の机の上なども、教え子の間宮ゆうかが片付けてくれない限りは
資料やら何やらが乱雑に放置されている。当然バッグの中も同様なのだろう。
水明は懐中電灯で中を照らし、しばらく目的の物を探していた。
そして手を引き出した時、握っていたのは淡い臙脂(えんじ)のような色の小さな帳面。
それは日本国が発行しているパスポートだった。
身元の表記されているページを開くと水明は、それをシビル達に見えるように向けた。
「……200X年……?」
「ああ、そうだ。これは偽物でも玩具の類でもない。歴(れっき)とした本物さ。
ここに書かれている通り、俺は200X年の人間なんだ。
あんた達も何かしら身分証明の出来る物を持ってるだろう? 出してみてくれないか」
何でもない事のように説明する水明とは対照的に、シビルとユカリは唖然としていた。
2人は何度も水明のパスポートと彼の顔を見比べるが、不審な点は何も見つからない。
やがてユカリはバッグから紺色のパスポートを、シビルは制服のポケットから警察手帳を、
それぞれ取り出し、水明同様に開いてみせた。
「ほう、シビルは80年代の人間だったのか。
ユカリは…………写真写りが今一良くないな。上手く写るコツ、教えてやろうか?」
「やだ、ちょっと! 今そんなのどうでもいいし!」
「……みんな、時代が違う? でもどうして……? 前にはこんな事なかったのに……」
煙草を咥え直した水明は、やはり不機嫌そうな表情で煙を吸い込んだ。
そんなに不味いのなら吸わなければいいのに、とは彼を知る誰もが思う事であり、
それはつい先程出会ったシビルとユカリも例外ではなかった。
「話の順序が逆になったが、今俺が話した神隠しの事例の共通点とはこの事なんだ。
耳袋とH村の例ではどちらも失踪当時の姿で発見されているのだから言うまでもない。
ハンギングロックの例でも、発見された少女が1週間の時を飛び越えたのだと考えれば、
少女が衰弱していなかった理由も、着衣に汚れが見られなかった理由も説明がつく。
つまりこれらの場合神隠しの正体はタイムスリップ、或いはそれに近い現象だと考えられるのさ。
俺達がそれぞれ違う時代からこのサイレントヒルに迷い込んでいるのも、そういう事だろう」
「な、に……? じゃああたし、チサトよりも1こオバサンになっちゃったんだ」
それも、強がり。先程と同様に彼女の声は震えていた。
それでも、そこに篭る想いが喜びと希望である事は、徐々に強張りの溶けていく表情を見れば明らかだ。
観察でもするかの様にユカリを眺めていた水明は、いたずら心を込めて口端を吊り上げた。
「ちなみに、日本童話の浦島太郎。
あの話も視点を変えれば、主人公の浦島太郎は神隠しにあったと解釈出来るが――――。
良かったな。浦島太郎のように老ける前にはお友達を見つけられるぜ」
「……なんか、それムカつく」
素直になれない年相応の感情表現に水明もシビルも微笑ましさを覚えるが、
笑顔の裏に真実を隠す2人にとって、それは同時に痛みでもあった。
やはり彼女にはチラシの事は話せない。
同じ思いを確認するかの様に、水明とシビルの視線は自然と絡み合っていた。
そんな2人の様子には気付く事なくユカリは、彼女の中で新たに生じた疑問を口にした。
「でも、チサトから手紙が来たんだよ。
いなくなった直後のチサトがここにいるとしたら、手紙なんておかしくない?」
「手紙? ……それ、今持ってるなら見せてくれるか?」
「ちょっと待って。……あれ――――――――無い……?」
ユカリは自分のバッグの中を隅々まで探すが、チサトからの手紙は見つからなかった。
確かに入れていたはずなのだが、何処にも見つからない。
「マジ? …………落としたかな?」
「それは、本当に持ってたのかい?」
「うん……。ちゃんとここに入れといたんだけど……。
そうだ。ねえ、シビルさんにはさっき見せたよね? チサトの手紙」
「ユカリの友達の……? いえ、見てないわよ……?」
「え……嘘、でしょ? ほら、最初に会った時に見せたじゃん。友達が待ってるからって」
最初に出会った時、ユカリはシビルに手紙を見せた。その記憶ははっきりとある。
だがシビルは、やはり首を横に振った。ユカリに手紙を見せられたのは確かだが、
シビルの読んだそれは、ユカリの言っているような内容の物ではなかったはずなのだ。
狐につままれた気持ちというのはこういう事をいうのだろう。ユカリは目を丸くしていた。
「……手紙に書かれている内容は、長谷川だけにしか見えていなかったという事か……?
どうやら、それがこのサイレントヒルへの片道切符だったらしいな。
無論逸島チサト本人が書いた物ではなく、サイレントヒルからの贈り物といったところだろう。
……なるほど。暮らす時代が違うはずの俺達が、まだこの街には入っていなかったにも関わらず
一堂に集められたのも、もしかするとその手紙の力に招待されたせいなのかもしれない。
そして、手紙は役目を終えると自然と消滅した……」
「……なんだよ、それ……」
小さな呟きは、暗い室内に何とも言えない気まずさを残し、消えていった。
ユカリがサイレントヒルに来るきっかけとなったチサトからの手紙。
消息を絶ったはずのチサトが、ミカと一緒にサイレントヒルに居ると知らせてくれた手紙。
それを読んだ時、ユカリは素直に喜んだ。ホッとした。2人に会いたいと、切実に思った。
だからこそ、彼女は他の何よりもサイレントヒルに向かう事を優先し、ここまでやって来たのだ。
だというのにその手紙は偽物で、ここにユカリを呼び込む為の罠だったという。
馬鹿にされている――――ユカリはそう感じた。
友人達への想いを無下にされたようにしか思えず、ユカリはつい荒い声を上げていた。
「なんなの!? 何でこんなことに巻き込まれなきゃなんないの!?
サイレントヒルでも何でもいいよ! でもあたし達、何の関係ないじゃん!
それなのにどうしてこんなとこ呼ばれなくちゃなんないの?!」
憤りを顕にして頬を紅潮させるユカリに対し、
水明は、尤もな意見だな、とあくまでも冷静に受け答える。
そして、やはり冷静に言葉を紡いだ。
「確かにあんたの友人も俺の友人もこの街とは無縁だし、殺し合いにノミネートされる理由も無い。
だけど、こうして招かれてしまった以上はそうも言っていられないだろう?
怪異が始まってしまったこの街からは、そう簡単には出る事は出来ないらしいんだからな。
……まあ実際自分の目で確かめたわけじゃないんだが……そうなんだろ、シビル?」
「ええ。おそらくもう街の外への道は大岩や崖で塞がれてるでしょうね。
無関係の人間を巻き込むのは前の時もそうだったから、運が悪かったとしか言えないけど……」
シビルはユカリの肩に、優しく手を乗せた。
振り向いたユカリは、僅かにだが、目を充血させていた。
「ユカリ。あなたの不安な気持ちは分かるつもりよ。
あたしだって前の時、この街とは殆ど接点なんてなかった。なのにあんな目にあったんだから。
でもね、怒ってもチサトやミカは見つからないし、ここから出られるわけでもない。
キリサキの言う通り、嘆いていても何にも解決しないのよ。
……感情的になっちゃ駄目。冷静さを無くしてしまえば命取りになるわ。ここでは特にね……」
この異常事態の中、たった18の少女に感情的になるなという方が無理な話なのかもしれない。
だが、一度この街での怪異を生き延びた経験を持つシビルの言葉の重みは、充分ユカリに伝わってくれたようだ。
八つ当たりを恥じるかのように俯き、小さく「ごめんなさい」と呟くユカリ。
シビルは彼女を軽く抱き寄せて、頭を撫でるように抱きしめた。
同時に、ユカリの目からはこの1年堪えてきた感情がシビルの胸に流れ落ちた。
しばしの間、室内にはユカリのすすり泣く声だけが聞こえていた――――――――。
3本目の煙草を吸い終えた水明は、煙草の火を揉み消し、チェストから立ち上がると、
アイロンのかけられていない皺だらけのハンカチを取り出してユカリの膝の上に置いた。
泣く事で、多少気持ちの整理はつけられたらしい。
ユカリは腫れぼったい目で水明を見上げ、一言礼を言うと、ハンカチで顔を拭い始めた。
「…………さて、怪我人の長谷川には悪いんだが、そろそろ調査に移りたいと思う」
「……オジサンだって、怪我してるじゃん。……調査って?」
「勿論このサイレントヒル、そしてアレッサ・ギレスピーの調査だ。
以前シビルがやったように、俺達も今回の怪異の原因を解き明かさなければならない。
でないとその用紙に書かれているルールの通り、集められた50人が最後の1人になるまで
殺し合いをするハメになりかねないからな」
「……でも殺し合いだなんて、どうしてあのアレッサがこんな事……」
独り言のように、シビルは呟いた。
アレッサ・ギレスピー。
実の母親によって、文字通りの死ぬ程の苦しみを何年もの間味わわされ続けていた哀れな少女。
数奇な運命に見舞われた少女の痛ましい姿を思い出し、シビルの表情は悲しげなものに変わっていた。
「……まあ、まだアレッサが全ての元凶だと決まった訳じゃない。
アレッサの事を知らない俺と長谷川が彼女の姿を目撃している以上は
何らかの形で今回の事件に関わっている事は間違いないだろうが、
それは彼女の意思ではなく、何者かに利用されているだけという可能性もある」
「何者か? ……それって?」
「あんたの話から推測するなら、ダリア・ギレスピーや教団の関係者が妥当な所だろうな」
「教団……。でも、アレッサは生まれ変わってハリーに……」
そこまで口にして、シビルは気付いた。
赤ん坊となったアレッサが教団にさらわれた可能性は充分にあるという事に。
「まさか、また教団の手に落ちた……?」
「そうかもしれない。だが、考えられる事はもう1つあるぜ」
「もう1つ?」
立てられた水明の人差し指を見ながらシビルは手を口に当てて考えを巡らすが、
水明の言うもう1つの“考えられる事”には思い当たる事が何も無い。
考え込むシビルの解答を待たずに、水明は先を続けた。
「単純な事さ。オリジナルのアレッサ・ギレスピーは死んでいなかった」
一瞬、シビルは水明の発言を理解出来ず、ただ水明の顔を見返していた。
だがその意味に気付いた時、彼女は思わず立ち上がっていた。
「アレッサが、死んでなかった……!? そんなはず……」
「無いとは言い切れないはずだ。
あんたは赤ん坊を託されたハリーと共に崩れ行く異世界から脱出したと言ったな。
その時オリジナルのアレッサの最期を看取る余裕は無かったんじゃないか?」
あの時、シビルが朦朧とする意識の中で見たのは、アレッサが赤ん坊をハリーに託した姿。
そして脱出の際、あの超能力で異世界の崩壊を一時的に止めてくれた姿だ。
アレッサ自身は赤ん坊に転生した事で力を使い果たし、崩壊する異世界の中で死亡した。
そう思い込んで疑いもしなかったが、水明の言う通り、シビルはアレッサの死を確認してはいない。
実は生きていたという可能性も、充分にあり得る話なのだ。
「そもそも俺と長谷川が見たのは赤ん坊じゃない。10代くらいの少女だ。
それが本当にアレッサなのだとしたら、やはり関わっているのは転生した方じゃなく、
オリジナルの方だと考えるのが自然だろう?」
「じゃあ、アレッサはあの時からずっと……今も死ねずに苦しんでいるの……?」
「まあ、アレッサが生きているというのも単なる推測に過ぎない。
……だがその推測が当たっているなら、そういう事になるのかもな……」
未だに教団に捕らわれ、苦しみ続けているアレッサ。
その姿を想像したシビルの背中には、あまりのおぞましさに冷たいものが走っていた。
「繰り返すが、今言った事は全て推測だ。
当たっているかもしれないし、真相は全く別のところにあるのかもしれない。
どうあれ、これ以上の事はこの場で考えていても答えは得られない。実際に調べてみないとな。
……さて、そういう訳で調査に出向きたいところなんだが、
シビル。あんたアレッサと関係のありそうな場所は分かるか?」
「え? ……ええ。それならちょっとこれを見て」
シビルは自分のバッグから1つの冊子を取り出し、近くの棚の上に広げた。
その冊子――サイレントヒルの観光パンフレットのページをめくるシビルの手は、サイレントヒルの全体図が開かれたところで止まる。
シビルの隣に移動し、棚に寄りかかるように手を乗せる水明。
並ぶ2人の間から顔を出し、覗き込むユカリ。
全員が地図に注目したのを確認して、シビルは地図上で指を這わせた。
「まずあたし達の居る所はここ。街の北東にあるアンティークショップ。それで――――」
シビルは幾つかの施設の名称を上げた。
それらは全て前回アレッサと関わり深かった場所、
或いは自分やハリーがアレッサを見かけた場所だ、という旨の説明を加えて。
「――――で、その中でここから一番近い場所はここのアルケミラ病院ね。
……アレッサが何年間も閉じ込められていた場所よ。
今そこにアレッサがいるかどうか分からないけど……調べてみる価値はあると思うわ」
「そうだな。アレッサ・ギレスピーが今はそこに居ないとしても、
ハリー・メイソンが見たという残留思念の確認は出来るかもしれない。
……良し、じゃあまずは病院からだ。それからシビルが上げた場所を近い順に調べていこう」
やや高揚しているのか、水明の声のトーンは上がっていた。
それを聞き、眉根を寄せたのはこれまで黙って話を聞いていたユカリだ。
「ねえ、ちょっと待って。……チサト達……ううん、みんなの知り合いは探さないの?」
不安気な声が、室内に響いた。
ユカリにとっては、アレッサ・ギレスピーよりも友人達の安否を知る事の方が大切なのだが、
水明のプランは、調査を優先して知人の捜索はしないと暗に匂わせているようにユカリには聞こえた。
「……探したい気持ちはある」
「それって……探さないってこと?」
「現時点では、そうなるな」
どうして!? と、叫ぼうとするユカリだったが、
その雰囲気を察したのだろう。それより早くシビルが左手を翳し、ユカリの言葉を遮っていた。
「あたしもキリサキもユカリと同じよ。知り合いを探したい。
だけど、1つの街の中で誰かを探すという事は簡単じゃないわ。
例えばユカリの友達はどこかの家に隠れてるかもしれないでしょ?
そうするとあたし達は一軒一軒の住宅を虱潰しに捜索するしかないけど、
一軒をくまなく探すだけでも相当時間を費やすの。あたし達3人だけじゃとても手が回らないわ」
「だから俺達は捜索ではなく、この怪異を終わらせる為の行動を優先させるんだ。
怪異が終わりさえすればこの街は普通の街に戻る……これも前回はそうだったらしい。
そうすれば危険は無くなり、みんなを助ける事に繋がるだろう? 捜索はその後でも遅くはない」
「でも! その前に……死んじゃったら…………?」
「……残念ながらその可能性が無いとは言えないが、
街を捜索してみんなを見つけるのと、謎を解いて怪異を終わらせるのでは、
どちらが早いかは実際にやってみなければ分からない。
……仮に捜索をする事にして、みんなを見つけたとしよう。
しかし結局俺達はその時点でもこの街に捕らわれている。危険は続くというわけだ。
それなら、みんなの為にも早い所危険から逃れられる方に賭けた方が良いんじゃないか?」
理屈では、水明の言う事は尤もなのだろう。それはユカリも理解している。
それでもユカリの表情から不満気な、そして不安気な色が消えることはなかった。
水明はそんなユカリの顔をしばらく観察していたが、やがて口を開いた。
「……まあ、それはあくまでも現時点の話で、もしもこの先で信用出来る面子が集まるのなら
調査と捜索にチームを分けるつもりさ。その同時進行が一番効率の良い方法だろうからな。
だから、それまでの間は我慢してもらいたい。……どうだ?」
「……うん。分かった」
漸く頷いたユカリに、水明は微笑んで頷き返すと、包帯の巻かれたユカリの頭に軽く手を置いた。
「それじゃあ、行くとしようか」
「あ、その前にキリサキ」
何だ? と振り返る水明に、シビルはキーを見せた。
彼女の白バイのキーだ。
「病院に向かう前にバイクを取ってきたいの。悪いけど少し待っててくれる?」
「……バイクに乗って行くのか? だけどこの街の怪物は音に反応するんだろ?」
「それはそうだけど、サイドボックスに色々入れてるから、あった方が何かと便利なのよ。
大丈夫よ。バイクに追いつける程の怪物は居なかったし、襲われても轢き殺してやるから」
ふむ、と水明はしばし逡巡し、
怪物を呼び寄せる危険性があるのは確かだが、
実際に怪物と対峙した経験を持つシビルが言うのだから任せても良いのだろう。
そう結論付けた。
「なら、俺達も一緒に行こう」
「大した距離じゃないし、1人で良いわよ。
あなた達は一応怪我人なんだから少しでも休める時に休んでて」
そう言うとシビルは狭い室内をすり抜けるように移動し、出口へと向かった。
そして、ドアノブに手をかけようとして――――何かに気が付いたようにハッと顔を上げた。
「そうそう、一応これを預けておくわ。今はまだ使わずに済むと思うけど」
シビルはホルスターから拳銃を引き抜くと、銃身を握りグリップを水明に向ける。
22口径の10連装リボルバーだ。
「……俺は銃を撃った経験はないぜ。あんたが持っていた方が良い」
「22口径だから反動も軽いし、すぐに慣れるわよ。あたしのは別にあるし心配ないわ」
やや強引に、水明は銃を握らされた。
初めて持つ拳銃は、彼が想像していたよりも随分と重たく感じられた。
「引き金を引く時には相手をちゃんと見極めるのよ。撃つべきか否か。
間違ってもあたしを撃ったりしないでよ。いいわね?」
かつてハリーに伝えたものと同じアドバイスを言い終えると、
シビルはバッグからもう1丁の銃、SIG P226と、小さな箱を2つ取り出した。
銃を自身のホルスターに入れ、箱は水明へと差し出す。
「その銃の弾よ。これも持ってて。
それから――――大丈夫だとは思うけど、一応言っとくわね」
水明、ユカリを交互に見ると、
シビルは整った口元に少しの笑みも作らず、真面目くさった顔でこう言った。
「あなた達は……消えないでよ?」
以前ハリーがこの骨董屋の中で、それこそ神隠しにあったかのように消えてしまった事を思い出し、シビルは言った。
「あ、ああ」「は、はい」そう曖昧に頷く2人の反応を見て、ドアを開き、部屋を後にするシビル。
そんな彼女の事情を知らない2人は、シビルの言葉の真意を今一つ理解出来ずに顔を見合わせていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
骨董屋から白バイの置かれている路上までの道のりは、
幾つかの怪物の気配は感じられたものの、特に何事も起こらずに通過する事が出来た。
シビルはバイクにまたがり、少々の懸念、そして緊張と共にキーを回した。
白バイのエンジンはキュルキュルと音を立て、無事に起動する。
それを確認してシビルはホッと胸をなで下ろし、小さな笑みを浮かべた。
(良かった。前みたいに動かなかったらどうしようかと思ったわ)
前回のサイレントヒルでは、路上に放置されていた車の中には1台たりとも動いたものは無かった。
骨董屋を出てからその事を思い出し、自分のバイクにも同様の事が起こるのではないかとの不安が
頭から離れなかったのだが、シビルの懸念は取り越し苦労で済んでくれたようだ。
アクセルを回し、動作チェックを行うかのようにゆっくりとバイクを発進させる。
やはり問題は無い様子だ。そして、骨董屋の方角へと向きを変えた――――その時だった。
前方。ライトの光が届かず照らせない距離。その闇の中で、何かが動いたような気がした。
(何か、いる!?)
シビルは内心で焦燥を感じながら、目を凝らした。
確かに動くものがいる。何か巨大な塊のようなものが蠢いているように見える。
いや、塊に見えたのは一瞬の事。すぐにその認識は改められた。
人だ。前方にいるものは、人のシルエットをしていた。
2mは軽く超えており、常人とはとても思えぬ体格だが、
シルエットを見る限りそれは決して人である範疇を超えてはいない。
シビルは一瞬、声を掛けるべきかどうかを迷った。
前回とは違い、今サイレントヒルには50人の人間が集められている。
前方にいるのはその内の一人である可能性は否めないのだ。
だが、シビルの迷いは次の瞬間にあっさりと吹き飛ばされた。
『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!』
咆哮が響いた。
空気が揺れる程の、咆哮。
腹の底まで抉るような、咆哮。
それは、明確な殺意と怒気を孕んだ怒号だった。
「な、なによコイツ……!」
シビルがそう呟くのと、人影が走り出すのは同時だった。
瞬く間にヘッドライトの中に浮かび上がる、その姿。
視認した瞬間、理解した。こいつは決して人などではない。化け物だ。
警戒を怠っていたわけではない。だがこの化け物は予想以上に速過ぎた。
それなりに離れていたはずの距離を安々と潰し、シビル目掛けて一直線に突っ込んでくる。
シビルは慌ててホルスターの拳銃に手をかけようとした。
しかし、シビルの感覚が訴えかけている。
銃を取り出し、撃つよりも早く、化け物はシビルの下に到達してしまう、と。
シビルは拳銃を取り出したくなる衝動を必死に押さえこみ、
その代わりに右手首を僅かに捻り、アクセルを吹かした。
バイクに乗っている今、それは拳銃を取り出すよりも圧倒的に素早い攻撃動作だ。
化け物を弾き飛ばさんとする意思を込め、シビルのバイクは唸りを上げて加速した。
それでも臆せず、化け物は走り迫る。いや、そもそも化け物にそんな感情は無いのか。
互いの距離が0になる直前、シビルはフロントタイヤを高々と持ち上げた。
ウィリーで狙うは化け物の頭部。そして、激突――――――――――その直後。
「はっ!?」
シビルは一瞬焦燥と、そして驚愕に包まれた。
化け物がフロントタイヤを両手で掴み、バイクを真正面から受け止めたのだ。
それほどスピードが出ていなかった事が幸いし、シビルの身体が吹き飛ばされるまでには至らなかった。いや、或いはスピードさえ出ていれば、バイクを押さえられる事無く跳ね飛ばす事が出来たのかもしれないが。
どうあれ白バイ――――200kgを超えるハーレーの突進を受け止める化け物など、かつてのサイレントヒルには存在しなかったはず。
「あり得ないわ! なんなのよ、コイツはっ!?」
シビルのバイクは、ウィリーの状態で完全に固定されていた。
いくらアクセルを吹かそうとも、ビクともしない。
それどころか、化け物が徐々にバイクのパワーに押し勝ち始めていた
「冗談じゃないわよ!」
咄嗟にシビルは身体を捻り、左手を後ろ手に回し、右腰のホルスターに伸ばした。
2度、3度と指先がホルスターにぶつかり、押し負けつつある事と相まって焦燥がより増していくが、
4度目のチャレンジで留め金を外す事に成功。
グリップを掴みSIG P226を抜き取ると、迷わず化け物の顔面を目掛け乱射した。
『GUOOOOOOOOOOOO!』
銃弾が、化け物の顔面を削ぎ落としていく。
フロントタイヤを押さえる力が弱まった。
同時にシビルのバイクが派手にスタートを切り、化け物の顔面に駄目押しの一撃を直撃させ、すれ違った。
(これで、どう?!)
しかし――――――――バイクを一旦停止させ、期待を込めて振り返ったシビルが見たのは、
銃弾と200kgの体当たりを顔面に受け、それでも死ぬ事は愚か、
倒れる事すらなく、数歩よろめいただけに留まっている化け物の姿だった。
流石にこれにはシビルは戦慄した。銃撃にバイクでのアタックまでもが通じないのだとしたら、
今のこの時点ではこの化け物に勝つ手段が、彼女には無い。
化け物はゆっくりと振り向き、白濁した目でシビルを捉え――――
『INNN、VITEEEEEEEEEEEEEEEEEEED!!!!!』
一撃を食わされた事を恥じるかのような咆哮と共に、地面を蹴った。
だが一方のシビルは瞬時にアクセルを吹かし、数秒で化け物を暗闇の中へと置き去りにする。
そしてある程度の距離を稼ぐと、バイクをターンさせ、追ってきているはずの化け物の方向を見据えた。
(このまま戻るわけには……いかないわね)
シビルの走る方向には、水明、ユカリのいる骨董屋がある。これから調査に向かう病院がある。
この化け物がシビルを追いかけてくるというのなら、今彼等と合流する事は出来ない。
この化け物を撒くとしても、アルケミラ病院の方向で撒く事は彼等を危険に晒す事になる。
だとしたら、彼女のする事は1つだ。
シビルは左手に持つ銃を数発撃った。
彼女の今居る位置。ここからならば骨董屋の水明、ユカリにその音は確実に届くはずだ。
水明なら、彼女の意図に気付いてくれるはず。
出会ったばかりの民俗学者にメッセージを込めて、シビルは銃を撃った。
その銃声の余韻を掻き消すかのように、不気味な足音が近づいてくる。
シビルはそれを聞き、ブオンとエンジン音を立て、化け物の方へとバイクを走らせた。
間もなく化け物の姿が見えてくる。
化け物は殺気を振り撒き拳を振り上げるが、相手にする気はさらさらない。
振り下ろされる拳が接触するギリギリで、シビルは車体を倒し、スラローム走行で鮮やかに躱し、抜き去った。
(さあ、どうせついて来るんでしょ?)
読み通り、化け物は吠えながらシビルを追って駈け出してきた。
これで良い。これでとりあえず水明達をこの化け物の脅威から護ることは出来た。
後はつかず離れずの速度を保ってシビルを追わせ、適当な場所まで誘導した後で、その場に置き去りにするのだ。
「全く……とんだツーリングね!」
苦虫を噛み潰したような思いで、シビルは闇の中を突っ走っていった。
【E-1路上/一日目夜】
【シビル=ベネット@サイレントヒル】
[状態]健康
[装備]SIG P226(3/15)、白バイ
[道具]旅行者用バッグ(武器、食料など他不明)、警察手帳
[思考・状況]
基本行動方針:サイレントヒルにいる要救助者及び行方不明者の捜索
1:このままこの化け物(タイラント)を遠くまで誘導し、置き去りにする
2:その後、キリサキ、ユカリと合流
3:前回の原因である病院に行ってみる
4:怪物に襲われた場合、二人の安全を最優先とする
※名簿に載っている霧崎、ユカリの知人の名前を把握しました。
※白バイのサイドボックスに何か道具を入れています。
サイドボックスの大きさは白バイ標準サイズのものとは限りません。
【タイラント NEMESIS-T型(追跡者)第一形態】
[状態]:上半身と顔面に複数の銃創、軽度の火傷(回復中)。胸部に打撲。
[装備]:耐弾耐爆コート(損傷率58%)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:「呼ばれし者」の皆殺し
1:シビルを優先的に追跡、殺害する
2:それ以外の「呼ばれし者」と遭遇した場合、その場で殺害する
3:シビルと、それ以外の「呼ばれし者」を同時に発見した場合、シビルの殺害を優先
4:シビル殺害を完了し次第、新たなターゲットの探索に戻る
【備考】
※耐弾耐爆コートが完全損傷した段階で、本個体が完全破壊されて無い場合、第二形態へと移行します。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「オジサン、あれって……シビルさんだよね……?」
「…………まず間違いなくそうだろうな」
シビルを待つ間、骨董屋内で使えそうな物がないか調べていた水明とユカリの耳に、
外からバイクのエンジン音、そして大きな爆竹の様な音が連続して聞こえてきた。
タイミングからして、まずバイクに乗っているのはシビルだろう。
しかし、エンジン音は何故かこの骨董屋には向かって来ず、次第に遠ざかり聞こえなくなってしまった。
「……どうやら怪物と遭遇してしまったようだな……」
「それじゃ、助けに行かなくちゃ!」
慌てて外へ飛び出そうとするユカリの腕を、水明は咄嗟に掴んだ。
「落ち着け! シビルはここから離れて行ったんだ。
あんたはバイクに追いつけるつもりでいるのか?」
「でも――――」
振り返り、水明と視線を合わせたユカリは、思わず言葉を詰まらせた。
これまでどんな話をしようと殆ど表情を変える事のなかった水明が、
ユカリがたじろいでしまう程に険しい顔付きで睨んでいたのだ。
「おそらくシビルは怪物から俺達を守ろうとして、囮になってくれたんだ。
だったら俺達のやる事はシビルを助けに行く事じゃない。
シビルが怪物の気を引いている内に病院に向かう事だ。
助けに行きたいのは俺も同じだが……残念ながら俺達じゃ足手纏いにしかならんさ」
水明は、心から悔しそうに言葉を紡いでいた。
心から悔しそうに虚空を睨みつけていた。
感情を剥き出しにする水明を、ユカリはただ黙って見ている事しか出来なかった。
「とりあえず、しばらくは待ってみよう。
すぐに怪物を倒すか逃げ切るかして、戻ってくるかもしれないからな。
戻ってこない場合……この骨董屋内の探索が終わり次第、病院に向かう……それでいいな?」
「…………うん」
不安ばかりが場を支配している様な重い空気の中で、二人は探索を再開した。
シビルの無事を祈る気持ちを、沈黙に乗せて。
【E-1骨董屋店内/一日目夜】
【長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム】
[状態]精神疲労(中)、頭部と両腕を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)
[装備]懐中電灯
[道具]名簿とルールが書かれた用紙、ショルダーバッグ(パスポート、オカルト雑誌@トワイライトシンドローム、食料等、他不明)
[思考・状況]
基本行動方針:チサトとミカを連れて雛城へ帰る
1:とりあえずオジサン(霧崎)の指示に従う
2:シビルさん……
3:チサトとミカを探したい
※名簿に載っている霧崎、シビルの知人の名前を把握しました
※チサトからの手紙は消滅しました
【霧崎水明@流行り神】
[状態]精神疲労(中)、睡眠不足。頭部を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)。
[装備]10連装変則式マグナム(10/10)、懐中電灯
[道具]謎の土偶、紙に書かれたメトラトンの印章、サイレントヒルの観光パンフレット(地図付き)、自動車修理の工具、食料等、他不明
[思考・状況]
基本行動方針:純也と人見を探し出し、サイレントヒルの謎を解明する
1:しばらくシビルを待つ。その間骨董品屋内の探索し、使えそうな物があれば持っていく
2:シビルが戻らない、または名簿のシビルの名前に赤い線が浮かぶようであれば病院に向かう
3:本当にサイレントヒルから出られないのか、確認はしておきたい
4:人見と純也を見つけたら、共に『都市伝説:サイレントヒル』を解明する
5:そろそろ煙草を補充したい
※名簿に載っているシビル、ユカリの知人の名前を把握しました
※ユカリには骨董品屋で見つけた本物の名簿は隠してます
※水明、シビル、ユカリが把握している『病院』があるはずの場所には、『研究所』があります
代理投下終わりです。感想は後程
消えていた。
培養漕はに入れておいた『墮辰子の首』が、いつの間にか消え去っていた。
今、培養漕の中には何も存在していない。
いわゆる『もぬけの殻』というやつである。
此処に侵入してきた者はいない。
誰一人として、この部屋に置かれている『神』の肉体には近づいてはいない筈だ。
例え誰かがいたとしても、自分は培養漕のすぐ近くで『首』を見張っていたのだから、
そいつが『首』を取り出せるわけがない。
確かに、厳重に見張っていたのだ。
事実、培養漕から目を離した事は数回しかない。
(しかも、その『数回』もニ、三分程度のものである)
にも関わらず、首は何処かに行ってしまった。一瞬の内に、煙の様に消えてしまったのだ。
あの、高尚かつ神聖な、神の肉体が、無い、無い、無い、無い、無い、無い、無い、無い……!
へなへなと、地面に座り込んだ。
彼女の顔からは生気がほとんど抜き取られており、
真っ白な毛髪も合わさり、まるで『齢90〜100の老婆』の様である。
もう、絶望しか無かった。
儀式を行なう為に必要不可欠である『墮辰子の首』が、自らの手元を離れてしまったのである。
首が無い以上、秘祭を行なう事は出来ない。
――もう、どうしようもない。
支援
嗚呼――嗚呼!神よ!
何故このような仕打ちを受けなくてはならないのですか。
私はずっと、ずっと罪の許しを請いてきたではありませんか。
何年も、何十年も、何百年も、何千年も……。
それでも、まだ足りないというのですか?
さらに生き続けて、贄を捧げなくてはならないのですか?
それとも、そもそも私には楽園に行く資格が無いのですか?
最初から秘祭が何の意味を持たないものだと分かっていたのなら、
何故それをもっと早く教えて下さらなかったのですか?
嗚呼、なんて……なんて残酷な話なのだ!
せめて、私がそれを知っていたのなら……。
私に『資格』があったのなら……。
『資格』を得る権利さえあったのなら……!
――――『権利』?
ハッとなり、八尾は机に足を進める。
その机の上には、一枚の紙が置かれていた。
手に取って、血の様に赤い文字で紙に書きなぐられた文章に、目を向ける。
八尾の頭をよぎったのは一つの『予感』である。
――もしや、これは私自身が『試されている』のではないか?
――『神』そのものが、私が本当に『首』を手にする資格があるのか、試しているのでは?
――――――――――――――――――――――――
1. 殺 せ
この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること。
――――――――――――――――――――――――
最初これを見た時は、首を見張るのに夢中でよく考えてはいなかった。
だが、今ならこれの意味する事が理解できる。
周りには目もくれずに、『ルール』を一字一字、ゆっくりと読み進める。
そして、全ての文章に目を通した頃には――八尾の『予感』は『確信』へと変わっていた。
――――――――――――――――――――――――
4. ご 褒 美
最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。
――――――――――――――――――――――――
成程――そういう事だったのか。
全て、理解した。
これは首を手にする為に行なわなくてはならない闘争――すなわち『試練』。
『楽園』への切符を手にする為に必要な、乗り越えなくてはならない『儀式』なのだ。
殺し合い?
いいでしょう。乗ってあげますとも。
『神』がそれをお望みになるというのなら、
それで罪滅ぼしが出来るのなら、何人でも殺して差し上げましょう。
幸い、此処には武器があります。
これさえあれば、人間の息の根を止める事など容易いでしょう。
――『試練』を乗り越える為に、『神』が用意して下さった物に違いありません。
射殺、斬殺、撲殺、絞殺、爆殺、毒殺……。
もちろん、手段は選ぶつもりは毛頭ありません。
笑いながら、泣きながら、怒りながら、罵声を浴びせながら、
殺しましょう!
殺しましょう!
殺しましょう!
殺しましょう!
殺しましょう!
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し殺して殺して殺して――殺し尽くしましょう!
それが神が私に与えた『試練』なのだ!
神は与えて下さった『試練』――私は必ず乗り越えてみせる!
【D-3/研究所内部培養槽前/一日目夕刻】
【八尾比沙子@SIREN】
[状態]半不死身、健康、ハイ
[装備]武器(何なのかは不明)
[道具]ルールのチラシ
[思考・状況]
基本行動方針:神が提示した『殺し合い』という『試練』を乗り越える。
1:とりあえず、研究所から出る。
2:最後の一人となる。
3:出来れば、もう二度と須田恭也には会いたくない。
※須田恭也が呼ばれている事を知りません
大きな変動の時には、必ず立ち向かわなくてはならない『試練』がある。
『試練』には必ず「戦い」がある。
そして、戦いには必ず「流される血」がある。
『試練』は供え物。
立派であるほど良い。この世界にいる「呼ばれし者達」がそれだ。
誰が『楽園』への扉を開くのか。誰が幸せになるのかは、まだ分からない。
だが、一つだけ言える事があるとすれば――――『試練』は、流される血で終わる、という事だ。
■ ◆ ■
さて、首が何処に消えたのかは、それはまだ誰にも分からない。
もしかしたら既に別の時間の『八尾比沙子』に渡されたのかもしれないし、
本当に跡形もなく消えてしまったのかもしれない。
『墮辰子の首』がまだサイレントヒルにまだ存在している可能性も、否定する事は出来ないだろう。
可能性は無限。
それを支配する事は、誰にも許されない。
代理投下終了です
代理投下します
「アレを全て破棄しろだって?まったく無茶苦茶いうよなあの女は、いくら僕でも出来る事と出来ないことがあるよ・・・」
遊園地入り口にある土産物屋を物色しながら風間はブツブツと独り言を言っていた。教会で会った女の言っていた赤い物体だか水だかは入り口でいやというほど見たが湖いっぱいの水なんぞどうしたら消す事が出来るのか。
などと考えている内にお目当ての物を発見する。
「お!あったあった、これだよこれ。この大きさならなんとかなるかな。ま、僕の趣味じゃないけどしょうがないか」
――数分前
しばらく休んで冷静さを取り戻した彼は自らの獲物を他の(主に今自分がお近づきになりたい普通の人)が見たら多少不味い風貌である事に気づいた。化け物が縦横無尽に跋扈するこんな場所で相手に警戒されるという1ステップを省略出来ることはかなり有用に思える。
それにこの先両手にこんなに重いものを持ちながら移動してたら急に襲われた時対処しにくい、(宮本武蔵じゃあるまいに鉈と斧の二刀流など僕には出来っこないからね。持ち運び出来るバッグかなにかあればいいんだけどな、ブランドものの・・・)と、
風間は思いあたりふと背後の土産物屋に思い当たったのである。
それから入り口付近とはいえ遊園地にまた戻るかどうかという彼なりの葛藤があったのだが・・・・それはさておき開かなかったドアを斧で壊して入り込み、彼は狙い通り旅行鞄を手に入れたのだ。その他にも食料やお菓子、
日用品と何故かさも当然のようにぬいぐるみ置き場にあった
医療品も詰めれるだけ詰めた、
収穫は上々である。
「さて、どうするか。まずは、もしかしたら学生が誰か残ってるかもしれないし学校に行くとして。あとは・・・・」
なおも小声で呟いていると、何処からか。
コツーン、コツーン、と・・・・足音が聞こえてきた
ビクゥッ!!
風間は突然の足音に驚き咄嗟に身を隠した。
もしやまたあのウサギが来たのか?恐る恐る様子を見る・・・・・
「チェッ、なんだあの女か。関わるのも面倒だし、このまま様子を見るか」
内心恐怖に呑まれていた彼はほっと胸を撫で下ろす。
しかし何か様子がおかしい、女はとても苦しそうに腹を押さえているではないか。風間は怪訝に思いそっと後を追う。湖の薄明かりの恩恵もありかろうじて姿の判別出来る遊園地の門の影から見ていると突然ストンとあの女が座り込んだ。
やはり具合が悪かったらしい何か変なものでも食べたのだろう。
そこらに成ってるアケビとか。
“いいぞ、自業自得じゃないか!この僕に妙な事をした罰だと思え!”
そう思いながら気取られないように笑いを圧し殺し、尚も様子を見守る。
“お、誰か来たな。はは、また神の導きがどうたらとか言ってるよ。ん?もう一人いるな、バッグから何か・・・・”
タァーーーン!!
「え!?」
突然の銃声と光に思わず驚きの声を出してしまったため慌てて口を塞ぎ身を隠す、が、発砲した2人組には幸いにも気付かれていないようである。
一瞬の銃火の中見えたのはいかにもチンピラ風な黒髪の男としたり顔で人に向けて銃を撃つ金髪の女だった。もしや銀髪の女の方は不意討ちをくらって死んでしまったのかと耳をそばだてるもそれは杞憂に終わった。
憤りと悔しさを噛み殺したような声が聞こえてきたからだ。
「アレッサ・・・・いや、ヘザー・・・・ッ!また貴女なのね・・・・」
「いいえ、どちらも違うわ。確かに名簿にはそう書いてあるけど、私には父さんがつけてくれたシェリル・メイソンという歴とした名前があるもの。さ、立ちなさいクローディア。詳しい話は教会に着くまでにじっくり聞くから、さ、行くわよアベ」
そう言いながらシェリル(ヘザーかアレッサかもしれないが)と名乗った女はクローディアを銃口でつついて進ませ阿部と呼ばれた男と共に闇の中へと溶けていった・・・・
「こ、ここには殺人ウサギ以外にあんな騙し討ちする奴等もいるのか・・・・僕ら以外にも探せばいるもんだな、いやまてよ・・・・」
風間はチラシを取りだし、思考を始める。
あんなワケわからんおばはんでも(おそらく)顔見知りを容赦無く殺そうとする奴よりはもしかしたらかなりの当たりクジだったのかもしれない。いや、それどころか殺人が正当化されているこの場ではさっきのように人を気遣う素振りを
見せる奴の方がヤバイかもしれない。
―――例えばここに曰野が来ていたらどうだろう?きっとあいつは善人面して近寄って冷静に冷徹に獲物を暗殺しにかかるだろう。
・・・・まぁ意外とルールを読んでハイになってミスをするかもしれないが。
そういった人物を避け、ここから迅速に脱出するためには多少強引な方法でも安全確実に信頼出来る他人との関係を築かなければと――――
◆ ◎ ◇ ◎ ◆
【美浜奈保子】 サイレントヒル 雛城高校校庭
18時30分18秒
【美浜奈保子】 サイレントヒル 雛城高校校庭
18時30分19秒
【美浜奈保子】 サイレントヒル 雛城高校校庭
18時30分20秒
カチャ、カチャ・・・・
銃を撫でる音がする、愛でるように猟銃を構え眼下を狙う景色が見える。
はぁー、はぁー、ハッはハハはッ!
おぞましい笑い声が聞こえる、懐中電灯で足元を照らし虎視眈々と獲物を待ち構えているのだ。
ザッザザザザ―――
「チッ!!まったくどいつもこいつも・・・・」
そして彼女は、美浜奈保子はというと木の影に隠れその様子を彼らの視点から『視』ていた。
雛城高校のグラウンドは以外と広く流石の幻視といえど全景をつかむ事はできないが大体の配置はわかる。
まず玄関前は校舎から3〜3,5メートル程の幅がある高台でありそこから先はグラウンドより目測高さ1メートル、横幅1メートル程度の傾斜になっている。校舎中程の傾斜に階段が一つ、高台の傾斜手前には樹木が等間隔で植えてあり今自分が
隠れている場所は階段から見て左2つ目の場所だ。
あの村で見慣れた奴等は立ち止まっているのが高台の両端に1体づつ、片方がやたらゴテゴテしたハンドガン、
もう一方はアイロンを持っていてグラウンド、階段側、校舎横を順繰りに見ているようだ。3階の窓から狙撃しようと待ち構えているのが3体、これが厄介で2体は猟銃を持って左右近い方の仲間と階段を交互に
監視しているため階段を降りる事はできない。挙げ句の果てにもう一体は
“ロケットランチャー・・・・な、訳無いわよね?”
何かデカイ筒を担いで他の2体が見ていない階段から数えて左右三番目の木を見ている、が、
得物が重過ぎるのかやたらゆっくり振り向くわ不定期に先端を床に置くわでタイミングを計るのが面倒臭いったらない。
それとさっきの銃を乱射してきたのが今1階の探索を終え2階の階段を見つけたといったところか。
問題なのは狙撃手と、グラウンド−−−−−
・・・・・
「この視界はなに・・・・・?」
1つは謎の視界、いや謎の生物と言った方が正確か。
汚水の様に濁った幕か、さもなければ使用済み油を凝縮したゲルのようなモノで完全に視界が遮られている、
唯一解るのはすぐ下が床という事だけ。ここから推察するに光が無い場所でこれだけ見えるということは相当な夜目が利くということだが、はっきり言ってこの状態では全くの無意味である進化を中断して別のやり方を探したとでもいうのだろうか?
下水道が下を走っているのかと考えもしたが
それでは校庭全体そこら中にいる理由がわからない。
もう1つはトラックがトラックを走っている事・・・・・洒落ではない、というか洒落にならない。何故なら目を閉じているなら暗い画面が写るはずだがそれもない、肉眼で確認できる位置まで近づいて来るのだがどうしても見えない。
謎の生き物のせいで視界が合わせ難いからかもしれないが集中してもいるべき場所に何もいない・・・・
運転席に何もいないのだ。
不安要素とアンノウンしかない状況。しかしここにいても状況は悪くなるばかりだろう。ここは石を投げて銃を持っていない方に近い『生物』を刺激し、猟銃を持っている奴と右側の奴の注意を引き付けその間に中央階段から
トラックに飛び移り外に逃げだすのが無難か・・・・
と考えをまとめ、足元の石を拾ってさらにもう一度、丁寧に確認しておく。やはり1パターンの秒数を数えてみても中央突破の隙が見当たらない。生き物がどんなものかもわからないし乗り気ではないのだが木の影を利用しながら
少しずつ右端に近づいていった。
しかし突然好機はやって来た、なんと右側の屍人が勝手に校舎の裏手に引っ込んで行ったのである。うまい具合に右上の奴も異常に気がつきじっとそちらを窺っている。
後は石を引っ込めあくまでも慎重に元の位置に戻りタイミングを計りトラックの荷台に飛び乗るだけ
ザッザザザザ―――
今だ!!
彼女の作戦は成功し悠々とグラウンドを抜けていく、勿論身を屈め彼らから見えにくい位置に移動するのも忘れずに、虎視眈々と次の策を練り。
彼女は優雅にトラックから飛び降りて・・・・
拘束された。
ここは学校近くの民家、学校前で手足を縛られた女は不審者でも見るような目でこちらを見てくる。女性を拘束など通常ならほとんど有り得ないんだけど・・・・
と、このやたら胡散臭い男、風間望は思う。あんなものを見せられては仕方ない、女だろうと男だろうとまず縄で縛ってから話を聞くとそう決めていたのだから。
まず名前からか・・・先ずは真摯に話始める。
「あ〜君、さっきはいきなりすまなかったね。こんな状況だし用心したいんだ、分かってくれるね?僕の名前は風間望、君の名前は?」
「・・・・・」
ピクッ・・・眉間にシワがよる。疲労も相まって少しイラッとしたがまぁ持ち物はもらったし許してやる事にした。
「ははっ、おいおい。人の質問にはキチンと答えるもんだぞ?あと質問に質問で返すのもダメだ。ま、僕はそこらの凡々人よりも遥かに寛大だから許してやらない事もないけどね。
じゃあ次の質問、君はこのルールを知ってるか?」
「・・・・・知らないわよそんなの」
女は鼻息一つの後そっぽ向き不機嫌だということを主張する。
ピククッ!今度ははっきりと答えたのだが態度が気にくわない、
ただ彼女は見たところあのウサギの化け物ではない貴重な話が通じる人間なのだ、殺すのは惜しい。
それにこれくらいは覚悟して拘束したのだ大目に見てやるのが筋というものだ。と思いなおし
風間は話を続けるために女のバックを漁り始めた。
「……お、これはすごい!いいトライアングルじゃないか。ムムム、わかるわかるぞ。僕にはこれの……」
「私のバックに気安く触ってんじゃないわよこのクズ!」
ブチッ!場を盛り上げてやろうとしたのにこの言い方、風間は今にも浮き出た青筋が破裂しそうな顔を近づけ最後の、いや最期のチャンスを与えた。
「…君ねえ、ずいぶんじゃないかな?僕は、暴力に訴えるの嫌だからさ。穏便に話させてもらうけどさ。
君は自分の立場を分かっているのかい?僕のようなカッコマンが、君のような汚ならしい奴にこんなにも話しかけてやっているのに君はそんな態度をとって良いとでも思っているのかね?」
次は美浜奈保子がキレる番だった。それはなんだかヘラヘラとしたお調子者の雰囲気を持つ相手を縛らなきゃ話もできない小心者に汚ならしいと言われた事は屈辱の極みでという事もあったし、風間望という人間が
傲慢の権化であるように彼女もまた自分を中心に世界が回っていなければ
生きていられない人種だからという事ある。しかし何よりももはや
正常な考えを持てないほどに赤い水の進行が進んでいた事が大きかった。
「アンタみたいなやることの汚い奴に汚ないとか言われたくないわよ!このクソガキが!!」
唾を吐きかけ顔を蹴飛ばしてやれば少しは反省するだろう、と甘く見ていたのが運のつき。唾は当たった、
しかし蹴りは思い切り床に叩きつけられてしまう事となる。見上げた時に見た顔は、さっきまで惚けた顔をしていた男とは思えぬほどに恐ろしく冷徹、怒りを通り越したという事を表す体の震え、侮蔑と殺意に満ちた表情、例えるならば貴族がこじきを見るような顔に近い。
ポケットティッシュで唾を拭き取り、風間は口を開いた
「ははは………僕でもね、限度というものがある。それに僕は紳士だからね、だからもうそろそろ………
期待(リクエスト)に応えてやるよ」
言うが早いか恐怖を感じる間もなくゴシャ、という鈍い音と共に奈保子の顔面に靴底がめり込む
「な゙・・・んで、こどずん・・・・・!」
鼻血が溢れうまく喋る事ができない、が、止めようと思っても手は縛られているためだらしなく垂れ流し続けるしかなかった。そして流れて行く血と同じ様に彼も待ってはくれない、髪を掴んで顔を上げさせなおも詰め寄る。
「嬉しそうにわめいて………そんなに殴られたかったのかい?案外君って変な趣味持ってるじゃない、そんな下衆をお供にするつもりはないからさ、せめて付き合ってくれた例をしてやるよ。ほらっ!これでっ!どうだい!?ほらっ!!」
何度も何度も足蹴にされたお陰で肌は血で濡れ、骨は軋んでガタガタ、あれほど高くそびえたプライドもポッキリと折れ、ここまで来ると次第に自分はこれから死ぬのだという思いがボンヤリと頭の中に現れる事となる。そこで彼女は願いを言った。
「かをは・・・顔は止へへお願ひでふか・・・は・・・」
彼女が、女優として最期に願ったもの。それは最低限顔の原形を留めて死ぬこと、それはこの場に着いた当初よりも遥かに見劣りする願いであったが
絶望で濁ってしまったその瞳の奥は心なしか以前より純粋になっているようでもある。
「へーそう、顔はやられたくないのかね?よっぽどナルシストなんだなぁ。ほれ、顔を拭いてやるからありがたく思いたまえ」
さっきの唾付きティッシュで顔を拭かれる普段なら憤死しそうなことであるが今はもうそれでいい、
これはきっと自らの美貌が守られるという事に違いないのだから。
しかし現実は非情である。
「さて、じゃあさっさとその不細工な頭を綺麗な輪切りにしてやらなきゃな。止めてほしかったらそうだな、これを降り下ろす間に100回ほど謝れたら許してやるよ」
風間はニヤニヤ笑いながら斧を持ち出し首を足で押さえてきた。たった今宣言された事に恐怖しながら振り向く奈保子に深呼吸しながら真顔で言い放つ。
「光栄に思いたまえ…………僕に殺されることを光栄に思いたまえよ!!ア゙ァー!?」
喉を押さえられているせいでまともな声は出ないが必死に赦しを叫んだが100もの懺悔を一瞬で片付ける事はどれ程足掻いても出来るものではない。
だが――――
「止めろ犯罪者め!!」
「ぐえっ!!何をする!!」
祈りは届いた。
顔が粉微塵に潰されるよりも前に人が来てくれた。
「アンタ!大丈夫か!?」
暖かい声が聞こえる、前を向いた奈保子は霞んだ視界の中にあるものを捉えにじんだ思考を始めた。
スポットライトだ!スポットライトのひかりだ!ひかりがわたしにむかっている!わかった!わかったわ!がんばってあやまる!あぁそれにしても
あぁ・・・・きれい・・・・
◇ ■ ◇ ■ ◇
「駄目だ、死んじまったよ」
「・・・・・そうか」
現れた2人の男、ジムとハリーは風間達と同様近場の家で情報交換していたのだが外から罵声が聞こえてきたため駆けつけたのだった。ジムはライトを女性へ向け生死を確認していたが結果的に首を横に振った。
風間はハリーが後ろ手に拘束しているため苦しそうである。
「く……苦しい。離してくれよ。死んじまうだろ?」
いつものハリーなら人に暴力を振るう事などしないだろう、だが今は目の前の男に思い付く限りの汚い言葉を投げ掛け、泣くまで殴ってやりたかった。
「貴様のような奴のせいで娘は・・・・!」
「ぐえっ!痛い!このド……!顔は止めてくれよ!!」
思いの外早く泣いたので余った時間で娘の事を聞こうとしたのだが後ろから声で中断されることとなる。
「ウッ!?こ・・・・これは」
「どうし・・・・!?」
ハリーが振り返るとさっき死んだはずの女性が血涙を流しながら謝り続けているではないか。風間はこれ幸いと状況を好転させるべくハッタリをかますことにした。
「そう!実は僕は霊視の能力を持っていたんだ!そいつは今ようやく本性を表したのさ、ははっ!」
しかし状況はより悪くなったと言わざるを得ない。ジムはすっくと立ち上がりどこか悲しげな憤怒の形相でこちらに近づいてくる。
「ハリー退いてくれ!そいつは俺様がぶち殺してやる!!」
「ええっ!?」
しかしハリーは退かなかった。諭すように少し厳しめに言う。
「気持ちは解るが落ち着くんだ。君までこいつと同じになってしまう」
「けど・・・・けどよぉ・・・・・」
ジムは少しの間悔しそうにうつむいていたが暫くすると
「クソッタレ・・・・」
と言いながら元の位置へ戻りリビングデッドと化してしまった女性へライトを向け、感慨無量な面持ちで彼女の目の前に座り込んだ。
彼はウィルスの影響で刻々と化け物への変身を余儀なくされているのだという。きっと彼女と自分を重ね合わせているのだろう、怒るのも無理はない。
そして私もまだ完璧には化け物にはなっていない理性ある生者を殺ろすような極悪非道な人間もこの町に居合わせているのかと思うと娘の事で胸が痛くなった。
こんな青年に出会っていてほしくないが一応尋ねてみようか。
「なんなんだよまったく……」
などとブツブツ言っている青年の腕を一層締め上げる。
「・・・・君は私の娘に会ったか?黒髪でチェックの服を着た小さな可愛らしい女の子なんだが」
「し……知らないよ!此処に来てから会ったのはクローディアとかいうばあさんとチンピラとヘザーだかアレッサだかシェリル・メイソンだか分からん奴だけで他には……」
「シェリル!?シェリルだって!?」
「ハッハァ!ビンゴだな!」
いつの間にか中腰の体勢で背後にいたジムがバシィッ!と私の背中を叩く。いきなり背中を叩かれた事にもビックリしたが何よりも驚いたのは立ち直りの早さだ。
あの様子では後暫くは落ち込んだままかと思ったのに。
「・・・・もういいのか?」
「チームのムードメーカーが何時までも暗い顔してちゃマズイだろ?それにこの野郎のバックから見つけた地図に研究所って書いてあってよ、
もしかすると抗ウィルス剤が手に入るかもしれねぇんだ!」
嬉しそうに語ってはいるがどこか辛そうにも見える、何はともあれシェリルの行き先をこの青年に聞かねばなるまい。
「シェリルは何処に行くと言っていた?」
「………教会って言ってたけど、本当にアレが君の娘かい?どう見ても特徴が一致しなかったと思うんだけどな」
「確かに別人かもしれない、だが私が娘につけたシェリル・メイソンという名前は、この世に2つと無い誇り高い名前だ。偽物だとしても
そいつが本物のシェリルの居場所を知っているかもしれない。
立つんだ。詳しい話は教会に着くまでにじっくり聞く、行こうジム」
後ろから銃を突きつけられながら、風間は思った。
(絶対親子だ!!前に似たような台詞聞いたぞちくしょう!!でも考えようによっては護衛が二人ついたって事かな?ははっ・・・・
流石、僕はついているなぁ・・・・)
「はぁ……栄養ドリンク、もらってもいいかい?僕は疲れてしまったからね。捕虜になってやってるんだからそれくらいしてくれても構わないと思うんだ」
「確か学校前にバスがあったはずだよな?あれで行こうぜ」
「そうだな、その方が早いだろう。他の車と同じようにドアが壊れて無ければいいが・・・・・」
玄関から出る時あるものを見つけ、私はふと立ち止まった。メモ帳だ。これに何か書いておけばもしも私がシェリルと出会えなかったとき、ひょっとして誰かが
探して保護してくれるかもしれない。結びの一文は、そうだな・・・・・
「・・・・ジム、すまないが少しの間彼を見張っていてくれないか?」
―――いつか誰かの目にとまるかもしれない。今までの奇妙な出来事をここに書き記しておこう―――
【A-3雛城高校周辺/一日目夜】
【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
[状態]:強い疲労、風間への怒り
[装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾4)、懐中電灯、コイン
[道具]:グリーンハーブ:1、地図(ルールの記述無し)、
旅行者用鞄(鉈、薪割り斧、食料、ビーフジャーキー:2、栄養剤:5、レッドハーブ:2、アンプル:1、その他日用品等)
[思考・状況]
基本行動方針:デイライトを手に入れ今度こそ脱出
1:教会まではハリーと一緒に行く
2:その後できるだけ早く研究所へ行く
3:死にたくねえ。
※コインで「表」を出しました。クリティカル率が15%アップしています。
※T-ウィルス感染者です。時間経過、死亡でゾンビ化する可能性があります。
【ハリー・メイソン@サイレントヒル】
[状態]健康、強い焦り
[装備]ハンドガン(装弾数10/15)
[道具]ハンドガンの弾:34、栄養剤:3、携帯用救急セット:1、ポケットラジオ、ライト、調理用ナイフ、犬の鍵、
奈保子のウエストポーチ(志村晃の狩猟免許証、羽生田トライアングル、救急救命袋、応急手当セット)
[思考・状況]
基本行動方針:シェリルを探しだす
1:教会にシェリルの手がかりが!
2:青年(風間)から話を聞く
3:他にも機会があれば筆跡を残す
※サイレントヒルにシェリルがいると思っています
【風間望@学校であった怖い話】
[状態]:数箇所を負傷、かなり疲労
[装備]:制服
[道具]:ルールの書かれたチラシ、ティッシュ
[思考・状況]
基本行動方針:脱出方法を模索する。
1:とりあえず結果オーライかな?
2:他の人間を脱出に利用する。
3:邪魔者は排除する
4:“赤い物体”については、とりあえず記憶に留めておく程度
5:遊園地には二度と行きたくない
【美浜奈保子@SIREN 死亡】
※高校のグラウンド内に弧狸理の札で動く車@流行り神が走っています
※美浜奈保子(屍人)がビル内に放置されています
※セーブしました、美浜奈保子(屍人)のいる家の玄関にメモ帳が置いてありドアは開け放たれています
代理投下終わりです。感想はのちほど
代理投下します
白と呼ぶには汚れすぎた毛皮に漆黒の外套、それは一時思考に耽っていたが結局愛しき主を追う事に決めた。あの恐ろしい人の殻を被った悪魔を追いかけて、
もし倒せたとしてもその後少女をまた見つけられるとは限らないからだ、
いくらこの殻が通常よりも高水準のモノであっても過信は禁物なのだ。
何はともあれ同胞を食らった事で嗅覚、聴覚共に良好匂いからするとどうやらこの先を右手へ行けばいるはず。
心踊らせついに十字路まで辿り着くも後一歩、右へ曲がりさえすればまだ結果は違ったかもしれないが
しかし最悪のタイミングでアレはやって来た
化物の音はやって来た――――――
ウオオォォオオォォ・・・・・・・・・・
キャイン!
という力無い鳴き声と共にその場に倒れ七転八倒する。
この音、サイレンの音には懐かしさすら感じるほど聞き慣れたものだが問題はこの臭いの方。血で錆びた鉄のような工業廃棄物を詰め合わせたようなどう表現したら良いか考えることすら許されないような酷い悪臭を嗅いでしまった。
普通にしていれば気分が悪くなる程度でなにも倒れはしないだろうが
丁度臭いの元である地面に顔を近づけて匂いと
僅かな埃についた足跡を追跡しようとしていたのが不味かった。
もう少しで泡を吹いて気絶しそうなところだったがなんとか耐えて辺りを見回す。
・・・・・・・・・・。
どちらを向いていたかわからない・・・・・。
向きを変えすぎてどっちが来た道でどちらが向かう道なのか判別できなくなっていた。
周囲の風景も先程とはまるで違う風景である。まだ悪臭が頭に響いているおかげで正確に幻視を使いこなす自信もなく
早くしなければ逃げられるかもしれないという焦りから、あまり考えず犬は直進した。
―――――――――
なんとか頭痛も収まった頃、犬は再度あの小屋の残骸と対面する事となり途方に暮れていた。
来た道を戻ろうとしたその時、前方から気配を感じすぐさま幻視を始める。
いた――――。
少し濁った視界であるが一応見える、その周囲に更に2体、合わせて3体の化物を確認。
漁師とも我々とも違う未知の生命だと犬は思った。それと同時に言い様の無い違和感に襲われもしたのだが次の光景を見たとき、その思考は立ち消える事となる。それらは角を左へつまり自らの進行方向へ進んだ、
しかししばらくすると前にいた一体の首が爆ぜ、二体目も倒れ、
そして視界は暗転した。何が起こったのか確認するため襲撃者の目を探すと――――
見えたのは自分だ、自分が見える。
この濃霧の中どうしてこんなにも鮮明に見えるのかは謎だ、だが十字の線が、その中心にある自らの脳が、
今までの殻では無かった『野性的な感覚』の強烈な危険信号を受信し勝手に体を動かした。直後、着弾の音と共に金網が弾け狙撃されたのだとわかる、
頬の傷口を前足で拭いつつ物陰に隠れながら犬は歯を食い縛りながらもう一度視界を移す
支援
すると狙撃者は唇に人差し指を当て何か言っているようだ・・・・・
「うーん、中国には犬料理があるらしいけど、美味しいのかなぁ、作った事無いから自信無いけど悟史君が喜んでくれるならいいかぁグゲッケケケケ!!」
料理?・・・・まさか私を調理するというのかこの殻は!?
「どっちにしろ私の弾を避けやがったワンちゃんにはお仕置きが必要だからねぇ!
オジサンが頭にしこたまブチ込んでやるから覚悟しなよぉ!!グギャギャギャギャ!!」
も、もはや口調すら定まっちゃいない。
同族かもしれないがもしそうだとしてもコレに捕まったら確実に殺られる!かといって先程あの銃を避けられたのはただの運、逃げている最中に遠方から狙われたらひとたまりもないだろう、死なないまでも結局追いつかれる事になってしまうことに代わり無い。
ここは殺られる前に殺るしかない!
そう考えた犬は小屋のあった家の窓から中に入り込み玄関近くのドアを開けつつそのまま裏口へと向かう。
それを追うのは狂気の女、玄関を蹴破り中に入る。
前方右のドアから目から血を吐く亡者が現れるが慌てず即座にレミントンでもって死なぬ事をわかっていながら腹に一発胸に一撃、最後に首から上をすっ飛ばし、蠢く亡者の股ぐらを踏み砕いた後、何事も無かったかのように前進を再開。
見ると裏口はまるで今まさに獲物を待ち構える獣の口元のように僅かに開いており侵入者を待っているように見える。
「ふぅん・・・・」
首を掻きながら足でドアを開け、外に出てから横に身をかわすと上から椅子が落ちてきた。即座に上へ銃口を向けるも対象はいなかったため探るように辺りを見回し聞き耳を立てる、
しばらくすると家の脇から何かの破壊音が響いてきた。
「そこかぁ!!」
物音のした方に向き直り走り出した瞬間後ろに気配を感じ咄嗟に振り向くも既に眼前まで野獣は肉薄し喉元を食い千切ろうと迫っていた。幸運にも銃身を体の前に出していなければまず死んでいたことだろう。
床に押し倒される形にはなったが何とか耐えきり押し返して、銃を喉元に突きつける事に成功する。
「・・・・・最後にいくつか質問をするからYESならワンNOならヴゥで答えて。まぁまずは人語を理解できるかどうかだけど」
その後犬は万に一つの可能性を信じ懇切丁寧に人間を殺す事が目的かだの他の目的はあるかだのというような事を受け答えしたのだが
ついに『最後の質問』という単語が発せられてしまった。
犬は思った。
ここまでなのか!?こんな女に殺されて終わってしまうのか!?と。
しかし、女は余りにも予想外な事を口走る。
「ねぇワンちゃん、私と組む気はない?」
女の言い分はこうだ。
どうやら今この場は殻同士が最後の一人になるまで戦い何者かに願いを叶えてもらう権利を争奪する戦場だという。
そして女は願いを叶えるため狙撃時の隙とリスクを減らし効率的に人間を狩りたい、結果的にこちらの目標を達成する事に繋がるのだから協力してほしいとのことだった。
実際この霧の中遠距離を見渡せる技能は少女を見つけるのに役立つだろうし何よりさっきの男のような奴を相手取るのに手段は多いに越したことはない。
加えて女が身を守るために殺した同族を食うことで自身の強化も行えるだろう。
さらに少女を捕捉した後目標を達成していないフリをして後ろから襲えばそれ以上協力する必要もない。こちらに有利すぎて悪いぐらいの取引だ、勿論了解の意を示した。
(こんなに知能の高い犬見たことない、これはいい拾い物をしたかもね)
椅子の端が見えていたとはいえ死角からの椅子落としの計画やその椅子の一部を
あらかじめ取っておき陽動に使う周到さからまさかとは
思いながらも質問をしたのは大正解だった。
詩音は民家に置かれた品を物色した後、ひそかに胸踊らせながら地図を開く。
もちろんワンちゃんにも見えるように床に置いた。まず何処へ行くか考えていると横から真っ白な手が伸びてきた。
どうやらCー2〜3辺りの範囲が探し人のいそうなエリアらしい。
協力関係を崩さないためにはとりあえずそこに近く、人を集められる方法のある場所に行く必要があるだろう。真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に詩音は答える。
「わかった、私も何かしら鐘を鳴らす装置があると
思うからこの『時計搭』に行きたいしこのルートで…」
詩音が指を地図上で動かすとケルブは唸り自分の鼻先で地図に
犬小屋の家『時計搭』の二点間を繋ぐ直線を引き、詩音に背を向けた。
「乗れ…って事?」
――――――――――
「アハハッ!ワンちゃんすごいすごい!」
どうもこの犬は食べると成長するらしい、
とケルブの背の上で詩音は思った。机と棚の上にあったハンドガンの弾を持っていこうかいくまいか迷っていた時後ろで先ほどの残骸を咀嚼していたのを知っていたのだ。
思えばあの時よくよく見なければ気づかない程ではあるが一回り大きくなっていたような気がする。
途中のさっき仕留めた3匹を喰らってからは目に見えて早くなったという事実もそれを裏付けていた。これならすぐに『時計搭』まで行けるだろう、何故行きたいのかは判らないがきっと重要な場所に違いない。『時計搭』、
そう言ったときケルブが首をかしげた事も知らずに詩音はそう考えた。
一人と一匹は闇の中、鋭く光る弾丸のように駆けていった。
【B-2 市街地 / 一日目 夜】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:肉体疲労(小)、L5
[装備]:ウィンチェスターM1894スコープ付き(残弾7/7)、レミントン M870ソードオフVer(残弾6/6)、
ショルダーバッグ、ヘッドライト、トレンチコート、弾帯×3
[道具]:羊皮紙の名簿、ハンティングナイフ、30-30Winchester弾(46/50)、
12ゲージショットシェル(47/50)、携帯ラジオ、栄養ドリンク×3、携帯用救急キット、地図
[思考・状況]
基本行動方針:名簿の人間を皆殺しにし、北条悟史を生き返らせる
1:獲物を探す
2:このワンちゃんスゴい!
※本当に『時計搭』が存在するかは不明です、詩音の指した『時計搭』の位置には灯台があります。
※ケルブはT-ウィルスに侵されましたどのような変化があるかは不明です
代理投下終わりです。続けて別の作品を投下します
福沢玲子はアパートを飛び出した。
三角頭の巨人を追い掛けるために。
というのは誰に言うわけでもない言い訳。
荒井の死体転がるあの部屋にいたくなかったというのが本音。
もちろん巨人を追うというのも嘘ではない。しかし割合にしてみれば荒井6:巨人3程度である。
残りの1割は荒井の死体が有る無しに関わらずあんなアパートにはいたくない。
自分を助けるために犠牲になった荒井の死体から逃げるというのは失礼だとは思ったが、やはり死体と同じ部屋にいたくない。
それに死体を見ていれば嫌でも申し訳ない思いが込み上げてきてしまう。その思いから逃げるためにもアパートから出る必要があった。
そもそも真剣に巨人を追い掛けてどうする?
十発を越える銃弾を打ち込まれても動きを止めないような化け物をごくごく普通の女子高生が追い掛けたところで、荒井の後を追わされるだけでしかない。
これも言い訳。
しかしそう思うのは当然。
勝ち目が無い相手に立ち向かって殺されるのは賢い行動とはいえない。そんな行動に出るほど福沢は無謀ではないし、
そんな福沢を無謀な行動に出させるほど荒井は大事な人間ではないのだから。
かといってやられっぱなしというのはおもしろくない。
できることなら…いや、なんとしてもあの巨人に一泡吹かせてやりたい。
しかし。
「んー…どうしようかなあ…?」
今ある銃では殺すどころか怯ませる事すらできない。
つまりもっと強力な武器、それか協力者が必要だ。
それにあの巨人を追いたくてもどこに行ったのかわからない。
「馬鹿馬鹿しい!」
ならば適当に歩いてみよう。
それが福沢の辿り着いた結論。
考えていてもしかたない。歩いていてれば誰かしら他の人間にも会えるだろう。巨人に有効ななにかしらも見つかるだろう。巨人も見つかるだろう。
歩いていれば気も紛れる。ただただアパートで怯えているよりもよっぽどいい。
歩き回って化け物の巣に突っ込んだらどうする?何も見つけられないまま巨人に出くわしたらどうする?
そんなのもやっぱり…。
「馬鹿馬鹿しい!」
都合の悪いことには目を瞑ろう。悪いことを考えていたら何もできない。
決意…というよりも放棄。
福沢玲子は難しく考える事を放棄して、歩き始めた。
◇ ◆
ニャーーン!
「ひゃっ!」
福沢が歩きだすと猫が飛び出してきた。
猫は福沢に興味を示す様子も見せずに走り去っていく。
走り去っていく猫を目で追いながら福沢は閃く。
あの猫を追い掛けよう!
とりあえず歩き回ってみると言っても目的地を決めずに歩くというのは結構難しい。
そこに現れたあの猫。
これはもう追い掛けるしかない!
犬も歩けば棒に当たると言うのだから猫だって何かに当たるはず。
走る猫はそれなりに速い。
見失わないようにするために自然と福沢の足も速くなる。
目で、足で、猫を追い掛けていて注意力散漫になっていた福沢は曲がり角を猛スピードで曲がってきた男と衝突してしまう。
「痛っ!」
衝突したのは太った男。
体格差もあって福沢だけが吹き飛ばされてしまう。
男は衝突したことなど気にする様子も無く走り去ってしまった。
曲がり角でぶつかる。
ラブロマンスのシチュエーションとしては定番中の定番。憧れている人間も少なくはないだろう。
とはいえ、福沢は恋の予感などこれっぽっちも感じなかった。
走り去る後ろ姿を見るだけでわかるまるまるとしただらしのない腹。
顔は見ていないがあんなデブはブサイクに決まってる。
そんなデブサイクのくせにぶつかっといてごめんの一言も無い。
福沢の心にあるのはラブロマンスどころか不快感だった。
「あんなやつ…戻ってきたあの巨人に殺されちゃえばいいのよ。」
男がアパートのある方へ走っていくのを見て福沢は悪態をついた。
あんなデブサイクはどうだっていい。猫だ。見失ってしまった。
せっかくの追い掛ける対象も、デブのせいで見失ってしまった。
しかしすぐに猫もどうでもよくなった。
◇ ◆
猫を見失って、立ち上がるのも面倒になっていた私の元にもう一人男の人がやってきた。
「大丈夫ですか?」
その人の顔を見たらデブサイクも、猫も、どうでもよくなった。
これでもかと言わんばかりのイケメンなんだ。そんなイケメンが目の前にいるのに猫なんて探してられないよ。
「立てますか?」
目が合ったらイケメンが手を差し出してくれた。
ありがたく立ち上がらせてもらう。
「僕は雛咲真冬といいます。えーっと…。いや、自己紹介は後にしましょう。」
喋りながらも周囲を見渡していたイケメン…もとい真冬さんは何かを見つけたらしい。
気になって同じ方を向いてみたら…人がいた。
股がある。
…じゃなくて、股に頭がある…。股に頭のある人間…。
早く銃を…銃に弾を込めるの忘れてた!
「大丈夫…。僕の後ろに下がって。」
真冬さんは小さく呟いてぶら下げていたショルダーバッグからカメラを取り出した。
こんな状況であの化け物の写真を取るの…?
いくらイケメンでもちょっとどころじゃないくらい趣味悪い。
真冬さんがカメラマンでプロ意識溢れる人で、こんな状況でもそれを忘れないのはかっこいい。
かっこいい…かっこいいけど…なんか…こう…引く感じ…?
支援
「もしかして…あれ撮るんですか…?」
私の質問に答えず真冬さんはシャッターを切る。
一回…。
「えっ、化け物がひるんでる?真冬さんすごーい!」
「まだ倒したわけでは無いですから油断しないでください…。」
そうだよ、しまった!ぼんやりと化け物の撮影会を見てる場合じゃなかった!
二回目のシャッター音。
また化け物がひるんだ。この隙に早く鞄から銃を出して弾を込めないと…化け物との距離はあとどれくらい…?
顔を上げると三回目のシャッター音。
「えっ!?嘘!すごい!なんで!?」
三回目のシャッター音と同時に化け物のいろんなところから真っ青な炎が出てきてあっという間に全身へ燃え広がって…化け物が燃え尽きちゃった。
真冬さんはカメラをショルダーバッグに戻してる。
…どういうこと?
「もう大丈夫です。あの化け物は闇人というようですよ。光に弱いそうです。」
「あの…えっと、そうなんですかー。物知りなんですね!」
この場面で物知りって言うのはなんか違うような気もする。
「この本に載っていたんです。貴女も読みますか?」
ショルダーバッグから今度は雑誌を取り出した。
でも化け物が載った雑誌?
あっ、そうか。この本に見本を載せる為に写真を撮ってたんだ!
きっと真冬さんは化け物を倒しながら人を助けて回ってるのね。
だから化け物を倒せたんだ。化け物の相手も慣れっこなんだ。
どことなく説明口調というか昔っぽい話し方なのはいろんな人に化け物の説明をしてたせいで変な癖がついちゃったのかな?
よく見るといろんなところが血で汚れてるのは化け物と戦ってる時に誰かを庇って怪我したのね。
怪我してるところがまだあるならどこか適当な家を借りて手当てしなきゃ!
「あ、でも立ちながらだと読みにくいしどこか適当な家を借りましょう!手当てもしないといけないですし!」
「手当て?どこか怪我されてるんですか?」
「何言ってるんですか!真冬さんの傷の手当てをするんですよ!」
「えっ。でも僕はもう自分で手当てして…。」
「いいからいいから!早く行きましょうよ!」
真冬さんの手を掴んで走りだす。
真冬さんは少し困ったような顔をしてるけど気にしない!
とにかく明るくいかないと気が滅入っちゃうからね。
それにしても…真冬さんは困った顔を見てもイケメンだなあ。
【C-5路地裏:1日目夜中】
【福沢玲子@学校であった怖い話】
[状態]深い悲しみ、固い決意
[装備]ハンドガン(7/10発)
[道具]ハンドガンの弾:12、女子水泳部のバッグ(中身不明)
[思考・状況]
基本行動方針:荒井の敵を撃ち出来るだけ多くの人と脱出する
1:真冬さんと情報交換
2:三角頭を追う
3:人を見つけたら脱出に協力する、危ない人だったら逃げる
※荒井からパラレルワールド説を聞きました
※荒井は死んだと思っています
【雛咲真冬@零〜ZERO〜】
[状態]脇腹に軽度の銃創(処置済み)、未知の世界への恐れと脱出への強い決意
[装備]鉄パイプ@サイレントヒルシリーズ
[道具]メモ帳、射影機@零〜ZERO〜、クリーチャー詳細付き雑誌@オリジナル、ショルダーバッグ(中身不明)
[思考・状況]
基本行動方針:サイレントヒルから脱出する
0:少女(福沢)から話を聞く
1:この世界は一体?
2:他にも街で生きている人がいないか探す
◇ ◆
エディ・ドンブラウスキーはアパートに飛び込んだ。
「はぁ…はぁ…。ウッ…。」
明らかなオーバーワーク。
普段のエディならまず出せない速度で走っていたし、そうでなくても相当な距離を走った。
「くそっ…どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって…。」
曲がり角でぶつかった女も俺を馬鹿にしているに違いない。
ーーー趣味の悪い部屋だ。
どこも似たような状態だがここはそれにも増して酷い有様だ。
ある程度息が整ってきたエディは部屋を見渡し思う。
ーーーあの槍はなんだ。そしてあの槍に刺さっている死体はなんなんだ。
ーーー槍に刺さった死体…?
薄暗いので顔はよく見えない。しかし間違い無く人間の死体が刺さっている。
三角頭の巨人にやられた荒井の残骸。
常態ならば傷口にひびが入り、ところどころ蟲の蠢く荒井の残骸を人間の死体と間違えたりはしないだろう。
それでも錯乱状態のエディには十分だった。
エディの中で何かが切れた。
音が立つほど思いきりドアを開けアパート内に侵入する。それを見つけて蠢く影は濁った皮膚の、手の無い化け物。
「運動ができるやつも!頭の良い奴も!死んじまえばみんな同じ……!」
化け物を殴り付け地に屈伏させる。粘液が飛び散る。
「ただのデブより価値がねぇ!」
そしてその頭を何度も殴り、砕く。
血に染まった腕を高らかに挙げ、そして宣言した。
「全員ぶっ殺してやるよ!!パーティータイムの始まりだ!」
【C-5アパート通路:1日目夜中】
【エディー・ドンブラウスキー@サイレントヒル2】
[状態]:肉体疲労(大)、殺人と死体を見たことによるパニック状態
[装備]:ハンドガン (0/10)。
[道具]:特になし
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく最後の一人になる。
1:とにかく誰かいる所に行く。
2:最後の一人になりたい。
3:でもとりあえず少し休みたい。
※サイレントヒルに来る前、知人を殺したと思い込んでいます
代理投下終わりです
代理投下します
<What a queer tale!>
『作戦会議』という名の情報交換と、今後の方針の確認を済ませたぼくと梨花ちゃんは民家を出た。
『鬼』の件への危惧は未だに頭の中に存在しているが、だからといって有効な対策があるわけではない。
しかし、自他への危険という理由でこの少女をここに置き去りにすることはできなかった。
その厚意が警官としてか、大人としてか、男性としてかは判然としなかったが、とりあえずは梨花ちゃんをそばに置いておくつもりだ。
「それじゃあ、警察署に向かうけど、いいかな」
「はいなのです。エスコートよろしくですよ、風海」
「ははは。努力するよ」
よもやこんなに小さな女の子の護衛をするとは。
入庁した頃にはそんなこと考えもしなかったな。
あの頃はまだキャリアとしての理想も現実もあったし、
非常識な事件と接することもなかった。
順当に行けば、警視総監は無理でも警視監くらいにはなれたはずなのに。
どこで道を間違えたんだろう。
目頭を押さえたくなるような郷愁に浸っていると、
霧に塗れた視界の中に、巨大な建物が過ぎった。
看板には英語で『警察署』の表記。
おっと、危うく通り過ぎるところだった。
「みぃ。ここですか?」
「うん、ここにぼくと同じ警察の人がたくさんいるんだ」
梨花ちゃんを安心させようとそう言ったが、彼女は不安そうに眉をしかめた。
「でも、入るのはやめておいた方がいいですよ。風海には聞こえないですか?」
「え?」
ぼくは正面にある大きな扉に耳を近づけた。
すぐに鼓膜がその異常を感知して、背中が嫌な汗を流す。
呻き声、悲鳴、銃声、何かが爆ぜる音。液体の飛び散る音、硬いものが壊れる音……。
秩序の権化たる場所には似つかわしくない、むしろ殺人現場にお似合いなものの数々。
子ども特有の敏感な感覚はいち早くそれを察知していたのだ。
こんなところに助けを求めるのは、窃盗犯に荷物を預けるようなものだろう。
「どうするですか?」
「どうしようか」
警察署から少し離れたところで、ぼく達は争いの渦中を眺める。
交通事故が起きたのにパトカーが一台も来ない理由がわかった。
内ゲバ、クーデター、テロ……。現代の日本ではめったに拝めない運動が、どうやらここで起こっているようだ。
あるいは……。いや、そういう考えは止めておこう。そうだとは思いたくない。これは、ここの住民の問題なのだ。
いくら警察官でも、外国の事件に許可なく干渉はできない。それ以前に、護衛対象を危険に晒すことはできない。
時間か政府が解決するのを待つしかないだろう。問題は、これからどうすべきか、ということだ。
「誰か来ましたです」
梨花ちゃんの声に導かれるようにそちらを見ると、一人の老人(東洋人のようだ)が走ってきた。
彼はそばの看板を見上げ、その建築物が警察署だと認識すると、一目散に入っていく。
「あ――――」
危ないですよ、という声がぼくの喉から出るより速く、扉は開き、閉まる。
霧でよく見えなかったが、血を流していたようだ。その状態で病院ではなく、ここに来たということは、恐らく援軍か何かだろう。
民衆の暴動は首謀者から始まり、周囲の人間がどんどん巻き込まれていく。今の人もそういう流れの中にいるのかもしれない。
「とりあえず、ここから離れようか」
「みぃ」
こんなところにいても危険なだけだ。梨花ちゃんもそれを察したらしく、首を縦に振ってくれた。
「梨花ちゃんはどうしてここに来たの?」
「みぃ……。気がついたらここにいたのですよ」
「そうか。ぼくもだよ」
橋の上から水面に視線を落とす。不安定な自分の姿が映っている。
梨花ちゃんは雛見沢という集落に住んでいるらしい。
そこでは仲間たちと仲良く暮らしていて、その人達もここに連れてこられているそうだ。
その証拠となる名簿を見せられた時、ぼくは予想外の驚きを抱く羽目になった。
『式部人見』
『霧崎水明』
『小暮宗一郎』
人見さんの名前が知人の中で先頭だったので、初めは行方不明者リストだろうと思っていたが、
それでは兄さんや小暮さんの表記に説明がつかない。そんな疑念が顔に出ていたのだろう、
梨花ちゃんがもう一枚、資料を恐る恐る渡してくれた。
そこに書かれた『ルール』に目を通した時、ぼくは言葉を失った。
殺し合いの扇動。一言で済ませるなら、そういった文面だった。
生き残れるのは一人だけ。このルール通りならば、ぼくがここから脱出するためには、あの三人に手を掛けなくてはならないことになる。
冗 談 じ ゃ な い !
これが梨花ちゃんを『鬼』にさせたというなら、なるほど、わからない話ではない。
ぼくだって胸の内から巻き起こる感情でどうにかなりそうだった。
言うまでもなく、ぼくには“そういうつもり”は一切ない。
早く三人と合流して、こんな場所から逃げだそう。
……いや、それだけではだめだ。梨花ちゃんと彼女の友達も保護しなければ。
問題は、ぼくらのように殺人に否定的な人間がどれだけいるか、ということだ。
《
4. ご 褒 美
最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。
》
ご褒美とやらに釣られる人だっているかもしれない。
万が一そうだった場合、できることならそういった人物は拘束したいところだが、装備も人材も不足している。
現時点では諦めるしかないだろう。
……そうだ、まだ問題はある。名簿以外の人間はどう対応するか、だ。
名簿に載っている人間はここに強制的に連れてこられた可能性が高い。
しかし、この街に住んでいる人間はどうなのだろうか。
先程の警察署での戦闘は連れてこられた人間によるものでなはく、ここの住民によるものだと思いたいが、
そうだとして、それがルールに該当するのだろうか。
《
1. 殺 せ
この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること。
》
《
4. ご 褒 美
“最後の一人”にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。
》
名簿に該当しない人物までこのルールに沿っているとなると、
参加者はかなりの人数になる。
では、先程の暴動は、ルールによる殺し合いだった?
そうだとしたら、止めるべきだったかもしれない。
人見さんたちが巻き込まれている可能性だってあったわけだし。
いや、でも梨花ちゃんを巻き込むわけには……。
(まるで手が足りない‥…)
普段から少人数で行動していたが、それでうまくいっていたのは、『警察』という組織があってこそだ。
一人の警官の力など、たかが知れている。
せめてあと一人、頼りになる人がいてくれれば……。
ぼくがため息を吐きだすのと、周囲を震わせる轟音が飛んできたのは、ほぼ同時だった。
正午を告げるサイレンのようなそれは、あまりに場違いのように思える。
それに呼応して霧が晴れ、街の姿がつまびらかになっていく。
「――!」
覗き込んでいた川は赤く染まり、地面は奇妙な質感を帯びた。
《
2. サ イ レ ン で 世 界 は 裏 返 る
生き残りたいならサイレンを聞き逃さないこと。何が起きるかはお楽しみ。
》
つまり、裏返った世界がこれということなのだろうか。
すっかり錆びた金属と化した橋の上を凝視していると、小さな手がぼくの服を掴んだ。
「風海、これはなに……?」
困惑した様子で問う梨花ちゃんに答えを返せない自分が情けない。
慰めになるかどうかはわからないが、少女の手をそっと握る。
「ごめんね、ぼくにもわからないんだ」
オカルトにはずいぶん慣れたと思っていたが、それは日本基準の話だったようだ。
グローバルスタンダードにおいて、自分の経験は大したことないらしい。
今度は逃れようがない。暗い街をざっと見まわしたが、変化のない場所はまったくないのだ。
これから逃れるには、街から脱出するしかないだろう。しかし、どうすれば……。
ドスドスドスドス。
何度目かの思案をしようとした時、聞き慣れた音が耳に飛び込んできた。
新鮮な体験しかしていない場所で感じるこの懐かしさ。
それはぼくの興味を引くには充分過ぎるほどだった。
梨花ちゃんにとってもそうだったようで、彼女の手がぼくを動かし、橋を渡らせる。
暗闇で見づらいが、そこにいたのは頼れる部下だった。
「こ――」
声を掛けようとしたが、直前で口を閉じる。そしてすぐに梨花ちゃんを抱き寄せ、そばにある建物の陰に隠れる。
たしかにそこにいたのは自分の部下の小暮宗一郎だったが、どこか様子がおかしい。
着衣は乱闘の後のように乱れ――――
血走った目が鋭い視線をあちらこちらに飛ばし――――
興奮した猛獣のように荒い息を吐き続け――――
猟銃を構えてその巨体を走らせている。
どう贔屓目に見ても、『一人くらいは殺しちゃってます』といった感じだ。何かあったのだろうか。
第三者の一般人が今の彼を見れば、一目散に逃げ出すか、泣いて許しを請うだろう。
「風海、あの危険極まりない男を知っているの?」
腕の中の梨花ちゃんがわずかに顔を赤くして問う。
強く抱きすぎたかな。そっと力を緩めて少女を解放する。
「一応ね。ところで、それが素の口調かな?」
すると梨花ちゃんは驚いた顔をして口を押さえる。
あんなことが起これば、化けの皮も現れるだろう。
彼女は一度ぼくに背を向けて、すぐにくるりと振り返る。
「みぃ? 風海が何を言っているか、ボクにはちんぷんかんぷんなのですよ。にぱ〜」
「ごめんごめん。変なこと聞いちゃったね」
こういう場合、素直に向こうに合わせてやるのが“大人”というものだ。
ぼくは自分の成長に感心しつつ、視線を小暮さんに戻す。
彼はここから少し離れたガソリンスタンドの中に入っていった。
あまりの変貌に一度躊躇してしまったが、上司が部下を怖れてどうする。
早く合流しないと。
「そっちへ行っちゃだめなのです」
追跡しようとしたぼくを小さな手が止める。
当然かもしれない。こんな小さな子から見れば、
今の小暮さんは鬼同然だろう。そういえば、この子も『鬼』だった。
無理に彼と会わせて、もし暴走してしまったら捜索どころではなくなる。
さて、どうしよう。
自分のことだけなら楽観視もできるが、梨花ちゃんのこともある。
迂闊な行動は許されない。きちんと冷静に、客観的に状況を判断し、行動しなければ。
ぼくは――――――
⇒
小暮さんの後を追うことにした
梨花ちゃんを連れて素早く避難した
◆ 何もかも諦めて梨花ちゃんとこの街で暮らすことにした
【C-2跳ね橋制御室付近/一日目夜】
【古手 梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康。L3-。鷹野への殺意。自分をこの世界に連れてきた「誰か」に対する強烈な怒り。
[装備]:山狗のナイフ
[道具]:懐中電灯、山狗死体処理班のバッグ(中身確認済み。名簿も入っていました)
[思考・状況]
基本行動方針:この異界から脱出し、記憶を『次の世界』へ引き継ぐ。
1:あの大男を追うなんて冗談じゃない。
2:自分をこの世界に連れてきた「誰か」は絶対に許さない。
3:風海は信用してみる。
※皆殺し編直後より参戦。
※名簿に赤坂の名前が無い事はそれほど気にしていません。
【風海 純也@流行り神】
[状態]:健康。梨花に対する警戒心。
[装備]:拳銃@現実世界
[道具]:御札@現実、防弾ジャケット@ひぐらしのなく頃に、防刃ジャケット@ひぐらしのなく頃に
射影器@零、自分のバッグ(小)(中に何が入っているかはわかりません)
[思考・状況]
基本行動方針:サイレントヒルの謎を解き明かし、人見さんたちと脱出する。
1:どうしよう。
2:人見さんと兄さんを探す。
代理投下終了です
アーカイブ追加です
USS制式特殊戦用ガスマスク@バイオハザードアンブレラ・クロニクルズ
アンブレラ社の下部機関USS(アンブレラセキュリティーサービス)の
特殊部隊員に正式採用されているガスマスクでバイザー部分に赤外線
暗視装置が組み込まれている。その他、スロートマイクも標準装備。
NBC(対生物兵器)対策も施されている。
もう一つ追加(すいません#忘れてましたSWATです)
防弾チョッキ2型@現実
陸上自衛隊で正式採用されているボディアーマー
MIJ規格のレベル3A(9mmパラペラム弾や44マグナム弾までなら防げる)
で衝撃に対してもそれなりに強い、弾倉用のマグポーチが取り付けられている。
何か地味なアーカイブですいません
いやいや地味だなんて事はありませぬ。アーカイブ制作乙ですよー!
三沢とハンクか。ハンクは本編の状態表に追加した方が良さそうかな?
1つアドバイスというか、お願いです。
トリップのキーを公開されてしまわれたようなので、
よろしければ別のトリップにして頂きたく思いますが如何でしょう?
まず無い事とは思っていますが、成りすまし等の問題が起こらないとは限りませんので。
代理投下します
白い小さな手の中の小さな端末だけが、殆ど視界の効かない暗闇の中で仄暗い光を放っていた。
その微かな光は、端末を持つ少女が流す涙で反射して、頬に一筋ずつの白いラインを描いていた。
荒れ狂った殺人者がこのボウリング場から出て行き、どの位の時間が経ったのか。
少女はあれから何をするわけでもなく、今も全く変わらぬ姿勢で蹲っていた。
危害を加える者はもういない。殺人者も怪物も近くにはもういない。
それは、耳がどうにかなってしまったのかと思える程の静寂が伝えてくれている。
なのに、涙は未だに止まらず流れ続けている。心臓は早鐘の如く響き続けている。
動けない。全身の震えが止まらない。思考を巡らす事すらままならない。
生まれて初めて浴びせかけられた悪意と殺意の衝撃で、少女の精神は完全に恐怖に掌握されていた。
それはまるで、呪縛のよう。
少女は呪縛に抗う事が出来ず、ただ歯を打ち鳴らし、蹲っている事しか出来なかった。
だが間もなく、だ。間もなく少女はその呪縛から解き放たれるだろう。
その呪縛から少女を解き放つ存在が、すぐそこまでやってきている。
殺人者や怪物。そういったモノとは全く別のベクトルの存在が、すぐそこまで――――――――。
*テレホンコール
ピリリリリリリリリリリリリリリ
「ひっ!」
前触れもなく鳴り出し、虫の羽音の様な音を立てて震え始めた手の中の端末に驚き、
岸井ミカの心臓は大きく跳ね上がった。
手から滑り落ちた端末はカンッと床にぶつかり、より強まった光で赤く錆びた金属を照らし出し、
落下のショックで壊れるような様子も見せず、電子音を鳴らし続けていた。
今まで恐怖に縛られ、動く事すら忘れていた少女に訪れた切っ掛け。
振動する度に床とぶつかり合い、余計に騒々しく“がなり立てている”端末に向かい、
ミカは荒くなっていた呼吸を整えながら、恐る恐る手を伸ばした。
「表示……ケ……ケン、ガイ? ……着信中……?」
小さなモニターを覗き込み、確認出来た短い単語を目に映ったままに呟いた。
数瞬の間を置いて、ミカはハッとする。刺激が走り、ゆっくりと頭が回り始めた。
そう、これは、携帯電話だった。
このおかしな街に来てから自分が探そうとしていたものが、今自分の手の中にあるのだ。
ミカの知っている携帯電話やPHSはもっと細長く、二つに折り畳む事など出来ない代物。
それらとは少々形が異なるが、これが電話機である事は間違いないようだ。
それも着信中。今現在、誰かから電話がかかってきている。
「ヤバっ! 待って待って!」
怯え、固まっていた事が嘘であったかのように、
ミカは手の甲で涙を拭い、携帯電話の上に素早く視線を巡らせた。
助けを求めなくては。
反射的に考えた事はそれだ。電話に出て、助けを求めなくては。
今、この電話は何回目のコールをしていただろうか。
数えてはいないが、鳴り始めてから結構な時間が経っていた気がしていた。
早く出なければ、切れてしまう――――その思いがミカを焦らせていた。
幸い電話機の仕様は一般家庭に普及している電話の子機と大して変わりはない様子。
通話方法は何となく分かる。通話ボタンを押せば通話は繋がる。そのはずだ。
携帯電話から照射しているライトで浮かび上がっているいくつものボタン。
滲む視界では見難かったが、受話器の外れている電話のマークが目に止まった。
ミカは迷わずそのボタンを押し、電話を耳に押し当てた。
「もしもし、だれ?! あ、ううん、だれとかじゃなくて、違うの!
あのー、アレ! よくワカンナイんだけど、とにかく助けてください!
センパイ……じゃなくて、110番に――――…………?」
早口でまくしたてた。
必死さ故、ミカの声は要領をまるで得ない叫びとして口から飛び出していた。
助けを求めなくては。電話の相手が誰だか分からないが、兎に角その一心を伝えたかった。
だが、電話口の向こう――――聞こえてくる向こう側の音声に一つの違和感を抱き、ミカはいつの間にか口を閉ざしていた。
(……なに、この人?)
音声は、ミカの様子には何も反応する事はなく、ただ一つの単語を繰り返しているのだ。
時折混じるノイズと共に、ただ一つの単語を、何度も、何度も繰り返している。
あのね あのね あのね あのね あのね
――――と。
「あ、あのねじゃなくて。ヤバイんですよ!」
あのね あのね あのね あのね あのね
「人が殺されたの! 人殺しがいるの! ここに!」
あのね あのね あのね あのね あのね
「ちょっと、ホントにヤバイんだって! お願いだからケーサツ呼んでよ!」
あのね あのね あのね あのね あのね
思わず語気を荒げていたが、何を言っても相手は聞いてくれない。
「なんなのこいつ!」ミカはそう苛立って電話を耳から外し、
電話口の相手を見据えたしかめっ面で携帯電話の画面を睨みつけた。
そして何気なく、その画面に映し出されていた時刻に目を向けてしまった時、
連鎖的に甦った記憶で、ミカの全身は冷水をかけられたかのような寒気に包まれた。
(ウソ!? ……もしかしてこれ、センパイが言ってたやつ……!?)
表示されていた時刻は『00:00』。今はまだそんな時間ではないはずだ。
だが、ミカは知っている。
母ミナヨから聞いた『00:00』にかかってくる電話の話を。
センパイである長谷川ユカリが実際に体験したという、あの『死者からの電話』の話を。
あのね あのね あのね あのね あのね
次第に、通話口からの音量が大きくなってきた気がした。
「やだ……ちょっと待ってよ……」
或いは錯覚なのかもしれない。だが、ミカには聞こえている。
繰り返される声。徐々に大きくなる声。
あのね あのね あのね あのね あのね
ミカは知っている。この電話から逃れる方法は知っているのだ。
「待って……待ってったらぁ!」
だが、今のミカの頭は、恐怖で埋め尽くされていた。
殺人者への恐怖。怪物への恐怖。
そして更に、新たにじわじわと迫り来る、この電話への恐怖。
あのね あのね あのね あのね あのね
頭が回らない。思い出せない。
ミカは、立ち上がっていた。電話が再び手から滑り落ちた。
足元に転がった電話機から、声は止む事なく繰り返されている。
何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。
あのね あのね あのね あのね あのね
声は、電話を通していないのではないかと思える程に大きくなっていた。
まるで、すぐ側に声の主がいるかのように。そう、すぐ側に――――――――。
「いやぁッ!」
ミカは、恐怖をこらえ切れず、逃げ出した。
暗いボウリング場の中で、殆ど手探りで。
何度も躓きながらも、エディーが開け放していた扉から外に出て、
兎に角この携帯電話から離れようと、場所も方向も考えずに走り出した。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ハァ…………」
入り込んだ小道は、一本道の袋小路だった。
已む無くそこで足を止めたミカは、前屈みになり深呼吸を繰り返して呼吸を整えていた。
「なんなんだよ……チクショー……」
気付けば、声は聞こえなくなっていた。
逃げ切ったのだろうか。いや、何か違う気がしていた。
あの電話には確かルールがあった。それが何だったか、思い出さねば大変な事になる。
そこまでは分かっているのだが――――。
「……………………あ、れ?」
何か頭に過ぎったものがあった。
あの電話の声。あの声はどこかで聞いた事があったような気がする。
それを今思い出したのだ。
(だれだっけ? 身近なヤツの声だったような……キミカじゃないし、ミホじゃないし……)
思い出せそうで思い出せない、不快な感覚。
だが、すぐにミカは該当する人物を思い浮かべる。
そして、驚いたように顔を上げた。
「逸島センパイ……? 逸島センパイの声に……似てた……?」
いや、とミカは頭を振った。
さっきの現象は、死者からの電話のはずなのだ。
チサトからかかってくるなんて、そんな訳がない。
「…………気のせいだよね、きっと」
自信無さ気な呟きを漏らし、ミカは来た道を戻ろうと身体を捻った。
そして――――ふと、スカートのポケットの中の違和感に気付いた。
何も入れていないはずのポケットに、何かが入っている感触があるのだ。
ミカは何となく嫌な予感を感じつつも、ポケットに手を入れた。
「なんで、これが入ってんの?!」
震える声で叫ぶミカの手の中には、先程の携帯電話があった。
【B-5ヘブンズナイト裏口付近/一日目夜】
【岸井ミカ@トワイライトシンドローム】
[状態]:腕に掠り傷、極度の精神疲労、電話に対する恐怖
[装備]:特になし
[道具]:黄色いディバッグ、筆記用具、小物ポーチ、三種の神器(カメラ、ポケベル、MDウォークマン)
黒革の手帳、書き込みのある観光地図、携帯電話、オカルト雑誌『月刊Mo』最新号
[思考・状況]
基本行動方針:センパイ達に連絡を取る。
1:なんで電話がここに!
2:逸島センパイの声に似てた気がするけど……
3:どうしよう、誰か助けて!
※90年代の人間であるため、携帯電話の使い方は殆ど知りません。
※電話は怪奇現象でミカについてくるようです。
※次に電話がいつ鳴り出すかは不明です。
テレホンコール@トワイライト・シンドローム
本来は深夜0時丁度にかかってくる、亡くなった人間からの電話。
電話をかけてくる死者は対象の人間に対して好意を抱いている場合が殆どで、
対象者に何かしらの『伝えたい事』や『約束事』があって連絡をしてくる。
もしもこの死者からの電話を切ったり、コールを無視し続けて出なかったりすると、
死者の好意は悪意へと変わり、対象者を『連れ』に来てしまう。
この死者からの連絡があると、解決するまで対象者の周辺では、
電話の回線が全く別の場所に繋がる。
電話のある空間に外界からの音が届かない。
時計の時刻が00:00に固定されて強制的に奇妙な電話がかかってくる。
などといった怪奇現象が起こる場合もある。
代理投下終わりです
トリップ変更了解しました、
それと早速ですがアーカイブ追加です
26年式拳銃@現実
旧日本軍で使用されていたダブルアクション式の
回転式(リボルバー)拳銃、装弾数は6発で使用弾薬
は26年式拳銃用実包(9mm×22R弾)民間にも結構で回っていた。
アーカイブ&トリ変更ありがとうございます!
収録しておきました。
弾薬の共有も視野にいれてアーカイブ追加します
STANAGマガジン(名称アサルトライフルマガジン・89式小銃用弾倉)@現実
NATOが1980年代に提案した5,56mm×45mm弾用弾倉(マガジン)
歩兵レベルでの共同作戦を容易にする為に弾薬と弾倉を共通化
する為に開発された。(89式小銃やM4A1など5,56mm口径の小銃の互換性がある)
45オートの弾@現実
1905年にジョン・ブローニングが設計した拳銃・短機関銃用の弾薬
大口径なので殺傷能力が高く強烈なストッピングパワーを持つ。
欧米では「45口径信仰」があるほど根強い人気がある。
「ケビン専用45オート」や「コルトガバメント」に使用可能
その他一部のサブマシンガンに使用可能。
てか我ながら銃火器関連しかアーカイブ出してない…
近いうちにバイオ関連のアーカイブ追加しますか…
相変わらず地味ですいません
いえいえ、こういうのも助かりますよ!
後程収録させて頂きます。
ただまあ本編に出てからで結構ですよ!
ケビンが早々に退場したら下手すると45オートの弾は本編に出ない可能性もありますのでw
382 :
ゲーム好き名無しさん:2011/02/15(火) 10:03:18 ID:1PsaLBhEO
たつたage
代理投下します。
■
――ジャキン!
その音と同時に、看護婦の怪物の右腕が吹き飛ぶ。
怪物は呻き声をあげながら、残った左手で切断面を押さえつける。
出血を止めようとしているのだろうか。
だとしたら無駄な事だ。現に、左手の隙間からは血が絶え間なく流れ出ている。
――ジャキン!
今度は左腕が、地面に転がり落ちた。
両手を失った際の激痛のあまり、怪物が汚らしい声で喚き始める。
その姿は、エドワードにとっては酷く滑稽に見えた。
――ジャキン!
両脚をまとめて切断してみる。
支えを失った看護婦の胴体は、うつぶせになる形で地面に倒れた。
看護婦は地面とキスをしながら――尤も、腫れた顔の何処に口があるのかは
分からないが――四肢を失った身体をバタつかせている。
「ヒ…………ヒヒッ……ヒャッヒャッヒャッヒャッ」
その光景があまりにも惨めなものだったので、遂にエドワードは声を上げて笑い出す。
看護婦の姿、鳴き声、挙動……どれを取っても、一流のコメディアンと引けを取らないだろう。
(少なくともエドワードはそう思っている)
――とっても面白い。こいつを虐殺するのがこんなに楽しいとは思わなかった。
「……でも、もういいや。飽きちゃったよ」
大鋏を開き、看護婦の首の辺りに持っていく。
このまま鋏を閉じれば、鋭い音と共に看護婦の首は胴体を離れ、血飛沫をあげながら絶命するだろう。
しかし、看護婦はそれに気付かない。
切断面から血液を垂れ流しながら、殺人鬼から逃げようと、もがき続けているのだ。
とてもアワれすぎて、とても可笑しくて、何も言えない。
「………………ヒャヒャッ」
エドワードは、その幼い顔を醜く歪ませ――
――――ジャキン!
◇
『地獄絵図』。
病院の廊下の惨状を一言で表すのなら、この言葉が最も相応しいだろう。
ナース服の怪人「だったもの」と、それから流れ出る血液のせいで、足の踏み場は無くなっている。
(………………)
長い黒髪を揺らしながら、「彼女」はその道を無表情のまま進んでいく。
出来るだけ靴を汚さない様に、血の渇いている地点を探そうとするが――馬鹿馬鹿しくなって止める。
以前なら、「足があった頃」の自分なら、そうしていたであろう。
だが、今はそんな事を気にする必要など無い。
もう自分には、『足』なんて物は存在しないのだから。
――岩下明美は死んだ。
あの金髪の殺人鬼に、あの大鋏に、体を引き裂かれて殺されたのである。
本来、人間の肉体が朽ち果てたのなら、その魂は此処ではない、所謂「あの世」に送られる。
しかし、彼女の『少年に対する執念と怒り』――すなわち『未練』は、
その魂を現世に拘束するには十分すぎる程大きいものだった。
そして、その結果誕生したのが、今此処にいる『岩下明美の怨霊』である。
怨念の集合体である彼女にあるのは、シンプルなたったひとつの思想だけ。
『あの少年を今度こそ殺す』。
ただそれさえ果たせれば、後はどうでも良かった。
彼女は怨霊=霊体であるから、現世に存在している物には触れない。
勿論それは、目の前の肉塊や液体にも当てはまる。
廊下を滑るように進んでいく。歩きたいと思えば、勝手に体が前に進んでいくのだ。
あの少年ともう一度踊りたい。
『ルーベライズ』は失ってしまったが、舞踏会にはあんな物は必要ない。
前回と違って、今度は自分にも――何故かは知らないが――夜目が効いているのだ。
あんなヘマはもうしない。次こそは、華麗に踊ってみせようじゃないか。
通路を進み、待合室へ。
やはり――案の定とも言うべきか――そこも、通路と同様に血と肉で埋めつくされていた。
そしてその空間の真ん中に、「彼」は居た。
素振りからして、こちらの存在には気付いてはいないだろう。
当然である。『この世』の人間には、私のような『あの世』の存在を認識する事は不可能。
気付く方がおかしいのだ。
ゆらり、ゆらりと、彼に近づいていく。
彼は私を攻撃できないが、私は彼を「呪い」という手段で攻撃できる。
反撃などさせない。彼は私の思うがままに踊り続けるしかないのだ。
怨霊となって間も無い頃は、何が起こったのだと混乱しきっていたが、今なら分かる。
これは女神様から送られたチャンスなのだ。
自分が美しく舞えるように、魔法をかけてくれたのだ。
だからこそ、このパーティーを失敗させてはならない。
「今までで最高の出来だった」と言い切れるものに仕上げなくては!
さあ、楽しいショウの始まりだ。
狩るのは私で、狩られるのはあなた。
その悲鳴で、ダンスを彩って頂戴――――!
「死ネ――――!」
◆
「…………?」
ありのままに今起こった事を話そう。
「殺したと思っていた女がまた襲いかかってきた」
何を言っているか分からないと思うが、自分も何が起こったのか分からないのだ。
後ろから殺気立った声が飛んできたから振り返ってみると、
なんとあの女が体中を青白く発光させながらこっちに向かってくるではないか。
これには流石の自分も驚いて、鋏を取り出して反撃しようとしたのだが、
どういう訳なのか、女は「もう何も恐くない」と言いたげな表情で、怯まずに襲ってきたのだ。
これだけでも十分妙な話だが、さらに奇天烈なのはここからだ。
前回と同じ様に女の胴体を切断した瞬間……腕が、首が、脚が、バラバラになってしまったではないか!
それは、さながら「崩れ落ちる積み木」の様であった。
五体が崩れ落ちてからは、女は何もしようとはしなかった。(する方がおかしいのだが)
唯、虚空を見つめて金魚の様に口をパクパクと動かすだけである。
今思えば、胴体を切断した際にも『肉が切れる感触』を感じなかった。
恐らく最初から切れていたのだろう。
何時肉体が崩れるか分からない危ういバランスのまま、ここまで来たのだろうか。
だとしたらなんて命知らず、かつ運の良い奴なのだ。
何故、殺した筈の女が現れたのか。
そして何故、自殺同然の行為に打って出たのか。
奇怪な出来事が連続して起こっているが、
何よりも「奇妙だ」と感じたのは、この女から魔力らしきものを感じる事である。
確かに全身から、微量ながらも流れ出ているのだ。
いや、「流れ出る」どころの話ではない。この女「そのもの」が魔力と化している……?
まさかと思いつつも、女に近づいて、魔力の吸収を試みる。
するとどうだろう……なんと、女は足先から霧状に変化して、
エドワードの体中へと入り込んでいくではないか!
衝撃を隠せざるおえなかった。
まさか魔力が人の形をして――しかも、先程殺した女の格好をして――自らの目の前に姿を現すとは。
まだ腑に落ちない点がいくつかあったが、折角の機会である。
久しぶりの魔力、じっくり味わせてもらおう。
女の魔力――すなわち彼女そのものを塵も残さずに吸い尽くすと、途端に体が軽くなった。
自分に魔力が蓄えられた証拠である。
しかし、まだ全快には程遠い。まだ本来の姿に戻る事は叶わないだろう。
この形態のまま単独で行動するのは、些か不安が残る。
――護ってくれる人間が欲しい。
『弱い子供』を助けてくれる、善人気取りの命知らずが。
何、やろうと思えば簡単な事である。
そういう奴に出会ったら、ナース共に付けられた傷や血をちらつかせてやればいい。
これを見れば、そいつらは「無垢な防衛手段を持たない少年」が襲われたと
勝手に判断して、疑う事無く保護してくれるだろう。
実際には『自分が他者を傷付けていた際にできたもの』だったとは、考えまい。
変身出来るだけの魔力を手に入れたら、そいつらとは「遊んで」あげよう。
今まで護ってくれた、せめてものお礼だ。
あの赤い液体も始末しなくてはならないだろう。
自分が魔力の枯渇で苦しんでいたのは、全てアレのせいなのだ。
危険性を生むものは迅速に始末するのに限る。
そういえば、自分に液体をかけたあの男は元気にしているだろうか。
次に会ったら、今度こそ「遊んで」やろう。
次は何処で、誰と、どうやって「遊ぶ」のかな。想像するだけで心が踊るよ。
でも、この格好はせっかくの「遊び」にはふさわしくないよね。
だからさ、早く迎えに来てよ、ヒーロー。
――『かわいそうなエドワード』を助ける為にさ。
【B-6/アルケミラ病院一階:待合室/一日目夜】
【エドワード(シザーマン)@クロックタワー2】
[状態]:健康、所々に小さな傷と返り血、魔力消費(大)。
[装備]:特になし。
[道具]:『ルーベライズ』のパワーストーン@学校であった怖い話
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し。赤い液体の始末。
0:他の人間を探す。信頼されそうな奴だったなら、そいつを利用する。
1:か弱い少年として振る舞い、集団に潜む。
2:魔力を取り戻す為、石から魔力を引き出したい。
3:相手によっては一緒に「遊ぶ」。
※魔力不足で変身できません。が、鋏は出せるようです。(鋏を出すにも魔力を使用します)
※エドワードは暗闇でも目が見えるようです。魔力によるものか元々の能力なのかは不明です。
※『ルーベライズ』のパワーストーンに絶大な魔力を感じていますが、使い方は分かっていません。
石から魔力を引き出して自分の魔力に出来るのかどうかは不明です。
※怨霊(岩下)の魔力を吸収しました。
◆
――――消えていく。
自分自身が、彼に吸い込まれ、消失していく。
記憶が、
感覚が、
理性が、
何もかもが消えていく。
「ア……ゥ………………ァ……」
――――両足が消えた。
あの時、「裏世界では悪霊も実体化する」という事を知っていれば、
下手に声など出さなければ、結果は違っていたかもしれない。
しかし、もう遅い。彼女は二度目の敗北を喫し、今度こそ消滅する。
「…………ィ………………ぁ……」
――――左腕が消えた。
魂が粒子化し、殺人鬼と同化していく。
まだ、消えたくない。逝きたくない。
こんな終わり方なら、普通に成仏した方がマシだった。
「…………ァ…………………………」
――――右腕が消えた。
どれだけ嘆いても、どれだけもがいても、待ち受けるのは、『終わり』だけ。
何もかもが無駄。どんな願いも決して叶う事はない。
最早、抵抗すら許されなかった。
「………………………………ィ……ィ」
――――胴が消えた。
段々と、考える、事すら、出来なく、なっていく。
自分という、存在すら、認■できなく、なってい■。
目■前は、暗く、意■は、遠く。全て■『無』へ■還って■く。
蛇は、獲■を、生きたまま、飲■込んで、そ■まま、消■液で、■っくりと、溶■して、■くという。
その、『溶■される■物』も、今の、■分の様な、『消え■いく恐■』を
■っくりと、味■いな■ら、息■えたの、だ■う。
溶■し■■く■は、『岩下■美』■、五感■、精■。
■後に、一欠■■だ■、残っ■、■■の■骸で、彼■■、呟■■。
最■■、■後■、■悔■、■葉。
聞■■■■程、掠■■■■■、確■■、■■■■。
ドうシテ、こウナッたンダろウ。
――――――『■■■■』が、消えた。
【■■■■@■■■■■■■■■ 消滅】
ドうシテ、こウナッたンダろウ。
――――――『■■■■』が、消えた。
【■■■■@■■■■■■■■■ 消滅】
代理投下終了です。
393 :
SWAT ◆tTv7Dw2KKU :2011/02/16(水) 17:36:31 ID:ACk7YF8w0
クリーチャー同士の戦闘もいいですね
自分も投下します
ダラララララララ…
タタタン…タタン…
霧のたちこめる呪われた街の一角で響き渡る甲高い銃声…
小口径ライフル弾特有の軽い銃声もそれに混じる…
ここに何もかも存在すら認めず…手当たり次第に殺し続ける
一人の化け物がいた…
『全部、終わらせてやる…ヴァアアアアアア』
ダラララララララララララ
タタタタタン…
(彼)の視界は…赤く濁っていた…
『ヒュー…ヒュー…装弾…』
戦闘用のグローブを着けた手が器用にMINIMILMG(軽機関銃)
の箱型弾倉を交換する…
ヒュー
ヒュー
ヒュー
ダラララララララララ
『……ッ…』
べキャ…ゴキ…
(彼)は手当たり次第に動く物に5,56mm弾の雨を降らせる…
目の前にいた動く腐った死体は次々と蜂の巣になり…
後方から掴みかかってきたリビングデッド(ゾンビ)は
そのまま力任せに銃床で頭を叩き潰す…
そんな彼を向かい側の民家から覗く一つの影が居た…
黒い布切れを纏ったそれの手元には…一丁の狙撃銃が握られていた…
『ハッ…こんな茶番に付き合ってられルカ…ニエキらねェ…仕事だぜ』
胡乱な声で黒い布切れを目深に被った化け物は…ちょうど、軽機関銃を
乱射している別の(人ならざるモノ)に照準器のレクティカル(十字線)
を合わせる…
『死ね…』
タアァン
タアァン
タアァン
7,62oNATO弾を使用する高精度セミオート(半自動)狙撃銃の
銃声が3回響き渡る…
ビシャッ
ブシュッ
グシェッ
『■■■■■………』
声にならない悲鳴を上げて道路で軽機関銃を乱射していた
(人ならざるモノ)は既に(死んでいる)身で傷口を庇いながら…
付近にあった遮蔽物…犬の小屋の様なモノの影に隠れる…
『…被弾……した……発砲位置は…』
(彼)はかつて人間だった頃に多用していた…(力)を使う事にした。
ザザザッザー
視界が砂嵐に塗れ…次の瞬間にはこの周辺の(誰か)の視点から
の視界が眼に浮かぶ…いや…正確には視界を(視)ているのだ…
一つ目…目の前に何がなんだか分からない原形をとどめてない肉片…
グシャ…クチャクチャクチャ…ベキッムシャ…
先程(彼)が掃討した腐った死体の一部だった物…を貪っている咀嚼音
違う
二つ目…何処か屋内のようだ…そしていま(彼)が
隠れている犬小屋が視界の隅に確認できる…
<ハッ…出て来いよ…居るのは分ってんだゼ?…ヒヒヒヒ>
そんな事を言いつつ視界の(主)は手に持っているドイツ製の狙撃銃を
無性に撫で回してる…
無論、こちらが犬小屋の影に居る事を承知で…
ザザザ…
『……………』
視界を元に戻した(彼)は迷彩戦闘服のポーチから一本の小型で棒状の物
を取り出し…肩に背負っていた自動小銃を一丁肩から外して、その銃口に
まるで飾りを付け加えるような簡便さで…カチャッと小気味いい音を立てつつ
取り付けた。
その銃口を山なりに犬小屋の向こう側の民家の二階に狙いをつける形で
掲げる…
一方、民家の二階から外を照準器で探し回っていた…元UBCS隊員
アーノルドの(殻)の闇人は…不審がっていた。
『…何処に行きやがった?…炙り出してやる…』
そう言うと黒い布切れに覆われた元の戦闘服のポーチから
3個のHE手榴弾を引き抜き、無造作にピンを抜いて放り出そうと窓から
目を離した隙に…
ポンッ
シャンパンやワインのコルクを抜く音の様な
軽い破裂音
ヒュルルルルルルルルル…
『!?』
軽い爆発音が当たりに響き渡り、民家の二階部分の窓が爆発して
残骸が飛散する…
(彼)は小銃を背負いなおし、再びMINIMILMGを腰だめに構えながら
その場を後にする…
【A-3雛城高校周辺/一日目夜中】
【クリーチャー】
【屍人(永井頼人)】
[状態]腹部・左腕に銃創(回復中)
[装備]迷彩服2型、MINIMI軽機関銃(180/200)、ライト
[道具]89式小銃(30/30)、89式小銃(30/30)、MINIMI箱型弾帯(200×3)、89式小銃用弾倉×12
TNT高性能炸薬×4本、9mm機関拳銃(25/25)、06式小銃用てき弾×4、89式小銃用銃剣×2
9mm機関拳銃用弾倉×6、TNT用着火信管
[思考・状況]
基本行動指針:眼に入るもの全てを殲滅
1:引き続き新たな目標(呼ばれし者及びクリーチャー)を探し殲滅する
【備考】永井頼人(屍人)の攻撃対象は無差別です
彼が去ってから数分後…吹き飛ばされた民家の二階で一体の
闇人が死にかけていた…
闇人はその場で痙攣しながらも何とか回復するのを待って、
この場を移動しようと考えていた…
ギシッ
不意に下の階から…軋む音が聞こえる
ギシ
ギシ
ギシ
足音の正体はこの闇人が此処を狩場にしようと
最初にやってきたときに居た屍人…意識が胡乱だったので
その場で頭を撃ち抜いて動けなくしていた筈だったが…
そいつは片手に鋭利な刃物を持っていた…
そのまま一歩ずつ近づき…傍に座り込むと…
ぐさっ…
ざくっ
ざくっざくっざく…
動けなくなっている闇人を滅多刺しにし始めた
ざくっ
ざくっ
ざくっ
【A-3雛城高校付近/一日目夜中】
【クリーチャー】
【屍人(美浜奈保子)】
[状態]
[装備]出刃包丁
[道具]無し
[思考・状況]
基本行動指針:???
1:????
*民家内にはPSG-1(10/10)が放置されています
*民家周辺には多数のゾンビの死骸と大量の空薬莢が転がっています
(掃討者)投下終了です…トリップが違うのはこちらのミスです、すいません
投下乙です
代理投下を開始します
「グギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ」
軽快な爪音で金属と化した地面を蹴り、風を切り裂き、闇を駆け抜ける協力者の背中の上で、
園崎詩音はとびっきりの笑みをこぼしていた。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ」
笑みを向ける相手は、彼女が狂おしい程の愛しさを抱いている『北条悟史』。
その悟史が今、詩音を呼んでいた。
悟史の『声』が、今の彼女には聞こえていた。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ」
初めは些細な『音』だった。
十字路に差し掛かった時、詩音の耳が拾ったのは、気のせいにも感じる程度の微かな『音』。
空耳だろうと捨ておいて協力者の為に東のルートに向かう事も出来たが、
念の為に、と音の方角――――南へと進み、そして進めば進む程、
その『音』は徐々に明瞭に聞こえてきた。小刻みに。断続的に。
何者かの悲鳴を伴って。何物かの破壊音を伴って。
「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ」
その『音』は紛れもなく、銃声だった。
おそらくはマシンガン。もしくはそれに近い銃火器。
それらの類の武器で、化物やら何やらを破壊している音だった。
呼ばれし者――――殺すべき獲物が奏でている音だと詩音はすぐに認識した。
認識と同時に、『音』に『声』が重なり合う。
銃声と想い人の声とが混ざり合う。
「こっちだよ、詩音」と、想い人の声が脳内に響き渡る。
「けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ」
彼女は狂った思考で、瞬時に、冷静に、こう導き出したのだ。
獲物を皆殺しにすれば、ご褒美で悟史くんを生き返らせる事が出来る。
つまりは――――獲物を1人殺せば、その分悟史くんに近づける、と。
つまりは――――殺す獲物が奏でる音に近づけば、その分悟史くんに近づける、と。
つまりは――――悟史くんが、生き返る為に獲物の居場所を教えてくれてるも同然だ、と。
つまりは――――悟史くんが呼んでいるのだ、と。
「けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ」
協力者をそのまま南へとまっすぐ走らせていると、二つ目の十字路に辿り着いた。
銃声はまだまだ南側から聞こえてくる。
だが、これ以上彼女達が南下する必要は無かった。
(あそこだ!)
通り右前方の闇の中。テンポよく響く銃声に合わせて閃光が生じていた。
獲物の姿は視認出来ない。
閃光は闇の奥で、銃弾を撃ち出すほんの短い瞬間だけに生じている為、距離感も掴めない。
だが、今の詩音にそんな事は大したマイナスにはならなかった。
獲物はその辺りに居る。と、それだけ分かれば充分だ。
「ワンちゃん、止まって!」
協力者が徐々にスピードを落とし、道の真ん中で停止する。
詩音は跨ったままウィンチェスターを構え、暗視スコープを覗き見た。
緑で描き出される、円に繰り抜かれた世界を、ゆっくりと動かしていく。
閃光が走っていたのは、1軒の家の塀の中だった。
どうやらこの獲物は住宅の敷地内で戦っていたようだ。
(は〜ん、だから光がここまで見えなかったんだ。別にまあどうでもいいけど!)
先程、下に居る協力者を狙った時よりもその住宅までの距離は遠く、
暗視スコープ越しとは言え決して鮮明な視界が得られている訳では無いが、
大体の状況は分かった。
通りには、多くの怪物共が閃光の走る住宅へと群がっている。
獲物はあの怪物共に追い詰められでもしたのか、逃げずに抵抗しているらしい。
(だったらしばらく高みの見物としゃれこみましょうか)
獲物が怪物と戦っているのなら、これ以上近づく必要は無い。
怪物に殺されるのを待てば良いし、もしもあの怪物の群れを殲滅させるようであれば、
殲滅したと思い込んで油断したところにこのライフルの銃弾をブチこんでやれば良いのだ。
暗視スコープの中で、怪物共は次々に住宅に押し寄せる。
閃光、銃声、更に咆哮――獲物のものだろう――が、殆ど止まる事なく響き続けている。
そして、状況に変化が起こるまでにはそれ程の時間はかからなかった。
押し寄せる怪物の数が明らかに減り始めている。
塀の中の閃光が徐々に通り側に寄り始めている。
どうやらこの戦いは獲物側が優勢。怪物が殲滅されるのは時間の問題のようだ。
「ふぅん…………なかなか、やるじゃない」
遂には、通りにいる怪物の身体が弾け飛んだ。
1体、また1体と銃弾に撃ち抜かれ、倒れていく。
瞬く間に、通りに残る怪物は片手で数えられる程度の数となった。
(それじゃあそろそろ出て…………来た!)
その数体が崩れ落ちると、1人の人物が小走りで門の奥から出てきた。
やはり距離が遠く、スコープに映るのは不鮮明な映像。
それでも朧気に分かるのは、その人物が迷彩服らしき着衣を身につけている事と、
体格からして男であろう事。
顔は――――何かを被っているのか、またはペイントでもしているのか、
この暗視スコープ越しにはのっぺらぼうの様にも見えた。
(自衛隊? それともサバイバルゲームマニアかな?
どっちでも構わないけど、よかったね! こんな戦場で死ねるなら本望でしょう?
ね、悟史くんもそう思うよね!)
頬の肉が限界以上に吊り上がる。
とびっきりの、そのまたとびっきりの笑みを作り、詩音は引き金を引いた。
反動で浮き上がった銃身を直ぐ様まっすぐ戻すと、見えたのは弓形に仰け反った男の姿。
悟史への想いが込められた弾丸は、男の背中に命中したのだ。
続け様に詩音は銃の機関部下側に突き出たレバーを素早く操作し、次弾を装填。
動きの止まった男に、駄目押しの銃弾を撃ち込んだ。
「グギャ、ギャ、ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!」
1人片付けた。これで悟史に1歩近付いた。
そう思えば、自然と笑いが込み上げてきた。
地面に倒れ込む男を見届けてやろうと、詩音は再び銃身を男へと戻す。と――――
(……は?!)
緑で描き出される、円に繰り抜かれた世界の中では、
地面に倒れる筈の男が平然と向き直していた。
手に持つ銃器が、詩音に向けられていた。
黒く染まった顔には、やはり黒い涙のようなものが流れていた。
黒い涙――――いや、違う。
男が足を止め、しっかりと顔をこちらに向けている今だからこそ、気付いた。
あれは、あの死なない亡者が流していた、赤い涙――――。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオォ』
亡者が、吼えた。
まずい。詩音がそう思った時には銃声が轟いていた。
怪物共を殺戮してきた銃弾が、詩音の方向を目掛けていた。
詩音の上体が、大きく後ろに反り返った。
ウィンチェスターが宙に放り出される。
特徴的な色の長髪が、銃弾に絡め取られていく。
背中と後頭部が、地面に叩きつけられた。
意識が、混濁し―――――――。
詩音の身体は、十字路の曲がり角の先――亡者からは死角となる位置で横たわっていた。
すぐ側に居るのは、協力者。
感情の読み取れない目で、協力者は横たわる詩音を振り返っていたが、
その視線を気にしている余裕は彼女には無かった。
(あ、危な、かった…………)
今の一瞬で、全身から冷や汗が吹き出していた。
呼吸すらもままならない程に、心臓が喧しく動いていた。
間違いなく今、詩音は死んでいただろう。
この、彼女を見下ろしている協力者がいなかったのなら。
そう、詩音は被弾したわけではない。
男――――いや、亡者がマシンガンを撃ち出すよりも速く、
この頼れる協力者は回避行動を取ってくれていた。
ある程度は落下を避ける為に、と足に協力者が纏う布を巻きつけていた事が幸いした。
急に走り出した協力者の上でバランスを保てず、大きく反り返り転倒はしたが、
協力者が止まらずに走ってくれたおかげで詩音の身体は倒れた状態のまま地面を引っ張られ、被弾だけは免れる結果となったのだ。
打ちつけたり引きずられたりした為に背中や頭は痛むが、
命を失う事に比べればそれも安すぎる代償だった。
『おおおおオオオオオオオオォォォォォォォおおおオオオオォ!!!』
命の危険による恐怖で放心気味だった詩音の耳に、亡者の叫びが届けられた。
来る――――考えると同時に身体は跳ね上がるように起き上がった。
(ちくしょう! 化物かい! ちくしょう! 騙しやがって!)
騙された――――その怒りが詩音の中で渦巻いていた。
しかし、確かに怒りはあるが、最早アレを殺す事に意味はない事にも詩音は気付いていた。
呼ばれし者ですらなく、あれ程の銃器を持つ化物など、戦う必要は無いのだ。
悟史を生き返らせるという目的を遂行する上では、あんな化物の相手はリスキーなだけ。
時間と弾丸、自身の命の無駄使いでしかない。
詩音は協力者に跳び乗ると、この場を早く離れる為に命じようとした。そして――――
(待てよ……)
ふと思い止まった。
確かにあの化物と戦う事は、リスクが高い。
だが、勝利する事で得られるメリットも存在する。
あの化物に勝てば、あの銃器――マシンガンが手に入る。それに気付いたのだ。
他にも何かしらの武器を持っているかもしれない。
持ち運べる武器に限界はあるが、今よりも強力な装備になるなら今後の戦いは益々有利に運べる。だったら――――。
詩音は逡巡する。
戦うか、逃げ出すか。
答えを出すまでの制限時間は、咆哮と共に近づいてきていた。
【B-2南側の十字路付近/一日目夜】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:肉体疲労(小)、後頭部に軽い打撲と擦り傷、背中に打撲、L5
[装備]:レミントンM870ソードオフVer(残弾6/6)、
ショルダーバッグ、ヘッドライト、トレンチコート、弾帯×3
[道具]:羊皮紙の名簿、ハンティングナイフ、30-30Winchester弾(46/50)、
12ゲージショットシェル(47/50)、携帯ラジオ、栄養ドリンク×3、携帯用救急キット、地図
[思考・状況]
基本行動方針:名簿の人間を皆殺しにし、北条悟史を生き返らせる
1:あいつを倒す? それとも逃げる?
2:『時計塔』を目指す
3:獲物を探す
※詩音の目指す『時計搭』の位置には灯台があります。
※ケルブの纏っている布を自分の足に巻きつけて最低限の落ちない工夫をしています。
※ケルブはT-ウィルスに感染しています。今後どのような変化があるのかは不明です。
※詩音の近くにウィンチェスターM1894暗視スコープ付き(残弾5/7)が落ちています。
拾うかどうかは次の書き手さんに一任します。
【B-3北部/一日目夜】
【永井頼人(屍人)】
[状態]:胴体に銃撃による2つの怪我(再生中)
[装備]:迷彩服2型、MINIMI軽機関銃(86/200)、ライト
[道具]:89式小銃(30/30)、89式小銃(30/30)、MINIMI箱型弾帯(200×2)、89式小銃用弾倉×12
TNT高性能炸薬×4本、9mm機関拳銃(25/25)06式小銃用てき弾×5、89式小銃用銃剣×2
9mm機関拳銃用弾倉×6、TNT用着火信管
[思考・状況]
基本行動指針:眼に入るもの全てを殲滅
1:目標(呼ばれし者及びクリーチャー)を探し殲滅する
※攻撃対象は無差別です。特別な目標として詩音やケルブを追う事はありません。
※MINIMI箱型弾帯を2つ消費しています。
※B-3北部ゴードン家、或いはその付近の家の敷地内に大量の怪物の死骸があります。
具体的な位置は後の書き手さんに一任します。
※永井屍人が戦っていたクリーチャーが何かは後の書き手さんに一任します。
>>404 投下乙です……と言いたいところですが、感想の前に1つ伺いたい事があります。
昨日したらばで永井頼人、園崎詩音の「ジェノサイダー」の投下がありましたが、そちらはご確認頂けましたでしょうか?
永井の現在地、負傷や弾丸の状態、展開などから今一リレーとしての体がなされていない様に見受けられましたので、
もしかしたら昨日の投下を見落とされたのではないかと思い質問させて頂きました。
単にこちらの読み込み不足でしたら申し訳ない事なのですが、返答頂けましたら幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
>>405 代理投下お疲れ様でした。
413 :
SWAT ◆tTv7Dw2KKU :2011/02/17(木) 19:39:25 ID:6WfPcix+0
しまった…したらばの確認を忘れてました(掃討者)は見なかった事に…
取りあえず大人しくアーカイブ作りに専念しようと思いますが…やはり
したらばで活動したほうが良いのでしょうか?
>>414 やはりそうでしたか。了解しました。
今回の「掃討者」は後程番外編という名の没ネタの方へ収録させて頂きます。
したらばについては、そうですね。
このような事がまた起こらないとも限りませんし、よろしければあちらで活動して頂けると助かります。
今後もよろしくお願いします!
代理投下開始します。
Sensible solution = Realistic Conception
<Credit/Wisdom/Thought>
{It is true that the ability
to be puzzled is the beginning of wisdom.}
――――まず状況を整理しよう。
自分は気がついたら異境の地にいた。
ここがアメリカのサイレントヒルであるかどうかはわからないが、暫定的にそう考えておく。
現在地は調査を続けていけば、いずれわかるだろう。
次に、失踪した北条悟史(プラーガ)と『あるもの』。
前者は外見がわかるが、後者はわからない。
北条悟史は発見次第、経過・結果を調べておくとして、『あるもの』は基本的に諦めた方がいいだろう。
そもそも、姿形の知れぬものを捜す術などない。
優先順位としては、
・サイレンヒルの脱出。
・北条悟史の捕獲・研究。
当面はこうなる。さらに、これをもとに方法論を構築すると、
・サイレントヒルの調査。
これに尽きる。上述の二項目はこれで対処できるのだ。
(さて、どうしたものかしらね)
鷹野はイライラを何とか抑え、西洋風のおぼろげな街並みを見まわす。
異国で困った時は大使館に頼るのが妥当なのだが、付近にそれがあるのだろうか。
あるいは警察・市役所……そういった公共機関でもいいのだが。
生憎、地図も指針も持ち合わせていない。人に尋ねようにも、ここはまるで人の気配――生命の感覚とも言える――がまるでない。
とりあえず歩くことも考えたが、無闇に動くのは体力の浪費につながる。遭難した場合、助けが来るまでじっとしているのがセオリーである。
どう動くべきか、彼女は悩んでいた。情報が、手段が少なすぎる。こういう時、一つのミスが全てをダメにするものだ。
と、そこで。
サイレン。
冥府からの声。
轟音。
耳を劈く大きな音が彼女の意識を強制的にそちらへ向け、次に周囲の激変を認識させる。
「これは……」
霧の消失。街の腐食。闇の出現。
科学的・常識的な見地ではありえない現象。少なくとも現代のレベルでは説明できない。
(催眠、幻覚、迷彩……可能性はあるにはあるけど、どれも現実的じゃないわね)
イライラを引っ込めた胸に好奇心が躍り出るが、すぐに抑制する。
たしかにこの街に興味はでてきたが、だからといって宿願より優先すべきことではない。
雛見沢でやることをやってから、またここに戻ればいい話だ。
(とりあえず、どこかの施設を訪ねようかしら)
自分のいた診療所には目ぼしいものはなかったし、必要最低限のものはバッグに入っている。
霧が晴れ、暗闇ながらも遠くが見えるようになった周囲に視線を走らせる。
「あら」
それは洋館のように見えた。
日本ではめったにみれない造りで、一部の公共機関や金持ちの邸宅に見られる造形。
(そうね、あれにしましょう)
頼るなら、ただの民家よりああいう屋敷がいい。
経済的に豊かでない人間は他人の困難に無関心か悪意的であることが多い。
たとえ善良であっても、手段がなければ同じだ。
その点、上流層の人間は違う。少なくとも人助けの手段が確立されている。
つまり、頼ってみるだけの価値はあるのだ。
(ノブレスオブリージュに期待するとしましょう)
こんな街にそんな価値観があるかは定かではないが、他に行くあてはない。
<Evaluation/Inspection/Hardship>
{“How long does culture shock last?”she inquired.}
ラクーン大学。彼女が洋館だと思っていたそこは、表記を見間違えなければそう書かれていた。
立派な造りではあったが、よく見ればあちこちに破壊の爪痕が残っており、奇妙なほどの血生臭さがある。
それを引きたてるのは、大学名の下に血で書かれた『研究所』という文字のせいでもあった。
(イタズラ書き……にしては面白みがないけど、普通にペンキや張り紙済むことをどうしてこんな……)
ここの風習だろうか。
(そういうことにしておきましょう)
雛見沢にも奇妙な逸話や習わしがあったので、鷹野は特に気にはしていない。
あんな贈り物をしてくるような連中だ。非常識なエスニシティー(民族性)を持っていても不思議ではないだろう。
キャンパスには警備員どころかセキュリティさえなかった。ここまで無防備だと逆に警戒してしまうのは、
ある種のカルチャーショックなのだろう。鷹野は身に付けている拳銃を一度確認してから、慎重に扉を開いていく。
中には誰もおらず、広々とした空間と仰々しい階段があるだけだった。
大声で呼びかけようと思ったが、すぐにそれを中止する。
あの血文字が気になる。奇怪な寄生虫を送りつけてくる連中が、まともじゃないのは言うまでもないが、
問題は「どこまでまともじゃないか」ということだ。
閉鎖的な集落で根付く風習が、どこまで現代社会から乖離しているか。
鷹野はその疑問が持つ重みをよくわかっている。
腹を裂いて腸を流す行為や、数多の拷問器具、それらを肯定する儀式……。
自分がこの場所でその対象にならないと断言はできない。ゆえに、音もなく探索を開始する。
(妙……いえ、妙なのは今に始まったことじゃないけど……やっぱり妙よね)
しばらく校内を歩いたが、相変わらず人はいなかった。こんな夜中に学生や講師がいないのはわかるが、
宿直の人間さえいないのは妙だ。
(ここはもう廃校になっているとすれば……いえ、それでも釈然としないわ)
大学ではなく、研究所として活動しているなら、研究員がいるだろう。
それに、そういった機関なら保安は尚更必要だ。やはり疑念は拭えない。
ヌルリ。
足元に妙な感触。今まで気付かれないように何も点灯せずに歩いていたが、これはさすがに気になる。
バッグから懐中電灯を取り出し、一瞬だけ下を照らす。
赤。
気が進まないが、しゃがんで鼻を近づける。
慣れ親しんだ臭い。
すなわち、血である。
自分が血の水たまりに立っているのだと理解した鷹野は、恐る恐る懐中電灯の光を周囲に走らせる。
夥しいまでの赤。
つまり、大量の血液。
あるいは狂気と惨劇。
(猟奇殺人……? それとも学生による集団ヒステリー、暴動……可能性は尽きないわね)
暗闇と異国の空気で気付けなかった。彼女は床や壁を改めて調べる。
血液の劣化を見るに、そこまで日数は経過していない。
生死はともかく、ここに大勢の人間がいたのは間違いないだろう。
しかし、現時点で一人もいない。これはどういうことだろう。
(死体を運んだか、全員が病院に向かったか……あるいは……)
そこまで考えて、鷹野は首を振る。止まっていた足を再び働かせ、彼女は奥へと進む。
さすがにそれはない。そんなことがあってたまるものか。
死者が勝手に歩き回るなど……。
【D-3/研究所(ラクーン大学内)/一日目夜】
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に】
[状態]健康、自分を呼んだ者に対する強い怒りと憎悪、雛見沢症候群発症?
[装備]拳銃、懐中電灯
[道具]手提げバッグ(中身不明)、プラーガに関する資料、サイレントヒルから来た手紙
[思考・状況]
基本行動指針:野望の成就の為に、一刻も早くサイレントヒルから脱出する。手段は選ばない。
1:此処について知っておきたい。
2:プラーガの被験体(北条悟史)も探しておく。
3:『あるもの』の効力とは……?
※手提げバッグにはまだ何か入っているようです。
以上で代理投下終了です。
422 :
ゲーム好き名無しさん:2011/02/21(月) 13:44:37.70 ID:dhgrmxcL0
代理投下します
「でも、大丈夫かな? こんなことして……」
得意げに語られていた怪談話を遮るように、落ち着いた風貌の少女が心配そうに首を傾げた。呟くような声は、微かな残響と共に廊下を抜けて行く。
凝った闇に包まれた旧校舎の廊下は、ほんの数時間前まで少年少女たちの嬌声が響いていた場所とは似て非なる空間へと見事に変貌を遂げていた。周囲は海底の岩礁の如く静まり返り、
針の落ちる音すら聞き取れてしまいそうだ。
学校というものは、昼と夜、それぞれ違う二つの顔を使い分けているものらしい。
昼こそ人間はここの支配者だが、今は違う。校庭の木々は無責任な傍観者のように、天へ向けた枝々を撓らせて囃し立てている。
梅雨明けの湿り気を帯びた空気は日中の熱が残っていたものの、時折冷たいものが混じっていた。
「一緒に来といて何言ってんですか? だいたいあたし今日、逸島センパイ呼んでませんけどー?」
怪談話に水を差され、多少幼い容貌の少女が口をとがらせる。と、それを聞き咎めたように、懐中電灯を持つ大人びた少女が苛立ちまみれに息を吐いた。
「チサトはあたしが呼んだの! チサトだって先輩なんだから、ちょっとは気ィ使いなさいよね!」
そして踵を返し、大人びた少女は歩みを再開した。チサトと呼ばれた少女も、一括りにした髪を揺らしてそれに続く。残った少女は、二つの後姿を多少不満げに見つめていたが、
すぐに愛くるしい表情に戻って踊るような足取りで二人に付いていった。
夜気には夏の匂いが満ちつつあった――。
岸井ミカは、愕然とした面持ちで手の中の携帯電話を見つめた。
確かに放置してきたはずだ。だけれども、今それは彼女の手の中にある。急性の記憶喪失になったわけでないのならば、これは携帯電話が独りでに戻ってきたということだ。
手に収まるプラスチックの手触りが酷くおぞましい物に感じられた。仄かに光る液晶画面は今は二十一時少し過ぎと知らせていた。
"死者"からの電話――。
遠くへと投げ捨ててしまいたい。もしくはアスファルトに叩きつけて壊してしまいたい。そんな衝動に駆られる。
冷えた外気のせいだけではない寒気が、全身を這うように包んでいた。
衝動を辛うじて留めるのは、電話の主のことだ。あの声は、逸島チサトのそれに似ていた。
似ていただけだ。すぐにミカは否定した。
まず、この携帯電話は己のものではない。なぜかディパックに入っていた代物だ。ミカ自身ですら知らない番号を、どうしてチサトが知っていたのか。
適当に番号を押して偶然繋がることはある。しかし、それがこれまた"偶然"にミカの持つ電話へと繋がるものだろうか。
ミカは一つ嘆息した。
テレビドラマだって、そんな陳腐な奇跡は起こさない。加えて、チサトはそういった悪戯をする性格ではない。
この電話の持ち主がチサトであるという場合はどうだろうか。人知れずディパックに放り込み、ミカを怖がらせようと一芝居打った。時計もチサトが細工したと考えれば、一応の理由は付く。
しかし、ミカすら知らない最新機種をチサトが持っているのは不自然だし、彼女はそういった類の悪ふざけを毛嫌いしている当人だ。何よりも、電話が勝手に戻ってきたことの理由にはならない。
いくら考えたところで、この電話の異常性を否定できない。
それでも、あれは死者からの電話ではない。もしくは、あの声はチサトではない。
ミカは自分を説得するように頷いた。
チサトは、声を聞きたかった人間の一人だ。しかし、電話の主が彼女であってはならないのだ。チサトだと認めてしまったら、それは同時に彼女が死んでいることを意味してしまう。
チサトが死んでいる。最も親しい人間の一人に、もう会うことが出来ない。そんなことを考えるだけでも嫌だった。自分でも驚くほどに怖いと感じた。
ミカは手の中の携帯電話を見つめた。時刻を示す数字が一つ増える。今は正常な動作をしているようだ。
液晶から発せられる光は存外に強く、ある程度周囲の闇を照らしてくれている。また、外に出たせいだろうか、圏外の文字は消えていた。
落ち着こうと、ミカは大きく深呼吸した。
例の騒動の後、ユカリが電話機を買い換えたという話は聞いていない。電話は異常なく使えているのだ。
死者からの電話の対応については、一先ず置いておこう。
先ほどはどうであれ、今は普通に動いているならば、この電話で助けが呼べるのではないだろうか。
逸る気持ちを抑え、ひとまずミカは携帯電話を振りまわして周囲を確認した。
ミカがいる場所は裏路地、それも袋小路のようだ。三方を見上げるほど高い壁に囲まれ、道幅も狭い。廃棄された段ボール箱やビラなどが無造作に散らばっていた。
平時であっても、あまり足を踏み入れたい場所ではない。
左手に何かの店舗の裏口らしき扉を見つける。赤黒く朽ちた外壁と扉だが、どこか如何わしい雰囲気を放っていた。
周囲には、ボーリング場に居た様なお化けは勿論のこと、動くものは何もない。風の音が微かに聞こえる程度だ。エディーも、とうに何処かへ行ってしまったのだろう。
ミカは安堵の息を吐き、手近なダンボール箱の陰に身をひそめた。ちらちらと見通せるはずのない闇に眼を馳せながら、携帯電話の数字を叩いていく。
とりあえずは110番。入力し、通話ボタンを押して見ると数字が躍り出した。こうして相手にかけるらしい。
当然というべきか繋がらない。日本ではないのだから仕方ない。かといって、アメリカの警察の番号は見当もつかない。
適当にボタンを操作していると、着信履歴が出てきた。先ほどの電話の履歴が出る。しかし、時刻も番号も文字化けしていて全く読み取れない。
履歴はそれだけだった。この持ち主は友達がいないらしい。幾度か中央のボタンを押してみると、今度はリダイヤル画面が出てきた。
記録されている番号は4つ――5559400、0352293339、0366757283、5552368。
日付は、最後のものが三月だった。何処かに繋がれば、そこから助けを呼んで貰える。
一旦顔を挙げて周囲に何もいないことを確認してから、期待を込めて表示された番号を発信した。
僅かな沈黙の後、呼び出し音が聞こえた。繋がったと、ミカは顔を綻ばせた。しかし、誰も出ない。幾度も呼び出しを重ね、やがて切れた。数回かけ直したが、先と同じく呼び出し音が鳴るだけで何も起こらない。
失意にミカは表情を沈めたが、この電話が使えることを確認できただけでも成果はあると思い直した。何事も捉えようだ。物事には幸も不幸もないのだから。それを決めるのは、自分自身なのだから。
気を取り直し、ミカは次の番号に発信した。しかし今度は呼び出し音すらなく、不通を示す電子音だけが耳に届く。三つ目の番号も同じく不通だった。
残る番号は一つだけ――。ミカは生唾を飲み込んだ。
これも通じなければ、電話で打てる手はなくなる。最初の番号にかけ続けてみるか。それこそ運に任せて数字を押していくことも一興かもしれない。しかし、それよりもここから移動するのが先だろう。
意を決して通話ボタンに指が触れる直前、画面が切り替わった。ピリリリリと、電子音が路地に鳴り響く。その音の大きさに、思わずミカの身体が跳ねた。
画面には文字化けした数字が躍っている。液晶画面に映る時刻は零時に変わっていた。
"死者"からの電話だ
口の中が急速に乾き、鼓動が早鐘を打つように激しくなる。まだ対処法は思い出していない。ただ、間違えれば無事には済まないということだけは憶えている。
都市伝説では、まず電話に出てはいけないということだった。だが、ミカは既に一度受け取ってしまっている。その場合はどうなるのだったろうか。
出た方がいい。そう直感が告げるが、ミカの指は躊躇うように宙を滑った。
ここで出れば、疑念を確認することになってしまう。声の主がチサトかどうか、分かってしまう。チサトであって欲しくないが、それ以外であっても――それはそれで怖い。
呼び出し音は鳴り続く。
ミカは観念したように嘆息した。悩むのは性に合わない。出たとこ勝負だ。ミカは通話ボタンを押した。携帯電話を耳に押し当てる。
――あのね、あのね、あのね…………
肉声のようで、古いテープを再生しているかのように機械的な声。直接頭に語りかけてくるような響きを吟味するように、ミカは目を閉じた。
ミカちゃん――。
つい夕方に聞いた声と重ねる。
唇を舐めて湿らせ、ミカは口を開いた。最初は掠れて声にならず、息を吸い直して言い直す。
「……逸島、センパイ?」
絶え間なく続いていた声が止まった。息を殺して、ミカは返答を待つ。その沈黙は、酷く長く感じられた。
――ミカちゃん。あのね、私……――
記憶に残る声と同じものが耳音で響いた。無感情なのに、それでも温かみを感じさせる声色。鼻の奥が痛くなり、嗚咽が漏れそうになる。ミカは甲で目元を拭うと、わざと明るい声で捲し立てた。
「もう怖がらせないでくださいよー。マジで、チョービビったんですからねー? けど、いきなり性格マルくなりましたね。チョットした進歩、いや進化ですって、コレは――」
なんとなく、チサトに言葉を発する隙を与えたくなかった。本当は助けを求めたいのに、そうするのが怖ろしい。
知りたくないことまで、チサトから告げられてしまう予感がある。いや、確信と言ってもいい。
だから、ミカはとりとめもないことをしゃべり続ける。
けれども、息は続かない。やがて、言葉が途切れた。
――ミカちゃん。私、もう死んでるの……。
チサトがぽつりと告げた。
狙っていたのか。、もしかしたら、ミカが喋っている間、ずっと繰り返していたのかもしれない。
しかし、思っていたよりも驚きは少なかった。やっぱりかと、胸に重い鉛が詰まった様な気分になっただけだ。
本当は、ミカ自身も分かっていたのだ。これが一番筋の通る答えだったのだから。
それでも、視界がまた歪んで見えにくくなる。
「……ジョーダンきついなー、本当……夢の中でだって、センパイに死んでほしく、ないのに」
幾ばくかの願望も込めて、ミカは零した。後半は殆ど言葉にならなかったが。
――ごめんね。ミカちゃんは、この街で死んだら駄目だよ。
「センパイも、ここにいたの……?」
――……うん。この街にはね、沢山の人たちの想いが囚われてる。苦しい、哀しい――そんな気持ちだけになってしまって、大きな澱みを作ってる。私も、もう少ししたらその一部になるの。だから……ミカちゃんは私みたいにならないで。ミカちゃんは、ミカちゃんでいて。
抑揚などないのに、チサトの声は優しかった。目を閉じれば、すぐ傍でチサトの体温すら感じられそうな気がした。
だが、もうそんなことはない。控え目な笑顔も、演歌を熱唱する姿も、もう見られない。
悲しいというよりも、とても寂しいとミカは思った。図書室の娘と同じだ。チサトもまた、あの娘と同じように自分を置いていってしまう。
「自分にも無理だったことを、カンタンに言うんだもんな……」
――ミカちゃんと同じように頑張っている人たちがいるよ。強くて眩しい気持ちを幾つも感じる。ミカちゃん、その人たちを助けてあげて。
無理だ。と、胸中で呟く。
他に人がいるのは確かだろう。少なくともエディーはいるのだから。
しかし、ミカ自身にそんな力も勇気もない。学校の中でうまく立ち回れるのとこれは全然別のことだ。
ミカが怪異に巻き込まれても平気だったのは、ユカリやチサトが一緒に居てくれたからだ。懸命に、自分を助けてくれたからだ。
ミカは周りを包む夜闇を見つめた。
ユカリたちと初めて冒険をした、あの夏の日。この纏わりつくような闇は、あの日のものととてもよく似ているように思えた。
だが、違うのだ。あの夏と同じものは戻ってこない。一人は今傍に居ないし、もう一人は永遠に失われてしまった。声は聞こえるが、もう会えない。
近いものすら――二度と作れない。
永遠に続くと思っていたのに、終わりはこんなにも早い。
泣き出しそうになるのを、ミカは大きく息を吸って堪える。
――無理だなんて思ったら駄目だよ。
ミカの胸の内を覗いたかのように、チサトが続けた。
――この街は現実だけど、本物でもない。紛い物だから、本物のミカちゃんたちには、元々勝てやしないの。実体があるってことは、それだけで、凄く強いんだから。
「あたし、弱いですよ……」
――ミカちゃんは、強い、よ。だって……眩しい、もの。こんなにも、温かいもの。こんな街、なんかに、負けて、やらないで。
チサトの声が段々と細く、遠くなっていく。
別れが近い。
ミカにも、それぐらいは分かる。
「逸島センパイ! そんなの――!」
――ユカリちゃんも、いる、の。感じるの。助けて、あげて……。ユカリちゃんは、寂しがり、屋、だか……っている、でし……う? 会えな……ど、私た……ものように、一緒……だ……んだね。
チサトが消えてしまう。まだ話したいことがあるのに。もっと居てほしいのに。
行かないで。ごめんなさい。ありがとう。ずっと楽しかった。チサトに出会えて本当によかった。
伝えたい言葉が次々に浮かんでは消えていく。
言うべきは、感謝の言葉でも、謝罪の言葉でもない。ミカは送り出すのだから、チサトに想い残させてはいけない。
もう彼女に甘えることは出来ないのだから。
こんな別れは二度目だ。初めての痛みじゃない。我慢できる――はずだ。
ミカは目元を指で拭うと、大げさに笑って見せた。
「もう、仕方ないセンパイですねー。ま、あたしに任せてくださーい。長谷川センパイなんて、ちょちょいのちょいと助けちゃいますから。だから――」
安心してください。
懸命に喉を震わせて、ミカは告げた。
嘘でも、そう言わなければならない。思いを残せば、チサトはサクラやタタラといった宙ぶらりんなものになってしまう。
そんなことは嫌だった。
電話の向こうで、チサトが笑みをこぼしたような気がした。
――ありが……う……さよなら、ミカちゃ……――
声は掠れて、風の音のようになり――やがて消えた。ぷつと音を立て、電話が切れる。
液晶画面は零時から、通常の時刻に戻っていた。
電源ボタンを押し、通話を終了する。
「バイバイ……逸島センパイ……」
ぽつりと独りごちた後、ミカはハンカチで目元を覆った。一頻り肩を震わせた後でハンカチを仕舞い、残っていた番号に電話をかける。
ほどなくして、ミカは電話を切った。結局、最後の番号も繋がりはしなかった。
しかし、ミカの面に然程落胆の色はない。電話は役に立たなかったが、ただそれだけだ。
誰だか分からないが、“相手”がそういうつもりならば受けて立つ。
本音ではなくとも、ユカリを助けるとチサトに約束したのだ。
今は嘘でも、これから本当のことにすればいい。ユカリと会って、チサトの言う他の人たちと共にこんな街からおさらばする。
そして、ユカリと一緒に思い切り泣いてやるのだ。
ミカは携帯電話を閉じ、人知れず上空を睨みつけた。星一つない真っ暗闇で何も見えないが、気にもせずにミカは鼻で笑った。
「ニッポンの女子高生ナメるなよ。来年は十七歳になるんだぞ。一番アブない年頃なんだからね」
と、そう啖呵を切ったミカの鼻先を何かが横切り、風が髪を撫でていった。そして、ミカの背後でどたりと音がした。
恐る恐る振り返り、開いた携帯電話の液晶画面を向け――ミカは一目散に逃げ出した。
見たのは一瞬だが、充分だった。
腐った肉のような肌、大きな両翼、触手の蠢く爬虫類のような頭部。
背後で、キィッという鋭い声がした。
【B-5ヘブンスナイト裏口付近/一日目夜中】
【岸井ミカ@トワイライトシンドローム】
[状態]:腕に掠り傷、極度の精神疲労、挫け気味の決意
[装備]:携帯電話
[道具]:黄色いディバッグ、筆記用具、小物ポーチ、三種の神器(カメラ、ポケベル、MDウォークマン)
黒革の手帳、書き込みのある観光地図、オカルト雑誌『月刊Mo』最新号
[思考・状況]
基本行動方針:長谷川ユカリを優先的に、生存者を探す。
0:ナニあれ!? ナニあれ!? 何なのアレ!?
1:逃げる。
2:生存者を捜す。
※90年代の人間であるため、携帯電話の使い方は殆ど知りません。
※ミカが「ヘヴンズナイト」へ逃げたのか、はたまた裏路地の出口の方へ逃げたのかは次の方にお任せします。
※唯一繋がった番号≪555-9400≫はアルケミラ病院のもの(出典元:サイレントヒル・シャッタードメモリーズ)です。このサイレントヒル内の施設にならば電話が通じる場合があるようです。
【クリーチャ基本設定】
ナイト・フラッター
出典:『サイレントヒル』シリーズ
形態:複数存在
外見:人間のような体格をした翼竜。頭部らしき部分には複数の触手が蠢いている。
武器:牙と爪
能力:翼で飛行し、上空から急降下して噛みついたり、すれ違いざまに爪で攻撃を仕掛けてくる。
攻撃力:★★☆☆☆
生命力:★★★☆☆
敏捷性:★★★☆☆
行動パターン:普段は上空を飛行している。光に集まってくる習性を持つ。
備考:エア・スクリーマーの裏世界における姿と言ってもよい存在。飛行時よりも歩行時の噛みつきの方が威力が高い。
代理投下終了です
◆BoVaEdQZq.ってやつはここの書き手なんだろ?
西尾ロワでロワ上級者気取って持論吐き散らしたりろくに把握してないキャラを書こうとして有名なセリフ教えてくれとか言ったり、
そこ突っ込まれると自分は受験生だから時間がないだの、本読まないから文章力がないだのグダグダ言い訳したあげく動画サイトで把握しますと抜かし、
予約延長した末に期限切れても申告せず、人から言われてやっと破棄。
その際の弁明が
49 名前: ◆BoVaEdQZq.[sage] 投稿日:2011/02/25(金) 22:43:51
おや今日までじゃなかったかい?
50 名前: ◆BoVaEdQZq.[sage] 投稿日:2011/02/25(金) 23:02:42
ああなるほど、時間ですね。
切れてますわこれ、書き上がってもこれではいかんね
書き手枠一つ空きましたんでどうぞどうぞ
これ。そして破棄したはずなのに30分後にしれっと仮投下スレに投下、譲ったはずの書き手枠を使い潰してる
徹頭徹尾責任感のかけらもない言動しやがって
ここの書き手ならちゃんと囲っておけよ。外に出すなこんなクズ野郎
433 :
ゲーム好き名無しさん:2011/02/26(土) 19:56:14.88 ID:XoIq7Db6O
……誰?
なんか一気にグダグタになっちゃったな
もったいない
一々そんなことを報告するためにこのスレまでくるとかご苦労なこった
文句言いたいなら鳥つき、そして西尾ロワのほうでやれよ
書き手が書き手なら読み手も読み手か
>>435 いやわざわざ来たんじゃなくて普通に今まで何度か読みに来てるからの感想なんだが文章からわからない?
何をそんなにムキになってるか知らないけど
率直な感想すらNGなスレなら謝る
>>437 本気で言ってるみたいだから横レスするが普通にお前の文章を読んだだけではわからないし
あれは感想とは言わない。ただの煽りだよ。
西尾ロワのほう煽り返しにいった奴も居るみたいだしあっちでも軽く揉めてるじゃない。
他ロワの名前を安易に出すな。両ロワのまともな書き手にも迷惑がかかる。
>着信アリ
Gj
ミカとチサトとの絆が改めて確認されましたね、思わず涙目になった。
本編でもよくミカが一方的にチサトに対して刺々してたが、電車編辺りで和解したんだっけ。
…もう覚えてないな、ゲームやり直したくなった
>>437 多分
>>435はあなた宛では無いと思う。そして別にグダグダじゃないから心配ないよ。
>>432 まあ◆BoVaEdQZq.氏には後程説教しとくから、後は任せろ。
>>438 電車編辺りだね。
トワイライトはやり直すのも大変だから、そんな時はWIKIの参考動画をおすすめするよ!
441 :
438:2011/02/27(日) 13:29:47.89 ID:jQI5oEThO
>>437 ごめん、俺も凄まじい勘違いをしてしまった気がする
>>440 む、たしかに。ありがとう。見てみる
でもいつか暇ができたら自分でプレイしたいなw
偶々起きてる時に投下北
代理投下します
「うぇ、気持ちわりぃ。あんだよこれ? おい、マジでこん中に入んのかよ?」
地下鉄へのプラットホームへと続く、狭く暗い階段の手前で、
アベと呼ばれていたチンピラ風の男がうんざりとした様子で顔をしかめ、ボヤいた。
通路の中は、壁も、天井も、階段も、手すりも、全てが“赤”でざわざわと蠢いていた。
それは単なる錆のようにも見える。生物の血管や肉のようにも見える。何かの虫のようにも見える。
具体的に何の物質なのかは一切分からないが、見ていて心地良いものでは無い事は確かだ。
「怖いの? さっきまであれだけはしゃいでたくせに。
『俺さぁ、アメリカの電車乗んの初めてなんだよな〜』とか言って」
「誰だよそれ、全然似てねぇよ。大体怖ぇなんて言ってねーだろ」
「怖くないなら問題ないでしょ? それじゃ、よろしくね」
「……チッ、わぁったよ」
どこか楽し気な口論を終えると、アベは後頭部を掻いてから、目を閉じた。
眉間に皺を寄せ、片手で頭を押さえ、吐息の様な呻き声を漏らす。
そんな、やや苦しんでいる様にも見える体勢のまま、彼はしばらく動きを止めていた。
「アレッサ。これは、何をしているの?」
「見てれば分かるわよ……って言いたいとこだけど、
こっちばかり情報をもらうのもフェアじゃないから、教えてあげる」
クローディアがアレッサと呼んだ少女――ヘザーは、
アベに向けていたものとはまるで違う抑揚のない冷たい口調でそう言い、
やはり冷えきった口調でアベの持つ力について説明を始めた。
それによれば、アベは1つの特殊な力を持っているらしい。
他人や他生物の視界を『借りる』力。
違う生き物の視界を、まるで自分の視界のような感覚で『視る』事が出来るというのだ。
その力がどの程度の範囲まで有効なのかは本人にも不明であるようだが、
アベは今その力で地下世界に潜む怪物の存在を確認しているのだと言う。
興味深い。クローディアは率直にそう思った。
それは、かつてのアレッサやクローディア、そして神のものとはまた質の異なる力だ。
その様な力は、彼女の知る限りでは異教のものだとしても存在しない。
特別な才能の持ち主。そんな人間を“生まれ変わらせたら”果たしてどうなるか。
遊園地で出会った少年などよりも遥かに価値のある実験が出来そうに思える。
制限の課せられている力でも、強力な手駒を手にする事が可能かもしれない。実に、興味深い。
密かに抱いた好奇心で、クローディアは無意識にアベの様子を熟視していた。
「何か、たくらんでない?」
すぐ隣から鋭い視線が突き刺さり、咄嗟に首を横に振った。
実験と良質な素材には興味はあるが、今ここでヘザーと事を構えるつもりは彼女には全く無いのだ。
ダグラスと対峙した時とは違い、神の力も自身の能力も弱体化しているこのコンディション。
いざ戦う事となれば、躊躇いなく撃ち出されるであろうヘザーからの銃弾に抗う術はないのだから。
自分の死は、すなわち神の死と同義。それだけは絶対に避けなければならない。
それを避けるためにも、今は危険を極力冒さない様に立ち回らなければならない。
そもそもこれまでクローディアがヘザーを追い詰めてきたのは、全ては神の復活の為だ。
既に神がヘザーの中にいないのなら、ヘザーの負の感情を育てても何のメリットにもならない。
つまりは今、クローディアは無理にヘザーと敵対する理由を持ち合わせていないのだ。
むしろこの状況ではヘザーと協定関係を結ぶ事にこそ大きなメリットがあると言えるだろう。
ヘザーはクローディアの負の感情を育てるにはこれ以上いない程にうってつけの人物。
こうして隣に立つヘザーの姿を見ているだけでも、クローディアは思い出を刺激されている。
ヘザーの冷たい口調や態度は、愛しいアレッサとの懐かしい日々の思い出を刺激して、壊していく。
変わり果てたアレッサの姿は、それだけでもクローディアの心を悲しさ、やるせなさで抉っていく。
それにより生まれるのは、まごうこと無き負の感情。
神が成長する為の養分は、ヘザーと行動を共にするだけで労せずして蓄え続けられるのだ。
それならば、クローディアにはヘザーと敵対する理由は無い。敵対するわけにはいかない。
少なくとも、胎内の神が今以上に成長し、この怪異やヘザーに対抗出来る力が復活するその時までは。
「……やっぱ居やがった。暗くてあんま見えねえけど、奥に何か居るのは間違いねえよ。
とりあえずこの階段には居ねえみたいだからさぁ、下に降りるまではどうにか安心じゃねえかな」
固まっていたアベが、息を切らして口を開いた。
どうやら視界を借りる能力はそれなりに体力も消費するらしい。
「ご苦労様。じゃあ、アベ。先頭をお願い」
「はぁ!?」
「何? 文句あるの? 私はこの子を見張らなきゃならないし、
武器も持ってないこの子を先に行かせるわけにいかないでしょ? ならあなたしかいないじゃない」
「あーもぅ、わぁったわぁった!」
一応納得した形は見せたものの、釈然としないのかアベはまだ何かをぶつぶつ呟いていた。
そして、渋々といった様子で右手の懐中電灯を前に向ける。
地下への通路は階段とエスカレーターとで分かれていた。当然エスカレーターは停止していた。
アベは2つの進路を交互に見比べると、小さく身震いをして、ガニ股で階段の方を降り始めた。
それにクローディアが続き、最後にヘザーだ。
階段に足を踏み入れる際、クローディアはふとエスカレーターを確認した。
踏み板が完全に錆びついており、乗るだけでも崩れ落ちそうだった。
アベが階段の方を選んだのも無理はないだろう。
懐中電灯ではっきりと照らし出された通路は、一層のおぞましさを醸し出していた。
脈動しているかのような壁は良く見れば、肉や血管というより焼けて爛れた皮膚に近い。
3人は、階段を1段1段慎重に降りていく。降りる度に周囲の“赤”と闇は増していく。
魍魎の待つ地獄へと案内するかのように、おぞましく、おぞましく、変化を続けていく。
クローディアやヘザーはまだこの現象に慣れているから良いが、
これが街の怪異初体験となるアベは、頻りに周りを気にしておっかなびっくり歩を進めていた。
「マジ気持ちわりぃ……アメリカの駅ってみんなこうな――んあぁ!!!」
「アベ?! どうしたの!」
突然悲鳴を上げたアベの身体はビクッと動き、左を向いた。
ヘザーが直ぐ様アベにライトを向けたが、アベは口で息をしながら唖然と左の壁側を眺めている。
真後ろにいたクローディアにも何が起きたのか分からなかった。つられて壁を見るが、何も無い。
ヘザーも壁をライトで照らすが、特に何も確認出来ない。
「何があったの?」
「いや、この手すり掴んじまってさぁ……。うおぉ、すっげーやな感触ぅ! 鳥肌立っちまった」
アベの答えは、実に気の抜けるものだった。
左手をジャケットに擦りつけて感触を拭い落とそうとしているアベの臀部に、ヘザーの蹴りが炸裂した。
「遊んでる場合じゃないでしょっ!」
「ってーな。遊んでなんかねーよ」
「もう、いいから行って!」
「わぁってるっつーの」
アベは懐中電灯を前に向け、移動を再開した。
しかし、その足は10歩も行かない内に、またも止まる。
「……って、おい……マジかよ」
「今度は何なの!?」
ヘザーが後ろで苛立った声を上げるが、アベは立ち止まったままだ。
前方の足元を照らしていたアベの懐中電灯が、ゆっくりと上に動いた。
闇の中に浮かび上がった、アベの足を止めたもの。それは――――
「これ……トラック、だよな?」
紛れもない、トラックだった。
運転席には誰も乗っていないトラックが通路に入り込んでおり、完全に行手を塞いでいるのだ。
トラックの左右を確認してみたが、どちらも1cmの隙間も空いていなかった。
「これじゃ通れないわね」
「いや通れないってか……どう考えてもあり得ねえだろこれ!
運転席だって誰もいねえしよ、てか運転手降りらんねえだろ。どうやってここまで入ってきて――」
「クローディア。あなたの力で何とかならない?」
「これは私の力が造り出した現象ではないもの。何も出来ないわ」
「そう……ね。なら戻るしかないか」
「――って、こいつら俺の話全っ然興味ねえし……」
「でも地下鉄なら出入口が1つって事はないわ。
1回外に出て別の出入口を探しましょう。……ほらアベ。戻るわよ。先頭はあなたでしょ?」
アベは不満気な表情を作っていたが結局何も言う事は無く、おとなしく出口へと足を向けた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「やっぱあり得ねえって。……マジであり得ねえって」
「こんなもの、この世界じゃよくある事よ」
「いや、あり得ねえだろ……」
阿部は目の前のトラックを見上げ、呆れるように呟いた。
ヘザーの言う事に従い地下から出て表を探索してみれば、
地下鉄の出入口は少し離れた場所に3箇所、割と簡単に見つける事が出来たのだが、
どの出入口も通路の途中がトラックで塞き止められており、駅構内には入る事が出来なかったのだ。
このトラックは4台目のトラック。これで、出入口は全滅だ。
中からは一度電車の走る音が聞こえてきたのだが、構内に入れないのではどうしようもない。
已む無くヘザーと阿部は、降りてきた階段を戻りながら作戦を練り直す事にした。
「で、どうすんだよ? もう他に入口あるとも思えねえぞ?」
「こうなったらしょうがないわ。多少の危険は覚悟して、地上から行きましょう」
「結局歩きかよ……」
「そんなに電車に乗りたかった? ワガママ言わないでよね、子供じゃないんだから」
「だから言ってねーだろ!」
まあ、多少アメリカの電車が見たかったという思いもあるのだが、
そんな事を漏らせば何を言われるか分からないので胸の内に秘めておく事にした。
そうこうしている内に、出口が近づいてくる。
アベ、とヘザーが呼びかける声が背中から聞こえた。
何を促しているのかは、聞かずとも分かっている。
阿部は意識を外へ向け、集中する。
まず最初に見えるのは、決まって砂嵐のような映像だ。
5m。10m。15m。イメージの中で、徐々に距離を伸ばしていく。
前方――――何もいない。
左手――――何もいない。
右手――――――――――――ザッ。
(お!)
反応があった。
砂嵐が落ち着き始め、ノイズがなくなり、暗闇を見通す視界が鮮明に映し出された。
この力は視界を借りる相手との距離が近ければ近い程、視界を借りた時の映像は鮮明に映る。
つまりこの視界の持ち主は、阿部達と相当近い位置まで迫ってきている事になるのだ。
いや、近いどころか既にこの視界には、今いる駅の入口が映り込んでいるではないか。
視界の持ち主はキョロキョロと辺りを見回し、時折ヒャッヒャと笑い声を上げながら確実に駅に近付いてきていた。
その視界に映る生物は、他にはいない。
慌てて閉じていた目を開いて意識と視界を戻すと、阿部はヘザー達を振り返った。
「やべぇぞおい、バケモンがこっち来んぞ!」
「化物!? どっちに何匹!?」
「右に、多分1匹だ! 何か笑ってやがった!」
「OK、1匹くらいなら殺しておくわよ。まず私が撃つから、アベは止めをお願い」
阿部は懐中電灯を持ち替え、バールを右手に握った。
ヘザーが拳銃のチェックをし、頷く。
3人はじりじりと音を立てずに慎重に階段を昇り、外まで後1段というところまで歩を進めた。
耳を澄ませていれば、やがて右方向から標的の足音が聞こえてきた。
短い、アイコンタクト。
ヘザーの目がGOサインを出し、直後に二人は通路から飛び出した。
右――――二人は同時に武器を構えようとして、それを視認した瞬間、思わず腕を止めた。
「……あれ?」
「…………ちょっと、アベ? どこに化物がいるのよ?」
「い、いや、今マジで……だってあんなに明るく見えて……あれ?」
二人の視線の先には、どう見ても化物とは程遠い、ただ涙ぐんでいる金髪の少年の姿があった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
二人が通路から飛び出した後、クローディアは一人階段で待機していた。
手筈としては、戦闘が終わり次第クローディアも出て行く事となっていたのだが、
いくら待とうとも外からは銃声もヘザーからの呼びかけも聞こえてこない。
疑問に思い階段を昇り外を覗いてみれば、
少し離れた場所で、アベとヘザーが言い争う横に一人の少年が泣きながら佇んでいた。
(っ!? この子は……?)
一目で、その少年がただの少年ではない事をクローディアは理解した。
少年の身体からは、ただの人間では持ち得ない程の力が感じられるのだ。
(何故……? 神のものとは違う力のようだけど……?)
試してみたい。
クローディアの胸中に、再び芽生える好奇心があった。
アベも興味深い素材だが、この少年もまた、彼女の知識では計り知れない存在だ。
この少年を生まれ変わらせたら、果たしてどのような手駒が誕生するのだろうか。
今すぐではなくて良い。いずれで良い。試してみたい。
クローディアは見惚れる様に、少年を眺めていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アベとヘザーと呼び合う2人の大人。
泣き真似をしながら彼等の口論に耳を傾けていたエドワードは、1つの疑問を感じていた。
どうもアベという男が、自分が笑っていた事に気付いていた様子なのだ。
自分は誰かに気付かれる程に大きな声を上げて笑ってはいないのにも関わらず、だ。
ましてや自分とアベの居場所は壁で隔てられていた。気付かれるわけがないのだが。
(まあいいか。何かあったらアベと遊べばいいんだし!)
泣き顔の裏で笑顔を作り、エドワードは考える。
今ではアベはヘザーの凄まじいまでの口撃にたじろぎ、
エドワードが笑っていたのは気のせいだったと考え始めてくれたようだ。
これでとりあえずは自分を守ってくれる集団に取り入る事が出来ただろう。
後は守られながら、安全にゆっくり魔力が戻るのを待てば良い。
そして魔力が戻ったら、その時は――――――――。
(ヒ……ヒヒヒヒヒャッ!)
エドワードは、泣き顔を更に歪めた。声を上げて泣き出した。
そうしなければ、笑い顔になっているのがばれてしまいそうだったから。
【A-4/駅前/一日目夜】
【ヘザー・モリス@サイレントヒル3】
[状態]:憤怒、この場所へ呼んだ者への殺意、アベに対する呆れ
[装備]:SIGP226(装弾数15/15予備弾21)
[道具]:L字型ライト、スタンガンバッテリー×2、スタンガン(電池残量5/5)、携帯ラジオ、地図、ナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:主催者を探しだし何が相手だろうと必ず殺す。
0:これだからアベは頼りにならないのよ。
1:少年から話を聞く
2:地上から教会へ向かう。
3:他に人がいるなら助ける。
4:名簿の真偽を確かめたい。
【阿部倉司@SIREN2】
[状態]:健康
[装備]:バール
[道具]:懐中電灯、パイプレンチ、目覚まし時計
[思考・状況]
基本行動方針:戦闘はなるべく回避。
0:このガキ笑ってたような……気がしたんだけどなぁ。
1:ヘザーについていく。
2:まともな武器がほしい。
3:どうなってんだこの名簿?
【クローディア・ウルフ@サイレントヒル3】
[状態]:良質な実験体を見つけ、やや気分が高揚
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:神を降臨させる。
0:この子は、使えるかも。
1:ヘザ―に逆らわない。しかし神が危険な場合はその限りではない。
2:邪魔者は排除する。
3:赤い物体(アグラオフォティス)は見つけ次第始末する。
4:アベを“生まれ変わらせて”みたい。
※神はいったんリセットされ、初期段階になりました
※アグラオフォティスを所持すると、吐き気に似た不快感を覚えます
※力の制限は未知数(被検体が悪い)。物語の経過にしたがって変動するかもしれません
【エドワード(シザーマン)@クロックタワー2】
[状態]:健康、所々に小さな傷と返り血、魔力消費(大)。
[装備]:特になし。
[道具]:『ルーベライズ』のパワーストーン@学校であった怖い話
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し。赤い液体の始末。
0:アベには注意を払っておこう
1:か弱い少年として振る舞い、集団に潜む。
2:魔力を取り戻す為、石から魔力を引き出したい。
3:相手によっては一緒に「遊ぶ」。
※魔力不足で変身できません。が、鋏は出せるようです。(鋏を出すにも魔力を使用します)
※エドワードは暗闇でも目が見えるようです。魔力によるものか元々の能力なのかは不明です。
※『ルーベライズ』のパワーストーンに絶大な魔力を感じていますが、使い方は分かっていません。
石から魔力を引き出して自分の魔力に出来るのかどうかは不明です。
※A-4,5の駅は4つの入口がありますが、どの入口も通路がトラックに塞がれており駅構内に到達する事は出来ません。それが裏世界のみの現象なのかどうかは後の書き手さんに一任します。
代理投下終了です
450 :
ゲーム好き名無しさん:2011/03/02(水) 16:26:21.54 ID:ioLfTO8AO
あげ
【1】
「なあ、本当にこっちで合ってるのか?」
「その筈なんですが……」
夕暮れの『サイレントヒル』の道を、注意深い動作で歩くのは、神代美耶子と牧野慶である。
手を繋いで、牧野が先行する形で歩いていた。
注意深く足を進めるのも、牧野が一歩先に出ているのも、当然ながら理由がある。
美耶子は目が見えない。光すら認知できない、全盲なのだ。
故に、同行者である牧野が彼女を誘導しなければならないのである。
二人――と言うよりも、牧野は人を探していた。
探し人とは、自分の血を分けた兄弟である「宮田司郎」の事である。
あの頭巾の怪人から逃げる際に見たのは、確かに彼の影であった。
彼なら自分達の味方になってくれるだろう。そう思って探索に乗り出したのだが。
「確かに見たんですよ……見た筈なんです」
あれ以来、牧野は彼の姿を見ていない。
人の形をした影なら何度か見たのだが、
よく見てみるとそれらは皆、先程自分達を襲った怪人と大差ない存在ばかりであった。
他人の視界を覗き見る能力――幻視が無ければ、どうなっていただろうか。
考えるだけでも恐ろしい。
「おまえの思い違いなんじゃないのか?」
「…………そうかも……しれません」
自信を無くした牧野は足を止め、俯いてしまう。
彼女の言う通りなのかもしれない。
あの影は心の中に巣食っている「臆病」が見せた幻覚に過ぎず、
自分はそれを追いかけているだけではないのか?
他人に頼る事しか出来ない、弱い自分。
そんな人間が、求道師として村の人々の期待を一身に背負っているのだからおかしなものだ。
どうして、よりにもよって自分が求道師に選ばれてしまったのだろうか。
自分ではない、もっと強い意志を持った者がなっていれば、きっとこんな事には――。
「……顔を上げないと私が見えないって言っただろ」
美耶子の苛立ちの篭った声で、我に返った。
後ろを向くと、彼女は迷惑そうな表情をしている。
「…………すみません……」
牧野の声色は、以前よりもさらに弱々しくなっている。
サイレントヒルに迷い込んだ直後の頃にはあった筈の『希望』は、既に跡形も無く消えていた。
――自分の精神は、すぐ後ろの少女よりも、遥かに脆い。
あまりの不甲斐無さと惨めさに絶望しながらも、求道師の役目を全うする為に、足を進めようとした――その時。
うぉおおおおぉおおおぉおおぉぉおおおおぉぉおおおおおぉん
サイレンと共に、世界は反転した。
【2】
光すら吸い込んでしまいそうな「黒」が太陽を喰らい、空を塗りつぶす。
壁は赤錆だらけの鉄網に変化し、道には小さな肉塊が散らばっている。
地を揺らすような轟音によって、一瞬にして街は表情を変えたのだ。
「これは…………!?」
サイレントヒルの突然の豹変に、宮田は驚愕せざるおえなかった。
一時は、『またしても別の場所にワープしてしまったのか』と
錯覚しそうになってしまったのだが、先程殺した――突然襲いかかってきたから、教会で手に入れた燭台で殴り殺したのだ――ナース服の
怪人がそのままの状態で横たわっている事から、そうではないと認識した。
常識では考えられないような出来事が、目の前で、しかも連続して発生している。
これも儀式のせいだと言うのか。儀式の失敗によってもたらされた悲劇なのか。
宮田は――そうとは思えなかった。
街を構成している建造物といい、街を闊歩している怪人といい、
此処に迷い込んでから自分の目で見たものは、全て羽生蛇村とは全く関連性のないものばかりだった。
眞魚教によって行なわれた儀式が原因なら、何故異教徒の教会が存在する?
儀式は東洋で行なわれたのにも関わらず、何故西洋の街にワープした?
仮に今の変異が、儀式の失敗によって起こったというのなら、
眞魚教――もとい、羽生蛇村を連想させるものが残っていてもいい筈だ。
しかしどうだ。この空間には、羽生蛇どころか日本の特徴すら存在してないではないか。
――これはもしや、儀式とは無関係な場所で行なわれたのでは?
仮にそうだとしたらのなら、一体全体何が原因だったのか。
残念ながら、それの正解に行きつく為に必要なピースは、まだ自分の手元にはない。
居るかどうかは分からないが――この街について、自分よりも詳しい者に出会わなくては。
闇の中を、歩く、歩く、歩く。
クリーチャーは、幻視を用いてやり過ごす。
懐中電灯の光を巡らせて、この街について何か手掛かりになるものはないかを探す。
それを始めて、恐らく一時間は経った頃だろうか。
光が、二人の人間の姿を捉えた。
あの修道服を、宮田は知っている。
【4】
ハリー達の記憶通り、バスは学校の前に停車していた。
しかしながら、それの状態はお世辞にも良いとは言えない。
塗料は既にとれ、赤黒い防錆塗料を露出させており、引っ掻いたような傷もあちこちに存在していた。
(恐らく、傷はクリーチャーによって付けられたのだろう)
割られた窓からは、今の空と同じ色をした『闇』が車内に充満している事を教えている。
――『とうの昔に打ち捨てられたジャンク』というイメージが、そのまま当てはまってしまう程に、それは無残な姿を晒していたのだ。
ハリーと風間がその姿を観察した際にまず最初に思ったのが、「本当に動くのか?」という「疑問」であった。
かろうじてドアは開くようだが、動かないのであれば意味が無い。
ジムは「大丈夫だ、問題ねえだろ」と言っているが、到底そうとは思えなかった。
しかし、どの考えも所詮は「もしも」の話に過ぎない。
実際に動かしてみる事には、始まらないだろう。
バスを運転する為には、まず車内の安全を確かめる必要があった。
暗闇の中に怪物が息を潜めている可能性は、十分にある。
それに気付かないまま発車させてしまったら、きっと――いや、間違いなく惨劇が起こるだろう。
そのような事態が起こらないようにと、まず三人でバスの様子を調べる事になったのだが。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんで僕が先頭なのさ!?」
風間は『自分が最初に足を踏み入れる事』に納得がいかなかった。
自分はこの三人の中で最年少だし、腕っ節も弱いのだ。
にも関わらず、自分が一番危ない位置にいるのはおかしいではないか。
「人殺す度胸があるんだったらこの位平気だろ?」
「それとこれとは話が別だろ!それにアレは『仕方なく』やったんだ!」
「何が『仕方なく』だ。言い訳にしか聞こえねえよ」
どうやら、この黒人――ジムとか言ってたか――は自分の事を心底嫌っているようだ。
あの蔑むような、冷ややかな瞳を見れば、どんな人間にでもそれは理解できるだろう。
――たった一人殺しただけでこの反応!まったく、これだから心が狭い奴は……。
「……時間がないんだ、痴話喧嘩は後でやってくれないか?」
一触即発の空気に横槍を入れたのは、イラついた表情をしているハリーであった。
できるだけ早く教会に行きたい彼にとっては、口論など無駄以外の何者でもない。
「私が前に出る。それでいいんだろ?」
「オイオイ……アンタ正気かよ?後ろから襲われるかもしれないんだぞ?」
風間望は殺人鬼である事が、ジムが彼を嫌悪する最大の理由である。
理由はどうあれ、彼は無抵抗の女性を殺したのだ――しかも、嬉々とした表情で!
そんな奴に背中を預けれるだろうか。少なくとも、ジムには考えられない事である。
「さっすがー!どっかの喧しい黒人と違ってハリー『さん』は話が分かる!」
風間の挑発に対して、ジムはもう何も言わなかった。
唯、軽蔑の篭った視線を風間に向けるだけである。
【4】
バスの内部に誰も居ない事を確認し終えたハリー達を待っていたのは、三人の東洋人だった。
白衣の男と、修道服の男と、黒いワンピースの少女である。
どうやらハリーは、修道服とワンピースとは以前出会っていたようで、生きて再会できた事を喜んでいた。
修道服は「牧野慶」、ワンピースは「神代美耶子」という名前らしい。
久しぶりに出会えた「美少女」に、風間はえらく饒舌に話しかけていた。
尤も、美耶子の方はそれを嫌な顔をして聞き流していたのだが。
しかし一方で、白衣の男とは初対面であった。
「宮田司郎」と名乗るこの男は、明らかに二人とは違う雰囲気を醸し出している。
口調こそ平坦なものだが、心の奥底に『何か』を隠し持っているのでは――?
牧野は「信頼できる人」だと言ってはいたが、本当にそうだろうか。
一先ず、六人はバスの中で情報交換を始める事にした。
ジムはバスの点検の為に運転席に、他の五人はボロボロになった客席に座る。
そして一人ずつ、この世界――サイレントヒル――で体験した出来事を語っていく。
風間はそれを見て、此処に迷い込む直前に獲物に対して行なった『七不思議の集会』を思い浮かべた。
他の殺人クラブの面々は、今頃どうしているのだろうか。
『風間が行方をくらました!』と言って大慌てする仲間達を想像するが、すぐにそれを否定した。
彼ら――特に日野――が仲間を思っているとは考え難い。
どうせ、自分の事など気にせずに『狩り』を続行しているのだろう。
こっちの苦労も知らないで、つくづく暢気なものだ。
そんな事をしている内に、風間の番が来た。
彼が話したのは、「どうやって此処に来たか」に加えて、
「遊園地のウサギの大群」、「教会の女と赤い水」の三つである。
(当然、殺人クラブの事は隠しておいた)
しかしながら、それらどれも彼の誇張や偏見によってかなり脚色されていた。
「さっき殺した女は誰なんだ」という野次が乗客席の方から飛んできたが、
それには知らん顔をしておいた。
【5】
「俺は学校に行こうと思います」
宮田の突然の別離宣言に、牧野は面食らった。
情報交換が終わったと思ったら、突然そんな事を言いだしたのだ。
「どうしてだ?皆で集まった方が安全じゃないか」
美耶子が問いかける。
それは恐らく、此処に居る全員が思った事であろう。
何故、わざわざ危険に身を晒すような真似を?
「そうですよ……そうだ、皆さんで学校に行けば……」
「結構。俺の我が侭にあなた達を巻き込むわけにはいきませんから」
宮田はそう言い放ってみせた。
その言葉の中には、「付いてくるな」というニュアンスが込められているように、牧野は思えた。
「ちょ、ちょっと待った!僕も学校に行くよ!」
何の前触れもなく、風間がそう言いだした。
先程宮田の言った事など、まるで聞いていなかった様にすら思える。
「あ、あの学校については僕が詳しいからね……ガイドは必要だろ?」
彼は得意げにそう言っているが、それらは全て嘘である。
彼ら――正式には、ジムとハリーから逃げる為に、何としてでも宮田の後を追いたいのだ。
その為なら、いくらでもホラを吹こうではないか。
「嘘付きやがれ!どうせオレ達から逃げたいだけだろ!殺人鬼!」
「なッ……き、君もしつこいね!あれは仕方ない事なんだってあと何回言えば分かるんだ!?」
「どうせミヤタを殺す為に後を「いいですよ、構いません」……ハァ!?」
宮田の予想外の反応に、ジムは驚愕せざるおえなかった。
――少年とはいえ、殺人鬼を仲間に加えるだと!?
「正気かよアンタ……何するかわかんねぇんだぞ?」
「いいんですよ、仮にそうなったとしても、これがありますから」
そう言いながら、宮田は一丁の拳銃を取り出す。
彼が殺したバブルヘッドナースから徴収したものだ。
それを見た風間の顔がみるみる青ざめていく。だが、同行を取り消す気はないようである。
「まあ、使わないのを祈りましょうか」
宮田は立ち上がり、バスの入り口に足を進める。
それを止める者はいない。止めようとしても、無駄だと分かっていたからだ。
「……また会おう、ミヤタ」
「ええ、また会いましょう、ハリーさん――生きていたら、ね」
宮田がバスを降り、白衣をなびかせながら去っていった。
風間も、大急ぎでそれを追い始めた。
【6】
ハリー達と別れた後の風間は、随分と上機嫌だった。
ジムと離れれたのが、よほど嬉しかったのだろう。
時々彼の悪口を吐き散らしていた事から、相当嫌っていた事が伺える。
まあ、宮田にとっては、風間などどうでもいい存在なのだが。
彼が持っていた情報は既に入手している。
行動を共にする意味などもう無かったが、かと言ってそれを突っぱねる理由もない。
『来たい』と言ったから、それを許可したまでに過ぎないのだ。
誰がついて来ても良かったし、単独行動でも構わない。
むしろ、多くの人間と行動は出来るだけ避けたかった。
自分の思い通りに事が進まなくなるのは、変異の解明に大きく支障をきたすだろう。
医者の『治す』という行為は、その病気の謎を『解き明かす』という事でもある。
同じく医者である宮田も、変異という『病』の正体を知る為に、学校に足を踏み入れる。
そこで待ちうけるのは、新たなピースか、それとも――。
【夜中/A-3/雛城高校前】
【宮田司郎@SIREN】
[状態]:疲労(小)
[装備]:燭台、拳銃(?/6発)
[道具]:懐中電灯
[思考・状況]
基本:生き延びて、この変異の正体を確かめる。
0:学校を調べる。
1:変異について詳しい者から話を聞きたい。
2:風間はいてもいなくても良い。
※情報交換をしました。
【風間望@学校であった怖い話】
[状態]:数箇所を負傷、疲労(大)、上機嫌
[装備]:制服
[道具]:ルールの書かれたチラシ、ティッシュ
[思考・状況]
基本:脱出方法を模索する。
0:宮田と行動する。ジムと離れたからスッキリ
1:他の人間を脱出に利用する。 邪魔者は排除
2:“赤い物体”については、とりあえず記憶に留めておく程度
3:遊園地には二度と行きたくない
※情報交換をしました。
※五人に「雛城高校に詳しい」という嘘をつきました。
しかし誰も信じてません
【7】
『マシンガン』と『自分の命』。
どちらが惜しいかと聞かれたら、死にたがりでもない限り、『自分の命』を選ぶだろう。
詩音は雛見沢症候群によって狂人と化してはいるものの、
だからと言って、命を捨てるような行動に出るほど狂ってしまっているわけではない。
故に、暴れている自衛隊員からの逃走を選ぶ。
「ワンちゃん、一旦此処から離れましょ」
死体を貪っている犬に命令する。
犬はそれに気付くと、すぐに捕食を止め、彼女の元に駆けだした。
相変わらず利口な子だ――詩音は口元を歪める。
死体を食らうのは少々頂けないが、それを差し引いてもお釣りが出るほど、この犬には魅力がある。
人を乗せて疾走できる程に大柄だから、移動が大変楽になるし、
口に生えた牙は人間の肉など容易く引き裂いてくれる。
そして何よりも、『ご主人様』に忠実なのだ。
自らの手足として行動してくれる従者――なんと便利なことか。
「時計塔には迂回して行くことにするわ。」
犬は命令に従い、彼女が指し示した方向に向かって走り始める。
肉を食らって栄養を付けたのだろうか、速度は以前よりも速くなっている。
「くけけっ」
詩音は、やはり笑っている。
【8】
風間と宮田から離れた四人は、地図に書かれた教会に移動する為に北に向かっていた。
バスは使用していない。エンジンが付かなかったのだ。
故に、全員徒歩である。
「ミヤタは大丈夫なのかねえ……不安でならねえや」
「彼は『構わない』と言ったんだ。きっと大丈夫だろう」
「そうですよ。あの人が下手な真似でもしない限り……」
「その『下手な真似』をしたらどうするんだ?」
「美耶子様……縁起でもない事言わないで下さいよ……」
バスが動かないのは燃料が足りなかったせいだ、とジムは言っていたが、
明らかにそれ以外にも理由があるだろ、と美耶子は思わずにはいられない。
「……教会には何もないって宮田が言ってたんじゃないのか?」
「研究所に向かう『ついで』さ」
質問に答えたのは、えらく上機嫌なジムだった。
風間とか言う少年と別れれたのが、それほどまでに嬉しかったのだろう。
『研究所』。
ジムはそこを目指していると言っていた。
羽生蛇村で一生を過ごす自分には、永遠に関係のない施設の一つだ。
この変異が儀式によって起こったのなら、何故そんな「村と全く関係の無い場所」が存在するのだろうか。
地図を見たときにもそう思った。
「ボーリング場」に「ショッピングセンター」、それに「リトル・バロネス号」。
見た所か、聞いた事すらない施設ばかりなのである。
――疑問を抱かざる、おえなかった。
「……なぁ、牧野」
「はい?何でしょうか」
「思ったんだが……この変異……本当に儀式を行なえば終わるのか?」
「…………え?」
あまりにも想定外の質問だったのか、牧野は思わず間抜けな声を出していた。
美耶子の口からそんな発言が飛び出すなど、夢にも思わなかったのだろう。
彼女にとっては、それがどうにも腹立たしかった。
「ええと……何を言っているのですか?」
「だって儀式と全然関係ないじゃないか、この町」
「そんな理由……「確かにそうだよな、オレもそう思うぜ」ジムさん……あなたまで」
ジムが割って入ってきた。
彼もまた、牧野の「儀式によって全てが終わる」という説に否定的だったのだ。
牧野の方は、「どうして信じてくれないのだ」と言いたげな顔をしている。
「美耶子様は……ただ儀式の為に動いていてくれればいいんです。妙な事はあまり考えないで下さい……」
「どうして考えちゃいけないんだ。私は人形か?」
「……そ、そんな事言っていませんよ、ただ、あまり変な意識を持つのは儀式に影響が……」
「お前はさっきから儀式の事しか言ってないな」
美耶子の中に、怒りが蓄積されていく。
穏やかだった空気が、急激に張り詰めていく。
ジムとハリーも止めに入ろうとするが、彼女は意に介さない。
「儀式なんて関係ない!お前が勝手にそう思っているだけだ!」
牧野の手を振り払い、彼の目の前に立って言い放った。
これには流石の牧野も我慢ならなかったのだろう。彼も強い口調で反論する。
「い……いい加減にしてください!み、美耶子様は、私と同じように役割を――――――」
牧野が言い終わる、その前に、
パアンという発砲音が鳴り響き、
――――弾丸が、美耶子の体を貫いた。
【9】
【9】
「ぐぎゃぎゃぎゃ!今晩は――獲物の皆さん!」
襲撃者は、笑っていた。
それはそれは愉快そうに、まるでピエロのように。
笑いながら、少女を撃ったのだ。
緑色の髪をした敵は、『獣』に乗っていた。
ハリーはあの獣を以前見た事がある。
間違いない。あれの正体は「ケルブ」だ。
かなり印象――それどころか、何故か体格まで変わっているが、あれは確かに、自分が蹴り飛ばした狂犬なのだ。
弾丸を撃ち込まれた美耶子を中心に、血の池が出来上がっている。
それほどの傷が、彼女に刻まれてしまったのだ。
あれではもう、生存は絶望的だろう。
ハリーとジムが拳銃を取り出そうとする――が、
それよりも早く、詩音は近くで跪いていた牧野の額に、銃口を押し付けた。
「アンタ達が私を撃つのと、私がコイツを撃つ……どっちが早いのかしらねぇ……けけッ」
人質をとられた――ハリーは内心で舌打ちをする。
この状況で銃を向けてみろ。間違いなく、撃つ前に牧野の頭が吹き飛ぶだろう。
二人とも拳銃から手を離し、腕を上げた。
「分かってるじゃない」
詩音がケラケラと笑うのをを見たジムが、他人には聞こえない程度の歯軋りをする。
人を殺しておいて、何故あんなに愉快そうなのか。
――クソッタレが!あのアマ、ヤクでもやってるに違いねえ!
「…………何が目的だ」
ハリーが、詩音に問いかける。
声が若干震えているのは、怒りを押し殺しているからだ。
「何が目的ィ?……そりゃぁもう!皆ブチ殺して『私の』悟史君を生き返らす為に決まってるじゃない!」
それを聞いた三人は――唖然した。
まさか、あのチラシを鵜呑みにした奴がいたなんて!
狂っているとしか、言いようがなかった。
「というわけだから……死にたくなかったら今までアンタ達が会った人間が
今何処に居るか教えなさい。ゲロったらもれなく『今は』殺さないであげるわよ!くけけけけけ!」
――嘘だ。喋っても喋らなくても殺すつもりだ。
ハリーは生唾を飲み込む。
どうすれば良い。どうすればこの状況を突破できる。
牧野を見捨てて女を撃つか?それとも隙ができるのを待ち続けるか?
両方とも大きなデメリットがある。
前者では確実に一人の人間が目の前で殺されてしまうし、
かと言って後者を選んでも、チャンスが巡ってこずにそのまま射殺される――というパターンが考えられる。
そしてこれら二つに言えるのは、『確実に撃退できるという保証が無い』という事だ。
彼女は何故かケルブをお供として連れており、
奴にまで襲われたら、三人とも無事でいられる確証は何処にもないのだ。
どうする――どうすれば乗り越えれる!
「さぁて……まずはアナタよ――修道服!さぁ!他の獲物は何処!?」
詩音は、顔をハリー達に向けたまま、牧野に当てた銃口をさらに強く押し付ける。
彼は答えようとはしない。歯をガチガチと鳴らすだけだ。
「……『歯を鳴らせ』なんて言ってないわよ」
詩音が牧野の腹に蹴りを入れ込む。
蹴られた腹を押さえながら、彼は呻き声をあげる。
「もう一度チャンスをあげるわ、修道服。他の獲物の場所は……ど、こ、に、い、る、の?」
この質問に答えなければ、待っているものは間違いなく「死」だ。
もういい。全部吐いてくれ。二人は必死に懇願する。
そうだ、全部吐きだせ、そうしたら楽に殺してやる。狂人は口元を吊り上げる。
少しして、牧野の口が開き、言葉を紡いだ。
――しかし、彼の言葉は、二人の想像とは全く別のものだった。
「……ぅしろ…………」
詩音に向かって指を差しながら、蚊の鳴く様な声で、彼は言った。
震えた指で、彼女よりも恐ろしいものを見るような目で。
後ろ?
後ろに何が居る?
自分よりも恐ろしい存在が、自分の後ろで何をしている?
詩音は牧野の指差した方向に視線に移す。
そして、それの正体を知り――――驚愕した。
視線の先にいたのは――――大鉈を持った怪人!
三角錐型の鉄製の箱を被った屈強な男が、今正に大鉈を振り下ろそうとしているのだ!
大急ぎで詩音は回避行動を取ろうとするが――時既に遅し。
ヒュン、という空気を切り裂く音と共に、一本の腕が宙を舞った。
【10】
「あ゙あ゙あ゙ああぁぁああ゙あああ゙ああ゙ああぁぁぁぁああぁ!!?」
片腕を吹き飛ばされた詩音の絶叫が、辺りに木霊した。
切断面からは、滝の如く血が流れ落ちている。
突如起こった二度目の惨劇に、ハリーですら動揺を隠せずにいた。
しかし、彼女を襲撃したクリーチャー――レッドピラミッドシングは、
それを気にもとめずに、再び大鉈を構える。
「あ……がッ…………」
それにいち早く察した詩音は、逃げるように走り出す。ケルブもそれに気付き、彼女の後を追った。
レッドピラミッドシングは、しばらくの間は彼女の事の逃げた先に体を向けていたが、
追う必要は無いと考えたのか、全く別の方向に進み始める。
ハリーとジムは、呆然としたままそれを眺めていた。
「……オレ達は襲わないんだな」
怪人が見えなくなった頃、ようやくジムが口を開いた。
「そうみたいだな……しかし何故……」
危機は逃れれたが、そこで同時に疑問が生まれる。
人間を襲っていたのだから、恐らくは奴らもチラシに書かれていた『鬼』の一種なのだろう。
ならば、どうして同じ存在である自分達を襲わないのだ?
「……まあ、死なずには済んだんだからいいとするか」
「ああ、だが…………」
ハリーは牧野に目を向ける。
彼は――じっと息絶えた美耶子を見つめていた。
口を半開きにしたまま、何も考えずに、ずっと。
重苦しい空気が、三人を囲んでいる。
それはまるで、花嫁の死を悲しむかのようで――。
【神代美耶子@SIREN 死亡】
【夜中/A-2/路上】
※三人の近くに『レミントンM870ソードオフVer』が落ちています
【ハリー・メイソン@サイレントヒル】
[状態]:健康、強い焦り
[装備]:ハンドガン(装弾数10/15)
[道具]:ハンドガンの弾:34、栄養剤:3、携帯用救急セット:1、ポケットラジオ、ライト、調理用ナイフ、犬の鍵、
奈保子のウエストポーチ(志村晃の狩猟免許証、羽生田トライアングル、救急救命袋、応急手当セット)
[思考・状況]
基本行動方針:シェリルを探しだす
1:教会に行って手掛かりを探す。その後は研究所へ
2:他にも機会があれば筆跡を残す
3:緑髪の女には警戒する
【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
[状態]:疲労(中) 、怒り
[装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾4)、懐中電灯、コイン
[道具]:グリーンハーブ:1、地図(ルールの記述無し)、 旅行者用鞄(鉈、薪割り斧、食料、ビーフジャーキー:2、栄養剤:5、レッ
ドハーブ:2、アンプル:1、その他日用品等)
[思考・状況]
基本:デイライトを手に入れ今度こそ脱出
1:教会まではハリーと一緒に行く
2:その後できるだけ早く研究所へ行く
3:死にたくねえ。
4:緑髪の女には警戒する
※T-ウィルス感染者です。時間経過、死亡でゾンビ化する可能性があります。
【牧野慶@SIREN】
[状態]健康、ヘタレ、疲労(大) 、精神疲労(大)、絶望
[装備]修道服
[道具]
[思考・状況]
基本:???
※ここが羽生蛇村でない事に気づいているようです。
※儀式を行なえば変異は終わると思っています。
「…………ああ……!あの野郎……!」
撤退した詩音は、路地裏の壁に背中を預けて座っていた。
切断された右腕には、倒れていたゾンビから剥ぎ取った衣服を、包帯代わりに巻き付けている。
衛生的ではないが、何もしないよりかは幾分かマシだろう。
あの怪人に利き腕を奪われたのは、かなり致命的な損害だった。
持っている銃は本来両手を使うのが前提の物であるから、もう使いようがない。
武器がないのでは、『呼ばれし者』どころかクリーチャーすら殺せないではないか。
「…………クソッ…………クソッ……!」
自然と、目から雫が流れ出た。
せっかく与えられたチャンスが、手からすり落ちていく。
唯、救いたいだけなのに。
笑顔の彼に頭を撫でてもらいたいだけなのに。
神はそれすら許さないのか。
クゥンという鳴き声に頭を上げると、そこにはあの犬が座っていた。
微動だにせずに、じっと詩音だけを見つめている。
「来てくれた……のね……」
なんて健気で、忠実な犬なのだ。
『名犬』という言葉は、きっとこの子の為にあるのだろう。
ケルブは詩音に近付いてきた。
彼女は、そっと愛すべき名犬を抱き寄せる。
――やわらかい。
どうやら名犬の体毛は、怒りも、悲しみも、全部絡め取ってしまうみたいだ。
そうだ。まだこの子がいるし、自分にだってまだ「ハンティングナイフ」という武器がある。
諦めるには早過ぎる。まだ十分チャンスがあるではないか。
まだ神は、自分を見捨ててはいない――!
全部終わらせて、悟史君を生き返らせたら、この子と一緒に暮らそう。
悟史君とワンちゃんで、ひぐらしの鳴き声を聞きながら幸福に過ごすのだ。
だからこそ、こんな場所で挫けてはならない。
挫けるわけにはいかない。