ホラーゲームバトルロワイヤル 第一幕

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1名も無き悪夢
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                HORROR GAME BATTLE ROYALE               
                  :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                      怪物と戦うな
                   さもなくば自分もまた
                       怪物となる

                        そして
                   深淵を見つめる時には
                      深淵もまた
                  お前を見つめているのだ

               フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ
                  :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃:::::::::::::::::        いずれかの刻、何処かの場所で起きた物語。             :::::::::::::::::::┃
┃:::::::::::        深き霧に、魂を削るサイレンの音に、夕闇の隙間、           :::::::::::┃
┃:::::::           訪れるはずのなかった惨劇の幕間に。                     ::::::::┃
┃:::         彼等は此処に招き寄せられ、その罪とその命を試される。          :::┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
2名も無き悪夢:2008/05/01(木) 23:03:16 ID:24wa0dy70



【企画スレ】
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/event/1201873545/
【専用JBBS】
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11253/

【基本ルール】
・このスレッドは、様々なホラーゲームのキャラクターが、それぞれに不思議な経緯により"ある場所"へと招き寄せられ、異常な状況下で生き残り、生還することが出来るかという物語を綴る、パロロワ派生のリレー式二次創作スレッドです。
・「呼ばれし者」 達は、様々な時代、様々な世界、様々な形で 「サイレントヒル "らしき" 場所」 へと招かれる。
 「何らかの手段」 を講じなければ、そこから出ることは出来ない 「らしい」。
 「町にいる他の者達を滅ぼす」 事で、解放される 「らしい」 という話もあるが、詳細は不明。
・書き手は、まず 「呼ばれし者」 を様々なホラーゲームから 「合計30人」 まで登場させられる。
 また、クリーチャー系 (呼ばれし者達を襲う、害をなし得る怪異の存在) を 「合計10種類」 まで登場させられる。
 登場キャラクター、及びクリーチャーがそれぞれ上限に達した場合、基本的にはそれ以上は追加しない。
・書き手はそれぞれ、新しいキャラクター、クリーチャーを登場させる際には、出典と詳細情報を書く。
 出来る限り、該当ゲームをプレイしていなくとも書ける様にし、また曖昧にしか分からない部分なども含め、ここやSS内で示された以上の事は無理に書かなくても良い。
・ゲームならではのお遊びやシステム上の都合としての不自然さなどは、無理に持ち込まない様にする。(『サイレントヒル』 のUFOエンドや犬エンド、『バイオハザード』 の豆腐モードからキャラを出す等)

【「呼ばれし者」と「クリーチャー」】
・「呼ばれし者」 は、呼ばれたときの持ち物、能力をそのまま持っている。ただし、必ずしも元通りに使えるとは限らない。
 (あまりに展開上不自然なもの、展開を妨げうるものなどは考慮が必要)
 持ち物は、この「場所」の中で様々なものを得ることもあるが、持ちうる範囲を超えて持ち運ぶことはない。
・この場所にいる際には、「呼ばれし者」同士、多言語での会話が可能。知らない言葉でも、何故か意味が伝わる。
・「クリーチャー」 は、この「場所」 に置いて、各々の元の性質に近い行動をとる。
 場合、条件によっては、「呼ばれし者」が「クリーチャー」 に転ずることもある。
3名も無き悪夢:2008/05/01(木) 23:03:48 ID:24wa0dy70
・クリーチャーの初期情報を書く際のおおまかな能力基準は以下を元に。
 [能力の★について]
 ★ … 一般人以下。虚弱、病弱。愚鈍。
 ★★ … 一般人並み。特殊な訓練や能力のない人間キャラと同等。
 ★★★ … 一般人の中でも頑強。特殊な訓練をしている、軍属、アスリートレベルの身体能力など。
 ★★★★ … 人外の能力。野生の猛獣並みの身体能力など。
 ★★★★★ … 人外にして超越。不死、半不死等。
・アイテムは、現実に存在するもの、又は既存のホラーゲームに登場するものを出典として持たせる、登場させる事が出来る。
 登場させたSSの最後に、出典と共にその内容に関しての解説を記しておく。
・何故呼ばれたか、呼ばれたことに意味があるのかなどは開始時には不明。

【エリアと地図】
・エリアは、特別な施設名以外は、大まかな位置を地名で表記する。進入や移動に制限のある場所、施設などはその旨も表記する。
 後のSSでは、それら既出の位置関係を元に展開させる。
・地図は、SSに描かれて内容から随時設定される。また、進行によって変化することもある。

【サイレンと裏世界】
・物語内時間でおよそ6時間毎に、「サイレン」が鳴り「特別なイベント」が起きる。
 「特別なイベント」には、「世界/地形が変容する」、「新たなもの/施設などが呼ばれる」、「クリーチャーが現れる」、「屍人が起きあがる」 等、様々なものがある。実際にどういうイベントが起きるかは、そのときの展開などにより決められる。
・サイレンが何なのかは不明。
・サイレンがなる定時毎に、「呼ばれし者」の生死や新たな情報などについて知らされることがあるらしい。
4名も無き悪夢:2008/05/01(木) 23:04:13 ID:24wa0dy70
 
【作中での時間表記】
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6

 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12

 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕刻:16〜18

 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

(OPの時刻は夕刻)
5名も無き悪夢:2008/05/01(木) 23:04:45 ID:24wa0dy70

【書き手、読み手の注意点】
・作品(SS)を書き込む際などにはトリップを推奨。SSの最後には状態表を記載し、投下終了したことを明示する。
・予約をする場合は、トリップを付けて本スレなどで宣言し、5日間該当キャラクター、クリーチャーを予約できる。
 予約期間の最中に他の書き手はは、該当キャラクター及びクリーチャー(個体)のSSは投下できない。
 期限が過ぎた場合は予約は破棄されたものとし、補任以外の誰かが予約したりSSを投下したり出来る。
 期限を過ぎても、他の人の予約やSSが入らない場合はそのまま投下できる。
・障害、書き込み制限などで書き込みが出来ない場合は、JBBSを活用し、出来ればその旨を代行書き込みなどを利用して本スレに書くか、代理投下をして貰う。
・以前書かれたSSや、元となった作品設定などとの明らかな矛盾、事実誤認、企画進行に支障をきたす不自然な展開などがある場合、話し合いなどにより修正、破棄を行うこともある。
・ホラーなのはSSの中のみで。進行はノーホラーに行きましょう。
6序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:05:43 ID:24wa0dy70
序章 サイレント・シンドローム


 真っ白だ。
 例えば、世界が大きな金魚鉢で、そこにミルクを垂らしたとすれば、おそらくはこんな風になるに違いない。
 少女 ――― 岸井ミカはぼんやりとそう思っていた。

 振動と、規則正しい音。
 本来ならば真っ暗なはずの窓の外に、流れてゆく霧。
 珍しい、というより、こんなものを観るのは初めてだったが、何故かそれほど気にならなかった。
 普段なら、好奇心の強さから言ってもそそられないことはあり得ないだろう。
 何かと奇妙な噂や都市伝説、怪談話を仕入れては、先輩である長谷川ユカリや逸島チサトを、半ば強引に誘って、それらの真相究明へと赴く行動派でもある。
 心霊写真の量産される公園があると聞けば撮りに行くし、自殺した女生徒の霊が出る音楽室の噂を聞けば声を録音しようと夜の学校へと忍び込む。
 社交的で外向的。怖い話、不思議な話が大好物で物怖じしない、あるいは、人からはちょっとネジがはずれているんじゃないかなどと言われる、軽くてノリの良い今時の少女。
 それが、概ね岸井ミカを語るときに言われる言葉である。
 その岸井ミカが、ただぼんやりと、地下鉄の外を流れる真っ白な霧を、何をするでもなく眺めている。
 眺めていると言うべきか、視線はそこに向いてはいるものの、まさに心ここに非ずという態だ。
 
 きっかけは、実に些細なことだ。
 知り合いの作家であるアラマタが、寄稿をしたからとたまたま送ってきたオカルト雑誌。その中にあった記事が、ミカの好奇心を刺激した。
 アメリカにあるゴーストタウン、サイレントヒルに起こる奇怪な出来事についての話だ。
 それを、いつもの調子でユカリ達に持ちかけた。
 面白半分に、「いつか先輩達と一緒に行ってみたいですね」 等と喋っていたのだが、何故か次第に険悪な流れになり、ちょっとした口論になってしまったのだ。
 改めて考えれば…というより、実際の所改めて考えるまでもなく、丁度期末試験の直前の時期である事は大いに関係している。
 いつもいつも怖い噂だ何だと仕入れてきては、二人をを巻き込んでいるミカ。
7序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:06:24 ID:24wa0dy70
 その、相も変わらずと言えば相変わらずのマイペースぶりに、いつもならばあきれながらも付き合うユカリも、試験前の追い込み時に長々と益体もない話を披露されては、自然と態度も刺々しくはなる。
 売り言葉に買い言葉、とでも言うか、同席していたチサトの取りなしで収まりはしたが、結局なんとはなく険悪な空気を残したまま別れてしまう。
 そのことが、ミカの心にわだかまっていた。
 いつもなら、早速と気分転換を済ませている。
 だいたいにおいて、岸井ミカという少女は切り替えが早い。
 と、いうより、常に確固として定まったモノをハナから持っていないとも言える。
 思考、行動の中心にあるのは、いつも 「なんとなく」 「なりゆきで」 という、曖昧模糊とした気分によるものばかりだ。
 周りからは、「ちょっとズレている」 とも言われるが、そんな事もミカ自身が気にすることはない。
 これまで、そういう 「なんとなくこうすれば良い」 という気分で生きてきて、それでそこそこ巧くいっていた。
 なんとなく、「面白そうな怖い話」 を仕入れては、「なりゆきで」 ユカリやチサトを誘って、噂の検証に行ったりしてきた。怖い目にあったり、不可解なことにも遭遇したが、結局 「なんとなく」 それらを切り抜けてきていた。
 そのミカが、どうにも最近調子が悪い。
 何故調子が悪いのか、という事を、ミカ自身はあまり分かっていない。
 ただなんとなく、「人付き合いは難しい」 という様なことを思っている。
 社交的で活動的、交友関係も広く、異性にも学年で一番人気。学校外にも独自のネットワークを持っている。
 とはいえだからかといって、誰とも巧くやれるというタイプでも無い。
 現に、彼女が通う雛城高校で最も親しくしているのは、クラスメイトではなく1年先輩のユカリとチサトなのだ。
 集団の中で、器用に動き回っているようで居て、どことなく浮いている。
 それが、幼い頃からの岸井ミカの立ち位置だった。


 白い。真っ白だ。
 空気の抜けるような気の抜けた音と共に、地下鉄のドアが開き、濃密な、それでいてふわふわとした現実感のない濃霧が、車内に進入してくる。
 ミカはぼんやりとしながら、濃霧の中駅のホームへと降り立つ。
 踏みしめたはずのコンクリートの地面に、一瞬脚がずぶずぶとはまりこむ錯覚を覚えたが、すぐに忘れた。
 コツン、コツンと、靴音がする。
 白い霧の奥にはただ薄暗い駅のホームが広がり、自分以外の気配がまるでない。
8序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:07:05 ID:24wa0dy70
 その静寂に、その肌寒さに、その非現実感に。
 意識が向いたときは、既に地下鉄は発車していた。
  
「あれ…? ここ、何処…?」
 
 自分以外誰もいない、真っ白な霧に包まれた地下鉄のホーム。
 その濃霧の向こうに透けて見える駅の様相は、少なくとも岸井ミカが普段知っているものとは違う。
 初めて見る駅。初めて見る場所。
 その上、なんとなく、日本らしからぬ雰囲気がする。
 まるで、そう ――― 映画や海外ドラマで観る、外国の地下鉄ホームの様だ。

 その違和感をぼんやりと抱え込んだまま、しかしこのままここにいるのにも気が乗らず、ふらふらとミカは歩き出す。
 誰か、そう、駅員が見つかれば、ここが何駅かも分かるだろうし、いっそ何なら外に出てタクシーを拾っても良い。
 そこそこ裕福な家庭に育つ岸井ミカにとって、それが数駅程度の距離ならばお小遣いで事足りるし、思ったより多ければ親に謝って払って貰えば良い。
 そう思い、階段らしき方向へと歩き出し…何かを踏み…滑った。


 白い。全てが真っ白だ。
 霧と言うよりもむしろ、純白の薄絹を幾重にも被せられたかと思うほどに白い。
 ぼんやりと白い膜。
 その膜の内側に、岸井ミカはいる。
 おしりが痛んだ。
 ずきずきと、熱をはらんでいる。
 半ば混乱した意識のまま、上体を起こす。
 地面はしっとりと濡れて冷たい上に、薄汚れている。
 一瞬、自分がこんなところで何をしているのか分からなくなったが、それでもなんとか思い出す。
 駅のホームで、何かを踏んで、転んだ。
 おしりが痛いのは、尻餅をついたからだろう。
 軽く悪態をつきながら撫でさする。
9序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:07:39 ID:24wa0dy70
「はぁ〜、もう…。ツイてないなぁ〜…」
 良くも悪くも、自分の不注意やミスではなく、タイミングや運の悪さに原因を求めるのがミカの楽観的なところ。
 そしてその不運の原因を探すことより、まずは目についた事に興味を引かれるのも又、ミカの気質だ。

 ひんやりとした地面の感触。
 自分の姿を見る。
 いつもの通りの雛城高校の制服。ひときわ短くしたスカートに、レモンイエローのお気に入りのデイバッグ。
 そのバッグが地面に落ち、口を開け荷物をまき散らしている。
(あー、もう、サイアク…)
 バッグを引き寄せ、散らかっている自分の荷物を緩慢な動作で拾い集める。
 ノートに教科書 (どちらも真新しいままで、ほとんど使われてはいない)、ペンケースに筆記用具、小物入れのポーチ、三種の神器こと、MDウォークマンとカメラとポケベル、オカルト雑誌。それから、無造作に纏められた何かの包みに、赤黒く汚れた黒皮の手帳……。
 …手帳?
 そこで初めて、ミカは違和感を感じる。
(何…これ?)
 成人男性が持つような使い古しの手帳。赤錆びた様な汚れがこびりついている。
 嫌だな、と、顔をしかめる。
 そうしつつも、それを放っておくのも何か居心地が悪く、おそるおそる手を伸ばして少しめくる。

『この街のルールについて記しておく―――』
 
 乱雑な走り書きと、地図やメモに、奇妙な文言。
 地図は、一見するとただの観光案内のパンフレットのようだった。
 見たこともないはずの地図。
 しかし、何故か記憶に引っかかる。
 真ん中に湖があり、ペンで、「墓地」、「病院」、「教会」、「遊園地」 と書き込まれている。
 さらには、「屋敷(東洋?)」「研究所」「ラクーンシティ警察署(?)」等と乱暴に続き、最後に目についたのは、「高校 (雛城?)」 の書き込み。 
 知っているはずの場所。親しみすぎているはずの場所の名前が、いやにこびりつく。
 それ以上見ていたくない気分なり、無造作にそれをバッグに入れる。
10序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:08:02 ID:24wa0dy70
 そのまま、地図を挟んであった手帳の方をパラパラと眺めるようにすると、その中でやけに鮮烈に、件の一文から始まる箇所が気になった。
 
『ここは サイレントヒル だ。
 かつて来たときとは、さらに様相が違っている。
 街の配置はバラバラだし、相変わらずの濃霧はさらに酷い。
 しかし、ここはやはりサイレントヒルだ。
 そして、ルールも又、以前とは違っているらしい。
 街の至る所に、ルールが記されている。
 さらにおぞましいルールが。

 1.殺せ
 これは第一のルールらしい。
 この街に居る他の者達を殺せば、解放されるという。
 また、殺すことで街からギフトがもたらされるともいう。

 2.サイレンにより、世界は裏返る。
 時間経過により、定期的に裏世界へと変貌する。
 これが何を意味するかは分からない。

 3.定期的に追跡者が追加される。
 追跡者が何者かは分からない。
 一定時間毎に、我々を追いつめる者が新たに街に訪れるようだ。

 4.最後の一人には、完全なる幸福が約束される。
 完全なる幸福とは何なのかは分からない。望みが叶うと解釈した者も居たようだ。
 
 ここまで書きはしたが、分からないことだらけだ。
 何故私はここに居る? 何故殺し合いをしなければならない? 誰がこのルールを決めた? 
 何より、これが本当にこのサイレントヒルを支配しているルールなのか、確証はない。
11序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:08:33 ID:24wa0dy70
 だが、一つだけ思い当たることが無くは無い。
 つまりは、私の罪はまだ赦されていないのだろうと言うことだ。

 いずれこの手帳を読むであろう人よ。
 そのときおそらく、私は生きてはいまい。
 しかし、それでも、貴方の罪が赦されることを願う。
                             ――― J.サンダーランド』


 読み終えて、後悔した。
 うなじの後ろに虫が這い回るかの様な、嫌な感触が止まらない。
 途中から読むのを辞めたかったが、そうする事が出来なかった。
 あまりに内容が荒唐無稽で、常軌を逸している。
 それでいて、あるいは魅入られたかの様に、目で文章を追い続けた。

(たちの悪い冗談…だよね?
 てか、この人、チョットおかしいんだよ…。
 アラマタが前、言ってたっけか。コダイモーソーキョーとかいう奴…。
 殺し合い? サイレントヒル? サイレントヒルって…)
 
 思い出す。
 アラマタから送られてきたオカルト雑誌。その中にあった数ページの特集記事。
 アメリカのゴーストタウン、サイレントヒルにまつわる忌まわしいうわさ話 ―――。
 
 頭の中では、矢継ぎ早に否定の言葉がわき上がる。
 同時に、もっと頭のおかしな事実がわき上がり、それらの言葉を押しのけて意識の真ん中に居座り出す。
 
(英語…何で読めるの?)

 生粋の日本人だし、ごく普通の高校生でしかないミカは、付け加えれば成績も大して良くはない。
12序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:08:59 ID:24wa0dy70
 スラング混じりの英語で書かれたメモ書きを、理解できるわけがないのだ。

(………そっか、やっぱり夢だ。夢なら読めるのもアタリマエだよね)

 全ての不条理な現象を解決する、最も合理的な回答を呼び寄せる。
 呼び寄せて、それにしがみつこうともがくようにして、身体のバランスを崩した。
 崩して、両手を後ろに伸ばし。
 地面に着いて ――― 。

 ぬるり。

「ひっ!」

 声が出てしまう。
 本能的に、それを押さえようとして、短く浅い息を繰り返す。
 既に冷たく、半ば乾いていた。
 へどろの様な、半固形状のモノ。
 匂いが … 何故今まで気がつかなかったのだろう?
 こんなにも強く、鉄錆びた匂いがしているのに。
 こんなにも激しく飛び散っているのに。
 これだ。
 これに足を滑らせたのだ。
 これに足を滑らせて、転んだのだ。
 駄目だ。
 後ろを見ては駄目だ。
 この手に触れたものが何なのか見ては駄目だ。
 見たらきっと ―――。

 戻れなくなる。
13序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:09:34 ID:24wa0dy70

 岸井ミカはただ闇雲に走っている。
 濃霧の中を泳ぐように、あるいはかき分けるように、ただ此処ではない場所に行き着くために走る。
 ここがどこかも分からないし、分かりたくもない。
 今まで何度か、奇妙な出来事に巻き込まれはしたが、なぜだかそのときとは "違う"。
 これは違う。
 何もかもが違う。
 全部嘘だ。
 長谷川センパイも、逸島センパイもどこにいるのか分からない。
 今までなら、こんなときにはいつも一緒にいたはずなのに ―――。
 教えて欲しい。
 ここは何なのか。何でこんな事になっているのか。
 この手にこびりついた赤黒いものは何なのか。
 あそこにあったものは ―――。


 屠殺された牛のように、頭から真っ二つにされている。
 かつてジェイムス・サンダーランドであったそれは、過去の罪に追いつかれ、そこに果てていた。
 血だまりは半ば乾き、黒ずんでいる。
 彼がサイレントヒルに迷い込み、果てた姿。
 そのオブジェの向こうから、何かを引きずる様な音が響く。
 ゴリ、ゴリ、というその音は、真っ白な霧の中から浮かび上がっては、再びその白の中へと吸い込まれていく。

 それは罪。
 それは、ジェイムス・サンダーランドが自らを罰する意識が具現化したもの。
 あるいは遠目には、鳥の横顔のようにも見える、三角形の金属を頭部に持つ、人の形をしたもの。
 在らざるもの、今あり得るはずのないものが、どす黒く汚れた金属の板…およそ広げた両手にも余るかの、尋常ならざる大きさの鉈を引きずりながら、ゆっくりと歩いている。
 
 それに、何等かの意志や目的があるかと言えば、分からない。
14序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:10:55 ID:24wa0dy70
 ただその顔 ――― 三角形の赤錆びた金属の顔 ――― を正面に向けたまま、確固とした足取りで歩いている。
 駅のホームから、階段を上がり、引きずった大鉈が段毎にゴリゴリと音を響かせている。
 そのはずみで、鉈にこびりついた赤黒い塊の一部が落ちる。
 既に原型など分からぬそれは、かつてはジェイムス・サンダーランドであったものの一部。
 三角頭によって裁かれた、彼の罪の欠片。
 在らざる時、在りうべからぬ場所で裁かれた、彼の罪の欠片。
 その欠片をこびりつかせたまま、三角頭は白い闇の奥へと消えていった。

15序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:11:43 ID:24wa0dy70
 
[序章、初期キャラクター基本情報及び状態表]

【駅構内/一日目夕刻】
【岸井ミカ@トワイライトシンドローム】
 [状態]:健康、軽いパニック
 [装備]:特になし
 [道具]:黄色いディバッグ、筆記用具、小物ポーチ、三種の神器(カメラ、ポケベル、MDウォークマン)
 黒革の手帳、書き込みのある観光地図、中身の分からない包み、オカルト雑誌『月刊Mo』最新号
 [思考・状況]
 基本行動方針:逃げる。
 1:安全(?)な場所へ逃げる。
 2:誰か(センパイ)に会いたい。
 
16序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:12:32 ID:24wa0dy70

【キャラクター基本情報】
岸井ミカ
出典:『トワイライトシンドローム』(探索編、究明編)
年齢/性別:16歳/女性
外見:少し染めた茶髪いロングヘアーをした、ごく普通の可愛らしい女子高生。
環境:90年代日本、雛城高校の1年生でラクロス部とバドミントン部に籍を置く幽霊部員。
  比較的裕福な家庭で、ピラミッド御殿"と揶揄されるほどの高級マンションに、両親と共に暮らしている。
性格:楽天的で外向的。一人で悩むよりは人に聞くし、家にいるよりは外へ遊びに行く、90年代の、所謂コギャル出現以前の 「今時の女子高生」タイプ。流行りに対してのアンテナも敏感で、噂好き。熱しやすく冷めやすい面もある。
 ただし、人の心の機微を読み取ることに関しては些か不得手な面も。
能力:ごく普通の女子高生であり、特殊能力はない。
 ピッキング(鍵開け)の特技があり、簡単なものなら針金などの小道具で開けられる。
口調:一人称は「私」、二人称は「名前(+呼称)」 が多い。(例:「長谷川センパイ」)
 語尾を伸ばすような口調。(例:「私、そういうの興味無いですしー」)
 身振り手振りを交えたり、身体をくねらせたりしながら話すことが多い。
交友:同校、一年先輩の長谷川ユカリと逸島チサトと、半ば押しかけ気味に親しくしている。
 特に長谷川ユカリには、一種の尊敬に近い敬愛の情を抱いている節があるが、表には出さない。
 主に電話などでの交友として、オカルト知識のオーソリティー、作家のアラマタという成人男性ともつきあいがある。
備考:『ムーンライトシンドローム』は1年後の設定で描かれる外伝的作品で、パラレルワールドの様な位置づけと解釈できる。
 今回の出典は 『トワイライトシンドローム』 終了後を基本とし、又外伝的位置づけであることも含め、『ムーンライトシンドローム』 の展開は考慮しない。
17序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:12:59 ID:24wa0dy70

ジェイムス・サンダーランド(死亡)
出典:『サイレントヒル2』
年齢/性別:男性/29歳
外見:中肉中背の金髪白人男性
環境:1994年のアメリカ人男性。事務員。
性格:内省的な面を持つ。記憶の混乱と抑鬱的で陰鬱な態度が見られ、ある時期、精神を病んでいた可能性がある。
能力:ごく普通の成人男性であり、特異なものはない。
口調:特徴的なしゃべり方はなく、丁寧で抑揚があまりない。
交友:3年前に妻、メアリーが死亡して以降、交友関係は閉ざされている様子だが、目立った記述はない。
 ゲーム内で、マリア、アンジェラ、エディー、ローラ等と会う。
備考:エンディング後か開始前かは未定。
 ゲーム内では、サイレントヒルに来る直前に、病気に苦しむ妻、メアリーを自らの手で殺した記憶を封印していた事に気づく。
 又、「教団」等の設定とは関わりが無い。(2は、1、3等とは異なり、サイレントヒルの教団そのものとは無関係の、完全な巻き込まれ型のシナリオ展開)
18序章 サイレント・シンドローム:2008/05/01(木) 23:14:09 ID:24wa0dy70

【クリーチャー基本情報】
レッドピラミッドシング(三角頭)
出典:『サイレントヒル2』
形態:1体〜希に2体
外見:赤錆びた三角形の鉄板で出来た箱を被せたような頭部に、スカート状の腰布を巻いた、半裸で頑強な男性の姿。
 大きな槍か、大鉈を引きずるように持ち歩いている。
武器:槍、又は大鉈。
能力:動きは非情にゆっくりで緩慢だが、持久力、膂力、耐久力などは高い。拳銃の弾丸なら、数十発は平然と耐える。ゲーム内では撃退は出来るがほぼ不死。そのほかの特殊能力は無し。
攻撃力:★★★★☆
生命力:★★★★★
敏捷性:★☆☆☆☆
行動パターン:ゆっくりと歩き回り、執念深く追跡してくるが、反撃されある程度ダメージを受けると立ち去る事が多い。
備考:本来は、妻を殺してしまったジェイムスの自責の念が具現化した怪物で、ジェイムスにのみ見え、ジェイムスのみを罰するために追ってくる存在。今回、何故ジェイムズが死んだ(ジェイムスを殺した?)のに存在しているのかは不明。
 ただし、ゲーム内の新聞記事において、殺人犯ウォルター・サリバンが 「赤い悪魔が俺を殺そうとしている」と発言しているなどの記述があり、三角頭はサイレントヒルの魔力に囚われた人間の罪悪感に反応して追ってくる存在かもしれない。
 サイレントヒルの歴史上の処刑人の姿でもある。

19名も無き悪夢:2008/05/01(木) 23:22:14 ID:24wa0dy70
【基本ルール・追記】

・出典と出来る 「ホラーゲーム」 は、コンシュマー、PC、商業、同人、フリー等媒体、発表形式は問わない。
 ただ何れにせよ、他の書き手が必ずしも出典元を参照できるとは限らないことを前提に、SS内や補足情報で巧く補完することを心がけ、ルートによるゲーム内での変化なども含めて、ある程度 「いいとこどり」 でも調整する方向で。
20 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/01(木) 23:32:44 ID:24wa0dy70
 というわけで早速ながら、

 【式部人見@流行り神】
 【ダグラス・カートランド@サイレントヒル3】

 のSSを予約させていただきます。
21 ◆zwd90NdoW6 :2008/05/02(金) 01:17:02 ID:/r0y4mjtO
面白そうなスレが立ってる…
書いたもの勝ちなら予約しちゃいますか
【坂上修一 岩下明美@学校であった怖い話】
を予約します
22 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/03(土) 00:13:41 ID:ollvfbg/0
まさか学怖書ける人がいるとは……。
これで迷わず予約できる。

【賽臥隆恭@アパシー 鳴神学園都市伝説探偵局】
【日野貞夫@学校であった怖い話】
【宮田司郎@SIREN】

を予約します。
23 ◆.c1l3rjuuE :2008/05/03(土) 00:43:14 ID:mXgwWz6E0
【ヘザー@サイレントヒル3】
【阿部 倉司@SIREN2】
ゾンビを予約
24七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:06:36 ID:4auo+9moO



「 今 度 の 新 聞 で 、う ち の 高 校 の 七 不 思 議 の 特 集 を 組 も う ぜ 」


部 長 の 一 言 で 、僕 た ち 新 聞 部 は 学 校 の 七 不 思 議 を 特 集 す る こ と に な っ た 。

今 年 の 夏 に 、長 い 間 使 わ れ て い な か っ た 旧 校 舎 が 取 り 壊 さ れ る こ と に な り 、そ れ に 合 わ せ て 恐 怖 ネ タ を や り た い と い う こ と だ っ た 。

そ し て 、ま だ 一 年 生 で 新 人 の 僕 が 、そ の 担 当 に 選 ば れ て し ま っ た わ け だ 。



      *          *          *           *      

25七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:07:37 ID:4auo+9moO

一人、また一人と語り部たちが消えていく。

ある者は錯乱状態に陥り、
ある者は文字通りに忽然と「消え」てしまい…
ある者は僕の見ている目の前で亡霊に捕らわれ…嫌な破壊音を響かせながら悲鳴を上げ…そして、何ら痕跡を残さず消えた…。

それでも僕は、話を続けた。あたかもそれが、僕に課せられた使命であったかのように思われた。
…正味の所、現実として認めたくなくて変にムキになって、引っ込みが付かなくなっていた訳でもある。

−−次は、何が起こるのか。

恐ろしいと思う反面、どこかで期待していた部分もあったのかもしれない。

ついに、最後の一人が、細田さんまでもが消えた。

細田さんの話を聞き終え、問題の三階のトイレに行ってみる事となった。
三回ノックし、次に一回。ゆっくり慎重に行程を済ませた。
けれど、花子さんはついに現れなかった。
それまで我慢していた事もあって、ついでに用を足そうと思った。
流石に女子トイレでそのまま事を済ませるのも気が引けたので、隣の男子トイレへ向かった。
我慢していたせいか、いつもよりいやに長い。早く済ませるべく下腹部に力を加えて、勢い良く尿を押し出す。
夜の学校、それも旧校舎という事もあり、手早く事を済ませ、恐怖心からか駆け足でトイレから飛び出た。慌てた為にパンツを濡らしたくらいだ。


…外で待っていたはずの細田さんは、いなかった。


26七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:09:31 ID:4auo+9moO

驚かそうと思って隠れているのかと思い、辺りをうかがったがどこにもいない。
そもそも細田さんはそんな悪ふざけをするような人には見えなかったし、
大体忍び歩きでもギシギシと不愉快な音が鳴るくらいだ、この短時間に音も立てずに隠れる事なんて不可能だ。細田さんの体格なら尚更だ。
…とはいえ視界が悪いから、少し歩くだけで充分見えない距離まで移動出来はするのだが。

一人旧校舎に取り残された事への恐怖心は当然あったが、これまでの事もあってか、件の細田さん自体に対しては、すんなりと「消えた」として受け容れている自分がいた。

ありがちな、今更冷静ぶって常識を持ち出して「認めない」というような事もなく、
あくまで自然に、受け容れてしまっているのだ。


次は、僕が消える番なのか…?
七人目はどうなったのか…?
あるいは、僕自身が七人目という事になるのか…?

…この期に及んでそんな事を気にしている自分に、
ついさっき、形だけでも「親友」になった細田さんを半ば「諦めている」自分に、内心苦笑する。

帰宅という形で退場した…
−−いや、我ながらなんて言い種だ。これじゃまるで、それこそが「異常」であるかのような言い種じゃないか。

…その岩下さんも含めて、六人もの人間が「姿を消した」のである。
それこそ神隠しか何かのように、忽然と。

《そもそも現実に人が消えているのに、七人目がどうだとか、七不思議とか、そんな事を気にしている場合なのか?》

尤も、こうした思索は一人一人消えゆく中でも何度となく行っていたし、集まった面々からも、まだ続けるべきか再三にわたって確認された。それを反芻したに過ぎない。
27七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:11:54 ID:4auo+9moO


ここに留まっていても仕方がない。
ひとまず此処から出よう。

真っ直ぐ階段を降りてしまいたかったが、やはり細田さんを探そうと思い直し、僕は反対の廊下へ足を向けた。
歩く度に黴臭い廊下が嫌な音を立てる。まるで警告しているかのように。
途方もない程の無音の空間の中にあって、ただその音だけが唯一の僕の存在証明に思えた。
誰に気を遣うわけでもないのに、自然に忍び足になっていた。

首の裏から背中までが何かゾワゾワとして、ピリピリとした緊張感が漂う。
目は慣れたとはいえ視界は悪く、ノイズのように目に映る暗闇が想像力を刺激して、「何か」を頭に投射しては消えていく。
…もしかすれば、本当に何かがいるのかも知れない。
こんな事なら懐中電灯を持ってくれば良かった。

教室の前についた。
僕はゆっくりと戸を開けた。耳障りな摩擦音が鳴る。

「細田さん?」
少し声が上擦った。
目を凝らしてみるが、やはり誰もいない。
早くここから離れてしまいたくて、戸も閉めずに次の教室へ向かった。

「細田さん!やめてくださいよこんな悪ふざけ!」
僕はわざと大きな声で言った。

…この階の全ての教室を回ったが、やはり、どこにも居ない。ついに廊下の端まで来ていた。

否が応でも改めて独りである事を確認させられて、気が滅入りそうになる。

28七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:14:04 ID:4auo+9moO

意識的に、動作を大きくして毅然と歩く。
嫌でも開いた戸からわずかに教室の室内が視界に入って、開けっ放しにした事を少し後悔した。

ふいに、ある話が思い起こされた。
昔、新任の当直の先生が見回りをした時に起こったという話だ。
誰も居ないはずの旧校舎に電灯が点いていて、正義感の強い先生は見回りに行くのだが…仔細は忘れてしまったけど、
その先生も今の自分ように、恐怖心を紛らわせようとわざと音を立て鳴らすようにしたという。

こんな状況だと、様々な怖い話が想起される。次々と想像が浮かび、果ては旧校舎に関係の無い話まで思い起こされて、僕の頭を駆け巡る。

ようやく半分くらいまで来た。嫌に長く感じる。
さっきの細田さんの話−−いつまで廊下を歩いても、何故だか先に進めない場面があった−−が思い出されて、少し身じろぎする。



「ギシ…………ギシ………」



馬鹿な。
後ろから足音がした。
誰も居ないはずなのに…。

「細田さん!?」

返事はなかった。
振り向いて確認しようにも足がすくんで振り返られない。
29七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:16:02 ID:4auo+9moO



「ギシ………ギシ………ギシ……ギシ…」
段々間隔が狭まって来る。少し早足になった僕の歩調に合わせているようだ。
僕は走り出した。
捕まってたまるものか!

「バタン!バタン!バタン!」
背後の足音も走り出した。
逃げなければ!
速く−−逃げなければ!
けれども、いくら走っても階段までたどり着けない。
おかしい。
同じ景色が何度も繰り返される。

「ダン!ダン!ダン!ダン!」

追い付かれる!

その時、前方から暗い「闇」が迫ってきた。
文字通りの真っ黒い闇が廊下を飲み込みなから迫ってくる!

挟まれたのか−−

猛烈な勢いで迫ってくるその闇に、僕は飲み込まれ、そして…僕の意識は途切れた。


30七人目の消失者(前編) ◆zwd90NdoW6 :2008/05/03(土) 13:16:57 ID:4auo+9moO

続きはもうちょっと待ってください〜
31名無しさん@全板トーナメント開催中:2008/05/04(日) 18:43:36 ID:WD2rY/GSO
HALF−LIFEはホラーに入る?
32名無しさん@全板トーナメント開催中:2008/05/04(日) 20:58:48 ID:rZvPfCcy0
質問等は>>1の企画スレのほうへどうぞ。

それと書き手の人は、投下したらその旨を企画スレのほうに書きこまないと、
気づいてもらえないかもしれませんよ。
33 ◆SozLWwNPjU :2008/05/04(日) 22:11:51 ID:N8tvakN8O
予約しても良いのかな?
とりあえず
【須田恭也@SIREN】
を予約します。
34名無しさん@全板トーナメント開催中:2008/05/04(日) 22:24:11 ID:rZvPfCcy0
>>32
>>2だった……。
35 ◆SozLWwNPjU :2008/05/05(月) 12:17:15 ID:JM/Bk3t4O
すみません。
【ナース@サイレントヒルシリーズ】を追加予約します。
36 ◆zwd90NdoW6 :2008/05/06(火) 04:24:14 ID:9JG6bs5OO
あー
面目ない
ちょっと一身上の都合(笑)により
予約を破棄したいと思います
いや申し訳ない
37霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:34:42 ID:FsS+eaRJO
「何なんだよこれ…」

少年―――須田恭也は立ちすくんでいた。

当初、夏休みの暇つぶしを兼ねてネット上で話題になっていた村に行って、帰るつもりだったのだが訳の分からない儀式を見た。

そのすぐ後、よく分からないけど発砲しながら追ってくる警官を引いちゃったんだ。
だけど、なんでかわかんないけど、その警官に自分の胸撃たれて死んだと思えば女の人に助けてもらえてて教会に行った。

幻視とかいう訳のわかんない力のことも教えて貰ってさ。

教会に着いてすぐに何か声が聞こえたんだ。んで俺はその声の主を捜すために出たんだけど……。
深い霧の中を奴らに見つからずに抜け出たと思ったら、いきなり風景が変わってたんだ。

俺の目の前にあるのは遊園地。なんで村にこんなのがあるのか分かんないけど、怖いよな。
不安になって来た道を歩いてみたけど山すら見つけることも出来ない。何やら病院やホテルがあるってことは村じゃなくて都市…なんだよな此拠。
38霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:35:50 ID:FsS+eaRJO
「分けわかんね…」

その場に座って愚痴を言う。

胸を見れば穴空いてたのが塞がっちゃってるし。
幻視とやらは自分の近くにいる誰かさんの視点を見ることが出来るし。

しまいにゃ、村から都市にやって来ちゃって

「俺、夢でも見てんのかなあ…」

やることもないので、ボケーッとしていると何か音が聞こえた気がした。

それに過敏に反応して、まるでゴキブリのように暗い物陰へと隠れる。

「えと…えと…幻視しないと」

奴らに見つかったらマズイ。命に関わることなだけに慣れない、普通じゃない行動でもやらなきゃダメなんだ。

目を閉じて呼吸を整える。すると視界は闇から砂嵐へと移行した。

(どっちだ…どっちにいる?)

ザザ…ザァー……

視界は砂嵐から何も変化なし。

(気のせいだったのかな…)

幻視を長時間してると精神的に疲れる。そろそろ解くか、と恭也が諦めたときにソレは映った。

(…?)

砂嵐が真っ暗闇に、ノイズは吐息に変化した。
39霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:36:57 ID:FsS+eaRJO
{ハア…アア……ア……}

近くで聞こえるのは何かを引こずる音だろうか。カラカラカラ……
高い金属を引きずる音が聞こえる。

(あいつらか!?)

恭也は幻視を解き、視界を確認した方向―――霧の中へと目を向ける。

何も見えない…。

(気のせい、違う!幻視は出来た!だけど…)

何故その視界には景色が見えなかったのか。やはり気のせいだったのではないか。自分の放り出された世界が異常だったわけで幻視なんてもの有り得ないから。

不意にまた、音が聞こえた。

ラ……カラ………カラ…カラカラ……

カタカタと恭也の体は小刻みに震え出す。幻視による情報は本当だったのだ。

(どうして何も視界に映らない!?)

音のする方向へ意識を向けて再度幻視を行う。音は聞こえる。だが景色は以前として闇である。

(どういうことだよ!?なんでだ!?)

困惑する恭也の視界にソレは映りはじめた。
始めはうっすらとした影。
次にハッキリと影は人の形を成していく。
40霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:37:56 ID:FsS+eaRJO
そして―――恭也は何故ソレの視界に何も映らなかったのか知り、戦慄した。

(顔が………ない)

白いナース服だったのだろうか。ソレは赤黒く汚れた白い服を着ていた。
ソレはガクガクと奇妙な動きをしながら潰れた顔を向けて、真っすぐと確実に鉄パイプを引擦ってこちらへと向かってきた。

カラカラ…ガラガラガラ!!!!

あいつらのような恐怖とは別のハッキリ人間ではない、と認識出来、それが自分に対し向かってくる恐怖に恭也は動けなかった。

目の前で鉄パイプが薙ぎ払うように視界の端から迫ってくる。それは頭を狙って一直線。
未だ恭也は動かない。動けない。顔は恐怖で歪んでしまっている。歯の根が合わない。カタカタと体の震えも止まらない。

オシマイだ―――

そう認識した。
途端に体を支える力がなくなり、ペタンと地面へ座り込む。
間一髪。その鉄パイプは軌道が変わることなく壁に激突した。

ガアァァアァァァン!!!

ビクッと恭也の体が大きく跳ねた。
41霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:38:53 ID:FsS+eaRJO
それを期に体の震えも収まり、茫然自失としていた意思もクリアになっていく。自分の置かれている状況、相手の状態、全てを把握した上で自分の行動を決める。

(逃げなきゃ…それしかやれる事はない!)

須田恭也という少年は好奇心旺盛で感情表現豊かだ。今回は非現実的な事態に休む暇なく直面し続けたため、本来の彼ではなかったと言っても良い。
本来の彼は持ち前の行動力と危機回避能力で幾度となく屍人達により作られた窮地を乗り越えていった。

まあ、それらは別次元の彼のことなので多少、この霧の街に放り出された彼とは違うだろうが根本的には同じだ。

「ハッ…ハッ……ハアッ……」

どのくらい走ったのだろう。肩で息をしながら、恭也は幻視する。
見えたのは………砂嵐
聞こえるは………ノイズ

「助かっ、た…」

言って、視線を上へ上へと上げていく。霧で覆われてハッキリとした建物の形や大きさは分からないが、それでもかなりの広さだろう。

「POLICE…ST…警察署?」

42霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:40:34 ID:FsS+eaRJO
単語がすぐに出てきたのは日頃の勉強の成果でも何でもないことに彼は気付かない。それがこの世界のルールだということにも。

大き目なドアの前に立ち、その取っ手に手を掛ける。だが開くことがなかなか出来ない。
恭也は思い出していた。怪異に巻き込まれてすぐ警官に襲われたことを。
彼がドアを開けることを躊躇ってしまう原因を。

「大丈夫…大丈夫だ」

奴らと同じ警官がいたとしても、マトモな警官もいるはずだ。恭也は意を決してドアを開いた。

To be continued...
43霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:43:46 ID:FsS+eaRJO
【キャラクター基本情報】

須田恭也
出典「SIREN」
年齢/性別:16/男性
外見:細身で中背、黒みの強い茶髪の日本人
環境:2004年の高校生。ちなみに年号は昭和。
性格:好奇心旺盛でオカルトに興味有り。ただ、普通の学生と同じくらい興味を持っているだけで余り詳しくはない。
元来の行動力と適応性で異常な状況でも何とか落ち着きを保ち、体力は並より頭一つ出るくらいである。
また明るく勇敢な性格の持ち主であり、ゲーム中盤では新たに出現した屍人にも果敢に立ち向かった。
コミュニケーション能力はそこそこ高い。

能力:幻視。自分を中心に周囲の生物の視界をで自分の視界の如く見られる。遠ければ遠いほど視界と音声は雑に。近ければ近いほど鮮明になる。

口調:一人称→俺 二人称→アンタ。君。 親しい人間に対しては名前を呼び捨てにする。
基本はハッキリ話す。動揺している際は大声になり、順序だてて話せない。
44霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:44:41 ID:FsS+eaRJO
交友:学校での交友は不明だが怪異の中で長時間を共にした美耶子とは心を通わせた。

備考:須田恭也は美那子から印を貰っていません。というより美那子とは会っていません。そのため不死身では無く、屍人化が徐々に進行している状態です。

45霧散 ◆SozLWwNPjU :2008/05/06(火) 12:45:38 ID:FsS+eaRJO
【警察署玄関/一日目夕刻】
【須田恭也@SIREN】
[状態]強い疲労
[装備]無し
[道具]懐中電灯
[思考・状況]
基本行動指針:危険、戦闘回避。武器になる物を持てば大胆な行動もする。
1.安全な場所の早期発見且つ、状況把握
2.他に誰かいないか捜す


【クリーチャー基本情報】

バブルヘッドナース
出典:サイレントヒル2
形態:基本は複数体
外見:顔が潰れ、片足をひこずる感じで歩く。白衣なるものを着ているが酷く汚れている者と汚れの少ない2種類が存在する。
武器:基本は打撃系。稀に銃器。
能力:さほど突出したものも特別なものも無し。
攻撃力★★☆☆☆
生命力★★★☆☆
敏捷性★★★☆☆
行動パターン:打撃系の武器を持っている場合はキャラクターに一定以上近付くと振り回しながら近づく。
46邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:46:10 ID:Qccoiug10
「ありえねーよ! マジありえねーって!」

振り向かずただひたすらに逃げる。久しぶりの全力疾走に肺が軋む。
重くまとわりつく濁った霧の中を掻き分けるように走りながら阿部倉司は住宅街の
裏手と思われるほうを目指す。
無人の公園を突っ切り、洋画の中でしか見たことが無いような大型ガレージが左右に並ぶ道路を駆け抜ける。

なぜこんなことになったのかが分からない。新しく決まったバイトに出勤する途中だったはずなのに、
路地を曲がった次の瞬間自分の目の前に現れたのは、霧に包まれた見慣れない繁華街と、そこにひしめく歩く死者の群れだった。
まるで夜見島の悪夢を数倍悪化させて再現させたような状況に、安部は一も二も無く逃げ出した。
47邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:47:36 ID:Qccoiug10
 逃げ出してから十数分も経っていないだろうが、もう何時間も走り続けている気がする。酸素不足で息が上がる。禁煙しとけばよかったと後悔した。
 もう限界だと思ったその時、右手に見えたのは開けっ放しのガレージ。
 行き過ぎかけた体を入り口のふちをつかんで止め、中へ文字通り転がり込んだ。勢いあまって年代もののトラックに腰をぶつける。

「いってッ! ハァ…ハァ…、ンだってんだよクソッ!」

 トラックの陰に隠れながら息と思考が落ち着くのを待つ。周りを見てみると床には自動車整備に使うジャッキ、後ろの棚においてあるいくつかの箱は工具だろうか。
トラックについているナンバープレートの表示はは見慣れた日本のそれではなかった。
 状況を確認するうちに気分が少し落ち着いてくる。なぜ自分はこんなことに巻き込まれているのか――
48邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:48:46 ID:Qccoiug10
 同棲相手だった多河柳子殺害の容疑を晴らさんと乗り込んだ夜見島で悪夢のような夜が明けた後、安部の前に突きつけられたのは、
警察による逮捕ではなく、「多河柳子という人物は最初から存在しない」という『事実』だった。
 誰に訊いても柳子のことを知るものは居らず、一緒に撮ったはずの写真に写っていたのは自分一人。
 激しく混乱し、悲しみながらも、島で出会った作家、三上の愛犬ツカサを支えにどうにか立ち直り再起を図ろうとした矢先、この怪異に巻き込まれてしまった。



 「ついてねぇなんてレベルじゃねぇよなコレ…」

 上着のポケットからタバコとライターを取り出す。先刻の後悔はもう忘れていた。
 来たことの無い町、それもどうやら日本ではない場所、そこにいたのは無数の怪物。
 夜見島の連中のように武器を使うわけではなさそうだったが、通りを埋め尽くすほどの数は脅威だ。武器を持っていたとしてもあの中に突っ込むのは遠慮したい。
 タバコをふかしながらこれからどうするかを考える。状況は不明、原因も分からず、回りは化け物だらけ。それでもなおも考える。
 沈思。
 黙考。
 やがて出た結論は、
 (ま、なんとかなんだろ)
 夜見島でも駆けずり回っているうちに何とかなったのだ。今度も上手くいくかもしれない。
 楽観的にそう考え、ふと思い出した。
 夜見島にいる間だけ使えたあの力、もしかしたらまた使えるかもしれない。
49邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:49:56 ID:Qccoiug10
 夜見島で三上はあの力を「視界を借りる」と表現していた。
 あの時のように目を閉じ意識を周囲にめぐらせてみる。脳裏に奔るノイズのようなイメージ、やがてそれが突然クリアになった。
 
(おお、上手くいった――ってげっ!?)

 緩慢に左右に揺れる視界。おそらく化物のものであろう視界に開けっ放しのガレージが映っている。
 つまり安部の隠れている場所が。視界の持ち主との距離は約20メートル程か。

(来んなよ!こっち来んなよ!)

 必死に念じる。ふらふらと揺れていた視界はその甲斐あってかやがて脇の細道へと逸れた。そのまま視界は路地をゆっくりと進んでいく。
 安部は安堵のため息をつく。どうやら戻ってくるつもりは無いらしく、視界は路地を抜けた別の通りを映し始める。
 しばらく視界をのっとったまま様子を見ようと思った矢先、再び硬直した。
 通りを抜けた化け物の視界、道路の端に金髪の少女と思しき人影がかがんでいる。こちらに背を向けていて気づいていないようだ。
 人間らしく体の動かし方に化物のような不自然さやぎこちなさが無い。
 全身が総毛立つ。あの少女はこのままいけば間違いなく殺されるだろう。ならどうする?危険を冒してまで助けるか?あったことも無い少女のために?
50邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:51:18 ID:Qccoiug10
 一瞬逡巡する。だが、

 「ああもうしょうがねぇなクソッ!」

 視界ジャックを切り上げ立ち上がる。
 この阿部倉司という男、チンピラめいた風貌に反して根は人の良いところがある。
 幸いというか、自分はこの手の怪現象に対しては経験がある。あの動く死体――仮にゾンビと呼ぼう――一体ぐらいならどうとでも出来るはずだ。
 背後にあった工具箱をひっくり返し、床に散らばった中からバールとパイプレンチを拾い上げると外へ飛び出す。ゾンビが向った路地を曲がり、視界ジャックで『観た』通りへ。
 曲がり角の向こうにフラフラと揺れる人影。間違いなくあのゾンビだ。
 阿部はそれを確認するとレンチをズボンのベルトにねじ込みバールを両手で握りながら雄たけびを上げて通りへと飛び込む。

 「おらあああああああ!?」

 だが、通りに入った瞬間、安部は自分が甘かったことを思い知った。
 驚いた表情でこちらを見る金髪の少女、それはいい。だがゾンビが三体もいるのは完全に予想外だった。
 さっきの視界ジャックの際に、視界を切り替えて他の敵を確認することを忘れていた。危機的状況からしばらく離れていたが故の、安部の痛恨のミス。
 だがすでに六つの濁った視線が安部を捉えている、もはや後戻りは出来ない。
51邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:54:31 ID:Qccoiug10

 「何やってんだ逃げろこのバカ!」

 少女に怒鳴ると、腹を括って一番近いゾンビの脳天に渾身の力でバールを叩きつける。重い手ごたえとともに腐敗した体がアスファルトに沈む。
そのまま間近に迫っていた二体目のこめかみをなぐりつけた。が、初撃で上体が泳いでしまい、相手をわずかによろめかせただけに終わる。

 「ウゼーんだよ!」

 なおもつかみ掛かってくる二体目の腹を蹴り飛ばし距離を稼ぐが、その時にはすでに三体目の間合いに入ってしまっていた。
うめき声とともに伸ばされた腕をバールで払いのけようとするが、逆にバールを掴まれてしまう。とっさに右手でレンチを抜いて顔面を殴るも
不自然な体勢で片手では十分なダメージが与えられない。ならもう一度と振り上げたレンチまで掴まれてしまい、そのまま拮抗状態に陥る。 
眼前のゾンビの黄色くぬらりと光る歯が安部の肉を食いちぎらんと迫る。さらにそのゾンビの肩越しに先ほど蹴り飛ばした二体目が立ち上がるのが見えた。
 
 (や、やべ……!)

 「頭下げてッ!!」

 至近距離で立て続けの破裂音。同時に目の前のゾンビが右側頭部から中身を撒き散らしながら倒れこむ。破裂音は止まらない。
近づいてくるもう一体のゾンビの体に数ヶ所の穴が開き、やがて前のめりに倒れこんだ。
 安部が荒い息をつきながら傍らを見るとそこには拳銃を構えた少女の姿があった。
 少女は銃を下ろして大きなため息をつくと非難がましい視線を送ってきた。

 「いきなり突っ込まないでよ、あんな混戦になったら援護も出来ないじゃない」

 「なっ……!おまっ……!」

反論しようとするが酸素不足で上手く頭が回らない。かまわず少女は数歩進み、そこで振り返ってぶっきらぼうに告げた。

 「でも今のは一応助けてくれるつもりだったのよね。ありがと」

 「お、おう……」
52邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 19:59:23 ID:Qccoiug10

 ヘザーと名乗った少女は安部が想像していたよりも修羅場をくぐっていたらしい。少なくとも見た目にはこの異様な状況に大きく動じているということはないようだった。
 今も確認のつもりなのか倒れたゾンビにガスガスと蹴りを入れている。

 「お前タフだなー……」

 「前にも似たようなことがあったからね、少しだけ慣れてるわ。慣れたくなんかなかったけど」

 いろいろと底の知れない少女だ。

 「そっか……。にしてもその銃どこで拾ったんだ? やっぱあれか、アメリカ人はみんな銃とか持ってんのか?」

 「ああこれ?向こうで警官のゾンビに襲われそうになったから石で殴り倒して、ね。ちょっと借りたわ。」

 (……このガキたくましすぎだろ)

 化物の武器を奪うというのは安部も夜見島でやっていたことだが。
 一通り確認が終わったのか、ヘザーが安部のところへと戻ってくる。

 「じゃあそろそろ移動するわよ。ここは危なそうだし」

 一瞬素直にうなずきかけて阿部は我に返った。

 「ちょっと待てよ!?何でお前が仕切ってんだよ!?ってか俺が一緒に行くなんていってねぇだろ!?」

 「でもあなた頼りなさそうだし、どこかで死なれたら寝覚めが悪いわ」

 思わずキレそうになるがかろうじてこらえる。情けない話だが、助けるつもりで逆に助けられたのは事実だ。それに年下の女にマジギレなんてかっこ悪すぎる。
 そう思って気持を落ち着けようと――

 「何ボーっとしてるのよ。さっさといくわよ」

 「だからなんでおめーが仕切んだっつーの!」

 無理だった。
53邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 20:01:44 ID:Qccoiug10
 ヘザーは安部がぶつくさ文句を言いながらもついてきたのを確認すると再び前を向いて
歩き出す。
 ガラの悪い男だが、見ず知らずの自分を助けに来てくれるあたり、きっといい奴なんだろう。とりあえずは信用できそうだ。 
 当面の最大の問題は――

 (この霧に怪物たち、まさかまた教団が?)

 しかしあの時、クローディアとヴィンセントは死に、神を倒したことですべての因縁に終止符を打ったはずだった。だがこうして今また怪異に巻き込まれている。
 今の自分にはもう神は宿っていない。教団の残党がいたとしてももう利用価値は無いはずだ。別の何かが原因なのだろうか。自分の知らないような更に深く邪悪な何かが――

 (負けちゃ駄目だ!)

 弱気になりそうな自分を叱咤する。相手が何であれ関係ない。必ず私は日常を取り戻してみせる。絶対に。
 ヘザーは白く濁る霧を精一杯睨みつけた。



 白色の闇は深くいまだその底を見せようとはしない――


54邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 20:04:19 ID:Qccoiug10

【住宅街/一日目夕刻】
【ヘザー@サイレントヒル3】
 [状態]:健康
 [装備]:SIG P226(装弾数7/15 予備弾30)
[道具]:L字型ライト
[思考・状況]
基本行動方針:戦闘はなるべく回避
1:安部と情報交換
2:ラジオと武器を探す
3:他に人がいるなら探す



【阿部 倉司@SIREN2】
 [状態]:やや疲労
 [装備]:バール
[道具]:パイプレンチ、タバコ、ライター
[思考・状況]
基本行動方針:戦闘はなるべく回避
1:ヘザーと情報交換
2:他に人がいるなら探す
3:まともな武器がほしい
55邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 20:06:23 ID:Qccoiug10
【キャラクター基本情報】

ヘザー・モリス
出典「サイレントヒル3」ノーマルED後
年齢/性別:女性/17歳
外見:中肉で背はやや小柄、金髪のショ−トヘア
環境:アメリカ在住 所属は不明 両親は死亡
性格:気が強く、やや短気で口の悪いところがあるが、他者の痛みを理解するやさしさと困難に立ち向かう強さを持つ。
    ゲーム中では突如巻き込まれた異変に、慄きながらも冷静に対処していた。が
能力:射撃、格闘ともにそれなりにこなせる。
口調:一人称は「私」、二人称は「あなた」。敵対者には口汚く罵ることも。口調はややぞんざい。
交友:父親はゲーム中で殺害される。ダグラス・カートランドとは衝突しかけるも後に和解する。
備考:「サイレントヒル」の主人公ハリーの養女でアレッサの転生体。アレッサの記憶を持っているが本人に特殊な能力はない。
    今回はノーマルED後からの出展としていて他EDの展開は考慮しない。


阿部 倉司
出典「SIREN2」『失われた世界』後
年齢/性別:男性/24歳
外見:中肉で背はやや高めの日本人男性
環境:2005年の日本在住のフリーター
性格:態度は粗暴で、周囲とよくトラブルになりがち。だが面倒見が良くやさしさを見せる一面も。神経が図太いのかゲーム中では怪異に巻き込まれた後も
    比較的マイペースに行動していた。遊園地でパンダに乗ったり、アケビを食べて腹を壊したりとコミカルな面を見せることもある。
能力:腕力が強く、銃火器もそれなりに使える。幻視能力あり。なぜか狩猟罠が使える。
口調:一人称は「俺」、二人称は「お前」「おめー」「あんた」。口調は乱暴。
交友:夜見島から連れ帰ったイヌ「ツカサ」を飼っていると思われる。
備考:EDで平行世界に飛ばされてしまった後から出展。
56邂逅  ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 20:07:13 ID:Qccoiug10
【クリーチャー基本情報】
ゾンビ
出典:『バイオハザード』シリーズ
形態:非常に多数
外見:顔は生気を失い、緩慢な動作で動く
武器:主に噛み付き
能力:特になし。脳が弱点
攻撃力★★☆☆☆
生命力★★★☆☆
敏捷性★☆☆☆☆
行動パターン:ゆっくりと動きながら、生物の肉を食おうとする。知能はほとんどない。



【アイテム情報】
SIG P226
出典:現実
9ミリ弾を使用する15発装填のハンドガン。
ちなみに映画版サイレントヒルでシビルが使用していた銃でもある。
57 ◆.c1l3rjuuE :2008/05/06(火) 20:16:50 ID:Qccoiug10
ヘザーの[性格]の欄の最後の「が」はこちらのミスです。
58 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:11:04 ID:KK1cMAdh0
お二方、投下乙です。

>>霧散
SDK、まさか美耶子と会う前から参戦とは……屍人化フラグが濃厚ですな! これは楽しみ。
しかし、バイオの影響で警察署=化物だらけのイメージが。 
武器の類は多そうですが……大丈夫か?

それと誤字発見。
>>44の美耶子が美那子になっているようです。


>>邂逅
ヘザー強いw 阿部さん涙目w
ヘザーの戦闘力と阿部さんの幻視があれば、雑魚は軽くあしらえそうだ。
教団のことを知ってるってのも何気に重要そうですね。
現在地は住宅街か。全体が街なわけですから、キャラを絡めやすそうだ。

あと、所々「阿部」が「安部」になっているようです。


では、自分も投下してきます。
誤字脱字その他、ご指摘お願いします。
それと、アイテムの設定を若干いじっているので、まずければ言って頂ければ修正します。


>>170
知らなかったのでググってみたのですが、FPSなんですね。
どうかな……こういうものはホラー要素よりアクション要素のほうが強そうなイメージですが。
見たら全くホラー要素がないわけではなさそうなので微妙なところですね。
弾薬大量で次々クリーチャーを駆逐、とかがなければ平気でしょうか。
他の方の意見待ちです。
59 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:14:44 ID:KK1cMAdh0
上のは誤爆です……。

ともかく、投下します。
長すぎて入らなかったのですが、題名は
「人間、ふたり―――或いは、何故能力者は得てして惨禍に巻き込まれるか」
です。
601  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:16:21 ID:KK1cMAdh0
賽臥隆恭は疲れ果てていた。
もう何時間歩き回っただろうか。それとも何十分か。何分か。
靄がかかったように時間感覚が覚束ない。まるでこの霧に包まれた街そのもののように。
―――侵食されているようだ。侵食? 何に?
無性に不安がこみあげる。
一向に見えぬ見知った風景。曖昧にぼやけた前後の記憶。
人の影すら窺えぬ街。
自分は一体何時、何故ここに来てしまったというのか。

「センパイがた、いるんでしょ。 これ、何の冗談すか……?」

思わず漏れた呟きさえ、霧の中に溶けてゆく。
必死に吸った息が咽喉の奥でひゅうと絡まる。
大声でわめきたくなるような孤独感に衝き動かされるように、隆恭はまた左右で違う色の眼を見開いて辺りを窺う。
とうに右眼のコンタクトは外しているというのに、天眼は相変わらず何の反応も見せなかった。


ようやく退屈な授業も終わり、秘かに心躍らせ部室に向かっていたはずだった。
今日こそオカルト同好会部員、もとい鳴神学園都市伝説探偵局局員として、目覚ましい活躍をしてみせると意気込んでの道行だった。
部室の扉の前に立ち、何の気なしに引き開け一歩踏み出したところで、記憶は途切れている。
気がつけば、鞄を持ったまま濃霧の中立ち尽くしていた。
あたかも扉の先がここに繋がってでもいたかのように。

はじめはまたか、と思った。
都市伝説という扱うものの都合上、また近くに霊媒少女のいる関係上、おかしな事態には慣れっこだった。
実際、以前ループのように出られない路地裏に迷い込んだこともあった。
きっと今回のこれもその類だろうと、あまり深く考えずに断じた。
路地裏でのときのように、とりあえずこの右眼の天眼さえあれば何とかなるだろう。
普段の使い道といえば言葉の真偽を量ることくらいだが、こういう非常時こそ役に立つ。
部室にいたはずの先輩たちも、一緒に巻き込まれているかもしれない。
探して合流して、さっさと帰ろう。
そんな安易な考えの下、普段紫色の目を隠しているカラーコンタクトを外して歩き出した。
612  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:17:53 ID:KK1cMAdh0
視界の悪い大通りを気をつけながら進む。
だが何も起こらない。
何も見つからない。
無意識の内に足が速まった。
誰もいない。
音も聞こえない。
呼吸が乱れ、息があがった。

走り回り出口を探した。
声を張り上げて辺りに呼びかけた。
近くの民家の扉に飛びつき、乱暴に叩いた。
いずれも何の役にも立たなかった。
はじめて訪れた隆恭の目にも明らかなほど、この見慣れぬ異国の街は死に絶えていた。
遺棄された街。ゴーストタウン。
死んでいるから異常なのか、異常に巻き込まれたから死んだのか。
分かりはしないが、最早彼には為す術もなかった。



行く当てもなく歩を進める。
どの辺りから来て、どこに行こうとしているのか、今どこにいるのか。
もうそれさえ判然としなくなっていたが、どうでもよくなっていた。
半分枯れかかったような街路樹の傍を抜けて、適当に角を曲がる。
期待せずに眺めたその先の光景に、しかし隆恭は既視感を覚えた。小走りに近寄ってみる。
こんな寂れきった街には逆に不似合いな、人の多い街にこそたくさんあるような代物。
道の片隅に唐突にぽつんとある階段。地下へと続いている―――。

「……地下鉄?」

その時、静寂に慣れた耳が、微かに響いた音を捉えた。
何か、そう、人の走り去る足音のような。
思い当たった瞬間、隆恭は弾かれたように階段へ走っていた。
照明が行き届いていない薄暗いそこを、数段飛ばしの勢いで駆け下りる。
誰かいるかもしれない。
たったそれだけの確証もない考えが頭を支配し、のろまな両足を叱咤する。
最後はほとんど転がり落ちるような按配でホームに降り立ったとたん、隆恭は濡れた床を踏んで前のめりに倒れた。
とっさに手が間に合わず、無様にも顔から着地してしまう。
広がっていた粘性のある何かが頬や制服にべったりと染みを作り、痛みと気持ち悪さに呻く。
623  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:18:43 ID:KK1cMAdh0
―――なんだよ、こんなとこにジュース零しとくなよな。掃除ぐらいしろよ。

心の中で悪態を吐きながら、両手を突っ張って身体を起こす。
手にもへばりついたそれは、半ば乾いていて酷くべたつく。
辺りが生臭い。鼻がばかになりそうだ。
どうしてこんなに薄暗いのか。
のろのろと頭を上げ、前方に目を凝らす。
意外なほどそれは近くにあり、こちらを見つめていた。
床に倒れた金髪の男性。その半開きの瞳が隆恭をじっと見ている。
半分だけの顔にある、ひとつだけの瞳が、じっと。
もう片方は、身体と顔ごと向こうに転がっている。
ふたつに分かたれている、人間。
床にぶちまけられた、べたつく赤黒い何か。
意味することは明らかで、故に理解するのを理性が拒む。
半分。
血塗れ。
倒れて。
死体。
死人。
死んで。
半分に。
自殺?
他殺?
惨殺、
殺されて、
殺されて、
血があふれ、
半分に、
誰かに、

―――殺された、死体。

逃げ出した。
訳も分からず、逃げ出した。
それが先刻までここにいた少女、ミカの動作をそのままなぞっているとは知る由もなく。
声無き声で叫び、ぬるつき滑る足だけでは足らず手も使って、半ば這うようにして階段を上がる。
振り向けない。
振り向いたらあの半分ずつの死体と、男性をふたつにした何かが迫ってきているかもしれないのだから。
どうしてこんなことになった。
都市伝説探偵局なんて危ないものに足を突っこんでいるから?
天眼の持ち主だから?
17歳で死ぬ予言を受けているから?
何がいけなかった。どうすれば良かった。
何をしたら、こんな異常極まりないことに巻き込まれることなく平穏無事に暮らせていたのか?
断片的な言葉が頭の中をぐるぐると回り、眩暈を引き起こす。
だがおかげで、背後から聞こえるかもしれない追跡者の物音には、耳を傾けずに済んだ。
634  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:20:06 ID:KK1cMAdh0
出口が見える。
ようやく見えた。
最後の力を振り絞って、あれほど嫌悪した霧の中に飛び出した隆恭は、勢いを殺す間もなく何かにぶつかって尻餅をついた。

「おいおい、大丈夫か?」

かけられる声。見上げる。
自分より、やや年上だろうか。眼鏡をかけた男。白い半袖シャツに、自分と同じようなズボン。
霧の中でも分かる、胸元の鳴神学園のエンブレム。鳴神の制服。
誇張でなく、視界が滲んだ。
知り合いではなかった。
だがはじめて、まともに話が通じそうな人間に出会えた。
助かるかもしれない。
こんなおかしな場所から、脱出できるかもしれない。
激しい狂乱を来した脳内が急速に落ち着いていくのを感じる。
座り込んだまま後ろを指差して、早口で訴えた。

「ひ、人が死んで……そこの地下鉄の、ホーム。半分になって」
「何だって? 本当か? あそこに?」

ぞっとした。
芽生えかけた希望や安心といった感情が、瞬時に凍りついて呑まれていくのが分かる。
天眼がおかしくなったのだと信じたかった。
右眼を擦る。何度も、何度も。目の周りが赤く汚れるが気にもならなかった。
何故、今、この人に。
この人の周りに、悪意ある嘘の証の黒いオーラが見える?

「殺されてるのか? 何があった? 俺は物音がしたんで慌てて来てみたんだが……」
―――黒だ。
「とりあえず落ち着け。移動しよう。そこでゆっくり話聞くから」
……黒だ。
「俺もお前と同じ、巻き込まれたクチだ。一緒にこんなところ脱出しよう」
黒だ!!
645  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:21:29 ID:KK1cMAdh0
めちゃくちゃにわめきながら、隆恭は男を突き飛ばして走り出した。
後ろから制止の声がかけられるが、必死に耳を塞ぎ駆け続ける。
何故今、嘘を吐く必要がある?
あの人は間違いなく、ホームに死体があったのを知っていた。
知っていて、嘘を吐く。どうして?
―――殺したのが、あいつだからだ。
きっとそうだ。そうに違いない。
震えが止まらない。
足が縺れる。
大声で助けを呼びたかった。
けれども、声を上げればあいつに居場所を知られてしまう。
どうして、こんなことに。
右眼を掻き毟る。
天眼は今も、何も教えてくれはしない。
彼が、オカルト同好会が関わってはいけない都市伝説のひとつ、「殺人クラブ」に触れてしまったという、そのことさえも。



【駅付近の路上/一日目夕刻】
【賽臥隆恭@アパシー 鳴神学園都市伝説探偵局】
 [状態]:健康、恐慌状態、身体の前面が血塗れ、左右で目の色が違う(天眼解放状態)
 [装備]:特になし
 [道具]:学生鞄(中身は不明)、コンタクトのケース(カラコン入り)
 [思考・状況]
 基本行動方針:元の世界に帰りたい。
 1:死体と眼鏡の男子学生(日野)から一刻も早く遠ざかる。
 2:まともな人間に会いたい。

 ※原作ED後から参加。
656  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:22:16 ID:KK1cMAdh0
「逃げられたようだな。いいのか?」

背後から冷めた声をかけられ、日野貞夫を眼鏡を押し上げながら振り返る。
そこに先ほどまでの相手を案じる心配げな表情は欠片もなく、冷えきった狂的な笑みだけが貼りついていた。

「いいんですよ。獲物は逃げるものを追いかけてこそ、狩りとして成立する。そう思いませんか、宮田先生」
「知らないな。人間狩りに興味はない」
「またまたご冗談を」

無表情で切って捨てた白衣の男―――宮田司郎を見て、日野は咽喉の奥で笑う。

「貴方には素質があると思いますよ。我々、殺人クラブに迎えられる素質がね」
「そんな悪趣味な火遊びはほどほどにしないと、痛い目を見るぞ。俺が言えた義理でもないがな」

吐き捨てるような、中身のない忠告。
利害の一致でのみ結ばれる、形ばかりの協力関係。

「だいたい、俺はまだ完全に信じたわけじゃない。お前の言う、その『ルール』とやらをな」
「そうでしょうとも。だから今からお見せしますよ、証拠をね」

歩き出した。隆恭の出てきた地下鉄の出入り口に向かい、足取りも軽く降りていく。
血の足跡を逆向きに辿るようにして、無残な死体の傍へと降り立った。
日常ではまず出会うことない凄惨な光景だが、日野も宮田も一顧だにしない。

「死人に口なし、ね」

そう楽しげに呟くと、日野は携えた鞄から古びた機械を取り出した。
箱のような機体に、スピーカーらしきものがふたつ。見慣れぬ形ではあるが、それは―――

「ラジオ?」
「ご名答です。さて、それではよく聞いていて下さい」

おどけたように言った日野の指が、スイッチを入れる。
さらさら、ざりざりとひとしきりノイズを発したそれは、不意に電波でも拾ったが如く、唐突に言葉を発した。
667  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:24:07 ID:KK1cMAdh0
メアリー……死んだ……ころ、し……
逃げられない…
逃げられない……
サイレントヒルは…罪を問う場……
……新たなルール
殺せ……殺せ……
…殺し尽くせば、解放される……

電源が落とされた。
しばしの沈黙の後、宮田は胡乱な眼差しを向ける。

「何だ、今のは」
「さあ。霊石ラジオとかいうものらしいですがね」

拾ったんです、と肩をすくめてラジオをしまう。

「しかし聞こえたでしょう。殺し尽くせば、解放されるそうですよ」
「馬鹿馬鹿しい。ラジオが喋ったから信じろと?」

さも驚いたように、目を見開いてみせる。

「他に何か、必要ですか?」

つり上がる口端。歪んだ笑み。
片手で覆ってはいるが、隠しようもない。
学生生活を送る傍ら、自分たちが定めた偏った法で罪なき人間を狩る集団、殺人クラブ。
その部長を務め、狂人たちを纏めあげる狂人が、そこにいた。
678  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:24:45 ID:KK1cMAdh0
「自分が殺したいだけか」
「そうともいいますかね」

冷嘲する宮田に、日野は両手を広げてまた肩をすくめた。

「でも貴方は俺に付いて来るんでしょう? 
一人を好むタイプのようにみえる貴方が、さっさとこの場を去っていないのが何よりの証拠だ。
たとえ信憑性がなくとも、少しでも可能性があれば実行する。それが貴方だ。違いますか?」
「……」
「他に情報もない。だからこそ俺に声をかけた。
ならばそうして得た情報に基づいて行動するのが得策だ。……でしょう?」

同じ匂いのする者を、言葉を弄してこちら側に引き込む。
いつもやっていたことで、造作もない。

「後ろから襲われるとは、考えないのか」
「ご自由に。そうなれば標的が一人増えるだけです」

まあ、と日野は嘯く。

「今はまだ殺しませんよ。先生との遊びは、お互いが最後の一人になった時でも遅くはないですしね」

俺の邪魔さえしなければ、と結ぶ。
お楽しみは最後に。
殺人クラブのメンバーに共通する、至極普通の概念だ。

宮田は感情の欠落した瞳で日野を睨めつけた。

「……悪魔め」
「光栄の極み」 

霧深き街に似合いの殺人鬼と傍観者は、ついにその手を取り合ったのだった。
688  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:25:28 ID:KK1cMAdh0
【駅付近の路上/一日目夕刻】
【日野貞夫@学校であった怖い話】
 [状態]:健康、殺人クラブ部長
 [装備]:特になし
 [道具]:学生鞄(中身は不明)、霊石ラジオ@零〜紅い蝶〜
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺人クラブ部長として、街にいる者を皆殺しにする。
 1:手始めに……あの怯えた、坂上みたいな坊やを追うか。
 2:宮田はまだ殺さない。
 3:他に殺人クラブのメンバーがいれば、合流して一緒に殺しまくる。

 ※原作新堂6話目より発生する「殺人クラブ」ルート、七不思議の集会直前より参加。



【駅付近の路上/一日目夕刻】
【宮田司郎@SIREN】
 [状態]:健康
 [装備]:特になし
 [道具]:懐中電灯
 [思考・状況]
 基本行動方針:状況を把握する。
 1:日野と同行する。日野のすることは今は基本的に傍観。

 ※原作OP直前、恋人・恩田美奈を殺して埋めた直後より参加。


 ※駅構内のジェイムスの死体の近辺に、ジェイムスの霊がいる可能性があります。
699  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:26:10 ID:KK1cMAdh0
【キャラクター基本情報】
名前:賽臥隆恭(さいが りゅうすけ)
出典:『アパシー 鳴神学園都市伝説探偵局』
年齢/性別:15歳(2007年現在)/男性
外見:173cm、58kg。明るい茶色っぽい髪で、右眼が紫色(天眼)、左眼が焦げ茶色。制服姿。
環境:
両親は海外に行っており、懇意にしている民俗学者兼少女小説家の久多良善内(くたら ぜんだい)と、
その娘で幼馴染の唯桜(いお)の住む家に居候している。
鳴神学園では1年F組在籍、物語の序盤〜中盤でオカルト同好会に入部する。
性格:
皮肉っぽく投げやりで、年上の人間に対してもその態度を崩さない。
特に敵だと認識した人間には、口も態度も格段に悪くなる。
が、一度心を許すと途端に態度が軟化し、子供っぽい面も見せるいわゆる「生意気な後輩」タイプ。
敬語が出来ない現代っ子でもある。人付き合いが悪く事なかれ主義のようだが、意外とのめりこむ性質。
能力:
万物の正邪を見分ける眼「天眼(てんげん)」を右眼に持つ。紫に発光している。
具体的には、目にした人物の発するオーラの色によって発言の真偽を推し測ることや、
睨みつけることで人ではないモノを退散させることを可能とする。詳細は長いので下に。
普段はカラーコンタクトで能力を抑えつつ、特異な瞳の色を誤魔化している。
口調:
一人称は「オレ」、親しい同年代は苗字や名前で呼び捨て、年上は「センパイ」や「〜さん」付けが多い。
年上には「〜っす」「〜すよね」などの偽敬語、同い年・年下には普通の男子学生らしい喋り方。
交友:
オカルト同好会に勧誘した張本人であるOBの神ヶ崎翔ことジンさんを筆頭に、現会長の富樫美波、二年部員・日暮太郎、
校外では上記久多良親娘に加え、隣家に住む強い霊感持ちの中学生、倉持千夏など。
備考:
・天眼について
常時オーラが見えるわけではなく、注視している人間が発言した直後のみ見えるというもの。
発言内容が真実なら赤、嘘をついているが悪気がない、騙す気がない場合は青、
発言内容に心が伴っている場合は黄色、悪意を持って騙そうとしていると黒いオーラが見える。
また、人でないモノにはオーラは見えない。
人でないモノを退散させる能力は、出来る場合と出来ない場合があるようだ。
(長く見つめ続けないといけない? 種類による?)
天眼の持ち主は、真の力が解放される18際になった瞬間、死亡するらしい。

・オカルト同好会について
オカルト同好会は、各学年一名のみが入会を許される同好会(定員三名)。
入会者は卒業する三年生会長が来年度の入学者から指名し、会長も順次繰り上がる仕組みとなっている。
この際、候補者は特異な能力を持っている者から選ばれるため、会員は全員特殊能力者とされている。
表向きは活動内容が伏せられており、一般にその内容が知れ渡ることはない。
その真の姿はあらゆる都市伝説の解決を請け負う都市伝説探偵局であり、
依頼者に探偵局の存在を他言しないという条件を課した上で、会員の能力を最大限に活かした無償の活動を行っている。
ネットワーク環境の整った2007年度では同名のwebサイトを運営しており、
現在ではそちらからの依頼に活動の比重を移し、都市伝説に関する情報を収集している。
ただし、あくまで学生による部活の域を出ていないため、
「七不思議の集会」、「殺人クラブ」、「凶夢(マガユメ)」をはじめとして関わらない都市伝説も存在する。
ちなみに、新聞部とは代々犬猿の仲。
7010  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:26:45 ID:KK1cMAdh0
名前:日野 貞夫(ひの さだお)
出典:『学校であった怖い話』
年齢/性別:17歳(1995年当時)/男性
外見:178cm・67kg、茶色っぽい髪。眼鏡をしている。制服姿。
環境:
鳴神学園3年F組、新聞部所属。鳴神学園にて秘かに実在を囁かれる集団、殺人クラブの部長。
新聞部では、設定が錯綜しているため時には部長であることもあるが、基本的には平の部員。
性格:
「殺人クラブ」ルートにおいては、切れ者で冷酷、
七不思議の集会を利用した人間狩りのお膳立てをした人物である。
自分の障害になるものを排除することを厭わず、殺人に快楽を覚える性質。
普段はそんな性癖はおくびにも出さず、頼れる先輩として周りに接する演技派でもある。
能力:
特にないが、毒をどこからか調達してくるなど、こと殺人に関する知識と伝手は豊富である模様。
口調:
一人称は「俺」、他人は苗字呼び捨てなど。
普段は飄々とした口調、
本性を現しているときは狂ったような笑い声を上げたり、相手を精神的に追い詰める発言を繰り返すなど嗜虐性が覗く。
交友:
殺人クラブメンバー、また新聞部の後輩との交流が主。
備考:
『学校であった怖い話』はマルチシナリオ、マルチエンディングであり、
それぞれでキャラクターも全く違った設定・展開になるため、
今回は基本的には新堂6話目から発生するシナリオ「殺人クラブ」ルート上の
設定の状態での参加とする。
ちなみに殺人クラブは、自分にストレスを感じさせた人間をストレス解消のために殺す、
日野を筆頭に鳴神学園の学生で構成された、快楽殺人者集団である。
7111  ◆Q65Npbnq3U :2008/05/06(火) 21:27:53 ID:KK1cMAdh0
名前:宮田司郎
出典:『SIREN』
年齢/性別:27歳/男性
外見:黒髪黒目、ブルーのYシャツの上から白衣を羽織っている。
環境:
羽生蛇村で医院を営んでいる、というのは表の顔で、実際は代々宮田家は村の暗部を
求道師(村の宗教の中心で、儀式の進行役)らに代わって一手に担う存在であり、
儀式の障害となる者を秘密裏に処理している。
実は養子で、本名は吉村克昭(よしむら かつあき)。
求道師の牧野慶こと吉村孝昭(よしむら たかあき)の双子の弟である。
性格:
義理の母親に歪んだ愛情を注がれながら育てられたため、汚れ仕事をこなし続けていたため、
また求導師として村からの期待を一心に受けている兄に対し、強いコンプレックスを抱いているため、
かなり鬱屈、屈折した性格。
目的のためには手段を選ばず、屍人の謎を解明するためとはいえ、化物となった恋人とその妹を生きながら解剖するほど。
判断力、適応力は高く、常に冷静である。
能力:
裏の仕事柄、殺人に対する忌避感が麻痺している模様。
また、幼少時から自分に呼びかける「声」を聞いていたため、霊的な事象に耐性、適応性がある可能性あり。
ゲーム本編では銃を使うシーンもあり。ただし、特に扱いに慣れているわけではないようだ。
口調:
一人称は「俺」、他人は苗字や名前にさん付けなどだが、
基本的には人の名前をあまり呼ばず、「お前」「あなた」などと呼ぶ場合も多い。
平坦で感情のこもらない喋り方。
交友:
恋人の恩田美奈以外との関わりは浅かった模様。羨望・憎悪対象の牧野慶は別格。
備考:
原作OP前、恋人・美奈にコンプレックスに触れられ、激昂して衝動的に絞殺してしまった。
人通りのない森の中に彼女を埋めようとしていた時、異変に巻き込まれる。


【アイテム情報】
霊石ラジオ@零〜紅い蝶〜
鉱石ラジオを改良したもので、本来は霊石と呼ばれる霊が残す思念の塊の石をはめると
霊の残留思念を受信する、というものだが、
この場では霊石を使わずとも霊の近辺で電源を入れれば受信可能、という仕様とする。
72 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/07(水) 21:16:26 ID:nZ2fy4iN0
済みません……。

日野貞夫、宮田司郎の現在地は

【駅付近の路上/一日目夕刻】
        ↓
  【駅構内/一日目夕刻】

に変更して下さい。
間違いを見落としていました。
73 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 02:51:32 ID:YL8Pzmgk0
 遅れましたが、式部人見、ダグラス・カートランドを投下します。
74 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 02:53:05 ID:YL8Pzmgk0
監察医:式部人見

「それじゃあ、ついでにサイレントヒルにでも寄ってくると良いぜ」
 と、そんなふざけた事をふざけた顔で言うこの男に、式部人見は再び言い返す。
「それ、どんなF.O.A.F.?」
 彼のためにも分かりやすく、もう聞き飽きた、という顔をしてみせるのを忘れない。
「そもそも、その街って、実在しないんじゃなかったの? キャッスルロックやアーカムみたいに」
 口元を再びニヤリとさせて、その男、霧崎水明は楽しげに続けて言う。
「"青いクレヨン" の話さ。覚えているか?」
「テレビタレントがどうの、ってヤツでしょう。前に聞いたわ」
「そう。最初は、とあるラジオパーソナリティが番組内で話したネタだった。
 語り手である人物の"友達の友達"、すなわち "F.O.A.F." が、新しく中古物件の家を買う。
 友人等に手伝って貰い引っ越し荷物の整理をするが、どうも奇妙だ。
 間取りと実際の構造が噛み合わない。
 調べてみると、1階の一角に、どうやら閉ざされた小部屋があるようだ。
 あまりにも怪しいから、本来入り口があったとおぼしき壁を壊すと、やはり部屋があり、そこには…」
 霧崎は一旦ここで言葉を切り、式部の切れ長の目を覗き込みながら、
「青いクレヨンで、壁一面に 「ママ、ここから出して」 の文字が書かれていた」
 反応を伺うようにして、机の上のコーヒーを啜る。 
「…と、それ以外、結局何も分からないという終わり方のこの都市伝説」
「まぁ、良くできているわね。その、最後の据わりの悪さとか」
 相対してソファに座っている彼女も、そのしなやかな指先で弄ぶようにスプーンを回してから、カップの液体に口をつけた。
「"何も解明されない" パターンだね。
 このタレントの創作能力の高さは置いておくとして、これの面白いところは、そのまま本当に、ある程度の規模で 「都市伝説」として広まったところだ。
 勿論、スティーブン・キングやラグクラフトと違って、作家として知名度があったり作品が流通しているワケじゃないからということもあるが、純粋な創作がいつのまにか "F.O.A.F."、友達の友達の話として流布するというケースとしては興味深い」
 ますます饒舌になる霧崎の話を式部が引き取って遮る。
「ご専門の民俗学的アプローチはいいけど、それでサイレントヒルのお話しはどうなるのよ?」
 またしても、霧崎がニヤリとする。まさに、想定していた反応を得られたと言わんばかりの顔だ。
75 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 02:55:22 ID:YL8Pzmgk0
 長いつきあいになる式部にとって、この表情は見慣れたものだ。
 同じ大学で、方や医師として、方や民俗学の教授して職場を共にしているわけだが、一見シャープで理知的、それでいて些か野性味のある独特な風貌のこの男が、時折見せる稚気のある笑みは、式部人見にとって意外と心地よくもある。
 本人にそんな意識はないだろうが、霧崎はこの笑みで、少し得をしているとも思う。
「サイレントヒルは実在しない。キャッスルロックやアーカム同様のフィクション上の架空の街。
 しかし、"青いクレヨン" の様に、出だしが分からない。
 都市伝説というのも地道に調べていけば、必ずその出だしとなる何かがあるのさ。
 友達の友達をたどってもそうは分からないが、伝搬とその時期を丹念に見ていけば、ある程度特定できる。
 そしてサイレントヒルは、キャッスルロックなどと同じ架空の街ではあるが、そこが出典ではないんだよ」
「都市伝説の方が先…という事?」
「そう。
 いくつかのフィクションで言及され、モチーフとされてはいるが、キングの様な有名作家が創作したというわけでもないし、テレビゲームや映画企画で宣伝のために流したというワケでもない。インターネットで先に怪異の噂だけを流しておいて、みたいなヤツじゃあないらしい。
 サイレントヒルという、存在しないハズの街の都市伝説が広まり、そこみから着想を得た作家達が、それらを元に創作をしている。
 つまり、何処かに出だしがあるはずだが、何処が出だしかがよく分かっていない」
「実在する、実在した可能性がある…そう言いたいワケね。津山30人殺しみたいに」
 式部人見は眉を上げてそう返した。
「そう。あれにも、何々村33人殺し、みたいな派生系も色々とあるからね。
 何れにせよ、アメリカの一部で広まっているサイレントヒルの都市伝説には、何かしら元となるモノがあるだろうと見て良いだろう。
 それが実在した街か、そこで起きた事件である可能性も無くはない。
 そうだろう?」
 机の上、すっかり冷め切ったコーヒーを飲み干して、そう締めくくる。
「そうね。ついでのついでによれたら、サイレントヒルの元ネタになっている場所では、何も "不思議なことなど無かった" って事を証明して、お土産にしてあげるわ」
「楽しみにしているよ」
 後に彼女は苦々しくも思い出す。
 警視庁も一目置く監察医、式部人見がアメリカに発つ数日前、同僚にして古い友人でもある民俗学者霧崎水明の教授室で交わした、この他愛のない会話の事を。
 
76 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 02:56:14 ID:YL8Pzmgk0

 
 霧が強くなった。
 ハンドルを握る手に、僅かながら緊張が増す。
 そうでなくとも、些かいらついているのは事実だ。
 ニューヨークで行われる医学学会に出席するために渡米した式部人見は、そのついでといっては何だが、数日の休日をとりウェストバージニア州に住む知人を訪ねる予定で居た。
 普段は大排気量のバイクを乗り回している彼女だが、流石にアメリカで長距離をバイク移動する気にはならず、レンタカーを借りて行くことにした。
 それが、最初の間違いだ。
 カーナビもあるし、何度か通ったルートだからと高をくくっていたが、見事に迷った。
 道半ばにしてナビはまともにに動作せず、挙げ句にこの霧だ。
 夕方には目的地に着くつもりで居たが、このままではどうにも危うい。
 かといってこの視界ではそうそうスピードを上げるわけにも行かず、彼女にしては珍しく、苛立ちを表に出す。
 苛立ちながら思い出したのが、渡米前の別れ際にした、友人、霧崎との会話だ。

 霧に閉ざされた街、サイレントヒル ―――。

 アメリカの一部で流行っている其の都市伝説に寄れば、サイレントヒルという忌まわしい街には常に霧が立ちこめており、そこに迷い込むと、奇怪な怪物に襲われる、だとか、魔女の生け贄にされる、だとか言われているらしい。
 怪物に襲われ、魔女の生け贄にされた誰がこの話を持ってきたのか? と問われると、つまりは F.O.A.F.(Friend of a Friend)、「友達の友達に聞いた話」 となる。
 民俗学者である霧崎水明は、ことのほかこのテの話に詳しい。
 と、いうより、どうにも霧崎は、民俗学者としてでは無く、何か都市伝説そのものに強い思いれがあるかのようにも思えるのだが、その辺りの詳しい話を式部は知らない。
 都市伝説がどういうモノか、あるいはそれらの伝搬や生まれる仮定を調べることの学問的な意味や意義は、分かる。
 例えば有名な都市伝説の一つ、「ベッドの下の男」 は、都市部で一人暮らしをする女性の孤独と危険という要素がある。
 一人暮らしの女性の部屋に、友人が訪ねてくる。
 ベッドの上でくつろぐ女性に、急に青ざめた顔をした友人が、「今から外に行こう」 という。
 理由を聞いても曖昧な態度。しかし強引に外へと連れ出す友人。
77 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 02:57:40 ID:YL8Pzmgk0
 その先で理由を聞くと、友人は辺りをうかがいながら、「ベッドの下に男が居た」 と告げる―――。
 これは、女性が一人暮らしをすることがごく普通のこととなった現代でなければ成り立たないものだ。
 件の創作都市伝説である 「青いクレヨン」も、暗喩として児童虐待がある。
 呪い、でも無く、祟り、でも無い。
 日常の中に潜む狂気。それが前提としてあるからこそ成り立つ怖さ。
 都市伝説というのは、そういう意味では社会を映す一つの鏡だ。
 だから、都市伝説の研究というもの自体に異議はない。
 しかし、式部人見と霧崎水明がことある毎に対立するのは、そのことではない。
 オカルトの存在だ。
 
 霧崎水明は、オカルト肯定派である。
 「この世には不思議なことがある」
 そういう立場だ。
 式部人見は違う。
 「この世には不思議なことなど無い」
 一見不思議に見えるのは、単にその観察者の知識や、状況への理解が足りぬ為 「不思議に思える」 だけに過ぎない。
 その原理を知り、仕組みを解明できるだけの理解力があれば、不思議なことなど何もない。
 式部人見は医学の徒である。
 病人を目の前にして、不思議だ不思議だと首をひねっても何の意味もない事を十分に知っている。
 重要なのは、不思議を前に己の立ち位置を見失わないことだ。

 勿論彼女は、科学の狂信者ではない。
 希にテレビで心霊特番などをやると、とうてい科学的思考の元にモノを考えているとは思えない疑似科学者もどきが、例えば 「全てはプラズマだ」 等というような事を言って場を賑わせる。
 ああいう輩が、一番タチが悪い。
 彼等の立ち位置は、例えば何か身内に不幸が起きれば、「全ては先祖の因縁です、霊障です」 等という霊能者と何ら変わらない。
 事実を事実として認め、その上で解明しようという意志がない。
 だから、自分が現在知っている手持ちの情報だけで、全てを断じようとする。
 学術の徒として、最もあってはならない姿勢の典型である。
 そして何より ――― 彼女自身、どう解釈しようとも解明できない奇怪な事件に遭遇したことがある。
78 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:06:03 ID:YL8Pzmgk0
 そしてどうやら、子細は知らないのだが、霧崎水明もそういう事があったらしい。
 言うなれば、霧崎と式部は鏡の裏表だ。
 どう解釈しようとも解明できぬ奇怪な事件に遭遇し、そこからオカルトの存在をひとまずは肯定する立場に立った霧崎と、オカルトをあくまで科学の徒として解明する立場に立った式部。
 
 その点において、彼女はだからこそ、霧崎水明を尊重しているとも言える。
 彼はオカルト肯定派であるが、「全ては霊の仕業だ」等と言い出すことはしない。
 あくまで、「不思議なことは存在する」 という足場に立ち、その上であらゆる可能性を探り、検証しようという姿勢で居る。
 その姿勢そのものが、同じ学術の徒という立場として正しいと思えるし、好ましくも思う。
 だからこそ、何かと対立をしながらも、彼女と霧崎は長年友人を続けていられるのだ。

 その霧崎曰く、「サイレントヒルの都市伝説は、あまり現代的ではない」 のだという。
 「ベッドの下の男」にしろ、「白いワニ」 にしろ、都市伝説というのはどこかしら時代を表している。
 サイレントヒルには、それが見えてこない。
 時代や背景が見えない以上、それらが伝搬するための重要なもの、根っこが足りない。
 そこに、何かがあるのでは無いか?
 そう、つまりは、「事実としての怪異」 が―――。

 そこで一瞬 ―――。
 思考が途切れる。


私立探偵:ダグラス・カートランド

 パルプフィクションにおける私立探偵像を挙げてみるとしよう。
 まずは精悍な顔つきにほどよく引き締まった身体。
 野性的な髭なんかもあるとなお良い。
 それからお馴染みのよれよれのトレンチコートにくたびれた背広。
 よれよれのシワの入ったシャツに、年季の入ったソフト帽。
 これでちょっとしたフィリップ・マーロウもどきの出来上がり、となる。
79 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:09:53 ID:YL8Pzmgk0
 彼、ダグラス・カートランドは、そういう存在だ。
 以前いけ好かない元同僚にそう揶揄されたとき、「これが俺の制服だ」と、ダグラスは答えたという。
 そう、元同僚がブルーのシャツに銅のバッヂをひけらかして警官面をするのと同様に、ダグラスは薄汚れたコートとソフト帽で、薄汚れた私立探偵としての自分を演じている。
 本家と違うのは、そこには誇りよりも自重が多めに含まれていることだ。
 所詮自分はまがい物だ、とでも言うかのように。

 10年前、彼はある事をきっかけに、警察の職を辞した。
 息子は銀行強盗で射殺され、妻とも離婚する。
 その時点で、彼の人生はそれまでとは別のものになった。
 刑事という役割を捨て、社会の裏側をのぞき見る探偵という役割を得たのだ。
 そして今回の事件で、そのさらに裏の世界を垣間見てしまった。
 裏……いや。
 魔の境界を。


 目覚めは心地良くはなかった。
 二日酔いほど酷くはなく、しかし胃もたれよりは嫌な感覚。
 白濁した視界に、ぼんやりと何かが浮かんでは消える。
 明滅するのはアラートサインか己の意識かと訝しむが、その正体はすぐに判明する。
 光。
 おそらくは懐中電灯か何かの光。
 それが、真っ白な濃霧の中をゆらゆらと揺れるように泳いでいる。

 霧?

 ようやくそこで、ダグラスは己の現状に思い至る。
 薄暗い、事務所のような場所。
 埃と塵と、ごみに割れたガラスの破片。
 ダグラスは、錆びた金属の脚と破れ目のある革張りの長椅子に横たわっていた。
80 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:15:58 ID:YL8Pzmgk0
 湿った空気の匂いと、吸えたかびくさい匂い。それから何かの刺激臭が鼻につく。
 廃屋。一目見た印象はそうだった。
 記憶をたぐる。
 何だ? 何かの事件に巻き込まれ ――― いや、違う。
 自ら望んでここへ向かったのだ。
 彼女 ――― そう、クローディアという女の依頼で行方を捜し、おそらくはその結果として怪異の中心へと誘われていた少女、ヘザーと共に、サイレントヒルの怪異と因縁の謎を解き明かすべく訪れ ―――。
 閃光と共に、まるでスローモーションで抜き出されたフィルムの酔うに場面場面が思い出される。
 あれは ――― 少女?
 いや、人であったかすら今では覚束ない。
 ただそのときは人、年端も行かぬ少女かに思えたその影が、ダグラスの運転していた車の前を過ぎり……ハンドルを切り損ねた車はそのまま道路脇の大木にぶつかり ―――。
 そこから、意識がない。
 
 つまりは。
 ダグラスは痛む身体を撫でさすり、骨や筋肉に異常がないことを確かめつつ整理する。
 事故を起こし、意識を失い。
 そして車から引き出されて……応急手当をされて、ここに寝かされていた。
 先ほど刺激臭と感じたのは、おそらく消毒用アルコールだ。
 かすり傷と思われる後には仕様毒液が塗られ、また所々にはガーゼが当てられている。
 適切だ。少なくとも手慣れている。
 
 再び、辺りを見回す。
 がらんとした生気のないこの空間には、自分以外の気配はない。
 ここにきてようやく、ヘザーの姿がない事に意識が向き、慌てて立ち上がりかけて、軽く立ち眩んだ。
 「…つっ」
 それほど痛むわけでもないが、思わず声が出る。
 右手を伸ばして壁に当て、傾いた身体の支えとした。
 
 「目が覚めたのね」
81 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:17:55 ID:YL8Pzmgk0

 声がした。
 女性。
 落ち着いた、理知的な声だ。
 顔を入り口の方へ見やると、右手に懐中電灯を持ち、両手を組んだ女性が立っている。
 美人だ、と、そう思った。
 濡れたように艶やかな黒髪の東洋人。すらりと伸びた体躯と、ほっそりとしているが決して貧相な印象のないライン。
 鼻筋の通った、どこか人を突き放しているような面立ちが印象的だった。
 この霧のせいか、心持ち青ざめて見えるのもまた、なんとも言えぬ雰囲気だ。
 「あんたが…?」
 「ええ、一応。本職なのでね」
 看護婦か…いや、おそらく医者だ。
 達者な英語だが、発音の綺麗さからするとネイティヴではなさそうだ。
 おそらく専門的な勉強をしているであろう人物の話し方に感じられる。
 そしてこの応急手当をしたのは彼女だろうともあたりをつける。
 「ヘザー…いや、10代の少女は観なかったか? 同乗していたハズなんだが…?」
 この問いかけに僅かに表情を曇らせ、
 「いいえ。私が見つけたときは、貴方一人だけだったわ」
 「そうか…」
 先に意識が戻ったヘザーが、一人では気を失った自分をどうにも出来ぬと、助けを呼びに行った。
 これが、一番の希望的な展開だ。
 しかし。
 あるいは、教団の追っ手 ――― 自分に彼女を探し出すことを依頼し、またどうやら彼女の父親の命を奪ったらしい怪しげな集団 ――― の手に落ちたか、あるいはまだましな想像としては、霧の中で迷ったか……。
 何れにしろ、安否が気になる状況だ。
 「助けてくれたこと、礼を言う。
 しかし連れが行方不明なんだ。今すぐ探しに行かなきゃならん。
 悪いが、自己の場所までもう一度案内してくれるか、場所を教えてくれないか?」
 ヘザーを巡る一連の事件の奇怪さに興味を持ち、同行を申し出たのはダグラスの方だ。
 しかし同時に、自分が依頼を受け、彼女を捜し出したことでこんなことになってしまった、という自責の念もある。
82 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:27:08 ID:YL8Pzmgk0
 勿論、ダグラス自身が探さずとも、教団は何れ彼女を見つけていただろうとも思う。
 自慢じゃないが、自分が特別優れた探偵で、他の人間には探せなかった、とは思っていない。
 またおそらくクローディアは、自分以外の数人に、同様の依頼をしていたはずだ。
 その中でたまたま自分が、当たりくじを ――― あるいは、ハズレくじを引いた。
 それだけの事だが ――― それだけの事とは簡単に割り切れない。
 執念、あるいは意地、又は妄執。
 少なくとも、ここまで否応なしに関わってしまった以上、知らぬ存ぜぬを決め込むことも、ヘザーを放っておくことも出来はしない。
 何が起きるのか、何が起きているのか、そして、自分には何が出来るのか。
 それを見定めなければならない。
 内ポケットや腰のホルスターを確認する。
 いつもの手帳、ペンライト、財布、携帯ラジオ、それから、ベレッタと予備弾倉。
 無くなっているものはない。
 今度はしっかりと立ち上がり、女性の脇を通り外へと向かう。

 改めて外へと出ると、想像以上の濃い霧に、一瞬天地をも見失うかと錯覚した。
 真っ白な濃霧の中へと一歩踏み出すことが、これほどまでに緊張をもたらすとは。
 振り返り、女性を見る。
 自分がいた場所は、寂れたガソリンスタンドの事務所だったらしい。
 バケツや、錆び朽ちたドラム缶などが辺りに散見出来る。
 緊張、あるいは困惑、若しくはその両方。
 その表情から、ダグラスはそれらの感情を読み取る。
 「ああ、すまない。
 俺はダグラス・カートランド。一応私立探偵をしている。
 探している相手はヘザーと言って ―――」
 うかつにも、お互いに自己紹介がまだだったこと、同時にこの初対面の恩人に、自体をどう説明すればよいのかという事に気がつく。
 下手に話をすれば、この女性をも巻き込みかねないし、加えれば自身が信頼されうるかと言うことも難しい。
 こんな辺鄙な道を、ティーンの少女と同行していたことを、どう説明すればよいのか?
 誘拐犯か変質者、シリアルキラーと思われても無理はない。
 「――― 一時的にだが、彼女を保護している」
 田舎道で事故に遭う。
83 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:38:00 ID:YL8Pzmgk0
 同行者が居なくなっている。
 しかもそれは少女。
 その少女は、誘拐犯から逃げ出した被害者。
 そう思われても仕方がない。
 しかし、ひとまずはその心配は杞憂に終わった。
 いや、そうでは無い。
 その女性は、もっと別の事をダグラスに伝えたかったのだ。
 「…とりあえず、付いてきて」
 女性は用心深く、そう告げて歩き出す。
 遠すぎず近すぎずの距離で歩きながら、彼女は言葉を続けた。
 「私は式部人見。日本で医者をしているわ。
 この近くに住んでいる友人の家を訪ねる途中で、貴方の乗っていた車を見つけて、気絶していた貴方をひとまずここまで運んだの」
 やはり、ダグラスの予想したとおりの人物だったようだ。
 「とりあえず」、これは言うまでもないでしょうけど、骨に異常はなさそうね。
 ちょっとした打ち身と擦り傷は確認できたわ。
 吐き気はする? 頭痛や目眩は? 脳に異常があるかどうかは精密検査をしないと分からないけど ―――」
 歩きつつ、そこまで言って少し止まる。
 「落ち着いて、話を聞いて」
 向き直った。
 ぞくり。
 嫌な予感がする。
 式部という女性の、ある種登記の人形めいた美しさが、さらにその予感を増幅させる。
 自分は ――― 自分は今どこにいて、何に脚を踏み入れてしまったのか?
 「事故現場には戻れない。その少女についても、もしここに着ているのならば探せるかもしれないけど…」
 向き直り、懐中電灯で先を指し示す。
 「そうでなければ、まずは私たちがここからどう出るか ―――。
 それが先決ね」
 暗く、深い、闇。
 地に穿たれたそれは、地割れというよりむしろ断崖絶壁とでも言えるようなシしろものだ。
 霧も相まって、果てすら見えないその亀裂は、道路を分断してさらに左右に広がっている。
84 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:45:19 ID:YL8Pzmgk0
 「これは…」
 言葉を失う、とは、まさにこの事だ。
 「着たときには無かったわ。
 貴方を車に乗せ、さっきのガソリンスタンドまで運び、降ろしたときまでは…こんなものは無かったのよ」
 理知的で理性的 ――― そう印象を受けた彼女の眉間に、深い困惑のしわが刻まれている。
 何をどう言ったらよいか分からない。
 地震や地滑りで、このような長大な地割れが出来るものだろうか?
 ダグラスは地質学の専門家ではない。
 もしかしたら起こりえる事なのかもしれない。
 しかし。
 知識や経験ではない何かが、これは違う、と。
 これは自然なものではない、もっと恐るべき何かだと。
 ダグラスに警告をしている。
 「サイレントヒル ―――」
 不意に口から漏れた言葉。
 その言葉に、横にいた式部が怪訝そうに顔を向ける。
 そうだ。ここはサイレントヒルだ。
 ダグラスはそう思う。
 いや、そう感じる。
 ここは既にサイレントヒルだ。
 自分は知らずサイレントヒルに足を踏み入れ、そして取り込まれた。
 この整合性も脈絡もない考えが、最も正解に近い回答なのだと、このときのダグラスは信じて疑いすらしなかった。

85 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:52:49 ID:YL8Pzmgk0

【町はずれのガソリンスタンド前の道路/一日目夕刻】

【式部人見@流行り神】
 [状態]:健康
 [装備]:特になし
 [道具]:旅行用ショルダーバッグ、小物入れと財布 (パスポート、カード等) 筆記用具とノート、応急治療セット(消毒薬、ガーゼ、包帯、頭痛薬など)
 [思考・状況]
 基本行動方針:事態を解明し、この場所から出る。
 1:この亀裂は何で、何故出来たのだろう?
 2:この男性 (ダグラス) は信用できるだろうか?
 3:サイレントヒル…?
 ※ガソリンスタンド前にレンタカーを駐車中。

【ダグラス・カートランド】
 [状態]:軽い打ち身と擦り傷
 [装備]:ベレッタM92(残弾 10/10)
 [道具]:ベレッタの予備弾倉 (×1)、手帳と万年筆、ペンライト、財布(免許証など)、携帯ラジオ
 [思考・状況]
 基本行動方針:ヘザーを探し、サイレントヒルの謎を解く。
 1:ヘザーを探し、保護する。
 2:この亀裂は何で、何故出来たのだろう?
 2:この女性の身の安全も守らなければならない。
86 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 03:55:35 ID:YL8Pzmgk0

【キャラクター基本情報】

式部人見
出典:流行り神
年齢/性別:20代/女性
外見:切れ長の目をし、鼻筋の通った、稟とした美人。細い足のラインが見えるジーンズと、サマーセーターを着用。
環境:2000年代日本、東京にある鴨根大学付属病院で監察医を勤めながら、大学では法医学を教えている監察医。
性格:合理主義で何事にも冷静に対処しようとする。他人に進んで干渉する方ではないが、面倒見の良い面もあり、特に年下等にはつい先生のような態度になることもある。
能力:医師、監察医として高い技量と知識。大型バイク、一般自動車などの運転技術。日常会話及び医学に関しての専門的会話の可能な英語の語学力。
口調:丁寧で冷静。一人称は"私"、二人称は"あなた"や名前に敬称など。親しい相手等には、"○○君" などと呼んだりもする。
交友:同学校での民俗学教授、霧崎水明とは大学時代からの友人。霧崎の弟的存在であり、警察史編纂室所属の警部補、風海純也とも親しく、その同僚にして部下の小暮宗一郎からは、一方的な好意を寄せられている。
備考:『流行り神』終了後より。2での展開は考慮しない。
  ただし、1で隠されていた事情などについての2での記述は含めても可。
  又、語学力、車の運転などについては原作中の表記はないが、キャラクターの背景から相応にあるものとして描写しています。(SS中、ダグラスとは英語で会話)
87 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/08(木) 04:00:20 ID:YL8Pzmgk0

ダグラス・カートランド
出典:サイレントヒル3
年齢/性別:50代/男性
外見:白髪交じりの短い頭髪と髭、壮年男性としては立派な体格を持つ白人男性。黒のソフト帽によれよれの背広、膝丈までの濃い茶色のロングコートを着ている。
環境:1992年アメリカ、元刑事の私立探偵。妻とは10年前に離婚し、息子にも死なれている。
性格:落ち着いた物腰と、強い意志を併せ持つ“タフガイ”。
能力:刑事としての射撃、格闘などの技術、及び探偵行を通じての観察力など。
口調:男性的だが粗暴ではなく、しっかりとした口調。一人称は“私”、二人称は名前か、“君” など。
交友:ゲーム中にて、依頼主のクローディア・ウルフと接点があり、またヘザーと協力関係にある。
備考:『サイレントヒル3』 ゲーム中、クローディアの依頼によりヘザーを探し出し、それを切欠にした異変でヘザーの父、ハリーが死亡。ヘザーを保護し、共に車でサイレントヒルへと向かう途上より。
 
※道路上に巨大に亀裂を発見。
 これがどれほどの幅、どれほどの長さなのかは不明。
 サイレントヒルのゲーム上では、プレイヤーキャラクターをサイレントヒル内部に閉じこめ、それ以上先に移動をさせないものとして配置されている。

携帯ラジオ@サイレントヒル
 ごく普通の携帯ラジオ。ただし、サイレントヒルの世界では、普通のラジオ番組は受信できないが、クリーチャーが近づくことによりノイズを発生させ、その存在を知らせる事が出来る。 

88 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/14(水) 20:59:54 ID:yKWWpI/80
 書き忘れましたが、 >>74-87 のタイトルは、

 F.O.A.F.(Friend of a Friend)

 です。  
89 ◆.c1l3rjuuE :2008/05/14(水) 22:02:35 ID:/XXZWQiX0
『邂逅』の中で阿部 倉司の苗字が「安部」になっているところがありますが
「阿部」が正しい苗字です。申し訳ありませんでした。



【レオン・S・ケネディ@バイオハザードシリーズ】
【藤田 茂@SIREN2】
を予約します。
90 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/16(金) 23:13:36 ID:V3MWZ9Gg0

【雛咲深紅@零〜zero〜】
【ヨーコ・スズキ@バイオハザードアウトブレイク】
を予約します。
91 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/21(水) 06:04:38 ID:wyVbCh2g0
申し訳ありません。
まだSSを書きあがっていないのですが、これから三日間ほど私用でPCに触れない状態になるため、
上の予約をいったん破棄したいと思います。
完成した後、問題がなさそうであれば投下します。
期限を守れず、本当に済みません……
92 ◆.c1l3rjuuE :2008/05/21(水) 18:48:41 ID:rU6LS6saO
ゆっくり待ってます


予約の延長を申請します
93 ◆dcpChnLpNk :2008/05/22(木) 00:48:30 ID:FWircwh/O
【フランク・ウェスト@デッドライジング】
【長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム】
を予約します。
94 ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/22(木) 02:06:46 ID:nYNOT4VM0
【美浜奈保子@SIREN】
【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
予約します。
95 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:38:15 ID:QnFv95JR0
遅れましたが、

【雛咲深紅@零〜zero〜】
【ヨーコ・スズキ@バイオハザードアウトブレイク】

に、

【ゾンビ@バイオハザードシリーズ】

を加えて投下します。
96 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:38:50 ID:QnFv95JR0
雛咲深紅は見えないものを視た少女であった。
それは亡き母が同じ能力を持っていたためであるかもしれないし、
事実血を分けた兄も妹と同様のものを視る人間であった。
その優しく妹想いだった兄も、地下深い洞窟で帰らぬ人となった。
深紅はその際より、見えないものは視ず、ありえぬものは無いものとして捉えるようになった。
深紅は大切な人と引き換えに、忌避すべき力を失った。
深紅は常人になった。
全ては過去形である。



「……ごめんなさい、ヨーコさん、ごめんなさい……」

霧は暮れゆく陽の光すらその向こうに閉ざし、ただ白く暗く街角を呑みこんでいく。
徐々に夜闇の色が降りてくるそこに、微かに啜り泣く声が響いている。
もし辺りを徘徊する死者の群れがその気配に気づいたなら、そこに無力な獲物の姿を見出しただろう。
銃も扱えなければ運動神経が良いわけでもない、ただの少女。
自らを庇って倒れた女性を腕に抱き、自身の不甲斐なさを嘆き涙を溢す彼女は、あからさまに無防備だった。
彼女が餓えた屍食いどもに襲われなかったのは、ただの運。
決して、その失われた霊なるものを視る力のためなどでなく。


深紅は啜り泣いている。
泣きながら、必死に腕の中の女性―――ヨーコの、とめどなく血の溢れる傷口をハンカチで塞ごうとする。
けれども咽喉に刻まれたそれは深く、専門知識のない深紅にはどうしようもないことが明らかだった。
すり鉢のようにぎざついて抉れた傷跡。
日常では見ることのないその怪我を、しかし深紅は視たことがあった。
人里離れた山や、森の中では比較的よく「いる」、野犬に噛み殺された人のなれの果て。
それらはヨーコと同じく、首の辺りを齧りとられていることが多かった。
もっともヨーコの咬傷は、野犬によるものよりやや小さく、浅い。
当たり前だ。
深紅はすぐ横に転がる人間に少しだけ目を留める。
腐り果てた動く死体を、人間といっていいのかは分からないが、
どちらにせよヨーコが間に入ってくれなければ、深紅の傷は腕の引っ掻き傷だけでは済まなかっただろう。
襲われた深紅を突き飛ばしたヨーコは、咽喉に噛みつかれながらもどこからか出した小さな機械で応戦した。
激しく火花を散らし、放電音を立てながら突き出されたそれが効いたのか、
痙攣しながら倒れた死人はそのまま動かなくなった。
今も動く気配はない。
だがその代わりヨーコは、逃れる術のない暗闇へと誘われようとしている。
つい先ほどはじめて会ったばかりだとしても、
一時行動を共にした人の命が自分のせいで刻一刻と失われていくさまは、深紅を震えあがらせた。
97 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:40:12 ID:QnFv95JR0
「お願い、ヨーコさん、しっかり……」

無駄かもしれないと思いつつも行われる、何度目かの呼びかけ。
またも効果がないと思われたが、少しの間の後ヨーコの瞼が薄く持ち上がる。
弱弱しく瞬いた目は、息をひそめて見守る深紅の姿をゆっくりとその視界に捉える。
同時に伸ばされた手が、深紅の傷ついた腕を捕まえた。
痛みに声を上げる間もなく、ひゅうひゅうと息の漏れた呟きが届けられた。

「私の、リュック……」

か細い要求に、深紅は目的のものを探す。
ヨーコが持っていたらしき黒い小振りのリュックサックは、ゾンビに噛まれたときに落としたのか少し離れた所に転がっていた。
怪我人を抱えたまま取りに行くには少々離れすぎている。
深紅は、指を指して必死に言い募った。

「リュック? ヨーコさんのリュックならあそこにありますよ!」
「……届けて……最後の希望……死んで、しまった、皆の……ため、に、も」

深紅は悟る。
ヨーコ自身が今ここにあるのも、誰かに庇われた結果であることを。
深紅と同じ思いを既に味わい、後悔して、懺悔していたということを。
見ず知らずの深紅を庇うという行為は、彼女にとっては贖罪であると同時に希望を繋ぐことであったということを。
深紅にはその希望を受け継ぐ義務がある。

「あ、とは、T-ブラッドだけ」

喋るたびに咽喉の傷から命の残り香を吐き出しながら、ヨーコは何かを託そうとする。
一言一句聞き漏らすまいと、深紅も耳を澄ませる。

「デイライトを、どうか」

最後にごぽりと血の泡を咽喉から吹いたきり、ヨーコは動かなくなった。
深紅を捕らえていた手が力なく垂れ、開かれたままの目は光を失った。
もう口を開くこともない。
深紅はヨーコの瞼を閉じさせてやって、その場に横たえた。
痛む腕に強いてリュックサックを取り上げ、ついでにヨーコの手から不思議な機械も貰った。
眼前を滲ませる涙を拭き払って前を向く。
行かなければならない。
どこに行けばいいかは、分からないけれど。
98 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:40:51 ID:QnFv95JR0
その時深紅は、不意にかつて慣れ親しんだ感覚を覚えた。
鈴を振り鳴らされるような澄んだ何かが脳内を駆け巡ると共に、視界の中にぼんやりと浮かぶ影。

―――手に入れなければ
―――最後の材料、T-ブラッド……

耳元で囁くような、頭の中に谺するような声と共に、現れた影は消えるように遠ざかっていく。
短い黒髪、濃い緑の上着にジーパン。背には今深紅が手に持つ黒のリュック。
ヨーコ。

「待って……待って、ヨーコさん!」

もう視えなくなったはずなのに。
母を発狂死に追いやった恐ろしい力は、もう無くしたはずなのに。
だがしかし、深紅はこのとき確かに力に感謝していた。
余人には不可能である死者への償いを、深紅には行うことができる。
これはきっと、喜ぶべきことだ。
深紅は消えては現れ、現れては消える霊なるものの後を追いかけ、走り出した。


―――未来、本来なら夢の中、眠りの家にて再び目覚めるはずであったその力は、
いつでもない、どこでもない場所において呼び覚まされることとなった。
静寂の名を冠する異形の街において、否応もなく。
99 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:41:49 ID:QnFv95JR0
【住宅街/一日目夕刻】

【雛咲深紅@零〜zero〜】
 [状態]:T-ウイルス感染、右腕に軽い裂傷
 [装備]:アリッサのスタンガン@バイオハザードアウトブレイクFILE2(使用可能回数:7/8回)
 [道具]:携帯ライト、ヨーコのリュックサック@バイオハザードアウトブレイク
 [思考・状況]
 基本行動方針:ヨーコの遺志を継ぐ。
 1:ヨーコの幽霊を追う。
 2:ヨーコさんの仲間は皆死んでしまった? それとも……

 ※ヨーコのリュックサックの中には、以下の物が収納されています。
  ・P-ベース
  ・V-ポイズン
  ・ハンドガンの弾×20発
  ・試薬生成メモ
  ヨーコの言っていたデイライト(T-ウイルス除去剤)を作るには、
  P-ベース、V-ポイズンに加え、T-ブラッドが必要です。

 ※試薬生成メモには、以下の内容が記されています。
 『生産素材について
  @P-ベース
  AV-ポイズン
  BT-ブラッド
  上記の三種の素材を、実験室の生成装置で合成
  ・素材の調合は、装置によって自動的に行われる。
   生成にはしばらくの時間を要する。
  ・一度生成すれば、高速培養器にセットすることでコピーが作れる。
  @P-ベース
   試薬用に2500mlを生成。
   実験室の保管装置が故障中のため、地下の予備タンクで一時的に保管中。
   ※空気に触れると品質劣化するため 必ず密封容器に入れること
  AV-ポイズン
   培養補助液としてハチの毒から生成。
   実験室にて保管。
   ※合成に必要な量を集めるには非常な労力を要する。
    扱いには充分注意すること。
  BT-ブラッド
   「T」に感染した生物の血液。
   ※グレッグからサンプルを受け取る予定』

 ※深紅はスタンガンの使い方をよく分かっていない可能性があります。


 ※住宅街の一角に、ヨーコの遺体とゾンビの死体、深紅のハンカチが放置されています。


【ヨーコ・スズキ@バイオハザードアウトブレイク 死亡】
100 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:42:18 ID:QnFv95JR0
【キャラクター基本情報】
雛咲深紅
出典:『零〜zero〜』
年齢/性別:17歳/女性
外見:黒髪のポニーテール、白い服に赤いスカーフ。
環境:1986年現在、母を亡くし兄と二人家族だったが、『零〜zero〜』本編内でその兄も亡くす。
   ちなみに全員強い霊力を持っており、母親はその霊力と射影機の力に耐え切れず自殺した。
性格:内向的で、その霊力の高さゆえに兄以外に心を開けないでいる。
   しかし兄を想う心は強く、優しい少女。
能力:強い霊力により、霊を見、その声を聞くことができる。
   射影機があればその力で霊を撃退することも。
口調:一人称は私、年上は名前や苗字に「さん」をつける。
   丁寧で女の子らしい口調。年上には敬語を使う。
交友:肉親である兄・真冬以外とはあまり活発に交流はしていない模様。
   兄の友人、仕事仲間とは顔見知りであることも多いらしい。
   続編『零〜刺青の聲〜』では、兄の友人の婚約者である黒澤怜の元でアシスタントを務めており、
   兄の仕事仲間である天倉螢の顔を知っていた。
備考:本編クリア後より参加。
   射影機は、霊を写すことが出来るカメラであり、霊の姿や残留思念を写し出すほか、
   怨霊を撃退・封印する力を持つ。


ヨーコ・スズキ
出典:『バイオハザードアウトブレイク』
年齢/性別:20歳/女性
外見:肩ほどまでの黒髪、緑の上着に黒のインナー、ジーパン。
環境:日系人。しかし日本の知識の精度は他の外国人とさほど変わらないようだ。
   自称大学生だが、記憶喪失のためそう名乗っているだけだと思われる。
   実際はアンブレラの研究員であり、タイラントの母体として実験材料にされ、
   記憶を失わされた可能性が高い。
性格:普段は控えめだが、探究心は人一倍強い。
   興味を持ったことのためなら、時折大胆な行動をすることも。
能力:体力、足の速さともに一般人並み、やや低いほどだが、T-ウイルスの感染速度は遅い。
   また、コンピュータに関する知識は豊富。
口調:一人称は私、他人は名前で呼び捨てが多い。
   物静かな口調。
交友:アンブレラの研究員の一部と顔見知りである以外は、基本的に本編内で出会った仲間のみ。
備考:本編内「決意」シナリオの途中より参加。
101 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:42:51 ID:QnFv95JR0
【アイテム情報】
P-ベース@バイオハザードアウトブレイク
デイライト(T-ウイルス除去剤)を作るために必要な薬剤のひとつ。
密閉容器に入れておかないと、すぐに劣化するという性質を持つ。

V-ポイズン@バイオハザードアウトブレイク
デイライト(T-ウイルス除去剤)を作るために必要な薬剤のひとつ。
ハチの毒から作るらしい。

T-ブラッド@バイオハザードアウトブレイク
デイライト(T-ウイルス除去剤)を作るために必要な薬剤のひとつ。
T-ウイルスに侵された生物の血液。

デイライト@バイオハザードアウトブレイク
T-ウイルス除去剤。
感染者に注射(服用も?)すれば、体内のT-ウイルスを完全に駆逐できる。

ハンドガンの弾@バイオハザードアウトブレイク
全てのハンドガンに流用可能な弾丸。
102 ◆Q65Npbnq3U :2008/05/25(日) 21:43:55 ID:QnFv95JR0
題名を入れるのを忘れていましたが、

「零を視る者」

です。
103Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:05:21 ID:nmy9rc2k0
事の始まりは「羽生田村」と呼ばれる辺鄙な村にオカルト番組「ダークネス・ジャパン」の取材に来たことからだ。
ロケーション中に偶然知った秘祭に潜入取材をするという企画が急遽決まった。
正直な話、美浜奈保子はそのロケには乗る気ではなかった。むしろ、この「ダークネス・ジャパン」という番組自体に嫌悪していた。
(どうしてアタシがこんなヘボい番組でレポーターなんかしなくちゃいけないの?)
毎度毎度湿っぽい現場で汗水垂らしながら、意味のない取材を強制させられるというのに美浜奈保子 ーーかつてはグラビアアイドルとして華やかな扱いを受けていたことだってあるー。 の人気が上がる気配は一行にない。
むしろ、彼女は世間に忘れられつつある存在であった。
でも、TVに映るためにはこの番組にしがみつくしかない。崖っぷちのアイドル。それが美浜奈保子だった。


取材が始まってすぐに彼女は一人取り残された。しかも、赤い雨が降り、怪物の徘徊する薄気味悪いこの村に。
「どうして誰もいないのよ!」
どうしてこんなことになってしまったんだろう。一昔前まで「みーな」と呼ばれて、皆に愛されていたはずなのに。
「どうしてよ……なんでみんなアタシをみてくれないの…」

ふとした拍子で迷い込んだ学校校舎内。奈保子は喉の乾きを感じて蛇口をひねった。
出てくる水の色は薄めた血液のような淡い赤、とても口に含む気にはなれずにまた蛇口を閉じる。ため息を漏らしながらなにげなく鏡を見つめた。
鏡の中の彼女はお世辞にも美しいとは言えなかった。髪は乱れ、肌も唇も乾燥している。目の下にはクマができており、顔には皺ができていて…
「いや……!」
そこに映っていた自分自身は……『老けていた』



104Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:05:59 ID:nmy9rc2k0

【 美浜奈保子 】 蛭ノ塚 水蛭子神社湧水 3時33分33秒



『あの女のようになりたいか?永遠に生きる女に』
村で初めて会った老人が呟いていた。
あの時は一体何を言っているのか理解できなかったし、理解しようとも考えなかった(気のおかしなじじいだと思っていた)が、今ならなんとなくわかる気がする。
この村にはそういった秘術があるのだ。
永遠に年の取らない、昔と一寸も違わない姿で生き続けることができる…そういった秘術が。

「永遠の若さ」

もう、奈保子の精神は限界に近づいていた。
今自分の目の前に赤い水で出来上がった泉がある。ここに身を委ねれば……

「永遠の若さ」

ある種の確信が彼女にはあった。きっと自分は不老の力を得ることができると。

アタシは

「永遠の若さ」

           そう、「選ばれた」人間なのだから









105Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:07:42 ID:nmy9rc2k0

【 美浜奈保子 】 雛城高校 保健室 18時06分06秒


奈保子が目を醒ましたのはベッドの上だった。柔らかい布団が身体を包み込み、奈保子は久々に心安らかな時を過ごしていた。
…ベッド?何故自分はこんな所で眠っているのだろう?

奈保子は身体を起こし辺りを見回す。
白く塗りつぶされた部屋に清潔なベッドが並んでいる。それぞれのベッドの回りにはカーテンがひかれ、一人でゆったりと眠ることができるように考慮されていた。
ベッドから起き上がり、カーテンを押し空けると薬品が詰まった棚がある。壁には『風邪に注意。手洗いうがいはしっかりと』と描かれた手書きのポスター。
奈保子には見覚えのある場所だった。ここは学校の保健室だ。
昔はよくサボりに来ていたっけ…と感傷に浸るも、違和感を感じてすぐに思考を止める。

霧が濃いのだ。つい先ほどまで自分がさまよっていた羽生田村と同じか…いや、もっと深い霧だ。
窓の外の景色は灰色で、見ていて寒々しい。窓の外に作られた花壇の色味も感じられない。
「なに…?どうなってんの……。あれ?」
辺りを見回すと、1枚のポスターに目が止まった。
赤文字で書きなぐられたような乱暴な字で描かれている張り紙。奈保子は引き寄せられるようにその張り紙に近づいた。

   ル ー ル

1. 殺 せ
  この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること。

2. サ イ レ ン で 世 界 は 裏 返 る
  生き残りたいならサイレンを聞き逃さないこと。何が起きるかはお楽しみ。

3. 鬼 の 追 加
  一定時間毎に鬼を追加します。

4. ご 褒 美 
  最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。 


(褒美…?)
奈保子の目を惹いた言葉…褒美。この甘美な響きに奈保子の目に輝きが戻ってきた。

(そうだわ…。これは与えられたチャンスなのよ。…永遠の若さを手に入れるためのね。そのためだったら何だってしてみせる。もうアタシには後がないんだから…)

まずは状況の把握だ。
どういった経緯でここに来たのかはわからない。ここは羽生田村ではない。それだけはなんとなくだが奈保子は感じていた。
(でも、アタシはまだこの力を使える…)
目を閉じて意識を集中させる。砂嵐の映像からぼんやりと景色が浮かんでゆく…。さらに意識を研ぎすませるとその映像のピントがぴったりとあった。

ハァハァハァと荒い息を吐きながら、その映像の主は全速力で道を駆けていた。
『な、なんだよありゃあ!冗談じゃねえよお!!!ホントついてねえってオレったらぁ!!誰か助けてぇ〜!!!』
そんな彼の視界に「雛城高校」と描かれた看板と校門が飛び込んできた。
106Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:08:39 ID:nmy9rc2k0



【 ジム・チャップマン 】 サイレントヒル ? 17時55分55秒



「おーい!ケビーン!どこいっちまったんだよー!
 …つうかここどこ?あり得ないよなーケビン? …そっか、ケビンいないんだっけ……」
帽子の上からボリボリと頭を掻きながらジムは大きな独り言を漏らしていた。

ジムはラクーン・シティに暮らすごく一般的な鉄道会社社員だった。だが、そんな彼の平穏は前触れもなく崩れ去った。

「生物災害(バイオハザード)」により街は一瞬にして地獄へと豹変した。

彼は仕事帰りに立ち寄っていたBarでこの異変と遭遇する。ついさっきまで同じ人間だったはずの人々がゾンビとして甦りまた仲間を求めて襲いかかってくる。街は火の海に飲み込まれ、人は次々と怪物にへと姿を変えてゆく。
ジムはケビンという名の警察官と共にラクーン・シティの脱出を試み、そして脱出のできる「直前」まで来たのだった。 
ジムの身体は確実に蝕まれていた。人をゾンビへと、怪物へと姿を変えてしまう現況、T-ウイルスに。それはまたケビンにも言える。
それを他の人間にバラまくわけにはいかない。
彼らはラクーン・シティを離れていくヘリコプターを黙って見送ることしかできなかった。

すごく辛い。あのヘリコプターに乗って元の平穏な生活に戻りたかった。
酒場で酒を飲みながらここで起きた地獄のような逃走劇も笑いの種にしてやりたかった。

(あーあ!ツイてないよ。
 せっかくならむさくるしい男より、美人と一緒のほうがよかったよ!ケビン、アンタならわかるだろ?)

いつも通り軽口でも叩いてやろうかと思った。そうでもしないと心が折れてしまいそうだったからだ。
しかし、ジムが口を開こうとした瞬間、空がビカリッ、と光って、そして…


107Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:09:18 ID:nmy9rc2k0

この霧に包まれた街にジムは倒れていた。




一面霧に覆われ、景色の見通しは非常に悪い。ジムは芝生に囲まれた道の真ん中で寝転んでいたらしい。
先ほどまで地獄のような体験をしたラクーン・シティとは違う景色。

「まさかオレ、ひとりで助かった…なーんてワケないよな。だってあの時…」

ラクーン・シティを覆った光。あれは大量のミサイルだ。
怪物まみれになったあの街は存在を抹消された。自分もあの時一緒に消滅した…はずだった。

「ケビン…。大丈夫かなぁ。いや、アイツなら大丈夫だろ、殺しても死なないような奴だしな。うん、そうだ、きっとそうだよな!」
口ではそう言っているが、正直不安は拭いきれなかった。
まずここはどこなのか、無事ラクーン・シティを脱出できたのか?疑問は尽きない。
ここで寝そべっていても仕方がないと立ち上がり、ジムは辺りをキョロキョロと見回した。
「おっ、こいつは」
丁度ジムが倒れていた辺りに彼がずっと握りしめていた鉄パイプが落ちている。彼はそれを拾い上げてブンと一振りしてみせた。
「ホームラン!なんちゃって!…おっと、あいつも持ってるかな」
ズボンのポケットに手を突っ込んでみると、なんとなく持ち歩いていたコインが一枚。
「やっぱこれがないとな!ひょいっと!」
なんとなくコイントスをして遊んでみる。『表』だ。
もう一度やってみようかとコインを握りしめた時、霧の向こうに小刻みに揺れる影をみた。

カサカサカサ、と足音をたてながら布を纏った巨大なボールが地面を「滑っている」…とでも表現すればいいのだろうか。
それ球体と共に女の笑い声が聞こえてきた。
クスクス、クスクス。

その球体の正体は巨大な顔だった。
汗ばんだ髪が蒼白な顔面に張り付いており、充血した目が不気味なほどに見開かれ、その目から涙のように滴る血。
顔には首から下がない。代わりに鳥のような細い棒のような足がついている。それをよちよちと動かしてこちらへ走りよってくる。
口元をぐにゃりと歪ませて、その東洋人の女の顔は笑っていた。


「ねーえ、遊びましょう」

108Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:09:52 ID:nmy9rc2k0


「ヒ…ヒィィィィィィィィ!!!!!!!」


ジムは走り出していた、勿論その怪物から反対の方向へ。
後ろからヒタヒタヒタと足音が聞こえてくる。この怪物、見た目より動きが早い。がむしゃらに走るジムの後ろをぴったりついてきているようだ。

「な、なんだよありゃあ!冗談じゃねえよお!!!ホントついてねえってオレったらぁ!!誰か助けてぇ〜!!!」

声が掠れて、涙まで出てくる。我ながら情けない。
そんなジムの視界に『雛城高校』と書かれた看板と辺鄙な校門が飛び込んできた。
ジムは仄か希望を持って、さっと後ろを振り返った。
「もっと楽しいことをして遊びましょうよ」
希望は通じなかった。
止まらない涙を拭って鼻水もすすりながら、ジムは校門をくぐり抜けて雛城高校のグラウンドを全速力で走っていった。



「な…なんなのよあれ…!」
ジムの目を通してみた事のないおぞましい妖怪の姿を見てしまった奈保子。
「あの男、余計なものを連れてきやがって…!」
手には共に修羅場を切り抜けてきた武器の拳銃がある。しかし、弾の残りはあと僅かとなっている。
他には道中拾ったあのじじいの免許証と…なんとなく拾ってきてしまったトライアングル。
(なんとしても生き残らなければ…)
何か使えるもの…劇薬などないか?奈保子はまず薬品棚に手をのばした…。


109Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:10:27 ID:nmy9rc2k0
【雛城高校/一日目夕刻】

【美浜奈保子@SIREN】
 [状態]:心身共に強い疲労
 [装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾6)  懐中電灯
 [道具]:志村晃の狩猟免許証 羽生田トライアングル 
 [思考・状況]
 基本行動方針:どんな手段を使っても最後の一人となり、褒美を手に入れる
 1:保健室内に武器になるようなものがないか探す。
 2:視覚ジャックを駆使し、可能であれば闇人乙式を倒す。難しそうであれば逃げ切る。
 3:ジムを利用できそうであれば利用する。
 *屍人化の進行が進んでいます。死亡すると屍人化します。また時間経過で屍人に近づいていきます。

【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
 [状態]:強い疲労
 [装備]:鉄パイプ コイン
 [道具]:グリーンハーブ×1
 [思考・状況]
 基本行動方針:誰か助けてぇ!
 1:闇人乙式から逃げる。
 2:誰か助けて!
 3:死にたくねえよ!
 *コインで「表」を出しました。クリティカル率が15%アップしています。
 *T-ウィルス感染者です。時間経過、死亡でゾンビ化する可能性があります。

110Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:11:24 ID:nmy9rc2k0

【キャラクター基本情報】

美浜奈保子
出典:『SIREN』
年齢/性別:28歳/女性
外見:キツネのようなきつい釣り目が特徴。髪をアップにして束ねている。 細身の日本人女性。
   羽生田村異変後からの出場なので服に赤い斑点のシミがあり、服装も乱れている。
環境:2004年のオカルト番組「ダークネス・ジャパン」のTVレポーター。元グラビアアイドル。
   現在はTVレポーターとしてなんとか芸能界で食いつないでいる状態。グラビアアイドル時代は雑誌の表紙を飾ったり、テレフォンカードの柄にされることもあった。
性格:自己顕示欲が強く、短気でワガママ。腹が立つとヒステリーに叫びだしたりする。
能力:幻視能力。須田恭也が使えるものと同じものです。
   銃は一応扱うことができます。ただ、扱いには慣れていないので、遠距離の相手や素早い相手には銃弾を当てるのは難しいと思われます。
   強気で行動力がある。
口調:一人称「アタシ」 二人称「あんた」
   高飛車な感じで文句や愚痴も多い。知らない人相手には猫を被ったりするようだ。
交友:羽生田村では志村晃以外とはまったく接触していない。ただ、グラビアアイドル時代の彼女を知っている人間やそんな彼女のファンはいるかもしれない。
備考:SIREN第二日(ゲーム上では屍人化)から参加。ゲーム中の異変を体験しています。
   

   志村晃について
   猟銃を持った老人。70歳。彼を操作できるステージは序盤だというのに非常に難しく多くのSIRENプレイヤーを苦しませた。
   美浜が羽生田村で唯一会った人間であるが、謎の言葉を残して去ってしまう。
   羽生田村の異変の黒幕の正体を知る数少ない人間であった。



ジム・チャップマン
出典:『バイオハザードアウトブレイク』
年齢/性別:24歳/男性
外見:黒人男性。地下鉄職員の制服、帽子を身につけている。髪は短く刈り上げているが帽子に隠れている。
環境:ラクーン・シティで地下鉄職員として働いていたが、生物災害に巻き込まれている。
性格:気さくで陽気だが、臆病さや度量の狭さを見せることも。悪気はないのについ一言多く、よく周囲の顰蹙を買う。
能力:死んだふり:死んだふりをしている間は敵に気づかれなくなる。少なくともバイオハザードに登場するクリーチャーには有効。
         死んだふりをしている間はウィルスの進行が加速してしまう。
   アイテムサーチ:初めて来た場所でもアイテムがどこにあるかわかる。アイテムの種類は識別できない。
   コイントス:コイントスをする。「表」が出るとクリティカル率が15%ずつ上がり、最大4回まで有効。
   パズルが得意。
口調:一人称「オレ/オレ様」 二人称「アンタ」
   誰に対しても親しげに話す。
交友:バイオハザードアウトブレイクのメインキャラクター全員と面識があります。
   マークとは仲がよく、ヨーコに気がある様子(ヨーコには快く思われていなかった)アリッサを恐れているらしく非協力的。   
備考:アウトブレイクFILE1「決意」のペアED後から参加。デイライトは接種していません。

111Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/26(月) 23:13:45 ID:nmy9rc2k0
申し訳ありません、誤字があります。
『羽生田村』ではなく『羽生蛇村』ですね。
112 ◆dcpChnLpNk :2008/05/27(火) 15:44:22 ID:GocOg9+9O
申し訳ありませんがキャラの把握不足と、前の人と状況や舞台が
被ってしまったので一旦予約を破棄します
113Retry? ◆3BLPPrRDMQ :2008/05/27(火) 20:15:17 ID:J0ZAbQb+0
クリーチャー情報も忘れていました…

【クリーチャー基本情報】
闇人乙式
出典:『SIREN2』
形態:単体の時もあれば、複数現れる時もある。
外見:頭巾を纏った巨大な顔で鳥のような足がついている。顔面蒼白で目から涙のような血を出している。
   なお、女性しか乙式になれない。
武器:打撃、かみつき
能力:正面からの攻撃をいっさい受け付けないため、背後からしかダメージを与えられない。ただし、気がつかれていない場合は例外で正面からダメージを与えられる。
   扉も開けることのできる他、内鍵も壊すことができる(時間はかかる)
攻撃力:★★★☆☆
生命力:★★★★★
敏捷性:★★☆☆☆
行動パターン:決まった場所を巡回している。人を見つけると襲いかかってくる。
備考:倒しても1分前後で復活する。消滅させるには滅爻樹という聖なる木の枝が必要。今は枯れてしまっている。
  光に弱く、光によってダメージを受ける。正面からではダメージはないが、ひるませることは可能。

>112
申し訳ありません
114 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:09:35 ID:b5f4WQFp0
 突然ですが、
【美浜奈保子@SIREN】
【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
【逸島チサト@トワイライトシンドローム】
 を、投下させていただきやす。
115あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:10:57 ID:b5f4WQFp0
 

 軽く、目眩がした。
 天と地が一瞬ひっくり返り、それからふらふらと数歩。
 立ち止まって、息をつく。

 それだけで、「何か異変が起きた」 事を理解する。

 雛城高校2年、逸島チサトはそういう少女だ。

 昔から、変わった力を持っていた。
 見た目は、同世代の女子よりやや小さめで、少しばかりふっくらとしていて、飾りのない真ん中分けの長い黒髪をしている。
 いかにも「一昔前の文学少女」然とした目立たない少女。
 そのチサトが、ほとんど誰にも教えたことのないささやかな秘密。
 それが、この力だ。
 俗に言う霊能力というものだと、一応は解釈している。
 とはいえ、それが具体的にどんな原理で、どんな事の出来るものかを、自分自身明確に理解しているとは言えない。
 ひとならぬものの気配を感じる。
 日常の人の世の理を越えた現象を識る。
 あるいはときとして、それらに働きかけ、理を正すこともある。
 正す、と言ったところで、それはやはり人の理、あるいはエゴとも言える。
 この世界には、人の理などとは関わりあいなく、より大きな法則、あるいは世界があることも、逸島チサトは識っている。
 幾度となく体験しているからだ。
 霊と呼ばれる存在。精霊と呼べる存在。呪い、恨み、あるいは祟り。
 そういうものに働きかけ、それらを鎮め、助けられ、平穏な日常へと回帰する。
 良く言えば、そういう事が出来る事もある。
 
 出来ることもある、等と自分で言うのは、やはり逸島チサトにとって、霊やそれらに属する存在は、大いなる存在であるという畏敬の念があるからだ。
 霊を退治する、除霊する、等という、傲慢な姿勢は彼女にはない。
116あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:12:24 ID:b5f4WQFp0
 出来ることがあれば手助けをする、お願いが出来るならお願いをする。
 そして、どうしようも無いのならば、関わらない。
 身の丈を越して霊に関わり合うことは、破滅を意味するからだ。
 自分にはそれほどの力はない、と、そう思っている。

 それでも、関わらざるを得ないときはある。
 そして多分、「今」もそうなのだと思っている。
 経験から来る直感。
 幾度となくそういう事に遭遇している逸島チサトにとって、慣れたいことではないが、ある意味慣れていることだった。
 しかし、今回は違った。
 彼女は見る。
 窓の外を埋め尽くすかのような濃密な霧を。
 彼女は感じる。
 その中に潜む、言いようもなく禍々しい気配を。
 いつもとは違う、その気配を。



 両開きの扉を閉め、側にあったテーブルを倒しバリケード代わりにする。
 しはするが、まるで頼りない。
「駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ、こんなんじゃ全然役に立たねぇ!」
 何か役に立つ物はないかと素早く見渡すが、整然と金属製の大きな棚が立ち並ぶこの空間でめぼしい物はない。
 たしかにこの金属製の棚らしき物を使えばバリケードとしては最適だろうが、高さだけでも6〜7フィートはあるそれを、一人で動かす力はない。
 ジム・チャップマンは仕方なくここを諦め、この建物の奥へと逃げ込む。
 手にあるのは鉄パイプ一本。
 それで、つい先ほどから自分を追いかけてきている出来損ないのブッシュドノエルのような化け物を倒せるなどとはとうてい思えない。
 ブッシュドノエル。あの、クリスマスのときに食べる丸太を模したケーキ。
 その一端に貌が貼り付き、四本の脚で這うように、うねうねと動く化け物 ―――。
117あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:13:12 ID:b5f4WQFp0
 逃げながらも、頭の隅で考える。
(ありゃ、ゾンビの変種なんかじゃあ絶対にねぇぜ。
 何だか分からねぇが、もっとヤベェ何かだ…)
 ゾンビ ――― Tウィルス によって変異し、ゾンビ化した "生ける死者" 達は、総じて知能がない。
 知能、と言うのも曖昧な表現だが、言い替えれば人間性と呼べるものが欠落している。
 痙攣と同じだ、と、ジム・チャップマンは考える。
 肉体が何らかの作用で反射的な反応をするとき、意志や感情は存在しない。
 同じように、T−ウィルスによって作り出されたゾンビは、ただウィルスの作用で動いているだけだ。
 しかし ―――。
 さっきのは違う。
 明確に理屈として考えているわけではないが、ただそう"感じた"。
 アレは違う。
 ゾンビの様な生ける死者とは違う。
 もっと禍々しい何かだ。
「畜生め! ジーザス! なんだって、こう、立て続けに、こう、なん、だ、ろう、なぁっ!」
 そう、後先も考えずわめき散らしていたら、突然天地がひっくり返った。
 落ちた、のである。
 反射的に両手で頭をかばう。
 数回、身体が硬い何かに打ち付けられ、転がった。
 肺腑から空気がはき出される。
「ふぅ…ぐぐ…い…痛ぇ…ぞ…この…くそ…ッ!」
 呻いて、手を突いて上体を起こそうとするが、その手が滑る。
 床に、液体が撒き散らかされているのだ。
 数瞬の間に意識と感覚がはっきりとして、鋭い刺激臭に気がつく。
 ガソリン…いや、灯油だ。
 辺りを見る。
 行き詰まりの地下階。背後に鉄の扉があるだけのどん詰まり。
 その床一面に、揮発性の強い油の匂い。
 ――― 最悪だ。
 今ここにアレが来たら、逃げ場は ―――。
118あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:13:59 ID:b5f4WQFp0

「   あそぼう   」

 背後から、声がした。



 ラッキーだ。
 美浜奈保子はひりひりする喉を鳴らして、そう考える。
 あの黒人がどう動くか、視界ジャックを数回使っておおよその見当はついた。
 それでも確実ではない。一か八かで仕掛けた罠だ。
 あの異形の化け物と一緒に、焼き殺すための。
 勿論、黒人を殺すことはこの場合の目的ではない。
 むしろ、どうせなら生きていてくれた方が良いとは思う。
 助けたいからではない。
 ただ、気がついたらこのどことも知れぬ校舎の中にいた自分にとって、外から来た彼の知っているであろうことは必要だろうとも思う。
 冷静に考えれば、だ。
 もとより激しやすく流されやすい奈保子の精神状態は、今このとき、とうてい冷静とは言えない。
 勿論パニックを起こしているわけでもない。
 パニックというのは恐慌状態を指すが、奈保子の今はそれではない。
 ただ、物事の損得勘定基準がおかしくなっているだけだ。
 俗に言う狂気とは、社会的な背景から来る真っ当な損得勘定を考えられなくなることを指す。
 犯罪を犯すとき、人は犯罪を犯すことによる損と、犯すことによる得との計算が出来なくなっている。
 自殺を図るとき、死ぬことの損と生きることの得が計れなくなっている。
 人を殺す狂気も、己を殺す狂気もその意味では同じだ。
 奈保子の損得勘定は、今少し歪にずれている。
 その意味では、彼女は緩やかに狂っていた。
 羽生蛇村で立て続けに経験した異常な出来事により追いつめられ、日頃の鬱屈に苛まれ、そしてここに来て目の前にもたらされた "救い"。
 それは、ただの落書きともいえぬ走り書きだった。
119あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:15:03 ID:b5f4WQFp0
 まっとうな人間、まっとうな状況ならそんなものは信じない。
 それでも、直保子はそれを"信じて"、"縋った"。
 まるで、生まれたての雛が初めて見た動くものを自分の親だと認識するかのように、目覚めて初めてみたあの文面を、天から与えられた啓示のように捉えていた。
 
 化け物にはもう飽いていた。
 何度も蘇り、うつろな空洞の目で何処ともしれない果てを見ている屍人たち。
 それに比べれば ―――。
 あんなふうにみっともなく逃げ回っている黒人一人殺すことなど、容易い。
 
 だから、美浜奈保子はそうすることを選んだ。
 逃げ回る黒人の行く先を予想し、ささやかな罠を貼る。
 薬品棚からは武器に使えそうなめぼしいものはなく、消毒用アルコールでは火力としては心許ない。
 そこで運良く見つけたのは、地下のボイラー室にあった灯油の缶だ。
 中身の、まだたっぷりと入ったそれ。

 それを階段の上からぶちまける。
 走ってくるあの黒人が "運良く" このルートに来てくれれば、まず転ぶだろう。
 さらには、"運良く"地下階まで落ちてくれれば上出来だ。
 そして、待つ。
 
 黒人を殺すことが目的ではない。
 あの黒人を追いかけてきていた化け物。
 これは、あれを殺すための罠で、黒人はいわば囮、あるいは餌だ。
 化け物が黒人を襲っている隙に、纏めて始末する。
 あんなみっともない黒人一人を殺すことなど容易い。
 難しいのは、化け物だ。
 もしかしたらあの村にいた屍人のように、倒しても倒しても起きあがる様な化け物かも知れない。
 というより、奈保子が実際に知っている化け物というのは全てそう言うものだ。
120あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:15:54 ID:b5f4WQFp0

 だから、あの出来損ないの伊達巻きに顔と四肢の生えた、ともすれば滑稽な姿の化け物も、まず間違いなくそう言う存在だと思っている。
 そう考えることが彼女にとってはごく自然なことだからだ。

 何度もよみがえる屍人。
 しかし、灯油で焼き尽くされたらどうだろうか?
 それならば、よみがえるための肉体そのものが焼き尽くされてしまったのならば ―――。
 そこに、勝機はあるだろう。
 そう考える。
 いや、あるはずだし、あらねばならないのだ。
 なぜなら、あれだけの目に遭い、何度も死ぬ思いをして、ようやくもたらされた救いなのだ。
 それは正しくなければならないし、又、奈保子にとって幸運をもたらすものであるはずなのだ。

 そうでなければ、話がおかしい。

 奈保子は再び視界をジャックする。
 黒人の視界は、地下ボイラー室の前をさまよっている。
 少し離れたところから、おそらくはあの化け物らしき視界が移動し、近づいてきている。
 その上方、一階と二階を繋ぐ階段の踊り場、手すりの陰に隠れている奈保子は、火を点けた即席の火炎瓶の熱さも気にせずに、きつくそれを握りしめる。
 揺れる。揺れる。
 視界が揺れる。
 これはあの化け物の視界。
 流れるように、漂うように。
 跳ねるように、滑るように。
 近く。
 もう、すぐ、近く。
 今。
 見える。
 黒人の。
121あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:16:34 ID:b5f4WQFp0
 近く。
 来た。
 今。
 降り ―――。

「   あそぼう   」

 何処かから。
 声が聞こえた。

4 

 声がしない。
 常ならするはずの電子音。
 あるいは、機械的な音声メッセージ。
 それが、まるで何も聞こえない。
 何かを引きずる様な、あるいはざわめくような雑音、ノイズ。
 それだけが、逸島チサトの耳の奥を、不快に這い回る。
 そのざわめきの奥に、嫌な感覚が増幅される。
 常ならあるはずの音では無く、常なら聞こえることなど無いはずの音 … あるいは、声、囁き、呻き…が、聞こえてくる。
 そんな感覚。

 駄目だ ―――。
 チサトは耳から受話器を離し、ガチャリと乱暴に戻す。
 こんなとき。
 いつも真っ先に拙いことに遭遇しているはずのミカ。
 それを知ればなんだかんだ言って手助けせざるを得ない性分のユカリ。
 この二人に、なんとか連絡を付けたかった。
 長谷川ユカリとは長い関係になる。
 小学生の頃からのつきあいで、かれこれ9年ほどだ。
122あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:17:27 ID:b5f4WQFp0
 口幅ったい言い方をすれば、親友というやつだと思ってはいる。
 岸井ミカとはここ半年ほど。
 1年後輩の彼女は、半ば押しかけるかたちでユカリとチサトに ――― 主に、チサトでは無くユカリにだが ――― 付きまとっていた。
 はじめは、正直歓迎してはいなかった。
 そこに、一番の親友の自分を差し置いてユカリに馴れ馴れしくするのが不愉快だ、という、些か歪んだ依存的友情がまるでなかった、と言えば嘘になる。
 しかしそれをさしおいても、軽々しくオカルト話や都市伝説を持ってきて、無闇に霊の場を乱そうとする彼女の行為が、チサトにとって危なっかしく、また好ましくないものでもあった。
 とはいえ、当初は心霊に対するスタンス、いや、「理解」の大きな違いから、どちらかというと険悪になりがちな関係であったが、なんだかんだでつきあい続けているうちに、チサトにとっても 「放っておけない」 存在として、ミカは大きな位置を占めていた。
 決して外交的でもつきあい上手でもないチサトにとって、内にこもりがちな自分のテリトリーに入ってこられることは些か苦痛でもある。
 でもあるが、だからこそ一度深く関わってしまった相手を無碍には出来ない。
 そして何よりミカ自身、決してただ浮ついた軽々しい気持ちだけで霊的な存在と接しているわけでもないし、彼等を冒涜しているわけでもない事も、よく分かったからだ。
 ミカは、本来的に優しい。
 チサトはそう思う。
 浮ついて見えるのは、言い替えればミカ自身のキャラクターだ。
 考えてみれば、人と接するときも全く同じ調子なのだ。
 それが結果として拙いことに巻き込まれる原因となることもあるが、それでもそれがミカの性分なのだから、ある意味仕方がないとも思う。
 ここ数ヶ月ほどのつきあいだが、チサトはミカの事をそう把握している。
 そしてだからこそ今、そのミカになんとしてでも連絡を取りたいと思っている。
 しかし。
 ポケベルの番号にダイヤルしようとしても、受話器からはざわついたノイズしか聞こえてこない。
 ミカとは、数刻前に別れたきりだ。
 そのときは、またいつもの調子のミカと、テスト前で多少苛立っていたユカリが、些細なことから口論となり、ケンカ別れのような形になってしまった。
 それからしばらくしてユカリが帰り、一人図書室に残っていたチサトがようやく帰ろうかと立ち上がったとき、目眩がした。
 目眩と、いつの間にか校舎をスッポリと覆うようにして存在しているこの濃霧。
123あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:18:12 ID:b5f4WQFp0
 明らかな異変の顕れに、チサトは心がざわつき、落ち着かないで居る。
 
 現に ―――。
 一階の事務室前に降りてくるまで、まるで人の気配がしなかった。
 自分以外の誰もかもが死に絶えた、静寂の世界。
 そんな妄想が頭を過ぎる。
 
 どうしよう。
 
 今までとは違う。

 明確な根拠もなく、チサトはそう確信する。
 これは、今までにあった怪異とは違う。
 今までが、例えば襖一枚の向こう側を不意に垣間見るような異変だとしたら、今回のこれは ―――。
 
 鼓膜を貫くかのような叫び声に、チサトの思考は中断する。



 自分の声か、誰かの声か、ジム・チャップマンにはそれすらも区別が付かなかった。
 ただ腹の底にある空気が全て吐き出される程の勢いで声を出す。
 両手足をばたつかせ、まるで地面を這うようにするが、床の灯油の影響もあって、まるでまともに動けては居ない。
 階段。
 目の端に映るそれに向かい、逃げだそうとする。
 逃げだそうとするが、恐慌の中、その裏側にいる冷静な自分が疑問を呈する。
 どこから聞こえた?
 アレは、俺を追ってきていたんじゃないのか?
 その視界に、小さな脚が映りこむ。
 赤い、小さな、靴。
 いかにも子供用の小さな靴が、やはり子供の小さな足を包んでいるが ―――。
124あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:19:41 ID:b5f4WQFp0
 誰だ?
 何故だ?
 何故ここに子供が?
 いつの間に?
 いや。
 違う、そうじゃない。
 何より、何故…。
 何故この足の向こうが、幽かに透けて ―――。

「  おじちゃん、あそぼう  」

 赤い靴。赤いスカート。白シャツ。ショートボブ風に切りそろえた黒髪。
 青白く、そしてまるで幻影のように朧気な姿。
 見上げる視線の先、薄暗がりの中、まるで中にたゆたう映像のように。
 その少女は、居た。

 今度こそ、声が出ない。
 吐き出されるのはひゅうひゅうというかすれた息。
 気化した灯油に喉が痛む。
 はっ、はっ、はっ。
 息が早くなる。
 はっ、はっ、はっ。
 短く、浅く、それでいて規則正しく。
 そして、そのときにようやく。
 あの丸いのが。
 ジムの視界に、入り込んでくる。
 歪んだ女の顔をべったりと貼り付けた円筒。
 這い回る四肢を持つ、あの化け物が。
 あれは、ゾンビとは違う。
 ジムは先程感じたことを反芻していた。
125あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:20:20 ID:b5f4WQFp0
 あれはゾンビとは違う。
 ゾンビはただの反射的、痙攣的なモノ、物体に過ぎない。
 あれは違う。もっと禍々しい何かだ。
 そしてこれ … この、少女は …。
 階段の上に、ゆっくりと。
 ゆっくりと。

「  わぁるい、鬼が来た  」

 囁いた。

 それは、囁きとしか言えない幽かな声。
 しかしなのに何故か、まるで脳の中に直接語りかけられているかのように、はっきりと明確に響く。
 あの化け物はゾンビとは違う。
 そしてこの少女は、それともさらに違う。
 
 少女はゆっくりと、階上を見上げながらジムに背を向ける。
 あれが、前面に貼り付いた貌をこちらに向ける。

 「ねーえ、遊びましょう」

 相変わらず貼り付いたような笑みで、そう嗤う。
 ぬらり。
 ぬるり。
 ぬらり。
 芋虫が這うような動きで、それは降りてくる。
 その前に、あの朧気な姿の少女が居る。

 なんだ、これは。
 ジムはただ圧倒され、その有様を見続けている。
126あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:21:01 ID:b5f4WQFp0
 ラクーンシティで、ゾンビの群れと戦い、逃げ、この世の地獄を見たと思っていた。
 いや、確かにアレは、この世の地獄だ。
 しかし。
 今の此処は、この世の外の出来事だ。
 もしかしたらここは既に ―――。

 スローモーションの様に、その光が落ちてきた。
 小さな、火。
 それはガラス製の容器で作られた、即席の火炎瓶の様なモノだった。
 一瞬。ただ一瞬の事であろうその落下が、やけにくっきりと目に残り ―――。
 
 「こっちに!」

 背後から伸ばされた、新たな声の主らしき手で、腕を引かれ。
 そして呆然としていたジムはなぜだかその声にそのまま従って。
 重い、鉄の扉をくぐり抜けた。
 背後で、あの球体の悲鳴らしき声と、扉の閉まる音と、炎の熱が感じられた。



 はっ、はっ、はっ、はっ。
 短く、浅く、それでいて規則正しく。
 まるでスタッカートのような呼吸。
 何処とも知れぬ校舎の中、美浜奈保子はただ走っている。
 やった。
 やってやった。
 確かに感じているであろうはずの恐怖と吐き気を、興奮と歓喜で押し戻す。
 やったんだ。やってのけたんだ、アタシは。
 ほら、やっぱり人を殺すなんてたいしたことはない。
 そして多分あの化け物だって、なんとかしてやったはずだ。
127あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:21:47 ID:b5f4WQFp0
 ――― あの、声が。
 あの少女の声がしたときに感じた戦慄。
 それは、屍人との戦いや、また先ほど外からやってくる奇怪な怪物を見たときのそれとも違う、異質なものだった。
 異質ではあるが、別の意味でそれは分かりやすいものでもある。
 分かりやすく、分かりやすいからこそ、抗えない。
 その声が自分に向けられているのではないことが分かったときには、緊張のゆるみから僅かながら失禁をしていた。
 辺りをうかがい、視界ジャックを試みて、また下を覗き見る。
 大丈夫だ。まだ大丈夫だ。
 予定通り、予定通りに動いている。
 あの黒人は地下階から動けていない。
 あの化け物は確実にこちらに向かっている。
 タイミングは。
 タイミングは、あの化け物の視界の中に、あの黒人がしっかりと入り、そして ―――。
 投げた。
 手にしていた即席の火炎瓶。
 甲高い悲鳴。瓶の割れる音。燃えさかる炎の音、断末魔の叫び…。
 聞こえた、と、そう思いこんでいただけかも知れない。
 確認する暇も余裕もない。
 あとはただひたすらに、走っていた。
 とにかくあの場所から逃げる。
 逃げて、逃げて、逃げた先で。
 奈保子は転んで、うずくまり、胃液を吐き出した。
 咳き込み、吐き出し、嗚咽し、そしてまた吐いた。
 痙攣を繰り返し、ようやくそれが収まったときには、辺りの薄暗さが増しているのに気づく。
 長い廊下の途中。
 記憶にある、ごくありふれた学校の中。
 ガラス窓に映る自分の姿に呆然と視線をやり、それからずいぶんと髪が乱れメイクも落ちているていることが気になった。
 ――― やだ。こんなんじゃ、カメラの前に立てないじゃない。
 さらに周囲を見回して、その場所を探す。
 保健室で見つけた救急バッグに、とりあえず使えそうな物は突っ込んでおいた。
128あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:22:52 ID:b5f4WQFp0
 けれども、肝心のメイク道具は見つからず、これでは化粧直しも出来ない。
 それでもとりあえず、鏡さえあれば、手櫛でも乱れた髪を直すことは出来る。
 だから、奈保子は躊躇無くそこに入る。
 見慣れたマークの掲げられた、女子トイレ。
 そうだ。
 奈保子はぼんやりと思い返す。
 あの子は、そう ―――。


「ハナコ…サン?」
 廊下を早足で歩きつつ、ジム・チャップマンはそう聞き返す。
「多分…そうです」
 答えるのは逸島チサト。
 どうやらただ一人、この雛城高校の校舎に取り残されたであろう少女。
 トイレの花子さん。
 それが、あの子の名前だ。
 雛城高校七不思議の一つであり、また初めてミカに連れられて行った、既にお馴染みとなってしまった 「ミステリーツアー」 最初の探索の対象。
 実際に、花子さんがどんな存在か。それを巧く説明するのは難しい。
 ただ俗に言われる自縛霊……というよりは、ある意味では雛城高校の守護者のような存在である。
「彼女は、この学校に住んでいて ――― だから決して、害意のある存在ではない…はずなんです」
 思い返す。初めてこの学校で花子さんに遇ったときの事を。
 ミカに連れられ、夜の校舎に入り込み、呪文を使って呼び出したときのことを。
 さんざん追いかけられ、迷わされたが、それらは悪意によるものではない。
 だが、今のこの状況は ―――。
 これも、あの花子さんの力なのだろうか……?
 違う、と思う。思うが、断言できない。
 何かがおかしい。
 何かが狂っている。
 それでも、あの花子さんの力が何らかの形で今ここに作用していることは分かる。
129あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:23:34 ID:b5f4WQFp0
 先ほどの事が、その証明。
 悲鳴を聞き、何事かとそちらへ向かおうとしたチサトは、再びこの校舎の中で迷わされた。
 前のときと同じ。
 空間が歪んでいたのだ。
 戸を開けて進むと違うところに向かい、降りれば昇っている。
 空間と空間のつなぎ目がバラバラで、整合性がない。
 人を迷わせる、花子さんの仕業だ。
 そしてだから、教室から廊下への戸を開いたらボイラー室から出たところになり、そしてそこには身も知らぬ黒人男性と、花子さんらしき少女の姿と、そして。
 奇怪な、鳥の脚の生えた茶筒の様な…。
 なんとも形容しがたい、化け物がいた。
 霊的な現象に何度となく遭遇しているチサトでさえ、あんなものは見たことも聞いたこともなかった。
 まるで、そう。
 例えばミカの好きなオカルト雑誌に載っている、未確認生物特集にでもありそうな………いや、それ以上に忌まわしい、何か。
 忌まわしい。
 不意に浮かんだこの言葉が、チサトの中でやけにしっくりときた。
 霊とは、チサトにとって決して忌まわしい存在ではない。
 しかしアレは違う。
 自分たちとは、ある意味地続きで存在している霊達とは異なる、何か根本的に異質な、決して交わりようのない存在…。
 少なくとも、チサトにとってあの怪物は、そういうものに思える。
 あそこで、躊躇無くこの見知らぬ黒人男性に声をかけられたのは、そのあまりの異質さと、そしてその眼前にいた少女霊、チサト自身その存在を知る、花子さんの影響でもある。
 誰であろうと、あの化け物に追いつめられているのなら助けねばならないと、そう感じた。
 そしてそこに花子さんが居たからこそ、行動に移せた。
「花子さんは…。この学校の守護者…のようなもので…だから多分、大丈夫」
 言葉を慎重に選ぶが、あまり巧く言えたとは思えない。
「つまり、その、あのゴーストが、俺たちを守ってくれるってのか?」
「それは…」
 予想していた反応に、言葉が詰まる。
「分かりません…。多分彼女は "学校を守る" ことはすると思います…。
130あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:24:13 ID:b5f4WQFp0
 けど、"私たち" を守ってくれるかまでは…」
 分からない。というより、自信がない。
 今経験している異常は、これまでのものとは違う。
 それは既に、疑念から確信へと変わっている。
 むしろ、花子さんの姿と力を見て、よりその確信は深まった。
 あの異形の怪物は何なのか?
 何故ここに、見も知らぬ黒人男性が居るのか?
 明らかに英語を喋っている彼の言葉の、伝えようとしている意味が耳ではなく頭で理解できてしまうのか?
 そして、今もまだ "あの"花子さんの力が働いているとしたら ―――。
 私たちは此処を出てゆくことが出来るのだろうか?
 この長い廊下は、何処へ繋がっているというのだろうか?



131あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:25:16 ID:b5f4WQFp0
【雛城高校/一日目夕刻】

【美浜奈保子@SIREN】
 [状態]:心身共に強い疲労、軽い興奮状態
 [装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾6)  懐中電灯
 [道具]:志村晃の狩猟免許証 羽生田トライアングル 救急救命袋 応急手当セット(ガーゼ、包帯、消毒薬、常備薬など) 
 [思考・状況]
 基本行動方針:どんな手段を使っても最後の一人となり、褒美を手に入れる
 1:髪を整え、メイクを直す。
 2:落ち着いたら、視界ジャックを使って化け物と黒人の生死を確認する。
 3:校舎内を探索し、まともなメイク道具や安全な場所を確保したい。
 *屍人化の進行が進んでいます。死亡すると屍人化します。また時間経過で屍人に近づいていきます。

【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
 [状態]:強い疲労、打ち身、軽い火傷
 [装備]:鉄パイプ コイン
 [道具]:グリーンハーブ×1
 [思考・状況]
 基本行動方針:とにかく助けてぇ!
 1:逃げ切れたと思える場所まで行ったら、この少女と話をして状況を整理したい。
 2:喉が渇いた。休みたい。
 *コインで「表」を出しました。クリティカル率が15%アップしています。
 *T-ウィルス感染者です。時間経過、死亡でゾンビ化する可能性があります。
132あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:26:08 ID:b5f4WQFp0
【逸島チサト@トワイライトシンドローム】
 [状態]:わずかな疲労
 [装備]:なし
 [道具]:通学鞄、教科書と筆記用具など一式、小物ポーチ、財布と雛城高校の生徒手帳
 [思考・状況]
 基本行動方針:何が起きているかを確かめ、ミカ、ユカリの安否を確認して、状況の解決、脱出を目指す。
 1:逃げ切れたと思える場所まで行ったら、この黒人男性と話をして状況を整理したい。
 2:学校から出ることが出来るかどうか確認したい。
 3:ミカ、ユカリの安否を確認したい。
 4:あの花子さんは本当に前にあった花子さんなのだろうか?


※ジム・チャップマン、及び逸島チサトは、美浜奈保子の存在を確認していません。
 また、美浜奈保子は逸島チサトの存在を確認していません。
133あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:30:47 ID:b5f4WQFp0
【キャラクター基本設定】
逸島チサト
出典:トワイライトシンドローム
年齢/性別:16歳/女
外見:158cm、やや小柄で長い黒髪の古風な印象の少女。
環境:雛城高校2年。古風な父のもと、3人指姉弟の長女として育つ。弓道部所属。蟹座のO型。
性格:普段は無口で穏やかだが、人に対してややうち解けにくく壁を作るところがある。
 控えめに見えて心は強く強情で、ある意味母性的な面も。
能力:霊能力。諸々の裏設定などを考慮すると、実はかなり強力なものらしいが、ゲーム中では詳細不明。(※後述)
 弓道部所属と言うこともあり弓術が出来るとは思われるが、それに関しても明確な描写はない。
口調:丁寧だが、さほど冗長ではない。語尾は、「〜だよ」 等。
 ごく親しい同性の友人 (ミカとユカリ)は 「〜ちゃん」付けで呼称する。
交友:同校の友人、長谷川ユカリとは9年来の友人。1学年後輩の長谷川ミカとも、ごく最近にだが親しくしている。
 他、友人に関する描写はほとんど無く、性格的にも交友範囲は狭いと思われる。
備考:本編終了後、ロワ内ではOPの長谷川ミカと全く同じ時間軸から登場。
 
 ※チサトの霊能力及び、花子さんとの関係。
 トワイライト本編のみでは、「少女ホラーにありがちな霊感少女」的な描写のみに留められているが、外伝的続編
である 『ムーンライトシンドローム』 での描写、及び裏設定などを見ると、「校舎の一部を思念で破壊する規模の
イメージを投影する」 くらいの事が出来る、半ば神の化身の様な強い霊力があるような設定も。
 また、花子さんに関しても、「チサトの能力が作り出した、メッセンジャーとしての化身」 等の裏設定もあるら
しいのですが、この辺りたどっていくと、正確な設定書としてあるもの、というわけでもなさそうなのです。
 というわけで初登場時のSSにおいては、「潜在的には強い霊能力があるらしいが、別に年がら年中それらを使え
るわけではない (かもしれない)」、「雛城高校の花子さんとは何らかの霊的な繋がりがあるが、本人も明確には
分かっていない(かもしれない)」、という前提の描写にしました。実際にどうなのかは、今後の展開次第で。
134あそぼう ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:31:38 ID:b5f4WQFp0

【クリーチャ基本設定】
花子さん
出典:『トワイライトシンドローム』
形態:一人。
外見:おかっぱ頭に白いシャツと赤いスカートに赤い靴。所謂 「昭和(前半)の子供」 の典型的イメージ。
 基本的にうっすらとした半透明で実体はない。
武器:特になし
能力:所謂霊体なので、物理的な攻撃はおそらく効かない。
 ゲーム内の描写から、空間の繋がりをねじ曲げることが出来ると思われるが、おそらく学校内限定。
 物体に対しての攻撃的な能力があるかどうかは不明。
 よって、ステイタス評価も一切不明。
行動パターン:日済し路高校休校手3階の女子トイレで、3回回った後に、「キックキックトントン、キックキックトン」と唱えると、一緒に遊びたくて現れる、というのが、本編での行動パターン。
備考:チサトの霊能力に関する補足で前述の通り、ゲーム本編に登場する花子さんは、公式ではない裏設定で、「チサトの霊能力によって具現化した化身の一つ」 らしい。
 ただし、今回登場した 「この世界」における花子さんが、その通りの存在かどうかは不明。
135 ◆HGBR/JBbpQ :2008/05/31(土) 00:33:22 ID:b5f4WQFp0
 以上、投下終了でございやす。
136 ◆HGBR/JBbpQ :2008/06/02(月) 22:27:39 ID:ABcQW2bk0
 それと、追記、というかミス等があったので訂正。
>>86
 式部人見の基本情報、

*--------------------------*
外見:切れ長の目をし、鼻筋の通った、稟とした美人。細い足のラインが見えるジーンズと、サマーセーターを着用。
 背中の肩口から腰にかけて、大きな火傷の痕があるが、服の上からは見えない。
 本人の述懐によると過去に起きた 「オカルトに関わる事件」 によるものらしいが詳細は不明。
*--------------------------*
 を追加。
>>87
 ダグラス・カートランド基本情報、及び本文。
 ダグラスの息子の死因は、銀行強盗ではなく強盗の際に警官に射殺されたこと。

 あとこれは単なる誤記ですが、>>133 逸島チサトの基本情報、
 長谷川ミカ、じゃなくて岸井ミカ、です。合成してどうする。

137 ◆6xmg9r73RU :2008/06/07(土) 10:20:27 ID:iESmXEKW0
【風水士@クーロンズゲート】
【葛木亜莉子@歪みの国のアリス】
及びチェシャ猫で、予約したいのですがクーロンはOKなのかな?
138 ◆6xmg9r73RU :2008/06/07(土) 10:23:33 ID:iESmXEKW0
名前を間違えた。
【超級風水師@クーロンズゲート】

大した違いじゃないですがw
139ゲーム好き名無しさん:2008/06/07(土) 16:46:55 ID:Mzuf4iHg0
質問は企画スレでどうぞ

ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/event/1201873545/
140 ◆6xmg9r73RU :2008/06/14(土) 21:12:41 ID:UXUIBh/F0
すいません、予約の延長をお願いします。
141 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:53:07 ID:QNRquJ6o0
   『老頭児 & Rookie』


――――夜見島瀬礼州


ベッタリと墨を塗りたくったような夜の海の上を、岩場を迂回しながらフェリーへと向う1艘のボ−ト。
その上で藤田 茂は、慎重に舵を操りながら陰鬱なため息をついた。
夜見島育ちの藤田にとってこのあたりは庭のようなものだ。夜間とはいえゆっくりと進めば
問題なく目的のフェリーにたどり着けるだろう。

藤田が憂鬱な気分に苛まれているのには他にいくつか理由がある。
一つ目は携帯無線がノイズを発したきり沈黙を続けていること。
二つ目は夜見島金鉱で正体不明のもやのようなものに襲われかけたこと。
そして三つ目は――

「無断で島に上陸……銃弾の持ち出し……やっぱり始末書じゃすまねぇよなぁ……
 いい歳こいて何やってんだろうな俺って奴は……やんなっちゃうなぁ……」

警察内部において、藤田への風当たりは決して穏やかなものではない。
今年、一度逮捕した窃盗犯を取り逃がし、降格処分を受けて以降ずっと冷や飯を喰い続けている。
藤田の目の前にある事件を放っては置けない性分は、若い警官の一部からは支持されているが、
多数派の、特に上の人間から見ると目障りでしかないらしい。
上司の「頼むからいらんことはしてくれるなよ」という言葉がそれを如実に表している。
そして何よりこの性格のせいで家庭を失ってしまった。女房と離婚し、
娘からはやっていることはただの自己満足だと手紙で罵倒され、今もその溝は埋まらないままだ。
にもかかわらず、懲りずにまた事件に勝手に首を突っ込んでしまった。

10年前の集団失踪事件以来、夜見島に住民はいない。その無人のはずの島で
「女の姿を見かけた」という噂が流れた時、署の人間は誰も興味を示さなかった。
だが藤田は違った。好奇心があったのも事実だが、ひどく胸騒ぎがしたのだ。
警官としての勘が何かが起きていると告げていた。もちろんそんな曖昧な理由で
警察が動かないのは藤田が良く知っている。彼は悩んだ結果、単身夜見島に上陸する道を選んだ。
こうして藤田 茂は16年ぶりに夜見島に戻ってきたのだ。
142 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:53:49 ID:QNRquJ6o0
フェリーのライトが見えてきた。後4,5分もすれば到着するだろう。
フェリーは完全に座礁してしまっているのか動く気配が全くない。それどころか人の気配すらない。
これだけの事故ならば救助を求める乗客や乗員が周りにいてもよさそうなものなのに。
何がおきたのかは分からないがこの船は間違いなく事件に巻き込まれたのだ。

(なにかあるなコイツは……)

乗り込めそうな場所を探してボートの進路をフェリーの側面に向ける。
と、突然エンジンが不快なうなり声を上げたかと思うと停止してしまった。

「おいおい、勘弁してくれよこんな時に!」

急いでエンジンをかけなおしてみるがウンともスンともいわない。

「まいったな、後少しだってのに」

再度ため息をつく。8月とはいえ泳いでわたるのはきつい。
どうしたものかと思案しながらフェリーのほうを見る。が、




そこにあったはずのフェリーが消えていた。




143 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:54:20 ID:QNRquJ6o0
フェリーだけではない、周囲を見回しても、どこにも岸が見えない。

『そこ』には何もなかった。

墨の様な水面の上に、真っ暗で虚無的な空間がただひたすらに、際限もなく広がるばかり。
いくら目を凝らしても闇の向こうには船も岸も見当たらない。
暗黒の海の上を藤田はただ一人漂っていた。

背中に氷柱を差し込まれたような錯覚。状況が全く飲み込めない。
だが混乱する藤田をよそに更に事態は推移する。
遠くらかすかに響くサイレンの音。それをかき消して背後から轟音が迫ってくる。
振り向いた藤田が見たものは、間近に迫る巨大な赤い津波だった。










144 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:55:19 ID:QNRquJ6o0
「おかしい……どうなってるんだ?」
レオン・S・ケネディはジープを路肩に止めて地図を広げた。
走行時間から考えて、本来ならすでにラクーンシティに着いているはず。
だが今の自分はハイウェイから降りたはずはないのに見知らぬ山道に迷い込んでしまっている。
連絡を取ろうとしても数時間前から無線はつながらない。
その時点では元々時間にルーズな彼は呑気に構えていたが、事ここに至ってはさすがに焦りが出てきた。
何か目印になるものを探したいが、あたりに立ち込める濃密な霧のせいで、
10メートル以上先がほとんど見えない。

「配属初日から遭難か……? ここはどこなんだ?」

レオンは今日付けでラクーン市警に配属される予定だった。だが初日からこの様では悪い意味で市警に伝説を残してしまいそうだ。

(全くツイてないな……)

『お前は顔がいいくせに女運は最悪だな』というのは友人であるアーク・トンプソンの言だが
そのツキのなさがこんなところにまで表れるとは思っていなかった。

改めて周囲を見回す。気のせいか重くまとわりつくような霧は先ほどよりも濃度を増したように思える。
145 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:56:01 ID:QNRquJ6o0
自分以外に通りかかる車は一台もいない。近くに人がいる気配も皆無。
なんとなく昔見たB級映画を思い出す。
登山に来た登場人物たちは深い霧に足止めされ山小屋で一夜を過ごそうとする。
だが霧の中に潜む『何か』に一人、また一人と惨殺されていくのだ。
無論それはフィクションの話だ。現実にあるわけがない。
だがこの霧は尋常ではない。あのハイウェイはラク−ンシティへ直結しているはずだ。
それが霧が発生して以降、隔離されたかのようにこの山道へと迷い込んだ。
まるで世界にたった一人取り残されてしまったような――。

「……馬鹿馬鹿しい」

不安を振り払うようにジープを発進させる。とにかく人のいる場所へ出て道を尋ねたい。
焦りが知らず知らずのうちに車を加速させる。

唐突に視界に飛び込むうずくまった人影。咄嗟に大きくハンドルを切る。
ブレーキペダルを限界まで踏み込んで急減速。タイヤがアスファルトにこすられて悲鳴を上げる。
小柄な人影の傍らを通り過ぎた車体は、そのまま車道の外の斜面へと飛び出していた。








146 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:56:49 ID:QNRquJ6o0



「――――はっ!?」

覚醒とともに跳ね起きた藤田は、不安定に揺れる地面に慌てる破目になった。
捕まるものを探してボートの縁を掴み、ようやく自分が水の上にいたことを思い出す。
闇に包まれていたはずの周囲は、霧に覆われているものの、ぼんやりとした明るさがある。
体を確認する、特に怪我はない。津波に飲まれたはずなのに服は全く濡れていない。

「どうなってんだこりゃ……、まさかここは三途の川ってんじゃないよな……」

辺りを見回すと、遠くに船影らしきものが見えた。あれがフェリーだろうか。
とにかくここで立ち往生しているわけにはいかない。
エンジンを調べると今度はかかってくれた。再び順調に動き出したことに安堵する。
こんな状況で身動きが取れないなどということになったら目も当てられない。

だが、船に接近した藤田は目を疑った。
船影の正体は自分が目指していたフェリーではなかった。それよりも一回り小さな遊覧船だ。
昔のアメリカ映画に出てくるような古めかしいデザイン。蒸気式なのか上部には長い煙突。
正面にはアルファベットで『リトル・バロネス号』とある。

「おーい! 誰かいないかー! おーい!!」

呼び声は応える者がないまま霧に呑み込まれるばかりだった。人が居ないのはここも同じようだ。
それにしても夜見島にこんな遊覧船があるはずはない。ならばここはどこなのだろうか。

遊覧船が停泊している桟橋にボートを寄せて留める。上陸した場所は寂れた観光地のようだった。
周りは木々に囲まれているが、元は自然公園か何かだったのだろう、木と木の間隔が大きくあいていて人の手が入っていることが窺える。
離れた場所には建物らしき大きな影。看板が突き出ていることからホテルか何かだろうと当たりをつける。
だがそれだけだ。あいかわらず人の気配は全くない。
とりあえずホテルのほうへ足を進める、が。

147 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:57:32 ID:QNRquJ6o0

突如霧の中に響くブレーキ音、一拍後、衝突音。

「――事故か!?」

木々の向こう側から聞こえた轟音に藤田は駆け出した。
低木をかき分けながら音がした方へ斜面を駆け上がる。木の根にけつまづきそうになりながらも踏みとどまり、
目の前を塞ぐ木の枝を払い除け、無事でいてくれよと願いながら走る。

苦労しながら大きな潅木を脇へ除けた時、虚空に投げかけられるヘッドライトが見えた。
天地が逆さまになった白のジープ。その下に動く人影。怪我人かも知れない、急いで駆け寄る。

「大丈夫か!? 警察だ!」

「こっちも警察だ! すまない、手を貸してくれ!」

若い男の声が返ってくる。なんと、こんなところに同業者がいたとは。
よく見ると、藤田が知っている型ではないがこのジープもパトカーのようだ。
ともあれ、車外に伸びた腕を掴んで男を外に引っ張り出す。
だが、中から現れた男に藤田は驚かされることになる。

「―――外人!?」

「―――ラクーン市警じゃないのか!?」


148 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:58:27 ID:QNRquJ6o0
頭に当てていたハンカチを離してみる。血は止まったようだ。
木にもたれて座り込んだ状態でレオンは状況を整理しようとする。
が、考えがまとまらない。現在位置も把握できない上に、突然日本の警察官に遭遇するなど本来ならありえない話だ。

茂みをかき分ける音がした。身構えるレオンだったが、姿を現した日本人に肩の力を抜く。

「今、上のほうの道路を調べてきたんだが、あんたが言ってた人影ってのはどこにも
見当たらなかったよ。念のために道路の外側も探してみたんだがそっちも空振りだった。
何かの見間違いってことはないのかい?」

「……いや、あれは確かに人、それも子供だった」

あの時、人影と交錯した瞬間に見えたのは黒い髪をした少女だった。

「そうか……、もう少し探してみるかな。ところで、体のほうは大丈夫なのかい?」

「ああ、たいしたことはない。ありがとう」

先ほどから彼の世話になってばかりだ。どうにも申し訳ない。

「すまないな、初対面なのにいろいろ面倒を掛けてしまって」

「なに、気にしなさんな。お国は違えど同じ警察官だ。こういうときは助け合わないとな」

他人の世話を焼くのに慣れているのだろう、ごく自然な態度はこちらに気負いを感じさせない。
だが自分の父親ほどの年齢の人に言われるとさすがに面映いものがある。
礼を言うと、彼は「いいっていいって」と笑いながら制帽を被りなおし立ち上がる。

「向こうのほうに建物が見えたからそこで電話を借りてくるよ。ここがどこかも分かるだろうし。
それが済んだらもう一度この辺りを捜索して、その子供を見つけてくる。
あんたはもうちょっとここで休んでるといいよ」
149 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:59:01 ID:QNRquJ6o0
その言葉に少なからず驚かされた。そもそも日本の警察がアメリカで活動することは越権行為だ。
下手にこじれると大問題になりかねない。その点を指摘すると彼は苦笑して頭をかいた。

「よく、でしゃばり過ぎだって言われるよ。でもなぁ、こうして目の前に事件があるんだ、
放っちゃおけんよ。それに――」

制帽の影で眼がほんの少し、細められるのが見えた。

「もしかしたら、どこかで他にも俺らみたく巻き込まれて難儀してる人が居るかもしれん。
だとしたら一刻も早くこの状況を何とかしないとな」

レオンは漠然とではあるが目の前の男の人となりが理解できた。
彼は根っからの警察官なのだろう。
自分がこれからそうあろうと思っているように。
ならば自分がとるべき行動は一つだ。

「なら俺も行く。ここに座っていても埒があかないしな」

「本当に大丈夫か? 無理しなくてもいいんだぞ?」

「今日が初勤務なんだ。初日に職務放棄するわけには行かないさ」

立ち上がろうとするが、しばらく座り続けたせいか体がよろめく。
差し伸べられた手、彼が苦笑していた。
格好がつかないなと自分でも苦笑しながらその手を掴む。

「レオン・スコット・ケネディだ」

「藤田茂だ。よろしくな、ケネディさん」


150 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 17:59:41 ID:QNRquJ6o0


逆さになったジープを見やってレオンは嘆息する。よくもここまで派手に事故ったものだ。
おそらくまだ使えるだろうが、二人だけで車体を道路に戻すのは無理だ。引き上げるには倍の人数か別の車が要る。
下にいる藤田をあまり待たせるわけにもいかない。地面と車の隙間に体を滑り込ませ
苦労してサイドボードから予備の銃を取り出す。
必要になるかどうかは分からないがこのままここに置いていくわけにもいかないだろう。
銃を回収して藤田のところへ戻る。

「待たせたな藤田さん。行こうか」

藤田が見つけたというホテルらしき建物へ向いながら簡単に情報交換を行う。

「ヤミジマ? いや、すまない、聞いたことが無いな」

「そうか……本当にアメリカに来ちまったのか。 弱ったな、一体どうやったらこんな
奇天烈なことがおきるんだか……。やっぱりあんたも無線はつながらなかったのかい?」

「ああ、俺の場合は大分前からなんだが、この辺りに妨害電波でも流れてるのか?
とにかく尋常じゃないな。この霧が出始めてから本格的におかしくなってきた」

「霧か……。夜見島じゃ霧は出てなかったな。かわりにでかい津波に飲まれて気がついたら
あそこの湖に――」

突然湖に視線をやった藤田の言葉が途切れた。

151 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 18:00:18 ID:QNRquJ6o0
「ケネディさん! あんたが言ってた女の子ってあの子じゃないか!?」

叫び声に心臓が跳ねる。レオンは振り向いた。藤田の視線の先、湖のほうへ。

その少女は確かにそこにいた。
年齢は12〜3歳といったところか、制服のようなブルーのツーピースを纏い、黒い髪を後ろで束ねた少女。
だがその表情は幼さとは裏腹に沈痛なものを浮かべ、ただ湖のほとりに無言で立ち尽くしている。

レオンは声を掛けようとし、猛烈な違和感に襲われた。
最初、その違和感がどこから来るものなのか理解できなかったが、少女のほうへ一歩踏み出そうとした時に気づいた。
彼女との距離感がつかめない。
遥か彼方にいるような、それでいて息が吹きかかるほど目の前にいるような奇妙な感覚。
他にも次々とおかしな点が思いうかぶ。
なぜこんな人気の無い場所にこの少女はたった一人でいるのか?
なぜこんな濃密な霧の中で彼女の服の細部まで視認できるのか?
隣の藤田も同じものを感じたのか、困惑したまま動けないでいる。

少女は黙したまま何も語らず、ただ自分たちを見つめている。
何かを訴えるように。

沈黙に耐えられなくなったレオンは違和感を振り払い声を掛けようとする。だが。




突然少女の姿がかき消えた。

152 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 18:00:53 ID:QNRquJ6o0
それまで不自然なほど鮮明だった彼女の姿が、周囲のにごった白色に瞬時に同化しそのまま消滅してしまった。

「!? 藤田さん! 今のを見たか!?」

「ああ、見たよ……消えちまった!」

急いで少女がいた場所に駆け寄るが、そこにはもはや誰の姿も発見できなかった。

何かがおかしい。
何か異常な事態が起きている。
地図には無い筈の湖。
出会う筈の無い日本の警察官。
そして自分たちの前に現れ、跡形も無く消えてしまった少女。
眼前に広がった奇妙な世界にどう説明をつければいいのか全く分からない。
唯一ついえることがあるとすれば、それは――

「どうもこの一件は一筋縄じゃいきそうにないな……」

「ああ……」

153 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 18:01:56 ID:QNRquJ6o0
【トルーカ湖/一日目夕刻】

【藤田茂@SIREN2】
[状態]:健康
 [装備]:NN38口径警察拳銃(装弾数5/5 予備弾10)
 [道具]:警棒、懐中電灯、携帯無線、警察手帳、ボールペン
 [思考・状況]
 基本行動方針:レオンと協力して行動、事態の打開。
 0、今の女の子は……?
 1、 人のいる場所を探して情報を集める。
 2、 弱者は保護する。
 3、 連絡をとる手段を探す
 ※幻視能力にまだ気づいていません。


【レオン・S・ケネディ@バイオハザード2】
[状態]:打ち身、頭部に擦過傷
 [装備]:HK VP70(装弾数18/18)
 [道具]:ブローニングHP(装弾数13/13)、コンバットナイフ、ライター、ポリスバッジ
 [思考・状況]
 基本行動方針:藤田と協力して行動、事態の打開。
 0、今の少女は一体……?
 1、人のいる場所を探して情報を集める。
 2、弱者は保護する。
 3、ラクーン市警に連絡をとって応援を要請する。


※謎の少女の幻影?を目撃しました。
※湖に藤田の乗ってきたボートが泊めてあります。
※湖近くの斜面にレオンの乗ってきたジープが放置されています。まだ走らせることは出来ますが、
二人だけでは車体を起こせません。
※湖にリトル・バロネス号が停泊しています。
154 ◆.c1l3rjuuE :2008/06/15(日) 18:05:37 ID:QNRquJ6o0
【キャラクター基本情報】
藤田茂
出展:SIREN2
年齢/性別:52歳(1986年当時)/男性
外見:中肉中背の日本人。実年齢よりはいくらか若く見える。日本警察の夏用制服着用。
環境:警察官。階級は巡査部長。
性格:情に厚い熱血漢
能力:警察官として射撃、格闘訓練を受けている。長年の経験と勘。幻視能力。
口調:一人称は「俺」、年少者に対しては「おまわりさん」。二人称は「あんた」等。「○○ちゃん」
   と呼ぶことも。喋り方は穏やかでややクセがある。口癖は「やんなっちゃうなぁ」
交友:妻と朝子という娘がいたが、家庭を顧みなかったため現在は離婚、別居中。
備考:−05:00「予兆」後、ブライトウィン号へ向う途中からの出展。
    かつては警部補だったが、一度逮捕した窃盗犯の「母親に会ってから戻ってくる」
   という言葉を信じて取り逃がしてしまい、巡査部長に降格される。
    1986年(昭和61年)の人間で、矢倉市子を除く他のSIREN2のキャラとは違う時代の人間。
   当然、多河柳子殺害事件や羽生蛇村の土砂崩れ(SIREN)のことは知らない。

レオン・S・ケネディ
出展:バイオハザード2
年齢/性別:21歳(1998年当時)/男性
外見:くすんだ金髪の白人。身長178cm。青い制服の上に「R.P.D」のロゴ入り防護ベスト着用
環境:ラクーンシティ配属予定の新人警察官。
性格:正義感が強く、弱者を救う使命感にあふれている。行動力に優れるが時間にとてもルーズ
能力:警察官として射撃、格闘訓練を受けている。
口調:一人称は「俺」、二人称は「君」「お前」「貴様」等。はっきりとした口調で話す。
交友:「バイオハザード・ガンサバイバー」の主人公アーク・トンプソンとは友人。
   ゲーム中ではクレア・スタンフィールドと序盤に出会う。エイダ・ウォンとは心を通わせる。
備考:原作開始直前からの出展。なぜか女性とは相性が悪く、いろいろと振り回される。

【アイテム情報】
携帯無線@SIREN2
現実の警察が使っているものと同じ物。外部との連絡には使えないが
携帯ラジオと同じようにクリーチャーが接近するとノイズを出す。
周波数を合わせれば舞台内で使えるかもしれない。
155 ◆dcpChnLpNk :2008/06/17(火) 21:47:39 ID:d93wkd+V0
【フランク・ウェスト@デッドライジング】
【長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム】
【黒澤怜@零〜刺青の聲〜】
予約します。
156 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/21(土) 00:47:43 ID:C9PrlYBi0
応対が遅れてしまい申し訳ありません。

>103-109
時間を
>105
【 美浜奈保子 】 雛城高校 保健室 18時06分06秒 → 17時05分55秒

>106
【 ジム・チャップマン 】 サイレントヒル ? 17時55分55秒 → 16時56分56秒

に変更したいと思います。
wikiの編集もしておきたかったのですが、方法がわからないのでお任せしてもよろしいでしょうか?
ご迷惑ばかりおかけして申し訳ありません。

157 ◆dcpChnLpNk :2008/06/22(日) 21:34:12 ID:2a/EO9wI0
すいません
予約を延長します。
158 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 20:57:29 ID:cs0Znh1w0
突然になりますが、

【真理@かまいたちの夜】
【賽臥隆恭@アパシー 鳴神学園都市伝説探偵局】
【日野貞夫@学校であった怖い話】
【宮田司郎@SIREN】
【レッドピラミッドシング(三角頭)@サイレントヒルシリーズ】

投下させていただきます。
159 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 20:58:16 ID:cs0Znh1w0

全部夢だったらいいのに。
この鳴り止まない吹雪の音も、ペンションで起きた惨劇も、そして、この血塗れた私の姿も、彼がすべての元凶だったという事実も。

手に握りしめたストックから血がぽたり、ぽたりと滴っている。
そして、私の目の前には血の海の中に倒れた透。じっと私を見据えた目にはもう輝きはない。
私が彼の喉を突き刺した時、彼は何かを私に言おうとしていた。何を伝えようとしていたのだろう?
彼が死んでしまった以上、その答えはもうわからない。

カタン。

全身から力が抜け落ちて、木製の床に私はしゃがみ込んだ。
手からすべり落ちたストックが床を転がっていく。
「うっ…」
透を殺した。私が。
その現実に気がつくと、吐き気がこみ上げてきて、たまらず嘔吐する。
目の前に倒れていた透の髪にべったりと嘔吐物が絡み付いた。
彼を殺し、そして汚してしまった。

彼は私に何を伝えようとした?
彼は本当に皆を殺したの?
必死に私を守ろうとしてくれていたあの逞しい姿。あれもすべて演技だったというの?

私は取り返しのつかないことをしてしまったのではないか。

「透…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

私の謝罪の言葉も、嗚咽する声も、吹雪の音がすべて飲み込んでしまった。
透はただ、うつろな目で私を見ている。
私の後悔も掻き消してくれればいいのに、悲しい想いだけは雪のようにただただ降り積もっていくばかりだった。

1601234a678:2008/06/23(月) 20:59:35 ID:cs0Znh1w0

全部夢だったら。目を開ければいつもの通り透がいて。
時々エッチなこともしてくるけど、優しくて。面白いことをいって和ませてくれて。
二人で一緒に叔父さんの美味しい料理を食べて、叔母さんと楽しくお話をして、敏夫さんとみどりさんと一緒にスキーにいって。
お客さんたちとの出会いがあって。
日常に帰れたら。こんな夢をみたって、皆に話して、そして言ってもらおう。
「全部夢だったんだから、大丈夫だよ」


ぴたりと吹雪の音が止んだ。何の音もしない静寂の世界。
ただ、ここもやはり白い世界だった。幾分のも霧の層に覆われて視界が悪い。
「白」…
白が怖かった。現実を突きつけられているようで、身体が震えるのがわかる。
「助けて…誰か助けて…」
小さな声なのに、不気味なほど辺りに響いた。そんな自分の声にまたぶるりと身体を震わせる。
殺人鬼が、私を殺しにやってくるかもしれない。ペンションで生き残った私を殺しに。
あるいは、罪のない透を殺してしまった私を『裁き』に。
どちらにせよ、私も死ぬ。殺されてしまう。
(でも、もしかしたら)
もう悪夢は終わったのかもしれない。
ここはもう現世じゃなくて、別の世界で。透もいて、皆もいて。
今度こそ上手くできるかもしれない。透に会って、謝ろう。謝っても許してもらえないかもしれない。
それでもいい。許してくれなくても構わない。
ただ、謝罪の言葉さえ伝えられれば…私はきっと楽になれる。

1611234a678:2008/06/23(月) 21:01:05 ID:cs0Znh1w0
突如、静寂は破られ、私は現実に引き戻された。霧の向こうから、慌ただしい足音が響いてきた。
何かから逃げている足音…
(まだ…終わらないの?終わらせてくれないの?)
足に力が入らない。
手元の転がっていたストックを杖代わりに、ゆっくりと立ち上がる。
ストックの先にはまだ乾ききってない血液が付着していた。
駆けてきたのは学生の少年だった。霧のせいで姿形がはっきりしないが、少年特有の細身のシルエット、金に染められた頭髪に不似合いなワイシャツときちっとしたズボンの組み合わせ。
『普通』の少年。
「たす、助け…!」
(助けを求めている…?)
彼が近づいてくるにつれて、より少年の姿が鮮明に見えてくる。そこで一つ、『普通』の少年だったはずの彼の姿に違和感を覚えた。

彼の校章入りのシャツにべったりと赤黒いシミがついていた。彼の頬、額にもその痕跡がある。
見間違えるはずがない。この色は『血』の色だ。ペンションの惨劇の印の血の色の赤。
少年はこちらに向かって走ってきた。
たしかに彼は私に助けを求めていた。
だから、私は、
ストックを握りしめると彼から逃げ出した。

1621234a678:2008/06/23(月) 21:01:31 ID:cs0Znh1w0
よく考えてみれば、ペンションに集まった人たちだって、透だって、私だって、『普通』の人間だった。
だが、たしかにあの中に人殺しが混じっていたのだ。
誰が?どうして?なんのために?そんなこと、もはやわかるはずがない。
でも、たしかに殺人は行われて、そして、私は透を殺した。
少年は血を浴びていた。
彼もまた誰かを殺したに違いない。
そして、今度は私を…
足音が聞こえる。彼は私を追いかけてきている。私を殺そうとしている。
(助けて……透!)

ぐらり、と世界が回った。
少し遅れて地面に叩き付けられる衝撃と痛みが全身を走り、息が止まった。
「けほっ!けほっ!」
足を縺れさせて転けてしまった。その際に胸を強打し、一時的な呼吸困難に陥ってしまった。
(来る、来てしまう…殺人鬼が)
足音はなおも近づいてくる。
(誰も助けてくれるはずがない。だって透は私が…)

タッタッタ(ギィ…)ッタッタ(ギィ…)

足音に混ざる不調和音。
ガラスに爪を立てた時のような耳障りな音が聞こえる。
足音がピタリと止み、代わりに少年の悲鳴が音を掻き消した。
「ば、ば、…化け物ッ!!!!!」

1631234a678:2008/06/23(月) 21:02:11 ID:cs0Znh1w0




隆恭は振り向くこともなく走り続けた。どこに向かっているかはわからない。
とにかく今はあの危険な男から逃げ出さなければ。
喉が焼けるように熱く、息が上がり、視界がぶれている。
大声を上げてしまいたかった。だが、上げてしまえばあの男に居所がばれてしまって、そして…
あの死体のように、自分も人生の結末を迎えてしまう。
(あんな死に方だけはしたくない!)
まだ、マシな死に方があるはずだ
(…もちろん、死に急いでるわけじゃない)
誰かまともな人間はいないのか。幸いか不幸か、自分には『天眼』がある。人の良し悪しは見抜けるはずだ。

「はっ…はっ…はっ…は…」


どれくらい走っただろう。
長い時間に感じたが、実際はほんの数分くらいの出来事なんだろう。
これであの男を撒けたとは到底思えない。
霧のせいかずっと同じような風景が続くのもまた不安を煽られた。
しかし、一つの変化に隆恭は気がついた。人が一人かがみ込んでいる。
それがどんな人物なのか、今の隆恭には考える余裕がなかった。ただ助けてほしい。隆恭はその人影にむかって足を早めた。

164 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 21:03:30 ID:cs0Znh1w0

「たす、助け…!」

するとその人影が顔を上げた。長い黒髪をもった女性のようだ。手に棒状の何かを持ち、それにしがみつくようにして立っている。
女性に助けを求めるのもなんだか格好が悪いが、なりふり構っていられない。
ようやく女性との距離が縮まった。だが、その瞬間。
彼女は驚嘆の表情を浮かべ、突然走って逃げてゆく。もしや、後ろからあの男たちが…?
後ろを振り返るが、一面に霧が広がっているだけで誰の姿も見当たらない。
また正面を向くと、女性の姿が遠くなっている。まずい、一人は危ない。
隆恭は彼女を追いかける。
彼女を一人にするのは危ない…というよりむしろ一人になりたくなかった。必死に彼女を追いかける。
だが、意外にもあっさり彼女に追いつくことができた。
彼女が転倒したのだ。転倒した拍子に手に握られていた棒状のもの…ストックが転がって彼女の手元を離れた。打ちどころが悪かったのか咳込んで苦しそうにしている。
ギィ…ギィ…
隆恭が彼女に声をかけようとした時、不気味な音と共に霧の向こうからまた別の影が現れた。
人の形をしているが、頭が大きすぎる。その頭は先の尖った三角形の金属で出来ている。
そして不気味な音の正体。
彼は異常な大きさをもった大鉈を引きずって歩いていた。鉈が地面と擦り合い、耳障りな音を作り出している。
その鉈が赤黒く染まっていることに、まだ隆恭は気がつくことはできなかったが、見るものを絶望と恐怖に陥れ、動揺させるのには十分すぎるくらいの非現実的で、恐ろしいものだった。

「ば、ば、…化け物ッ!!!!!」

声を張り上げて叫ぶが、女性はまだ呼吸が出来ず咳込んだまま立ち上がらない。
幸いその怪物…三角頭の歩みは自分の歩みに比べればずっと遅い。
隆恭は女性の手から離れたストックを握りしめ、立ち上がることのできない女性に肩を貸し、起き上がらせる。
165 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 21:04:26 ID:cs0Znh1w0
(逃げないと…!)
三角頭と反対の方向へ、女性を抱えたまま歩み出す。彼女も必死に足を動かすが、歩みは遅い。

「大丈夫っすか!」
「けほっ…けほっ……」

ギィ…ギィ…ギィ…

後ろの目線をやると、そう距離を縮められているようには見えない。だからといって引き離せているわけではない。
歩みはほぼ同じペース。もし、あの男たちが向こうからやってきて挟まれたら…

「…はぁ…はぁ…」

女性の咳が止んだ。

「だ…大丈夫すか、走れますか?」
「……」
女性が頷く。
「よ…よ、よし。」
あの歩みの速度なら走って逃げればきっと振り切れる。隆恭はその女性の手を取ると、彼女を引っ張りながら走りだす。
手がガクガクと震えているのが情けない。だが、その女性もまた恐ろしい気持ちは同じのようで痛いほどにその震える手を握りしめていた。
後ろに目をやると、少しずつだが三角頭が遠ざかっている。逃げ切れる…隆恭は心の片隅で考えた。
ようやく出会えたまともそうな女性。自分に頼ってくれる存在。隆恭の心のどこかで安堵、希望が芽生え始めた。
しかし、隆恭の足が突如止まった。
女性の足も遅れて止まる。

「…どうしたの?早く…!」

三角頭を気にしながら女性が隆恭を急かす。それでも先に行こうとしない隆恭。女性は彼の視線の先を追った。


166 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 21:06:01 ID:cs0Znh1w0
「ようやく追いついたよ。坊や。」

もっとも恐れていた人物が、そこに立ちはばかった。日野貞男だ。
そして、彼ともう一人。
彼は日野の後ろで静かに事を眺めている。まるでこちらが少しでもうかつに動いたら的確に撃ち殺せるように身構えているように隆恭の目には見えた。
少なくとも、日野と同行している以上『まともな』人間ではない。

じりじりと迫る三角頭。まともじゃない人間たち。

「仲間も増えたようだね。」

不安そうに女性が手を握り締めてくる。隆恭も彼女の手を握り、それに答えた。

右目の視界にチラチラと入る、黒いオーラ。
…どうしようか。



167 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 21:06:55 ID:cs0Znh1w0
【駅付近の路上/一日目夕刻】
【真理@かまいたちの夜】
 [状態]:強い疲労、軽い打ち身、恐慌状態、疑心暗鬼、返り血
 [装備]:特になし
 [道具]:特になし 
 [思考・状況]
 基本行動方針:死にたくない
 1:隆恭と共に三角頭から逃走する
 2:日野、宮田を警戒
 3:先ほど逃げ出したこと、疑ったことを隆恭に謝りたい

*透を殺した罪悪感から三角頭に狙われています。自覚症状は今のところありません。
*隆恭の名前を聞いていません

【駅付近の路上/一日目夕刻】
【賽臥隆恭@アパシー 鳴神学園都市伝説探偵局】
 [状態]:疲労、恐慌状態、身体の全面が血塗れ、左右で目の色が違う(天眼解放状態)
 [装備]:ストック
 [道具]:学生鞄(中身は不明)、コンタクトのケース(カラコン入り) 
 [思考・状況]
 基本行動方針:元の世界に帰りたい。
 1:真理と共に三角頭、日野、宮田から逃走。
 2:どうしよう
 3:いざとなればストックを武器に戦う。

*真理の名前を聞いていません

168 ◆3BLPPrRDMQ :2008/06/23(月) 21:07:31 ID:cs0Znh1w0
【駅付近の路上/一日目夕刻】
【日野貞男@学校であった怖い話】
 [状態]:健康、殺人クラブ部長
 [装備]:特になし
 [道具]:学生鞄(中身は不明)、霊石ラジオ@零〜赤い蝶〜 
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺人クラブ部長として、街にいる者を皆殺しにする。
1:坊や(賽臥隆恭)を殺す。
2:口封じのために真理を消す。
3:宮田はまだ殺さない
4:他に殺人クラブのメンバーがいれば、合流して一緒に殺しまくる。

*原作新堂6話目より発生する「殺人クラブ」ルート、七不思議の集会直前より参加。

【駅付近の路上/一日目夕刻】
【宮田司郎@SIREN】
 [状態]:健康
 [装備]:特になし
 [道具]:懐中電灯
 [思考・状況]
 基本行動方針:状況を把握する。
1:日野と同行する。日野のすることは今は基本的に傍観。

*原作OP直前、恋人恩田美奈を殺して埋めた直後より参加。

*日野貞男、及び宮田司郎は三角頭が近づいてきていることに気がついていません。

169ゲーム好き名無しさん:2008/06/23(月) 23:13:48 ID:HC3D0jyL0
【キャラクター基本情報】

真理(GBA版によると小林真理)
出典:『かまいたちの夜』
年齢/性別:18〜19歳(大学1年生)/女性
外見:長い黒髪、容姿端麗、スタイル抜群。作中で原田○世、松た○子、石原○華に似ているといった表現がでてくる。
環境:90年代日本の女子大生。叔父が「シュプール」というペンションを営んでいる。
性格:しっかりものので頭が良い。少々気の強い一面もある。
   しかし、殺人が起きるとボーイフレンドである透に頼ったり、弱音を吐いたりといった女性らしい部分も見せる。
能力:雪国育ちのため、スキーの腕は確か。護身術のたしなみもある。
口調:一人称「わたし」 二人称「あなた」
   ハキハキとした女性らしい言い振る舞い。目上の人には「〜さん」、年の近い同性などは「〜ちゃん」と呼ぶ。
交友:かまいたちの夜の登場人物とは顔見知りで、小林夫妻は叔父叔母と姪という関係である。
   主人公の透とは友達以上恋人未満である。
   ただ、BADED後なので全員惨殺されたと真理は思っている。
備考:
かまいたちの夜では様々なルートがあり、ルートごとに登場人物の設定が変わってくるが、今回はメインシナリオであるミステリー編の設定です。
ミステリー編では透と真理の大学生カップルが真理の叔父の経営するペンション「シュプール」で奇妙なバラバラ殺人事件と遭遇することになる話。
その後の選択肢により、第2、第3と殺人が行われていき、最終的に宿泊客のほぼ全員が謎の人物に殺害される展開もあります。
BADED「彼女にストックで…」は真理が主人公である透を犯人だと思い込み、透を殺害するといった内容になっています。
170ゲーム好き名無しさん:2008/06/23(月) 23:14:57 ID:HC3D0jyL0
タイトルも未入力ですいません。
「白と赤」
でお願いします。
171ゲーム好き名無しさん:2008/07/04(金) 19:46:59 ID:3ggc9kWHO
保守
172ゲーム好き名無しさん:2008/07/29(火) 20:45:56 ID:3aEd2r9kO
保守
173ゲーム好き名無しさん:2008/08/20(水) 09:33:24 ID:wgSZeBEA0
ほしゅ
174ゲーム好き名無しさん:2008/08/29(金) 23:02:37 ID:5U74n76O0
保守
175ゲーム好き名無しさん:2008/09/27(土) 15:57:42 ID:Yh3+NBmZ0
176 ◆HGBR/JBbpQ :2008/10/14(火) 20:52:27 ID:qKe8yVft0
 投下します。
 途中で書き込めなくなった場合、
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11253/1207928554/
 の、一時投下スレ書き込みしてお期待と思います。
177彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 20:54:18 ID:qKe8yVft0
1.
 そこで足を止めたのは冷静になったからでも考えがあったからでもなく、ただ疲れたからだ。
 荒く、不規則な息を吐く。
 その息が、真っ白な霧の中に吸い込まれていく。
 
 それでも、立ち止まることで少しは昂ぶった気持ちが落ち着いてきて、数分してようやく、辺りを見回す余裕が出来た。
 ぼうとした輪郭の見えない濃霧。其処此処に建物の影が見えるが、どれも見慣れない、見たこともないもの。
 異界。
 いっそそう言ってしまう方がしっくりとくる。
 けれども ―――。
 岸井ミカは数歩脚を進め、間近に近くの建物を見る。
 錆びた鉄、古びたコンクリート、剥げかけたペンキ、光を発さなくなったネオン管。
 知っている意匠。
 グラマラスな女性のシルエットのようなそれは、ボウリングのピンだ。
 横にある三つの穴の穿たれた球形はボーリングの球。
 この建物は、かつてボーリング場だったもの。
 古く、朽ちて、打ち棄てられたボーリング場。
 ゴーストタウン。
 不意に、そう言葉が浮かんだ。
 此処はゴーストタウンだ。
 かつては人が住み、賑やかだった場所。
 ただそれだけの場所 ―――。
178彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 20:54:51 ID:qKe8yVft0
 
 大きく息を吸い、そして吐く。
 ゴーストタウンという、どことなくお話しめいた言葉が、幻想の白霧に塗り込められた彼女の意識を、柔らかく現実へと引き戻す。
 とにかくここは、ゴーストタウンだ。
 多分、いや、間違いなく日本じゃない。
 アメリカかどこか ―――。
 いつの間に、とか、何故、とか、そういうのはひとまず脇に置き、そう結論づける。
 雛城町ではない。
 現在のでも、過去のでも、多分未来のでも裏側のでもなく、ガイコクなのだ。
「タダで海外旅行できて、すごいラッキーじゃない?」
 口の中でそんな軽口を叩き、小さく笑う。そんなに面白くはないのに。
 いずれにせよ、何故? とか、どうして? は、ミカにとっては不得意分野だ。
 重要なのは、「どうするか?」
 そのことだ。
 
 大きく息を吸い、そして吐く。
 そうして考えて、やはり出てくる結論は、
「…やっぱ、センパイ頼み、っかなぁ ー―――…」
 というところに落ち着く。
「何故? どうして?」 なんて言うのは、いつもの如く逸島チサトに丸投げしてしまうのが、一番良いのだ。
 まずは電話だ。
 そう思う。
 電話機を探そう。
179彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 20:56:09 ID:qKe8yVft0
 海外通話の時って、アタマに何かつけるんだっけか、とか、そもそもゴーストタウンに生きている電話機ってあるんだろうか、とか、そういう不安は一旦退ける。
 この中に ――― ひびが入り、汚れたボーリング場の窓から、その奥の薄闇へ視線を向ける。
 この中に公衆電話か何かはないだろうか。
 この中に ―――。
 ぴちゃり。
 そのとき、中から小さく、湿った音が聞こえる。
 くちゃり。
 ぬかるみの音。ねばつく音。
 何かを食べる音。
 小さく、息をのむ。
 引っ込めたはずの不安が、またぞろ鎌首をもたげてミカの背後から様子をうかがっている。
 そろりと、その薄闇に近づく。
 窓の中の暗がりに、大きな黒い人型の影。
 緩慢な動きで、それは何かを引き寄せ、口へと運ぶ。
 赤く、赤黒く粘ついたそれが、くちゃりと音を立て飛沫を飛ばす。
 ミカはふらつき、音を立て窓にもたれ掛かる。
 そしてその人影が、やはり緩慢に振り返った。

180彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 20:57:25 ID:qKe8yVft0
2.
 気がついたら霧の中だった。
 言えることはそれだけだ。
 人の気配もなく、電話も通じない。
 インターホンを取ってもノイズだけ。
 第一、こんな建物の中まで薄白くもやがかっているのだから相当なものだ。
 この異変に、医師マイケル・カウフマンは心当たりがあった。
 教団だ。
 ダリア・ギレズビー等を信者とする、この街サイレントヒルに古くから在るキリスト教と土着宗教の融合した奇怪な教団。
 カウフマンは日曜にはミサに行くし、誰かが咳をすれば「God Bless you.」と合いの手を入れる。
 ただ、それは単にそうしていた方が周囲に対して都合がよいからと言うだけで、決して熱心なキリスト教徒ではない。
 勿論、アンチ・キリスト教徒というわけでもないし、反キリスト教的な地下教団の信者になる気もない。
 ただ単に、神に祈るよりも先にやるべき事があり、それらがあまりに多すぎるから、熱心な祈りを後回しにしているだけだ。
 そう、例えばサイレントヒルの近辺に自生する特殊な薬草を元にして、他に類を見ない麻薬を精製し、それを密かに売りさばくこと、とかだ。
 アルケミラ病院の院長として勤務する彼は、その実、どこにでもいる凡庸で平凡な医師にすぎない。
 医師として図抜けた才や技術がないことは自覚しているし、それらを得ようという情熱もない。
 医師になったのは、たまたま医学に触れる機会があり、それらを学ぶに足るだけの知性があり、そして何より、金になるからだ。
 しかし、この小さな街の院長としてただ漫然と患者を診て得る報酬では、カウフマンにとって十分ではなかった。
 自分が格別強欲だとは思っていないが、それでもこんな慎ましやかな生活をするのは不本意で、そしてだからダリア・ギレズビーとその教団とも手を組んだのだ。
 
181彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 20:58:04 ID:qKe8yVft0
 
 宗教学は彼の分野ではない。
 それでもおおまかには、ダリア・ギレズビー等の属する教団の思想は掴んでいる。
 まず、この手のカルトにありがちな、遠くない未来に起こるとされる終末論だ。
 それから、キリスト教の影響による聖母信仰。
 この世界の腐敗や邪悪を、聖母(聖女?)の生み出したが真なる神が清め、そして熱心な信者だけが新たな世界で永遠の幸福に生きる。
 負け犬宗教だ。
 カウフマンはそう思う。
 要するに彼らは、現実の自分で何かを成し遂げようとはせず、今そこに居もしない聖母や神やらを待ち続け、来もしない新世界の幸福になどに縋って死んだように生きている。
 カウフマンは自分を現実主義者だと思っているし、神秘主義に傾倒する気はあまりない。
 確かに、ダリア・ギレズビーから預かったあの少女は、教団のもつ異常な力そのものだ。
 そしてまた、彼はそれらあり得ざる力による恩恵を受けてもいる。
 それでも、カウフマンにとってそういう得体の知れないモノの存在などは些末にすぎなかった。
 カウフマンは現実主義者なのだ。
 居るか居ないか分からぬ"神"や神秘主義に縋る気はさらさら無い。
 ただ、利用出来るから利用する。それだけだ。
 力とは使うことに意味があるのであり、力に仕えて滅びの道を行くなど、本末転倒だ。
 得るべきは来世や新世界の幸福ではなく金であるべきだし、頼るべきは聖母や神ではなく自分自身だ。
 医師としての才に格別なものはなくとも、処世術や経営手腕にならばそれなりの自負はある。
 そして表向きとは別の、麻薬密売という裏家業も、ボロを出さずにやってのけるだけの手腕がある。
 だから、来るべき新世界など、迷惑千万なのだ。
182彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:01:53 ID:qKe8yVft0

 まとめよう。
 マイケル・カウフマンはアルケミラ病院の院長であり、医師であり、現実主義者だ。
 ダリア・ギレズビー等の居る教団と麻薬密売の利便のため通じているが、自分自身が神秘主義に傾倒する気はない。
 そして教団には、確かに忌まわしい ――― 例えば、カウフマンの麻薬密売に気がついた捜査官を変死させるような ――― 力があるのだ。
 
 だからこの異変が、教団の何らかの力により引き起こされたのだと、即座にそう「現実的に」判断をした。
 カウフマンは教団と協力している。持ちつ持たれつだ。
 彼らを軽蔑はしているが、侮っては居ない。
 この異変にも警戒、用心はしているが、特別パニックに陥ることもない。
 ダリア・ギレズビー…或いは他の教団の誰かと接触を図り、確認をすることが肝要だと考える。
 何より、カウフマンには切り札がある。
 彼らの力がどれほどの物かの正確なことは分からないが、それが真実であればあるだけ、この切り札にも意味がある。
 傍らに持つアタッシュケース ――― 高級な特別あつらえで、耐衝撃性能は抜群だ ――― に、それは隠されている。
 だが。
 それは、今使うべきものなのかどうか?
 
 シャキン。

 再び音が聞こえた。
 
 机の下にうずくまり、息を潜めたカウフマンは混乱した頭でそう自問する。
183彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:03:50 ID:qKe8yVft0
 
 シャキン。

 音が近づく。

 アレは…。
 あの奇怪な化け物が、教団の呼び出した神とやらなのか?
 
 シャキン。

 この赤い液体はあいつに効くのか?
 
 ジャギン。

 音が、入ってくる。

 ジャギン。

 音が ―――。

184彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:05:22 ID:qKe8yVft0
3.
 腹立たしさと情けなさと、あとはあきれたような感情がそれぞれ混ざり合っている。
 一つは自分自身に対してだ。
 もう一つは、目の前にいるこの太った男に対してだ。
 それでも、それらのもやもやした感情の全てがこの男のせいだと考える。
 ミカの心の処方では、それが妥当なやり方だ。
 けれども今回は、それをそのままぶつけることはしなかった。
 流石のミカでも、この状況でむやみやたらに諍いを起こしたいとは思わない。
 とげとげしさを隠しもしないが、気持ちを落ち着けて、このたるんだ ――― 腹も、顔も、目つきもたるんだ ――― 男に確認をする。

「つまり、エディーはココがドコなのか知らないってコト?」
「ああ、そうだよ。特に目的もなく走らせてきたからなぁ…。
 別に、どこでも良かったし」
 
 名を、エディー・ドンブラウスキーというらしい。
 この街の人間ではない。本人曰く、レンタカーを借りてドライブをしていて、迷った挙げ句にガス欠になり、この街に迷い込んだ…という事らしいが、どうにもハッキリしない。
 ミカは、何か曖昧だとなと感じるが、何故なのかと言うところまでは考えない。
 ただ、数度のやりとりでミカが確信したのは、一つにはまず、この男は基本的に無害な男だと言うことと、そしてあらゆる意味で頼りにならない男だ、という事だ。
 一言で言えば、使えない。
 見ての通りに太鼓腹の白人男で、言っていることも曖昧。知性や教養というものとは無縁に見える。
185彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:07:05 ID:qKe8yVft0
 その上、かなり意地汚い。
 何せ、「腹が減っていて」「たまたま見つけたから」という理由で、こんな廃屋にあったピザを食べる位なのだから。
 たとえ冷凍食品だろうと、まともな神経じゃない、と、ミカは思う。

 答えつつ、エディーは口元に付いた赤いケチャップを指でぬぐってはぴちゃぴちゃと舐め取っている。
 ミカのエディーに対する印象はさらに最悪になる。
 ミカならずとも、年頃の少女ならほとんどが嫌悪するだろう。

 ミカは早速と、エディーというのは「そういう男」 なのだと、結論づけた。
 つまるところ、自分の人脈に入れる必要はない、と。
 それでも、ミカにはまだいくつか確認したいことがあった。
 そのうち二つは既に確認している。
 一つが、先ほど聞いた、「此処が何処か」だが、それは早くも期待はずれの結果になった。
 そしてもう一つは、言葉の問題だ。
 
 黒革の手帳に書かれていた走り書き、メモ。
 明らかに英語であるそれが読めたと言うことの違和感を、ミカは忘れていない。
 それが、文字だけではなく会話ではどうなのか、という事が、ミカには気になった。
 普段よりもずいぶんと注意深くなっていると言えるが、今までの経験で異変慣れしていて、そしてそれでも尚付きまとう、「普段の異変とは何かが違う」という本能的な違和感が、多分に影響しているかも知れない。

 エディーとの会話がなんなく通じたことで、ミカはそれらを確認した。
 何故かは解らないが、今の自分は英語が理解できている、という事に。
 「理解できている」というのは違うのかも知れない。
186彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:09:32 ID:qKe8yVft0
 伝わる、という方が適切なのかもしれない。
 ただ、ミカはそのあたり細かいのニュアンスの差は気にしない。
 そのままに事実として、そのことを受け入れたのだ。
 
 エディーの方は、それを異変として受け入れているのか居ないのか、そもそも異変自体に気がついているのかがミカには読めない。
 気づいていない、のだと思ってはいる。
 ミカとて、メモの事さえなければ、あれを読まずにエディーと会話をしていれば、単純に「日本語の巧い外人さんだ」としか思わなかったかも知れない。
 もとより、細かいことは気にしない性格。まずは気づかなかっただろう。
 ――― 逸島センパイなら、すぐ気づいたかな?
 ふと、あの小柄で控えめなようでいて、それなのにやたらに芯の強い先輩のことが頭を過ぎる。
 そして、もう一つ確認しなければいけないことがあったと、意識を引き戻した。
 
「あのさ。ここ、電話在る?」
「あ…? んん ―――」
 考えているのかいないのか、胡乱なくぐもった反応を返しつつ顔を少し上げるエディー。
「あそこ、かな…?」
 顎をしゃくって奥のカウンターテーブルを示すのを見て、ミカは小走りに駆け寄る。
 が、そこにあった古ぼけ汚れた電話機は、一目で使えないことが分かる。
 コードが切れているのだ。
「ちょっと何これ、コード切れているじゃん!」
 ミカが思わず声に出すと、背後からエディーの声が返ってくる。
187彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:10:58 ID:qKe8yVft0
「そんなの、知らないよォ。
 俺はちょっと見かけただけで、使えるなんて言ってないし…」
 語尾がくぐもって小さく消えるその調子に、ミカは苛立ちを刺激される。
「使えない電話、とか、どーゆー理由で探してると思うわけ? 意味分かんないんですけど?」
「お、俺のせいじゃないだろ。俺だって、ここには来たばっかりで、よく分からないし…」
「ピザ見つけるのは得意です、って? スッゴイ才能。ゼンッゼン、羨ましくなんか無いけど」
 乗り出すような、詰め寄るような姿勢になるミカと、反して怯えて後じさるような格好のエディ。
 見るからに、いじめっ子といじめられっ子の態が丸出しだ。
 その状況に、さらなる登場人物が現れ、場面を展開させる。
「君たち…」
 入り口から、濃霧を背負い声をかける壮年男性。
「取り込み中のところ済まないが、何か飲み物は無いかね?」
 息が荒く、些か落ち着きがない。
 まるで、何かから逃れてきたような様子だ。
 ミカは男を見、それからエディーを見る。
 エディーが顎をしゃくって、奥の自販機を示すと、男は軽く謝意を述べてそちらへと走り寄る。
 手には、黒革のアタッシュケースを持っていた。
 
 こうして、サイレントヒルの地にて、岸井ミカ、エディー・ドンブラウスキー、そしてマイケル・カウフマンの3人が、時と場所を越えて集うことになった。

188彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:12:05 ID:qKe8yVft0
4.
 静寂と薄闇に包まれた室内で、青白い影がゆっくりと起きあがる。
 ぬめるような白い肌。碧く澄んだ瞳に、ぐみのようにふっくらと赤い唇。
 さらりとした金髪は短く刈り揃えられ、しなやかで華奢な肉体を包む紺色のジャケットは、イギリスの名門子息が通う学校の制服を彷彿とさせる。
 まだ年端も行かぬ少年のようだ。
 それでいて、見る者をゾッとさせるような、蠱惑的ともいえる美貌をもっている。

 彼は戸惑っていた。
 その戸惑いが、整った顔立ちの中に皺となって現れ、完璧ともいえる容貌に暗い影を落としている。
 何が彼を悩ませているのか。
 この霧、この場所、この怪異、或いは、この禍々しさ…。
 どれも違う。
 そのどれも、彼自身を惑わし困惑させるにいたるものではない。
 彼を惑わしているのは、彼自身。
 彼自身に起きた変化そのものだった。
 
 立ち上がった彼は、室内を見回す。
 既に先ほどの男は居ない。
 逃げた、のだろう。
 机の上にあったと思われる書類やケースなどが散乱している。
 そして、上等な絨毯の上には、赤黒い染みが広がっている。

 あのとき、浴びせられた液体。
189彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:13:22 ID:qKe8yVft0
 血のような、上質のワインのような、赤く済んだ液体。
 あの液体を浴びせられたときの、焼けるような痛み、苦痛。
 よろめき、くずおれ、そして男 ――― 獲物 ――― 逃してしまったこと。
 軽く手足を動かし、様子を確かめる。
 明らかに、力が減っている。
 彼を彼たらしめる力。
 魔力、を。
 
 少年は考える。
 あの液体は、魔力を奪うもの。
 それは間違いない。
 どれだけの効果があるのかは分からないが、あれは "此処にあってはいけない" ものだ。
 ならば、滅せよう。
 あの液体を持つあの男も、それらの存在を知った者も、知る者も ――― 何も知らぬ者も。
 だが、そのための力が今は不足している。
 今一度、彼は人の中に紛れ、機会をうかがおうと思う。
 機会を待ち、魔力を得て、彼本来の力、彼本来の姿を現し、存分になすべき事をなそう。
 誰かに会ったときは、あの名前を使えばいい。
 記憶を無くした哀れな少年、エドワード。
 バロウズ家の忌まわしき交信により生まれた異形。悪魔の子、シザーマンとして力を振るうそのときまで。
 
 少年は窓の外へと目を向ける。
 深い霧に閉ざされた街の中で、多くの哀れなモノ、多くの忌まわしきモノが蠢くのを感じながら。
 彼らは時と場所を越えて、世界の狭間の此処に集う。
190彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:14:43 ID:qKe8yVft0
【ボウリング場跡/一日目夕刻】
【岸井ミカ@トワイライトシンドローム】
 [状態]:健康、軽い苛立ち
 [装備]:特になし
 [道具]:黄色いディバッグ、筆記用具、小物ポーチ、三種の神器(カメラ、ポケベル、MDウォークマン)
 黒革の手帳、書き込みのある観光地図、中身の分からない包み、オカルト雑誌『月刊Mo』最新号
 [思考・状況]
 基本行動方針:センパイ達に連絡を取る。
 1:電話が必要だ。
 2:このデブ(エディ)はムカツク。
 3:おじさん (カウフマン)は誰? 普通の人っぽいけど…。

【ボウリング場跡/一日目夕刻】
【エディ・ドンブラウスキー@サイレントヒル2】
 [状態]:まだ小腹が空いている。
 [装備]:特になし。
 [道具]:ピザの残り。
 [思考・状況] この子供は何をそんなに怒っているんだろう。嫌だなぁ…。
 基本行動方針:取りあえずこの場をやり過ごす。
 1:自分が人を殺してきたこと (※1)は誰にも知られないようにしよう。
 2:子供は面倒くさい。
 3:何か食べ物が欲しい。
(※1)設定によると実際には怪我をさせただけで殺していない可能性があるが、本人は殺したと思いこんでいる。
191彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/14(火) 21:16:36 ID:qKe8yVft0
【ボウリング場跡/一日目夕刻】
【マイケル・カウフマン@サイレントヒル】
 [状態]:疲労、喉の渇き、軽いパニック。
 [装備]:特になし。
 [道具]:アタッシュケース、赤い液体 (アグラオフォティス)の入った小瓶×3
 [思考・状況] 教団の力で異変が起きている。ここを脱出したい。
 基本行動方針:生き残る。教団が神を出現させようとしているならば、赤い液体を使い阻止する。
 そのためには何でもするが、出来れば自分の手は汚したくない。
 1:こいつら (エディとミカ)を利用できないか。
 2:赤い液体のことは誰にも話さない。
 3:出来れば、病院の院長室に戻って赤い液体のストックを増やしておきたい。
 4:教団関係者から状況確認が出来ないだろうか?


【アルケミラ病院院長室/一日目夕刻】
【エドワード@クロックタワー2】
 [状態]:健康。魔力が減っている。
 [装備]:特になし。
 [道具]:特になし。
 [思考・状況] 皆殺し。赤い液体の始末。
 基本行動方針: 人の中に紛れて機会をうかがう。
 1:ここから出て、人を探す。
 2:か弱い少年として振る舞う。
192彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/15(水) 01:06:09 ID:y8G/NRBy0
※赤い液体(アグラオフォテス)
 サイレントヒル、サイレントヒル3に登場するキーアイテム。
 魔力、魔物に対して退魔の効果を発揮する。
 この世ならざるモノに対してのみのため、屍人、サイレントヒルのクリーチャー等には効くと思われるが、バイオのゾンビ等には効かないと思われる。
 具体的にどの相手にどのくらい効くかは不明。
 サイレントヒルの中では、人間にとりついた魔物を完全に無力化したり、ラスボスである"神"の誕生を、不完全な状態にする等の効果があった。

193彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/15(水) 01:06:40 ID:y8G/NRBy0
【キャラクター基本情報】

 エディー・ドンブラウスキー 
出典:サイレントヒル2
年齢/性別:23歳/男性
外見:トラッカー帽を被った、金髪の太った青年。
環境:1994年時点、ガソリンスタンドでアルバイトをしていたが、職場でも肥満などをネタにからかわれていた様子。
性格:普段はおっとりとして物腰も柔らかいが、臆病で強気に出られると卑屈になる。
 肥満などの劣等感を抱え込んでいる為もあり、逆上すると暴走するタイプ。
能力:ごく一般的か、それより些か劣る青年男性。
口調:一人称は俺。やや間延びした感じ。
交友:ゲーム内ではジェイムス、ローラ等と出会うが、他は特になし。
備考:サイレントヒル2、最初のジェイムスとの出会いの後より。
 サイレントヒルに来る直前、エディは以前から彼をバカにしていた隣人とその飼い犬に向け銃弾を発射し、傷つけ、或いは殺害している。
 その後混乱から逃走し、気がつくとサイレントヒルに迷い込んでいた。
 登場時ではひとまず落ち着きを取り戻しており、街の異変には気がついていない。
 尚、ゲーム内では後半にて、主人公ジェイムスと戦う中ボスとなるが、リボルバーを撃ちまくりかなりの耐久度を持つエディは強敵である。
 とはいえこれは、特殊な条件が重なった結果と見なし、本ロワではそのまま当てはめる必要はないと思われる。
194彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/15(水) 01:07:51 ID:y8G/NRBy0

 マイケル・カウフマン
出典:サイレントヒル
年齢/性別:壮年男性
外見:黒髪の白人男性。
環境:1982年時点、サイレントヒル、アルケミラ病院の院長であり、教団と裏で癒着している。
性格:尊大で姑息、利己的。用心深く、常に自己保身を念頭に置いている。
能力:80年代初頭において平均的な医師としての知識と技術。
口調:丁寧だが些か尊大さが感じられる。
交友:ゲーム内、ダリア・ギレズビーと密約の元の協力関係。アレッサ・ギレズビーを密かに治療。
 看護婦、リサ・ガーランドを強制的にその治療に当たらせるが、事件の異常さに耐えられなくなり反発し始めたリサと揉め、殺害してしまう。
 他、数人の街の住人と交流。
備考:ゲーム開始直後、リサ殺害及び異変開始時点であり、サイレントヒルが異界化したときでもある。
 主人公ハリーとは出会っていない。
 彼は教団 (ダリア・ギレズビー) と結びついており、ホワイトクロジェアと言う特殊な麻薬の原料を供給して貰い、それらを精製し密売することで不当な利益を得ている。
 またその麻薬密売ルートを守るため、アレッサの持つ魔力により捜査官等を殺して貰うなどの形でも教団から恩恵を得ているが、彼らの教義には関心がない。
 また、教団の力が自分に害を与えることになった場合の用心として、独自に調べた魔力を打ち消す効果のある赤い液体『アグラオフォテス』を用意し常備している。
 開始時点では小分けにした小瓶入りの物を4本持ち、一本をシザーマンに対して使用。委員長室の金庫にはストックがある。
195彼らは時と場所を越えて此処に集う:2008/10/15(水) 01:08:56 ID:y8G/NRBy0

 エドワード(シザーマン) 
出典:クロックタワー2
年齢/性別:10歳程度/男性
外見:金髪碧眼で、透き通った白い肌と美貌を持つ10歳程度の少年。
 シザーマンと化したときは、せむしの醜い矮人であり、黒い服を着て巨大な鋏を両手に持っている。
環境:エドワードは仮の名で、巨大な鋏で少女達を切り裂いた「シザーマン事件」の生き残りとして、施設で生活をしていた。
 事件以前の記憶が無く、出自その他は不明とされているが、実際はシザーマンの仮の姿である。
性格:機をうかがい、人に紛れて潜む。エドワードの姿の時は、大人しく聡明な少年を演じている。
 シザーマンのときは人としてのコミニュケーションをしないので、内心どう考えているかなど不明だが、知能が低くなっているわけではない様子。
能力:半不死。ほとんどの物理衝撃による身体的損傷を魔力にて無効化する。(倒れたり押されたりはする)
 シザーマンとして、巨大な鋏を持ち人体を両断出来るほどの力を持つが、動きは速くない。
口調:エドワードの時は、大人しく理性的。一人称は「僕」など。
交友:クロックタワー2の主人公ジェニファー、ヘレンを初めとした主要登場人物と面識がある。
備考:クロックタワー2エンディング後、異次元の裂け目から追放された後に、この地で覚醒した。
 シザーマンの正体は、15世紀から続くイギリスの辺境貴族の家系、バロウズ家に伝わる邪神信仰により生まれた"偉大なる父の使徒"と呼ばれ、死と恐怖をもたらす邪神の使いであるらしい。
 自らの世界とは異なる場にいるため、ゲーム本編より能力的には劣っている可能性がある。
 又、マイケル・カウフマンにより浴びせられた「赤い液体」の効果により、魔力を多く失っている。
196 ◆HGBR/JBbpQ :2008/10/15(水) 01:09:51 ID:y8G/NRBy0
 以上で御座います。
197ゲーム好き名無しさん:2008/10/28(火) 21:55:09 ID:uLI1jEr70
>>196
かなり遅れたが乙
198ゲーム好き名無しさん:2008/11/15(土) 02:21:43 ID:NkPDQpXC0
まさかエディーが来るとはw
やはり静岡が舞台なだけあって静岡キャラが多いな。
199 ◆HGBR/JBbpQ
 僕の場合、静岡キャラが多くなってしまう一因は、実のところ改めて描き始めたら、意外と
書けるくらいには把握できているゲーム、キャラクターが静岡ばかりになってしまうと言うのが
ありまして…。

 それと今更ですが変更点。
 >>190 エディの装備を、
 [装備]:ハンドガン (4/10)。
 とします。
 これは原作で 「来る直前に重で隣人とそのペットを撃っている」 「ジェイムスと戦うときにハンドガンを使用する」
展から、サイレントヒルに来た時点で既に保っている方が自然だと思えるためです。

 
 あと、さらに今更ながら、このスレにwikiへのリンクが張ってなかったので、改めて張っておきます。

ホラーゲームバトルロワイアル@wiki
http://www9.atwiki.jp/horrorgamerowa/