「うわ、青木君!最悪!!」
山田ヒサシが声を上げた。
青木は黙って、私のプレゼントを見ていたが、徐に首を持ち−−−引き千切った。
「ぎゃはははは!!」−−クラスのみんなが笑った。
そのまま、黙って青木は人形をゴミ箱に投げ入れた。
岩重先生はその行為を全く無視して、
「さあ、これでクリスマス会は終了よ」
と、手を叩きながら言った。
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クリスマスイブだからか、今日のバイトは忙しかった。
これから、彼女に逢いにいくため、ガソリンを満タンにしようとする客が後を絶たない。
みんな心なしかニコニコしていた。
「平野さん。今夜は予定あるんすか?」
バイトが終れば彼女に逢えるのであろう石山は、ニヤニヤしながら問うた。
平野に予定が無いことを知っていて聞いているのだ。
「...ねえよ。」
平野はぶっきらぼうに答えた。
「そうっすか。それはご愁傷様です。」
含み笑いをしながら、石山は持ち場についた。
そんな一言が引き金で、今日のバイトの雰囲気は最悪になった。
14:15
やっと一段落して休憩が取れるようになった。
休憩室で何気にTVを見ていたら、音楽番組を放送していた。
出演アーティストは、最近売り出し中の「(empty)」というバンドらしかった。
(empty)はここ名古屋の出身らしい。
趣味でギターをやっている石山はこのバンドが大のお気に入りらしく、仕事中も口笛を吹いていた。
「あっ(empty)じゃん」
コンビニおにぎりをほお張りながら、私の隣に座りボリュームを上げた。
「■■。知ってるか?(empty)」
知らないと答えると「ほんとダサいやつだな。お前は」と笑われた。
モニタの中では、ボーカルのYasuhisaがインタビュアーの女性の質問に答えていた。
「(empty)の3rdシングル「復讐」がミリオン達成おめでとうございます」
「...ありがとう」
黒いスーツに身を包んだYasuhisaがぶっきらぼうに答えた。
「あ−Yasuはほんとにかっこいいぜ!」
10秒でおにぎりを食べ終えた石山は、御茶を飲みながらモニタに釘付けになっている。
「今回の曲もいいけど、前回のバラードがよかったんだ。オレの彼女も大ファンでさぁー」
聞いていないことをべらべら話し始めた。