夏「そうだ。貴様だ。少し止まってほしい。」
酒でビショ濡れの服に砂利や塵などを付いていながらも、気にする素振りを見せず淡々と喋る夏季。
しかし、何時もと比べると気持ち、熱意が籠もっている様子だ。
そんな夏の頭に手を乗せ、無理矢理、頭を下げさせる春菜。
春「ごめんなさい!この変態よっぱらいは、可愛い子を見かけたら直ぐに声かけちゃうの……
我が弟ながら恥ずかしいわ……本当にごめんなさいね。ほら!アンタもあやまんな。」
春菜の人物像を知っている人なら吐き気をもよおす程……いや性格を知らんものでも、氷が背中に触れたような怖気をおぼえるだろう。
それ程の破壊力をもった、無理バレバレなピンクでハスキーな艶っぽい声色での謝罪
その気持ち悪さをも兼ね揃えた『THE-アルティメット謝罪』の戦慄に場は凍り付く。
しかし、そんな殺人技にも利点はある。その気持ち悪さで秋彦は再び覚醒したのだ。
これは『どんなに役立たずなものでも役に立つときはある!必ずぅ!』と言う筆者からの教訓でもある。
秋「…どうしたんだ?春姉。キモイ声なんかだして……」
ポリポリと後頭部を掻き、辺りを見回しながら大きなあくびを一発。
ガラ受けの際、春菜がポリスメンによくやる声色だ。よって秋彦には耐性がある。
春菜は目覚めの挨拶代わりに、靴を飛ばす。
一直線、矢のように秋彦に襲い掛かる春菜の靴は右膝に命中!
ピキッと体中に鈍く響く痛みを感じる秋。
命中したのを確認した、靴をも凶器に変えてしまう女は、何事もなかったように
春「夏がね……ナンパしだしたの!あの子を」
夏「違う…あいつは旧ゆ……」
春「言い訳してるんじゃあねーわよッ!」
何かを言い掛ける夏だったが、春菜に石畳に叩きつけられ、口を押さえる。舌を噛んだようだ。
秋彦は右膝を軽く擦りながら、春菜の指した方向のゴースをマジマジと眺める。
秋「へ〜朴念仁夏兄がナンパねぇ〜。夏兄、趣味いいじゃん!
やっぱ夏兄も『こういう年上』好きなんだ!」
夏兄も男なんだ!と軽く関心しながら、自分の胸を大きく突き出し
仮想のボインをいやらしく強調するようにジェスチャーしてニヤニヤと夏季をおちょくる秋彦。