締符「東方シリーズ総合スレッド 2890/2890」
遠い昔。まだ私がただの妖怪に過ぎなかったあの頃、一人の友人が居た。
その友人に、こう相談した事があった。
「私、神になろうと思うの」
我ながら突拍子も無い事を言ったものだ。
だがその友人は、私の予想を遥かに越えて頭のネジが飛んでいた。
「良いんじゃないかしら? 貴女にならできるわよ」
そう言って、真面目に切り返してきたのだ。
友人は、入り口はどこが良いとか、どれ位の広さまでなら無理がないとか、私よりも真剣に考えてくれた。
そして、その友人の助けもあり、私だけの世界の土台が出来上がった。
後は生命を生み出すだけとなった時、友人はこう言った。
「さて…、私はここまでね。後は貴女が一人でやるのよ」
友人の言った意味が判らず、呆然と見つめ返す。
私は当然友人も来てくれるものだと思っていたのだ。
「なんて顔してるのよ。創造神が二人も居たら大変でしょうに」
「で、でも…」
「ほら…私を困らせないで。貴女の夢が叶うんでしょう? さあ、さっさと行きなさい」
そう言って友人は私の背中をそっと押し出す。
私の身体はそのまま魔界へと押し込まれる。
一緒に来て欲しい…。そう言う想いをもう一度込めて、友人へと手を伸ばす。
だが友人は首を左右に振った。
「入り口は、私が閉じておくから」
その言葉と共に入り口が閉ざされてゆく。
「さようなら。魔界の神――」
思えば似た者同士だったのかもしれない。
出会った時から、妙に気が合った。
本当に永い時間、共に過ごして来た。
だから私は、そんな友人に感謝を込めて別れの言葉を紡いだ。
「さようなら…。境界の女王――」