騎士ディリータ
「…こんなところにいたのか、皆が捜していたぞ。
騎士ディリータ
「なんだ、元気がないな。
「おっと、こんな口の利き方は失礼なのかな。
「女王陛下におわしましては御機嫌も麗しく存じ……
女王オヴェリア
「やめてッ!!
女王オヴェリア
「……お願い、やめて。
騎士ディリータ
「…悪かったよ。すまない。
女王オヴェリア
「…貴方たちは私をどうしようというの?
「私はオヴェリアじゃないのよ。貴方たちにとって何の価値もないはず。
「そう…、私には生きる価値なんてない……。
(オヴェリアが顔を伏せる。ディリータは後ろを向く)
騎士ディリータ
「そうだな、たしかにおまえはオヴェリアじゃない。
「それどころか、本当の名前すらわからない。貴族なのか平民なのかも不明だ…。
女王オヴェリア
「…私の生きてきたこれまでの時間はいったい何だったの?
「王女の身代わりとして育てられ生きてきた……。
「ふふふ…、おかしなものね。
「王女なのに王都から離れた修道院で一生ひっそりと暮らさなければならないなんて…、
「どうして、私だけがそんな風に生きなければならないんだろうって、ずっと考えていた…。
「でも、私一人が我慢することで畏国の平和が続くならそれでもいいって思ってたわ。
「あの悲しみ、あの寂しさ…、いったい何だったの?
騎士ディリータ
「おまえはオレと同じだ…。
「偽りの身分を与えられ生きてきた哀れな人間だ…。
「いつも誰かに利用され続ける。
「努力すれば報われる? そんなのウソだ。
「努力しないでも、それに近いヤツだけが報われるのが世の中の構造だ。
「多くの人間は与えられた役割を演ずるしかない…。
「…もっとも、大半の人間は演じていることすら気付いていないけどな。
「オレはそんなのまっぴらゴメンだ。オレは利用されない。利用する側にまわってやる!
「オレを利用してきたヤツらにそれ相応の償いをさせてやる!
女王オヴェリア
「貴方は何をしようというの?
騎士ディリータ
「オレを信用しろ、オヴェリア。
「おまえに相応しい王国を用意してやる! オレがつくってやる!
「おまえの人生が光り輝くものになるようオレが導いてやろう!
(ディリータがオヴェリアのもとに歩み寄り、肩に手を置く)
騎士ディリータ
「だから…、そんな風に泣くのはよせ。
女王オヴェリア
「信じていいの……?
騎士ディリータ
「オレはおまえを裏切ったりはしない。
「死んだ妹…、ティータに誓おう…。
「だから、もう、泣くな…。
(オヴェリアがしがみつく。それをディリータが抱きしめる)