RPG Chara Battle ROYALE U
ちんこスレにさよおならブーッおならくさいよおならくさいよおなら!
コレットのM字開脚まーじさいこーまじさいこー
葛葉キョウジ(No64)を知る者に彼の特徴を問わば、
ほとんどの場合どちらかの答えが返ってくる。
有能。
もしくは、非情。
どちらの答えも根は同じ。
徹底してリアリズムから生まれる彼一流の怜悧な判断力を、
依頼者の立場で見たか、被害者の立場で味わったか。
その葛葉キョウジが持つ、
どんな状況にも左右されず、
どんな感情に揺さぶられない頭脳を以ってして、
導き出された結論はこうだった。
―――かみの打倒は不可能だ。
「そろそろ交代してくれねえか?」
ジェイナス(No70)がかけてきた言葉が、
配給食の空箱を膝に乗せたまま思考の淵に沈んでいたキョウジを
現実に引き戻した。
「ああ、済まねぇ。代わるぜ」
キョウジは軽く頭を下げると空箱を海へと放り投げ、立ち上がる。
彼らが今いるのは南下を続けた先の見晴らしのよい入り江。
接近者の存在を確認しやすい地形であることを確認した2人は、
ここで休憩と食事を取ることに定めた。
一人が哨戒し、一人が食事を取る。
非情の世界を生き抜いてきた者同士、生存への努力に怠りは無かった。
キョウジが立ち上がり、ジェイナスが座り込む。
暫くのち。
こいつはマズいぜ、だの、お、こりゃいけるぜ、だの
食事中も黙らぬジェイナスを横目で盗み見て、
彼の警戒心が緩んできているのを確認したキョウジは、
ずっと試しておきたかったことを素早く実行に移す。
それは、乗り移り。
自らの魂を相手の体に潜り込ませて主導権を奪い取る秘術。
このキョウジの奥の手は、相手の精神に潜り込む隙が無ければ
成功しないものだ。
なかなか気の緩まないジェイナスが食事を前に見せたこの油断。
キョウジが見逃すはずが無かった。
キョウジはまず始めに、魂が抜けたのち体が倒れ込まないよう、
重心を低く足を広めに構えて緊張を解す。
次いで幽体離脱。
キョウジの霊魂はすばやくジェイナスの体に重なるべく
飛び掛り―――
その勢いのまま弾き返された。
『気付かれたか!?』
キョウジはジェイナスにこの企みがバレたが故に
魂の抵抗によって弾き飛ばされたのだと冷や汗を流した。
が、見やったジェイナスは暢気なもので、
あいかわらずの軽口を叩きながら食事を摂り続けている。
幽体の存在にはまるで気付いた様子が無い。
キョウジはほっと胸を撫で下ろす。
が、それも束の間。
彼はジェイナスの烙印が赤く禍々しい光を放っているのを見た。
それは神の刻印がジェイナスの霊脈を塞ぎ、
キョウジの幽体進入をブロックしていたことの証だった。
そして気付く。気付いた瞬間に心臓が踊る。
刻印が刻まれているのはジェイナスばかりではない。
『―――俺の体は!?』
キョウジは最悪の可能性に思い至り、彼らしくない動揺を見せた。
自分の体に戻れなければ、ここでゲームオーバとなってしまう。
なんという愚かな失策!!
なんという間抜けた結末!!
彼はこみ上げる恐慌を深呼吸でなんとか押さえつけ、
慎重に、万に一つの手違いも無いよう、自分の体に幽体を重ねる。
果たして。
キョウジの体は、キョウジの幽体をすんなり受け止めた。
「はあ、はあ、はあ……」
「どうした!?」
体に戻ったとたんくずおれたキョウジに驚いて
ジェイナスが体勢を整える。
「いや、足元が少しふらついただけだ。 問題ないぜ」
「おいおい頼むぜキョウジさんよ」
肩を竦めて食事に戻るジェイナス。
哨戒に戻ったキョウジの心に絶望感が芽吹く。
乗り移りが可能ならば多彩な戦術を取ることができた。
他人の体を使って殺戮に勤しむもよし。
他人の体を使ってルールの穴に挑んでみるもよし。
例えこの体が朽ち果てたとしても、この魂さえ残っていれば、
他人の体でいくらでも敗者復活戦を挑むことが出来る。
それもこれも全ての可能性が、神の烙印ひとつで封じられた。
烙印ひとつで。
『―――烙印?』
キョウジは頭の隅に引っかかった単語を注意深く咀嚼する。
自分は今、確かに何かをひらめきかけた。
この灯火を消してはならない。
思考よ尖れ。錐の先の如く。
烙印。乗り移り。幽体。魂
肉体。魂の入れ物。宿り木。傀儡。魂が宿るものは肉体のみに非ず。
形が似るものに魂は宿る。人の形。人形。つまり。
―――ドリー・カドモンに烙印は無い。
キョウジは新たな可能性に思いを馳せる。
ドリー・カドモン。
土に姿を移し、魔に魂を受ける神秘のヒトガタ。
この土人形に魂を吹き込める術者がいるならば。
そこに俺の魂を移し変えることが出来るのならば。
烙印が刻まれていないこの素体にこそ、
最良の答えに通じる道があるのではないか?
まだ、チャンスはある。
頭は冷えている。
手は打てる。
探らねばならない。
この人形が持つ可能性を。
絶望の芽を思考の重量で押しつぶしたキョウジの背後で、
この数分間に起きた事を何も知らぬままのジェイナスが
食事と休憩の終了を告げた。
【葛葉キョウジ@デビルサマナー
所持品:ドリー・カドモン@デビルサマナー
基本行動方針:脱出or勝ち残り、かみとの戦いは避ける
第一行動方針:調査と観察
第二行動方針:ドリーカドモンに魂を移せる術者を探す 】
【ジェイナス@ワイルドアームズ3
所持品:サモナイト石(鬼)@サモンナイト、AK47(弾丸1発使用)
基本行動方針:優勝してかみも殺す
第一行動方針:目的を悟られずキョウジを利用する 】
現在地:E-04 見通しの良い入り江
「カボちゃんというものに、魂はあるのでしょうか?」
ティオ(No67)は魔法屋跡の扉を几帳面に閉めながら、
ふと思い立った疑問をマスターのデネブ(No05)に問いかけた。
「んー。難しい質問よねぇ。
命は生まれるけど、魂は宿らないってトコかしら?
素体が普通のカボチャだしねー。
その辺が限界よ」
「では、素体が普通のカボチャでなければ?」
「魂を生み出すっていうコトは、
あたしの知性と美貌をもってしても無理だわ。
でも、それ用に特化した素体があれば、
魂を素体に移し変えることくらいなら可能かもね」
ティオには術式に美貌がどう関係するのかまるでわからなかったが、
マスターが言い切るのならばきっとそうなのだろう、と納得した。
【デネブ@タクティクスオウガ
所持品:ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ、夜叉姫の血
基本行動方針:パンプキンヘッドの作成 】
第一行動方針:G03の農家に向かう
【ティオ@グランディアU
所持品:湧水の宝珠@サガフロンティア2
基本行動方針:マスター(デネブ)に協力 】
現在地:H-03 魔法屋前
>>葛葉キョウジは諦めない◆IGqcGkL9sY
感想スレへカモンヌ。
後、もう一度ルールを良く読んできてくだせ。
ルールに則った行動から外れていたことを理由に
>267-272 葛葉キョウジは諦めないの投下を無効と致します。
関係の皆様、読んでくださった方々にはご迷惑をおかけ致しまして
申し訳ございませんでした。
>>274 だから感想スレこいって。
問題点は大まかに2つ。
1:前作とスタンスが噛み合ってない。
キャラが実際にそう言う行動を取るかどうかの観点ではなくて、下りも原因もなしで突然結論出してるのが問題。
色々とできうる限りの調査した上でその結論だとかなら誰も文句はなかったと思う。
2:投下ルールを守ってない。
作品投稿の際のお約束を見てきて欲しい。
ある意味、ちゃんとルールを全部読んで覚えているかのテスト項目でもあるのだから。
憑依に関しては失敗してるし、今後、死んでるのに憑依とかは止めて欲しいってのは先に釘刺ししただけであんたの作品内では問題なし。
続きは感想スレで。
葛葉キョウジ(No64)を知る者に彼の特徴を問わば、
ほとんどの場合どちらかの答えが返ってくる。
有能、もしくは、非情。
どちらの答えも根は同じ。
徹底したリアリズムから生まれる彼一流の怜悧な判断力を、
依頼者の立場で見たか、被害者の立場で味わったか。
その葛葉キョウジが持つ、
どんな状況にも左右されず、
どんな感情に揺さぶられない頭脳を以ってして、
導き出された結論はこうだった。
―――かみの打倒は不可能だ。
キョウジの調べるべきは脱出への道標。
出来うれば脱出口そのものが見つかるのが望ましい。
この旨を同行者ジェイナス(No70)に伝えた折
キョウジの目には彼の表情が一瞬曇ったように映ったが、
その後の彼はあれこれ軽口を叩きながらも、腹の内はともかく
表立っては反対することなくキョウジの探索に協力している。
だが、それから数時間―――
C-04地点及びE-04地点の北側約半分の捜索は無駄足に終わっていた。
徒労感がある。
疲労感もある。
ジェイナスの顔に苛立ちが感じられる。
煮詰まりつつある思考をクリアにすべく休憩を入れるべきだ。
そう考えたキョウジが周囲の様子を確認すると、南方に砂浜が見えた。
そこはとても見通しの良い入り江だった。
「ここなら接近者をすぐ発見できそうだな。
食事と休憩を取ることにしよう。
疲れただろうジェイナス。俺が哨戒に立つから先に食事を取るといいぜ」
「へへ…… 悪いなキョウジさん」
ジェイナスがあからさまにほっとした表情を見せる。
暫くのち。
こいつはマズいぜ、だの、お、こりゃいけるぜ、だの
食事中も黙らぬジェイナスを横目で盗み見て、
彼の警戒心が緩んできているのを確認したキョウジは、
ずっと試しておきたかったことを素早く実行に移す。
それは、乗り移り。
自らの魂を相手の体に潜り込ませて主導権を奪い取る秘術。
このキョウジの奥の手は、相手の精神に潜り込む隙が無ければ
成功しないものだ。
なかなか気の緩まないジェイナスが食事を前に見せたこの油断。
キョウジが見逃すはずが無かった。
キョウジはまず始めに、魂が抜けたのち体が倒れ込まないよう、
重心を低く足を広めに構えて緊張を解す。
次いで幽体離脱。
キョウジの霊魂はすばやくジェイナスの体に重なるべく
飛び掛り―――
その勢いのまま弾き返された。
『気付かれたか!?』
キョウジはジェイナスにこの企みがバレたが故に
魂の抵抗によって弾き飛ばされたのだと冷や汗を流した。
が、見やったジェイナスは暢気なもので、
あいかわらずの軽口を叩きながら食事を摂り続けている。
幽体の存在にはまるで気付いた様子が無い。
キョウジはほっと胸を撫で下ろす。
が、それも束の間。
彼はジェイナスの烙印が赤く禍々しい光を放っているのを見た。
それは神の刻印がジェイナスの霊脈を塞ぎ、
キョウジの幽体進入をブロックしていたことの証だった。
そして気付く。気付いた瞬間に心臓がどくんと跳ねる。
刻印が刻まれているのはジェイナスばかりではない。
『―――俺の体は!?』
キョウジは最悪の可能性に思い至り、彼らしくない動揺を見せた。
自分の体に戻れなければ、ここでゲームオーバとなってしまう。
なんという愚かな失策!!
なんという間抜けた結末!!
彼はこみ上げる恐慌を深呼吸でなんとか押さえつけ、
慎重に、万に一つの手違いも無いよう、自分の体に幽体を重ねる。
果たして。
キョウジの体は、キョウジの幽体をすんなり受け止めた。
「はあ、はあ、はあ……」
「どうした!?」
体に戻った途端くずおれたキョウジに驚いて
ジェイナスが体勢を整える。
「いや、足元が少しふらついただけだ。 問題ないぜ」
「おいおい頼むぜキョウジさんよ」
肩を竦めて食事を再開するジェイナス。
哨戒に戻ったキョウジの心に絶望感が芽吹く。
乗り移りが可能ならば多彩な戦術を取ることができた。
他人の体を使ってルールの穴に挑んでみるもよし。
他人の体を使って危険そうな相手に情報交換を切り出すのもよし。
例え憑依先の体が朽ち果てたとしても、元の体さえ残っていれば、
他人の体を使っていくらでも敗者復活戦に臨むことが出来る。
が、それもこれも全ての可能性が、神の烙印ひとつで封じられた。
烙印ひとつで。
『―――烙印?』
キョウジは頭の隅に引っかかった単語を注意深く咀嚼する。
自分は今、確かに何かをひらめきかけた。
この灯火を消してはならない。
思考よ尖れ。錐の先端の如く。
烙印。乗り移り。幽体。魂。
肉体。魂の入れ物。宿り木。傀儡。魂が宿るものは肉体のみに非ず。
形が似るものに魂は宿る。人の形。人形。つまり。
―――ドリー・カドモンに烙印は無い。
キョウジは新たな可能性に思いを馳せる。
ドリー・カドモン。
土に姿を移し、魔に魂を受ける神秘のヒトガタ。
この土人形に魂を吹き込める術者がいるならば。
そこに自分の魂を移し変えることが出来るのならば。
烙印が刻まれていないこの素体にこそ、
最良の答えに通じる道があるのではないか?
まだ、チャンスはある。
頭は冷えている。
手は打てる。
探らねばならない。
この人形が持つ可能性を。
絶望の芽を思考の重量で押しつぶしたキョウジの背後で、
この十数分間に起きた事を何も知らぬままのジェイナスが
食事と休憩の交代を告げた。
【葛葉キョウジ@デビルサマナー
所持品:ドリー・カドモン@デビルサマナー
基本行動方針:ゲームから脱出
第一行動方針:調査と観察
第二行動方針:ドリーカドモンに魂を移せる術者を探す 】
【ジェイナス@ワイルドアームズ3
所持品:サモナイト石(鬼)@サモンナイト、AK47(弾丸1発使用)
基本行動方針:優勝してかみも殺す
第一行動方針:目的を悟られずキョウジを利用する 】
「カボちゃんというものに、魂はあるのでしょうか?」
ティオ(No67)は魔法屋跡の扉を几帳面に閉めながら、
ふと思い立った疑問をマスターのデネブ(No05)に問いかけた。
「んー。難しい質問よねぇ。
命は生まれるけど、魂は宿らないってトコかしら?
素体が普通のカボチャだしねー。
その辺が限界よ」
「では、素体が普通のカボチャでなければ?」
「魂を生み出すっていうコトは、
あたしの知性と美貌をもってしても無理だわ。
でも、それ用に特化した素体があれば、
魂を素体に移し変えることくらいなら可能かもね」
ティオには術式に美貌がどう関係するのかまるでわからなかったが、
マスターが言い切るのならばきっとそうなのだろう、と納得した。
【デネブ@タクティクスオウガ
所持品:ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ、夜叉姫の血
基本行動方針:パンプキンヘッドの作成 】
第一行動方針:G03の農家に向かう
【ティオ@グランディアU
所持品:湧水の宝珠@サガフロンティア2
基本行動方針:マスター(デネブ)に協力 】
デネブ&ティオ組
現在地:H03 魔法屋前
キョウジ&ジェイナス組
現在地:E04 見通しの良い入り江
「さて、次はどうしましょうか」
海岸線から離れ、ゆっくりと平地をレザードが歩いていく。
スービエと分かれ、次なる指針……新たな人を探すために。
「この状況で人がいそうな所は……」
頭に地図を思い浮かべる。暗記された地図と現在位置をコンパスで確認していく。
闇の中で地図を開こうとすると少ない灯りが必要になる。
この暗闇の中、僅かでも目立つ行為は避けたかった。
やるなら先制攻勢。
此方から仕掛けることの方がメリットが大きい。
何事にも余裕を持たせる。それが彼のスタンスだ。
「人がいそう……来そうな場所というと……」
大まかに分けると街と北西のライキューム。この二つが人が目指しやすい建物だろう。
しかし、今現在レザードがいるのは、それらより大分離れた逆方向の位置。
この暗い闇の中をそこまで移動する程、彼は愚かではなかった。
闇の中を蠢く、好戦的なスタンスの乗った者がいたら……。
あくまで“最後まで生き残って優勝”を目指すレザードにとって、なるべく行動から危険要素は排除していきたい。
先制攻勢のスタンスもその一環だ。
とすると比較的移動距離が短い、ここら周辺に限られてくる。
辺境地の拠点。争いを避けたものがやってくる可能性は多いにありえる。また乗った者が身を隠すためにも人の少ない場所へ来る可能性も。
利用するには、あまり大勢で組んでいる者とは遭遇したくないのが本音だ。
いざという時を考えると、できれば一人の者が望ましい。交渉に当たるには二人が限度。
中には感の鋭いもの、自分と張り合うような策士、状況判断に優れたもの、又は“心を読む”なんて能力者もいるかもしれない。
並大抵の者に負ける気はしないが、数が増えると厄介かつ相手側にある支給品の総数も増える。
自分が持つこの銃のように当たりを支給されているものもいて当然。
またあまり人の集結しそうな場所だと他者に行動を見られるという欠点もある。
いざという時、または“あの男”の時のように殺しを選択した時にそれは困る。
これから色々と策を巡らしていけばいくほど、実行すればするほど、人との交流の間に危険性は付きまとう。やはり安全に行くべきだ。
一人、二人の者と出会い、見極めた上で策を張り巡らしていくのが正しい行動だろう。
共に行動するとするなら、もしもの時を考えて、戦闘力のあるものは2人が限度。
それ以上増えると、もしもの時に始末せねばならなくなっても、不意打ちで1人を倒した後、二人以上戦闘力のある者に残られては厄介だ。
自分以外に2人もいれば、彼の目指す生き残るための戦力としては当面十分だ。
上手く策にはまり騙せるような相手なら、今は隠れ蓑として使い、適度な所で盾にするなりすればいい。
生き残るようなら、それこそスービエにぶつけてしまえば……。
それまでにはぶつかってくれるような相手かどうか、状況かどうかも解るだろう。
尤も前者のような賢い相手の場合は、遭遇の段階で適度にお茶を濁し、組むのを遠慮して去るべきだが……。
では、どこで人を待ち伏せするべきか。
丁度、G03のエリアにぽつんと記載された農家がある。
ここなら、一晩の間に誰かしらが訪れる可能性は多いにある。
家の中に入って待ち伏せするのは論外だ。遭遇時に相手側に警戒される可能性がある。
外の家の死角で待機し、入ってきた相手がどんな者か見定め、対応を選択するのが正しいと言えよう。
「どんな人が来ますかね……」
レザードは、視界に入る農家へとゆっくりと向かっていった。
一方、農家を挟んで反対側。レザードの死角にあたる位置。
「カボチャ、カボチャ、カボチャ〜」
「マスター。鼻歌鳴らしながら街道を歩くのは危険です」
まさに念願のカボチャまでもう少しというのに心が浮き立つデネブへとティオは注意する。
だが浮き立つデネブの心を止める事はできなかった。
というか左から右に聞き流している感じである。
「待っててね〜。私のカボチャ〜」
「聞いてますか? マスター」
「さぁ、農家が見えたわよ! Let's Go!」
「マスター……」
今ゲーム中、レザードの思惑からも外れた、シタンですら6の中に考えなかった、最も凸凹なコンビが農家へと向かっていた。
【レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイル】
現在地:G03
所持品: ザウエルP229(残弾10)、癒し猫、魚1匹
第一行動方針:戦力強化
基本行動方針:優勝し、神に願いをかなえてもらう】
【現在地:G03農家裏】
【デネブ@タクティクスオウガ
所持品:ガラスのカボチャ@タクティクスオウガ、夜叉姫の血
基本行動方針:パンプキンヘッドの作成 】
第一行動方針:G03の農家に向かう
【ティオ@グランディアU
所持品:湧水の宝珠@サガフロンティア2
基本行動方針:マスター(デネブ)に協力 】
【現在地:G03農家前】
【現在時間:二日目AM0時頃】
島の最北端、A04。
「……そうかい、兄貴が…、ね」
「…はい」
神の声を聞いたのは、目的とした建物にたどり着く寸前だった。
もともとどこか儚げな印象のある玲子であったが、それからは
いっそう弱々しく―少なくともカノープスにはそう、見えた。
屋内に入ってもなんとも言葉の発しづらい雰囲気に
気まずさを察したのであろう、
玲子は告げられた「狭間偉出夫」という名と、自分との関係を静かに語りだしていた。
「おかしいですよね。…泣くこともできなくって」
「あ? いや、その…」
「…本当に、実感が湧かないんです。あんな声だけで、死んだ、なんて」
「………」
本当のところ、神の声によってイデオの死を実感するなんてことはなかった。
なぜなら私には、腕の中で冷たくなる唯一無二の彼の死の実感が刻まれているから。
それは何よりも信頼できる事実で、今の私を構成する一部なのだから。
「あー、なんだ、ほら、あれは…そう、かみって奴が混乱させる目的で
でまかせ言ってるだけだって。あーー、だから…」
「…ありがとうございます、カノープスさん。気遣っていただいて」
「ああ、いや……」
カノープスさん、本当にいい人だ。
でも、私はそんなカノープスさんをどこかで裏切らなくてはならない。
本当の仲間になんて、なれない。
「…アンクロワイヤーさんは大丈夫でしょうか」
「え? ああ、あいつなら大丈夫だ。心配しなくたっていい」
B04、焼け落ちた建物、その近く。
異変に気がついたのは移動中だった。
南東方面に赤外線を放つ赤い光が立ち上った。火事らしい。
状況を確認すべく、玲子をカノープスに任せて一人アンクロワイヤーはそちらへと向かった。
直前に神の声が聞こえていたから別れたのが午後8時過ぎになる。
まだ火の残る建物を遠巻きに眺め、アンクロワイヤーは冷静に状況を分析する。
これが人為的な火事であることは疑いないが、ざっと見たところ既に誰の姿もない。
屋内に誰かいたとしたならば…それはもう生きてはいないだろう。
結局のところ誰かが火を放ったということしかわからないままだ。
交渉できるほかの参加者をここで待つという選択肢も考えたが、不確定要素が強い。
なによりあまり遅くなって二人を心配させてはいけない、と思い直し、
アンクロワイヤーはその場を後にした。
時間は放送前まで戻ってB03。
「フラックはいったいどこに消えちゃったんだホ!
もういいホ!仲魔を放っていなくなるやつなんて仲間じゃないホ!」
三頭身の雪だるまが悪態をついていた。
デビルサマナーに出会い、カードに閉じ込められて燃やされかけてから必死で逃げた。
フラックに無価値と判断され見捨てられたなど考えもしない。
「兎に角また仲間探しホー、オイラも伝説のデビルバスターバスターズを結成して、
あのサマナーに復讐するんだホ!
…ホ? さっそく向こうに誰かいるみたいホ」
発見したのは北東へ向かう三人組。
ジャックフロストはこっそりとその後を追った。
途中で流れたフラックの名など気にもならなかった。
玲子に気を遣ったのか、それとも単に雰囲気に耐えられなくなっただけなのか。
会話も弾まぬままカノープスは見張りに出てゆき、
屋内には玲子一人が残されている。
警戒のため、今は部屋の中は明かり一つない暗闇。
ポケットからそっと懐中時計を取り出して握り締め、玲子は思考に沈む。
後ろから、無防備な背中へと銃を向け、引き金を引く。
発砲の感触、倒れる身体、吹き出る血――イデオの姿がフラッシュバックする。
ため息一つ。
そこまでで心はこの想像を続けることを拒否する。
考えていて反吐が出るような卑劣な行為だ。
それが自分の選んだ道、やるべきことだということを思い直し自嘲する。
できるできないではない、やらなければならないのだ。
それでも心のどこかにはまだ抵抗が残っている。
客観的に見れば当然だ。誰も今の私が正しいなんて弁護しないだろう。
しかし、この世界で正しいとは何か。客観的な振る舞いなど誰ができるというのか。
皆、自分の決断したとおりに行動するしかない。
…誰に向かって私は反論しているのだろう?
それはおそらく、外の私を否定しようとする内の自分に対して。
でも思考ならいいけれど、現実において
逡巡したままで動いて失敗するなんてことは許されない。
織り上がってゆくのは堅固な決意、決意の鎧。
闇の中、自らの断片を閉じ込め、黒く塗りつぶしてゆく。
気付くと、何だか外で話し声、はっと思考から現実に引き戻された。
三人組のうち、一人は別れてどこかへ向かった。
一人と二人、仲間は当然多いほうがいいから二人のほうを追う。
そうして二人が入っていった建物をジャックフロストはじっと見つめていた。
ややおいて、一人が見張りに出てくる。
こういうことで大事なのは交渉、Talk、Contact。
される側だった自分の経験を思い出し、頭の中で試行錯誤。
うん、これでいけるはず、まとまった案を自画自賛して
カノープスへと声をかけた。
「ねぇねぇ、そこの人〜」
(ヒホ?鳥みたいなヒト…テングみたい。ヒトじゃなくてアクマだったのかな)
「あん?」
(う、動くユキダルマ、しかも喋ってやがる!?……参加者なのか?)
「まあアクマでもヒトでもいいホ。おいらの仲魔にならない〜?」
「お前、何者だ?魔力で動いてる生物とかそんなのか?」
「おいらは妖精ジャックフロスト、そんな難しいものじゃなくて、アクマだホ」
「悪魔だぁ?っても全く怖くねぇが」
「プリティさはおいらのチャームポイントだホ〜。でもアクマを怒らせると怖いよ?」
「あーはいはい、でその悪魔が何の用件だ?仲間に入れて欲しいのか?」
「違うホ!おいらがさまなー役なんだから、おいらが仲魔にするんだホ!
あ、怒っちゃダメかぁ、交渉はスマイル…それじゃあ、えーと、こんな時は…
何か欲しいものは無いですホ?ませき…は無いし、お金、マグネタイト…
んー、後払いなら何でも出します。宝石でも構わないですホ〜」
「いや、そういう問題じゃなくてだな。お前が上なのかよ」
「もちろん!おいらの命令は絶対なんだホ。
『足首いた〜い』とか『誰でも殺っちゃうんだね』なんて生意気いうやつは
お仕置きなんだホ。ませきもあげないホ」
「あー、そうかいそうかい」
(悪い奴じゃなさそうなんだが。どうしたもんかね、こいつ…)
交渉慣れしていない、というか熱意ぐらいしか認められない雪ダルマをもてあますこの状況は
開いた後ろの扉により打開された。
「あれ、フロストちゃん?」
知らない声を聞いて出てきたのであろう玲子が雪ダルマへと声をかける。
親しみの篭った調子からするとずいぶんよく知っている感じだ。
聞き流すカノープスに向けあんまり実にならない話をしていたジャックフロストも反応する。
「オイラを知ってるのかホ〜?」
「え、君はジャックフロストでしょ?」
「大正解ー!えへへ、おいら有名だホ。んー、おねーさんと交渉したほうがよさそう…
えーと、オイラの仲魔になって欲しいホ!」
目的へ向かって単刀直入。
真っ直ぐで、純真な瞳がキラキラと見つめている。
玲子は罪悪感のようなものに一瞬だけ顔を曇らせたが、すぐに霧散させる。
「…知り合いなのか?」
「直接この子と知り合いというわけではないですけど。
ジャックフロストはアクマですけど、別にすべてのアクマが危険なわけではなくて
話をすれば結構みんな分かってくれるものなんですよ。
それで…フロストちゃん?いいわよ、一緒に行きましょう。いいですよね、カノープスさん」
「まあ、いいってんならいいけどよ…」
「それじゃ…わたしは赤根沢玲子、こっちがバルタンのカノープスさん。
こんごともよろしくね」
「ヒーホー!こちらこそこんごともよろしくだホ〜!」
それから、A04、建物の中。
戻ってきたアンクロワイヤーも交え、
人使い、悪魔使いの荒さとか理想の上司とかの話で
妙に盛り上がっていたのが印象的だった。
【アンクロワイヤー@ジェネレーションオブカオス】
所持品:鍬
第一行動方針:朝まで休息
最終目的:ゲームの破壊】
【カノープス@タクティクスオウガ】
所持品:杵
第一行動方針:朝まで休息
最終目的:ゲームの破壊、デネブと合流
【赤根沢玲子
所持品:メギドファイア(残弾つうじょうだん5発) 懐中時計
第一行動方針:朝まで休息
基本行動方針:殺し合いへの不参加・ゲームへの反抗を装う
最終目的:生き延び、兄を蘇らせる】
【ジャックフロスト@女神転生
所持品:無し
第一行動方針:朝まで休息
最終目的:ゲームを潰す&デビルサマナーに復讐するホー!】
【現在地:A04建物内】
【現在時刻:AM0時頃】
※カノープス、フロスト、アンクロワイヤーの順で見張り。
夜明けと共に移動開始を予定
hosu
hosyu
大人はみんなウソつきだ!!!!!!!!!
(*´・д・)(・д・`*)オコッチャヤーヨ
ほ
296 :
ゲーム好き名無しさん:2005/08/19(金) 20:52:11 ID:R2pGWhei
し
を
こ
ね
る
「ふぅ……はぁ……」
胴と足を両断された死体の直ぐ側の木で、屈強な大男が息をつく。
ぬらり。
血に塗れた頭を拭いながら、一息大きく空気を吸い上げる。
そして
「フゥ……ブルワァアァァアアァァアアァァアアァッッ!!!!」
遠吠えのような叫び声とともに一際大きく息を吐き出した。
出し終えて落ち着くと、地面につけた戦斧を振り上げて肩にかけ、身を引き締めると前へと足を出す。
「ク……。余計な傷が増えたな」
大分落ち着いたとはいえ、サレの手により殴打された頭がまだ少し痛む。
サレをよく理解していない、いや理解しようとしなかったバルバトスは
(大方、知り合いにあって裏切ったのだろう)
と済ませた。
「傷口は塞がったか……」
拭う布に新しい血がつかなくなった。
おかげでサレの支給品袋はバルバトスの血で染まっている。
「こんなコインなぞ、あってもどうしようもないからな」
中にある100円高価は、袋から全部下に落とした。
説明を読んでも、今の彼にとって全く役に立たない物なのが解るから。
「さて、次の獲物を探しに行くか……」
失った栄養分を取り、少しでも体力を回復させる。
サレに支給された食べ物と水を飲みながら、バルバトスは南へと歩いていく。
己に絶大な自信を持つ彼は、その身に起きつつある事を知らず、更なる森の奥へと消えていった。
バチバチパチバチバチ。
夜の中、弾けるような音が聞えてくる。
街道を少し外れた人目の付きにくい森。小さくオレンジ色に照らす火の周りに、魚と野菜がくべられている。
「いやぁ、助かったぜ。こいつが大食いなもんでよ」
金色の髪をした凛々しい青年が笑顔で喋る。
「いや、気にするな。仲間がいるのは心強くて助かる。
このゲームにおいて生き残ろうとするなら、一人身は辛いからな」
笑顔を向けられた蒼い髪をした青年。此方も凛々しく若い。
その横で焼けた食物をモグモグと頬張る緑色の小さな物体。
一見するとほのかな光景である。
唯一、虹色に輝くドレスを金色の青年が纏っている事以外は。
青髪の青年は、もはや慣れたかのようにその事について黙っていた。
何しろ、出会い頭からドレス男……ホームズはこの格好だったのだ。
どんなに鋼鉄よりも防御力に優れ、魔法さえも軽減しても、その代償は色々と大きい。
だが、事、人と遭遇するという点においては、相手のやる気を削ぐ……もとい敵意を消すには効果が大きいようだ。
カラスとしても
(こんなドレスを纏って、マヌケたお供を連れてる奴が悪人か?)
と考えて、出方次第で話してみるくらいの余裕は持てた。
尤も、当然の如く虹色のドレスを纏っているという印象は、変態という先入観は抱かせたが。
その後、起きた出来事を話しながら支給品の説明を持ち出して、しきりに自分の無実?を証明していたホームズだが
「この状況下、少しでも生存率を上げるべきなのは解るから安心してくれ」
何を安心しろというのだが、纏っている理由については納得してくれたようで、深く騒いでも余計に勘違いされるかもと思い、ホームズはそれ以上は弁明しなかった。
その後、彼らは、休憩と話し合いを兼ねて、カラスの持っていた野菜と魚を火を起して焼いていた。
「しかし、この野菜は何処に有ったんだ?」
焼けた茄子をむぐむぐと頬張りながら、ホームズが尋ねる。
「ここに記されている農家だ。丁度、移動中だったから、持てる分だけ幾つか採取してきた」
「じゃぁ、この一匹だけの魚は?」
「俺の支給品は……釣竿だったんだよ」
「そりゃ災難だな……」
今の自分も災難だとホームズは思うが、戦闘に全く使えない彼の支給品はもっと哀れに思えた。
「だろ? 仕方ないから今後の食料を考えて魚釣りしていたんだ。一匹目で壊れたけどな……」
余りにもの不運さに、ホームズには、かける言葉が思い当たらなかった。
ここでカラスは嘘をついていた。
釣り竿が折れたのは本当とはいえ。実際は魚など釣れず、スービエに選別で貰ったのである。
これから生き抜く上で、もしかしたら戦うかもしれない彼の事は必要以上に他人に語らない方がいい、と思ったのだ。
敵対した時は、素知らぬ振りをするなり、状況に応じて誤魔化しながら話せばいい。
そう考えていた。
手を組むような時も誤魔化しつつ謝りながら喋れば、お人よしそうな彼らなら許してくれるだろう。
「さて、そろそろ残りのも焼けたな。悪いが魚は俺が貰っていいか?」
「ああ、それはお前が食べるべきだよ」
釣竿を犠牲にして一匹の魚。それに自分達は馳走になる身。ホームズやポヨンは意を唱えなかった。
カラスの本意としては、奇妙な友情とはいえ、好意で譲り受けた物。自分で食べたいという気持ちがあったからだが。
「さぁ、食べようぜ」
ホームズが新しく焼けたのを手にとり、ポヨンも手を伸ばす。
そしてカラスが焼き終えた魚を口にしようとした時。
―――みなさん おつかれさまです!
ゴゴオォォォゴゴオォオオオォゴォォォォガタガタ。
「これは!?」
「あれは!?」
「?」
カラスとホームズの声が重なる。
しかし、それぞれの指している方向は違った。
「「ん?」」
ホームズは響く声を、カラスは唸るように地面を響く奇怪な音に真っ先に反応したのだ。
―――それでは まずは だつらくしゃを はっぴょう します
カラスが声の方に意識を向けるとかみの放送が聞えてくる。
―――ガアアアアアゴガアアアガアアア
ホームズが唸り音の方を向くと鉄の塊……戦車が街道を走り抜けていくのが目に映った。
「あ、あれは……」
地面を唸らせて走る戦車をホームズは凝視する。
轟音を鳴り響かせて走るのは、傍目に見ても気づかれやすいものだ。
「あれも支給品なのか?」
それとも島にある設置物の一種なのだろうか?
―――つぎのほうそうは あさの8:00です!
「19名か……」
この半日で、こんなにもの人が死んでいるのかとカラスは思う。
かみを倒してでも、優勝してでも、とにかく生き残る。
それがカラスの考えだ。
今はまだ、足掻く人達の方が多いとよめる。
しかし、もし数が残り少なくなった時は、優勝という道も考えなくてはいけなかった。
「あっ」
ホームズがしまったという声を上げる。
「安心してくれ。かみの奴の方は俺が把握してある」
カラスの言う通り、戦車に気を止めるあまり、放送の方を聞き流してしまっていたのだ。
「つくづくすまねぇな……所でどうする?」
「確かめるかどうかか?」
通り過ぎていった戦車を追跡してみるかどうか。
それをカラスへとホームズが尋ねる。
素足で追いかけるには全力疾走しないと辛い感じだが、道に残る後から見失う事はなさそうだ。
「中に人がいるのか、それとも無人か」
「やばそうなら森へ逃げれば、あの巨体だ、追いかけてこれないんじゃないか?」
「そうだな。解った、追いかけてみよう」
ぽんとクラトスの肩をクロノが叩く。
「あ、ああ大丈夫だ……」
“ロイド・アーヴィング”
その名前を聞いた時、動揺が走った。
表面上では、正常を保とうとしているものの走った衝撃は大きい。
それを心配したクロノが不安に思ったのだった。
だが、今は動揺している時ではない。悲しみに走る状況ではないのを心に強く言いつけ、行動を起す。
(今はまだ立ち止まれない。だが……せめて必ず仇だけは……ロイド)
その様子を見たクロノは、それ以上深く追求する事を止めた。
「ジューダスはまだ意識を失っているか……」
なら、申し訳ないが自分達の身の安全のためだ。気絶してる間、とジューダスから愛剣を取り、支給袋も確保しておく。
クロノが器用にワルサーの手を括って木に縛り付ける。
ワルサーの支給袋を殻にし、それで手を後ろに回して縛ったのだ。
横にバイクの姿はない。
どうやら、支給品袋は、それぞれデフォルトで支給された説明のついているアイテムだけは自由に出し入れできるようだ。
尤も、そうでもなければこんなジェットバイクが袋の中に入れるはずがないのだが。
そして、地に置かれたワルサーの支給物をクラトスが確保する。
「どうした?」
シレンが地面に転がる石に着目し、それを拾い上げている。
彼が言うには、これがあの不思議な生物に関わっているらしい。
長年の経験に基づかれたシレンの勘だった。
「しかし、こいつをこの後どうするかだな」
ワルサーに剣を突きつけ、何時彼が目を覚ましてもいいようにクラトスは構えている。
縛って動きを封じたとはいえ、ワルサーは魔法を使う。
油断はならないと判断しての事だ。
「放っておくわけにはいかないが……情報は出来る限り引き出してからだな」
ロイドの件で少し、こんなような人物に対する憎しみが強くなっていたとはいえ、こんな危険人物を活かすつもりは元々更々ない。
しかし、シレンの言う石の件にしろ、知れる事は知るべきとクラトスは提案した。
提案した時、クロノの方は、少し難しい顔をしたが納得はしたようだった。
シレンは慣れているのか、ただコクリと頷く。
少しして
「う……」
「ん、目がさめたか?」
ワルサーの目覚めに声に反応してクラトスの剣を握る力が強くなる。
「ブルワァァァァァアアアァァァァァッッ!!!!」
「なんだ!?」
三人の声が一致して、突然奇声のした方へと視線を向ける。
斧を振り上げた男が、まさにワルサーの木の後ろの方から走り駆けて来たのだ。
ジューダスが起きていれば、これがバルバトスだという事が解っていたものの。
「くっ!?」
咄嗟にワルサーから剣を引き、クラトスは飛び下がる。
シレンが自慢の力でジューダスを即座に背負い、クロノは距離を取りつつ魔法を放つ準備をする。
ブン、と音が聞えるほどの勢いでバルバトスの斧がワルサーの縛り付けられている木を横に切り倒す。
「ブベシッ!?」
哀れ。せっかく目覚めかけていたワルサーは、上から倒れる木に頭をぶつけ再度気絶してしまう。
尤も。このままではクラトスの手で殺されていたかもしれないので、悪運だけは強いのかもしれないが。
シレンがジューダスを背負っている以上、軽々と木をなぎ倒すような男相手に、ここで戦うのは不利とクラトスは考えた。
むしろ、次々となぎ倒されては、彼等に取って木々は邪魔にしかならない。
それにジューダスが目を覚ますまで少しでも時間を稼ぎたかった。
「広い場所まで出るぞ!!」
クラトスが叫ぶように指示を出すと二人は街道の方へと走る。
戦闘にジューダスを担いだシレン。その直ぐ後ろをクロノ。
そして殿を勤めるように最後をクラトスが走る。
「ブルワアアアァァァァァァッッッッ!!!」
邪魔する木々をエピック・ヒーローでなぎ倒し、獲物へと一直線にバルバトスが迫る。
「化け物だな」
その様子を見たクラトスが声を漏らす。
クロノもジェットバイクを出したかったが、運転経験のあるのは自分のみ。
ジューダスを先に離脱させようと思ったが、流石のシレンでもあの大漢と肉弾戦でやりあうのは無理だろう。
魔法を使える自分の方が、クラトスを支援しつつ相手にするにが有利なのだ。
迫ってくるバルバトスと相まって、出すに出せないもどかしい状況。
――ゴガァァゴオオォォォゴガアアォォ
「もう少しだ!!」
三人の前に街道が見える。そこへと走るクラトスとクロノ。
バルバトスに集中し、彼の雄叫びが耳にきている二人と違い、少し先を行くシレンだけは、この謎の奇音に気を配っていた。
しかし、今は逃げる事が先決だ。
立ち止まっては後ろから迫り来るバーサーカーに追いつかれてしまう。
―――まだ、彼は目を覚まさないのか?
少し蹴りを強く入れすぎたか? と反省するが、後悔するよりも今は先を行かねば。
自分に責任がある以上、自分がジューダスを支えなくては、とシレンは背負い街道へと飛び込む。
―――ゴゴオォォォゴゴオォオオオォゴォォォォガタガタ。
刹那。
シレンの目が大きく開き止まった。
「どうした? ッ!?」
遅れて出てきたクロノとクラトスも目が点になる。
何故なら
彼らの飛び出した目の前、街道には戦車が走っていたのだから。
「ブルワァァァアアアァァァッッッッ!!!!!」
だが、バルバトスは待ってくれない。
彼もワンテンポ遅れて森から飛び出てくる。
「横へ散開するんだ!」
すかさず的確な指示をは出すとクラトスはクロノと共に左に。
前もって答えが解っていたように、状況判断に優れたシレンもジューダスを背負いつつ道の右横へそれる。
(クッ!? 敵か味方か……果たしてそれとも!?)
横に戦車、後ろにはバルバトス。
彼らの命運は、二つの巨大な力に挟まれていた。
【ワルサー@ドカポン
状態:気絶
所持品:サモナイト石(ポワソ)
基本行動方針:神様を殺す
第一行動方針:目の前にいるヤツラから逃げる
第二行動方針:印の解除。邪魔する者、利用できない者は殺す】
【現在地:E04西部の森】
【シレン@風来のシレン
基本行動方針:ゲームからの脱出
第一行動方針:正しき者への援護。
第二行動方針:ジューダスの保護する
【クロノ@クロノトリガー
所持品:ジェットバイク(残りおよそ23時間50分稼動)
基本行動方針:ゲームからの脱出。
第一行動方針:ジューダスの目が覚めるまで時間を稼ぎつつ、戦いやすい場所へ移動
第二行動方針:仲間と出会う】
【クラトス・アウリオン@テイルズオブシンフォニア
所持品:果物ナイフ
基本行動方針:ジューダスに協力、ロイドの敵討ち
第一行動方針:ジューダスの目が覚めるまで時間を稼ぎつつ、戦いやすい場所へ移動
第二行動方針:コレット、しいな、のいずれかと合流】
【ジューダス@テイルズオブディステニー2
状態:気絶
所持品:フランヴェルジュ(片手剣)
基本行動方針:バルバトス・ゲーティアの抹殺
第二行動方針:仲間集め】
>>310-311 訂正。
【ワルサー@ドカポン
状態:気絶
所持品:なし
基本行動方針:神様を殺す
第一行動方針:目の前にいるヤツラから逃げる
第二行動方針:印の解除。邪魔する者、利用できない者は殺す】
【現在地:E04西部の森】
【シレン@風来のシレン
所持品: サモナイト石(ポワソ)
基本行動方針:ゲームからの脱出
第一行動方針:正しき者への援護。
第二行動方針:ジューダスの保護する
【クロノ@クロノトリガー
所持品:ジェットバイク(残りおよそ23時間50分稼動)
基本行動方針:ゲームからの脱出。
第一行動方針:ジューダスの目が覚めるまで時間を稼ぎつつ、戦いやすい場所へ移動
第二行動方針:仲間と出会う】
【クラトス・アウリオン@テイルズオブシンフォニア
所持品:果物ナイフ、フランヴェルジュ
基本行動方針:ジューダスに協力、ロイドの敵討ち
第一行動方針:ジューダスの目が覚めるまで時間を稼ぎつつ、戦いやすい場所へ移動
第二行動方針:コレット、しいな、のいずれかと合流】
【ジューダス@テイルズオブディステニー2
状態:気絶
所持品:なし
基本行動方針:バルバトス・ゲーティアの抹殺
第二行動方針:仲間集め】
【高尾祐子
状態:健康
所持品:なし
基本行動方針:出合った人間を矯正しつつ勝ち残る
第一行動方針:マサキと共に脱出する仲間を探す
第二行動方針:自分の生徒(人修羅、千晶、勇)を探す】
【マサキ・アンドー
状態:健康
所持品:レオパルト2(サガ2に登場、戦車。弾数3、稼働時間二日)
ムスペルのマガタマ
基本行動方針:かみを倒し、脱出する
第一行動方針:祐子と共に脱出する仲間を探す
第二行動方針:シュウを見つけ、復讐する】
【夜のため、二人とも戦車の中にいる。目の前に出てきた集団に気づいたどうかは後続へお任せ】
【現在地E03東の街道】
【ホームズ@ティアリングサーガ
所持品:ボウガン@弾数残り20本 プリズムドレス(着用)
基本行動方針:このゲームを壊して元の世界へ帰る
第一行動方針:レオパルド2の跡をつける】
【ポヨン@大貝獣物語
所持品:焼き野菜
基本行動方針:みんな(参加者)を助けたい
第一行動方針:ホームズについていく】
【No02.カラス(バテンカイトス)
所持品:焼き魚一匹、各種野菜
基本行動方針:何がなんでも生き残る
第一行動方針】
【カボチャとかwどの野菜を取っていったか等の酒類は後続へお任せ、持ちきれる範囲で】
【現在地:E03西の街道】
【現在時間:PM10時〜11時くらい】
>>312 更に訂正。
【No02.カラス(バテンカイトス)
所持品:焼き魚一匹、各種野菜
基本行動方針:何がなんでも生き残る
第一行動方針:レオパルド2の跡をつける】
その足は確実にしっかりと闇を蹴り、
暗黒など全て自らの支配下に置いたかのごとくに踏みしだいていく。
広がる森の中をひたすらに北に向かい、
わずかな時間だけ身体と精神を休める。
聞こえたはず、聞いたはずのかつての友の名も、今の彼には単純な悲しみさえ呼び起こさない。
募るのは彼らを助けられなかった自分への悔しさと、
早く仲間を見つけ出して助けなければという微かな焦燥。
早く危険を取り除かねばという焦燥。
しっかりと闇を蹴り彼は歩きつづける。
「誰もいないよねぇ?」
夜闇にギィッ、という小さな音が鳴る。
ライキュームの一角、とある一部屋の扉をそっと押し開けて侵入するのは
ヴァージニア・マクスウェル。
フェイトに見逃されてからとりあえず北に広がる森へと移動した
ヴァージニア、その判断。それは、
「長丁場の戦いでは体力が資本、だから余裕あるうちに休むのが一番」。
大木の上に周囲から簡単に見つからない隠れ場所を見出し、
空が暮れ切るのも待たずに休息に入ったのが午後6時過ぎ。
夢で誰かが大声を出していたような気がするが良く思い出せない。
それから誰も近づく人物がいなかったのは幸か不幸か。
ヴァージニアが目覚めたのはすっかり真夜中、丑三つ時。
随分気持ちよく寝入ってしまったことに反省しながら、
起きてしまった以上行動を開始したヴァージニアは
ライキュームと名のついた東の建物群へ向かったのだった。
ギィッ。
小さな音であったがソルを浅い眠りから呼び戻すには十分な音。
昨日より張り詰めたままの神経が瞬時に体の感覚を研ぎ澄ませる。
それは、望まざる来訪者を告げる音。
自分以外に確実に味方と呼べる人間が存在しないこの島において
誰かと接触する時ほどスリリングな瞬間は無い。
友好的か敵対的か、根本は二元論ながら複雑な駆け引き。
ではこんな夜中にやってくるこの相手は友好的か、敵対的か?
具体的な判断材料は無いが、自分の場所への侵入者であること、また武器の無い不安などから
ソルの心理は敵という認識に傾いていた。
では敵に対してはどうするか。そう、機先を制すのだ。
部屋に広がる暗さは外の闇よりまた一段濃いもので、
ヴァージニアにはしばらくの間戸口で目を馴らす時間が必要だった。
その時間を狙うように部屋の奥から投擲物がヴァージニアへ向かう。
(嘘ッ…何なのッ!?)
それなりに培われた反射神経と習慣ともいえる反応が―とはいえ銃弾だったら間に合っ
ていないが―
この悪条件下でも何とか被弾を回避してくれた。
射線を外し合う銃撃戦に慣れていたこともプラスに働いたかもしれない。
飛んできた何かは半開きの扉にあたり何処か特徴的な音をたてて部屋の外へ落ちた。
そしてそれが、暗い小部屋での二人のアクションの引き金となる。
室内へ転がるように飛び込み、部屋の隅で体勢を立て直す。
ほんの少しの陰翳の差が目の前、立って腰くらいの高さに障害物があることを教えていた。
これはテーブルだろうか。
誰かと戦闘になる可能性は考えてはいたけれど、
こんな真夜中に、偶然入った小部屋でそうなるなんて考えてなかった。タイミングが悪過ぎる。
ほんの少しだけ落ち着きを取り戻しかけた闇を破ってその奥で気配が動く。
それでタイミングを先読みし、二度目の攻撃を回避。
テーブルより低く身をかがめて、整然としている椅子の陰に身を沈める。
先ほど自分がいた辺りで再び特徴ある音。
物がぶつかる衝撃音に、そう、あれは紙ずれの音。飛んできているのは本?ここは図書室?
考えは突然の騒音に中断される。どさりと物が落ちる音、乱れる気配、てことは…?
見えない対戦者の気配を察知すべく集中するが、遅すぎる。
テーブルの上、大きくそして素早く移動して来る気配。
今回は接近戦、既に回避できる隙は残っていなかった。
とっさに腕を上げて頭部をガード、その腕に本が直撃する。
「きゃあっ!!」
中央にいくつかのテーブル、囲むように部屋の壁になっている本棚。
一日中ここにいたのだ、闇の中でも部屋の構造は頭の中にある。
とにかく不意打ちをかわされたことは大きな驚きだったが、
抑えて気を引き締める。迷いは禁物、今対峙しているのはそういう相手だ。
投げた本が壁に当たる音。二発目も命中せず。だが、それは構わない。
そろそろ目が慣れてきた相手が投擲を確実に避けるには遮蔽物を利用するのが普通だろう。
これで相手の位置はほぼ絞り込めた。推測だが自信はある。
とはいえ反射神経と気配の察知だけで奇襲である二度の攻撃を避けるのだから素人ではない。
深く息を吸うと、棚から両手で本をつかみ出して本を棚から引き落とす。
それが音を立てるより早く足で床を静かに蹴り、部屋の真中を占めるテーブルの上を跳んで
大体絞り込んだ位置へ向け一気に切り込む。手にした武器は、本一冊。
それを自由落下の勢いを味方につけて推測の位置へと振り下ろす。
壁やテーブルとは違う感触がヒットを教える。同時に甲高い声が。
一瞬の動揺が次の行動を制止する。
(…ったぁいっ!)
堅いものを叩きつけられた部位が痛い。ーーっ、これ腫れるかもー、
とかそういうことを何とか意識の外へ追いやって、ヴァージニアは状況を必死に推測する。
暗闇の部屋からの襲撃、強打。何とか受けて、今、相手は…止まってる?
(ええい、思い切って!)
相手の位置へ向け、ほとんど思考せずに賭けに出る。
立ち上がる力をすべてその方向へ向けて頭上で組んだ両手からそこへ向けてチャージを敢行する。
動揺で失ったのは一瞬だったはず。しかしその一瞬で相手は反撃してくる。
敵が誰であっても関係ないじゃないか、どうかしていた。
防御姿勢をとろうとしたところへ質量がぶつかり、大きくノックバック。
相手に生じて帰ってくる衝撃を感じて突進を停止。
それから、前に踏み出した左足を軸に残った勢いを全て乗せて右足を振りぬく。
その弧は相手の左手の甲を捕らえ、男が小さくうめき声を上げた。
状況を五分以上に戻しいまだ顔もわからない対戦者にヴァージニアは―
「ちょっと寄っただけなのにいきなり何よっ!
驚かせたのは悪いけど攻撃することないじゃないっ!
あなたもゲームで人を殺して回る気なのッッ!!」
言い放つ。
正直に言って侵入者は暗闇から奇襲すれば簡単に何とかなると思っていたが、
やってきたのはそれなりの強敵だった。
その甘い見通しの結果が今の状態だ。
接近戦での真正面での相対を余儀なくされ、左手からは激痛。指の骨がいったかもしれない。
ではどうするか?
迷うソルに次の行動の指針を与えたのは相手が言い放った言葉。
どうやら、この女は既に誰かと交戦し、かつ自分は積極的に他者を殺して回る気は無いらしい。
続行が不利となった今の状態では戦闘が回避できるならばそれに越したことはない。
「…待て。こちらはただおまえの進入に対して対応しただけだ、積極的に戦うつもりは無い。
俺の名はソル。先に仕掛けたことについては謝るが…、
こんな深夜に不意に訪れる方もどうかと思うが?防御行動として自分が間違っていたとは思わない」
「だからって!痛かったんだからね!」
「痛み分けだと思うが。お互いに不要なダメージを負ったな」
「自業自得でしょっ!
………あ、でも、誰かいるなんて思わなかったのは謝っておきます。
……もしかして、わたしが起こしちゃったのかな?」
コミュニケーションがとれる、続く。そのことが空気を変え少しずつ場の険悪さは薄れていた。
「おまえが人を殺すつもりで来たならこれ以上の話は無駄だが…そうじゃないんだろう?
とにかく双方これ以上の戦意なし、ということでいいか?」
「うう、なんか納得いかないけど……えーと、ソル、だっけ?
わたしはヴァージニア・マックスウェル。正義の渡り鳥よ」
戦闘中断から会話、そして情報交換へと場は移っていく。
「つまりそちらも仲間を探している最中で、まだ何の手がかりも掴めてはいないか」
「残念ながらね。でもっ、絶ッッ対に何とかして見せるわ。
こんなこと絶対に許しておけないもの。そのためにはまず自由を取り戻さないとね」
「…心強いことだ。俺も…帰らねばならない。
つまりどうにかして脱出を目指す点では俺達に相違はないな」
「それならさ。ね、ソル。一緒に行動しない?」
最終的に帰れるなら過程は問わない。今は安全などのメリットから組むのもいいだろう。ソルの考えはそうだったが、返事はない。なぜなら――
「一人より二人のほうがきっとうまく……」
「ジニー、静かに」
部屋のすぐ外、察知した気配。
暴れすぎたか、何者かを引き寄せてしまったようだ。
気づいたのだろう、隣のヴァージニアの気配も先ほどの臨戦状態に戻る。
そして、招いたものは。
「南条君?ブラウン?それともマキちゃん?」
この部屋の唯一の出口の向こうから呼びかける声。
挙がった名前は彼の友人であろうか。ヴァージニアが答える。
「ねえあなた、仲間を探しているの?
私達も今脱出のために仲間を集めているの。戦う気はないわ」
「……違うか。そちらは何人いる」
「今のところ二人ね。あなたも一緒なら三人よ」
「そうか、二人か」
彼の言葉の雰囲気はどこか誠実さがないというか、話す気がないというか、おかしい。
だがその不審を感じるより先に彼を不思議な気配が包む。
触発されるようにあたりの空気、大気が敵意を増してゆく。
緊張がはじけるように風が動きをなし、疾風、旋風、いや真空か、
ともかく扉とテーブルを何かが切りつけて行く。それは彼の敵意の証明だった。
夜明けはまだ遠い。
【ヴァージニア・マックスウェル@WA3(右腕打撲)
現在地:D03から北へ
所持品:トライエンプレム
第一行動方針:外の敵に応戦する
基本行動方針:ゲームからの脱出 】
【ソル(RUNEU)(左手負傷)所持品:魔道板(解読可能)@アンリミテッドサガ
第一行動方針:外の敵に応戦、あるいはここから離脱する
基本行動方針:ゲームからの脱出または勝利 】
【現在位置:A04、ライキューム図書館内 】
【ピアスの少年@ペルソナ】
所持品:果物ナイフ 鞭 金剛石の槍 ガーラルアクス
第一行動方針:屋内に潜む奴らを始末しておく
第二行動方針:知り会いと思えるべき人たちに会う。
基本行動方針:生き残る】
【現在位置:A04、ライキューム図書館建物外 】
【現在時間:AM3時〜4時くらい】
○ヴァージニアは午後8時の放送を聞き逃しています。
【ヴァージニア・マックスウェル@WA3(右腕打撲)
所持品:トライエンプレム
第一行動方針:外の敵に応戦する
基本行動方針:ゲームからの脱出 】
【ソル(RUNEU)(左手負傷)所持品:魔道板(解読可能)@アンリミテッドサガ
第一行動方針:外の敵に応戦、あるいはここから離脱する
基本行動方針:ゲームからの脱出または勝利 】
【現在位置:A04、ライキューム図書館内 】
【ピアスの少年@ペルソナ】
所持品:果物ナイフ 鞭 金剛石の槍 ガーラルアクス
第一行動方針:屋内に潜む奴らを始末しておく
第二行動方針:知り会いと思えるべき人たちに会う。
基本行動方針:生き残る】
【現在位置:A04、ライキューム図書館建物外 】
【現在時間:AM3時〜4時くらい】
○ヴァージニアは午後8時の放送を聞き逃しています。
321 :
ゲーム好き名無しさん:2005/08/30(火) 20:34:43 ID:D/eLlMqG
ほっしゅ!!
ほs
323 :
#:2005/09/08(木) 15:42:44 ID:???
初代1の死により物語はリセットされた・・・
ここから、新たな伝説は始まる!
【完】
RPGキャラバトルロワイアル2ndにご期待ください
キョウスケ!ダメだって! ステーク!!いっけぇぇ!!
/ヽ-、___
/ _/____/ まだ双子作るのは早すぎっアアツ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ギシギシ アンアン
今の日本の少子化を防ぐにはこの行為が必要です。
避妊はNO
AC公共広告機構
かみは バラバラ に なった
「人がいた痕跡はあるわね……」
神降ろしを済ませた彼女は、鉄格子と石の塀に囲まれた動物園の中へきていた。
そして辿り着いたのは、小さな管理室とみられる小部屋。
「……」
薄暗い小屋の中をゆらゆらと小さな光が照らす。
その光を頼りにし、彼女は部屋の中をじっくりと凝視し、隅々まで探っていく。
ベッドには、つい最近使用されたと見られる跡と、少量の血痕。
椅子や机の上の物の配置、床につくかすかな泥、それから取れるわずかな足跡。それらから部屋の中を誰かが使ったであろう痕跡を感じ取れた。
ここで血を流していた人物がいたのは確かだ。
しかし、落ち着いた部屋の具合からいって、ここで殺人が行なわれたとは彼女には思えなかった。
「傷ついた人物がここで休息したって処かしら……」
好戦的な参加者か、それとも襲われた参加者か。
残された痕跡だけでは、そこまで解らないが、はっきりとした事は一つ。
この部屋の使われ具合からいって、最低二人はいただろうと言う事だ。
「大分、凝固してる……」
ベッドシーツについた血は乾き、凝固しきっている。
黒ずんだ色具合からも、もう大分前の物なのを推測する事ができる。
よく、毎年放送されてるどこぞの討入りではないが、暖かみ、とやらのさっきまでいたと言う痕跡も一切ない。
間違いなく、ここにいた人物達は、もう大分後にここを経ったに違いない。
そして残された跡も人がいたと言う証拠だけで、他に目ぼしいものは見つからない。
「ここでは手がかりはなしね」
腰を降ろし、昼からの探索疲れを吐き出すかのごとく、深い溜息をつく。
(キョウジはまだ生きているようね……。不幸中の幸いかしら……、でも)
不気味な神の声。
それは葛葉一族につく巫女であるレイホゥにすら、未知の物だった。
彼女の知るどれでもない、そしてどれに近いわけでもない。
巫女と言う役柄、神降ろしという能力を持つレイホゥにですら、ただ解るのは、一方的な力が流れ込んできたと言うだけだった。
(本当にあれは、神なのかしら……。私の知るどれにも該当しない。
面白いからと言うだけで、様々な世界から様々な種族を集めてこれるような多次元に渡り高位な能力を持つ存在と言うと真っ先にそれが浮かんで。
(でも、あれは、人間の作り上げた存在……そんなはずが……。
それとも似たような存在だとでも言うのかしら?
だとしても、神や悪魔は決して倒せない存在じゃないわ……。絶対的な存在なんてこの世にはいない。
必ず、何処かに抜け道はあるはず……)
それは、常に悪魔や神と渡り歩いてきた者としての考えだった。
(昼間のムーンゲートには、何かしらの力を感じたのに……。
もう一度あそこを調べてみるべきかしら? もしかしたら、神降ろしができたように、あそこに何か手がかりはあったかもしれないわね)
日が暮れるので仕方なく移動したが、落ち着いてよくよく考えてみれば、特殊な力場というだけでもっと調べてみる価値があったのに気づく。
(さて、どうするべきかしら。戦力的には私一人でも十分だけど……。
他の知識人を探すのも捨てがたいのよね)
時間は惜しい。こうしてる間にも刻々と殺戮ゲームは行なわれていく。
もしかしたら、散っていった人物の中にも役立つ知識を持っていた者もいるかもしれないのは当然だった。
仮に自分一人で向かっても何も手がかりを得れない可能性だってある。
けれども、三人寄れば文殊の知恵と言うように。複数でいればそれぞれの知識と思考が絡み合って何か判明する可能性も上がる。
しかし、距離的には今が近い。人探しの後だと、ムーンゲートの調査は大分後手に回ってしまう。
(先にムーンゲートを調査した後、人を探すべきかしら。
それとも知識人を探すのを優先するべきかしら……)
カツ……。
ほんの僅か、普通の人なら聞き落としてしまいそうな程の小さな音。
靴が石にぶつかったかのような音だ。
(人……? それとも小動物でもいるのかしら?)
少なくとも先程徘徊した限りでは、見世物となるべく動物は一匹たりともいなかったが……、とすると誰かが来た事になる。
(敵……? それとも逃げ惑う人かしら……。少なくとも複数ではないはず。
相手の動向が読めないのが歯がゆいわね。どちらにしても、優勢に立ちたいのだけれども……)
カツリ。
それなりに気を使っているようだが、相手はあまりその心得を持つ者ではないのだろう。
普通の人ならなら気づかないほどの音を、レイホゥは集中して感知に力を注ぐ。
(……来る!)
【レイ・レイホゥ@デビルサマナー
所持品:押し花@ヴァルキリープロファイル
基本行動方針:なるべく戦闘を避けこの世界の謎を解く
第一行動方針:やってきた人物(?)へ注目】
【現在地:F02動物園】
【現在時間:PM11時頃】
やってきた単独人物に関しては、後続に任せます。
グレイ、シタン、フェイト、ロイド等など、ご自由にして下さい。
自分の判断は間違っていたのか?
自答する。
否。自分の判断は、選んだ方針は間違ってなどいない。
ならばこの現状は何だ。
焼け爛れ力も入らない左腕を見る。
頭に流れ込む気味の悪い神の声で順当に参加者が減っていることを知る。
それにたいした感慨も抱かずにフィネガンは椅子に腰掛けていた。
ここまでのところ会話した相手はボロボロの女が1人、
見かけた相手もまだ青いガキが二匹と高い魔力を持った金髪の男の三人だけ。
後は神の告げた死者どもの名と、聞こえた爆発音。
自分が持つ情報はこれだけだ。この材料では思考など組み立てられるはずも無い。
いまはまだ動かなくてよいし、急ぐ理由もありはしない。
屋内の暗闇の中、支給された食料を僅かだけ口へ放り込むと、
そのまま身体を休めることを優先する。
葉巻がないことは大きな不満だったが。
やってくる変化。
外に現れた気配を察知して直ぐにでも動ける準備を整える。
こういうことには鋭敏でなければ裏では生き残ることなどできない。
それから入り口から見えにくい位置へと身体を移動させ、
己の武器である両拳を構えて来客に備えた。
けれども、来客はやってくることは無かった――正面からは。
耳障りな破壊音が室内に響き渡り、木製の棚が倒壊して雑音交じりのひどい音を上げる。
どうやら客はずいぶんと礼儀をわきまえていないようだ。
「もうちょっとスマートにできないのかしら?」
「ぶち破るのにすまーともねぇだろうが…」
「うるさいわよ」
若い女声と個性的な男声、二人分の声が聞こえる。
ともかく「今の」自分の方針は戦闘ではない。開いた壁の傷へ向きなおり、凝視する。
再度の破壊音が鳴り、壁の傷は人が苦労せずに通れる大きさの穴へと広がった。
「ずいぶんと乱暴なノックだな」
サングラスの黒を重ねたままその空間へ呼びかける。
「やっぱり誰かいたじゃないの」
「ンなこと言ってもわかるかよッ!」
「野生のカンとかでなんとかならないの?まぁそれはいいとして……
中にいる奴ッ!質問に答えなさいッ!!」
どうやら向こうさんはこちらの反応を見るとかいう考えはないらしい。
「あんた、殺し合いに乗ってる?そっから出てきて答えなさい。
正直に答えた方が…身のためよ」
なるほど、こいつは脅迫だ。
やってきた連中は少なくとも穏便に済ますつもりはないらしい。と、さらに声が飛ぶ。
「あんまり待つ気は無いわよ。無回答は即座に敵認定ね」
フィネガンは感心と共にその脅しを反芻する。
やり方は乱暴に過ぎるが、屋内と見るや罠を警戒するその判断。
相手の対応を考慮することなく自らの欲する要求を突きつける手口。
透けて見える自信過剰はマイナスだがこいつ等は裏でも十分やっていけるだろう。
そこまで考えてフィネガンはサングラスを外し、静かにポケットへと収める。
では俺はどうすればよいか。
こういう輩は問いを投げかけた時からこちらの反応を見ているものだ。
それでは自分はこの短い間にどのような評価を受けているか。
自慢ではないがもし普通の裏の連中の思考ならこういう相手は出てきた途端にズドン、だ。
向こうがそこに至っているかは分からないが事態は友好的に落ち着くはずも無い。
ならば、自ら動くしかないだろう。
何より都合良く、俺もこういう輩を気に入らない。
「ちょっと、まだn………」
壁に開いた孔に揺らいだ気配に反応して、女の声が止まり、叫びに変わる。
「マントーッッ!!」
向こうがリーダーか。反応も悪くない。だが、遅い。
「んなぁっ!?」
まだこちらを捕捉していないもう一人の大きな物理的輪郭をつかみ、拳を打ち込む。
不意打ちで腹へ打ち込んだというのにほとんど動きもしない相手の様子がチラリと目に入る。
――デカブツが、わかってるさ。
そこから身体を反転させての電撃裏拳。
「ウッキャアァァーーッ!!」
電気が放つ独特の衝撃に体中を駆け抜けられデカブツが苦悶する。
間髪入れず蹴りで吹っ飛ばした相手を見れば大きな槍を抱えた大猿だった。
息をつくわけにはいかない。なぜなら、ここからだからだ。
予想通り俺の側面を衝いてリーダー格の方―ガキみたいな女だったが―が足から飛び込んでくる。
大きな動きだ、見えてさえいれば回避は難しくない。大きく二歩バックステップ。
右前方にさっき吹っ飛ばした猿、左前方から体勢を立て直し猛然と向かってくるガキ。
相手を前方に集めたこの配置こそフィネガンの狙っていたもの。
自身最大のEXTRA、『雷震王母の蹴り』。
振り上げる蹴り足に合わせてあたりを天へ突き上げる衝撃が襲う。
向かってくる奴にはカウンター、倒れている奴には追い討ちの一撃が、炸裂した。
悠然と、立っていた。
「俺は乗っているつもりはないが、人に指図されるのは嫌いでな。
命までは奪わん。格の違いが分かったなら消えろ」
葉巻が無いのが不満だが、まあいいだろう。
奴等に敗北感を刻み込んだはずだ。
だが…若いとはそういうことかも知れない。小さい方が立ち上がる。
知らず、口の端がわずかに緩んでいた。
「好き勝手言ってくれるじゃない。格の違い?だ・れ・と・だ・れ・の?
マントー、ヤリッ!槍よこしなさい!」
「まだやるか?次は…ないぞ」
「うるさいっ!」
クロスレンジへ飛び込んで来るガキに応じ、ベアナックルでの接近戦が始まる。
確かに年齢の割には自信を裏打ちするほどの動きの良さと場数慣れはある。
だが、自分の技術は我流の拳に破れるような代物ではない。
大きなヒットは得られないが確実に攻撃を回避し、ジャブでダメージを増やしてゆく。
「このぉっ、チョロチョロとっ!…早くっ!槍っってるでしょう!!」
少し間合いが開き、ガキが闇へ向けて叫ぶ。
「ハイッ、り、了解です、姐御!」
闇から風切り音を伴い飛んできた巨大な槍を、事もなく目前のガキが掴み取る。
「得物か。だが…」
異変に気付き、そこで言葉を切り相手をじっと見る。
空気が変質してゆく。ガキが、共鳴するように槍が異質な力を醸し出し始めたのが分かる。
「黙って魔王の姿を目に焼き付けるがいいわ。いくわよ」
おぼろげな光、それが槍先から帯をなし始める。
暗闇を裂いて、鈍い色つきの光を放つ帯が翻り、のたくり、そして薙ぎ払う。
左半身をなめられるようにその光を受けた。
火炎とも違う焼けるような痛み。あえて似たものを探せばメギドの光か。
ともかく消え飛びそうな意識を何とかつなぎとめ全身に危険、の判断を送る。
さらに幅を増し地面をのたくる帯を確認し、後ろの魔法屋の陰まで一気に走り出した。
「逃がさないっ!!」
後方から怒号。反射的に地面へと身を投げ出す。
たわんだ光の帯が頭上を越え、既に穴の開いている壁を斜めに切りつけた。
それが継続の限界だったのだろう、あたりに満ちていた鈍い光が消えてゆく。
「そのままッ!!死んでろぉ!」
追撃が後ろからくる気配がわかる。あの大槍の一撃を受ければいつでも天国行きだろう。
――だが、まだだ。俺は死なん。
反転しつつ飛び起き、わずかにずれた軸から焼けた左腕をカウンター気味でぶち当てるように先を取る。
腕はいってしまったかもしれないが構わない。
ひるんだ勢いに畳み掛けて、回し蹴りがガキを弾き飛ばした。
後は背を向け一気に駆ける。もう振り返ることはなかった。
「あ〜〜〜悔しいっ!あーのオヤジ!次はコロス!」
壁に傷が刻まれ、穴が穿たれた魔法屋の前。
グラムザンバーを杖のようにして立ち悪態をつく悪魔の少女。
「あのオヤジも、生意気な神も!
危ない奴はみんなぶっ潰して羊のような連中はあたしが統治して、千年王国を作るんだから!
……あらマントー、いたの?」
「いたのはねぇだろ、いたのは!オレ様まで殺す気か!」
「はい、槍持って」
「ちったぁ話を聞けって……」
「あんたの仕事でしょ。ほら」
「………(このガキ!洗濯板!)
「なんか考えてるでしょ」
「へ?あ、いえいえいえいえ、持たせていただきますです、ハイ」
最後は生存とプライドを秤にかけ、生き延びる道を選んだ。
自分の判断は間違っていたのか?
自答する。
否。自分の判断は、選んだ方針は間違ってなどいない。
ならばこの現状は何だ。
焼け爛れ力も入らない左腕を見る。
それは夕刻に会った女を思い出させ、フィネガンは忌々しそうに舌打ちする。
とりあえず守りきったサングラスを取り出し、かけた。
これから先、弱者は淘汰されますます強者のみが闊歩するようになる。
自分の能力がそいつ等に劣っているとは思わない。
だからといって積極的にやるつもりなどは、無い。むしろより慎重にならねば。
強者どもは勝手に潰し合えばいい。しかし。
――くだらねぇ。だが、面白くもあるな。
自分と肩を並べられるような連中とのしのぎの削りあい。
どこか自分の中に沸き立つ部分があるのも確かだ。
知らず、口の端がわずかに緩んでいた。
【フィネガン(ソウルハッカーズ)
状態:左半身火傷、左腕重度火傷・打撲、消耗
現在地:F04魔法屋よりいずれかへ逃走
所持品:ルールブレイカー
行動方針:生き残る】
【エトナ@魔界戦記ディスガイア
状態:体力消費(目立つ外傷なし)
所持品:なし
第一行動方針:人を探す
基本行動方針:危ない奴を皆殺し
最終行動方針:かみを倒してこの世界を征服】
【マントー@天外魔境
状態:体力消費(目立つ外傷なし)
所持品:魔槍グラムザンバー@ワイルドアームズ3
第一行動方針:エトナについていく
基本行動方針:生き残る】
【現在地:F04魔法屋前・さらに移動】
【時間:PM11:00くらい】
※エトナの行動方針にある危ない奴とはすでに他人を殺した奴、ゲームに乗った奴、
自分に反抗的な奴などです。適当に解釈してください。
今更間違いに気づきました……。
>>326の最後の部分に
まるでラヴクラフトのクトゥルー神話にでてくるニャルラトホテップみたいな存在ね……)
の一文が抜けていましたorz
(3/7より後を修正いたします。すみません)
フィネガンは感心と共にその脅しを反芻する。
やり方は乱暴に過ぎるが、屋内と見るや罠を警戒するその判断。
相手の対応を考慮することなく自らの欲する要求を突きつける手口。
透けて見える自信過剰はマイナスだがこいつ等は裏でも十分やっていけるだろう。
そこまで考えてフィネガンはサングラスを外し、静かにポケットへと収める。
では自分はどうすればよいか。
こういう輩は問いを投げかけた時からこちらの反応を見ているものだ。
それでは自分はこの短い間にどのような評価を受けているか。
自慢ではないがもし普通の裏の連中の思考ならこういう相手は出てきた途端にズドン、だ。
向こうがそこに至っているかは分からないが事態は友好的に落ち着くはずも無い。
ならば、自ら動くしかないだろう。
何より都合良く、私もこういう輩を気に入らない。
「ちょっと、まだn………」
壁に開いた孔に揺らいだ気配に反応して、女の声が止まり、叫びに変わる。
「マントーッッ!!」
向こうがリーダーか。反応も悪くない。だが、遅い。
「んなぁっ!?」
まだこちらを捕捉していないもう一人の大きな物理的輪郭をつかみ、拳を打ち込む。
不意打ちで腹へ打ち込んだというのにほとんど動きもしない相手の様子がチラリと目に入る。
――デカブツが、わかってるさ。
そこから身体を反転させての電撃裏拳。
「ウッキャアァァーーッ!!」
電気が放つ独特の衝撃に体中を駆け抜けられデカブツが苦悶する。
間髪入れず蹴りで吹っ飛ばした相手を見れば大きな槍を抱えた大猿だった。
息をつくわけにはいかない。なぜなら、ここからだからだ。
予想通り私の側面を衝いてリーダー格の方―ガキみたいな女だったが―が足から飛び込んでくる。
大きな動きだ、見えてさえいれば回避は難しくない。大きく二歩バックステップ。
右前方にさっき吹っ飛ばした猿、左前方から体勢を立て直し猛然と向かってくるガキ。
相手を前方に集めたこの配置こそフィネガンの狙っていたもの。
自身最大のEXTRA、『雷震王母の蹴り』。
振り上げる蹴り足に合わせてあたりを天へ突き上げる衝撃が襲う。
向かってくる奴にはカウンター、倒れている奴には追い討ちの一撃が、炸裂した。
悠然と、立っていた。
「私は乗っているつもりはないが、人に指図されるのは嫌いでな。
命までは奪わん。格の違いが分かったなら消えろ」
葉巻が無いのが不満だが、まあいいだろう。
奴等に敗北感を刻み込んだはずだ。
だが…若いとはそういうことかも知れない。小さい方が立ち上がる。
知らず、口の端がわずかに緩んでいた。
「好き勝手言ってくれるじゃない。格の違い?だ・れ・と・だ・れ・の?
マントー、ヤリッ!槍よこしなさい!」
「まだやるか?次は…ないぞ」
「うるさいっ!」
クロスレンジへ飛び込んで来るガキに応じ、ベアナックルでの接近戦が始まる。
確かに年齢の割には自信を裏打ちするほどの動きの良さと場数慣れはある。
だが、自分の技術は我流の拳に破れるような代物ではない。
大きなヒットは得られないが確実に攻撃を回避し、ジャブでダメージを増やしてゆく。
「このぉっ、チョロチョロとっ!…早くっ!槍っってるでしょう!!」
少し間合いが開き、ガキが闇へ向けて叫ぶ。
「ハイッ、り、了解です、姐御!」
闇から風切り音を伴い飛んできた巨大な槍を、事もなく目前のガキが掴み取った。
「得物か。だが…」
異変に気付き、そこで言葉を切り相手をじっと見る。
空気が変質してゆく。ガキが、共鳴するように槍が異質な力を醸し出し始めたのが分かる。
「黙って魔王の姿を目に焼き付けるがいいわ。いくわよ」
おぼろげな光が槍先から帯をなし始める。
それはゆっくりと暗闇を裂いてゆき、
空間に鈍い色つきの光を放つ帯が翻り、のたくり、そして薙ぎ払う。
左半身をなめられるようにその光を受けた。
火炎とも違う焼けるような痛み。あえて似たものを探せばメギドの光か。
ともかく消え飛びそうな意識を何とかつなぎとめ全身に危険、の判断を送る。
さらに幅を増し地面をのたくる帯を確認し、後ろの魔法屋の陰まで一気に走り出した。
「逃がさないっ!!」
後方から怒号。反射的に地面へと身を投げ出す。
たわんだ光の帯が頭上を越え、既に穴の開いている壁を斜めに切りつけた。
それが継続の限界だったのだろう、あたりに満ちていた鈍い光が消えてゆく。
「そのままッ!!死んでろぉ!」
追撃が後ろからくる気配がわかる。あの大槍の一撃を受ければいつでも天国行きだろう。
――だが、まだだ。私は死なん。
反転しつつ飛び起き、わずかにずれた軸から焼けた左腕をカウンター気味でぶち当てるように先を取る。
腕はいってしまったかもしれないが構わない。
ひるんだ勢いに畳み掛けて、回し蹴りがガキを弾き飛ばした。
後は背を向け一気に駆ける。もう振り返ることはなかった。
「あ〜〜〜悔しいっ!あーのオヤジ!次はコロス!」
壁に傷が刻まれ、穴が穿たれた魔法屋の前。
グラムザンバーを杖のようにして立ち悪態をつく悪魔の少女。
「あのオヤジも、生意気な神も!
危ない奴はみんなぶっ潰して羊のような連中はあたしが統治して、千年王国を作るんだから!
……あらマントー、いたの?」
「いたのはねぇだろ、いたのは!オレ様まで殺す気か!」
「はい、槍持って」
「ちったぁ話を聞けって……」
「あんたの仕事でしょ。ほら」
「………(このガキ!洗濯板!)
「なんか考えてるでしょ」
「へ?あ、いえいえいえいえ、持たせていただきますです、ハイ」
最後は生存とプライドを秤にかけ、生き延びる道を選んだ。
自分の判断は間違っていたのか?
自答する。
否。自分の判断は、選んだ方針は間違ってなどいない。
ならばこの現状は何だ。
焼け爛れ力も入らない左腕を見る。
それは夕刻に会った女を思い出させ、フィネガンは忌々しそうに舌打ちする。
とりあえず守りきったサングラスを取り出し、かけた。
これから先、弱者は淘汰されますます強者のみが闊歩するようになる。
自分の能力がそいつ等に劣っているとは思わない。
だからといって積極的にやるつもりなどは、無い。むしろより慎重にならねば。
強者どもは勝手に潰し合えばいい。しかし。
――くだらんな。だが、……面白くもある。
自分と肩を並べられるような連中とのしのぎの削りあい。
どこか自分の中に沸き立つ部分があるのも確かだ。
知らず、口の端がわずかに緩んでいた。
(7/7:パラメータは修正ありません。ご迷惑をおかけしました)
第 一 部 完
第二部 始
第 二 部 完
保守。
もうだめぽ
勝ったッ! 第三部完ッ!
風が吹く。
木々の枝を揺らし、地に落ちた葉が揺れ舞い上がる。
静寂に包まれた島の森の中で、それは一層強く響いた。
風に揺られ、かすかな煙の匂いが鼻についた。先ほどまで燃えていた焚き木の跡だ。
ようやく闇になれた目で跡を凝視する。焚き木が照らしていた、ついさっきまでぼんやりと明るかった空間が、陽炎のように瞳にまだ残っている。
一方、感覚は常に自分達の外へ向け、常に周りに気を配る。
そうやって気を張り巡らしていると、再度、吹きつづける夜風が彼女の鼻に燻った匂いを運んできた。
それが何ともいえなく、彼女の心を不安に駆り立ていく。
―――このまま自分はこうしていていいのだろうか?
闇に覆われた時間が長くなるにつれ、そんな思いが彼女の中を幾度となくよぎり始める。
直ぐ横に、気持ちのよさそうに寝ている少女がいる。
この凄惨な状況下においても、この少女は決して諦めないのだろう、挫けないのだろう。
この島に連れられてから行動を共にしている少女は、必ず脱出するという誓いを掲げ、常に希望に満ち溢れていた。
だから彼女もそれに従った。
―――こんな絶望的な時でも前に進もうとしている少女がいるのだから。
それに死んでいった仲間のためにも……。
しかし、現実と言うのは斯くも虚しい。
神は、そんな彼女達をあざ笑うかのように残酷なゲームの真実を告げる。
既に20人近い人が死んでいる。今もこうして何処かで戦いにすらならぬ殺戮も繰り広げられているのだろう。
しかし、現実と言うのは斯くも虚しい。
神は、そんな彼女達をあざ笑うかのように残酷なゲームの真実を告げる。
既に20人近い人が死んでいる。今もこうして何処かで戦いにすらならぬ殺戮も繰り広げられているのだろう。
はっきりと悪く言ってしまえば、シェーナと共にいるこの少女、アメルは理想主義者だった。
ほんの半日ばかり付き合ってみて解ったが、彼女は理想を重視する余りに現実と言う物が見えていない。
理想論に固執過ぎる余り、現実的な打開策を捉えることが出来ず、自滅するタイプだ。
アメルは優しさに満ち溢れた少女だ。だが彼女の抱く考えは、いずれ足枷になる時も来る。
それが適正できる物でない事は、薄々と解っていた事だが、シェーナは十分承知していた。
彼女がアメルと共にいるのはそれなりの打算と理由があるからだ。
あながち、アメルの誰でも助けると言う考えは、このゲームにおいても間違ったものではない。
例えば、気の弱さ等から一瞬の迷いなどで錯乱状態に陥っている者もいるのが想定できる。
そういった説得の余地あるマーダーも少なからず点在しているだろう。
次に。生きて帰りたいからという理由で乗っている者の場合。
この手のタイプは、もし脱出する道を示せれば、賛同してくれる可能性もある。
最後に。脱出するために有益な情報を持っている、または手がかりとなれるような知識、能力、アイテムを持っている人物。
ゲームに乗っている者の中にも、そのような人物がいる可能性は多いにある。
そう考えるとアメルの、「殺人者でも助ける」という不殺の信念は、メリットが十分にある。
だからこそ、シェーナは彼女の考えもまた一つの道を示せるものとして共に行動してきた。
だが、それに比例して受けるデメリットも多すぎる。
軽く考えてみただけで、
“どうしようもない極悪人が相手だった場合はどうするか?”
“相手を殺さず戦力を削ぐ事が出来ない場合はどうするか?”
と延々と状況に応じて幾つでも問題点は浮かんでくる。
349 :
ゲーム好き名無しさん:2005/09/29(木) 00:50:47 ID:4FirqcLe
いらね
アメルは説得すれば必ず道は開けると信じてやまない。
だが、現実にはそうはいかない相手もいる。
そんな時、彼女はどうするのか?
―――戦力が上回る相手ならいい。だけれども……。
相手の方が圧倒的に強かったとしたら?
殺さずに倒すなんていう余裕がない状況に陥ったら?
アメルなら、その刃を受けても自分の過ちを気づかずそのまま倒れるに違いない。
そうやって死ぬのはまだいい方かもしれない。
―――もし、彼女の意図をせずして人を殺してしまったとしたら?
これからの状況次第で、それは存分にあり得る事だった。
一体、その時、アメルはどのような思考に陥るのだろう、決断を下すのだろう。
見張りをしつつ、シェーナはそんな想いを抱いていた。
「だから私がここで殺されるわけには行かないわ!」
七色ビームによりかみは死んだ。
ビュウとコレット
風が煙を運ぶ。
四散して、灰色に立つ尾はなくなっても、その僅かばかりの匂いを乗せて。
それを受け取って嗅ぎつけた男達は、匂いの元へと少しずつ近づく。
片方が獲物の背後を取るべく、ゆっくりと裏手へと回っていった。
相手に気取られぬよう、気配を消し、森に同化するかのように、木々の枝と地の葉が鳴らす音に隠れながら。
二人は、少しづつ距離を詰める……その思いに殺意を抱かせて。
アメルを試すかのごとく。
【シェーナ@レジェンドオブドラグーン
所持品:バーンナウト(炎魔法/残り3個)ドラグーンスピリット(白銀竜) 】
【アメル@サモンナイト2(睡眠中)
所持品:無し】
【共通目的:参加者の治療と脱出】
【マグニス テイルズオブシンフォニア
所持品:アップルグミ×2
最終行動方針:豚共に名を知らしめ豚共を皆殺して、神子供を殺す
第一行動方針:ハーフエルフの少女(アーチェ)と会う 】
【ガラハド@ロマサガ1
所持品:ブラッドソード、トラップカプセル・フリップパネル
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:復讐を果たす(最優先でグレイ達を殺す】
【現在位置:C3中央の街道脇】
【現在時間:AM3:00頃】
ガラハドはアメルの乳をもみしだいた。
>>348 しかし、現実と言うのは斯くも虚しい。
神は、そんな彼女達をあざ笑うかのように残酷なゲームの真実を告げる。
既に20人近い人が死んでいる。今もこうして何処かで戦いにすらならぬ殺戮も繰り広げられているのだろう。
が被りました。すみません。
揉岡
憔悴して後ろを振り返る。背後にはさっきと同じように闇が広がっているだけだ。
安心と不安が相半ばした気持ちになっている自分に気付く。
手にはちょうどグリップできるだけの長さで折れている棒。その折れた口は心なしか焦げている。
二度目の敗北が、フェイトを容赦なく打ちのめしていた。
一度目の敗北は――
絶対的に優位に戦闘を勧めていたし、もう一度やれば必ず勝てるはずだ。
とはいえ与えられた剣はもうこの手には無いし、僕はあいつを倒せなかった。
残念だけれど結果はこうだが、負けたわけじゃない。
けして負けたわけじゃない、と言いたい。
しかし、二度目の敗北は――
結局のところディアスは放送まで初期位置からさほど離れていない農家での休息を選んだ。
武器も無い、手がかりも無い、他人との縁も無い。
ここまでの道すがら適当な長さの自然のままの木の枝を拾って小枝を落としてみたが、
こんなものがまともな武器になるわけもない。
ちょっと堅いものと本気で打ち合えばすぐに負けて折れてしまうだろう。
だが、休みは取れたもののこうしていても何かが得られるわけではない。
神の言葉を契機として彼は農家を後にし、夜の島へとあてどなく歩き出した。
剣代わりにも杖代わりにもならない棒を何となく伴にして。
それからゆっくりと警戒を怠らずに夜の帳の下りた島を移動していく。
天性の剣士たる彼にとって闇の奥からこちらを窺っているその気配に
気付くのはそう難しいことではなかった。
特に反応するそぶりも見せずにすっと立ち止まる。
それから、ただ確実にそこにいる何者かの気配を察知すべく静かに集中する。
人の動向には余り興味はないが降りかかる火の粉は、払う。
――今は何時くらいだろう?あの声から推測すると…、わからないな。
あの戦い以来逃げるように森の中へ飛び込み、そのまま彷徨っていた。
すっかり暗くなった森の中を慎重に進んでいたフェイト。
自分の呼吸音がやけに大きく聞こえる。
その男を見つけたのはそんな中であった。
暗さのために男の詳細な状況はわからないが遠目からは何も持っているようには見えない。
最初は一方的にこちらが見つけたものだと思っていた。
こちらはまだ見つかってはいないはず。
その自信過剰な思い込みはすぐに覆される。
闇の向こうから視線がこちらを突き刺した気がした。
もしかして後手を踏んでいたのは自分のほうなのではないか?
だが、それでもフェイトは退くという選択は考えもしなかった。
その裏にはもう負けることは出来ない、勝ちを重ねるしかないという思いがある。
フェイトから後退の選択肢を奪っていったのは、一度目のもやもやした敗北の体験。
――今度こそ、勝つ!
相手の視線の死角へと飛び出し、高速で方向転換しての蹴り。
奇襲一閃、タイミングでは見切れるはずのない攻撃を、
それでも長身の男は腕で受けて見せた。
――っ!ありえないだろっ!?
攻撃の起点を止められて少なからず動揺したフェイトに対して
長髪の男からの反撃、その拳が打ち下ろされる。
なんとか被弾は回避して、一旦立て直すべく間を取ろうとするがしかし。
「空破斬」
一歩も動かずに、男の腕の振りが空間を薙いだ。
確かに、男は棒状の何かを持っていた。
初撃の瞬間に見たそれは一見してそこらで拾えそうなただの木の棒のようだったが。
そんなものまともな武器のたぐいではない。それでこんな真似を?それとも何かの武器なのか?
ともかくも衝撃が波をなして自分の後退の動きを追ってくる。
フェイトにはどうする手も無く、なすすべなくそれを浴びるのみ。
ダメージはないもののぶれる視界には追撃すべく向かってくる男の影。
―わかってるさ、それくらいはっ!
暴れる衝撃を無理に抑え込みながら手に力を集中、狙いはカウンターでのショットガン・ボルト。
放たれた5発の火球は突っ込んでくる男を捉え焼き尽くす…はずだった。
読み違えたのは、スピード。
疾風のごとく迷い無く踏み込んでくる相手に向かい炎が炸裂する時は訪れない。
それより早く相手の一撃がフェイトの胴を打ち抜いていた。
そこから、戦闘は近接して互いの打撃を防ぎあう接近戦へと移行する。
衝撃波と打撃でアドバンテージを持っていかれたことからも流れはフェイトの不利に傾いていた。
「くそっ!剣さえあれば!」
格闘で自分と互角に渡り合える相手とやるには攻撃のオプションが無さ過ぎる。
剣の無い今頼れる技はリフレクト・ストライフ、ショットガン・ボルト、ぐらいか。
イセリアル・ブラストはこれだけ速い相手に単発で使うのは現実的ではない。
初めにこの島に降り立った時に持っていた剣・ジャッジメントセプターはもう手の中に無い。
失なわれたものは大きい。それは自分のせいだ。
チャンスは、与えられていたのに。
「ふん…言い訳か。下らん……十秒だ」
至近距離でぶつかり合っている男から見下したような台詞が聞こえ、
男が頭から何かを外すのを見た。
今まではっきり顔が見えなかったのもあって気にも留めていなかったが何か隠していたのか。
フェイトがその白く細長いものが何であるかを理解したのは、突きを絡め取られてから。
それはピンクのハートが踊っている布…ハチマキであった。
リアクションが思いつくよりも先に身体が引き込まれる。
次の瞬間にはそのハチマキはフェイトの首に絡み付いていた。
「時間の無駄だったな」
苦悶の中で、その声がやけに耳についた。
そしてすぐ暗闇に順応して残っていた視界が真の闇へと沈んでいく。
意識が、絶たれていく。
―ああ…僕は…負ける…のか?
…
……
………黒の濃度が薄くなっていく。闇から闇へ、意識が覚醒する。
辺りはまだ森の中。どうやら自分はまだ「ゲームの中」にいるらしい。
二つの声が聞こえた。片方はさっきの男、相手は見知らぬ声だ。
自分が意識をなくしていたのはごく短い間だったらしい。
ともかくまだゲームオーバー、ではない。
自分の袋はどこかに吹っ飛んでいってしまったのか手近にはない。
『逃げる』…正直最低の選択肢だがもうこれを選ばざるを得ないだろう。
すぐそばにあった妙な折れ方をした自然そのままの木の棒の一部を立ち上がりざまに掴み、
一気にダッシュして逃げ去った。
暗い森の中。
振り返って見た背後に全く気配がないことを確認し、フェイトはため息をついてその場に座り込む。
自分は強くないのではないか。自分より上の実力者がかなりいるんじゃないか。
もうプライドも自信も完全に打ち砕かれてしまった。
与えられた武器も失った。あげくに袋さえも失った。
自分がこんな情けない様を晒している間にスコアを上げている奴もいる。
その劣等感がまた別角度からフェイトを苛立たせていた。
手元に残っているのは木切れ一つ。
……そう言えば、さっきの長髪の男はもしかしてこれを使って技を放ったのだろうか。
加えてあんなハチマキさえ使いこなす戦い方。
省みるに自分は剣がないことを言い訳に何の工夫もない戦いを繰り返しただけ。
…自分に足りない部分はこういう面ではないだろうか。
最後に勝てる好勝負は楽しいけど、このゲーム内では負けたら一発終了。それは楽しくない。
そうだ。所詮ゲーム、何をやったって勝てばいいじゃないか。
アイテム、施設、地形、言葉、演技、トリック、作戦。
使えるものは何でも使う。出来ることは何でもやってみる。いかなる手段でも。
――……時間の無駄じゃなかったな。少なくとも僕にとっては。
新しいやり方になにか目の前が開けた気がする。
力だけでなく知恵もまた全力で競い合う、唯一の正義は勝ち残っての生存だけ…
これはそういう趣旨のサバイバル・シミュレーター。
わかっていたはずなのにどうも自分はバトルにこだわり過ぎていたみたいだ。
力ずくでの考え方がそもそも間違いだ。ここで必要なのは総合力。
代価は高くついたがいい勉強になった、と感じられる。
フェイトは再び立ち上がり、何かを求めるように再び歩き出した。
フェイトが走り去った森の中、残された者達が対峙する。
「これはタイミングが悪かったか。追わなくてもいいのか?」
木の陰から姿を現した男、ロイドは人影が消えていった方向を目で指しながら問い掛ける。
問われた方、ディアスはそちらに一瞬だけ目を向けたが、すぐに再びロイドを睨み直す。
そのままゆっくりと腕を上げ、戦いの構えをとった。
ハートを相手に向けてハチマキを両手でピンと張る姿はどこか可笑しいが、
その後ろにある気迫は紛れも無く本物である。
「……目的は何だ。それとも…やるのか?」
【フェイト・ラインゴッド@SO3
状態:袋・基本アイテムなし
現在地:F02
所持品:折れた棒の一部
第一行動方針:武器・アイテムを手に入れる
第二行動方針:スタン・長身長髪の男(ディアス)に報復
第三行動方針:強い相手に勝つ
基本行動方針:とにかくゲームに勝つ】
【ディアス・フラック@SO2 】
現在地:F02(北東部の森)
所持品:アイドル命のハチマキ
第一行動方針:現れた男(ロイド)に対応する
第二行動方針:武器をどうにかする。
基本行動方針:神を倒す。(気に入らない)】
【ロイド@ レジェンドオブドラグーン
現在地:F02(北東部の森)
所持品:ドラグーンスピリット(神竜王)
第一行動方針:英雄(ドラグーンスピリットに選ばれる者)を探す
第二行動方針:目の前の男(ディアス)に対応する
基本行動方針:かみを倒す】
【現在時刻:PM11時少し前】
※ディアス・ロイドの周辺にフェイトのものだった袋が放置されています。