突然の事に目を丸くする山田様。モジモジとしたまま、ゆっくり口を開く。
「・・・私、あなた…。……好き。
……およめさんに、、、…なっても………いいよ。
でも、・・・私、守らないといけないの。
この星。この地球。
にいさまといっしょに。
……だから、村を離れられないの。
・・・・・・だから。
・・・ごめんなさい。」
突然の事に目を丸くする山田様。モジモジとしたまま、ゆっくり口を開く。
「・・・私、あなた…。……好き。
……およめさんに、、、…なっても………いいよ。
でも、・・・私、守らないといけないの。
この星。この地球。
にいさまといっしょに。
……だから、村を離れられないの。
・・・・・・だから。
・・・ごめんなさい。」
何を言ってるんだ。君の兄はもう死んでしまったじゃないか、と返すキミに、ジトッと視線を送る山田様。
「…にいさま。もう、命はないの。
でも、…魂は永遠。
この地で、この場所で、…私と一緒にいてくれるの。守ってくれるの。
…だって、……にいさま、鳳雷にいさまは
……神だもの。」
呟く様に囁く山田様。そして、またその苔生した大岩に頬を寄せる山田様。
「…にいさま。……立派でしたの。
この汚れた、醜く愚かな人達ばかりのこの星の為に・・・。
痛みも、死も恐れず、その身を捧げたの。
ととさまも、信者達も、…みんな、みんな立派だっていってる。
…にいさま。…私の誇り。鳳雷にいさま・・・。」
しかし、このままじゃ何時山田様も死ななきゃいけなくなるか判らないんだぞ!
とのキミの言葉も、山田様には馬耳東風だった。
「……にいさまと同じ、聖なる存在になるのなら・・・。
……それ、恐いことじゃないの。」
ふとキミの頭に嫌な考えが浮かぶ。ひょっとして、山田様はある種の精神疾患なのではないだろうか?
幼少期、仲の良かった実兄の死を目の当たりにしてしまった少女。その強烈な衝撃の事実を、彼女はどう自分に言い聞かせたのだろう?
・・・納得出来る答えを一人で出せる訳はない。
だから、山田様は周囲の大人達の言葉に縋ったのではないか?
いくら子供でも騙される訳のない、「神」だの「不死鳥」だのといった言葉に縋り付き、彼女は兄の死という事実から逃げたのではないだろうか?
・・・・・。
助けなきゃいけない。この少女を、兄の死の時から延々とその心を覆い尽くす、心の闇から・・・。
連れ出さなきゃ、いけない・・・。
そんな思いが過ぎり、キミは激しい情熱のまま、山田様のか細い腕をムンズと掴んだ。
「・・・。
何?何、するの?」
山田様の両腕の自由を奪い、苔生した大岩の上に山田様を押し倒すキミ。
「・・・・・。」
重なり合い、そのまま山田様の上にもたれかかるキミ。
キミの視線と山田様の目が重なり合う。そして、山田様の視線を覆ったキミは、息を整えることも出来ず、荒げたまま山田様に語りかける。
わかるかい、山田様。君は今ボクに襲われているんだよ。
「…え?」
そして山田様の華奢な肢体を抱きしめるキミ。山田様がブルブルと小さく震えているのが肌越しに伝わる。
更に近付く二人の視線。山田様の甘い少女の柔肌の薫りが、嫌が応にもキミの息を荒々しくしていく。
尋常ならざるそのキミの目に、まだ幼さの残る無邪気な山田様も、先天的に貞操の危機を感じ取ったのだ。
「……い、いやぁぁぁ〜〜〜〜っ!!
やめて!やめてぇ〜〜っ!!」
力の限り抵抗する山田様。しかし、その力は余りに弱々しく、キミの腕の中から逃れることは出来なかった。
その僅かな抵抗がゆっくりとキミの激情を刺激していく。理性を揺さぶり掛けていく…。
自制しつづけるであろうか?
「たすけてっ!
…にいさまっ!!!にいさまぁ〜っ!!
たすけてっ!たすけてぇーっ!!」
小さな足掻きはキミの両腕を解き放つ術にはならなかった。
懸命の叫びは誰にも届かなかった。ここは聖域。村の信者も畏れ多く、近付かぬ不浄の地。
ましてや、死んだ兄になど・・・・・。
「……ううっ。
…ひどいの。……ひどい。」
遂に泣き出す山田様。その泣き濡れる瞳が理性を崩そうとする。だが、キミはそれを山田様の小さく柔らかな肩を軋むほどに抱きしめ、抑制した。
そして、ゆっくりと語りかける。
どうしたんだい?おにいさんは、鳳雷様は、助けにこないのかい?と。
「!?」
残酷な言葉だって事は判ってる。でも、言わなきゃいけない。キミは続ける。
この地球を、全人類を守る筈の神様が、どうして妹の貞操の危機も守れないんだい?
「…そ、、、それは……。」
しかたがないよ。だって、キミのお兄さんはもう死んでしまったんだから。
もう、ここにはいないんだから・・・。
「…ちがう。違うの!違うのっ!!にいさまは、にいさまは・・・・。」
懸命に否定する山田様。でも、何が起こるわけでもなく、キミは未だ山田様の上に覆い被さり、その自由を奪っている。
その気になれば、いつでも間違いを起こすことが出来る。そう、今すぐにでも。。。
「にいさま!にいさま!!」
必死に兄を呼ぶが、何も起こりはしない。キミは静かに語る。
・・・。
人間は、死んじゃったらそれで終わりなんだ。
大好きな人と語り合うことも出来ない。大好きな人に何にもしてあげる事ができない。
お兄さんは死んじゃったんだよ。
もう、何もする事が出来ない。
大好きな妹を守る事も出来ないんだ。
だって、死んでしまったんだから。
「…ちっ、、、……ちがうの。
……にいさまは…、、、ちがうの。。。ちがうのぉ…。」
声もあげずに泣き噎び出す山田様。
その弱々しさ。頼りなさ。
こんな少女に地球を守れだって?全人類を背負えだって?
無理だ。無理に決まってるじゃないか!
キミは声に出して叫ぶ。
生きてる人間にだって出来ることは僅かなのに、死んだ人間に何が出来るっていうんだ。
死んじゃおしまいなんだ。生きなきゃ!生きていてこそ、人間は何かが出来るんだ!!
「・・・・。」
山田様。
お願いだから、誰かの為に死のうなんて考えないで。
君の死を望む人達の為になんて死なないで。
君が生きて、生き続ける事を望む人のために・・・、
…生きて。
「・・・ううっ。
・・・・・・・・。
うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
火が付いた様に泣き出す山田様。
小さな頃から、ずっと押さえてきた思いが一気に吹き出したかのように。
その細い腕で、キミを力の限り抱き付いてくる。
「いないの!もう、…もういないの!
…にいさま死んじゃったの!ここに、ここに落ちて死んじゃったの!!
…私、…私、泣いて頼んだのに、…にいさま、……にいさまいっちゃったの!!
いかないで、いかないでって、私、何回も何回も言ったのに・・・。」
涙で息も落ち着かぬまま、封じ込めていた思いを怒濤のように吐き出す山田様。
ゆっくり抱き起こし、優しくその背中を抱いてさするキミ。
「…もう嫌っ!嫌なの!!だいすきなひと、誰も、誰も、、、いなくなっちゃうの嫌ぁ・・・。」
大丈夫、ボクはここにいる。ずっと傍にいるよ。山田様が、ボクから去ってしまうまでは・・・。
そう優しく語りかけるキミ。
「……私、やだ。
…あなたと、あなたと会えなくなっちゃうの、やだ……。
……だから、、、
……私、
…村から、…教団から、・・・逃げる。」
小さく語りかける山田様。
その決意に満ちた熱っぽい瞳に、彼女の覚悟を確信したキミ。
そして、力いっぱい告げる。
ありがとう。生きてくれて、ありがとう。
と。
・・・・・。
そして地獄が計画した脱走作戦を山田様に説明するキミ。1ヶ月後の深夜、山田様を迎えに来ると告げた。
「…うん。…わかったの。」
真っ赤に腫らした顔から涙も乾き、軽い微笑みさえ見せる山田様。
「……これって、『愛の逃避行』…ね。
…ちょっと、・・・ステキなの。」
呑気だなぁ、と漏れた言葉に、互いの気が緩んだ事に気付き、声を出して笑い合うキミと山田様。
「……。ね?」
ん?問い返すキミ。
「…誓い。
…ね、誓いの、……しるし。
…しよ?」
と言って、目を閉じ、ぎこちなくもその桜色の小さな唇を尖らせる山田様。
キミもそれに応じるように、山田様の小さな唇と、唇を重ねた。
小鳥のような、小さな軽いキスだった。
「・・・うふっ。…うふふっ、……えへへへへっ。」
またも赤らみ出す頬を巫女装束の袖口で隠す山田様。
ヒョコッと出した瞳を上目遣いに、キミを見つめ、ポツリと囁く。
「…赤ちゃん、……できちゃったかな?」
キミもつられて耳が熱くなるのに気付く。
じゃ、来月。と言って手を降り、滝壺から去っていくキミ。
「…うん。…待ってるの。」
まだ顔を向けることが出来ぬまま、片手で顔を隠したまま手を振る山田様を後に、キミは山を下りていった。
「・・・んで、どうだった?」
梺の駅で待っていた地獄が問い詰める。キミはただ一言、「頼む。」とだけ返す。
「おっしゃ!!」
オンボロ車のエンジンをふかし、帰路を爆走していく地獄。
取り留めもない与太話の中、ふと真顔になった地獄が一言、
「あんがと、な。これであの小僧に、なんかしてやれた気がするよ。」
と漏らしたのだけを記憶して、張り詰めた緊張が緩んだ為か、車中で泥の様に眠り落ちたキミであった。
285 :
ゲーム好き名無しさん:02/06/28 14:18 ID:zI6XZYbM
保全age
・・・誰か、
レスくんないかなぁ・・・。
一月もほっときゃそりゃ廃れようモンさぁネ。。。
もうチョイだ。
ガンガレ、オレ。
負けるな、オレ。
287 :
ゲーム好き名無しさん:02/07/16 22:18 ID:Nkpi76hs
なんかもの凄い勢いで駐屯してたスレが廃れて寂しい。
Jの気持ちが分かった気がするような夏の日。
後さ、なんでそんなに尻の穴が好きなの?
山田様を幸せにしてやッて下さい。
おながいします。
289 :
ほむら萌え☆ ◆9tvVa1Aw:02/07/26 04:12 ID:HWaJ8jOA
ううっ、サンキューサンキュー。
>>287 盛者必衰たぁよく言ったもんでげして。。。
ちなみにケツ云々は単にウケるから(w
「ビブロス系とか好きだからー!!」
>>288 へぇ、必ず・・・・。
山田様は自分でもかなりお気に入りなキャラになりそうなんで・・・。
今月中には終わらせます。・・・多分、・・・きっと、・・・恐らく、
・・・気が向けば(ダメジャン)
290 :
ほむら萌え☆ ◆9tvVa1Aw :02/08/12 03:29 ID:j+YG48rF
ううっ・・・。
出来てるトコまでうp。
特殊イベント6「Runaway〜脱出、又は旅立ち〜」
(必要条件;特殊イベント5発生後、1/31に自動発生)
(発生時期:1/31 発生場所;陸雄村)
ついに時は来た。
約束の日時。キミは地獄のオンボロ車で山田様の元に向かう。
キミと山田様の脱出計画の概要はこうだ。
このまま山田様を拾うなり、隣町の駅へと直行し、そこで特別夜行特急に乗って村を脱出。
本州の主要都市を経由ながら縦断するこの列車で途中下車し、降りた先で用意してある偽名を使って2人で暮らしていく、というものであった。
これなら逃亡先がアバウトな上に広域の為、教団の追手も煙に巻けるであろう、という作戦であった。
地獄から渡されたバッグの中には幾ばくかの現金と、駅ごとに偽造の戸籍謄本とアパートの契約書が用意されており、どこの駅で降りても即偽名で生活できるように下準備がされていた。
至れり尽くせりの準備に感謝の言葉を繰り返すキミ。
「へへっ、仕事先までは用意できなかったがなぁ。まぁそれは自分で何とかしてくれや。」
モクモクを煙を上げるシケモクを咥えながら呟く地獄。
あとは山田様を連れ去るだけだ!キミの胸を様々な高揚感が沸き上がってくるのであった。
山田様の邸宅の近くまで来ると、地獄は車を人気の無い所で止めた。
「家の前まで行くと怪しまれるからな。こっからは其処の山道を通って行きな。
その道を登ったところが千姫ちゃんのおうちだからなぁ。」
車中から指示する地獄を背に、キミは一目散に山道を駆け上っていった。
腕時計を確認する。山道を駆け上り終え、山田様の家の裏口に回った頃には丁度約束の時間となっていた。
しかし山田様の姿が見えない。どうしたのだろう?勝手口から裏庭に忍び込めたものの、仮にも教祖様の家屋である。見張りこそいないが、邸内には何人もの人間がいる筈だ。モタモタしていてはいつ見つかるか判ったものではない。少し焦りだし、裏庭をウロウロし始めるキミ。
そんなキミの目に、屋根裏の窓から降りてくる一本の綱が降りてくる様が飛び込んできた。ギョッとして綱の方に駆け寄るキミ。衣服やタオルを結わいで出来たそのロープの上から、山田様がゆっくりゆっくりと降りてきた。
モジモジとゆっくり降りてくる山田様を不安げに見つめるキミ。そして予想通り、
ブチッ!
急ごしらえのロープは、痛々しい音を立てて・・・。
「・・・切れた。」
しかし運良く、キミは既に山田様の真下に居り、山田様はそのちいさなお尻をキミの顔にポスンと落として無事にキミにキャッチされたのであった。
お尻に手を当て、顔を赤らめる山田様。
「・・・えっち。」
首に軽い捻挫に似た痛みを覚えるキミ。なんで裏庭で待ってなかったんだ、と小声で怒鳴る。
「・・・真似、・・・したかったの、映画の。・・・ごめんなさい。」
ぺろりと舌を出して謝る山田様。その愛らしい仕種に萌えていたいが、キミと山田様にはそんな暇はない。
どこからともなく、誰かの声が聞こえてくる。まずい!見つかったかもしれない!キミは山田様を抱えて、全速力で邸内を抜け出ていった。
山田様を「お姫様だっこ」の状態で抱えたまま、無我夢中で逃げ出すキミ。
山道の急な勾配を駆け下りる。しかし両手に山田様を抱えたままでバランスを崩し、転んでしまう。
その拍子に放り投げ出されてしまう山田様。キミも転んだ拍子で膝を打ってしまい、その痛さに膝を抱えた。
「・・・大丈夫?」
先に立ったのは山田様であった。真っ白な巫女衣装を泥塗れにしたまま、キミの腕を引く山田様。
「・・・もうちょっと、だよね?
・・・いこう。」
山田様に腕を引かれたまま、山道を駆け下りるキミ達。林間を潜り抜けると、そこに待機していた地獄の車が見えた。
「早く乗れ!」
地獄に言われるまでもなく、キミと山田様は飛び込む様に地獄の車の後部座席へと滑り込んだ。
「行くゾォッ!」
爆音を立てて走り出す地獄の車。見る見るうちに山田様の村が遠ざかっていく。
成功だ。成功したんだ!
安堵の息をつくキミ。横に座る山田様と視線が重なる。転んだ時の泥が顔に付いたままであった。キミは手で泥を払ったが、逆にその白い頬がより真っ黒になってしまった。キミの手も転んだ拍子で泥塗れになっていたのだ。
「・・・っぷ。
うふふ。うふふふふ。」
泥だらけのまま、クスクスと笑いあうキミと山田様であった。
「ケッ!おい御両人!イチャイチャすんのは逃げた先でやってくんな!」
・・・・・。
ココデ、ツマル。
キンジツチュウニ、オワシタイ。
296 :
ゲーム好き名無しさん:02/08/23 00:06 ID:qXqGzEJa
age
297 :
ほむら萌え☆ ◆9tvVa1Aw :02/08/24 05:55 ID:tK9RQLFv
さて・・・・・。
終わらせますか。
298 :
『おやさい板であいがっちゃ!』:02/08/24 05:57 ID:tK9RQLFv
そして目的の駅に着いたキミ達。
降りるなり、繰り返し繰り返し地獄に例を言うキミ。
「へへっ、仲良くやんなよ。結構手間も金もかかったんだからなぁ。」
そんなキミと地獄を余所に、山田様は今来た道の向うを眺めている。どうしたんだい?と尋ねるキミ。
「・・・だめ。」
え?
「・・・やっぱりダメ!
・・・私、帰らなくっちゃいけないの!」
「おいおいおい!突然何言い出すんだよ、おチビちゃん?!」
山田様は一目散に先程の道へと駆け出した。必死にその腕を掴んで止めるキミ。どうしたっていうんだ?
「・・・やっぱりダメなの。
・・・村は、私の村は・・・。・・・私が守らないといけないの。
・・・あの村、なんにも無いの・・・。
・・・教団だけなの。・・・お金、・・・作れる事、教団しかないの。
・・・村のみんな、頼りにしてるの。・・・村を守れるの、教団で稼ぐ事だけなの。
・・・だから、・・・だから。。。。。」
以前、山田様は「金は不浄」と言っていたが、・・・本当は知っていたのだ。理解していたのだ。
山田様は、あの村にとって何故に教団が必要だったのかを。
そうだ。兄の死からの呪縛は解けたが、今までずっと暮らしてきた村の事を捨てる事を、キミは強いなくてはいけないのだ。
言葉に詰まるキミと地獄。
その沈黙を裂いて、1人の大男が山田様の腕をムンズと掴んで引っ張り上げる。
「・・・ととさま?!」
「帰るぞ、千姫。」
なんという事だ?!山田様の父親が此処を探し当てて来たのだ!どうやって探り当てたのだろう?霊感の成せる技か?いや、そんな事よりも、連れ去られそうになる山田様を奪い返さねば!必死になって山田様の父に襲い掛かるキミ。
しかし、
「ふんっ!」
丸太の様な足でミゾオチを蹴られ、キミは呼吸困難となる。
「こんな男に騙されおって!!色気付くのもいい加減にしろ、千姫!」
「・・・とと、・・・さま。」
のた打ち回るキミを地獄が抱き起こす。息の整わないキミの代わりに、父親を呼び止める地獄。
「お、おい!!おいこのダルマ親父!テメェそんな可愛い千姫ちゃんまで、裕和の坊やみたいな目に遭わせてぇのかよォッ?!」
ズンズンと山田様を引っ張っていた父親が足を止め、キミと地獄を睨み付けた。
「何をたわいない事を・・・・・。俗人がッ!
この千姫も、裕和も、そしてこのワシも。村に生まれた者が村に殉じるのは当然の事!!
裕和は死ぬべくして死んだのだ!村が望んだ、故に死んだのだ。当然の事、ただ、それだけの事だ!!」
「な・・・・・なんだよソレ?
じゃあテメェは自分の息子を死に追いやったのも、『当然の事』でおしまいかよ?!」
「当然だ!下らんおしゃべりは終わりだ!帰るぞ、千姫!!」
狂ってる。
正に狂気の沙汰だ!
キミは整いきらない呼吸のままに、山田様を奪い返そうと立ち上がった。
奪い返さなきゃ!大好きな山田様を、こんな連中と一緒にいさせちゃいけない!
そんな思いが、ふらつきながらもキミの足を一歩一歩踏み進めていった。
だが、この狂気の父親から山田様を解き放ったのは、キミではなかった。
パチーン!
夜空に頬を打つ平手の音が響く。
山田様だ。山田様が父親の頬を平手打したのだ。
幼さの残る、その愛らしい顔は涙でグシャグシャに崩れ、止めど無く流れ出る涙のまま、さらに2回、3回と父親に平手打ちを続けた。
「・・・ととさまの・・・・バカ!
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
ついにはポコポコッとゲンコツで胸板を叩き始める山田様。
「・・・わたし、わたし。にいさま死なないで、って頼んだのに!
・・・ととさま、・・・ととさま止めてくれなかったの!止めてくれなかったの!
・・・なのに、なのにっ、
・・・ととさま、ととさま、・・・にいさまの事、なんでもなかったみたいに言うの?!
ひどいの!・・・・・ひどいのっ!!」
更に大粒の涙がボロボロと流れ落ちる山田様。父親の袖を掴み、ぶんぶんと振り回しだす。
「ととさまなんてキライ!ダイっキライ!!
ととさまも!村も!教団も!
・・・・・みんな、・・・みんなダイッキライ!!
わたし、大好きなヒトとずっと一緒にいたいの!・・・ずっと、・・・ずっと。
・・・だから、わたし、
・・・もう村に戻らない!とうさまのところにも!教団にも!
わたし、・・・この人と、・・・わたしの大好きな人と・・・・・・
・・・逃げるの。
・・・・・遠く、・・・・・遠く。
もう、・・・とうさまにも遭わない!」
山田様が父親を跳ね除け、キミの胸元に飛びついてくる。そしてキミの胸の中で、再び火が点いたように泣き出す山田様。
「・・・・・。
フン!
フハハハハ!!
色ボケもここまできては、どうしようもないワイ!
千姫!この地球の命運よりも男一人を選ぶような、愚か者にもう用はないわ!!
その愚にも付かぬ凡人の男と共に、何処へなりと消えてしまえばいい!
貴様は汚れ果てた俗人に成り果てたのだ!そんな俗人に聖フェニックス教団の巫女など務まろうものか!
去れ!消え去れぃ凡俗の徒よ!!
貴様の代わりなど、どうとでもなるわい!
ウワハハハハハ!ウワーーーーハッハッハッハッハッハ!!!」
静まり返る深夜の山林に木霊する父親の大嘲笑。
「おい、今がチャンスだぞ!早くしねぇと電車が出ちまうぜ!」
山田様を抱きかかえるキミに地獄が耳打ちする。ハッと我に返り、キミは地獄から渡されたバックと山田様を無我夢中で引っ張りながら、駅に停車中の列車の中へと飛び込んでいった。
人気の無い始発の特急列車の中、ボックスシートに腰掛けるキミと山田様。
やっと落ち着き、泣き止んだ山田様。巫女装束の袖口で顔を拭き取ると、無邪気な笑顔をキミに向けた。
「・・・・・これから、よろしくおねがいします。・・・・・なの。」
ペコリと一礼して、恥ずかしそうに微笑む山田様。キミもつられて頭を下げる。
キミ達を軽くクイッと引っ張ると同時に、ゆっくりと電車が進み始めた。
ガタン、ゴトンと軋む車輪の音が、順にテンポを速めていく。先程の駅はもう遥か彼方。
地獄はどうしただろう?それよりも、本当に山田様の父親は、アレで自分達を見逃してくれたのだろうか?
落ち着きを取り戻すなり、不安が次々と沸き上がってくるキミ。何よりも、本当に山田様とふたりだけでやっていけるのだろうか?
次々と浮かぶ不安に頭を締め付けられるキミ。しかし、その不安も、車窓から郷里の村を見つめる山田様の後ろ姿に、一瞬に吹き飛ばされてしまったのであった。
今まで離れた事の無かった故郷の山々が、車窓の流れる景色と共に遠ざかって行く。
村を通り越した頃だった。山田様は車窓から身を乗り出し、去り行く故郷の地に別れの言葉を投げかけた。
「・・・さようなら、かかさま。
・・・さようなら、ととさま。
・・・さようなら、にいさま。
・・・さようなら、さようなら。
・・・みんな、
・・・みんな。
・・・・・さようなら!さようなら〜〜〜〜〜っ!!!」
大声を張り上げ、何度も何度もさようならと続ける山田様。息が切れ、はぁはぁと大きく肩で息を付きだす。
キミはそんな山田様を、何も言わずに、ただ、・・・ただ抱きしめ続けた。
二人を揺らしながら、電車は真っ暗な闇の中を走り続けていく。まるで、先の判らないキミ達二人の未来を暗示するかのように。
でも、キミは何も恐くはなかった。
今、キミの胸の中で、愛しい少女の胸の鼓動を感じられる。わずかな吐息を感じていられる。これからも、そう、ずっとこれからも・・・。
この小さな少女を守っていく、その喜びと共に生きていくのだ。不安など、どこに感じられようか。
そんな思いを抱いたキミは、希望と勇気が胸の中に沸き立つのをゆっくりと感じてきたのであった。
そして、山田様を抱きしめる両腕の力を、ほんの少し、ぎゅっと強めるキミであった。
<Birthday ENDINGへ>
<Birthday ENDING>
あれから3年の月日があっという間に流れた。
流れ着いた見知らぬ町で、新しい名を名乗り、キミと山田様は一生懸命働いたのであった。
辛い事もあった。若さ故の行き違いがすれ違いもあった。喧嘩した日もあった。もうおしまいだと思った日もあった。
でも、キミは山田様の細く、白く小さな手を握る度、その儚さを、されど逞しく耐え抜く強さを、改めて感じ直し、
・・・そして二人、再び愛し合って生きていく。その誓いを交わし合ってきたのであった。
そして山田様が16歳になった時、キミと山田様は婚姻届を提出した。二人は、正式な夫婦となったのであった。
町外れの小さな神社で祝詞を上げてもらった。安物のレンタルの結婚装束を纏った山田様と二人っきりの結婚式であった。
「・・・ごめんね。・・・和服の方が高かったのに。
・・・私、被ってみたかったの。・・・角隠し。」
照れながらキミに告げる山田様。白粉で塗り込められた頬が、桜色に上気するほど照れた顔を見せる山田様。
イミテーションの指輪しか買えず、新婚旅行など出来る余裕も無かったキミたちだったが、そんなキミ達に、意外な贈り物が贈られてきた。
「・・・あ、・・・あの、・・・あのね。
・・・・・・・・・・・・私。
・・・お医者さんが、・・・言ったの。
私、春にね・・・・・、
・・・おかあさんに、なるの。」
そして春が来た。
はやる心のままに病院へと駆け込むキミ。そう、今日が山田様の出産予定日。無事出産が終えたとの電話を受けたキミは、一目散に病室へと向かった。
病室を開けると、窓際のベッドに山田様の姿を見付けた。
小さな小さな、玉の様に愛らしい赤ん坊、そう、キミと山田様の愛の結晶を抱きかかえ、愛おしげな眼差しを我が子に送る山田様。
キミも我が子の姿に感無量になり、上気した想いが瞼に込み上げてくる。よくやった。よく頑張った。そう、何度も何度も、喜びの言葉を繰り返すキミ。
山田様はまだ目が開ききらない我が子の顔をキミに向け、柔和な笑顔で語りかける。
「・・・ほら、裕和。あなたの、ととさまですよ。」
裕和?まだ決めてもいなかった我が子の名をキミに告げる山田様。
「・・・さっき、ととさまが来てくれたの。
男の子です、って言ったら、・・・にいさまの名前を付けてくれたの。
……にいさま、短くて、辛い事が多かった人生だったけど、
・・・この子、そのぶん、にいさまの分も長く、幸せに生きて欲しいから、って。」
そしてその時、キミは全てを悟った。
知っていたのだ!
何故村から逃げ出した時、山田様の父が自分達の居場所がわかったのか?
何故今まで教団の追っ手もなく、二人静かに暮らしてこれたのか?
知っていたのだ。山田様の父は、今までの事を知っていたのだ!脱出の計画も、その後の二人の生活も、
・・・そして、山田様を教団の狂気から救う術が、キミとのかけおち以外に無いという事を!!
知っていたのだ。
キミは病室を駆け出し、山田様の父を追った。
礼を言わなくてはいけない。この3年間、自分達の事を知りながら、何も言わず誰にも語らずに、二人の生活の隠し守ってきてくれた事を。
そして謝らなくてはいけない。たった一人の愛娘を奪うように連れ去ってしまった事を。
その思いのまま、病院を飛び出し、山田様の父の姿を追うキミ。しかし、一向にその姿を見付けられないキミ。
だがその時、探し回るキミの耳に、こんな会話が飛び込んできた。
「・・・なかなかの盛況だよなぁ、アンタんトコの新しい村興し。『巫女さん祭り』だっけ?村に来た女性客に巫女さんのカッコをさせて、お姫様な扱いをしてもらえる、と。
観光ってなぁ、やっぱり女に受けネェといけねぇモンだからなぁ。カワイイ格好を楽しんだ上に村人全員かいずいてくれるってなぁナカナカいいアイデアだやねェ。
ひっひっひっ。」
「うるさい」
「しっかし、あん時アンタに前もって作戦教えておいて、やっぱり正解だったなぁ。
優しい千姫ちゃんのことだから、村やアンタの事気懸かりになって、折角逃がしたのに又村に戻ってこられちゃ元も子もないからなぁ。
その為に、アンタに一芝居打ってもらって、憎まれ役やってもらったのは、やっぱり大正解だったよなぁ。
ケケケ、オレってやっぱり抜け目なぇやなァ。」
「黙れ」
「あんだよォ、折角初孫の出産場所の病院教えてやったのにヨォ。その厳つい顔してヨォ、デレデレにやけてやんの。笑っちまうところだったゼ。なぁおじいちゃん♥
ヒッヒッヒッヒッヒ。」
この声、間違いない!山田様の父と、そしてあのいやらしい笑い声……地獄だ。
声の聞こえた駐車場に駆け付けるキミ。いた!地獄だ。
「・・・おー痛てててて。照れてやんの。だからって殴る事ァねぇだろうによォ。」
相変わらずの薄汚いハンチング帽姿の地獄に声を掛けるキミ。
「いよぅ、久しぶりじゃぁねぇか。ちょいとツラが引き締まったようだなぁ、ええおい?」
そして山田様の父の姿を探すキミ。だが、既に周囲には見当たらず、立ち去ってしまった後のようである。
「おじいちゃんはテレてるんだよ。それに、娘ブン盗ってった野郎に、ありがとうとも言えはしめぇよ。」
ありがとう?何故自分に?聞き返すキミ。
「ヘヘヘッ。結局あのダルマ顔のオヤジも人の子ってぇ事よ。教団を運営していきゃ、いつ千姫ちゃんを生贄にしなきゃいけねぇとも限らねぇ。かと言って村の収入資源の教団をハイそうですかで終う訳にもいかねぇときた。
んじゃ、間に立って、誰かが千姫ちゃんを安全なトコに連れ去ってくれりゃぁ・・・、と言う処に、オメェが出てきたって訳サ。
あの千姫ちゃんを連れ出せるのはオメェだけだったからなぁ。千姫ちゃんの愛しい愛しい思い人のオメェだけが、な。
まぁ村もそれを機に新事業始めて、それなりに成功した様だし、オメェらも元気にやってるようだし、四方八方丸く収まり、メデタシメデタシってな訳さ。
ただ、オレはチョイと割を食っちまって面白かぁねぇなぁ〜。出費の割にあんまり記事に出来ねぇ終わり方になっちまったからな。
醜聞専門のオレに、こういうお涙頂戴のハッピーエンドは専門外でね。
はぁ〜あ、なんか労多くして益少なし。それもまた人生かねぇ〜っ。ハァ=3」
全くの無駄でも無かったんじゃないか、と返すキミ。
だって、山田様の兄、山田裕和の無念を晴らせたんじゃないか?妹を救う事で。
「ケッ!バカ言ってんじゃぁねぇや。オレはオメェみてぇなおセンチじゃぁねえんだ。ネタだよネタ。メシのタネになるようなネタの為にやってきたんだよ!オレは!!」
クスリと笑うキミ。その割には本気で山田裕和に詫びてたじゃないか。「許してくれ、許してくれ。」って。
そう言い返すと、珍しくも顔を紅潮させて同様する地獄。
「う、うっさいハゲ!オメェこそ、何が『キミを望む人の為に生きてくだちゃぁ〜〜〜い』だ。よく真顔であんな臭いセリフ言えたモンだなぁ?え?イッヒッヒッ・・・。」
動揺するキミ。ふたりっきりだと思っていたのに・・・・・見ていたのか?!
「たりめぇーよ。オメェじゃ正直少し不安だったからなぁ。まったく、聞いてるコッチが恥ずかしかったゼ。ケッケッケ!」
恥ずかしさのあまり、地獄に食ってかかろうとするキミ。だが、又も地獄に足をすくわれて転ばされてしまう。
「ヒヒヒッ、進歩がねぇぜ。おとうちゃんになったんだから、もうチョイしっかりしなよ。
んじゃ、アバヨ!」
そしていつもの癖の、嫌味なハンチング帽を弄る仕草をしながら、地獄は愛車のオンボロ車に乗って去っていった。
ボンボコと今にも壊れそうな音を立てながら去っていく地獄の車。その後ろ姿を見ながら、キミは「やっと終わった」と一段落付いた思いに肩を落とした。
そしてふと、キミの頬を春の生暖かな風が過ぎる。
確かに、一つの事が終わった。でも、それと同時に又新しい事が始まったのだ。
キミは又、山田様と息子の裕和の待つ病室へと戻っていく。
長い廊下を踏みしめながら、思いを馳せるキミ。
人は一人で誰かを救う事なんて出来やしない。それどころか、助ける事すらままならない。
助け合っていくのだ。小さな力を少しずつ分けながら、ちょっとずつ、ちょとずつ支え合っていくのだ。
現に、今までの3年間、キミは山田様の父や、地獄や、数え切れない人の助けがあってこそ、こうして生きてこれたのだ。
一人で背負えるものなんて、ほんのわずかなんだ。
だから、これからも、キミは山田様と二人で背負っていくのだ。二人で助け合って生きていくのだ。
そして今日これからは、もう一人、支えあう家族が増えたのだ。
その喜びをもう一度確認しよう。3人で。
その為に、キミは二つの安らかな笑顔を見ようと、もう一度病室の扉を開けるのであった。
<END>
何はともあれお疲れ様でした。大団円ですな。
山田様も幸せになッてよかッた…ッていきなり子持ちですカー!!
しかしこうしてあの山田裕和様が生まれたのか…(w
おー…ついに…お疲れさまでした。
山田様、こないふうになるとは…いきなり子持ちになってチト驚きましたが。
巫女さん祭りに参加してみたいとおm;y=-(゚∀゚)・∵. ターン
312 :
ほむら萌え☆ ◆9tvVa1Aw :02/08/27 01:35 ID:e26NBt8s
ううっ、ついにオワター
最期まで読んでくれた皆様方、
ありがとう…ありがとう…・゚・(ノД`)・゚・。
>>310 うん、山田様ですからな(w
ご出産オチも結構綺麗にオトせてよかったんじゃぁと…(数字合わないけど(w
>しかしこうしてあの山田裕和様が生まれたのか…(w
ア、ナルホド・・・・・(キヅキマセンデスタ…
>>311 ホントですな(他人事のごつ(w
自分で読み返してなんだけど……
とても「ミノタウルスの皿」読んだ後に思い付いたネタとは思えないなぁ(w
巫女さん祭り、どっかでやってないかなぁ・・・。
んでは。
Jたん本当にお疲れ様ですた。
漏れもこんな素晴らしいメンツに咥えて、もとい加えて頂きながらあの末路…
まさに一寸先は豊島園(意味無し)。本当に何と言うかスマンカッタYO。
何より散々色々言われながらこの企画を完結させたあなたに、心から敬意を表しマス。
…みんな元気ですか?いつかまた、どこかで。
あら焼き柱。たん、まだいたんだ(w
315 :
ほむら萌え☆ ◆9tvVa1Aw :02/09/10 00:07 ID:VZvI71gZ
316 :
ほむら萌え☆ ◆9tvVa1Aw :02/09/10 00:17 ID:VZvI71gZ
>>313 これはこれは。
ギャルゲコテのアカレンジャー(命名;オイラ)様、お久しぶりで。
>何より散々色々言われながらこの企画を完結させた
ホント、結構いい根性してるね、我ながら(w
名無しでも結構ですので、また何処かでお会いしましょう。
世界の果てででも(w
・・・ホントはギャルゲ板で再会したいですが、ネ☆
>>314 わーい、名無しさんもチェキしててくれたデスね兄チャマ♥
とかRe-Pureに(様々な。ええ、『様々な』!)期待を込めつつレスしてみたりするオイラ(w
まぁ、この際ですから、柱兄さんとオイラとで一緒にハァハァしましょう!
Yes!今日からオレ達ハァハァ兄弟!!ケ☆テーイ!
・・・あ、オイラジャックかレオキボンヌ。
>>314氏、キミはロトかエレクね。(大まけでミレニアム)
318 :
名無しより愛をこめて: