ハンガリー語ってどうよ?

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48しい坊
>44 :名ありさん

> マジャール語では姓名の順序でしょ。
> 日本語、中国語などと同じで。
> なぜなの?

 ハンガリー語は母音の長短を、日本語同様区別するので、magyar は“マ
ジャール”ではなく“マジャル”の方がより適切でしょうね。日本語として
は汚いですが...。

 で、「姓」とは必ずしもどの民族にもあるわけではありませんよね。で、
「姓」のある民族に限って言えば、姓は名を限定する修飾語です。つまり
「太郎」、「どこの太郎?」、「誰んちの太郎?」という太郎の説明になる
わけです。「山田さんちの太郎」とかね。ですから多くの言語では姓と名の
間は「〜の」で繋がれています。「名 von 姓」とか「名 de 姓」とかね。日
本語でも「姓 の 名」という形は昔は多かったですよね。ハンガリー語でも
「姓-i(旧字体では -y)〜 名」という形があります。「Osama bin Laden」
も同様の構造を持っています。Laden の息子である Osama というわけです。

 ここからわかることは、要するに姓を先に書くか、後に書くかは純粋に文
法的な問題で、修飾語が先に立つ言語では姓が先になり、修飾語が倒置され
る言語では姓が後になるというのが原則です。と言うことは、民族の血が同
系だとかどうかということとは関係なく、修飾語は先に立つか、後に立つか
しかないわけですから、確率論的には 50 % で、世界の言語の半分は姓を先
に書き、残りの半分は姓を後に書くということになります。だから、実は、
ハンガリー人も日本人も姓を先に書くということは本当はたいした意味はな
いのです。でも、それを言っちゃあ面白くないから、一応「日本人もハンガ
リー人も同じように姓を先に書くでしょ (^^)?」のように言ってハンガリー
人に対する日本人の興味を引きつけるわけです (^^;)。でも、ただの偶然で
も、日本人にとっては嬉しいですよね。

しかしものごとは単純に文法だけでは割り切れないのであって、例えば
ハンガリー人と同系のフィンランド人は、周辺の印欧語族の文明(専らス
ウェーデン人ですが)あまりにも彼らと比べて高度な文明を持っていたため
に、彼らの母語の文法に反して、公式には名姓の順に姓名を記述します。し
かし、フィンランド人も田舎では非公式には「姓の名」のように姓を属格に
して名乗るようです。非常に健全ですな (^^)。逆に修飾語を倒置する典型的
なラテン系の言語であるはずのルーマニアでは公式には当然名姓の順序で記
述するはずなのですが、隣のハンガリーの影響があったのか、なかったのか
は全くわかりませんが、新聞や名刺ではしばしば姓名の順に記述しますね。
ルーマニア人に「ルーマニア語では本当は名姓の順のはずなのに、あなたの
名刺はなぜ姓名の順なの?」と尋ねると「えっ (^^;)!?」と困惑します。な
んとなく、そういうもんだということになっているようです...。
49名無しさん:01/09/27 00:39
>>48
> Laden の息子である Osama というわけです。

スレとは関係ありませんが、誤解を招かないように。
Usama 氏の父親の名は Muhammad です。
最近、どっかの放送局に送りつけられた声明文の署名は
Usama bin Muhammad bin Ladin
となっていたようです。
50しい坊:01/09/27 00:42
修飾語の語順についての補足説明です。

日本語やハンガリー語では修飾語は被修飾語の先に立つので、人名も文法的に姓名の
順となるのが基本だと先程述べました。(しかし、その建前はその言語の話者である
民族と周辺地域の民族との文明の格差によっても変わってくるとも述べました。)

姓名の順と同じように、日本語とハンガリー語の共通性として、日付は「年・月・
日」の順に書くとか、住所は大きい方から小さい方に書いて行くとか言うこともよく
取り上げられます。(郵便番号も通常、住所の先頭に書くというところや、ハンガ
リーの封筒には日本と同じような朱色の郵便番号を記入する枠があるという所まで同
じですが、これはハンガリーが日本の東芝製の郵便番号読み取り機を使っているから
に過ぎません (^^;)。)

ハンガリー語では日付は「2000. e'vi december hava'nak 31-e」とか「2000. e'vi
Nagyboldogasszony hava'nak 31-e」、「2001. december 31.」、「2001.XII.31.」の
ように記述されますが、これも修飾語の順に従っています。つまり「31日」、「いつ
の31日?」、「12月の31日」、「いつの12月の31日?」、「2001年の12月の31日」と
いう具合に修飾語の順でこうなっているのです。ドイツ語やフランス語の印欧語族は
修飾語が後に立ちますから、当然、「日・月・年」の順になるわけです。(英語の
「月・日・年」という語順は精神分裂的で、なぜそうなっているのかはわかりません
(^^;)。)

住所も同じです。「Budapest, II. keru:let, To:ro:kve'sz u't 2. sza'm, II.
emelet, 1. ajto'」(ブダペスト市二区テレクヴェース通り2番3階1号室)等も、
やはり文法的な修飾語の語順によります。つまり、「ハンガリー語では日本語と同じ
ところがたくさんある。名前も姓名の順だし、日付も年月日の順だし、住所も大きい
方から小さい方に書いて行く」と我々はよく宣伝するわけなのですが、本当はたった
1つのことを膨らませて言っているだけなのですね (^^;)。う〜む、ネタをバラし
ちゃった (^.^;)ゞ。