イタリアのマイナー言語について語る

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46何語で名無しますか?
ウンブリア語について

ウンブリア語は、ウンブリア地方の町 Iguvium (現代イタリア語名 Gubbio)で
発見された7つの石板に記された言語を一般に指す。(それ以外には極めて限られた
数の碑文が知られているだけ)
石板にはローマ数字でT〜Zまで番号が振られ、VとWを除いて、表面aと裏面bがある。
TとUのa/b,V,W,Xのa及びXのbの一部はウンブリア語独特の
文字、それ以外はラテン文字で書かれている。従って、その言語は異なった年代に
書かれ、当然テキストの言語にもその年代差が現れる。
ウンブリア語固有のアルファベットの音価を最終的に確定させたのは Lepsius なる学者。
石板は1444年に発見され、1456年に市当局に買い取られ、今もその市役所の所蔵。
石板はもとは9つあり、2つが1540年にベニスに持ち去られ、以後その目撃情報等はなし。

ウンブリア語アルファベットには通常 v,u と転写し分けられる2つの
文字があるが、ラテン語アルファベットでは混同されている。
言語学的にはuと書かれた場合、それは長音[u:]の反映である場合がある。
尚、有声閉鎖音d,gを表す文字がない。
記された内容は、Iguvium の町内外の地域が建設された丘への償い(贖罪)行為と
して犠牲を捧げる際に守られるべき規則や、その時に使用される祈りの決まり文句を
詳しく示したもの。
47何語で名無しますか?:2010/03/23(火) 00:23:09
1)石板T,a 2-3行目
preveres:treplanes:iuve (pre veres Treplanes Juve
krapuvi:tre:buf:fetu Krapuvi tre buf fetu)

ラテン語訳: Ante portam Trebulanam Jovi Grabovio tres boves facito (=sacrificato)
「Trebula 門の前で Grabovius神のために、3頭の牛を屠るべし。」 

2)石板T,b 10行目
pune:puplum:aferum:heries:avef:anzeriatu:etu (Pune puplum aferum heries, avef anzeriatu etu)

ラテン語訳:Quum populum circumferre (=lustrare) voles, aves observatum ito.
「民衆を調査したい時は、鳥の観察に行くべし。」

語釈・註釈:
1)pre = ラテン語 prae、veres 「門」;複数形のみで使用。(いわゆるpluralis tantum)
ほとんどのスラブ語でも「門、扉」は通常複数形で使用する。
Juve の発音は恐らく [juwe:] < *diowei : *dious (cf.ギリシャ語Ζευς) の与格。
Grabovius は石板で言及される神々の別名で語源不詳。
fetu の -u は[u:]。 つまりラテン語の o, o: は狭化される。buf = bove:s も参照。

2)pune < punne <*qwum-de; ラテン語 quando を参照。
puplum <*poplum <*populum; -bul-/-pul- でのuの脱落に関しては、上の Treplanes も参照。 
anzeriatu <*am-seriatum; -seria- はラテン語 serva:re と同根。am- <*amfi-
ラテン語 ambulo:「散歩する」 やギリシャ語 amphi-theatron (αμψιθεατρον)「円形劇場」
の前接辞を参照。
又私見では etu [e:tu:] <*ei-to:d; つまり語根は *ei- そのままで、ラテン語の
i- のような弱階梯ではない。
ウンブリア語では、-tu(m) が不定詞と目的分詞いずれの語尾にも現れているのに注目。