1 :
何語で名無しますか? :
2010/03/07(日) 16:13:03 類似するスレが見つからなかったので建てました。 初期、印欧語の単語は全てCeC(Cは子音)という語形だったとか、 消失してしまった喉音の痕跡だとか、s mobileの由来だとか。 そういうことについてお話しませんか? とは言っても、私自身興味は持っていてもほとんど何も知らないし、 要領よくまとめられたwebサイトも知らないし…。 もし興味のある方、学識のある方がいらしたら書き込んでくださいませ。
3 :
何語で名無しますか? :2010/03/07(日) 17:07:23
>>1 言語学板にあるだろ。 要領よくまとめられたwebサイトなんてあるかよ!
過去200年にも及ぶその知識の蓄積がどんだけのものか知ってんの?
日本人の知識は極めて断片的。殆どの場合特定の語派の言語には強くても、
他の語派については本でざっと読んだ程度の知識しかない学者ばっかり。
西欧に行われる言語全般に強い人はいても、そういう人はイラン語派の詳細は
殆ど知らないし、日本にはイラン語学の大家(例えば灯台の言語学教授)は何人か
いるが、多分彼らは俺がもっとも得意とするバルト語やスラブ語の専門的なことを
質問しても、恐らく断片的にでも答えられればいい方だろう。
Blackwell Textbooks in Linguistics シリーズの Benjamin W. Fortson W,
Indo-European Language and Culture - an introduction, 2004, 468p (最近第二版が出た)
は、印欧諸語の全体を鳥瞰するにはいい本だが、個々の言語の専門家から見れば
(書名にもあるように)単なる概説書でしかない。
印欧比較言語学の「基本中の基本」的な知識であって、高度に専門的なことなどあまり書かれていない。
4 :
何語で名無しますか? :2010/03/07(日) 18:15:06
>初期、印欧語の単語は全てCeC(Cは子音)という語形だったとか 一つだけ教えてやる。それは印欧祖語の「語根」が究極的には *CeC- に 還元されるという、いわゆる「3文字語根説」で、20世紀の世界最高峰の 印欧語学者の一人であるフランスの Emile Benveniste が、わずか33歳の 時に提出した博士請求論文「印欧語における名詞形成の起源」で唱えた説。 現代のいわゆる「喉音説」(Laryngal theory)は、この画期的な説に立脚している ところが大きい。(もっとも喉音説の誕生の直接のきっかけになったのは、 スイスの天才言語学者 Ferdinand de Saussure が若干21歳で書いた、もはや 伝説的とさえいえる論文「印欧諸語における原始的な母音体系に関する覚書」。 これは博士論文としては却下されたが、今までどんなに優れた言語学者が書いた博士論文 より価値がある。) 例えば英語 mind (古英語 [ge-]mynd, ゴート語 gamunds) は、印欧語根 *men- に接尾辞 *-ti- が付いてできたもの。*men- はラテン語 memini "I remember, I think of" にもその語根が本来の意味とともに現れている。(語頭の me- はいわゆる畳音。その前綴りの影響で語根母音 e→i の変化が生じている) 接尾辞 *-ti- はアクセントを持っていたため、それが *men- に付く時 その語根を弱化して、基本母音 e が失われる。更に主格形では語尾 *-s が付加される。つまり印欧祖語形は *mntis。 子音に挟まれた n は成節的子音として母音と同じ扱い。多くの言語ではその前に別の 母音を伴って再現されるが、ギリシャ語とサンスクリットでは完全母音化して a となった。 その CnC はゴート語で CunC, リトアニア語で CinC となるので、 上のゴート語形 (ga-)munds や リトアニア語形 mintis (いずれも「思い(出)」の ような意味。(ゲルマン語では印欧語の t は原則として d となる: グリムの法則) 尚、リトアニア語形が想定される印欧祖語形にいかに近いかに注目。
5 :
何語で名無しますか? :2010/03/07(日) 19:34:24
1です。
気づかずにスレ建ててごめんなさい。
>>2 氏、ご親切にリンクまで張っていただきありがとうございます。
速やかに削除依頼出しておきます。
>>3 >>4 氏、言語学版でも貴殿の書き込みに
出会えることを楽しみにしております。
| 釣れますか?
\ ,/ヽ
 ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ↓
>>1-5 ,/ ヽ
∧_∧ ∧∧ ,/ ヽ
( ´∀`) (゚Д゚,,),/ ヽ
( ) (| つ@ ヽ
| | | ___ 〜| | ヽ
(__)_) |――|. ∪∪ ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ヽ
/⌒\/⌒\/⌒\/⌒\|彡~゚ ゜~ ~。゜ ~ ~ ~ ~~ ~ ~~ ~ ~~ ~~ ~~
⌒\/⌒\/⌒\/⌒\/⌒\彡 〜 〜〜 〜〜 〜〜
>1 架空の言語や人工言語に関するスレッドは外国語板には 立ててはいけない慣習になっている。その理由ははっきりしないが、 外国語板でのスレ立てが許容される言語には 1.ネイティブが現に存在するか、過去に存在した 2.ネイティブの語法をもって言語の標準(規範)を決定できる の両方が要求されるようだ。 PIEはネイティブが過去におそらく存在しただろうから1.の要件は 満たすだろうが、それで書かれた資料が何一つ現存していないので 2.の要件を満たさない。 言語学板では架空の言語も許容されるので、弥太郎氏を引き連れて そちらで存分に議論していただきたい。
8 :
何語で名無しますか? :2010/03/07(日) 23:21:09
いや、印欧祖語は理論上存在したことが確定的であり、その話者がどのような 発想や言語心理のもとに印欧祖語を形成し、また運用していたかを明らかにするのが こういう比較言語学の追求するところであるから、このスレッドの存在意義は 十分にあると思われる。 言語とは本来人間間のコミュニケーションの道具として存在しているのであり、 少なくとも自然言語たるものに規範や一定のルールというものがなければ コミュニケーションの道具足り得ないから、その存在が確定的であるならその 言語に規範が存在すると考えるのは当然であり、歴史の闇の中からその規範の 輪郭をあぶり出そうとする研究者のために、このスレッドをこの板で維持するのは それなりに意義のあることと思われる。 単に重複スレというなら、ろくにレスも付かないのに3つのスレをごり押しして 立てているラテン語や、「ドイツ語ってカッコよくね?」などイミフのスレを 乱立させているドイツ語、それにろくに当該言語に関する話題も出ない一方で 政治や民族問題などの談義に耽る言語のスレ、それにエロネタやイタチの 出演者四方山話に終始する犬HKの各言語講座関連スレなどの方が、よほど サーバーに負荷をかけていることになる。 更には言語学板のスレは「インドヨーロッパ語族」というスレタイであり、 それは単にその語族に属する言語を包括的に取り扱うことしか意味しない上、 実際のレスはほとんど有機的なもののない、ただの談義に終始するか、せいぜい どこかの概説書などから引用しただけの各国語による語彙の対照表といった、 皮相的なものが大半を占める。 一方このスレは印欧祖語の実際の姿を明確にあぶりだすことによって、 この語族に属する多くの言語の背後に潜む不規則な形態や語義などの より深い理解にと繋がりうることに貢献するものと考えられ、実質的には 多くの意味の無い糞スレより十分に実用性のあるものとなりえる。 これからは各国語スレと同時に、このスレも言語(文化)史的な理解のために 活用していただきたいw
1=弥太郎
10 :
何語で名無しますか? :2010/03/07(日) 23:28:28
既にこのスレの削除依頼は出ているが、こうしてレスがつくことはこのスレの
存在意義を認知したものとも考えられる。
しかも
>>2-3 のレスなどは、言語学板の「インドヨーロッパ語族」のスレには
見られない、極めて学問的な内容を含んでおり、もはやこのスレを削除しなければならない
決定的な要因はないものと判断されるであろうw
11 :
10 :2010/03/07(日) 23:30:55
外国語板にあってもいい気がする
13 :
何語で名無しますか? :2010/03/08(月) 00:24:33
>>1 >消失してしまった喉音の痕跡
もっとも有名な例を挙げよう。「娘」を意味するサンスクリット形 duhitar-,
ギリシャ語 θυγατηρ (thygate:r), リトアニア語 duktė (古語の属格: dukteres),
ロシア語 дочь (doch'; 属格 дочери [docheri])
尚、煩雑を厭わず属格形を併記したのは、その方が語幹末の子音 -r の存在をよりよく
表示できるため。
ギリシャ語θ(th)は印欧祖語の有声帯気音 *dh に普通対応するが、それを維持するはずの
サンスクリットでは d になっている。ではこの語頭の子音は本来サンスクリットが
提示するような d であり、ギリシャ語の帯気音は別の要因で不規則に発生したものか?
リトアニア語やロシア語の d- は印欧祖語の *dh-, *d- いずれにも対応し、
上の比較からは結論が得られない。
ところでサンスクリットには duh-i-tar-, ギリシャ語には thyg-a-ter-
のように、リトアニア語やロシア語には対応の無い母音 -i-/-a- がある。
そこでこれは喉音的要素H が母音化したものと考え、祖語形に *dhugHter- なる
語根を想定してみる。
サンスクリットではこのH がその直前の子音g と結合し、二次的に帯気音を発生させ
更にその要素は完全に消えうせず、母音化して -i- となったと考える。
こうして得られる *dhughitar- なる二次的語根は、同一語根内に帯気音は並存できず、
かかる場合には前の帯気音が無条件に非帯気化するという「グラスマンの法則」が
適用され、それは自動的に duhitar- に変わる。(サンスクリットでは
印欧 *e は自動的に a に変わる。また *gh > h)
14 :
13の続き :2010/03/08(月) 00:28:32
一方ギリシャ語では *dhugHter- で、喉音H は前の g を帯気化することは
なく、単に母音化しただけで -a- となってその痕跡を残したとすれば、
thygate:r (y < u) なる形は十分説明可能。
リトアニア語とロシア語では喉音H は何ら痕跡を残すことなく完全に消失したと考える。
(印欧語全般で見れば、こういうケースの方が圧倒的に多い)
リトアニア語で *-gt- は子音同化により -kt-, ロシア語では *-gt- > *-kt- > *-č-
(後者の例については、リトアニア語 noktis, ラテン語 nox (属格: noctis) 「夜」が
ロシア語で noch' ночь となることも参照)
こうして喉音の痕跡を詳細に分析し、その消えやすい性質と時に音韻推移に重要な
変化をもたらすことを認識していれば、多くの不規則性を合理的に説明できる。
>>12 だよねーw これからはこのスレでも、印欧語全般に関する様々な疑問を
受け付けます。ただし、当方にも得意な言語とそうでない言語があるため、
対象となる言語によっては当然レス内容のレベルにバラツキが生じることは
当たり前と思ってください。
レスは時には高度に専門的になる可能性もありますので、悪しからず。
>>4 >印欧語学者の一人であるフランスの Emile Benveniste が、わずか33歳の
>時に提出した博士請求論文「印欧語における名詞形成の起源」で唱えた説。
これがセム語と印欧語の関係をあれこれする説の大本の1つの根拠ってことですかね?
少なくとも影響を与え合った程度の関連はあるんだろうか?
あぁ、疑問ばかり湧いてくる。Blackwellの本だけでも捜して見るか。
16 :
何語で名無しますか? :2010/03/08(月) 13:47:44
>>15 君が考えているのはこの本・この学者じゃない。
次の本のことだろ:
A.Cuny, Etudes pregrammaticales sur le domaine des langues indoeuropeennes
et chamito-semitiques, 1924
A.Cuny, Invitation a l'etude comparative des langues indoeuropeennes et
chamito-semitiques, 1946
同様の研究の先駆者には、デンマークのHermann Moeller がいる:
Semitisch und Indogermanisch, 1906
17 :
何語で名無しますか? :2010/03/09(火) 12:58:53
>>3 で言及した Benjamin W. Fortson W の本は、昨夏になって80頁ほど増量された
改訂第二版が出ていて、アマゾンでも手に入る他、丸の内の丸善などでもまだ在庫があるかも
知れない。
なお、Blackwell Publishing は2007年2月に John Wiley & Sons に買収され、
今は Wiley-Blackwell を名乗っているので注意。
新書は6500円ほどするが、まあその価値はある。ただこれが高いなら、旧版を古書で
探せば結構安く手に入るのではないか?
>>16 とん。PIEとか語源辞典で見かける程度の世界なんで、とりあえず概観からと。
そっか、いつの間にかWileyに買収されてたんだ。
なんかWileyと聞くと医学書のイメージが(w
19 :
何語で名無しますか? :2010/03/26(金) 05:16:07
>>13-14 に関して、喉音H が先行子音を帯気化する現象について、もう一つ有名な例が
あるのであげとく。
サンスクリット pánthās 「道」(属格: pathás) とアヴェスター pantå: (同: pathō)
の類似性は著しいが、一つ重要な違いがある。
それはサンスクリットでは主格・属格ともに語幹に -th- が現れるのに対し、アヴェスターでは
主格では -t- になっていることである。
これは印欧祖語形に主格 *péntoH-s, 属格 *pntH-és という形を想定すると解決の鍵が得られる。
インド・イラン語派では印欧 *e, *o *Cn/mC の鼻音n,m は全て a に変化する。
属格では語根母音 *e と語幹テーマ母音 *o 両方が落ち、その影響でアクセントは
語尾へ移動する。
ここで本来は *pentoH-s のようにテーマ母音の後に喉音H があって、曲用変化においても
それが消失せず維持されていたと考えれば、属格形で pathás のような形が生じるのは、その喉音に
よる二次的な帯気化として納得できる。(アヴェスターでは語尾の *-as > -ō)
しかし本当にそうなら、主格形ではその喉音の前に語幹テーマ母音o があるので、
サンスクリット pánthās のようにa がH の消失と引き換えに長音化されるのは
納得できるが、-th- のような帯気化音は不可解である。
ここでアヴェスター形を見ると、そこでは予想通り -t- となっている。
つまり、アヴェスター形のほうがより古く、サンスクリット形は類推作用によって
属格の -th- が主格にも波及したものと結論づけることが可能となる。
(このようにアヴェスター形は時としてヴェーダのサンスクリットよりも古形を示すことがある)
20 :
19の続き :2010/03/26(金) 05:19:31
因みにこの語詞は、主格形で語幹母音o が現れるのに、属格では子音語幹となって 語幹が大幅に(不規則に)作り直されることからも分かるように、極めて古い印欧語彙である。 語根 *pent- にアプラウトが起こって生じた強階梯形 *pont-からは、ラテン語 pons 「橋」(属格: pontis) や ギリシャ語 pontos 「(大)海」が出ている。(ラテン語 pontus はギリシャ語から) 弱階梯語幹 *pnt(H)- からの派生語には、古プロシア語 pintis がある。(エルビング語彙集第799語; ドイツ語 Weyk [= Weg] の対訳語。) バルト語では普通 CnC > CinC。プロシア語では i語幹名詞に作り直されているが、 これはスラブ語でも同じ。(cf. 古ポーランド語 pąć =ロシア語путь) ただし、このように古い喉音H の痕跡が見られるのはインド・イラン語やギリシャ語など、 極めて旧態的な言語に限られる。バルト語やスラブ語には全くその名残は観察されない。 従って、バルト語やスラブ語の説明し難い現象の説明に喉音理論を用いるのは、 並行的なインド・イラン語などにおける言語事実を指摘しない限り、説得力がない。
21 :
何語で名無しますか? :2010/03/26(金) 17:09:46
白水社の文庫くせじゅ「印欧語」で読んだんだと思うんだけど、 ヨーロッパの河川名がほとんど原印欧語の形を残している、っていうのはほんとうかしら。 エルベ川とか、ドナウ川とか?
22 :
何語で名無しますか? :2010/03/27(土) 01:02:17
>>21 本当だよ。エルベ(Elbe)川はラテン語で Albis/Albia というが、これはラテン語の
形容詞 albus 「白い」からすぐ分かる。つまり「清く澄んだ(川)」ということ。
Donau は don-au と分解でき、-au はドイツ語 Au(e) 「川(辺)、中洲、島」のような
意味。ドイツの地図を見ると、南ドイツにはこの語尾を持った地名が多数発見できるはず。
don- は南部ロシアやスコットランド(Aberdeen 近郊)にも同名の川がある。
サンスクリット dānu- は「雫、露」のような意味で、アヴェスターでは「川、流れ」。
本来は「流れる、流動性のもの」が原義。現代オセット語(コーカサス地方で話される
イラン系言語)にはそのものずばり don 「流れ」なる語詞がある。
単に「流れ」を意味する名詞が河川名になるのは、ライン川(Rhein; 英語 to run を参照)も同じ。
23 :
何語で名無しますか? :2010/03/31(水) 21:48:01
板をまたいでスレがあるのは 2ch的には重複ではないそうだよ
24 :
何語で名無しますか? :2010/04/10(土) 16:03:17
>>23 「よりよい方」が認められる場合は重複にもなりうる
25 :
何語で名無しますか? :2010/05/26(水) 18:22:44
アーリア人の言語?
26 :
燕 :2010/05/26(水) 19:10:21
27 :
何語で名無しますか? :
2010/08/24(火) 22:47:44 印欧祖語で、こんにちは、ありがとうって何ていうんですか?