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水先案名無い人:
…福島自然公園、大熊町ふれあいの森。此の場所は今、そう呼ばれている。
嘗て此処は、福島第一原子力発電所だった。地元住民は其のマイナスイメージを嫌がった。
其処で政府は対策として、名前を変えることにした。
放射能のイメージが定着したその名前を、もっと馴染みやすい名前に変えたのだ。
大熊町ふれあいの森。申し訳程度に遊歩道を整備し、周辺区画を開発もした。
御得意の胡麻化しだ。陰惨なものの名前を、口当たりの良いものに変える。
彼等はそうやって、何もかもを胡麻化してきた。自らの都合のいいように。
今でも此処は放射能に侵されている。政府も地元住民も、最早此の土地を見捨てた。
(中略)
此れは、歴史に出逢う旅だ。社会が聞き届けようとせず、
或いは黙殺して捨てようとする声を、私が拾い上げ、光を当てる。
私はジャーナリストとして、此の活動に強い使命を感じている。
此の世界が今どのような姿に成って居るのか。其れを人々に伝える為の、私なりの方法なのだ。
私が、私なりに出来ること。私だからこそ、出来ること。
2050年5月2日、日本、福島県双葉郡大熊町にて記録する。
アサギ・エヴァーブルー。