ゆっくりしていってね!!!のガイドライン ★79

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5水先案名無い人
気がつくと帰宅していた。
 日はすでに落ちている。薄い闇が段々と濃くなっていた。日暮れ前には帰るつもりだったのにこんな時間になってしまったのは、今の私が手ぶらであることが理由になっている。
 目当てのものが手に入らなかったため、知らぬ間に深追いしてしまったのだろう。こんな体たらくはほとんど経験したことがない。いつもは簡単に捕まえられるのに。
 しかも、手ぶらということは、出かける前に持っていったものも無駄に使ってしまったことを示している。何て失態。また作らないといけない。その手間を考えると気が重い。
 いや、それ以上に、積もり積もったものは何も変わらず、相も変わらず覆い被さっているのが、とにかく重い。……重い。
 扉を開ける手に疲労感がまとわりついている。そして、まず鼻が身構えるのがわかる。じめじめとした天気が続くこの頃だ。中では生々しい臭いが息づいているだろう。一度外出してしまうと、「慣れ」はリセットされてしまうのだ。
 滅入る気持ちを奮い起こして、中へ入る。
 明日。とにかく明日だ。今日を耐えきってしまえば、また明日出かけることができる。今度こそ捕まえられる。
 早くあの子に晩ご飯を作って、身体を洗って、寝かしつけてしまおう。汚れたところをふいて、散らかったところを片付けて、私も早く寝てしまおう。機械的な作業を機械的にやってしまばいいだけだ。それで……
…………?
 何だろう。妙な違和感が玄関にまで流れてくる。
 あの子が何かしたのだろうか。昼寝から覚めて、一人で遊んで、ということまでは予想できる。部屋の鍵も閉めてある。粗相などはその範囲で収まるはずだ。
そうじゃない。もっと違う何かが起こっている。
 そう言えば、さっき私は玄関の鍵を開けただろうか。既に鍵は開いていなかっただろうか。外の地面はパラついた小雨で湿っていたが、玄関には私が入ってくる前に足跡がついいていなかっただろうか。
 違和感の正体がわかった。気配がするのだ。まさか、泥棒か。
 取られるようなものはないが、だから安心、というわけでもない。
 恐る恐る靴を脱ぎ、慎重に気配の発生源を探ろうと、まずは居間をのぞいた。
「うーうー!」
いきなり発見してしまった。