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水先案名無い人:
今更その質問をするようでは、子供が死んでも仕方ないな」
軽く我が子の死を宣告されて、テーブルの上のものがビクリと震えたのが闇に伝わる。
「人間への警戒も群れのおきても十二分に通達したはずだが、お前はそれを子供に教えなかったんだろう。さて、先ほどの質問だが、『どうする?』。 生きたいか? 死にたいか?」
返事はまたもなかった。だが、沈黙こそが反応の気配を生じさせていた。黒ゆっくりは続ける。
「人間の領域に立ち入ったこと自体は罪に問われないし、子供が死んだのも子供の自己責任で片付けられるが……
どうする? 沈黙が問いかける。
闇。
しばらくして、小さな声。かすれるような、引きつるような。その嗚咽は部屋の中から割れたガラスを通り、静かな夜風に消された。
かけた本来のものが羽音を響かせて近づいてくる。
丸く、白い、淡い群青の毛髪を持った人面。
一羽、二羽、五羽、十羽と瞬く間に数を増やし、黒ゆっくりの前に集う。
二十数羽のレミリア種のゆっくりだった。人には聞こえない高音域の音波の合図を待って、近くに隠れていたのだ。
群れの長が指示を出す。
「畑と屋内にある『餌』を分割し、運搬しろ。分配は参謀パチュリーに従え。……それから、中にいるレイムには手を付けるな。そのまま死なせてやれ」
サッと夜の闇に散るレミリア種を片目に映し、黒ゆっくりは静かに言葉を置いた。
「なべて世は事も無し」
黒ゆっくり