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水先案名無い人:
の扉 ゆっくりの繁殖方法は、今のところ二通りのものが大勢を占めている。裸子植物タイプと胎生タイプだ。
ほとんど見かけないが、他に確認されているものとして、被子植物タイプ、両生類型卵生タイプ、分裂タイプなどがある。
自分の場合はどれでもなかった。気がつくと、岩穴の中にいて、傍には固い殻が散乱していた。
ということは、鳥類型の卵生タイプなんだろうか。しかし、親は近くにいなかった。爬虫類型の卵生タイプかもしれない。あるいは昆虫型か。
ともかく、最初に起こった欲求は「自分が何者なのか知りたい」ということだった。
何しろ生きる指針を与えるべき親も同族も見あたらないし、そもそも自分が何かがわからなければ種としての振る舞い方も想像できない。「吾輩は猫である」とか言えたらまだ良かったのだが。
かくして、『黒いゆっくりの自分探しの旅』という全くもってモラトリアムな劇が幕を開けるわけだ。そのうち盗んだバイクで走り出すかもしれないな。
いや、自分がゆっくりだと見当がつくのは、もう少し後だ。
とりあえずは魔法の森と呼ばれる場所を、草や木の実やら虫やらを口に含みつつさまよっていた。その中で、ゆっくりを含めた妖怪やら人間やらに出会ったりして。まあいろいろだ。
それでもまだ自分が何かわからなかったわけだ。まあ今になってもそうなんだが。ただ一応の手がかりがつかめたのが、大図書館に滞在したときだったな。
とあるツテでね、来客というか珍獣扱いで招かれたというか持ち込まれた。そこの主たちの好奇心を満たすことと引き替えに、しばらくお世話になったわけだ。
生まれたてでが開いているのが目に止まった。