絶望先生OPに使われるコピペを予想するガイドライン

このエントリーをはてなブックマークに追加
98水先案名無い人
997 :漫画家失格 ◆Zetubo4V/Q [sage] :2006/09/25(月) 23:32:40 ID:O6w3NWm5
  はしがき

 私は、その漫画家の漫画を3作、読んだことがある。

 一作は、その漫画家の、出世作、というべきであろうか。
 スポーツ漫画として始まり、下ネタ漫画として終わった。
 鈍い人たち(つまり漫画について関心を持たぬ人たち)は、
「面白い漫画ですね」とお世辞を言っても、まんざら空お世辞には聞こえないくらいの、
謂わば通俗な「面白さ」みたいな影もその漫画に無いわけではないのだが、
しかし、いささかでも、漫画に就いての訓練を経て来たひとなら、ひとめ見てすぐ、
「なんて、いやな漫画だ」と頗る不快そうに呟き、
毛虫でも払いのける時のような手つきで、その漫画をほうり投げるかもしれない。
 ラーメン屋を始め、それだけでは物足りないと半チャーハンセットを付け、
チャーハンの方が好評でチャーハンと半ラーメンのセットを出し、いつの間にか
ラーメンは出さずにチャーハン専門店になり、看板には『ラーメン』とだけ書かれている。
初めての客は中に入って驚くが、チャーハンは旨かった、そんな店だ。
 しかし、羊頭狗肉だが実に旨い狗肉料理、と言えた。
 私はこれまで、こんな不思議な漫画を見たことが、いちども無かった。
99水先案名無い人:2007/08/18(土) 04:18:43 ID:GFxkqW2F0
 第二作は、これはまた、びっくりするくらいひどく変貌していた。
 とにかく、おそろしく美しい漫画である。そしてそれは変化の美しさである。
彼は弟子に「同じことを繰り返すな」と言っていたそうだが、
この第二作はその言に違わぬ、千変万化の傑作と言えた。
店主の好奇心は次から次へと色々なアイデアで客を楽しませた。
チャーハン専門店で始まったが、それに留まらず、あんかけチャーハンから、
中華飯、さらにおこげ……最終的に激辛カレーと次々と新しい料理を出した。
無論、そこには無数の失敗があり、また食べる人によって好みが違う為、
「始めは良かったのに」「中期がいいね」「怒涛の終盤が傑作」と褒められ、
「最初の方は黒歴史」「中盤以降は酷い」「何あの最終回」と貶められた。
それは同時に多くの者には好まれず、大ヒットとするわけもなかった。
ずっと雑誌の巻末付近で白黒だったが、彼のポリシーを貫いた一作であった。
 あたかも野生のライオンが百獣の王などといった美名とは程遠く、
ハイエナが狩ったレイヨウを横取りして内臓を引きずり出して喰らう様な、
臭く、醜い現実の汚泥に塗れた生々しい姿だった。
 しかし私は若獅子の成長をリアルタイムで見届けられた幸運を忘れまい。
 私はこれまで、こんな不思議な漫画を見たことが、いちども無かった。
100水先案名無い人:2007/08/18(土) 04:19:31 ID:GFxkqW2F0
 もう一作の漫画は、最も奇怪なものである。
 自然に死んでいるような、まことにいまわしい、不吉なにおいのする漫画であった。
 それは巻頭カラーで主人公が自殺未遂をする場面で始まる。さらに不吉なことに、
前の漫画の最終回と同じアイドルが表紙の別雑誌で連載が開始されたのだ。
 その漫画はあたかも、逞しい獅子の雄姿……だが剥製を見ている気がする。
 これまで16ページで長年漫画を描いてきた彼に、12ページの漫画が強いられたのだ。
しかも作品全体のパロディの仕様から多数の美少女キャラを出すことを迫られた。
12ページでは、キャラの出欠取りとネタの処理で手一杯で新しいことは何もできなかった。
「十二ペイジじゃ足りねえよ!」彼は心の中でそう叫んだ。暗号で描いたりもした。
 立地も変わった。デパートのレストランコーナーの前の店から駅前のファーストフードコーナーへ。
スパイシー激辛カレーと大々的に宣伝され、それだけを毎日出す店になってしまった。
確かに激辛カレーは前の店の目玉料理だったが、それ単品が売りではなかったのに。
32種類のスパイス、という売り出し文句でファーストフードを作れ、と命じられたのだ。
それでいて、前の店では使えた強力なスパイス……
「列車テロの首謀者の死刑判決の週に、駅での大虐殺を、萌え漫画のパロで描く」
等の、本当に洒落にならない、毒劇物に指定されるようなスパイスの使用は禁止された。
 彼のポリシーである変化は許されず、「売れるより、新しいことをしたいから」といった、
良く言えば理想、悪く言えば餓鬼臭い逃げが出来ず、彼は量化された。
 それは獅子の成長した完全体だが、死んで動かぬ安全な剥製なのだ。
 3月に1度の特売日のように、単行本だけで彼は必死に新しいことをしようとしている。
封印された怨霊が年に何回かの祭の時だけ神輿に担がれて暴れるように。
私はこれまで、こんな不思議な漫画を見たことが、やはり、いちども無かった。