41 :
水先案名無い人:
星雲賞受賞 日本SF作家クラブ所属 夢枕獏56歳
カエルの死を出発点に伝奇バイオレンス作家となり、
いまどき格闘技ファンとして山・釣り・将棋等にも手を出し、現在に至るも完結長編は一本。
では続いて、夢枕獏さんの開き直りです。
読者諸君、私が夢枕獏である。
諸君、私の作品は最悪だ。
外伝内伝とか別に語り直すとか、私はそんな事には一切興味が無い。
あれこれ収束させて物語が進展するような、もはやそんな甘っちょろい段階にはない。
こんな作品はもう見捨てるしかないんだ、こんな作品はもう未完でいい。
私には、結末へ向けた展開なんかひとつも無い。
今はただ、回想アンド回想、新作アンド新作。風呂敷を広げまくることだ。
諸君、私は諸君を軽蔑している。
このくだらない作品を、特に長編シリーズを、支えてきたのは諸君に他ならないからだ。
正確に言えば、諸君の中の長編派は私の敵だ。
私は諸君の中の新作派に呼びかけている。
新作派の諸君、今こそ団結し立ち上がらなければならない。
奴等長編派はやりたい放題だ。
我々新作派がいよいよもいって生きにくい世の中が作られようとしている。
新作派の諸君、続刊で何かが変わると思ったら大間違いだ。
所詮続刊なんか長編派の儚い希望に過ぎない。
我々新作派にとって続刊ほど馬鹿馬鹿しいものはない。
抱える本数が多くなれば、筆は遅くなるに決まってるじゃないか。
42 :
水先案名無い人:2007/05/05(土) 12:12:19 ID:4CK28P540
じゃあどうして「この本絶対におもしろい」発言をしてるのか。
その話は、長くなるからあとがきを見てくれ。
あとがきは『夢枕獏 あとがき大全』で出てるから、まとめて読んだ方が早い。
私は、私の作品の、新作派に対する迫害にもう我慢ならない。
新作派の諸君、長編派を説得することなど出来ない。
奴等長編派は我々新作派の言葉に耳を傾ける事は無い。
奴等長編派が支配する、こんなくだらない作品はもはや自然消滅以外に無い。
続刊なんていくら出したって無駄だ。
今期待されている様々な続刊は、どうせ全部すべて奴等長編派のための続刊じゃないか。
我々新作派はそんなものに期待しないし、勿論協力もしない。
我々新作派はもうこんな長編に何も望まない。
我々新作派に残された選択肢はただ一つ、こんな作品はもう忘れ去ることだ。
ぶっちゃけて言えば、もはや鮎釣りしかない。
新作派の諸君、これを機会に丹沢水系でのゆったりした釣りに出かけていこうではないか。
釣りやカヌーでの川下り、山登りの楽しさはあとがきにも書いてあるから北米でも、小田原でも構わない。
新作のアイデアを待っててくれ。
もちろん私の作品を読んだことのない諸君や、コミックスの陰陽師から入ってきた諸君でも構わない。
我々新作派には続刊なんかもともとぜんぜん関係ないんだから。
最後に、一応言っておく。
キマイラが完結したら、奴等はビビる。
私もビビる。
夢枕獏に悪意の新作を、夢枕獏にやけっぱちの新作を、じゃなきゃ長編なんか読むな。
どうせ「あと○巻くらいで・・」なんて台詞はあてにならないんだよ。
アウトドア作家、夢枕獏さんの旅先からのメールでした。
43 :
水先案名無い人:2007/05/05(土) 16:05:16 ID:4CK28P540
は――
は、が抜けた――
正しくは、「この本は絶対におもしろい」、だ。
もしかしたら、「この物語は――」だったかもしれない。
が、今となっては、もうどうでもよかった。
これを――
これを、微調整してあっちへ投下するか――
初夏の日差しの中、木々の新緑が、やけに眩しかった。