イングソック元幹部 エマニュエル=ゴールドスタイン
反資本主義運動を出発点に異端的極左活動家となり、
いまどき反革命として追放され、現在に至るも反体制知識人
では続いて、E.ゴールドスタインへの二分間憎悪です。
同志諸君、私がゴールドスタインである。
諸君、この国は最悪だ。
共産革命だとかニュースピークだとか、私はそんな事には一切興味が無い。
あれこれ革命して問題が解決するような、もはやそんな甘っちょろい段階にはない。
こんな国はもう見捨てるしかないんだ、こんな国はもう滅ぼせ。
私には、建設的な提案なんかひとつも無い。
今はただ、スクラップアンドスクラップ。すべてをぶち壊すことだ。
諸君、私は諸君を軽蔑している。
このくだらない国を、そのシステムを、支えてきたのは諸君に他ならないからだ。
正確に言えば、諸君の中の党内局員は私の敵だ。
私は諸君の中の党外局員に呼びかけている。
党外局員の諸君、今こそ団結し立ち上がらなければならない。
奴等党内局員はやりたい放題だ。
諸君党外局員がいよいよもいって生きにくい世の中が作られようとしている。
党外局員の諸君、戦争によって何かが変わると思ったら大間違いだ。
所詮戦争なんか三大国のお祭りに過ぎない。
諸君党外局員にとって戦争ほど馬鹿馬鹿しいものはない。
三つ巴で始めれば、三すくみで終わるに決まってるじゃないか。
じゃあどうしてユーラシア(イースタシア)の味方してるのか。
その話は、長くなるから「例の本」を見てくれ。
本物は三章以降もあるから、最後まで見逃さないように。
私は、この国の、党外局員に対する迫害にもう我慢ならない。
党外局員の諸君、党内局員を説得することなど出来ない。
奴等党内局員は諸君党外局員の言葉に耳を傾ける事は無い。
偉大なる兄弟が支配する、こんなくだらない国はもはや滅ぼす以外に無い。
革命なんていくらやったって無駄だ。
今進められている様々な革命は、どうせ全部すべて奴等党内局員のための革命じゃないか。
我々兄弟同盟はそんなものに期待しないし、勿論協力もしない。
我々兄弟同盟はもうこんな国に何も望まない。
我々兄弟同盟に残された選択肢はただ一つ、こんな国はもう滅ぼすことだ。
ぶっちゃけて言えば、もはや政府転覆しかない。
党外局の諸君、これを機会に政府転覆の恐ろしい陰謀を共に進めていこうではないか。
極秘に連絡をとるから憎悪週間中でも、終わってからでも構わない。
兄弟同盟に加盟してくれ。
もちろん権力のないプロレの諸君や、オセアニア以外の諸君でも構わない。
我々兄弟同盟には良識なんかもともとぜんぜん関係ないんだから。
最後に、一応言っておく。
私が返り咲いたら、BBはビビる。
私もビビる。
兄弟同盟に悪意の参加を、兄弟同盟にやけっぱちの参加を、じゃなきゃ希望なんか持つな。
どうせプロレは自分じゃ何も変えようとしないんだよ。
人民の敵、E.ゴールドスタインへの二分間憎悪でした。