「特技は発剄とありますが?」
「ああ」
「発剄とは何のことですか?」
「まあ、中国武術の一種かな」
「え、中国武術?」
「ああ。仙道と言ってもいい。少ない力で大きなダメージを与えられる」
「――で、その発剄は当社でローンを組まれる際に何のメリットがあるとお考えですか?」
「メリットか――。あると言えばあるが、ないと言えばない。本来メリットとはそのようなものだ」
「いや、それでは困ります。返済能力の有無に直結するようなことでないと審査基準を満たしませんよ」
「しかし、相手が熊でもライオンでも、勝つことができる。」
「いや、勝つとかそういう問題じゃなくてですね――」
「もっとも、相手が同じ技を持っていたとしたら、少々やっかいだがな――」
と、乱蔵は、誰に向けるともなく口元を緩めた。
男であっても惚れ惚れするような、そんな、裏表のない笑顔であった。