21 :
水先案名無い人:
「独身やっかぁ」
ス-ツを脱ぎ捨てると、縦じわでよれよれのモモヒキを整えた。鏡の前に立ち股を開く。
既に出前を注文し、俺のPCは電源のONを待つ。
身体を横にしてテレビを映すと、ニュースを持ち上げて、クリスマス特集がそこにあった。
「俺の男一人のクリスマスだぜ」声に出していう。
「独身はやっぱ孤独」
やおら冷蔵庫の中から、ズルムケ状態の発泡酒を取り出す、手にピーナツをたっぷり取り、逆手で膝頭をこね回す、
「ギシッ、ギシッ」隣家の音が俺の脳内を更に陰鬱にする。
「独りぼっちたまんねぇ」隣家のきしみに合わせて、涙をぽたぽたさせる。
「独りの聖夜にゃあこれだよ」ラッシュを吸い込む。
「スッ、スッ、スッ、スッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「独り、独り」「田舎のおふくろ」
頃合いをみて出前ピザが届く。俺は自分のこの現実が嫌いだ。
年老いた両親だけが実家に残り、ぶらぶらの無職のバックに、年金未納で、年をとり、左手でつまみ引っ張り、右手でヌルヌルとピザを切り分ける。
アパートの中の俺は、日本一の寂しい男になっていた。
「ちきしょう誰かに来てもらいテェよ」午前零時が近付くと、いつもそう思った。ラッシュをもう一度効かせ、発泡酒を追加すると、むせび泣きへ向かってまっしぐらだ。
「故郷に錦を飾ってやる」「出世頭のほんまもんの一人息子」
「うりゃ、そりゃ」「ズリュッ、ブチュッ」涙を飛ばしながら、上京当時を思い出す。
「たまんねぇよ」アパートの外から、激しい足音が起こった。やがて奔流となり、俺を驚かす。
-誰だろう- -こんな夜中に-懐疑する気持ちがせめぎあい、俺は玄関に立つ。
「誰かきたっ」俺は膝を直角に曲げ、それに備える。足音は堰を切ろうとしていた。
「もしもし ! 」「開けてくれよ」
宵闇を押し分けて、兄貴達がしゃくり出される。
「よ、よう。お、お、俺と爽快なホモセックスでハメ狂わねえか?」
「すげー寂しそうな表情してんじゃん。俺リバだから3人でやろうぜ!」
雄臭ぇ時間が過ぎ、人生がバラ色に変わる。