勝手に今日ティンポ勃っちゃったレス大賞 23

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808水先案名無い人
霧の様な雨が、空気を濡らしている。
息を吸い込むと、墓場独特の生臭さと線香の匂いが辺りに漂っている。
まだ正午を過ぎた頃である、周りを見回しても人影は無い。
空を見上げると俺の気持ちと同じ様に、重く、暗く沈んだ色に染まっていた。
その中を俺は真っ直ぐに目的の場所に歩く、やがて見覚えのある墓が見えてきた。
俺はその前に立ち、視線を落とした。

「―――1年ぶりだな、今年もクリームかけに来たよ」

小脇にぶら下げていた紙袋から、白く濁った液が入った瓶を取り出す。

「お前が好きだったクリームだ、まぁ一杯やれよ」

そう呟いて、俺は瓶の蓋を開けた。
アイツの墓に瓶を傾け、クリームを乗せていく。
半分ほどクリームを空けて、俺も軽くクリームを煽った。

「ふぅ・・・もう十年になるかな、お前がこのスレから居なくなってから・・・」

俺は何も埋まっていない墓に、誰に向かってでもなく、遠い思い出と出来事を語り出す。
高見盛の事、コピリンコの事、長介の事、冥王星の事―――
フィラメントの様な一瞬の輝きを、俺は懐かしみながら呟く。
809水先案名無い人:2006/08/27(日) 20:17:08 ID:Utd2iF9YO
1仕切り話した後、最後にあのスレの事を話した。

「知ってるか?お前が居なくなってから、介一族がついに記号にまで手を出したんだぜ・・・」

自嘲する様に、軽い笑みを浮かべながら。
俺はあるいはそこに居るアイツに、語りかけていた。

「あの、あなたもクリームかけに・・・?」

と、背中越しに声をかけられた。
振り向くと、そこにはクリームの様に白い肌をした女性が立っていた。

「あ、ああ・・・」

思わず慌てながら、俺は彼女の方向を向き直す。
彼女はそのままアイツの墓に近寄り、墓に乗せたクリームにそっと手を触れた。

「あなたも、この人を知っているんですか?」

こちらを振り向かずに彼女は言う、その声にはどこか暗い色を帯びている様に聞こえた。

「ああ、知ってるよ」
「どんな関係だったんですか?」
「旧い友達だよ・・・只の、ね」

そうですか・・・と彼女は肩に下げた鞄から、和紙に包まれた小瓶を取り出した。

「彼、好きだったんです・・・クリームをかけるのが」
810水先案名無い人:2006/08/27(日) 20:21:24 ID:Utd2iF9YO

きゅぽん。

女は瓶の蓋を取り、その中身、クリームを手に取る。
そうして我が子を慈しむ様に、墓にクリームを擦り付けていった。

「・・・あんたは、アイツとどんな・・・?」
「私はスレの住人です。どこにでも居る、普通の」
「そうか・・・」

やがて墓全体にまんべんなくクリームを擦り付けると、女は静かに立ち上がった。
少しのあいだ墓を見つめ、軽く笑みを浮かべた。

「また来年、クリームかけにきます」

女はそう一人ごちる。
そして女は去っていった。

「・・・・・・」

俺は暫く女が向かった方向を見つめていた。
きっと彼女はまた来年、ここに来るのだろう。
そしてまた、クリームかけにくるのだろう。

「―――さてと」

瓶を持って立ち上がる。

「また来るよ、来年な」

そうして俺は歩き出した。
彼女が消えた方向とは、反対側に。
811水先案名無い人:2006/08/27(日) 20:38:07 ID:Utd2iF9YO
ごめん誤爆した