「どうしたんだ。何があった」俺がPKをとめながら言った。
「うん」柳沢はピッチの表面を足でなぞった。「まあ、
たいしたことじゃないんだが」
「だって、早くこいといったじゃないか」
「う、うん。あのう、実は」くすくす笑った。
「ナ、なんだよう。早く言えよ」
「あの、マア、言うけどさ、言うけど、笑うなよ」
「だって自分が笑っているじゃないか」
「そうか。ま、まあいいや。あの
「何だ」
「じつは、急にボールが来たので、
足の内側でければよかったが、外側でけってしまった」
「…………」
「わ、わ、笑うなよ。な」
「…………」
「ワハハハハハ」
「ワハハハハハ」
「…………」
「すまん。もういちど言ってくれ。なんだって」
「あの、きゅ、きゅ、急にボールが来たので」
「ワハハハハハ」
「ワハハハハハ」
「足の内側でければよかったが」
「外側でけってしまった」
「ワハハハハハ」
「ワハハハハハ」
「馬鹿だなあ。ワハハハハハ。足の外側でけりやがった」
「ワハハハハハ」
「ワハハハハハ」