魔王のガイドライン3

このエントリーをはてなブックマークに追加
521水先案名無い人
 こんな夜更けに、暗い部屋の中でテレビを見ているのは誰だろう。
 それは父と子だ。父はおびえる子をひしと抱きかかえている。

父  「息子よ、なぜ顔を隠すのだ」
子  「お父さんにはCMが見えないの。BGMも流れず、ナレーションがぼそぼそしゃべる・・・」
父  「あれはナショナルのCMだ・・・」
CM  「ナショナルでは、古い年式のFF式石油暖房機を探しています。」
子  「お父さん、お父さん!きこえないの。CMがぼくになにかいうよ。」
父  「落ち着きなさい、うちの暖房機は大丈夫だよ。」
CM  「万一の場合、死亡事故に至るおそれがあります。」
子  「お父さん、お父さん!見えないの、あの暗いところにナショナルのFF式石油暖房機が!」
父  「見えるよ。だが、あれを止めたら部屋が寒くなってしまうよ。」
CM  「給排気筒のついた製品をお持ちの方は、至急、ご連絡をお願い申し上げます。」
子  「おとうさん、おとうさん!15秒CMが連続で流れる!CMがぼくを怖い目にあわせる!」

 父親はぎょっとして、給排気筒を全力で探した。あえぐ子供を部屋に残し、やっとの思いで給排気筒を見つけた・・・
 部屋に残された子はすでに死んでいた。