こんな夜更けに、暗い部屋の中でテレビを見ているのは誰だろう。
それは父と子だ。父はおびえる子をひしと抱きかかえている。
父 「息子よ、なぜ顔を隠すのだ」
子 「お父さんにはCMが見えないの。BGMも流れず、ナレーションがぼそぼそしゃべる・・・」
父 「あれはナショナルのCMだ・・・」
CM 「ナショナルでは、古い年式のFF式石油暖房機を探しています。」
子 「お父さん、お父さん!きこえないの。CMがぼくになにかいうよ。」
父 「落ち着きなさい、うちの暖房機は大丈夫だよ。」
CM 「万一の場合、死亡事故に至るおそれがあります。」
子 「お父さん、お父さん!見えないの、あの暗いところにナショナルのFF式石油暖房機が!」
父 「見えるよ。だが、あれを止めたら部屋が寒くなってしまうよ。」
CM 「給排気筒のついた製品をお持ちの方は、至急、ご連絡をお願い申し上げます。」
子 「おとうさん、おとうさん!15秒CMが連続で流れる!CMがぼくを怖い目にあわせる!」
父親はぎょっとして、給排気筒を全力で探した。あえぐ子供を部屋に残し、やっとの思いで給排気筒を見つけた・・・
部屋に残された子はすでに死んでいた。