魔王のガイドライン3

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281水先案名無い人
 こんな夜更けに、闇と風の中に馬を走らせるのはだろう。
 それは父と子だ。父はおびえる子をひしと抱きかかえている。

父  「息子よ、なぜ顔を隠すのだ」
子  「お父さんには姉歯が見えないの。眼鏡をかけて、スーツを着ている・・・」
父  「あれは一級建築士だ・・・」
姉歯 「かわいい坊や、一緒においで。面白い設計をしよう。イーホームズは偽造に気づかないし、強度不足のマンションを私の事務所がたくさん用意して待っているよ。」
子  「お父さん、お父さん!きこえないの。姉歯がぼくになにかいうよ。」
父  「落ち着きなさい、マスコミがざわめいているだけだよ。」
姉歯 「いい子だ、私と一緒に行こう。震度3の地震がもてなすよ。お前の館をここちよくゆすぶり、壊し、崩すのだ。」
子  「お父さん、お父さん!見えないの、あの暗いところに館の構造計算書が!」
父  「見えるよ。だが、館はもう買ってしまったんだよ。」
姉歯 「愛しているよ、坊や。お前の立派な館がたまらない。力づくでも安く上げる!」
子  「おとうさん、おとうさん!姉歯がぼくの館を手抜きする!姉歯が館をひどい目にあわせる!」

 父親はぎょっとして、馬を全力で走らせた。あえぐ子供を両腕に抱え、やっとの思いで館に着いた・・・
 館はすでに崩れ落ちていた。