何故だ。
何故そこまでやるのだ。
悪戯を―――
「るーるるーるーるー」男は何も答えない。
ただ垢で汚れた手で、薄ら笑いを浮かべながら引き出しに餅を詰める。
なんという、なんという男だ―――
嗚呼、それは課長の机だというのに―――
この男は、かりあげ正太という男は、そういう男なのだ。
こいつとは昔からの付き合いであるが、俺はこの悪戯、という趣味は、どうも好きになれない。
その時。
耳元で声がした。
「どうしたい、メガネ。俺の机がどうかしたかい」
それは課長だった―――
「おきゃああああああッッッッッ」
意味の無い砲叫が腹の底から漏れる。
課長。
机。
餅。
汗。
外勤の筈。
そんな。
課長の餅。
とりとめの無い感情が背骨をぐわり、とひねる。
ごぶり。
口中に溜まった唾を飲み込み、やっと次の一言に辿り着く。
「い、いまかりあげの野郎が課長の」
課長は真っ直ぐ自分の机に向かった。
駄目だ、やめてくれ―――
そこは、開けてはいけない―――
ごろり。と、重い岩を転がすような音。課長は唐突に怪鳥のような声を張り上げる
「んむぁぁぁぁぁぁあ!!ばぁろぉぉぉぉおお!!」
嗚呼、課長―――
貴方が、貴方がいけないのです、貴方が、開けてしまうから―――
たまらぬかりあげであった。