夢枕獏の文体のガイドライン

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336水先案名無い人
一瞬の隙であった。

毛の先ほどの、あるかなしかの一瞬の隙―――

ガッ

その顎は確実に獲物を捕らえていた。
よく太った一尾の魚であった。


獲物を捕らえた瞬間。
既に逃走の体勢に入っていた。

見事な。
ここまでの動きが可能なのか―――

逃がすか!
337水先案名無い人:2005/07/01(金) 09:24:57 ID:GSnLX8WP0
魂が爆ぜた。
主婦としての―――
矜持。意地。見栄。
その全てかもしれないし、そのどれでもないかもしれない。

分からない。
分からないから駆け出した。

裸足である。

周りの視線が集まる。
嘲笑。冷笑―――

糞。

その魚は、既に獣のアギトの中だ。
もはや夕食の主役は務まらないであろう。

それが分かる。
分かるが、理屈ではない。

その日の空はどこまでも青く広がっていた。
338水先案名無い人:2005/07/01(金) 13:14:53 ID:hcm0Vpuj0
「?」

その気配に気が付いたのは夜も大分過ぎてからのことであった。

気配---
そう呼ぶには僅かすぎる違和感を男は感じていた。
気のせいだろうか?
が、気づいてしまえばもう動くことはできない。

と----
音がした。
カーテンの裏からだ。
カーテンの裏側にある窓に何かが触れるような音。

かさ、
かさ、

音はすぐやんだ。
次に聞こえてきたのは、あるかなしかの何ものかが移動する音であった。
男は意を決してカーテンをめくることにした。
多少、腕に覚えもあり、何より相手はまだこちらに気が付いていない。
そのことが少なからず男を大胆にさせていた。
男がカーテンに手を掛けた。
339水先案名無い人:2005/07/01(金) 13:16:13 ID:hcm0Vpuj0
その瞬間----

「!?」
一気に間合いを詰められていた。

「ちぃ」
男は強引に身体を捻った。
攻撃をかわし体勢を整えようとした刹那----

宙を飛びまっすぐ顔面に向かって来るものがあった。
かわすことのできる距離ではなかった。
かといって、踏み込んで受けることのできる時間もない。

両腕のガードを上げ受けることしかできない。
男の背中を恐怖が走り抜けた。

たまらぬ茶バネであった。
340水先案名無い人:2005/07/01(金) 17:08:46 ID:qnB/9+o+0
>>336 
好きだ。
2番もかいてくれ。
341水先案名無い人:2005/07/01(金) 17:13:04 ID:EGt6tTmv0
ル。
ルルル。
ルルルルル。


良い天気である。
342水先案名無い人:2005/07/01(金) 18:11:53 ID:GSnLX8WP0
街を歩いていた。

目的―――
ふふん
目的が無いわけじゃない。
あるかなしかの、笑みを浮かべ主婦は歩いていた。

買い物。

目的は買い物であった。

しかしである。
何か。
何かが心にささくれを生んでいた。

戸締り―――
ガス栓―――
電気―――
予感―――
確認―――
343水先案名無い人:2005/07/01(金) 18:12:33 ID:GSnLX8WP0
バックを確認した。
ポケットを確認した。

ぐあかかかかかぁぁ―――
内から湧き上がる凶暴な力に発狂しそうであった。
いっそ狂ってしまえばいいと思った。

財布が無かった。
つまり金がないということだ。

そんな主婦が犬と目があった。
薄汚い野良犬であった。
犬までも嘲笑していた。

ちくしょう
ちくしょう
ちくしょう
ちくしょう

空だけはどこまでも青かった。