1 :
水先案名無い人:
「君の下宿に寄ったよ」
妹は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、日本に帰る気はないか」
「なぜ」
「なぜって、まだ随分ながくこちらに居たじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、やりたいことをやりかけだわ。先生だってこれからだといってくださるんだもの」
「誰だ、その先生ってのは」
「レーベジェフさんよ。昨日、話したじゃない」妹は今度は怒ったように言った。「マリニイ座で先月も出た一流の俳優よ。日本人で彼に教えて頂いているのは私一人よ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な髪の形をした女や、肋骨のような外套を着た男たちが幾十人もキャフェのなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれも巴里のなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。妹も今、この異国の都会でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
私は自分のトゥイードのコートに眼を落とした。だが妹は負けずに、
「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないの。償われなくたって自分がいいならそれでじゃないの」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
この街にまで来て妹と争いたくはない。ただ、これら男女が、しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、芸術の残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと妹に言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼女に及ぼしたらしい。
「わかったわ」妹はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だからポーちゃんは日本に帰ったんでしょう。ポーちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう」
「よそうよ、喧嘩するのは」
私は勘定書を手にとった。妹の言っていることは半分は正しい。七年前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっとこの街に一人で止まるべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの中世美術館の基督の死顔を喪い、かわりにこのトゥイードのコートをえた。
元ネタ:平成17年度センター試験 国語TU第2問 遠藤周作『肉親再会』より
ttp://www2.asahi.com/edu/2005c-exam/q/kokugo12_15.html ttp://www2.asahi.com/edu/2005c-exam/q/kokugo12_16.html
2げっと
3 :
水先案名無い人:05/01/20 00:46:44 ID:AqK4YVep0
「君のスレを見たよ」
>1は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、削除依頼出す気はないか」
「なぜ」
「なぜって、また随分な糞スレを立てたじゃないか。もう充分だろう」
4 :
水先案名無い人:05/01/20 00:46:54 ID:akASJtrH0
2か4か5ゲット
5 :
水先案名無い人:05/01/20 01:01:30 ID:DkfWcy050
「
>>4のレスを見たよ」
そして僕は自信無さげに言ってみる
「
>>3を狙ってたんだろ?」
6 :
水先案名無い人:05/01/20 01:06:16 ID:p1sNss220
すでに他板でネタに使ったけど、案外改変難易度高め。
7 :
水先案名無い人:05/01/20 01:23:59 ID:9wWxvo3UO
私は思わず、ガ板の周囲をもう一度みまわした。相変わらず対して面白くもないスレや、自作自演スレたちが削除依頼のなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれも2ちゃんのなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。このスレも今、このガ板の都会でその一糞スレになろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
この文章、テスト会場で見ると普通の小説なのに
改めて2ちゃんで見ると妹萌えSSに見えてワロタw
8 :
水先案名無い人:05/01/20 07:42:27 ID:ZxqFNdhB0
2ちゃんがどうではなく、オマイのアタマが
9 :
水先案名無い人:05/01/20 14:55:26 ID:9wWxvo3UO
ところでこの文章から読み取るにポーちゃん=私でいいのか?
「翔の単行本を見たよ」
刃森は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、打ち切る気はないか」
「なぜ」
「なぜって、まだ随分ながく連載を続けたじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、やりたいことをやりかけぜ・・・!?。編集だってこれからだといってくださるんだぜ・・・!?」
「誰だ、その編集ってのは」
「“ ”と!?の編集だぜ・・・!?。昨日、話したじゃないか(ギリビキ」刃森は今度は怒ったように言った。「講談社を支える一流の編集者だぜ・・・!?。マガジンで彼に担当して頂いているのは俺一人だぜ・・・!?」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様なBIKEIばかり描く女や、他誌の漫画をパクってる男たちが幾十人も編集部のなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれも漫画家のなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。刃森も今、このマガジンの歴史の中でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
私は自分のトゥイードのコートに眼を落とした。だが刃森は負けずに、
「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないの・・・!?。糞漫画だって自分がいいならそれでじゃないか・・・!?」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
この編集部にまで来て刃森と争いたくはない。ただ、これら男女が、しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、漫画の残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと刃森に言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼に及ぼしたらしい。
「わかったぜ・・・!?」刃森はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だから豪ちゃんは打ち切られたんでしょう・・・。豪ちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう・・・!?」
「よそうよ、喧嘩するのは」
私は原稿を手にとった。刃森の言っていることは半分は正しい。七年前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっとこの業界に一人で止まるべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの講談社の雑誌の連載を喪い、かわりにこのトゥイードのコートをえた。
糞ワロタ。
豪ちゃん真人間ぶってんなよw
13 :
水先案名無い人:05/01/21 23:06:06 ID:Y6HcOAxg0
>>10 ポーちゃん=妹が「私」につけた愛称
だそうな
15 :
水先案名無い人:05/01/22 00:26:37 ID:DcfKJUuS0
ってかこの年萌えるの多過ぎた。
俺的には朝日の君のダメ人間にもついてきてくれるけなげさにも萌えたがね。
だって「鷹狩やりすぎて帝に都追い出された」上に「妻との約束を2行で破る」ダメ人間だよ?
そういやポーちゃんの正式名称って何なんだろうな。
「数字だけで判断するんやったら小学生でもできる」
妹は黙っていた。
「オレは井川を(メジャーに)やるなんて全然、考えていない。まったく考えていない。一切、考えてない」
「なぜ」
「そういった下積みというか、そういう時代があったことが、 優勝につながったともいえる」
「まだ、やりたいことをやりかけだわ。先生だってこれからだといってくださるんだもの」
「ちょっと、わからん…」
「レーベジェフさんよ。昨日、話したじゃない」妹は今度は怒ったように言った。「マリニイ座で先月も出た一流の俳優よ。日本人で彼に教えて頂いているのは私一人よ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な髪の形をした女や、肋骨のような外套を着た男たちが幾十人もキャフェのなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれも巴里のなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。妹も今、この異国の都会でその一人になろうとしている。
「もうタイムリミットやし、これまでやし、考えんでええようになったんちゃうか」
私は自分のトゥイードのコートに眼を落とした。だが妹は負けずに、
「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないの。償われなくたって自分がいいならそれでじゃないの」
「何か(考えが)浅いな」
この街にまで来て妹と争いたくはない。ただ、これら男女が、しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、芸術の残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと妹に言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼女に及ぼしたらしい。
「わかったわ」妹はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だからポーちゃんは日本に帰ったんでしょう。ポーちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう」
「ああ、ほんと(苦笑)」
私は勘定書を手にとった。妹の言っていることは半分は正しい。七年前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっとこの街に一人で止まるべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの中世美術館の基督の死顔を喪い、かわりにこのトゥイードのコートをえた。
17 :
水先案名無い人:05/01/22 00:57:07 ID:oN0K9W2H0
「センター化学IBが易化したよ」
受講生は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、頭おかしいですよ」
「なぜ」
「なぜって、まだ随分ながく17族を覚えられなかったじゃないか。もう絶対狂ってますよ」
「まだ、やりたいことをやりかけだわ。先生だってこれからだといってくださるんだもの」
「誰だ、その先生ってのは」
「吉野先生よ。昨日、話したじゃない」受講生は今度は怒ったように言った。「代ゼミで古文を担当する一流の講師よ。日本人で彼にささやく女房は私一人よ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらずドラクエ関係の講座名を付ける数学講師や、ホストのような風体をした英語講師たちが幾十人も講師室のなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれも代ゼミのなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。この受講生も今、この異国の都会でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらホント狂ってますよ」
私は自分のハロゲンヒーターに眼を落とした。だが妹は負けずに、
「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないの。償われなくたって自分がいいならそれでじゃないの」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
講師室にまで来て受講生と争いたくはない。ただ、これら講師が、しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、受験の残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと受講生に言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼女に及ぼしたらしい。
「わかったわ」受講生はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「ハァァーロォォーゲン!!!」
「ハァァーロォォーゲン!!!」
私は蛍光ペンを手にとった。受講生の言っていることは正しい。七年前、私の半分は希ガスを捨てろ、もっともっと17族一本槍で突き進むべきだと囁いていた。
それから開眼した私は結婚を諦め、かわりにこのハァァーロォォーゲン!!!をえた。
18 :
水先案名無い人:05/01/23 13:13:20 ID:afSGoFtp0
ギガワロスw
「誰だ、その先生ってのは」
「レーベジェフさんよ。昨日、話したじゃない」
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| / ̄ ̄ ヽ, |
| / ', |
| {0} /¨`ヽ {0}, !
|.l ヽ._.ノ ', |
リ `ー'′ ',|
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レーベジェフワラタw
「お前の下宿によったよ」
浪人は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、お前、Fランクに行く気はないか」
「なぜ」
「なぜって、まあ随分ながく浪人をしたじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、第一志望に届いてないわ。予備校の先生だってこれからだと言ってくださるんだもの」
「誰だ、その先生ってのは」
「○○さんよ。昨日、話したじゃない」浪人は怒ったように言った。
「○○○ゼミナールで冬期講習も満員だった一流の講師よ。浪人で彼に真剣に教えて頂いているのは私一人よ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な髪の形をした女や、
辞典のような参考書を持った男たちが幾十人も試験会場を右往左往していた。これらは屑だ。
どれもこれも受験の中で自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。
浪人も今、この会場の中でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
私は大学の合格通知をそっとチラつかせた。だが、浪人は負けずに、
「たとえ、そうなったって………生きることって結果ではないじゃないの、
償われなくったって自分がいいならそれで結構じゃないの」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
<中略>
「わかったわ」浪人はまばたきもせず黒い大きな目で私を見つめて、
「だからローちゃんは推薦入学にしたんでしょう。
ローちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう」
「よそうよ。喧嘩するのは」
私は勘定書を手にとった。浪人の言っていることは半分は正しい。
七年前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっと上の大学を目指すべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの宮廷のバラ色の生活を喪い、そのかわりにこの合格通知をえた。
「君の自宅に寄ったよ」
橘は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、研究員に戻る気はないか」
「なぜ」
「なぜって、もう随分ながく戦ったじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、やりたいことをやりかけだ'`。所長だってこれからだといってくださるんだ'`」
「誰だ、その所長ってのは」
「烏丸所長だ。昨日、話したじゃないか'`」橘は今度は怒ったように言った。「青年座で先月も出た一流の研究員だ。日本人で彼に教えて頂いているのは俺一人だ'`」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な滑舌をした男や、小児性愛者のような目をした男たちが幾十人もキャフェのなかを右往左往していた。
これらは特別だ。どれもこれも作品のなかで自分だけは才能があり、勝っていく連中だ。橘は今、このバトルファイトでその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになるのは無理じゃないか」
私は彼のボロボロの体に眼を落とした。だが橘は負けずに、
「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないか'`。キングフォームなど無くても自分がいいならそれでじゃないか'`」
「だがな、客観的に自分を見ろよ。惨めだと思わないかい」
この街にまで来て橘と争いたくはない。ただ、これらヘタレが、食べたり、ネタキャラになったりすぐに騙されても、戦いの残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと橘に言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼に及ぼしたらしい。
「でたらめを言うな」橘はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だから桐生さんはレンゲルになったんだろう。桐生さんはなにか報われなければ嫌だったんだろう」
「よそうよ、喧嘩するのは」
私は勘定書を手にとった。橘の言っていることは半分は正しい。数日前、私の片半分はお前は真面目すぎる、もっともっと馬鹿になれと囁いていた。
それに耳を傾けた橘はあの伊坂戦での小夜子の死顔を喪い、かわりにこの虎太郎のパスタをえた。
23 :
水先案名無い人:05/02/15 14:43:49 ID:7paB47I80
「君の下宿に寄ったよ」
妹は黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、日本に帰る気はないか」
「なぜ」
「なぜって、まだ随分ながくこちらに居たじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、やりたいことをやりかけだわ。先生だってこれからだといってくださるんだもの」
「誰だ、その先生ってのは」
「レーベジェフさんよ。昨日、話したじゃない」妹は今度は怒ったように言った。「マリニイ座で先月も出た一流の俳優よ。日本人で彼に教えて頂いているのは私一人よ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な髪の形をした女や、肋骨のような外套を着た男たちが幾十人もキャフェのなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれも巴里のなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。妹も今、この異国の都会でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
私は自分のトゥイードのコートに眼を落とした。だが妹は負けずに、
「たとえ、そうなったって……生きることって結果ではないじゃないの。償われなくたって自分がいいならそれでじゃないの」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
この街にまで来て妹と争いたくはない。ただ、これら男女が、しゃべったり、懸命になったり誠実に生きても、芸術の残酷な世界では立派なものを生むとは限らないと妹に言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果を彼女に及ぼしたらしい。
「わかったわ」妹はまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だからポーちゃんは日本に帰ったんでしょう。ポーちゃんはなにか報われなければ嫌だったんでしょう」
「よそうよ、喧嘩するのは」
私は勘定書を手にとった。妹の言っていることは半分は正しい。七年前、私の片半分は安易さを捨てろ、もっともっとこの街に一人で止まるべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの中世美術館の基督の死顔を喪い、かわりにこのトゥイードのコートをえた。
24 :
水先案名無い人:05/02/18 22:35:14 ID:4NdJQMiu0
レーベジェフage
ついでに二次期待age
25 :
水先案名無い人:05/03/08 18:09:42 ID:s+gtPf+W0
来年のセンターまで定期age
>25 それ無理wwwww
27 :
水先案名無い人:2005/03/29(火) 01:02:17 ID:BS39AQZZ0
言うだけいって何もしない25
28 :
水先案名無い人:2005/04/09(土) 00:02:31 ID:tKT/slo10
「君の下宿に寄ったよ」
ミセリは黙っていた。
「俺さ、考えたんだけど、君、アメリカに帰る気はないか」
「なぜ」
「なぜって、もう随分ながくメジャーに居たじゃないか。もう充分だろう」
「まだ、やりたいことをやりかけだ。監督だってこれからだといってるんだ」
「誰だ、その監督ってのは」
「堀内さんよ。昨日、話したじゃないか」ミセリは今度は怒ったように言った。「巨人で去年も務めた一流の監督だ。外国人抑え投手で彼に教えて頂いているのは俺一人だ」
私は思わず、自分たちの周囲をもう一度みまわした。相変わらず異様な髪の形をした奴や、趣味の悪いピアスをした男がブルペンのなかを右往左往していた。
これらは屑だ。どれもこれもプロのなかで自分だけは才能があると思い、沈んでいく連中だ。ミセリも今、この異国の野球界でその一人になろうとしている。
「でも、こんな連中みたいになったらお終いじゃないか」
私は自分の巨人のベンチコートに眼を落とした。だがミセリは負けずに、
「たとえ、そうなったって……リリーフって結果ではないじゃないか。償われなくたって自分がいいならそれでじゃないか」
「だがな、この連中を見ろよ。惨めだと思わないかい」
東京ドームにまで来てミセリと争いたくはない。ただ、これらのプロが、ヒットを打ったり、懸命になったり誠実に投げたり、プロの残酷な世界では立派なものを生むとは限らないとミセリに言ってやりたかったのである。
だが言葉はうまく口からは出ずにそれは別の結果をミセリに及ぼしたらしい。
「わかったよ」ミセリはまばたきもせず黒い大きな眼で私をみつめて、「だからグリーンウェルは日本に帰ったんでしょう。グリーンウェルはなにか報われなければ嫌だったんでしょう」
「よそうよ、喧嘩するのは」
私はグローブを手にとった。ミセリの言っていることは半分は正しい。八年前、私の片半分はメジャーを捨てろ、もっともっと日本に一人で止まるべきだと囁いていた。
それに耳を塞いだ私はあの阪神タイガースのかわりにこのマイク・グリーンウェルズ・ファミリー・ファン・パークをえた。
29 :
水先案名無い人:
グリーンウェル・・・最も大きな虎の失敗・・・