文末に「全裸で。」と付け加えるガイドライン2

あれは2年前の夏だったかな。
野球部の合宿で長野に訪れていたときの事だ。
夜、俺達は肝試しをする事になって近所の墓地へ行ったんだ。全裸で。
20人くらいで行ったんだけど墓地に着いた頃には50人くらいに増えてんの。みんな全裸で。
さすがに他の部員達もこれはもおかしい、ヤバイんじゃないかって思いはじめて
逃げ出そうとしたんだけど、気付いたら30人くらいの暴走族が回りを囲んでたんだ。全裸で。
結局逃げるのは諦めてみんなで肝試しをする事になったんだ。全裸で。
肝試しの内容は墓地の奥にある札を２人１組で持って帰ってくるという簡単なものだった。もちろん全裸で。
問題もなく順調に進行し、やがて俺と同級の山口の番になり、俺達は手をつないで墓地の奥へと出発した。全裸で。
順路のちょうど中間あたりに来たころだったか、ガムをクチャクチャ噛んでたら
普段俺のことキモイとか言ってからかってる山口が「俺にもガムちょうだい」って言ってきやがった。全裸で。
かなりむかついたんで、奴の首根っこ掴んで口移しで噛んでるガムをやるフリをしてやった。
殴られるか、悲鳴をあげられるか、どうでもいいが二度と近寄るなと思った。
ところが、驚いたことに山口は目を閉じて唇を少し開いたんだ。俺の方がビビッて、あわててちょっと離れた。
しばらくの間があった後、山口は、「マジでするのかと思った」と小声で言って、ガムを奪って走り去った。全裸で。
それから何日か後、山口がキャンディーを食ってたので今度は俺の方からひとつくれ
と言ってやった。そしたら俺をからかうように、なめてたやつを唇にはさんで口をとがらせた。
俺は奴の唇ごとキャンディーをほおばってやったよ。 もちろん全裸で。


今でもその山口は俺の強敵（とも）。その時なめてたキャンディーはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら彼もまた、特別な存在だからです。